以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
<第1の実施の形態>
以下、図1〜図5を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態における透視性電極31について説明する。図1は、観察者側から見た場合の透視性電極31を示す平面図である。
ここでは、透視性電極31が、投影型の静電容量結合方式のタッチパネル用に構成される例について説明する。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本明細書では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネルは、導電性のパターンを有しており、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接近することにより、外部の導体とタッチパネルの導電性のパターンとの間でコンデンサ(静電容量)が形成される。そして、このコンデンサの形成に伴った電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接近している位置の位置座標が特定される。
図1に示すように、透視性電極31は、透明基材32と、透明基材32上に設けられた複数の導電パターン41と、を備えている。図1に示すように、各導電パターン41は長方形の輪郭線形状をなし、該長方形の長辺は図1の上下方向にそれぞれ帯状に延びている。また、複数の導電パターン41は、各導電パターン41が延びる方向に直交する方向において、一定の配列ピッチで並べられている。導電パターン41の配列ピッチは、タッチ位置の検出に関して求められる分解能に応じて定められるが、例えば数mmである。
図1に示すように、透視性電極31の透明基材32は、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周辺に位置する矩形枠状の非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。アクティブエリアAa1および非アクティブエリアAa2は、それぞれ、後述するタッチ位置検出機能付き表示装置10の表示装置のアクティブエリアおよび非アクティブエリアに対応して区画されたものである。
上述の導電パターン41は、アクティブエリアAa1内に配置されている。また非アクティブエリアAa2には、各導電パターン41に電気的に接続された複数の額縁配線43と、透明基材32の外縁近傍に配置され、各額縁配線43に電気的に接続された複数の端子部44と、が設けられている。
次に、図2(a)を参照して、導電パターン41のパターン形状について説明する。図2(a)は、図1において符号IIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を示す平面図である。図2(a)に示すように、導電パターン41は、遮光性および導電性を有する導線51であって、各導線51の間に開口部51aが形成されるように網目状に配置された導線51から構成されている。
導電パターン41全体の面積のうち開口部51aによって占められる面積の比率(以下、開口率と称する)が十分に高くなり、これによって、表示装置からの映像光が適切な透過率で透視性電極31のアクティブエリアAa1を透過することができる限りにおいて、導線51の寸法や形状が特に限られることはない。例えば図2(a)に示す例において、導電パターン41は、矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている。開口率は、表示装置から放出される映像光の特性などに応じて適宜設定される。
導線51の線幅は、求められる開口率、導電パターンの不可視性などに応じて設定されるが、例えば導線51の幅は1μm〜10μmの範囲内、より好ましくは2μm〜7μmの範囲内に設定されている。また、互いに平行に延びる各導線51の配列ピッチP1も、求められる開口率などに応じて設定される。これによって、観察者が視認する映像に対して導線51が及ぼす影響を、無視可能な程度まで低くすること、即ち十分な導電パターンの不可視性を得ることができる。
なお図2(a)においては、導電パターン41が、開口部形状が矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている例を示したが、これに限られることはない。例えば図2(b)に示すように、導電パターン41は、開口部形状が菱形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されていてもよい。又、本実施形態に於いては、図2(a)及び図2(b)に示す如く導電パターン41の開口部51aは導電パターン41の延びる方向と直交方向(同図の左右方向)の配列個数が2個となっているが、本発明に於ける該配列個数は2個にのみ限定されるわけでは無く、タッチパネルの位置検知の分解能、感度、導電パターンの不可視性等に応じて適宜個数に設計される。
次に、図3および図4を参照して、透視性電極31の層構成について説明する。図3は、透視性電極31を図2(a)のIII線に沿って切断した場合を示す断面図であり、図4は、図3に示す透明基材32および導線51を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、透視性電極31は、透明基材32と、透明基材32の一方の面上に設けられた導線51から成る導電パターン41と、を含んでいる。なお、本明細書において「透明」とは、光透過率が十分に高く、その向こう側が透けて見える性質を意味する。
具体的には、例えば可視光透過率が50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
透明基材32は、上述の導電パターン41や額縁配線43などのパターンや配線を支持するためのものである。この透明基材32は、表示装置からの映像光を透過させることができる基材フィルム33を含んでいる。本発明に於いて最低限の構成としては透明基材32は基材フィルム33のみから構成されていても良いが、本実施形態に於いては図4に示すように、透明基材32は、基材フィルム33と導電パターン41の導線51との間に設けられたアンダーコート層35a、基材フィルム33のうち導線51に向かい合う側とは反対の側に設けられたアンダーコート層35b、及び、基材フィルム33と各アンダーコート層35a,35bとの間に介在された、基材フィルム33とアンダーコート層35aおよびアンダーコート層35bとの間の密着性を向上させるためのプライマー層34aおよびプライマー層34bからなる。
基材フィルム33を構成する材料としては、透明性および可撓性を有する材料が用いられ、例えば合成樹脂(プラスチック)が用いられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、またはトリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂等の可撓性及び透明性を有する樹脂が用いられる。基材フィルムの厚みは20〜5000μm程度とする。
アンダーコート層35a,35bは、擦り傷などに対する耐擦傷性を高めるという機能や、透視性電極31の透過率や反射率などの光学特性を調整するという機能を実現するために設けられる層である。
耐擦傷性を高める機能が求められる場合、アンダーコート層35a,35bを構成する材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂などの、十分な硬度を有する材料が用いられる。この場合、アンダーコート層は、いわゆるハードコート層として機能することになる。好ましくは、同線形成層52A、52B、52Cを形成する際に加工機中のガイドローラ等による基材フィルム33の傷つきを低減する為に、該アクリル樹脂中に粒径0.1〜5μmの微粒子を添加する。該微粒子は、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等からなる無機物粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、弗素樹脂、メラミン樹脂等の有機物粒子からなるものが使用できる。又、該微粒子の添加量は、該アンダーコート層組成物中に0.1〜30質量%程度とすることが出来る。該アンダーコート層の厚みは、乾燥硬化状態で1〜5μm程度とすることが出来る。
なお、アンダーコート層35a,35bのうち基材フィルム33の観察者側に位置するアンダーコート層のことを「観察者側アンダーコート」と称し、反対側に位置するアンダーコート層のことを「表示装置側アンダーコート」と称することもある。なお後述するように、導線51は、透明基材32の観察者側に位置することもあれば、透明基材32の表示装置側に位置することもある。従って、アンダーコート層35aが「観察者側アンダーコート」になりアンダーコート層35bが「表示装置側アンダーコート」になることもあれば、アンダーコート層35bが「観察者側アンダーコート」になりアンダーコート層35aが「表示装置側アンダーコート」になることもある。
次に、導線51の層構成について説明する。図4に示すように、導線51は、透明基材32側から順に配置された本体層53および低反射層54を有する導線形成層52Aを含んでいる。
本体層53は、導線51における導電性を主に実現するための層である。本発明に於けるこの本体層53は、その厚みが例えば0.3μm以下になるよう、より具体的には0.05μm〜0.2μmの範囲内になるよう構成されている。これによって、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。このため、透視性電極31が取り付けられる表示装置における視認性を十分に確保することができる。
一方、本体層53の厚みを小さくすることは、導線51の電気抵抗値が大きくなってしまうことを導き得る。ここで本実施の形態においては、本体層53を構成する材料として、その比抵抗が所望の値以下である金属材料を用いており、例えばその比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料を用いている。これによって、導線51の電気抵抗値を十分に低くすることができる。例えば、本体層53のシート抵抗値を0.3Ω/□以下にすることができる。本体層53を構成するための、その比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料としては、本発明に於いては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属を90重量%以上含む材料(金属単体、金属合金等)を用いることが出来る。本実施形態に於いては、99重量%の銅を含む材料を用いる。
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、銅などの金属材料は、高い導電性を有する一方で、金属光沢を示す。このため、未処理の金属材料が導線51として用いられると、表示装置からの映像光の視認性が、導線の金属光沢によって妨げられることになる。特に銅は、銅に特有の赤味を帯びた色を示すため、銀などのその他の金属材料に比べて目立ち易く、このため表示装置からの映像光の視認性がより妨げられることになる。
このような銅特有の金属光沢を和らげるため、例えば上述の特許文献1においては、導線に酸化処理を施して導線の表面に酸化銅からなる黒化処理層を形成し、これによって導線の表面を黒色化(黒化)することが提案されている。しかしながら、黒化処理によって形成される黒化処理層にはある程度の厚みが必要である。具体的には、特許文献1においては、黒化処理層の好ましい厚みとして0.2μm以上2μm以下という範囲が示されている。また、導線の厚みとして、主に2μmという値が採用されている。このため、黒化処理層が形成された導線においては、導線の表面だけでなく導線の側面においても、無視できない程度の反射が生じたり、または導線の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまったりすることが考えられる。
このような課題を考慮し、本件発明者らは、導線51の本体層53を黒化処理するのではなく、本体層53の面上に、本体層53に比べて金属光沢が抑制された薄い低反射層54を設けることにより、導線51の金属光沢を軽減することを提案する。以下、低反射層54について説明する。
低反射層54は、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層である。低反射層54の膜厚は、10nm〜60nmの範囲内であり、例えば40nmである。
低反射層54の反射Y値(視感反射率とも称する)は、30%以下であり、好ましくは27%以下である。ここで、反射Y値は、JIS Z8722の規定による値であり、波長550nm近辺の光に対する反射率を意味する。
一般に、窒化銅からなる層の表面が大気に曝される場合、窒化銅からなる層の表面は大気中の酸素と反応する(自然酸化する)ことで酸素原子を含み得る。しかしながら、本件発明者らの知見によれば、窒化銅からなる層のうち自然酸化し得る窒化銅は、表面から0.1nm程度までの深さにある窒化銅である。従って、窒化銅からなる層が表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む場合、その酸素原子は、表面が自然酸化したことに由来する酸素原子では無く、例えば成膜時等において窒化銅からなる層に意図的に添加された酸素原子であると考えることができる。すなわち、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層とは、酸素原子の添加方法は特に限定されないが、意図的に酸素原子が添加された窒化銅からなる層を意味する。なお、「表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層」という表現は、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含むとともに表面から5nm未満の深さにも酸素原子を含む窒化銅からなる層を当然含む。
このような窒化銅を用いて構成される低反射層54においては、その金属光沢が、本体層53における金属光沢に比べて軽減されており、特に、銅に特有の赤味を帯びた色が軽減されている。また、このような窒化銅を用いて構成される低反射層54は、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含まない窒化銅からなる層に比べて、反射Y値が顕著に低減されている。このため、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制することができる。
また、低反射層54は、本体層53に比べて小さな厚みを有しており、具体的には、低反射層54の厚みは、10nm〜60nmの範囲内になっているため、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。
また、低反射層54の厚みを10nm〜60nmの範囲内に設定することによっても、導線51における光の反射率を低くすることができる。この理由としては、限定はされないが例えば、低反射層54において生じる薄膜干渉を挙げることができる。薄膜干渉とは、低反射層54の一方の面で反射された光と、低反射層54の他方の面で反射された光とが干渉するという現象である。低反射層54の厚みを上述の10〜60nmの範囲内に設定することにより、反射光を弱めるように薄膜干渉が生じ、これによって、導線51における光の反射率が低減されることが考えられ得る。
上述のような薄い低反射層54を形成するための方法が特に限られることはなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム法などの公知の薄膜形成法を用いることができる。例えばスパッタリング法が用いられる場合、所定の分圧に制御された窒素ガスおよび酸素ガスが存在する環境下で、銅からなるターゲットに放電電力を印加することによって、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層を得ることができる。
なお、上述のアンダーコート層35aは、複数の層から構成されていてもよい。例えば、図示はしないが、アンダーコート層35aは、第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層と基材フィルム33との間に設けられた第2アンダーコート層と、を含んでいてもよい。この場合、好ましくは、第1アンダーコート層の屈折率は、1.58〜1.75の範囲内になっており、第2アンダーコート層の屈折率は、1.50〜1.60の範囲内になっており、かつ、第1アンダーコート層の屈折率は、第2アンダーコート層の屈折率よりも大きくなっている。これによって、アンダーコート層35aに、上述のハードコート層としての機能だけでなく、透過率や反射率などの光学特性を調整する機能を持たせることができる。第1アンダーコート層を構成する材料としては、アクリル樹脂などのベースとなる樹脂材料の中に、酸化ニオブやジルコニウムなどの高屈折率材料からなる粒子やフィラーを分散させたものが用いられ得る。また、第2アンダーコート層を構成する材料としては、アクリル樹脂などが用いられ得る。
同様に、アンダーコート層35bも、複数の層から構成されていてもよい。例えば、図示はしないが、アンダーコート層35bは、第1アンダーコート層と、第1アンダーコート層と基材フィルム33との間に設けられた第2アンダーコート層と、を含んでいてもよい。この場合、好ましくは、第1アンダーコート層の屈折率は、1.58〜1.75の範囲内になっており、第2アンダーコート層の屈折率は、1.50〜1.60の範囲内になっており、かつ、第1アンダーコート層の屈折率は、第2アンダーコート層の屈折率よりも大きくなっている。これによって、アンダーコート層35aの場合と同様に、アンダーコート層35bに、上述のハードコート層としての機能だけでなく、透過率や反射率などの光学特性を調整する機能を持たせることができる。第1アンダーコート層および第2アンダーコート層を構成する材料としては、アンダーコート層35aの場合と同様の材料が用いられ得る。
なお、本明細書において示されている屈折率は、特に断らない限り、波長500nmの光に対する屈折率を意味している。
図1に戻って、導電パターン41に接続されている額縁配線43および端子部44は、導電パターン41からの信号を透視性電極31の外部に取り出すために設けられたものである。信号を適切に伝達することができる限りにおいて、額縁配線43および端子部44の具体的な構成が特に限られることはない。例えば額縁配線43および端子部44は、導線51と同一の層構成で導線51と同時に形成されるものであってもよい。
次に、以上のような構成からなる透視性電極31を製造する方法について、図5(a)〜図5(d)を参照して説明する。
はじめに図5(a)に示すように、透視性電極31を作製するための元材としての積層体60(ブランクとも呼ばれる)を準備する。積層体60は、透明基材32と、透明基材32上に設けられた導線形成層52Aと、を備えている。透明基材32は、上述のように、基材フィルム33と、基材フィルム33の両側の面にそれぞれ設けられたアンダーコート層35aおよびアンダーコート層35bと、基材フィルム33とアンダーコート層35aおよびアンダーコート層35bとの間に設けられたプライマー層34aおよびプライマー層34bと、を含んでいる。また、導線形成層52Aは、透明基材32側から順に配置された本体層53および低反射層54を含んでいる。
以下、積層体60を作製する方法の一例について説明する。はじめに、両側の面にプライマー層34aおよびプライマー層34bが設けられた長尺状の基材フィルム33を準備する。次に、プライマー層34a上にアンダーコート層35aを形成し、プライマー層34b上にアンダーコート層35bを形成する。例えば、アクリル樹脂を含む塗工液を、コーターを用いてプライマー層34a,34b上にコーティングすることにより、アンダーコート層35a,35bを形成することができる。この際、コーターとしては、好ましくは、アンダーコート層35a,35bの平坦性を十分に確保することができるものが用いられ、例えばダイコーターが用いられる。なお、アンダーコート層35a,35bを形成するための塗工液には、アンダーコート層35a,35bの平坦性を高めるためのレベリング剤が含まれていてもよい。これによって、例えば、アンダーコート層35a上に導線51の層を形成する際にピンホールなどの欠陥が生じてしまうことを抑制することができる。
次に、透明基材32上に本体層53および低反射層54を順に形成する。本体層53および低反射層54を形成するための方法としては、上述のように、スパッタリング法などの薄膜形成法を用いることができる。
積層体60を準備した後、図5(b)に示すように、導線形成層52A上に感光性レジスト層71を所定のパターンで形成する。感光性レジスト層71は、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。感光性レジスト層71のタイプが特に限られることはない。例えば光溶解型の感光性レジスト層が用いられてもよく、若しくは光硬化型の感光性レジスト層が用いられてもよい。ここでは、光溶解型の感光性レジスト層が用いられる例について説明する。
感光性レジスト層71は、導線51のパターンに対応したパターンで形成されている。
感光性レジスト層71は、例えば、はじめに、積層体60の表面上にコーターを用いて感光性レジスト材料を全面にコーティングし、次に、感光性レジスト材料を所定のパターンで露光して現像することによって、所定のパターン形状の感光性レジスト層71が形成される。
次に、図5(c)に示すように、感光性レジスト層71をマスクとして低反射層54および本体層53をエッチングする。なお上述のように、低反射層54および本体層53のいずれも、銅を含むよう構成されている。このため、銅を溶解させることができるエッチング液を用いて、低反射層54および本体層53を同時にエッチングすることができる。
エッチング液としては、例えば塩化第2鉄水溶液が用いられる。
次に、低反射層54上に残っている感光性レジスト層71に対して、これを溶解除去する薬液によって洗浄して脱膜処理。これによって、図5(d)に示すように、感光性レジスト層71を除去することができる。このようにして、本体層53および低反射層54を有する導線形成層52Aをパターン形成し、これから構成された導線51を備える透視性電極31を得ることができる。
ここで本実施の形態によれば、上述のように、導線51は、90重量%以上の銅を含む本体層53と、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる低反射層54と、を含んでいる。このため、銅の金属光沢に起因して、赤味を帯びた光が観察者に到達してしまうことを、低反射層54によって抑制することができる。また、低反射層の膜厚が10nm〜60nmであり、低反射層の反射Y値が30%以下、好ましくは27%以下であるため、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制することができる。さらに、本体層53および低反射層54のいずれもが銅を含むため、積層体60から透視性電極31を作製する際、銅を選択的に溶かすことができるエッチング液を用いることにより、積層体60の本体層53および低反射層54を同時にエッチングして導線51を形成することができる。このため、透視性電極31を作製するために必要になる工数を小さくすることができる。また本実施の形態において、導線51の本体層53の厚みは、0.3μm以下になっている。このため、導線51の幅に対する導線51の厚みの比率を小さくすることができ、これによって、導線51の側面に光の反射が生じることや、導線51の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまうことを抑制することができる。従って、本実施の形態によれば、タッチ位置の高い検出精度を確保しながら、映像の視認性を十分に確保することができる。
<第2の実施の形態>
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6に示す第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図6は、本実施の形態による透視性電極31を拡大して示す断面図であり、上述の第1の実施の形態における図4に対応する図である。図6に示すように、本実施の形態において、導線51は、透明基材32側から順に配置された低反射層54および本体層53を有する導線形成層52Bを含んでいる。
本体層53および低反射層54は、透明基材32との間の位置関係が異なる点を除いて、上述の第1の実施の形態における本体層53および低反射層54と同一である。
低反射層54は、窒化銅から構成されているため、アンダーコート層35aに対して高い密着性を備えている。本実施の形態によれば、本体層53と透明基材32との間に低反射層54が設けられることで、導線51と透明基材32との間の密着性を向上させることができる。
図6に示すように、本体層53に対して低反射層54とは逆側には防錆層55が配置されていることが好ましい。
防錆層55は、本体層53の表面が錆びて変質し、これによって本体層53の電気的特性などが低下してしまうことを防ぐために設けられるものである。防錆層55を構成する材料としては、本体層53を構成する材料よりも錆びにくいものが用いられる。なお防錆層55は、本体層53の表面が錆びることを防ぐという機能だけでなく、導線51による光の反射を防ぐという機能をも発揮するよう構成されていてもよい。すなわち防錆層55は、その金属光沢が、本体層53における金属光沢に比べて軽減されるよう構成されていてもよい。
防錆層55を構成するための具体的な材料は、防錆性や反射防止特性など、防錆層55に対して求められる特性に応じて適宜選択される。例えば防錆層55は、CuNi,CuCr,CuWおよびCuTiからなる群から選択される少なくとも1種の銅化合物を含んでいる。このうちCuNiは、例えば、20重量%のNiを含む、いわゆる白銅として構成されていてもよい。
本実施の形態によれば、導線51は、本体層53と透明基材32との間に設けられた低反射層54によって透明基材32の側から入射する光に対する反射を抑制することが出來る。即ち、本実施形態の透視性電極31は透明基材32側からの入射光に対する反射を抑制したい用途(乃至は使用形態)に好適である。又、本実施形態では、これに加えて、本体層53の面のうち透明基材32に向かい合う面とは反対側の面上に設けられた防錆層55を含んでいる。このため、本体層53の表面が錆びて変質し、これによって本体層53の電気的特性などが低下してしまうことを防ぐことができる。また、防錆層55が反射防止特性をも有する場合、光の反射が生じることを本体層53の両面において抑制することができる。このため、導線51の高い導電性を維持し、かつ映像の視認性を十分に確保することができる。
<第3の実施の形態>
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7に示す第3の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図7は、本実施の形態による透視性電極31を拡大して示す断面図であり、上述の第1の実施の形態における図4に対応する図である。図7に示すように、本実施の形態において、導線51は、透明基材32側から順に配置された低反射層54、本体層53および低反射層54を有する導線形成層52Cを含んでいる。
本体層53および低反射層54は、透明基材32との間の位置関係が異なる点を除いて、上述の第1の実施の形態における本体層53および低反射層54と同一である。
低反射層54は、窒化銅から構成されているため、アンダーコート層35a、特に紫外線硬化型アクリル樹脂の硬化物から成るアンダーコート層に対して高い密着性を備えている。即ち、本実施の形態によれば、本体層53と透明基材32との間に低反射層54が設けられることで、導線51と透明基材32との間の密着性を向上させることができる。
本実施の形態によれば、導線51は、本体層53と透明基材32との間に設けられた低反射層54に加えて、本体層53の面のうち透明基材32に向かい合う面とは反対側の面上に設けられた低反射層54を含んでいる。このため、光の反射が生じることを本体層53の両側において抑制することができる。このことにより、映像の視認性を十分に確保することができる。
<第4の実施の形態>
次に、図8〜図12を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、上述の透視性電極31を備えるタッチパネルと表示装置とを組み合わせることによって得られるタッチ位置検出機能付き表示装置について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図8は、タッチ位置検出機能付き表示装置10を示す展開図である。図8に示すように、タッチ位置検出機能付き表示装置10は、タッチパネル30と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置15とを組み合わせることによって構成されている。
図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部(図示せず)と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができるアクティブエリアA1と、アクティブエリアA1を取り囲むようにしてアクティブエリアA1の外側に配置された非アクティブエリア(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部の制御信号に基づいて、所定の映像を表示面16aに表示する。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置としての役割を担っている。
なお、図8に示すように、タッチパネル30の観察者側、すなわち表示装置15とは反対の側に、透光性を有する保護板12がさらに設けられていてもよい。保護板12は例えば、タッチパネル30の観察者側の面に接着層などによって接着されている。この保護板12は、指などの外部導体との接触によってタッチパネル30のパターンや表示装置15が損傷することを防ぐためのものであり、いわゆる前面板とも称されるものである。
図8に示すように、タッチパネル30は、表示装置15の表示面16aに、例えば接着層(図示せず)を介して接着されている。このタッチパネル30は、2枚の透視性電極31を組み合わせることによって構成されている。図8においては、観察者側に配置された透視性電極が符号31Aで表されており、透視性電極31Aよりも表示装置側に配置された透視性電極が符号31Bで表されている。以下の説明において、符号31Aが付された透視性電極を第1透視性電極31A、符号31Bが付された透視性電極を第2透視性電極31Bとも称する。
図9は、観察者側から見た場合のタッチパネル30を示す平面図である。図9においては、第1透視性電極31Aの構成要素が実線で表され、第2透視性電極31Bの構成要素が点線で表されている。
図9に示すように、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bはそれぞれ、所定の方向に延びる複数の導電パターン41を備えている。ここで、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bは、各々の導電パターン41が互いに交差する方向に延びるよう、配置されている。例えば、第1透視性電極31Aは、その導電パターン41が第1方向D1に沿って延びるよう、配置されている。一方、第2透視性電極31Bは、その導電パターン41が、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延びるよう、配置されている。
図10は、図9において符号XVIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を拡大して示す平面図である。図10に示すように、第1透視性電極31Aの導電パターン41および第2透視性電極31Bの導電パターン41はそれぞれ、網目状に配置された導線51から構成されている。
図11は、タッチパネル30を図10のXVII線に沿って切断した場合を示す断面図である。図11に示すように、タッチパネル30は、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが透明基材32の観察者側に位置するよう、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bを組み合わせることによって構成されている。なお、第1透視性電極31Aと第2透視性電極31Bとの間には接着層38などが介在されていてもよい。
図12は、図11に示すタッチパネル30の一部を拡大して示す断面図である。図12に示すように、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51はいずれも、上述の導線形成層52Aを含んでいる。ここで図12に示すように、導線形成層52Aは、本体層53と、本体層53の観察者側に設けられた低反射層54と、を含んでいる。このため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。
また、上述のように、導線形成層52Aの本体層53は、その厚みが0.2μm以下になるよう構成されている。このため、透明基材32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した光が導線形成層52Aの側面によって反射してしまうことを抑制することができる。このことにより、導線51の側面が観察者から視認されてしまうことや、導線51の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまうことを抑制することができる。従って、映像の視認性を向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した本実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図12においては、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが導線形成層52Aを含む例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1透視性電極31Aの導線51は、上述の導線形成層52Bまたは導線形成層52Cを含んでいてもよい。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。
例えば図13には、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが導線形成層52Bを含む例が示されている。図13に示すように、導線形成層52Bは、本体層53と、本体層53の観察者側に設けられた防錆層55と、を含んでいる。このため、本体層53の表面が錆びて変質し、これによって本体層53の電気的特性などが低下してしまうことを防ぐことができる。また、防錆層55が反射防止特性をも有する場合、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
また、導線形成層52Bは、本体層53の表示装置側に設けられた低反射層54を含んでいる。このため、タッチパネル30に入射した表示装置15からの映像光が導線51によって反射されて表示装置15側に戻り、その後、表示装置15の構成要素によって再び反射されてノイズ光として観察者に到達してしまうことを抑制することができる。
また図14には、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが導線形成層52Cを含む例が示されている。図20に示すように、導線形成層52Cは、本体層53と、本体層53の観察者側および表示装置側の両方にそれぞれ設けられた低反射層54と、を含んでいる。このため、光の反射が生じることを本体層53の両側において抑制することができる。このことにより、映像の視認性を十分に確保することができる。
また上述の本実施の形態および上述の各変形例において、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが透明基材32の観察者側に位置する例を示したが、これに限られることはない。例えば図15に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、透明基材32の観察者側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、透明基材32の表示装置側に位置していてもよい。
図15に示す例においても、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層の種類が特に限られることはない。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。なお、図15に示す例において、第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層としては、好ましくは導線形成層52Bまたは導線形成層52Cが採用される。この場合、導線51の本体層53と透明基材32との間に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第2透視性電極31Bの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
また図16に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、透明基材32の表示装置側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、透明基材32の観察者側に位置していてもよい。
図16に示す例においても、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51を構成する導線形成層の種類が特に限られることはない。すなわち、第1透視性電極31Aの導線51は、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。同様に、第2透視性電極31Bの導線51も、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。なお、図16に示す例において、第1透視性電極31Aの導線51を構成する導線形成層としては、好ましくは導線形成層52Bまたは導線形成層52Cが採用される。この場合、導線51の本体層53と透明基材32との間に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第1透視性電極31Aの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
次に、導線51が透明基材32の表示装置側に設けられている場合における、導線51の断面形状の好ましい一例について、図17を参照して説明する。なお、図17においては、導線51が導線形成層52Cから構成されている例について説明するが、これに限られることはなく、導線51が導線形成層52Aまたは導線形成層52Bから構成されていてもよい。
図17に示すように、導線51の導線形成層52Cは、表示装置15に向かうにつれて先細になるテーパ形状を有している。この場合、透明基材32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した外光Lは、導線形成層52Cのテーパ形状のため、導線51の側面に入射することなく表示装置15側へ抜けていくことができる。このため、外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことをさらに抑制することができる。
導線形成層52Cの具体的なテーパ形状は、想定される外光の傾斜の程度などに応じて適切に設定されるが、例えば、透明基材32の法線方向と導線51の側面とが成す角は10°〜30°の範囲内となっている。
なお、上述した本実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
<第5の実施の形態>
次に図18〜図20を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、透明基材32の両側に導線51が設けられる例について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図18に示すように、透視性電極31は、透明基材32と、透明基材32の観察者側の面(第1面)32a上に設けられた導線51と、透明基材32の表示装置側の面(第2面)32b上に設けられた導線51と、を備えている。第1面32a側の導線51からなる導電パターン41および第2面32b側の導線51からなる導電パターン41は、互いに交差するように設けられている。例えば、同図に於いては、第1面32a上の導電パターン41は紙面と直交方向に、又第2面32b上の導電パターン41は紙面と並行方向に延びている。このため本実施の形態によれば、1枚の透視性電極31によってタッチパネル30を構成することができる。
図19は、図18に示す透視性電極31の一部を拡大して示す断面図である。図19に示すように、透明基材32の第1面32a上に設けられた導線51は、上述の導線形成層52Cを含んでいる。また、透明基材32の第2面32b上に設けられた導線51も、上述の導線形成層52Cを含んでいる。このため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。
図19においては、透明基材32の第1面32a上に設けられる導線51が導線形成層52Cを含み、透明基材32の第2面32b上に設けられる導線51も導線形成層52Cを含む例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、透明基材32の第1面32a上に設けられる導線51は、上述の導線形成層52Aまたは導線形成層52Bを含んでいてもよい。すなわち、透明基材32の第1面32a上に設けられる導線51は、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。同様に、透明基材32の第2面32b上に設けられる導線51も、導線形成層52A、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cのいずれによって構成されていてもよい。
好ましくは、透明基材32の第2面32b上に設けられる導線51を構成する導線形成層としては、導線形成層52Bまたは導線形成層52Cが採用される。この場合、導線51の本体層53と透明基材32との間に低反射層54が存在するため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が、第2透視性電極31Bの導線51の本体層53によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。
なお、上述した本実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
中波の交流電源(以下、MF電源とも略稱する)に電気的に接続された銅のターゲット3台と、直流電源(以下、DC電源とも略稱する)に電気的に接続された銅のターゲット1台とを含むスパッタリング装置内において基材フィルムを8m/minの搬送速度で搬送しながら、スパッタリング装置内にアルゴンガス、窒素ガスおよび酸素ガスを、窒素ガスと酸素ガスとの流量(sccm)の比が97.3:2.7となるように導入するとともに、3台の銅のターゲットに印加するMF放電電力と1台の銅のターゲットに印加するDC放電電力との比が10.1kW:4.2kWとなるように各ターゲットにMF放電電力またはDC放電電力を印加し、酸素原子を含む窒化銅からなる第1層を厚さ50μmの2軸延伸PETフィルムからなる基材フィルム上に形成した。次に、スパッタリング装置内にアルゴンガスを導入しながら、窒素ガスおよび酸素ガスを導入せずに、3台の銅のターゲットに印加するMF放電電力と1台の銅のターゲットに印加するDC放電電力との比が10.2kW:4.1kWとなるように各ターゲットにMF放電電力またはDC放電電力を印加し、銅からなる第2層を窒化銅からなる第1層上に形成した。次に、スパッタリング装置内にアルゴンガス、窒素ガスおよび酸素ガスを下表1に記載の流量で導入するとともに、ターゲットに同表1に記載のMF放電電力のみを印加し、酸素原子を含む窒化銅からなる第3層を銅からなる第2層上に形成した。このようにしてサンプル1−A〜サンプル1−Mを用意した。
サンプル1−A〜サンプル1−Cは、同一の条件で作製されたサンプルであり、下表1に示すように、基材フィルム(PETフィルム)上に上述した条件で1層及び第2層を形成し、更に、窒素ガス97.3%、酸素ガス2.7%の流量(sccm)比の下でスパッタリングを実施し、窒化銅からなる40nmの膜厚の第3層を第2層上に形成したサンプルである。
また、サンプル1−D及びサンプル1−Eは、同一の条件で作製されたサンプルであり、既に一方の面上に成膜が行われた基材フィルム(PETフィルム)の他方の面上に上述した条件で1層及び第2層を形成し、更に、窒素ガス98.6%、酸素ガス1.4%の流量(sccm)比の下でスパッタリングを実施し、窒化銅からなる40nmの膜厚の第3層を形成したサンプルである。これらのサンプルは、下表1に示すように、サンプル1−A〜サンプル1−Cに対して酸素流量が半分になっているが、これは、サンプル1−A〜サンプル1−Cとは異なるMF放電電力が採用されていることに伴うものであり、当該サンプル1−A〜サンプル1−Cと同等の膜質を実現させるべく決定されている。
次に、サンプル1−Fは、表1に示すように、サンプル1−A〜サンプル1−Cと比較して、酸素ガスの流量を50%減少させて第3層の成膜を行った点のみにおいて異なり、その他においてサンプル1−A〜サンプル1−Cと同様の条件にて第3層を第2層上に成膜して得られたサンプルである。また、サンプル1−Gは、表1に示すように、サンプル1−D及びサンプル1−Eと比較して、酸素ガスの流量を50%増加させて第3層の成膜を行った点のみにおいて異なり、その他においてサンプル1−A〜サンプル1−Cと同様の条件にて第3層を第2層上に成膜して得られたサンプルである。
次に、サンプル1−H及びサンプル1−Iは、表1に示すように、サンプル1−A〜サンプル1−Eと同様の条件で得られたサンプルであるが、膜厚を20%減少させて32nmとした点のみにおいてサンプル1−A〜サンプル1−Eと異なる。膜厚の減少は、基材フィルム(PETフィルム)の搬送速度を調整する(速くする)ことにより実現されている。尚、後述の各サンプルにおいても、同様にして膜厚を減少させている。
次に、サンプル1−Jは、表1に示すように、サンプル1−A〜サンプル1−Cと比較して、酸素ガスの流量を2倍にして第3層を第2層上に成膜した点と、膜厚を20%減少させて32nmとした点とにおいて異なるサンプルであり、その他の点においてサンプル1−A〜サンプル1−Cと同一となっている。また、サンプル1−Kは、表1に示すように、サンプル1−D及びサンプル1−Eと比較して、酸素ガスの流量を2倍にして第3層を第2層上に成膜した点と、膜厚を20%減少させて32nmとした点とにおいて異なるサンプルであり、その他の点においてサンプル1−D及びサンプル1−Eと同一となっている。
次に、サンプル1−Lは、表1に示すように、サンプル1−A〜サンプル1−Cと比較して、酸素ガスの流量を1.5倍にして第3層を第2層上に成膜した点と、膜厚を15%減少させて34nmとした点とにおいて異なるサンプルであり、その他の点においてサンプル1−A〜サンプル1−Cと同一となっている。また、サンプル1−Mは、表1に示すように、サンプル1−D及びサンプル1−Eと比較して、酸素ガスの流量を1.5倍にして第3層を第2層上に成膜した点と、膜厚を15%減少させて34nmとした点とにおいて異なるサンプルであり、その他の点においてサンプル1−D及びサンプル1−Eと同一となっている。
次に、各サンプルにおいて、第3層の最表面に付着している汚れ由来のCを除去するためにArイオンエッチングを5秒間行った後、形成した酸素原子を含む窒化銅からなる第3層の組成を、X線光電子分光分析法(XPS)を用いて分析した。発明者らは、このArイオンエッチングを5秒間行うことにより、窒化銅からなる層(第3層)の表面が5nmの深さでエッチングされることを確認した。イオンエッチング条件およびXPS測定条件を以下にまとめて示す。
(イオンエッチング条件)
イオン種:Ar+(3keV)
加速電圧:3(kV)
エミッション電流:6.0(mA)
MAGNIFICATION=10(etch範囲:4mm×4mm)
入射角:45°
Arガス導入時真空計表示:3.0E−7(hPa)
エッチング時間:5(s)
試料回転:未実施
(XPS測定条件)
X線出力:70W(15kV・4.67mA)
レンズモード:Standard
光電子取り込み角度:53°(但し、試料法線を0°とする)
帯電中和:電子中和銃(+6V、0.05mA)、低加速Ar+イオン照射
窒化銅からなる第3層の成膜条件及び組成分析結果を、下表1に示す。
尚、下表1において、MF放電電力として9.2kWまたは6.7kWのいずれかが採用されているが、これは、成膜時に基材フィルムが受けるダメージを低減させることを目的として選択されている。具体的には、未だ成膜が行われていない基材フィルムに対して成膜を行う場合に9.2kWのMF放電電力が採用されており、既に一方の面上に成膜が行われている基材フィルムの他方の面上に成膜を行う場合に6.7kWのMF放電電力が採用されている。また、酸化物由来Nとは、第3層の窒化銅に含まれる窒素(N)のうち、当該第3層の窒化銅中に微量添加された酸素と結合している窒素を意味し、非酸化物由来Nとは、第3層の窒化銅に含まれる窒素(N)のうち、当該第3層の窒化銅中に微量添加された酸素と結合していない窒素を意味している。
反射Y値の評価に当たっては、各サンプルに第3層の側から光を入射させた際の、各サンプルの第3層からの反射光を測定した。測定は、光波長360〜740nmの範囲内において、10nm刻みで行った。測定器としては、コニカミノルタ製のCM−3600Dを用いた。この測定結果に基づいて、各サンプルにおける反射Y値を評価した。
尚、比較用のサンプルとして、窒素ガスを導入するが酸素ガスを導入せずに、窒化銅からなる層を基材フィルム上に形成したサンプルを用意した。比較用のサンプルを作製する条件は、第3層を成膜する際に導入される窒素ガス及び酸素ガスの流量比を除き、サンプル1−A〜サンプル1−Cを作製する条件と同条件とした。次に、形成した窒化銅からなる層(第3層)の組成を、アルゴンイオンエッチングを併用しながら、X線光電子分光分析法(XPS)を用いて分析した。その結果、表面から0.1nm以上の深さには酸素原子が検出されなかった。一方、表面から0.1nmまでの深さには酸素原子が検出されたが、それ以上の深さには酸素原子が検出されなかったことに鑑みれば、表面から0.1nmまでの深さの酸素原子は、窒化銅からなる層の表面が自然酸化したことに由来する酸素原子であると考えられる。
また、比較用のサンプルにおける反射Y値を評価したところ、27.44%であった。すなわち、成膜時に酸素原子が添加された窒化銅(5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅)からなる第3層(低反射層54)が設けられているサンプル1−A〜サンプル1−Mにおいては、成膜時に酸素原子が添加されなかった窒化銅からなる第3層が設けられた比較用のサンプルよりも低い反射率、具体的には27%以下の反射率、を呈している。以上から、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制する上で、5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる低反射層54を設けることは、極めて有効であると言える。
(実施例2)
次に、図20に示すように、透明基材32と、透明基材32の第1面32aに設けられた導線形成層52Aと、を含む積層体のサンプルを準備した。導線形成層52Aは、透明基材32側から順に配置された本体層53および低反射層54を含んでいる。透明基材32の基材フィルム33を構成する材料としては、厚さ50μmの2軸延伸PETフィルムを用いた。透明基材32のアンダーコート層35a,35bを構成する材料としては、アクリロイル基を分子中に有する単量体、アクリロイル基を分子中に有するプレポリマー、及びベンゾトリアゾール系光反応開始剤から紫外線硬化型アクリル樹脂を紫外線照射によって架橋硬化せしめたものを用いた。本体層53を構成する材料としては、純度(同含有量)99質量%の銅を用いた。低反射層54を構成する材料としては、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる銅化合物を用いた。具体的なサンプルとしては、低反射層54の成膜時にスパッタリング装置内に導入した窒素ガスおよび酸素ガスの流量(sccm)の比が異なる以下の5種類のものを用意した。尚、実施例1とは異なり、各サンプルは、低反射層54を成膜する際に、ターゲットにDC放電電力のみを印加して作製した。
サンプル2−B:窒素ガス 99.75%、酸素ガス 0.25%
サンプル2−C:窒素ガス 99.50%、酸素ガス 0.50%
サンプル2−D:窒素ガス 99.25%、酸素ガス 0.75%
サンプル2−E:窒素ガス 99.0%、酸素ガス 1.0%
サンプル2−F:窒素ガス 97.5%、酸素ガス 2.5%
また、比較のため、スパッタリング装置内に窒素ガスを導入するが酸素ガスを導入せずに、ターゲットにDC放電電力のみを印加して窒化銅からなる低反射層を成膜した積層体をサンプル2−Aとして用意した。
各サンプルにおける低反射層の成膜条件を下表2にまとめて示す。
次に、各サンプルに光Lを入射させた際の、各サンプルからの反射光L’を測定した。光Lは、図20に示すように、導線形成層52A側から各サンプルに入射させた。測定は、光波長360〜740nmの範囲内において、10nm刻みで行った。測定器としては、コニカミノルタ製のCM−3600Dを用いた。この結果に基づいて、各サンプルにおける光の反射率を評価した。また、各サンプルにおけるL*、a*、b*、および反射Y値を評価した。ここで、L*、a*、b*は、JIS Z8781−4の規定による値であり、L*は明度を意味し、a*は、赤と緑との間の色度(+は赤方向、−は緑方向)を意味し、b*は、黄と青との間の色度(+の値は黄色寄り、−の値は青寄り)を意味する。
サンプル2−A〜サンプル2−Fにおける測定結果を図21および下表3にまとめて示す。
図21に示すように、成膜時に酸素原子が添加されていない窒化銅、すなわち5nm以上の深さに酸素原子を含まない窒化銅からなる低反射層が設けられているサンプル2−Aにおいては、360nm〜740nmの波長域全域において反射率が30%を超えていた。特に、表3に示すように、550nm近辺の波長域における反射率を意味する反射Y値は、37%以上となっていた。
一方、成膜時に酸素原子が添加された窒化銅、すなわち5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる低反射層54が設けられているサンプル2−B〜サンプル2−Fにおいては、360nm〜740nmの波長域全域において、サンプル2−Aの場合よりも低い反射率、具体的には30%以下の反射率、が測定された。
尚、酸素ガスの流量比が0.25%のサンプル2−Bにおいて、光の反射率(反射Y値)は30%以下の値である28.39%を実現し得ることが確認された。また、酸素ガスの流量比が0.25%を超過するサンプル2−C〜サンプル2−Fでは、当該反射率が更に低下することが確認された。すなわち、窒化銅からなる低反射層を成膜する際に、 酸素ガスの流量比は、0.25%よりも大きいことが好ましいと言える。酸素ガスの流量比が0.25%よりも大きいサンプルは、サンプル2−C〜サンプル2−Fであり、これらのサンプルにおける反射Y値は、表3に示すように、いずれも27%以下であった。反射Y値が小さいほど光の低反射層54における反射が抑制されるため、サンプルBによる低反射層よりも、サンプル2−C〜サンプル2−Fによる低反射層の方が、映像の視認性が低下することを抑制する効果が高いといえる。以上から、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制する上で、5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる低反射層54を設けることは、極めて有効であると言える。