本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、雄ルアーの挿入抵抗を小さくして、雄ルアーを弾性弁体に対して容易に挿入することが出来る新規な構造のニードルレスコネクターを提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第1の態様は、ハウジングに形成された薬液流路の一端側に弾性弁体が配されており、雄ルアーを挿し入れることで該弾性弁体のスリットが開いて該薬液流路に該雄ルアーが連通されるニードルレスコネクターにおいて、前記ハウジングにおける前記薬液流路の一端側の端面が、中央部分が突出し裾方向に広がって傾斜する突状支持面とされており、該突状支持面に対して前記弾性弁体が重ね合わされていると共に、前記雄ルアーの挿し入れにより該弾性弁体が該突状支持面に沿って拡開変形されるようになっている一方、該スリットの長さ方向と直交する方向において、該弾性弁体の外周側には変形許容空間が設けられていると共に、該スリットの長さ方向と直交する縦断面において、該突状支持面には傾斜角度を異ならせる変曲部が形成されており、該変形許容空間が該ハウジングにおける該雄ルアーの挿入口よりも内方で且つ該突状支持面の該変曲部よりも内方にまで広がっていることを特徴とするものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、突状支持面に対して弾性弁体を重ね合わせたことにより、雄ルアーの挿し入れ時に弾性弁体が突状支持面に沿って、スリット拡開方向に押し広げられて弾性変形する。これにより、雄ルアーの挿し入れ時に弾性弁体が突状支持面にガイドされて、スリットが広がり易い。
また、弁本体部の外周側において、スリットの長さ方向と直交する方向では、変形許容空間が、ハウジングにおける雄ルアーの挿入口よりも内方にまで広がって形成されている。即ち、雄ルアーの挿入時に弾性弁体が最も押し広げられる方向において、弾性弁体の厚さ寸法が小さくされていることから、弾性弁体の変形が容易に許容される。しかも、雄ルアーの挿入口よりも内側に変形許容空間が形成されていることで、雄ルアーの挿入に伴って変形許容空間へ膨らむ弾性弁体の変形が小さな弾性抵抗で一層容易に且つ大きく許容され得ることとなる。
これにより、弾性弁体の変形が容易に許容されることから、雄ルアーの挿入に際して弾性弁体から及ぼされる抵抗力が、弾性弁体が変形許容空間へ膨らむ変形によって逃がされ得て、雄ルアーの弾性弁体への挿入操作性の向上が図られ得る。
そして、本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、突状支持面において傾斜角度を異ならせる変曲部が形成されていることから、突状支持面へ重ね合わされる弾性弁体には、変曲部に対応する位置に屈曲部分が形成される。それ故、雄ルアー挿入時において、突状支持面に沿って弾性弁体が変形する際に、かかる屈曲部分からの変形が発生し易い。かかる変曲部よりも内方まで変形許容空間が広がっていることにより、変曲部での弾性弁体の厚さ寸法を小さくすることができて、これにより、雄ルアーの挿入時において、弾性弁体が一層安定して変形され得る。なお、本発明における変曲部は、突状支持面の断面において、当該突状支持面を構成する曲線または直線の変曲点または交点に相当する。
本発明の第2の態様は、ハウジングに形成された薬液流路の一端側に弾性弁体である第1弁体が配されており、雄ルアーを挿し入れることで該第1弁体のスリットが開いて該薬液流路に該雄ルアーが連通されるニードルレスコネクターにおいて、前記ハウジングにおける前記薬液流路の一端側の端面が、中央部分が突出し裾方向に広がって傾斜する突状支持面とされており、該突状支持面に対して前記第1弁体が重ね合わされていると共に、前記雄ルアーの挿し入れにより該第1弁体が該突状支持面に沿って拡開変形されるようになっている一方、該スリットの長さ方向と直交する方向において、該第1弁体の外周側には変形許容空間が設けられていると共に、該変形許容空間が該ハウジングにおける該雄ルアーの挿入口よりも内方にまで広がっており、且つ、該第1弁体の外側端面に第2弁体が重ね合わされて、該第2弁体のスリット内に該雄ルアーが挿し入れられるようになっていると共に、該第2弁体における該スリットに直交する方向の厚さ寸法が該第1弁体に向かって次第に大きくされることで該第2弁体における該第1弁体側の部分に肉厚部が形成されていると共に、該第1弁体の外周側に設けられた該変形許容空間が該第2弁体の該肉厚部の下方にまで広がっていることを特徴とするものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、第2弁体が弾性弁体の外側端面に設けられており、第2の弁体の第2のスリットに対して雄ルアーが挿抜される。特に、雄ルアーが第2の弁体のスリットの壁面によりしごかれるようにして第2弁体から抜き取られることから、雄ルアーの先端に付着した薬液や血液等が外部へ漏出するおそれを一層低減させることができる。
また、本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係るニードレスコネクターであって、前記ハウジングは、前記第1弁体が配置される大径部分と、前記第2弁体が配置される小径部分とを有していると共に、該小径部分における該大径部分側の端部側に該第2弁体の前記肉厚部が配されており、前記雄ルアーが挿し入れられることで該肉厚部が該大径部分へ入り込むように弾性変形して該第1弁体に押し付けられるものである。
本発明の第4の態様は、前記第1〜第3の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記薬液流路の長さ方向において、前記弁本体部の中央よりも前記一端側における前記変形許容空間の縦断面積が、他端側における該変形許容空間の縦断面積よりも大きくされているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、変形許容空間において、薬液流路方向の他端側に比べて一端側が大きくされている。ここにおいて、雄ルアーがハウジングにおける薬液流路方向の一端側から挿入されることから、雄ルアー挿入時における弾性弁体の変形が一層許容される。これにより、雄ルアーが更に容易に挿入され得るだけでなく、弾性弁体と突状支持面との間において、一層安定して隙間を形成することができる。
本発明の第5の態様は、前記第1〜第4の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記弾性弁体の外周面に開口して設けられた一対の抉れ状部を含んで前記変形許容空間が形成されていると共に、該抉れ状部における最深部が前記雄ルアーの挿し入れ方向において該抉れ状部の中央よりも該雄ルアーが挿し入れられる端面側に位置しており、該抉れ状部の深さが該雄ルアーの挿し入れ方向の両端から該最深部に向かって次第に大きくなっているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、弾性弁体における抉れ状部の最深部が雄ルアーの挿入側に近い位置に設定されていることから、弾性弁体における雄ルアーの挿入側が変形し易くされて雄ルアーの挿入抵抗の低減による操作性の更なる向上が図られ得る。また、弾性弁体における抉れ状部の最深部を雄ルアーの挿入側に近い位置に設定したことで、雄ルアーの挿入時には、弾性弁体において、突状支持面に沿って押し広げられるような弾性変形が一層大きく発生させられ得る。
なお、本態様において、抉れ状部の深さを、雄ルアーの挿し入れ方向の両端から最深部に向かって、例えば段階的に大きくしてもよいが、無段階的に滑らかに大きくすることが好適である。これにより、弾性弁体のスリットと直交する方向の縦断面における抉れ状部の表面形状を湾曲面形状とすることも可能であり、それによって、雄ルアーの挿入時には弾性弁体の全体が滑らかにより大きく弾性変形することとなる。その結果、弾性弁体と突状支持面との間に更に大きな隙間を形成させることができると共に、弾性弁体の変形に伴う応力の局所的な集中を回避させることができることから、弾性弁体が一層安定して変形され得る。
本発明の第6の態様は、前記第1〜第5の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記スリットの長さ方向と直交する縦断面において、前記弾性弁体の外周面に開口して設けられた一対の抉れ状部を含んで前記変形許容空間が形成されていると共に、該抉れ状部における最深部が前記突状支持面の突出方向の中央の位置よりも深くされているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、変形許容空間の容積が一層大きく確保されることから、雄ルアー挿入時において、弾性弁体の変形が更に容易に且つ大きく許容される。また、抉れ状部における最深部が突状支持面の突出方向で高い位置に設定されることで、雄ルアー挿入時において突状支持面から変形許容空間へ膨らむ弾性弁体の膨出変形量もより広い領域で大きく確保することが可能になる。
ところで、ニードルレスコネクターでは、雄ルアーを抜き取る際に、その薬液流路に接続されたカテーテルに血管から血液が入り込み(逆流)、血液凝固が生じるおそれがある。そこで、雄ルアーを抜き取る際の血液の逆流を防止可能なニードルレスコネクターが求められている。
前記特許文献1に記載されたニードルレスコネクターは、従来構造のものであり、薬液流路の先端開口部が弾性弁体に向かって次第に広がっている構造のものが開示されている。しかし、この構造は弾性弁体における薬液流路側の端面が支えられておらず、外部から雄ルアーを挿し入れた際に、弾性弁体の中央部分が薬液流路の先端開口部から内方に入り込むように弾性変形する。その結果、雄ルアーを抜き取る際には、弾性弁体の復元変形に伴って、血管等に接続された薬液流路の容積が増大して、薬液流路への血液等の吸い込み力が生じるため、血液の逆流が生じやすかった。
なお、かかる血液の逆流を防止するために、特表2009−544449号公報には、弁体である隔壁に対して、内側チャンバーを形成すると共に硬質部材を埋設した構造のニードルレスコネクターが提案されている。かかる構造のニードルレスコネクターでは、雄ルアー等の先端部の挿し入れ時に、隔壁の弾性変形に伴って内側チャンバーの容積が増大することにより、先端部の抜き取り時に内側チャンバーの容積が減少して血液等の逆流が防止されるようになっている。
しかしながら、上記の如き構造とされたニードルレスコネクターでも、弁体である隔壁に対して雄ルアー等の先端部を挿し入れると、内側チャンバーは拡幅されるものの、内側チャンバー内に隔壁が入り込むように変形することから、結局のところ内側チャンバーの容積拡大が充分に達成され難く、目的とする血液等の逆流防止効果が充分に発揮され難いという問題があった。しかも、弁体である隔壁が硬質部材との複合構造とされて、形状も複雑であることから製造が難しいという問題もある。更に、弾性体である隔壁の弾性変形が硬質部材で拘束されることから、変形剛性が大きくなって操作が難しくなるおそれがあることに加えて、変形応力の集中等による亀裂の発生が懸念されて充分な耐久性を得難いという問題もある。
そこで、本発明の第7の態様は、前記第1〜第6の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記雄ルアーの挿し入れにより、前記突状支持面に対して重ね合わされていた前記弾性弁体が、該突状支持面の高さ方向の中央よりも裾側部分の少なくとも一部を含む部位において、該突状支持面から離れて膨らむようになっているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、雄ルアーの挿入時において、雄ルアーで押される入力点から遠い突状支持面の裾側部分に重ね合わされた領域において、弾性弁体が突状支持面から変形許容空間へ膨らんで変形することにより、弾性弁体と突状支持面との間には大きな隙間が形成されて、薬液流路の容積が確実に増大する。それ故、雄ルアーを抜き取った際に、広がっていたスリットおよび隙間が閉じる分に相当する容積減少量が薬液流路に陽圧(正圧)を発生することとなり、薬液流路内に残留する血液や薬液等が順方向に安定して吐出されると共に、血液等の逆流が効果的に防止され得る。
本発明の第8の態様は、前記第1〜第7の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記スリットの長さ方向と直交する縦断面において、前記変形許容空間の断面積が、該変形許容空間の内周側に位置する前記弾性弁体の断面積よりも大きくされているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、弁本体部の容積よりも変形許容空間の容積の方が大きくされていることから、雄ルアー挿入時において弁本体部が弾性変形した際に、弾性弁体がハウジング内面に当接することがなく、弾性弁体の変形が制限されない。これにより、雄ルアーの良好な挿入性が発揮されると共に、弾性弁体と突状支持面との間に安定して隙間を形成することができる。
本発明の第9の態様は、前記第1〜第8の何れかの態様に係るニードルレスコネクターであって、前記雄ルアー挿入時における前記薬液流路の容積が、該雄ルアー抜去後における該薬液流路の容積以上とされているものである。
本態様に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、雄ルアー挿入時における薬液流路の容積が、雄ルアー抜去後における薬液流路の容積と略同じかそれ以上とされていることから、雄ルアーの抜去時に薬液流路に大きな陰圧が発生することが回避される。これにより、雄ルアーの抜去時に、薬液流路を通じて血液等が逆流することが効果的に防止され得る。
本発明に従う構造とされたニードルレスコネクターによれば、弾性弁体が突状支持面に沿って変形することから、弾性弁体が雄ルアーによる押圧力に対して変形し易く、また、弾性弁体の変形許容空間が挿入口よりも内方まで広がっていることから、弾性弁体からの弾発力(弾性抵抗)も小さくなり、雄ルアーを弾性弁体に対して容易に挿入することが可能になる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1,2には、本発明の1実施形態としてのニードルレスコネクター10が示されている。このニードルレスコネクター10は、ハウジング12に対して、弾性弁体としての下部弁14と第2弁体としての上部弁16とが組み込まれた構造とされている。なお、以下の説明中、上下方向とは、薬液流路の延びる方向および雄ルアーの挿抜方向である図1,2中の上下方向を言う。
より詳細には、ハウジング12は分割構造とされており、図1,2中の下方に位置するベースハウジング18と、図1,2中の上方に位置するカバーハウジング20とを含んで構成されている。
ベースハウジング18は、上下方向に延びる筒状部22の外周側に離れて周壁部24が設けられており、これら筒状部22と周壁部24の上端部間が上底部26で一体的に連結されている。また、筒状部22は、周壁部24から下方に突出しており、筒状部22の内部に薬液流路28が形成されている。なお、周壁部24の外周面において、長さ方向(図2中の上下方向)中間部分には、周上で部分的に複数の係合突部30が、外周側に突出して形成されている。かかる係合突部30は、上方の面が、下方になるにつれて突出寸法が大きくなる傾斜面とされていると共に、下方の面が、外周側に垂直に突出する垂直面とされている。一方、周壁部24の内周面にはロック溝32が形成されている。
そして、図示しない血管内留置カテーテル等が、ベースハウジング18の筒状部22の基端開口部に対して接続されるようになっている。本実施形態では、筒状部22と周壁部24とによってロック型のルアー構造が構成されており、カテーテル等が確実に且つ容易に接続可能とされている。
また、ベースハウジング18において、筒状部22と周壁部24を連結する上底部26の上端面には、中央部分から上方に向かって略山形に突出すると共に裾方向に傾斜して広がる突状支持面34が形成されている。この突状支持面34の上端には、軸直角方向の1方向(図2中の左右方向)に平坦に延びる頂部36が形成されている。これにより、本実施形態では、突状支持面34が全体として長山形状とされている。
さらに、筒状部22に形成された薬液流路28には、長さ方向一方の側の端部である上方端部において、断面積を縮小されたノズル状の開口部38が形成されている。そして、このノズル状の開口部38が、突状支持面34において頂部36の中央に開口している。また、頂部36の延びる方向と直交する方向(図1中の左右方向)の突状支持面34には、頂部36を挟んだ両側に、開口部38から突状支持面34に沿って裾側下端まで直線状に延びる一対の連通溝40,40が形成されている。
また、頂部36の延びる方向と直交する方向の突状支持面34には、頂部36を挟んだ両側に、一対の湾曲凹部42,42が形成されている。これらの湾曲凹部42,42は、突状支持面34の表面を抉ったように形成されており、外方に凹となる円弧状断面形状をもって頂部36と同方向に延びている。本実施形態では、図3に要部拡大図が示されているように、これらの湾曲凹部42,42は、突状支持面34の軸方向(図3中の上下方向)中央よりも上方に設けられていると共に、湾曲凹部42,42の下端縁部が突状支持面34の軸方向略中央(図3中において、La=Lbとなる直線L)に位置している。
すなわち、図3にも示されているように、頂部36の延びる方向と直交する方向の縦断面において、突状支持面34は、軸方向上方が内方に凸となる曲線で構成されている一方、軸方向下方が、裾側下端に向かって延びる直線で構成されている。従って、湾曲凹部42,42の下端縁部を挟んで軸方向上方と下方とで突状支持面34の傾斜角度が異ならされている。即ち、本実施形態では、これら湾曲凹部42,42の下端縁部により変曲部44,44が構成されており、当該変曲部44,44を挟んで上方と下方とが外方に凸となるように屈曲して接続されている。なお、本実施形態では、湾曲凹部42,42の表面には連通溝40,40は形成されておらず、突状支持面34において、湾曲凹部42,42を外れた傾斜面に連通溝40,40が形成されている。
なお、ベースハウジング18において、上底部26の上面には、突状支持面34の外周側を所定幅で周方向に広がる環状の平坦面46が形成されている。
このようなベースハウジング18と協働してハウジング12を構成するカバーハウジング20は、図1,2に示されているように、全体として段付の円筒形状を有している。即ち、かかるカバーハウジング20は、大径の円筒形状を有するカバー本体48と、小径の円筒形状を有する接続口部50とが、円環板形状の上底部52により一体的に連結されている。なお、カバー本体48には、ベースハウジング18の係合突部30と対応する位置において、係合孔54が厚さ方向で貫通して形成されている。また、接続口部50により、後述する雄ルアー100の挿入口が構成されている。
そして、下方に向かって開口するカバー本体48が、ベースハウジング18の上方から組み付けられて、カバー本体48の下方開口部がベースハウジング18の外周面に嵌め合わされている。なお、カバー本体48とベースハウジング18とは、係合突部30が係合孔54に入り込むことで周方向で位置決めされ得ると共に、係合突部30下端の垂直面と係合孔54の内面が当接することで、ベースハウジング18におけるカバー本体48の下方からの抜けが防止されている。このように、ベースハウジング18とカバーハウジング20は非接着で組み付けられ得るが、必要に応じて、適当な箇所で、溶着や接着等が施されてもよい。
このようにベースハウジング18に対してカバーハウジング20が組み付けられることにより、ベースハウジング18の上方において、カバーハウジング20で周囲を覆われた内部領域が形成されている。また、かかる内部領域は、カバーハウジング20の接続口部50を通じて、上方に開口されている。なお、接続口部50の外周面には、ロック溝56が形成されている。また、カバー本体48および接続口部50の各周壁には、内外に貫通する空気抜き孔58が周上で部分的に1つ、或いは複数(本実施形態では2つずつ)形成されている。
かかるベースハウジング18およびカバーハウジング20は、好適にはポリエステル系の合成樹脂によって製造される。このポリエステル系の合成樹脂としては、例えばイーストマンケミカル社製「PETG」などが好適に採用される。
そして、上述の如きハウジング12内に形成された内部領域に対して、下部弁14と上部弁16が組み込まれている。なお、これら下部弁14および上部弁16は、弾性を有するゴムやエラストマにより形成される。
下部弁14は、図4,5に示されているように、全体としてオーバル形の外周面をもったブロック形状の弁本体部60を有している。この弁本体部60の上側部分は、全体として略楕円断面を有する柱体状部61とされており、当該柱体状部61には軸直角方向の1方向(図5中の左右方向)に延びるスリット62が上下方向に貫通して形成されている。また、弁本体部60の下側部分はテーパ状に広がる外周面形状をもった拡径部64とされている。
ここにおいて、スリット62と直交する方向(図4中の左右方向)の両方向における弁本体部60の外周面には、外周面に開口して内方に凸となるように抉った一対の抉れ状部66,66が形成されている。これらの抉れ状部66,66はそれぞれ同形状とされて、スリット62と同方向に延びている。そして、スリット62と直交する方向における柱体状部61の外周面が内方に凸となる滑らかな湾曲面で構成されている一方、当該外周面の下端から拡径部64の外周面が延び出している。特に、本実施形態では、抉れ状部66,66の深さ寸法D(図4参照)が最大となる最深部67,67が、抉れ状部66,66における上下方向中央部分(図4中において、Ma=Mbとなる直線M)よりも上方に位置している。また、抉れ状部66の深さ寸法は、上下方向両端部から最深部67に向かって次第に大きくなるようにされている。即ち、図4中においては、柱体状部61の上端から最深部67までの曲率が、最深部67から柱体状部61の下端までの曲率よりも大きくされていると共に、柱体状部61の下端からは拡径部64の外周面が直線状に延び出している。
要するに、抉れ状部66が上記の如き形状とされることにより、スリット62と直交する方向における弁本体部60の両面は全体として略湾曲面形状とされており、かかる湾曲面の下側部分が拡径部64のテーパ面により構成されている。
なお、下部弁14の上下方向両端部には、弁本体部60の上端部および下端部から外周側に延び出す上下フランジ部68,70が一体形成されている。
また、下部弁14は上端面が平坦面とされている一方、下端面には、中央部分に開口する凹所74が形成されている。この凹所74は、前述のベースハウジング18の突状支持面34の外面形状に対応した内面形状とされており、拡径部64から柱体状部61に亘って形成されている。
具体的には、凹所74における開口側の内周面が、突状支持面34の軸方向下方側に対応したテーパ面形状とされている。また、凹所74における上底側の内周面が、突状支持面34の軸方向上方側に対応した形状とされており、突状支持面34の頂部36に対応する谷線を挟んだ両側(図4中の左右方向両側)には、突状支持面34の湾曲凹部42,42に対応した湾曲凸部76,76が形成されている。
そして、下部弁14におけるスリット62が、凹所74の谷線に沿って形成されている。なお、凹所74の内周面には、深さ方向中間部分において、突状支持面34の変曲部44,44に対応した位置で、湾曲凸部76,76の下端縁により構成される変曲部78,78が形成されている。これにより、凹所74の内周面において、変曲部78,78より開口側が直線状に傾斜するテーパ面とされている一方、変曲部78,78より上底側には内方に凸となる湾曲面が設けられている。本実施形態では、かかる変曲部78,78が、弁本体部60において下側部分とされた拡径部64よりも上方に位置している。そして、弁本体部60における拡径部64は、内外周面がテーパ面とされて、薄肉のテーパ筒部として形成されている。
一方、上部弁16は、全体として略円柱形状の弁本体部80を有しており、この弁本体部80の上下方向両端部からは外周側に突出する上下フランジ部82,84が一体形成されている。また、弁本体部80の中央部分には、軸直角方向の1方向(図2中の左右方向)に延びる第2のスリットとしてのスリット86が上下方向に貫通して形成されている。
そして、下部弁14の上端面に上部弁16が重ね合わされた状態で、これら下部弁14および上部弁16が、ハウジング12内に組み込まれている。ここにおいて、下部弁14における凹所74の内面が、ベースハウジング18における突状支持面34の実質的に全面に亘って略密着状態で重ね合わされていると共に、下部弁14のスリット62が突状支持面34の上端に設けられた頂部36に沿って延びる状態で重ね合わされている。即ち、下部弁14の柱体状部61が突状支持面34の頂部36側に重ね合わされている一方、下部弁14の拡径部64が突状支持面34の裾部側に重ね合わされている。また、下部弁14の下側のフランジ部70は、突状支持面34の外周側でベースハウジング18の平坦面46に対して略密着状態で重ね合わされている。
なお、本実施形態のように、突状支持面34と下部弁14とは実質的に全体が密着状態で重ね合わされることが望ましい。これにより、後述する雄ルアー100の抜取り時において、突状支持面34と下部弁14とが再び密着状態とされ得て、更に大きな陽圧を発生し得る。このことから、薬液流路28内に残留する血液等の吐出量をより向上させることができて、突状支持面34と下部弁14との隙間102内における血液等の残留が一層防止されると共に、血液等の逆流が更に効果的に防止され得る。
また、下部弁14の上側のフランジ部68には、上部弁16の下側のフランジ部84が重ね合わされており、略同じ外径寸法とされた両フランジ部68,84が、カバーハウジング20の上底部52の下面に重ね合わされている。
さらに、ハウジング12には、略円筒形状の押さえスリーブ88が組み込まれており、下部弁14の弁本体部60に外挿状態で配されている。この押さえスリーブ88は、下部弁14における上下のフランジ部68,70間に組み付けられており、押さえスリーブ88の軸方向下端面により、下部弁14の下側フランジ部70の外周部分が、ベースハウジング18の平坦面46に押し付けられてシール固定されている。また、押さえスリーブ88の軸方向上端面により、互いに重ね合わされた下部弁14の上側フランジ部68と上部弁16の下側フランジ部84との各外周部分が、カバーハウジング20の上底部52に押し付けられてシール固定されている。これにより、押さえスリーブ88がハウジング12内で軸方向に位置決めされると共に、カバーハウジング20に対するベースハウジング18の軸方向位置が規定される。
なお、かかる押さえスリーブ88の上下両端部では、径方向幅寸法(図1中の左右方向寸法)が大きくされて外周側に突出しており、これら突出面が、カバーハウジング20のカバー本体48の内周面に当接している。これにより、押さえスリーブ88による下部弁14の上下フランジ部68,70におけるシール固定力を大きくすることができると共に、径方向においても押さえスリーブ88がハウジング12内に位置決めされ得る。
また、押さえスリーブ88の軸方向略中央部分には、周壁を厚さ方向に貫通する貫通孔90が周上で1つ、或いは複数(本実施形態では2つ)形成されている。
そして、弁本体部60の外周側には、当該弁本体部60の外周側への弾性変形を許容する変形許容空間92が、周方向の全周に亘って形成されている。特に、押さえスリーブ88が弁本体部60の外周面から外方に離隔されており、これら押さえスリーブ88と弁本体部60との間、即ち、下部弁14の上下一対のフランジ部68,70の対向面間に変形許容空間92が形成されている。なお、本実施形態では、弁本体部60の外周面に、内方に凸となる抉れ状部66が形成されており、変形許容空間92と連通されて一体的に形成されている。換言すれば、弁本体部60の外周側において全周に亘って形成される変形許容空間92が、一対の抉れ状部66,66を含んで構成されている。なお、押さえスリーブ88が、弁本体部60の外周側に配されることにより、抉れ状部66,66の実質的な深さ寸法はD’(図3参照)とされる。また、押さえスリーブ88とカバーハウジング20のカバー本体48との間には間隙94が形成されており、押さえスリーブ88の貫通孔90,90と間隙94、カバー本体48の空気抜き孔58,58によって、変形許容空間92を外部空間に連通する空間連通路が形成されている。これにより、下部弁14の弾性変形時に、変形許容空間92内の空気ばねの作用により下部弁14の変形が阻害されないようにされている。
さらに、上部弁16のスリット86と直交する方向(図1中の左右方向)において、弁本体部80と接続口部50との間には隙間が形成されており、かかる隙間により、弁本体部80の弾性変形を許容する変形許容空間96が形成されている。かかる変形許容空間96は、接続口部50に形成された空気抜き孔58,58により外部空間に連通されている。これにより、上部弁16の弾性変形時に、変形許容空間96内の空気ばねの作用により上部弁16の変形が阻害されないようにされている。
そして、かかる上部弁16、下部弁14、押さえスリーブ88がハウジング12内に組み付けられることにより、本実施形態のニードルレスコネクター10が構成されている。かかる組付けは、例えばカバーハウジング20に対して、上部弁16、押さえスリーブ88を組み付けた下部弁14、およびベースハウジング18をカバーハウジング20の下方開口部から順次挿入すると共に、カバーハウジング20の係止孔54に対してベースハウジング18の係止突部30を嵌め入れて、適宜接着や溶着を行うことで実現され得る。かかるニードルレスコネクター10では、上部弁16と下部弁14とが、周方向で位置合わせされており、それぞれのスリット86,62が同一の方向に延びるようにされている。また、これらのスリット86,62は、後述する雄ルアー100の挿入前は密着状態にあり、開口していない。それ故、雄ルアー100挿入前、或いは雄ルアー100抜去後の薬液流路28の容積は、筒状部22の基端側開口部から先端側の開口部38までの容積とされる。なお、ニードルレスコネクター10に接続されるシリンジ98やカテーテル等は、ニードルレスコネクター10の薬液流路28の容積に含まれない。
ここで、図3にも示されているように、下部弁14のスリット62と直交する方向において、下部弁14の外周面に形成された抉れ状部66,66の最深部67,67は、ニードルレスコネクター10の軸方向投影視において、接続口部50の内周面よりも内方まで至っている。即ち、本実施形態では、変形許容空間92と抉れ状部66,66とが一体的に形成されていることから、換言すれば、下部弁14のスリット62と直交する方向において、変形許容空間92は、ニードルレスコネクター10の軸方向投影視において、接続口部50の内周面よりも内方まで至っている。
また、抉れ状部66,66の最深部67,67は、突状支持面34の突出方向(図3中の上下方向)の中央の位置、即ち本実施形態では、図3中の直線Lと突状支持面34との交点である変曲部44,44よりもニードルレスコネクター10の軸方向投影視において内方まで至っている。換言すれば、変形許容空間92は、ニードルレスコネクター10の軸方向投影視において、突状支持面34の突出方向の中央の位置よりも内方まで至っている。或いは、変形許容空間92は、ニードルレスコネクター10の軸方向投影視において、突状支持面34の変曲部44,44よりも内方まで至っている。
さらに、下部弁14のスリット62と直交する方向における縦断面において、下部弁14の上下方向中央(図3中において、Na=Nbとなる直線N)よりも上側の変形許容空間の面積Sa(図3参照)が、下側の変形許容空間Sb(図3参照)に比べて大きくされている(Sa>Sb)。なお、図3中において、上側の変形許容空間(面積Sa)と下側の変形許容空間(面積Sb)はそれぞれ左右一対あるが、左右対称の形状であることから、以下の説明では一方について述べるものとする。
特に、本実施形態では、下部弁14のスリット62と直交する縦断面において、変形許容空間の断面積(Sa+Sb)が、下部弁14において実質的に弾性変形する部分、即ち弁本体部の断面積(Sv)よりも大きくされている((Sa+Sb)>Sv)。なお、図3中において、面積Sa,Sb,Svを示す領域はそれぞれ左右一対あるが、左右対称の形状であることから、以下の説明では一方について述べるものとする。
上述の如き構造とされたニードルレスコネクター10は、前述のように薬液流路28の他端側の開口部に対して図示しない血管内留置カテーテル等が接続されて使用される。そして、かかる使用状態下、図6,7に示されているように、上方から、シリンジ98等の雄ルアー100がハウジング12の接続口部50を通じて上部弁16のスリット86に挿し入れられると共に、下部弁14の上面に押し付けられることにより、それぞれのスリット86,62が拡開されて、雄ルアー100を通じてシリンジ98の内部が薬液流路28に連通状態とされる。
なお、図6,7に示されたシリンジ98の雄ルアー100は、雄型のルアーロック構造とされており、ハウジング12の接続口部50に対する接続状態が確実に、且つ容易に維持されるようになっている。尤も、この雄ルアー100は、ネジで固定するルアーロック構造だけでなく、挿し込んで固定するルアースリップ構造であっても良い。
ここにおいて、ニードルレスコネクター10に雄ルアー100を挿し入れた際には、雄ルアー100の押込力が下部弁14にまで及ぼされて、下部弁14の弁本体部60が下方に押し下げられる。この押し下げに伴い、下部弁14は、略密着状態とされた突状支持面34に沿って、薬液流路28側に入り込むことなくスリット62の両側に押し広げられるように変形することとなる。これにより、拡開変形した下部弁14と突状支持面34との間に隙間102が形成される。
特に、スリット62の延びる方向と直交する方向には、突状支持面34に湾曲凹部42,42が形成されている一方、下部弁14における内面の湾曲凹部42,42に対応する位置には湾曲凸部76,76が形成されており、雄ルアー100を挿入することにより湾曲凹部42,42表面を湾曲凸部76,76が滑るように、弁本体部60の柱体状部61が外周側へ変形する。一方、弁本体部60の下側部分とされた拡径部64は薄肉のテーパ筒形状とされていることから、上方からの雄ルアー100の挿入により外周側へ変形し易く、スリット62の延びる方向と直交する方向において拡径部64が突状支持面34から容易に離れて膨らむようになっている。更に、柱体状部61と突状支持面34との間に形成される間隙と、拡径部64と突状支持面34との間に形成される間隙とは、例えば連通溝40,40を通じて連通され得て、これにより、下部弁14と突状支持面34との間に一層大きな隙間102を形成することができる。即ち、筒状部22の基端側開口部から先端側の開口部38までの容積に加えて、下部弁14と突状支持面34との隙間102の容積が、雄ルアー100挿入時における薬液流路28の容積とされる。従って、本実施形態では、雄ルアー100挿入時における薬液流路28の容積が、雄ルアー100抜去後における薬液流路28の容積以上とされている。また、雄ルアー100の挿入時と抜去後における薬液流路28の容積差は、雄ルアー100の挿入に際して、下部弁14の弾性変形に伴って、雄ルアー100の下端開口部と薬液流路28の先端側開口部38との対向部間において下部弁14内に新たに現出し且つ雄ルアーの抜去により消失する領域X(即ち、本実施形態では隙間102)の容積量と考えることができる。そして、この容積量が0より大きくされることで、雄ルアーの抜去に際して、かかる領域Xの消失に伴う陽圧作用が発揮され得ることとなる。
この結果、雄ルアー100の抜き取りに際して薬液流路28に一層大きな陽圧(正圧)が発生して、血液等の逆流防止効果が更に安定して発揮され得る。即ち、雄ルアー100を抜き取った際に、広がっていたスリット62が閉じる分に相当する容積減少に加えて、下部弁14と突状支持面34との間に発生していた隙間102が消失することに伴う容積減少が発生することで、薬液流路28に陽圧を発生させることができて、雄ルアー100の抜き取りに伴う陰圧の発生が完全に防止される。これにより、薬液流路28内に残留する血液や薬液等が順方向に安定して吐出されることから、血液等の逆流防止効果が安定して発揮されるのである。なお、ニードルレスコネクター10から雄ルアー100が抜き取られることで、上部弁16および下部弁14の弾性復元作用により、各スリット86,62が閉鎖されて、ニードルレスコネクター10は図1,2に示される状態に復帰することとなる。
特に、本実施形態のニードルレスコネクター10では、下部弁14のスリット62と直交する方向において、下部弁14に抉れ状部66が設けられることにより、下部弁14の外周側に設けられる変形許容空間92が、軸方向投影視において接続口部50の内周面より内方にまで至っている。即ち、ニードルレスコネクター10に雄ルアー100を挿入した際に、下部弁14が最も弾性変形する方向の厚さ寸法が十分に小さくされていることから、下部弁14の弾性変形が効果的に生じるようになっている。これにより、下部弁14と突状支持面34との間において、安定して隙間102を形成することができて、雄ルアー100の抜取り時に、より確実に陽圧を発生させて血液等の逆流を防止することができる。それに加えて、下部弁14が容易に弾性変形し得ることから、雄ルアー100をハウジング12の接続口部50に容易に挿入することができて、操作性の向上も図られ得る。
また、下部弁14のスリット62と直交する方向における変形許容空間92の縦断面において、下部弁14の上下方向中央よりも上側の縦断面積Saの領域の方が、下側の縦断面積Sbの領域に比べて大きくされていることにより、下部弁14において上方の方がより弾性変形が許容される。即ち、下部弁14に対して上方から雄ルアー100を挿入した際に、下部弁14における雄ルアー100の挿入側の大きな変形が実現され得て、下部弁14と突状支持面34との隙間102が大きく確保され得る。また、下部弁14における雄ルアー100の挿入側が大きく変形し得ることから、雄ルアー100が容易に挿入され得て、操作性の更なる向上が図られ得る。
特に、下部弁14のスリット62と直交する方向における縦断面において、変形許容空間の縦断面積(Sa+Sb)の方が、弾性弁体において実質的に弾性変形する部分の縦断面積(Sv)よりも大きくされていることから、雄ルアー100の挿入時において、変形した下部弁14がハウジング12の内面等に当接して下部弁14の変形が阻害されるおそれが低減されている。これにより、下部弁14と突状支持面34との隙間102が一層大きく確保されて、血液等の逆流防止効果が安定して発揮され得る。
また、一対の抉れ状部66,66はそれぞれ最深部67,67が当該抉れ状部66,66の中央より上方に位置していることにより、上方から雄ルアー100を挿し入れた際に、下部弁14の上方が弾性変形し易く、雄ルアー100の挿入性の向上が図られ得る。更に、抉れ状部66,66の深さ寸法は上下方向両端部から最深部67,67に向かって次第に大きくなっている。即ち、弁本体部60の上下方向両端部分は中間部分よりも厚肉とされている。これにより、下部弁14の弾性変形時に応力が発生し易い両端部分において、亀裂等が発生するおそれが低減され得て、下部弁14の耐久性の向上が図られている。
さらに、本実施形態では、突状支持面34に対して傾斜角度を異ならせる変曲部44,44が形成されており、突状支持面34の上下方向中央に位置している。そして、下部弁14のスリット62と直交する方向において、抉れ状部66,66の最深部67,67が、ニードルレスコネクター10の軸方向投影視で変曲部44,44よりも内方にまで広がっていることから、下部弁14において弾性変形が生じ易い変曲部44,44での厚さ寸法を小さくすることができる。これにより、下部弁14の弾性変形が容易に実現されるだけでなく、変形許容空間92も大きな容積をもって確保され得る。
更にまた、下部弁14の上方には上部弁16が設けられていることから、血液等の逆流防止効果が更に確実に発揮され得る。特に、雄ルアー100の先端に付着した血液等が、上部弁16のスリット86内壁により拭い取られることから、ニードルレスコネクター10からの血液等の漏出が一層効果的に防止され得る。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施可能である。
例えば、前記実施形態では、下部弁14に対して別体形成された上部弁16が非接着で密接して重ね合わされて設けられていたが、上部弁の形状や下部弁との配置形態などは何等限定されるものではなく、例えば上部弁としてはディスク状の弁を採用してもよい。尤も、上部弁は本発明において必須なものではない。上部弁を設けない場合には、前記実施形態に記載の下部弁14のみが設けられてもよい。なお、この場合の弾性弁体の位置は、本発明の要件を満たす限り適宜設計可能である。例えば、弾性弁体は大径のカバー本体48内に位置してもよいし、接続口部50内に位置してもよい。接続口部50内に位置する場合は、接続口部内面と弾性弁体との間に変形許容空間が形成されて、例えば変形許容空間は接続口部の先端開口部より内側まで延びていてもよい。更に、前記実施形態に記載の下部弁14と上部弁16を合わせた形状をもって一体成形等された弾性弁体が採用されてもよい。
また、下部弁14と上部弁16のそれぞれに設けられていた上下フランジ部68,70,82,84は必須なものではない。これらフランジ部を設けないことにより、ニードルレスコネクターをより小径化することも可能となる。
さらに、前記実施形態では、突状支持面34は、全体として長山形状とされていたが、かかる形状に限定されない。即ち、例えば、突状支持面は、ニードルレスコネクターの中心軸回りで回転対称な形状とされてもよく、中央部分が突出して裾方向に広がる傾斜面を備えていれば形状は限定されない。
更にまた、突状支持面に形成される湾曲凹部の形状や大きさ、数、形成位置等は何等限定されるものではない。また、突状支持面上の変曲部の形状や大きさ、数、形成位置等は何等限定されるものではない。なお、前記実施形態では、湾曲凹部42,42の下端縁部が変曲部44,44とされていたが、湾曲凹部42,42の上端縁部が変曲部とされてもよいし、上端縁部と下端縁部の両方を変曲部としてもよい。尤も、本発明において、湾曲凹部および変曲部は必須なものではなく、国際公開第2014/050976号に記載されているニードルレスコネクターのように、突状支持面は頂部から裾部に亘って直線状の傾斜面で構成されていてもよい。
さらに、下部弁14の外周側に形成される抉れ状部の形状は限定されるものではない。例えば、前記実施形態では滑らかに湾曲していたが、鋭角をもって屈曲してもよい。また、前記実施形態では、スリット62と直交する方向において、一対の抉れ状部66,66が設けられてそれぞれ同形状とされていたが、その必要はなく、相互に異なる形状とされたり、周方向の全周に亘って設けられてもよい。更に、抉れ状部は、周上の1か所、または3カ所以上で、周方向部分的に形成されてもよい。
また、ベースハウジング18とカバーハウジング20との組付けは、前記実施形態の如き係合突部30と係合孔54との嵌合に限定されず、例えばベースハウジングとカバーハウジングを軸方向で重ね合わせて溶着等の手段により固着してもよい。
更にまた、前記実施形態では、変形許容空間92は周方向の全周に亘って延びて形成されていたが、その必要はなく、弾性弁体の変形が最も生じ易いスリット62と直交する方向においてのみ形成されていてもよい。
なお、下部弁14と突状支持面34とは、前記実施形態のように、実質的に全面に亘って略密着状態で重ね合わされることが望ましい。これにより、雄ルアーの抜取り時において、弾性弁体が元の形状に復元する際に、突状支持面と弾性弁体とが再び密着状態で重ね合わされることで更に大きな陽圧を発生し得ることから、薬液流路内に残留する血液等が一層順方向に吐出される。この結果、突状支持面と弾性弁体との間に形成される隙間において血液等の残留が一層防止されると共に、血液等の逆流が更に効果的に防止され得る。
また、前記実施形態では、スリット62の延びる方向と直交する方向において、雄ルアー100の挿入の際に、拡径部64が突状支持面34から離れて膨らんでいたが、かかる態様に限定されない。即ち、例えばスリット62の延びる方向と同方向において、拡径部64が突状支持面34から離れて膨らんでもよいし、拡径部64より上方の柱体状部61が突状支持面34から離れて膨らむようにしてもよい。
また、前記実施形態では、雄ルアー抜去時に陽圧が生じる態様になっている。しかしながら、過剰に血液の逆流現象が生じない程度であれば陰圧になる態様でもよい。また、上記領域X、即ち本実施形態では隙間102の容積量を略0として、換言すれば、雄ルアー挿入時における薬液流路容積が雄ルアー抜去後における薬液流路容積と略等しくなるように調整して、陰圧も陽圧も生じない、要するに血液等の逆流も吐出も生じない態様にしてもよい。なお、雄ルアーは、弾性弁体のスリットに挿し入れられることで薬液流路と連通されるようになっていてもよい。