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JP6491488B2 - エピタキシャル成長用基板及びその製造方法 - Google Patents

エピタキシャル成長用基板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム含有III族窒化物半導体膜をエピタキシャル成長させるための下地となるエピタキシャル成長用基板及びその製造方法に関する。
紫外発光素子は、蛍光灯の代替、高密度DVD、生化学用レーザ、光触媒による公害物質の分解、He−Cdレーザ、水銀灯の代替等の次世代の光源として幅広く注目されている。紫外発光素子は、ワイドギャップ半導体と呼ばれる窒化アルミニウムガリウム系窒化物半導体からなり、以下の表1に示すようなサファイア(Al)、炭化ケイ素(4H−SiC)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)等の異種基板上に積層される。
しかしながら、サファイアを用いた場合には、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)との格子不整合が大きいため、多数の貫通転位が存在してしまい、非発光再結合中心となって内部量子効率を著しく低下させてしまう。また、4H−SiC及び窒化ガリウムを用いた場合には、格子整合性が高いという利点があるものの、高価であるためコスト性に問題があるだけでなく、波長380nm以下及び365nm以下の紫外線をそれぞれ吸収してしまう。
これに対して、窒化アルミニウムは、窒化アルミニウムガリウムと格子定数が近く、200nmの紫外領域まで透明であるため、発光した紫外線を吸収することなく、紫外光を効率よく外部へ取り出すことができる。つまり、窒化アルミニウムは、窒化アルミニウム単結晶を基板として用い、窒化アルミニウムガリウム系発光素子を準ホモエピタキシャル成長させることにより、結晶の欠陥密度を低く抑えた紫外発光素子を作製することができる。
窒化アルミニウム単結晶自立基板に関しては、現在、昇華法やハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等による作製が試行されている。しかしながら、昇華法で得られた窒化アルミニウムは、結晶性に優れているものの、製造プロセス中の多量の不純物の混入が原因となって紫外線透過性に劣り、また、非常に高価であるという問題がある。また、昇華法で得られた窒化アルミニウムを下地基板として、この上にハイドライド気相成長法により厚さ数百ミクロンの窒化アルミニウムを成長させ、その後、下地層である昇華法で得られた窒化アルミニウムを除去することにより、昇華法による窒化アルミニウムの良好な結晶性を引き継ぎ、且つ、紫外線透過性を有する窒化アルミニウム自立基板が得られているが、昇華法で得られた窒化アルミニウムを利用する限り、非常に高価であるという問題点が克服されることはない。
これに対し、比較的安価なサファイア単結晶基板を用い、この基板上に窒化アルミニウム単結晶膜を成長させた基板作製の検討が行われている。例えば、特許文献1では、サファイア単結晶基板の表面を窒化処理することにより表面窒化層を形成し、この窒化層を介して窒化アルミニウム膜を形成した基板が提案されている。
特許第4260380号公報
特許文献1では、窒化アルミニウム膜の形成には気相成長法が用いられている。その一方で、液相成長法は、熱力学的に平衡に近い状態で成長が行われるため、より転位密度の低い単結晶膜の成長が期待される。しかしながら、本発明者らは、液相成長法を用いて、表面窒化層を有するサファイア単結晶基板上への窒化アルミニウム膜の形成を試みたところ、液相成長法では、表面窒化層を有するサファイア単結晶基板上には窒化アルミニウム膜が成長しないことを確認している。
そこで、本発明は、低転位密度のアルミニウム含有III族窒化物半導体膜をエピタキシャル成長させることが可能な基板として、サファイア単結晶基板上に低転位密度の窒化アルミニウム膜を液相成長法により形成させたエピタキシャル成長用基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するための本発明に係るエピタキシャル成長用基板の製造方法は、サファイア単結晶基板の表面を窒化処理してサファイア単結晶基板の表面に厚さ3nm以上20nm以下の窒素極性の窒化アルミニウム層を形成し、大気雰囲気中で加熱し、窒化アルミニウム層の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転させるために窒素極性の窒化アルミニウム層の表面に酸素を含有させて酸素含有層を形成し、酸素含有層上に、液相成長法により転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜を形成することを特徴とする。
また、本発明に係るエピタキシャル成長用基板は、サファイア単結晶基板と、サファイア単結晶基板の表面に形成された3nm以上20nm以下の窒素極性の窒化アルミニウム層と、窒化アルミニウム層の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転させるための窒素極性の窒化アルミニウム層の表面に形成された酸素含有層とを有する窒化サファイア基板と、酸素含有層上に形成された転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜とを備え、前記サファイア単結晶基板は、a面を主面とすることを特徴とする。
本発明によれば、低転位密度のアルミニウム含有III族窒化物半導体膜を、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等によりエピタキシャル成長させることが可能なエピタキシャル成長用基板を作製することができ、更に、このエピタキシャル成長用基板を用いることで、アルミニウム含有III族窒化物半導体膜で構成される半導体素子の高性能化を図ることができる。
本発明の実施の形態に係るエピタキシャル成長用基板の構成例を示す図である。 実施例1で得られたエピタキシャル成長用基板の断面を透過型電子顕微鏡により撮影した画像を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係るエピタキシャル成長用基板及びその製造方法について、図面を参照しながら以下の項目に沿って詳細に説明する。なお、本発明に係るエピタキシャル成長用基板及びその製造方法は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることは可能である。
1.エピタキシャル成長用基板の製造方法
1−1.窒素極性の窒化アルミニウム層の形成工程
1−2.酸素含有層の形成工程
1−3.アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜の形成工程
2.エピタキシャル成長用基板
1.エピタキシャル成長用基板の製造方法
エピタキシャル成長用基板の製造方法では、サファイア単結晶基板の表面に窒素極性の窒化アルミニウム層を形成し、窒素極性の窒化アルミニウム層の極表面に酸素含有層を形成し、酸素含有層上にアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜を形成することで、図1に示すようなエピタキシャル成長用基板1が作製される。
一般的に、サファイア単結晶基板には、a面を主面とするものやc面を主面とするもの等が知られている。エピタキシャル成長用基板1の出発原料であるサファイア単結晶基板10aは、後述するエピタキシャル成長用基板1の最上層に形成されるアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の転位密度を低減することができれば特に限定されず、例えば、a面を主面とするものやc面を主面とするもの等を用いる。これらのうち、a面を主面とするサファイア単結晶基板10aを用いた場合には、c面を主面とするサファイア単結晶基板10aを用いた場合と比較して、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20における低転位密度化を図ることができる。
1−1.窒素極性の窒化アルミニウム層の形成工程
窒素極性の窒化アルミニウム層10bの形成工程では、サファイア単結晶基板10aの表面を窒化処理することにより、サファイア単結晶基板10aの表面に、窒素極性の窒化アルミニウム層10bが形成される。
窒素極性の窒化アルミニウム層10bの形成工程では、サファイア単結晶基板10aを窒素含有雰囲気中で、所定の温度及び時間で加熱することにより、サファイア単結晶基板10aの表面に窒化処理を施す。例えば、サファイア単結晶基板10aを窒素(N)分圧0.9atm/一酸化炭素(CO)分圧0.1atm、温度1500℃で1時間保持した後、窒素分圧1.0atmで5時間保持することにより、サファイア単結晶基板10aの表面に、結晶性に優れた窒素極性の窒化アルミニウム層10bを形成することができる。
1−2.酸素含有層の形成工程
酸素含有層10cの形成工程では、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面の少なくとも一部の窒素原子を酸素原子に置換することにより、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面に酸素含有層10cが形成される。
酸素含有層10cの形成工程では、例えば、窒素極性の窒化アルミニウム層10bが形成されたサファイア単結晶基板10aを大気雰囲気中で加熱する。この加熱処理で、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面の少なくとも一部の窒素原子が酸素原子に置換され、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面に酸素含有層10cを形成することができる。
或いは、後述する窒化アルミニウム膜20を形成するためのアルミニウム含有合金融液中に、窒素極性の窒化アルミニウム層10bが形成されたサファイア単結晶基板10aを浸漬し、アルミニウム含有合金融液中にppmオーダーの酸素を含む窒素ガスを吹き込むことにより、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面の少なくとも一部の窒素原子を酸素原子に置換し、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面に酸素含有層10cを形成することもできる。アルミニウム合金融液中で酸素含有層10cを形成する際には、窒素極性の窒化アルミニウム層10b表面の一部が融液中に溶解(メルトバック)するため、窒素極性の窒化アルミニウム層10bは、3nm以上の厚さを有することが必要となる。
以上のような酸素含有層10cの形成工程では、前工程でサファイア単結晶基板10aの表面に、窒素極性の窒化アルミニウム層10bを形成し、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面に、酸素含有層10cを形成することで、窒化サファイア基板10を作製することができる。
1−3.アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜の形成工程
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成工程では、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの形成工程及び酸素含有層10cの形成工程を経て得られた窒化サファイア基板10を用い、液相成長法により、窒化サファイア基板10上にアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成する。アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成工程では、液相成長法を用いることで、アルミニウム極性を有し、低転位密度の窒化アルミニウム膜20が得られる。
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成工程では、例えば、アルミニウムを含有する合金融液としてGa−Al合金融液を用い、窒化サファイア基板10をGa−Al合金融液に浸漬すると共に、Ga−Al合金融液中に窒素ガスを吹き込みながら保持することにより、窒化サファイア基板10の最上層である酸素含有層10c上に、転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成することができる。ここでは、窒化サファイア基板10の最上層に酸素含有層10cが存在することで、窒化サファイア基板10上に成長する窒化アルミニウム結晶の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転し、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成することができる。
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の液相成長法では、熱力学的に平衡に近い状態で窒化アルミニウムの結晶成長が行われるため、転位密度が低く、結晶性に優れた窒化アルミニウム結晶が成長する。従って、窒素極性の窒化アルミニウム層10bを形成したサファイア単結晶基板10a上に、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成することによる、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の転位低減効果に加えて、酸素含有層10cを介することにより、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を液相成長法で形成することが可能となり、更にアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の転位密度を低減することができる。
また、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成工程において、窒素極性の窒化アルミニウム層10bが表面に形成されたサファイア単結晶基板10aを用い、Ga−Al合金融液中で酸素含有層10c及びアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成する場合には、まず、Ga−Al合金融液に窒素ガスを吹き込み、サファイア単結晶基板10aをGa−Al合金融液に浸漬して昇温する。酸素含有層10cは、Ga−Al合金融液を所定温度に昇温する過程で形成される。次いで、所定温度まで昇温したGa−Al合金融液を保持することにより、窒素極性の窒化アルミニウム層10bを有するサファイア単結晶基板10aの極表面に形成された酸素含有層10c上に、転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20が形成される。
Ga−Al合金融液としては、ガリウムとアルミニウムとのモル比率が99:1〜1:99の範囲のものを用いることができる。この中でも、低温成長及び結晶性の観点から、ガリウムとアルミニウムとのモル比率が98:2〜40:60の範囲のものが好ましく、98:2〜50:50の範囲のものが更に好ましい。
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成工程では、窒素ガスとして酸素含有量が少ないものを使用することができる。窒素分圧は、通常、0.01MPa以上1MPa以下である。また、酸素分圧としては、特に限定されず、非常に低くてもよく、例えば、1×10−6atm以下であってもよい。窒素ガス中の酸素分圧の制御は、例えば、市販の窒素ガスボンベから得られるガスを、数百℃の温度に保った銅やニッケル等が充填された脱酸素炉に通して酸素分圧を十分に低下させた後、所望の酸素分圧となるように微量の酸素ガス又は酸素/窒素混合ガスを添加する。或いは、ジルコニア式酸素ポンプを用いて酸素分圧を制御することもできる。また、予め所望の酸素分圧になるように調製されたガスボンベから窒素ガスを供給するようにしてもよい。
ところで、酸素含有層10cが形成されず、窒素極性の窒化アルミニウム層10bのみが形成されたサファイア単結晶基板10aを、Ga−Al合金融液に浸漬させた場合には、窒化アルミニウム結晶は殆ど成長せずに、逆に、窒化アルミニウム層10bがGa−Al合金融液に溶解して消失してしまう現象が多く見られる。一方、上述した各工程を経て得られた窒化サファイア基板10を用いた場合には、酸素含有層10cが窒素極性の窒化アルミニウム層10bの溶解による消失を防ぐことにより、窒化サファイア基板10上にアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成することができる。
以上のようなエピタキシャル成長用基板1の製造方法では、窒化サファイア基板10の最上層に酸素含有層10cが存在することで、窒化サファイア基板10上に成長する窒化アルミニウム結晶の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転し、液相成長法により、転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を有するエピタキシャル成長用基板1を作製することができる。
2.エピタキシャル成長用基板
エピタキシャル成長用基板1は、図1に示すように、窒化サファイア基板10と、窒化サファイア基板10上に形成されたアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20とから構成されている。窒化サファイア基板10は、サファイア単結晶基板10aと、サファイア単結晶基板10aの表面に形成された窒素極性の窒化アルミニウム層10bと、窒化アルミニウム層10bの極表面に形成された酸素含有層10cとから構成されている。
窒化アルミニウム層10bは、c軸配向単結晶膜であり、且つ、窒素で終端された窒素極性を有する。また、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの厚さは、3nm以上20nm以下であることが好ましい。結晶性の良い窒素極性の窒化アルミニウム層10bとするためには、ある程度の厚さが必要であり、また、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面に、酸素含有層10cを形成するためには、3nm以上の厚さが必要である。
例えば、アルミニウム合金融液中で酸素含有層10cを形成する際には、窒素極性の窒化アルミニウム層10b表面の一部が融液中に溶解(メルトバック)するため、窒素極性の窒化アルミニウム層10bは、3nm以上の厚さを有することが必要となる。一方、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの厚さの上限は特に限定されないが、20nmを超えた膜を形成しても結晶性の向上には影響せず、窒化処理に長時間を要するのみで製造の効率低下を招く。
酸素含有層10cの厚さは、酸素含有層10cを介して形成される窒化アルミニウム膜20の極性を、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極性に対して反転させ、アルミニウム極性にすることができ、アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の形成を阻害しない程度の厚さであれば特に限定されず、例えば、1nm以上2nm以下である。
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20の転位密度は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて測定することができ、1010/cm以下である。液相成長法では、熱力学的に平衡に近い状態で窒化アルミニウムの結晶成長が行われるため、転位密度が低く、結晶性に優れた窒化アルミニウム結晶が成長することが知られている。更に、エピタキシャル成長用基板1は、液相成長法でアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20を形成することが可能となり、転位密度を低減することができる。
アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20中の酸素濃度は、例えば、窒化アルミニウム膜断面の透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析(TEM-EDX:Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray spectroscopy)により測定することができ、1atomic%以上7atomic%以下である。アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20は、酸素含有層10cを介して形成されることから、酸素含有層10cとの格子整合性が必要である。酸素含有層10cは、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの極表面の少なくとも一部の窒素原子を酸素原子に置換して形成されることから、窒素極性の窒化アルミニウム層10bの構造の格子定数から若干の変化がある。従って、酸素含有層10c上に形成されるアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜20においては、このずれを緩和するため、その膜中に酸素が取り込まれている。
以上のようなエピタキシャル成長用基板1は、窒化サファイア基板10の最上層に形成された酸素含有層10c上に、アルミニウム極性を有し、転位密度が1010/cm以下の窒化アルミニウム膜20が形成されている。これにより、エピタキシャル成長用基板1上に、低転位密度のアルミニウム含有III族窒化物半導体膜を、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等によりエピタキシャル成長させることができ、アルミニウム含有III族窒化物半導体膜で構成される半導体素子の高性能化を図ることができる。
以下に示す実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
まず、実施例1では、a面を主面とするサファイア単結晶基板を、窒素(N)分圧0.9atm/一酸化炭素(CO)分圧0.1atm、温度1500℃で1時間保持した後、窒素分圧1.0atmで5時間保持することにより、サファイア単結晶基板の表面に窒化アルミニウム層を形成した。
実施例1では、サファイア単結晶基板上に形成した窒化アルミニウム層について、薄膜X線回折測定を行ったところ、c軸配向した単結晶膜であった。また、窒化アルミニウム層の厚さを、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いた断面の観察により測定した結果、図2に示すように、10nmであった。更に、収束電子回折(CBED:Convergent-beam electron diffraction)法により、窒化アルミニウム層の極性を判定したところ、窒素極性であった。
次に、実施例1では、表面に窒化アルミニウム層を形成したサファイア単結晶基板を大気雰囲気中、温度450℃で3時間保持することにより、窒化アルミニウム層の表面に酸素含有層を形成し、窒化サファイア基板を得た。
その後、実施例1では、ガリウムとアルミニウムのモル比率が60:40のGa−Al合金融液を、窒素ガス中で昇温させた。そして、アルミニウムの融点に達した後、Ga−Al合金融液中に、ジルコニア式酸素ポンプで酸素分圧を1.2×10−9atmに調節した0.1MPaの窒素ガスを20cc/minの流速で吹き込んだ。次いで、坩堝内のGa−Al合金融液の温度を1300℃に保ち、窒化サファイア基板をGa−Al合金融液中に浸漬させた。5時間経過した後、窒化サファイア基板をフラックス中から取り出して徐冷を行い、窒化サファイア基板上に窒化アルミニウム結晶を成長させることにより、厚さが約1μmの窒化アルミニウム膜を形成させ、エピタキシャル成長用基板を得た。
実施例1では、窒化アルミニウム膜の転位密度をTEM観察により測定したところ、5×10/cmであった。また、窒化アルミニウム膜の極性をCBED法により判定したところ、アルミニウム極性であった。また、窒化アルミニウム膜中の酸素濃度を、TEM−EDX法により測定したところ、1.2atomic%であった。
[実施例2]
実施例2では、c面を主面とするサファイア単結晶基板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、サファイア単結晶基板の表面に窒化アルミニウム層を形成した。この窒化アルミニウム層について、実施例1と同様にして、薄膜X線回折測定、TEMによる断面観察及びCBED法による極性判定を行ったところ、窒化アルミニウム層は、c軸配向した単結晶膜であり、厚さは9nmで窒素極性を有していた。
次に、実施例2では、実施例1と同様にして、窒化アルミニウム層の表面に酸素含有層を形成し、その上に液相成長法により窒化アルミニウム結晶を成長させることにより、窒化アルミニウム膜の形成を試みた。その結果、実施例2では、極性がアルミニウム極性であり、厚さが約1μmの窒化アルミニウム膜が得られたが、その転位密度をTEM観察により測定したところ、8×10/cmであった。
[実施例3]
実施例3では、窒化アルミニウム層の表面に酸素含有層を形成する際に、Ga−Al合金融液中で行ったこと以外は実施例1と同様にして、エピタキシャル成長用基板を作製した。
実施例3では、実施例1と同様にして、サファイア単結晶基板の表面に窒化アルミニウム層を形成し、その後、ガリウムとアルミニウムのモル比率が60:40のGa−Al合金融液を、窒素ガス中で昇温させた。そして、アルミニウムの融点に達した後、Ga−Al合金融液中に、ジルコニア式酸素ポンプで酸素分圧を1.9×10−6atmに調節した0.1MPaの窒素ガスを20cc/minの流速で吹きむと共に、表面に窒化アルミニウム層を形成したサファイア単結晶基板を、Ga−Al合金融液中に浸漬した。坩堝内のGa−Al合金融液の温度が1300℃に達した後、その温度を1300℃に保ち、5時間経過した後、窒化サファイア基板をフラックス中から取り出して徐冷を行い、窒化サファイア基板上に窒化アルミニウム結晶を成長させることにより、窒化アルミニウム膜を形成させた。
実施例3では、窒化アルミニウム層の表面上の酸素含有層は、坩堝内のGa−Al合金融液の温度を1300℃まで昇温する過程で形成された。
実施例3では、エピタキシャル成長用基板について、TEMによる断面観察を行ったところ、窒化アルミニウム層の厚さは6nmであり、窒化アルミニウム膜の厚さは約1μmであった。また、窒化アルミニウム膜の転位密度をTEM観察により測定したところ、6×10/cmであった。更に、窒化アルミニウム層及び窒化アルミニウム膜の極性をCBED法により判定したところ、窒化アルミニウム層は窒素極性を有し、窒化アルミニウム膜はアルミニウム極性を有していた。また更に、窒化アルミニウム膜中の酸素濃度を、TEM−EDX法により測定したところ、6.7atomic%であった。
[比較例1]
比較例1では、窒化アルミニウム層の表面に酸素含有層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、窒化アルミニウム層を形成したサファイア単結晶基板上に、液相成長法により窒化アルミニウム結晶を成長させることにより、窒化アルミニウム膜の形成を試みた。
その結果、比較例1では、窒化アルミニウム層を形成したサファイア単結晶基板上に窒化アルミニウム結晶は均一に成長せず、基板表面の40%の部分で窒化アルミニウム結晶が成長せずに、窒化アルミニウム膜の形成は見られなかった。
以上の各実施例及び比較例の結果から、サファイア単結晶基板の表面を窒化処理し、サファイア単結晶基板の表面に窒素極性の窒化アルミニウム層を形成した後、窒素極性の窒化アルミニウム層の極表面に酸素含有層を形成することにより、窒化サファイア基板を作製できることがわかった。
また、窒化サファイア基板の最上層に酸素含有層が存在することで、窒化サファイア基板上に成長する窒化アルミニウム結晶の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転し、転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム結晶を、液相成長法により成長させてアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜を形成し、エピタキシャル成長用基板を作製することができることが明らかとなった。
更に、各実施例の結果から、窒素極性の窒化アルミニウム層が形成されたサファイア単結晶基板を大気雰囲気中で加熱する方法や、窒素極性の窒化アルミニウム層が形成されたサファイア単結晶基板を浸漬したアルミニウム含有合金融液中に酸素を含む窒素ガスを吹き込んで加熱する方法の何れかの方法により、窒素極性の窒化アルミニウム層上に酸素含有層を形成できることが明らかとなった。
1 エピタキシャル成長用基板、10 窒化サファイア基板、10a サファイア単結晶基板、10b 窒化アルミニウム層、10c 酸素含有層、20 窒化アルミニウム膜

Claims (5)

  1. サファイア単結晶基板の表面を窒化処理して該サファイア単結晶基板の表面に厚さ3nm以上20nm以下の窒素極性の窒化アルミニウム層を形成し、
    大気雰囲気中で加熱し、前記窒化アルミニウム層の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転させるために該窒素極性の窒化アルミニウム層の表面に酸素を含有させて酸素含有層を形成し、
    前記酸素含有層上に、液相成長法により転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜を形成することを特徴とするエピタキシャル成長用基板の製造方法。
  2. 酸素濃度が1atomic%以上7atomic%以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長用基板の製造方法。
  3. a面を主面とする前記サファイア単結晶基板の表面を窒化処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャル成長用基板の製造方法。
  4. サファイア単結晶基板と、前記サファイア単結晶基板の表面に形成された3nm以上20nm以下の窒素極性の窒化アルミニウム層と、該窒化アルミニウム層の極性が窒素極性からアルミニウム極性に反転させるための前記窒素極性の窒化アルミニウム層の表面に形成された酸素含有層とを有する窒化サファイア基板と、
    前記酸素含有層上に形成された転位密度が1010/cm以下のアルミニウム極性の窒化アルミニウム膜とを備え
    前記サファイア単結晶基板は、a面を主面とすることを特徴とするエピタキシャル成長用基板。
  5. 前記アルミニウム極性の窒化アルミニウム膜中の酸素濃度は、1atomic%以上7atomic%以下であることを特徴とする請求項4に記載のエピタキシャル成長用基板。
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