JP6413298B2 - ポリウレタン及び、ポリウレタンの製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、原料のポリエーテルポリオール成分としてポリオキシテトラメチレングリコールを用いたポリウレタンについて目的に応じた各種物性を向上させるために、使用するポリエーテルポリオールを改良する方法が種々提案されている。
例えば特許文献1には、ポリオキシテトラメチレングリコールとオルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸を反応させて得られたポリエーテルポリオールを原料として用い、寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンを製造したことが記載されている。
特許文献2には、ポリオキシテトラメチレングリコールとアルキレンオキサイドをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に用いることで、破断時伸びに優れる気泡性ポリウレタンエラストマーを製造したことが記載されている。
特許文献3には、ポリアルキレンエーテルグリコールをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に、伸縮性、引張強さ等の各種機械的特性に優れたポリウレタンを製造したことが記載されている。
特許文献4には、ポリテトラメチレンエーテルグリコールをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に、低温特性に優れたポリウレタンを製造したことが記載されている。
特に弾性回復性、引張強度、引張伸び等の伸縮特性は、ポリウレタンを原料に製造される繊維において極めて重要な性質であり、これらに優れる本発明のポリウレタンは特に弾性繊維の原料に適している。
本発明のポリウレタンは、水酸基価が55以下で、構造中にカーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)と、イソシアネート化合物(b)を反応させて製造される。
ここで、ポリウレタンとポリウレタンウレアの構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーである。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤として炭素数10以下の短鎖ポリオールを使用して製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用して製造されるものである。
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(a)(以下、「本発明のポリエーテルポリオール(a)」と称す場合がある。)は、ポリエーテルポリオール構造中にカーボネート結合を有する必要がある。なお、カーボネート結合以外のポリエーテルポリオール構造は特に限定されないが、ポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位が含まれることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が高すぎると、本発明の特徴である優れた弾性回復性率、引張強度、引張伸び等の伸縮特性が発現しなくなり、低すぎるとポリエーテルポリオール(a)の粘度が高くなり作業性を低下させるとともに、引張強度が低下しすぎるといった問題が発生する。
ハードセグメントとソフトセグメントの相分離性を向上させるためには、ソフトセグメントを構成するポリエーテルポリオールの水酸基価が低い方が有利であるが、一方でポリエーテルポリオールの水酸基価が低くなると、ポリエーテルポリオール自身が結晶化する傾向にある。このようにソフトセグメントであるポリエーテルポリオールが結晶化してしまうと、たとえ相分離性が向上したとしても、弾性回復性はむしろ悪化する。
本発明においては、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離性を向上させながら、ソフトセグメントの結晶化を抑制するための手段を検討した結果、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が規定の値以下であっても、ソフトセグメント中にカーボネート結合を有する構造とすれば、意外にも弾性回復性が顕著に向上することを見出したものである。
本発明においてポリエーテルポリオール(a))に含まれていてもよい構造単位としてポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位がある。ポリアルキレンエーテルグリコールは、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するポリヒドロキシ化合物である。
本発明におけるポリエーテルポリオール(a)は、カーボネート結合を含むことを必須とし、好ましくはポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位を更に含んでいる。
本発明のポリエーテルポリオール(a)の製造に用いる事のできるカーボネート化合物としては、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはアルキレンカーボネート等が挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートおよび2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等のアルキレンカーボネートが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記エステル交換反応は、触媒の存在しない系で行うことも可能ではあるが、通常は、これらの反応を円滑に進行させるために、金属触媒を用いることができる。
エステル交換触媒としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酢酸塩やハロゲン化物、アルコキシドが用いられる。
これらの金属、および金属化合物よりなるエステル交換触媒は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の使用量を前記下限以上とすることにより、ポリエーテルポリオール(a)の形成にかかる時間を短縮し、生成物の着色を防ぐことができる。また、前記上限以下とすることにより、生成したポリエーテルポリオール(a)中に残存するエステル交換触媒量を低減し、触媒がポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示すのを防ぐことができる。
ポリアルキレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールとカーボネート化合物とをエステル交換反応させて本発明のポリエーテルポリオール(a)を製造する際のエステル交換反応の反応温度は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、通常240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、210℃以下が更に好ましく、200℃以下が特に好ましい。エステル交換反応の初期はアルコールの留出量が多いため、反応初期は上記最適温度範囲の低めの温度で反応を行い、アルコールの留出量が減ってきた反応後半は上記最適温度範囲の高めの温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、アルコールやカーボネート化合物の留出が観測されなくなってから、エステル交換反応開始時よりも反応温度を10℃以上高くすることが好ましい。
ポリエーテルポリオール(a)からのエステル交換触媒等の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したポリエーテルポリオール(a)は、一般にエステル交換触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。しかし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタンの用途によってはポリエーテルポリオール(a)中のエステル交換触媒を失活させておくことが好ましい。
本発明において用いられるイソシアネート化合物(b)は、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
イソシアネート化合物(b)の使用量を5当量以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が、架橋反応等の好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性を得やすくなる。また、0.1当量以上とすることにより、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量を十分に大きくすることができ、所望の性能を発現し易くなる。
イソシアネート基が水分と反応して消失する機構は、イソシアネート基が水分子との反応でアミン化合物となり、そのアミン化合物が更にイソシアネート基と反応してウレア結合を形成することにより、水1分子に対しイソシアネート基2つが消失するものである。
この消失により必要とされるイソシアネート化合物が不足し、所望の物性が得られなくなる恐れがあるため、上記に記載の方法で水分量に見合う量を補填するためのイソシアネート化合物を添加することが有効である。
本発明のポリウレタンを製造する際は、前記のポリエーテルポリオール(a)及びイソシアネート化合物(b)と共に、更に鎖延長剤(c)を用いてもよい。
本発明において用いてもよい鎖延長剤(c)は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。また、ポリウレタンウレア製造には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
鎖延長剤(c)の使用量を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が硬くなりすぎるのを防いで所望の特性を得ることができ、溶媒に溶け易く加工し易く、また、未反応の鎖延長剤(c)が残存しにくく、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)の物性を安定化させる。また、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が軟らかすぎることなく、十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られ、良好な高温特性が得られる。
本発明のポリウレタンの製造には、以上のポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。
前記鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノオール、並びにアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミン等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
本発明のポリウレタンの製造に、本発明のポリエーテルポリオール(a)以外のポリオールを用いる場合、本発明のポリエーテルポリオール(a)とそれ以外のポリオールを合わせた質量に対する本発明のポリエーテルポリオール(a)の質量割合は70%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。本発明のポリエーテルポリオール(a)の質量割合が少ないと、ポリウレタン原料として本発明のポリエーテルポリオール(a)を用いることによる前述の効果を十分に得ることができない場合がある。
本発明のポリウレタンを製造するには、ポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)を主製造用原料として上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。本発明のポリウレタンを製造するにあたり、好ましい様態は、ポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)を原料としてポリウレタンを製造することである。
特に、鎖延長剤(c)がジアミンの場合には、イソシアネート基との反応速度がポリエーテルポリオール(a)の水酸基とジアミンのアミノ基では大きく異なるため、二段法にてポリウレタンウレアを製造することが好ましい。
本発明のポリウレタンの製造を溶媒共存下で行う場合、使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類;並びにγ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、ポリウレタン溶液の全質量に対して、通常1〜99質量%であることが好ましく、5〜90質量%であることがより好ましく、10〜75質量%であることが更に好ましく、15〜60質量%であることが特に好ましい。ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度を前記下限以上とすることにより、後工程で大量の溶媒を除去することが不要とになり生産性を向上させることができる。一方、前記上限以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性及び加工性を向上することができる。
尚、ポリウレタン溶液を長期にわたり保存する場合は、常温又はそれ以下の温度で、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記ポリエーテルポリオール(a)、前記イソシアネート化合物(b)及び必要に応じて前記鎖延長剤(c)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましく、50〜150℃で反応させることが更に好ましい。
前記反応温度は、溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が低下する傾向があり、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こる傾向がある。
溶媒を用いない場合は、イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)等を低圧発泡機や高圧発泡機を使用して反応させてもよいし、高速回転混合機を使用して攪拌混合して反応させてもよい。
また、反応は減圧下脱泡しながら行ってもよい。
二段法は、プレポリマー法ともよばれる。まずポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)とを好ましくは0.1〜10.00の反応当量比で反応させたプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーに、両末端がイソシアネート基の場合は多価アルコール及びアミン化合物等の活性水素化合物成分を鎖延長剤(c)として加えることにより、二段階反応させ(イソシアネート末端の二段法)、また、両末端が水酸基の場合は、イソシアネート化合物を加えることにより、二段階反応させる(水酸基末端の二段法)。
イソシアネート末端のプレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてプレポリマーを合成して鎖延長剤(c)との鎖延長反応にそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてイソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてもよい。
水酸基末端のプレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてプレポリマーを合成してイソシアネート化合物との鎖延長反応にそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成してその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてイソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてもよい。
ウレタン化反応の際には、ウレタンの重合方法によらず、必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。又、反応時に一官能性の有機アミン及びアルコールを共存させてもよい。
本発明のポリエーテルポリオール(a)を用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造することも可能である。その場合、ポリエーテルポリオール(a)を含むポリオールと過剰のイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとする。
溶媒存在下で反応を行って製造された本発明のポリウレタンは、溶媒に溶解した状態で得られるが、本発明のポリウレタンは、溶液状態であってもよく、固体状態であってもよく、その存在形態に特に制限はない。
尚、本発明でいう、ハードセグメント量とは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出したものである。
ここで、
R=イソシアネート化合物(b)のモル数/ポリエーテルポリオール(a)の水酸基のモル数
Mdi=イソシアネート化合物(b)の数平均分子量
Mdc=鎖延長剤(c)の数平均分子量
Mp=ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量
固体状態又は液体状態のポリウレタンを公知の方法で成形することによってポリウレタン成形体とすることができる。
この場合、その成形方法も形態も特に限定されないが、押出成形及び射出成形等の成形方法により、シート、フィルム及び繊維等の各種の形態に成形することができる。
特に、繊維やフィルムとして用いられるのが本発明のポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましい。これらの具体的用途としては、衣料用の弾性繊維、医療、衛生用品及び人工皮革、合成皮革等に用いられるのが好ましい。
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの厚さは、用途により特に限定されるものではないが、通常1〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚さを1000μm以下とすることにより、成形安定性が得られる。又、1μm以上とすることにより、ピンホールが形成されにくいとともに、フィルムがブロッキングしにくく、取り扱い易くなる。
乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、室温〜300℃の範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の範囲であることがより好ましい。
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す場合が多い。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性及び加工性等に優れる。
以下、本発明のポリウレタンの代表的な用途の一例である人工皮革又は合成皮革について詳細に説明する。
人工皮革又は合成皮革は、基布と接着剤層と表皮層とを主要構成要素とする。表皮層は本発明のポリウレタンにその他の樹脂、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を混合してポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤及び有機溶剤等を混合して得られる表皮層配合液からなる。ポリウレタン溶液には、その他必要に応じて、加水分解防止剤、顔料、染料、難燃剤、充填材及び架橋剤などを添加することができる。
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法により水酸基価(KOH(mg)/g)を求めた。
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
生成物をCDCl3に溶解して400MHz 1H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、成分のシグナルの積分値より算出した。
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14質量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)、溶離液にはリチウムブロマイド2.6gをジメチルアセトアミド1Lに溶解させた溶液を使用〕を用い、標準ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)を測定した。
得られたポリウレタンのハードセグメント量は、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出して求めた。
ハードセグメント量(%)=[(R−1)(Mdi+Mc)/{Mp+R・Mdi+(R−1)・Mc}]×100
ここで、
R=イソシアネート化合物のモル数/ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数
Mdi=イソシアネート化合物の数平均分子量
Mc=鎖延長剤の数平均分子量
Mp=ポリエーテルポリオールの数平均分子量
製造されたポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでガラス板上に塗布し、60℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、引張試験機((株)オリエンテック製テンシロンUTM−III−100)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分、温度23℃(相対湿度55%)の条件下で引張破断強度と引張破断伸度と伸度100%及び300%のときの弾性率を測定した。1サンプルにつき5〜10点測定し、その平均値を採用した。
製造されたポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでガラス板上に塗布し、60℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、温度23℃(相対湿度55%)、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分の条件下で300%まで伸長し、引き続いてもとの長さまで500mm/分の速度で収縮させ、これを下記に記載の回数繰り返した。
n回目の伸長時の150%伸長における応力をHn、n回目の収縮時の150%伸長における応力をHrnとし、Hrn/Hnを求めた。また、n回目の伸長時の150%伸長における応力をHn、(n+1)回目の伸長時の150%伸長における応力をH(n+1)とし、H(n+1)/Hnを求めた。Hrn/HnおよびH(n+1)/Hnは、数値が1に近いほど弾性保持率に優れる。
さらに、2回目(H2)、3回目(H3)、及び4回目(H4)の伸長時の応力が立ち上がる点の伸長度を残留歪みとした。残留歪は0に近いほど弾性回復性に優れる。
<製造例1:ポリエーテルポリオール1の製造>
精留塔、冷却管、温度計を備えた300ml四口丸底フラスコに、230.0g(0.385mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#650」、数平均分子量597)と、38.4g(0.352mol)のジエチルカーボネート(DEC)を入れて攪拌した。さらに、8.05mlのテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.19質量%)を加えて攪拌した。常圧で室温から150℃まで昇温させた後、150℃から180℃まで9時間かけて昇温後、180℃で2時間反応させた。180℃で一定に保ったまま、反応系内を常圧から5Torrまで4時間かけて徐々に減圧し、5Torrで1時間反応させた。さらに、0.1Torrで10時間反応させた。室温まで冷却後、窒素により常圧に戻した。ここへ、水2.7gを添加し、100℃で2時間加熱した。放冷後、ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。再度ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、51ppmであった。更に、110℃、0.1Torrで7時間減圧加熱して残存溶媒を留去し、ポリエーテルポリオール1を得た(213.1g、収率89.6%)。
ポリエーテルポリオール1の水酸基価は32.3、水酸基価により算出される数平均分子量は3479であった。
1H−NMRより、ポリエーテルポリオール1中にヘプタンが存在しないことを確認した。
精留塔、冷却管、温度計を備えた300ml四口丸底フラスコに、230.0g(0.230mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#1000」、数平均分子量1000)と、19.5g(0.165mol)のジエチルカーボネート(DEC)を入れて攪拌した。さらに、8.0mlのテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.21質量%)を加えて攪拌した。常圧で室温から150℃まで昇温させた後、150℃から180℃まで8時間かけて昇温後、180℃で3時間反応させた。180℃で一定に保ったまま、反応系内を常圧から200Torrまで2時間かけて徐々に減圧し、さらに200Torrから2Torrまで1.5時間かけて徐々に減圧後、2Torrで2.5時間反応させた。さらに、0.1Torrで8時間反応させた。室温まで冷却後、窒素により常圧に戻した。ここへ、水2.4gを添加し、100℃で2時間加熱した。放冷後、ヘプタン(81g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。再度ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、23ppmであった。更に、110℃、0.1Torrで9時間減圧加熱して残存溶媒を留去し、ポリエーテルポリオール2を得た(209.9g、収率89.6%)。
ポリエーテルポリオール2の水酸基価は34.6、水酸基価により算出される数平均分子量は3243であった。
1H−NMRより、ポリエーテルポリオール2中にヘプタンが存在しないことを確認した。
300mL四つ口丸底フラスコに、48g(0.247mol)のイソフタル酸ジメチル(TCI社製)と、216g(0.332mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#650」、数平均分子量650)と、1.08g(原料合計量に対してテトラ−n−ブチルチタネートとして20質量ppm)のテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.49質量%)を秤り取った。フラスコをオイルバスに浸し、30分で220℃まで昇温した。適宜サンプリングをして反応の進行を確認しながら220℃で8.5時間反応後、フラスコをオイルバスから上げて放冷し、一晩静置させた。再度フラスコをオイルバスに浸して30分で220℃まで昇温し、適宜サンプリングをして反応の進行を確認しながら220℃で5.5時間反応後(合計反応時間14時間)、加熱を止めて放冷した。原料ピークの消失をNMR(400MHz)により確認し、生成物(246.8g、収率99.5%)を200mlのガラス瓶に移した。
得られた生成物に水2.7gを添加し、フラスコをオイルバスに浸して10分で100℃に昇温し、100℃で1時間加熱した。放冷後、ヘプタン(63g)を加えて110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。バス温60℃になるまで放冷し、ヘプタン(56g)を加えて120℃で加熱してヘプタン/水を留去した。バス温60℃になるまで放冷し、ヘプタン(50g)を加えて120℃で加熱してヘプタン/水を留去後、放冷した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、120ppmであった。更に、オイルバスを110℃に昇温し、110℃で5時間加熱して残存溶媒を留去した。室温まで放冷後、生成物であるポリエーテルポリオール3を200mlガラス瓶に移した(243.6g、収率98.2%)。
ポリエーテルポリオール3の水酸基価は37.0、水酸基価により算出される数平均分子量は3029であった。
1H−NMRより、ポリエーテルポリオール3中にヘプタンが存在しないことを確認した。
容量が1Lのフラスコに、予め40℃に加温した製造例1で得られたポリエーテルポリオール1(分子量3479)を146.7gと、予め40℃に加温した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)19.0gを加えた。このときの、イソシアネート基/水酸基の反応当量比(以下、「NCO/OH比」と略記することがある。)は1.80であった。
そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は227,000、ハードセグメント量は6.3質量%であった。
実施例1において、ポリエーテルポリオール1の代わりにポリエーテルポリオール2を使用し、表1に示す仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は231,000で、ハードセグメント量は6.3質量%であった。
実施例1において、ポリエーテルポリオール1の代わりにポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製「PTMG#1800」、水酸基価は61.7、水酸基価より算出した数平均分子量は1819、以下「PTMG1」と略記する場合がある。)を使用し、表1に示す仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は214,000で、ハードセグメント量は8.3質量%であった。
容量が1Lのフラスコに予め40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#2000」、水酸基価は57.0、水酸基価より算出した数平均分子量は1969、以下「PTMG2」と略記する場合がある。)150.1gと、40℃に加温した4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)30.7gを加えた。このとき、イソシアネート基/水酸基の反応当量比は1.60であった。そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させその後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を超えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、関東化学社製)245.0gを加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は191,000、ハードセグメント量は7.8質量%であった。
比較例2においてポリテトラメチレンエーテルグリコールの代わりにポリエーテルポリオール3を使用し、表1に示した仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は179,000で、ハードセグメント量は6.2質量%であった。
実施例1、2及び比較例1〜3で得られたポリウレタンウレアDMAc溶液をフィルム化し、物性測定を行った結果を表2に示した。
表2の備考欄には、ポリウレタンの製造に用いたポリエーテルポリオールの物性を併記した。
Claims (8)
- カーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)と、イソシアネート化合物(b)を反応させて製造されるポリウレタンであって、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が50以下であり、ポリエーテルポリオール(a)中に、ポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位を含み、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタン。
- ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量が2040以上である請求項1に記載のポリウレタン。
- ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量が100〜5000である請求項1又は2に記載のポリウレタン
- ポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)と共に、さらに鎖延長剤(c)を反応させて製造される請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用した繊維。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用した人工/合成皮革。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用したコーティング剤。
- ポリアルキレンエーテルグリコールとカーボネート化合物を反応させて得られた水酸基価が50以下のポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)を付加重合反応させるポリウレタンの製造方法であって、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタンの製造方法。
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