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JP6520015B2 - 反射スクリーン、映像表示システム - Google Patents

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Description

本発明は、投射された映像光を反射して映像を表示する反射スクリーン、映像表示システムに関するものである。
従来、様々な構成を有する反射スクリーンが開発され、映像表示システムに用いられている。近年では、反射スクリーンに対して至近距離から比較的大きな投射角度で映像光を投写して大画面表示を実現する短焦点型の映像投射装置(プロジェクタ)等が広く利用されており、このような短焦点型の映像投射装置によって投射された映像光を良好に表示するための反射スクリーン等も開発されている。
短焦点型の映像投射装置は、反射スクリーンに対して、上方又は下方から従来の映像源よりも大きな投射角度で映像光を投射することができ、映像投射装置と反射スクリーンとの奥行き方向の距離を短くすることができるので、反射スクリーンを用いた映像表示システムの省スペース化等に寄与できる。
このような映像投射装置に用いられる反射スクリーンは、映像光を観察者側により多く反射させるために反射層が設けられているものがある(例えば、特許文献1)。
この特許文献1の反射スクリーンは、光吸収層及び反射層から構成されている。この反射スクリーンの光吸収層は、2つの傾斜面から構成される単位形状が、複数、映像源側に凸となるように形成されており、カーボンブラック等の顔料を含むことによって、光を吸収する機能を有する。また、反射層は、この光吸収層の単位形状の一の傾斜面に白色樹脂によって形成されおり、映像源から投射された映像光を観察者側へと反射させている。
このような反射スクリーンは、上述したように反射層が白色樹脂によって形成されているため、反射する映像光の輝度(スクリーンのゲイン)が低く、また、コントラストも低くなってしまう場合があった。
また、このような反射スクリーンを製造する場合、白色樹脂を回転ローラによって、光吸収層の単位形状に塗布することとなるが、その場合、回転ローラに付着した白色樹脂を単位形状の傾斜面に適正に塗布するために、回転ローラを単位形状の傾斜面に密着し易くする必要がある。そのために、光吸収層は、その硬度を低く(柔く)し、変形し易い材料によって形成されることとなる。このような光吸収層に反射層が形成された場合、小さな外力や、軽い接触等によって、単位形状や、その傾斜面に形成された反射層が傷付いてしまったり、反射層が傾斜面から剥離したりしてしまう場合があった。
特開2006−23693号公報
本発明の課題は、反射層及び光吸収層の傷付きや、反射層の剥離を抑制することができる反射スクリーン、映像表示システムを提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源(LS)から投射された映像光を反射して画面に表示する反射スクリーン(20)であって、第1傾斜面(232)及び第2傾斜面(233)を備え、映像源側に凸となる単位凸形状(231)が複数配列され、光を吸収する光吸収層(23)と、前記第1傾斜面(232)の少なくとも一部に形成され、光を反射する反射層(22)と、前記光吸収層及び前記反射層の映像源側の面に低屈折率の材料により形成され、前記光吸収層及び前記反射層を保護する保護層(21)と、を備える反射スクリーンである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーン(20)において、前記保護層(21)は、隣り合う前記単位凸形状(231)の境界部を埋めるようにして形成されていること、を特徴とする反射スクリーンである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーン(20)において、前記反射層(22)は、複数の鱗片状の金属薄膜(22a)が含有された樹脂により形成されていること、を特徴とする反射スクリーンである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の反射スクリーン(20)において、前記反射層(22)は、前記第1傾斜面(232)に対して前記金属薄膜(22a)が8層以上積層されていること、を特徴とする反射スクリーンである。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(20)と、前記反射スクリーンに映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示システム(1)である。
本発明によれば、反射層及び光吸収層の傷付きや、反射層の剥離を抑制することができる反射スクリーン、映像表示システムを提供することができる。
実施形態の映像表示システムを説明する図である。 実施形態の反射スクリーンの層構成を説明する図である。 実施形態の光吸収層、反射層及び保護層の詳細を説明する図である。 実施形態の反射スクリーンの製造方法の一例を説明する図である。 変形形態の反射スクリーンの層構成を示す図である。
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書中において、シート面(板面,フィルム面)とは、各シート(板,フィルム)において、そのシート(板,フィルム)全体として見たときにおける、シート(板,フィルム)の平面方向となる面を示すものであるとする。
(実施形態)
図1は、本実施形態の映像表示システム1を説明する図である。図1(a)は、映像表示システム1の斜視図であり、図1(b)は、映像表示システム1の側面図である。
映像表示システム1は、反射スクリーン20を備える反射スクリーンユニット10と、映像源LS等とを有している。本実施形態の映像表示システム1は、映像源LSから投影された映像光Lを反射スクリーン20が反射して、その画面上に映像を表示する。
この映像表示システム1は、例えば、映像光Lを映像源LSから投射するフロントプロジェクションテレビシステム等として用いることが可能である。
映像源LSは、映像光Lを反射スクリーン20へ投射する映像光投射装置である。本実施形態の映像源LSは、汎用の短焦点型プロジェクタである。映像源LSは、使用状態において、反射スクリーン20の画面を法線方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、反射スクリーン20の画面左右方向において中央であって、反射スクリーン20の画面(表示領域)よりも下方側となる位置に配置されている。
なお、スクリーン面とは、この反射スクリーン20全体として見たときにおける、反射スクリーン20の平面方向となる面を示すものである。
この映像源LSは、反射スクリーン20の画面に直交する方向(反射スクリーン20の厚み方向)における反射スクリーン20との距離が、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から映像光Lを投射できる。即ち、映像源LSは、従来の汎用プロジェクタに比べて、反射スクリーン20までの投射距離が短く、映像光Lの反射スクリーン20のスクリーン面に対する入射角度も大きい。
反射スクリーン20は、映像源LSが投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示するスクリーンである。使用状態において、反射スクリーン20の観察画面は、観察者O側から見て、長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。
以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン20の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であるとする。
この反射スクリーン20は、例えば、対角100インチや、120インチ等の大きな画面(表示領域)を有している。
なお、本実施形態の映像表示システム1は、短焦点型のプロジェクタである映像源LSと、この映像源LSから投射された映像光を反射して映像を表示する反射スクリーン20とを備えるものとしたが、これに限らず、映像源LSを、投射距離が長く、映像光の投射角度(即ち、スクリーンへの映像光の入射角度)の小さい従来の汎用プロジェクタとし、反射スクリーン20をそのような映像源LSに対応するものとしてもよい。
図2は、本実施形態の反射スクリーン20の層構成を説明する図である。
図2では、反射スクリーン20の観察画面(表示領域)の幾何学的中心(画面中央)となる点A(図1(a),(b)参照)を通り、画面上下方向に平行であって、スクリーン面に垂直(厚み方向に平行)な断面の一部を拡大して示している。
反射スクリーンユニット10は、図1に示すように、反射スクリーン20と、その背面側に配置される平板状の支持板30と、接合層40とを有している。反射スクリーン20と支持板30とは、接合層40を介して一体に接合されている。
この支持板30は、高い剛性を有する部材であれば、特にその材料等は限定しないが、例えば、アルミニウム等の金属製の板材や、アクリル系樹脂等の樹脂製の板材等が好適に用いられる。また、表裏面をアルミニウム等の薄板とし、内部の芯材としてアルミニウム等の薄板により形成されたハニカム構造を備えることにより、板材全体としての軽量化を図った金属製の板材(所謂、ハニカムパネル)等を用いてもよい。また、支持板30は、外光の映り込みや外光によるコントラスト低下等を防止する観点から、光透過性を有しない部材であることが好ましい。
支持板30の厚みは0.2〜5.0mmが好適であり、より好ましくは1.0〜3.0mmである。厚みが0.2mmよりも薄いと、平面性を支持できるだけの剛性の付与が不十分であり、5.0mmよりも厚くなると、支持板30の重量が重くなるという問題がある。
反射スクリーン20は、薄く、それ単独では平面性を維持するだけの十分な剛性を有していない場合が多い。そのため、反射スクリーン20は、支持板30に一体に接合される形態とすることにより、その画面の平面性を維持している。
接合層40は、反射スクリーン20と支持板30とを一体に接合する機能を有する層である。接合層40は、粘着剤や接着剤等により形成する。
反射スクリーン20は、図2に示すように、その厚み方向において、映像源側(観察者側)から順に、保護層21、反射層22、光吸収層23、基材層24を備えている。
基材層24は、反射スクリーン20の基礎となるシート状の部材であり、その映像源側に光吸収層23が一体に形成されている。
基材層24は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、アクリル系樹脂等が好適に用いられる。
基材層24の厚さは、反射スクリーン20の画面サイズ等にも依るが、約20〜300μmとすることが好ましい。
図3は、本実施形態の光吸収層23、反射層22及び保護層21の詳細を説明する図である。
図3(a)は、光吸収層23を映像源側正面方向から観察した様子を示しており、理解を容易にするために、反射層22及び保護層21は省略して示している。図3(b)は、図2に示す断面の一部をさらに拡大して示している。図3(c)は、反射層が形成された光吸収層の拡大斜視図を示している。なお、図3(b)及び図3(c)は、理解を容易にするために、光吸収層23の背面側に位置する基材層24は省略して示している。
光吸収層23は、基材層24の映像源側(観察者側)に設けられた光吸収特性を有する層であり、図3(a)等に示すように、その映像源側の面に、点Cを中心として単位凸形状231が同心円状に複数配列されている。この単位凸形状231は、同心円状に形成された複数の単位レンズが配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を賦形型として形成されるため、その単位レンズに対応する形状に形成されている。このサーキュラーフレネルレンズ形状は、そのフレネルセンターである点Cが、反射スクリーン20の画面(表示領域)の領域外であって、反射スクリーン20の下方に位置している。
なお、本実施形態では、光吸収層23の単位凸形状231は、その映像源側の面に、サーキュラーフレネルレンズ形状を賦形型として、そのサーキュラーフレネルレンズ形状の単位レンズに対応する形状に形成される例で説明したが、これに限定されるものでない。例えば、単位凸形状231は、スクリーン面に沿って画面上下方向等に配列されたリニアフレネルレンズ形状を賦形型として、そのリニアフレネルレンズ形状の単位レンズに対応する形状に形成されるようにしてもよい。
単位凸形状231は、図2や図3(b)に示すように、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン20の厚み方向)に平行であって、単位凸形状231の配列方向に平行な断面における断面形状が、略三角形形状である。
単位凸形状231は、映像源側に凸であり、第1傾斜面232と、この第1傾斜面232と対向する第2傾斜面233とを備えている。
本実施形態では、反射スクリーン20の使用状態において、単位凸形状231は、第1傾斜面232が頂部tを挟んで第2傾斜面233よりも鉛直方向下側に位置している。
光吸収層23は、この第1傾斜面232の少なくとも一部に反射層22が形成され、映像源LSから出射した映像光を、反射層22を介して観察者側に反射させるとともに、第2傾斜面や第1傾斜面のうち反射層が形成されていない部位によって、照明光等の不要な外光を吸収する。
図3(b)に示すように、単位凸形状231の第1傾斜面232が、スクリーン面に平行な面となす角度は、αである。また、第2傾斜面233がスクリーン面に平行な面となす角度は、β(β>α)である。さらに、単位凸形状231の配列ピッチは、Pであり、単位凸形状231の高さ(スクリーンの厚み方向における頂部tから単位凸形状231間の谷底となる部位vまでの寸法)は、hである。
理解を容易にするために、図2等では、単位凸形状231の配列ピッチP、角度α,βは、単位凸形状231の配列方向において一定であるように示している。しかし、本実施形態の単位凸形状231は、実際には、配列ピッチP等が一定であるが、角度αが単位凸形状231の配列方向においてフレネルセンターとなる点Cから離れるにつれて次第に大きくなっている。また、それに伴い高さhも変動している。本実施形態の単位凸形状231は、その配列ピッチPが50〜200μmの範囲で形成され、高さhが0.5〜60μmの範囲で形成され、第1傾斜面232の角度αが0.5〜50°の範囲で形成され、第2傾斜面233の角度βが45〜90°の範囲で形成されている。
なお、これに限らず、配列ピッチPは、単位凸形状231の配列方向に沿って次第に変化する形態等としてもよく、映像光Lを投影する映像源LSの画素(ピクセル)の大きさや、映像源LSの投射角度(反射スクリーン20のスクリーン面への映像光の入射角度)、反射スクリーン20の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜変更可能である。
光吸収層23は、基材層24の映像源側の面に一体に形成されている。光吸収層23は、構成材料として熱可塑性樹脂が用いられ、例えば、ウレタン系樹脂や、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の弾性を有する熱可塑性エラストラマーが用いられるのが望ましい。光吸収層23は、上述の構成材料に着色剤を含有させることによって、暗色系に着色される。この着色剤としては、グレー系や黒色系等の暗色系の染料や顔料等や、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が好適に用いられる。
また、光吸収層23は、単位凸形状231の形状に応じて、プレス成形法等により形成してもよい。このような光吸収層23の場合には、不図示の接合層等を介して、基材層24の映像源側に積層する形態としてもよい。また、押出成形法が可能な場合には、光吸収層23と基材層24とを一体に積層した状態で成形してもよい。
反射層22は、光を反射する作用を有する層である。この反射層22は、光を反射するために十分な厚さを有し、単位凸形状231の第1傾斜面232の少なくとも一部に形成されている。
本実施形態の反射層22は、図2や図3(b)に示すように、第1傾斜面232の一部、すなわち、第1傾斜面232の頂部t側から谷底となる部位vの手前までの間に形成されている。反射層22は、単位凸形状231の配列方向における第1傾斜面232の幅の20%以上の幅で頂部t側から形成されるのが望ましい。これにより、反射スクリーン20の下方側から投射される映像光を、観察者側に適正に反射させることができる。なお、反射層22は、第1傾斜面232の全面に形成されるようにしてもよい。
反射層22は、第1傾斜面232上に、アルミニウム等の光反射性の高い鱗片状の金属薄膜22aが含有された塗料を第1傾斜面232に対してスプレー塗布することによって形成される。この鱗片状の金属薄膜22aは、厚み方向に垂直な面が第1傾斜面232に対して略平行になるように配置されている。ここで、略平行とは、金属薄膜22aの厚み方向に垂直な面が、第1傾斜面232に対して完全に平行な場合だけでなく、第1傾斜面232に対する傾きが−10°〜+10°の範囲にある場合をも含むものをいう。また、鱗片状の金属薄膜22aとは、金属薄膜22aの厚み方向から見た形状(外形形状)が鱗片状であることをいい、この鱗片状とは、鱗状の形状だけでなく、楕円状や、円状、多角形状、薄膜を粉砕して得られる不定形な形状等を含むものをいう。
反射層22は、良好な映像光の反射特性を得るために、その厚みが0.5〜5μmの範囲で形成されるのが望ましい。また、反射層22の金属薄膜22aは、映像光の反射効率を向上させるとともに、反射層22の背面側の光吸収層23が透けて見えてしまうのを防ぐために、複数ある各単位凸形状231の第1傾斜面232上の全面において平均で8層以上、積層されていることが望ましい。
また、反射層22は、入射した映像光を効率よく反射させるために、正反射率Rtが50%<Rt<70%であり、拡散反射率Rdが10%<Rd<50%であることが望ましい。
この反射層22を形成する塗料は、鱗片状の金属薄膜22a、バインダー、乾燥補助剤、制御剤等から構成されている。この塗料は、スプレーガンによる塗布容易性の観点から、粘度が50〜1000[cp](測定温度23度)の範囲内であることが望ましい。
この金属薄膜22aは、鱗片状に形成されたアルミニウムであり、その厚み寸法は、15〜150nmの範囲に、より好ましくは20〜80nmに形成されている。また、金属薄膜22aは、厚み方向に直交する縦方向及び横方向における寸法(以下、縦寸法、横寸法という)の平均値が、1〜3μmに形成されている。
金属薄膜22aは、反射層としての光反射機能の確保の観点から、塗料全体の重量に対して重量比で3〜15%の範囲内で含有されるのが望ましい。
バインダーは、熱硬化性樹脂から構成される透明な接合剤である。本実施形態では、バインダーは、ウレタン系の熱硬化性樹脂を用いるが、これに限定されるものでなく、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いてもよく、また、紫外線硬化性樹脂等を用いてもよい。なお、バインダーは、硬化剤を添加し2液硬化型として使用してもよく、ウレタン系樹脂であれば、ポリイソシアネート等を使用することができ、また、エポキシ系樹脂であれば、アミン類等を使用することができる。
乾燥補助剤は、レンズ層に塗布された塗料の乾燥時間を所定の時間に調整する溶剤であり、いわゆる遅乾溶剤である。本実施形態では、光吸収層23の背面側に塗布された塗料の乾燥までの時間をおよそ1時間となるように、所定の量が塗料に含まれている。乾燥補助剤は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソブチルケトン、3−メトキシ−1−ブチルアセテートの混合溶剤を使用することができる。
制御剤は、塗料に含有される金属薄膜22aの配向を制御する溶剤である。制御剤は、塗料に含まれることによって、金属薄膜22aを第1傾斜面232に対して略平行に配置させることができる。制御剤は、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、アクリルオリゴマー、シリコーン等を使用することができる。
保護層21は、光吸収層23及び反射層22の映像源側(観察者側)に設けられる層であり、透明又は略透明に形成される。この保護層21は、反射スクリーン20の映像源側の最表面を形成している。
保護層21は、光吸収層23及び反射層22を保護するためにハードコート機能を有している。また、保護層21は、映像源LSから入射した光を、反射層22を介して観察者側に適正に反射させるために、低屈折率の材料により形成されている。本実施形態では、保護層21には、ハードコート機能及び低屈折率の特性を有するエポキシアクリレート系樹脂を塗布等することによって形成されている。ここで、保護層の屈折率が低屈折率であるとは、保護層の屈折率が1.490〜1.549であることをいい、これにより、映像源LSから投射された映像光を適正に観察者側に反射させることができる。
本実施形態の保護層21は、光吸収層23及び反射層22の映像源側の面を沿うようにして略一定の厚みで形成されており、その厚みは約5〜15μmで形成されているのが望ましい。保護層21の厚みが5μmより小さい場合、保護層の厚みが薄すぎてしまい、上述のハードコートとしての機能を十分に発揮することができないため望ましくなくい。また、保護層21の厚みが15μmより大きい場合、保護層の厚みが厚くなりすぎてしまい、反射スクリーン全体の重量が重くなりすぎたり、保護層を形成する材料コストが増加したりするため望ましくない。
ここで、光吸収層23は、上述したように、弾性を有する熱可塑性エラストラマーが用いられているため、非常に柔らかく、その硬度は、鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4(1994))で「6B」未満となる。そのため、小さな外力が加わることによって、映像源側に形成された単位凸形状231や、第1傾斜面232に形成された反射層22が傷付いてしまったり、反射層22が第1傾斜面232から容易に剥離してしまったりしてしまい、反射スクリーンの映像源側の面の耐擦傷性が非常に低いものとなる。
そのため、本実施形態の反射スクリーン20では、保護層21をこの光吸収層23及び反射層22の映像源側に設け、反射スクリーン20の映像源側の面の耐擦傷性を向上させ、上述の問題が生じてしまうのを抑制している。
ここで、保護層21は、耐擦傷性をより効果的に向上させる観点から、その厚みや、使用材料を適宜決定して、反射スクリーン20の映像源側の面の硬度が鉛筆硬度試験で「H」以上になるように形成されるのが望ましい。
なお、保護層21は、上述のハードコート機能に加え、防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けることができる。
また、上述の防眩機能や紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能等を有する層を、保護層21と、光吸収層23及び反射層22との間に、さらに別な層として設けてもよい。
図2に戻り、本実施形態の反射スクリーン20へ入射する映像光及び外光の様子を説明する。
図2に示すように、映像源LSから投影された大部分の映像光L1は、反射スクリーン20の下方から入射し、保護層21を透過して光吸収層23の単位凸形状231へ入射する。
そして、映像光L1は、第1傾斜面232上に形成された反射層22によって反射され、観察者O側に向かい、略正面方向へ反射スクリーン20から出射する。従って、映像光L1は、効率よく反射されて観察者Oに届くので、明るい映像を表示できる。
なお、映像光L1が反射スクリーン20の下方から投射され、かつ、角度β(図3(b)参照)が反射スクリーン20の画面上下方向の各点における映像光L1の入射角度よりも大きいので、映像光L1が第2傾斜面233に直接入射することはなく、第2傾斜面233は、映像光L1の反射には影響しない。
一方、照明光等の不要な外光G(G1、G2、G3)は、図2に示すように、主として反射スクリーン20の上方から入射し、保護層21を透過して光吸収層23の単位凸形状231へ入射する。
そして、一部の外光G1は、第1傾斜面232上の反射層22で反射して、主として反射スクリーン20の下方側へ向かうので、観察者O側には直接届かず、また、届いた場合にもその光量は、映像光L1に比べて大幅に少ない。また、一部の外光G2は、光吸収層23の第2傾斜面233へ入射して吸収される。さらに、一部の外光G3は、光吸収層23の第1傾斜面232の反射層22が形成されていない部位へ入射して吸収される。従って、反射スクリーン20では、外光G1、G2、G3による映像のコントラスト低下を抑制することができる。
以上のことから、本実施形態の反射スクリーン20は、明室環境下であっても、コントラストが高く明るく良好な映像を表示できる。
ここで、本実施形態の反射スクリーン20の製造方法の一例について説明する。
図4は、本実施形態の反射スクリーン20の製造方法の一例を説明する図である。
図4(a)に示すように、所定の大きさに裁断された基材層24を準備する。
次に、図4(b)に示すように、基材層24の映像源側となる面上に、紫外線成形法等により、光吸収層23を形成する。
光吸収層23は、基材層24の映像源側の面を、着色剤を含有した熱可塑性樹脂が充填されたサーキュラーフレネルレンズ形状の成形型に押圧し、硬化させた後に成形型から離型する等によって形成される。なお、光吸収層23の形成方法は、適宜選択してよく、この限りではない。
次に、図4(c)に示すように、光吸収層23の映像源側に、スプレーガンにより鱗片状の金属薄膜22aが含有された塗料を吹き付けて反射層22を形成する。塗料の塗布は、スプレーガンを、光吸収層23の画面左右方向に平行移動させながら、画面上下方向の下端部から上端側へ所定の移動ピッチ(例えば、70mmピッチ)で移動させることによって行う。このとき、スプレーガンの向きは、金属薄膜22aを第1傾斜面232に対して略平行に配置させ易くするために、第1傾斜面232に対して略垂直であることが好ましい。
最後に、図4(d)に示すように、光吸収層23及び反射層22の映像源側に、エポキシアクリレート系樹脂を塗布して硬化させ、保護層21を形成し、反射スクリーン20が完成する。
以上より、本実施形態の反射スクリーンは、以下の効果を奏する。
(1)反射スクリーン20は、第1傾斜面232の少なくとも一部に反射層22が形成され、光吸収層23及び反射層22の映像源側の面に低屈折率の材料により形成される保護層21が形成されている。これにより、反射スクリーン20は、光吸収層23や反射層22が傷付いてしまったり、反射層22が第1傾斜面232から剥離してしまったりするのを抑制することができる。特に、光吸収層23の硬度が低いために、傷つきや剥離が生じ易い場合において有効である。
(2)反射スクリーン20は、反射層22が、複数の鱗片状の金属薄膜22aが含有された樹脂により形成されているので、白色樹脂により反射層が形成された反射スクリーンに比して、反射層の正反射率を向上させることができ、映像光の輝度(スクリーンのゲイン)や、コントラストを向上させることができる。
また、反射層22を、ロールコータ方式だけでなく、スプレー塗布によっても形成することができるので、反射スクリーン20の製造効率を向上させることができる。
なお、スプレー塗布により反射層22を形成する場合、回転ローラを第1傾斜面232に密着させる必要が無いため、光吸収層23は、上述の弾性を有する熱可塑性エラストラマー等を使用して硬度を低くして形成される必要がない。そのため、光吸収層23は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂等によって形成されるようにしてもよい。このような場合においても、保護層によって光吸収層や反射層の傷付き等を抑制することができる。
(3)反射スクリーン20は、反射層22が、第1傾斜面232に対して金属薄膜22aが8層以上積層されているので、映像光の反射効率を向上させるとともに、反射層22の背面側の光吸収層23が透けて見えてしまうのを防ぐことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
(変形形態)
図5は、変形形態の反射スクリーン20の層構成を示す図であり、図2に対応する図である。
(1)上述の実施形態において、反射スクリーン20は、保護層21が、光吸収層23及び反射層22の映像源側の面を沿うようにして略一定の厚みで形成される例を示したが。これに限定されるものでない。例えば、保護層21は、図5に示すように、隣り合う単位凸形状231の境界部を埋めるようにして、反射スクリーン20の映像源側の面を略平坦に形成するようにしてもよい。これにより、反射スクリーン20の映像源側の面の硬度をより向上させることができる。
この場合、保護層21は、上述の実施形態よりも層の厚みが厚くなるので、ハードコート機能に加え、防眩機能を設けることが望ましい。なお、この防眩機能は、例えば、微細な凹凸形状(マット形状)をその樹脂膜表面に転写する等して硬化させ、表面に微細凹凸形状が賦形されて形成されることによって実現することができる。
また、保護層21が低屈折率の材料により形成されているので、映像源から投射された映像光を、反射層22を介して適正に観察者側に反射させることができる。
(2)本実施形態の反射層22を形成する塗料に、暗色系材料を含有させるようにしてもよい。これにより、第1傾斜面に平行な方向から反射層22に入射する光や、反射層22に含まれる鱗片状の金属薄膜22aの端縁で乱反射してしまう光の少なくとも一部を吸収することができ、反射スクリーンに表示される映像をより良好にすることができる。
ここで、暗色系材料としては、暗色系の顔料や染料を用いることができ、例えば、カーボンブラック(カーボン粒子)や、繊維状のカーボン、鱗片状のカーボン等を使用することができる。また、暗色系材料は、上述の光反射機能及び光吸収機能を両立させる観点から、塗料全体の重量に対して重量比で10〜30%の範囲内で含有されるのが望ましい。仮に、重量比が10%未満であると、反射層22全体に対して暗色系材料の量が少なくなりすぎてしまい、上述の光の吸収効果を十分に奏することができない。また、重量比が30%より大きいと、反射層22の母材(バインダー)に対する暗色系材料の量が多くなりすぎてしまい、反射層22の光反射機能が低下してしまうため、好ましくない。
(3)本実施形態の反射層22の金属薄膜22aは、鱗片状のアルミニウムを使用する例を説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、銀や、ニッケル等の金属を使用することも可能である。
(4)本実施形態の反射スクリーン20は、画面の平面性を維持するために、ガラス製や樹脂製であり、剛性の高い透明基板層を備える形態としてもよい。
(5)本実施形態では、第1傾斜面232及び第2傾斜面233は、図2等において直線状で示されるように平面状である例を示したが、これに限らず、第1傾斜面232や第2傾斜面233の一部が曲面状となっていてもよい。
また、本実施形態では、単位凸形状231の第1傾斜面232及び第2傾斜面233は、いずれも1つの面からなる例を示したが、これに限らず、例えば、少なくとも一方の面が、複数の面から構成される形態としてもよい。
(6)本実施形態では、反射層22は、鱗片状の金属薄膜22aが含有された塗料をスプレー塗布によって形成される例を示したが、これに限定されるものでない。例えば、反射層22は、塗料が付着した回転ローラを光吸収層23の映像源側の面に押し付けて塗布する、いわゆるロールコータ方式によって形成されるようにしてもよい。
(7)本実施形態では、映像源LSは、鉛直方向において反射スクリーン20(反射スクリーンユニット10)より下方に位置し、映像光Lが反射スクリーン20の下方から斜めに投射される例を示したが、これに限らず、例えば、映像源LSが、鉛直方向において反射スクリーン20より上方に位置し、映像光Lが反射スクリーン20の上方から斜めに投射される形態としてもよい。
なお、上述の実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態等によって限定されることはない。
1 映像表示システム
10 反射スクリーンユニット
20 反射スクリーン
21 保護層
22 反射層
22a 金属薄膜
23 光吸収層
231 単位凸形状
232 第1傾斜面
233 第2傾斜面
24 基材層
30 支持板
40 接合層
LS 映像源

Claims (7)

  1. 映像源から投射された映像光を反射して画面に表示する反射スクリーンであって、
    第1傾斜面及び第2傾斜面を備え、映像源側に凸となる単位凸形状が複数配列され、光を吸収する光吸収層と、
    前記第1傾斜面の少なくとも一部に形成され、光を反射する反射層と、
    前記光吸収層及び前記反射層の映像源側の面に屈折率が1.490〜1.549である低屈折率の材料により形成され、前記光吸収層及び前記反射層を保護する保護層と、
    を備え
    前記保護層は、隣り合う前記単位凸形状の境界部を埋めるようにして形成されており、映像源側の面が平坦に形成されている反射スクリーン。
  2. 請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
    前記光吸収層の硬度は、鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4(1994))で「6B」未満であること、
    を特徴とする反射スクリーン。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
    前記反射層は、暗色系材料を含有すること、
    を特徴とする反射スクリーン。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
    映像源側の面の硬度が鉛筆硬度試験で「H」以上であること、
    を特徴とする反射スクリーン。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の反射スクリーンにおいて、
    前記反射層は、複数の鱗片状の金属薄膜が含有された樹脂により形成されていること、
    を特徴とする反射スクリーン。
  6. 請求項5に記載の反射スクリーンにおいて、
    前記反射層は、前記第1傾斜面に対して前記金属薄膜が8層以上積層されていること、
    を特徴とする反射スクリーン。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の反射スクリーンと、
    前記反射スクリーンに映像光を投射する映像源と、
    を備える映像表示システム。
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