JP6410617B2 - ブランケット胴の製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、オフセット印刷機に使用するブランケット胴の製造方法に関する。

オフセット印刷機では、版胴に装着（巻着）された刷版にインキを付けて、そのインキによるインキ画像をブランケット胴に装着（巻着）されたブランケットに転写し、このブランケットを介して印刷媒体にインキ画像を転写して印刷する。特に新聞印刷用のオフセット印刷機では一対のブランケット胴を対向配置し、この一対のブランケット胴のニップ部に印刷媒体である走行紙を通過させて当該走行紙の両面にインキ画像を同時に転写し印刷する。また、新聞印刷用以外では、ブランケット胴を圧胴と対向配置し、このブランケット胴と圧胴のニップ部に印刷媒体を通過させることもある。なお、本明細書では、ブランケット胴と対向配置してニップ部を形成するブランケット胴や圧胴を「印刷胴」という。

このようなオフセット印刷機において、版胴及びブランケット胴は、それぞれ刷版及びブランケットを装着（巻着）するときにこれらの巻き端部を係止等するための「ギャップ」と呼ばれる溝加工した部分を軸方向に有する。

これら版胴のギャップとブランケット胴のギャップは、版胴とブランケット胴の周長が同じで周方向にギャップを１箇所設けている場合、版胴とブランケット胴の同期回転時に、ギャップ同士が常時合致するように回転位相が調整される。この場合、刷版の係止部分に溜まったインキ又は刷版のエッジに付着したインキがブランケット胴に装着したブランケットに転写されることは防止される。ところが、版胴とブランケット胴の周長が異なる場合、例えばブランケット胴が２頁周長、版胴が１頁周長の場合、ブランケット胴が１回転するときに版胴は２回転する。そのため、版胴とブランケット胴のギャップを常時合致させることはできず、刷版の係止部分に溜まったインキ又は刷版のエッジに付着したインキがブランケット胴（ブランケット）に転写されてしまう。その結果、ブランケット胴（ブランケット）に転写したインキが印刷媒体（走行紙）に転写されてしまい、印刷媒体（走行紙）の外周部に汚れ（以下、この汚れを「額縁汚れ」という。）が発生してしまうという問題がある。

この額縁汚れの発生を防止するための技術として、従来、ブランケット胴に装着するブランケットの表面（外周面）に、版胴のギャップに対応して軸方向に沿う凹部を設ける技術が知られている（特許文献１〜３参照）。このようにブランケットの表面の所定の位置（版胴のギャップに対応する位置）に凹部を設けることで、刷版の係止部分に溜まったインキ又は刷版のエッジに付着したインキは当該ブランケットに転写されず、額縁汚れの発生を防止することができる。

しかし、上記従来技術では、予めブランケットに凹部を設けるようにしているので、そのブランケットをブランケット胴に装着したときに凹部の位置がずれて、その凹部が版胴のギャップに合致しなくなるという問題が生じうる。すなわち、例えば上記特許文献１に見られるように、ブランケットの基板（基部）が金属製の板材で構成されている、いわゆるメタルブランケットであれば、ブランケットの周方向の長さは実質的に変化しないが、メタルブランケットでなければ、ブランケット胴に装着（巻着）するときに周方向に伸びるから、凹部の位置がずれることがある。そうすると、その凹部が版胴のギャップと合致しなくなり、額縁汚れが発生する。

特許第５４６５８８６号公報 特表２００７−５１１３８９号公報 実願昭５７−７７０５９号（実開昭５８−１８００４３号）のマイクロフィルム

本発明が解決しようとする課題は、版胴のギャップに係止した刷版の係止部分又はエッジに起因する額縁汚れの発生を防止するためにブランケットの表面に形成する凹部を、版胴のギャップと正確に合致させることができる、ブランケット胴の製造方法を提供することにある。

本発明の一観点によれば、刷版を装着するためのギャップを軸方向に有する版胴と、ブランケットが装着されて前記版胴と同期回転して当該版胴に装着された刷版から転写されるインキ画像を印刷媒体に転写可能なブランケット胴とを有し、前記ブランケット胴と印刷胴とのニップ部に前記印刷媒体を通過させて当該印刷媒体に前記インキ画像を転写するオフセット印刷機に使用するブランケット胴の製造方法であって、ブランケット胴にブランケットを装着した状態で、当該ブランケットの表面の、前記版胴のギャップと合致する位置に、当該ブランケットの表層より硬質な材料からなる帯状の硬質材を軸方向に貼付する工程と、前記硬質材を貼付した状態で、当該ブランケット胴を前記印刷胴と同期回転させて、当該ブランケット胴と前記印刷胴とのニップ部で前記硬質材を当該ブランケット胴に装着したブランケットに圧入させることにより、当該ブランケットに凹部を形成する工程と、前記硬質材を当該ブランケットから取り外す工程と、を含むブランケット胴の製造方法が提供される。

本発明のブランケット胴の製造方法によれば、ブランケット胴にブランケットを装着した状態で、実際に版胴のギャップと合致する位置に硬質材を貼付し、かつこの硬質材を貼付した状態で、ブランケット胴と印刷胴とのニップ部で硬質材をブランケット胴に装着したブランケットに圧入させ、その後硬質材を取り外すことにより凹部を形成するので、その凹部を実際のオフセット印刷機において版胴のギャップと正確に合致させることができる。これにより、版胴のギャップに係止した刷版の係止部分又はエッジに起因する額縁汚れの発生を確実に防止することができる。

本発明の一実施例によるブランケット胴の製造方法を説明するための図で、オフセット印刷機におけるブランケット胴及び版胴の回転位相の関係を操作側から見た図である。 図１のオフセット印刷機における一対のブランケット胴の回転位相の関係を示す斜視図である。 図１のオフセット印刷機におけるブランケット胴と版胴との回転位相の関係を示す斜視図である。 図１のオフセット印刷機におけるブランケット胴及び版胴の各ギャップを拡大して示す断面図である。 図１のオフセット印刷機においてブランケット胴に凹部を形成する手順を示す説明図である。 図１に示したオフセット印刷機の変形例であって、ブランケット胴と版胴との回転位相の関係を示す斜視図である（ブランケット胴及び版胴が共に２頁周長４頁幅）。 図１に示したオフセット印刷機の変形例であって、ブランケット胴と版胴との回転位相の関係を示す斜視図である（ブランケット胴が２頁周長２頁幅、版胴が１頁周長２頁幅）。 図１に示したオフセット印刷機の変形例であって、ブランケット胴と版胴との回転位相の関係を示す斜視図である（ブランケット胴及び版胴２０Ｌが共に２頁周長２頁幅）。

以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。

図１は、本発明の一実施例によるブランケット胴の製造方法を説明するための図で、オフセット印刷機におけるブランケット胴及び版胴の回転位相の関係を操作側から見た図である。

図１のオフセット印刷機は、対向配置した一対のブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒと、この一対のブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒにそれぞれ接して同期回転する版胴２０Ｌ，２０Ｒとを有する。

ブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒは新聞紙換算で２頁周長４頁幅の大きさを有し、それぞれ２頁周長２頁幅のブランケット１１Ｌ，１１Ｒが２枚ずつ軸方向に装着（巻着）される。そのため、ブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒは図２に示すように、軸方向に２頁幅のギャップ１２Ｌ，１２Ｒを２列ずつ有する。各列のギャップ１２Ｌ，１２Ｒは、ブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒの周方向に１８０°の位相差を持って設けられている。

版胴２０Ｌ，２０Ｒは新聞紙換算で１頁周長４頁幅の大きさを有する。これらの版胴２０Ｌ，２０Ｒには、それぞれ１頁周長２頁幅の刷版２１Ｌ，２１Ｒが２枚ずつ、あるいは１頁周長１頁幅の刷版２１Ｌ，２１Ｒが４枚ずつ装着（巻着）される。そのため、版胴２０Ｌ，２０Ｒは図３に示すように、軸方向に４頁幅のギャップ２２Ｌ，２２Ｒを１列ずつ有する。

図４は、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）及び版胴２０Ｌ（２０Ｒ）の各ギャップ（１２Ｌ（１２Ｒ），２２Ｌ（２２Ｒ））を拡大して示す断面図である。同図に示すように、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のギャップ１２Ｌ（１２Ｒ）に、ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の巻き端部（両端部）が係止され、これによりブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）がブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）に装着（巻着）される。また、版胴２０Ｌ（２０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）に、刷版２１Ｌ（２１Ｒ）の巻き端部（くわえ側及びくわえ尻側）が係止され、これにより刷版２１Ｌ（２１Ｒ）が版胴２０Ｌ（２０Ｒ）に装着（巻着）される。なお、図４にも表れているように、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のギャップ（１２Ｌ（１２Ｒ）の周方向（回転方向）の幅は、版胴２０Ｌ（２０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）の周方向（回転方向）の幅より大きい。

以上のようなオフセット印刷機の基本構成において、本発明のブランケット胴の製造方法では、図１〜図３に示すように、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）にブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）を装着した状態で、当該ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の表面（外周面）の、版胴のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）と合致する位置に、帯状の硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を軸方向に貼付する。この硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）は、ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）より硬質な材料からなる。本実施例においてブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）は、図５（ｂ）の拡大図に示すように基層１１Ｌ−１（１１Ｒ−１）と表層１１Ｌ−２（１１Ｒ−２）との２層構造からなるが、硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）は少なくとも表層１１Ｌ−２（１１Ｒ−２）より硬質の材料、例えば、樹脂や金属からなる。本実施例では、樹脂テープを使用した。この樹脂テープのように粘着性がある硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）は、後述するようにブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）から取り外した後、再利用することが可能であるから、便利である。

硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）の周方向（回転方向）の幅は、版胴２０Ｌ（２０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）の周方向（回転方向）の幅より大きく、例えば、ギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）の周方向の幅（非印刷長）に対して、周方向（天地方向）にそれぞれ２ｍｍ程度長くする。硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）の高さ（厚み）は、ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の材質等に応じて適宜決定すればよく、本実施例では０．４ｍｍとした。

硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を、ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の表面（外周面）の、版胴のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）と合致する位置に合せて貼付する方法としては、例えば以下の（１）から（３）の方法がある。無論、これらに限定はされない。

（１）版胴２０Ｌ（２０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）に係止した刷版２１Ｌ（２１Ｒ）の巻き端部（くわえ側及びくわえ尻側）のエッジにインキを付けて、その版胴２０Ｌ（２０Ｒ）をブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）と同期回転させる。そうすると、前記エッジに付けたインキがブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）に転写される。このインキが転写された位置に硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を貼付する。

（２）予め、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）本体の側面等に、版胴のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）と合致する位置に対応する位置（本実施例の場合、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）の位置から周方向に１８０°の位置）に目印を付けておき、この目印に合せて硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を貼付する。

（３）ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）が使用済の場合、当該ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）には版胴のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）と合致した痕跡が残っているので、この痕跡に合せて硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を貼付する。

このようにして硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）をブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）の表面に貼付した状態で、図５（ａ），（ｂ）に示すようにブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）をこれと対向するブランケット胴１０Ｒ（１０Ｌ）と同期回転させて、ブランケット胴１０Ｌとブランケット胴１０Ｒとのニップ部１４で硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）をそれぞれブランケット１０Ｌ（１０Ｒ）に圧入させる。これにより、図５（ｂ）の拡大図に示すように、硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）の貼付位置に凹部１５Ｌ（１５Ｒ）が形成される。その後、図５（ｃ）に示すように、硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）をブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）から取り外すと、凹部１５Ｌ（１５Ｒ）のみが残る。

その後は、通常のオフセット印刷と同様に、版胴２０Ｌ，２０Ｒに装着（巻着）された刷版２１Ｌ，２１Ｒにインキを付けて、そのインキによるインキ画像をブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒに装着（巻着）されたブランケット１１Ｌ，１１Ｒに転写し、このブランケット１１Ｌ，１１Ｒを介して印刷媒体（走行紙（ウェブ））にインキ画像を転写して印刷する。このとき、ブランケット１１Ｌ，１１Ｒの表面には、上述のとおり版胴２０Ｌ，２０Ｒのギャップ２２Ｌ，２２Ｒと合致する位置に凹部１５Ｌ，１５Ｒが形成されているので、版胴２０Ｌ，２０Ｒのギャップ２２Ｌ，２２Ｒに係止した刷版２１Ｌ，２１Ｒの係止部分又はエッジに起因する額縁汚れの発生は防止される。

なお、本実施例において版胴２０Ｌ（２０Ｒ）のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）は、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のギャップ１２Ｌ（１２Ｒ）とも合致するが、このブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）のギャップ１２Ｌ（１２Ｒ）は元々凹状であるため、この部分に硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を貼付する必要はない。

以上の実施例は、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）が２頁周長４頁幅、版胴２０Ｌ（２０Ｒ）が１頁周長４頁幅の例であるが、図６Ａに示すようにブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）及び版胴２０Ｌ（２０Ｒ）が共に２頁周長４頁幅、図６Ｂに示すようにブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）が２頁周長２頁幅、版胴２０Ｌ（２０Ｒ）が１頁周長２頁幅、図６Ｃに示すようにブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）及び版胴２０Ｌ（２０Ｒ）が共に２頁周長２頁幅であってもよい。いずれの場合も、ブランケット胴１０Ｌ（１０Ｒ）にブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）を装着した状態で、当該ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の表面（外周面）の、版胴のギャップ２２Ｌ（２２Ｒ）と合致する位置に、帯状の硬質材１３Ｌ（１３Ｒ）を軸方向に貼付すれば、先の実施例と同様に、ブランケット１１Ｌ（１１Ｒ）の表面に形成する凹部を、版胴のギャップと正確に合致させることができる。なお、２頁周長の版胴には１頁周長の刷版を２枚装着（巻回）したが、２頁周長の刷版１枚を装着（巻回）してもよい。

また、上記実施例は、新聞印刷用のオフセット印刷機を想定して、一対のブランケット胴１０Ｌ，１０Ｒを対向配置した例である。すなわち、ブランケット胴１０Ｌに対してブランケット胴１０Ｒが対向関係にある「印刷胴」であり、ブランケット胴１０Ｒに対してブランケット胴１０Ｌが対向関係にある「印刷胴」である。ただし、本発明のブランケット胴の製造方法は、ブランケット胴を１本だけとし、これと対向関係にある「印刷胴」として圧胴を配置したオフセット印刷機にも適用可能である。

１０Ｌ，１０Ｒ ブランケット胴
１１Ｌ，１１Ｒ ブランケット
１１Ｌ−１，１１Ｒ−１ 基層
１１Ｌ−２，１１Ｒ−２ 表層
１２Ｌ，１２Ｒ ギャップ（溝）
１３Ｌ，１３Ｒ 硬質材
１４ ニップ部
１５Ｌ，１５Ｒ 凹部
２０Ｌ，２０Ｒ 版胴
２１Ｌ，２１Ｒ 刷版
２２Ｌ，２２Ｒ ギャップ（溝）

Claims (2)

1. 刷版を装着するためのギャップを軸方向に有する版胴と、ブランケットが装着されて前記版胴と同期回転して当該版胴に装着された刷版から転写されるインキ画像を印刷媒体に転写可能なブランケット胴とを有し、前記ブランケット胴と印刷胴とのニップ部に前記印刷媒体を通過させて当該印刷媒体に前記インキ画像を転写するオフセット印刷機に使用するブランケット胴の製造方法であって、
   ブランケット胴にブランケットを装着した状態で、当該ブランケットの表面の、前記版胴のギャップと合致する位置に、当該ブランケットの表層より硬質な材料からなる帯状の硬質材を軸方向に貼付する工程と、
   前記硬質材を貼付した状態で、当該ブランケット胴を前記印刷胴と同期回転させて、当該ブランケット胴と前記印刷胴とのニップ部で前記硬質材を当該ブランケット胴に装着したブランケットに圧入させることにより、当該ブランケットに凹部を形成する工程と、
   前記硬質材を当該ブランケットから取り外す工程と、
   を含むブランケット胴の製造方法。
2. 前記硬質材の周方向の幅は、前記版胴のギャップの周方向の幅より大きい、請求項１に記載のブランケット胴の製造方法。

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