以下、本発明の実施の形態による可変容量型斜板式油圧ポンプの容量制御装置を、油圧ショベルに代表される建設機械に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、可変容量型斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、後述のケーシング2、回転軸4、シリンダブロック5、複数のシリンダ6、ピストン7、シュー8、斜板支持体10、斜板11、傾転アクチュエータ12および弁板15等を含んで構成されている。油圧ポンプ1は、例えば油圧ショベルの原動機(後述のエンジン18)によって回転駆動され、後述のタンク17内から吸込んだ作動油を高圧の圧油として吐出する。
筒状のケーシング2は油圧ポンプ1の外殻を構成している。このケーシング2は、図1に示すように、筒状のケーシング本体2Aと、該ケーシング本体2Aの両端側を閉塞したフロントケーシング2B、リヤケーシング2Cとから構成されている。なお、ケーシング本体2Aは、フロントケーシング2Bまたはリヤケーシング2Cのいずれか一方と一体に形成する構成としてもよい。
ケーシング本体2Aの一側に位置するフロントケーシング2Bには、後述の斜板支持体10が斜板11の裏面側に対向して設けられている。また、ケーシング本体2Aの他側に位置するリヤケーシング2Cには、一対の給排通路3A,3Bが設けられている。該給排通路3A,3Bのうち一方の給排通路3Aは、低圧側の吸入通路となって後述のタンク17に接続され、他方の給排通路3Bは、吐出通路となって後述する高圧側の吐出管路20(図2、図3参照)に接続されている。
回転軸4はケーシング2内に回転可能に設けられている。この回転軸4は、フロントケーシング2Bとリヤケーシング2Cとにそれぞれ軸受を介して回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、フロントケーシング2Bから軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aには後述のエンジン18が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結されるものである。
シリンダブロック5は、回転軸4と一体的に回転するようにケーシング2内に設けられている。このシリンダブロック5には、その周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ6が設けられている。シリンダブロック5に設けるシリンダ6の個数は、例えば7個または9個となるように通常は奇数個であるが、偶数個であってもよい。シリンダブロック5の各シリンダ6には、後述する弁板15の吸入ポート15A、吐出ポート15Bと間欠的に連通するシリンダポート6Aが形成されている。
複数のピストン7は、シリンダブロック5の各シリンダ6内にそれぞれ摺動可能に挿嵌されている。これらのピストン7は、シリンダブロック5の回転に伴ってシリンダ6内を往復動し、吸入行程と吐出行程とを繰返す。このため、後述の斜板11には、高圧側の吐出ポート15Bに連通している各シリンダ6内の圧力がピストン7を介して作用する。これは合力の着力点(ピストン推力の合計着力中心点)として、例えば図2、図3中に示すように「∞」マークにより表示されるものである。
また、各ピストン7には、シリンダ6から突出する突出端側にシュー8がそれぞれ揺動可能に設けられている。これらのシュー8は、後述する斜板11の平滑面11Bに対しピストン7からの押付力(油圧力)により押付けられ、この状態でシュー押え9等を介して保持される。各シュー8は、この状態で回転軸4、シリンダブロック5およびピストン7と一緒に回転することにより、リング状の円軌跡を描くように後述の平滑面11B上を摺動変位する。
斜板支持体10は、ケーシング2のフロントケーシング2Bに固定して設けられている。この斜板支持体10は、図1に示す如く、回転軸4の周囲に位置して斜板11の裏面側に配置され、ケーシング2のフロントケーシング2Bに固定されている。斜板支持体10には、回転軸4を挟んで左,右方向(または、上,下方向)に離間した一対の傾転支持部10Aが設けられ、該傾転支持部10Aは、斜板11を傾転可能に支持するために凹湾曲状の円弧面を有している。
斜板11は、ケーシング2内に斜板支持体10を介して傾転可能に設けられている。この斜板11の裏面側には、斜板支持体10の各傾転支持部10Aに向けて凸湾曲状に突出した一対の脚部11Aが設けられている。斜板11の各脚部11Aは、回転軸4を挟んで例えば左,右方向(または、上,下方向)に離間し、凹湾曲状をなす斜板支持体10の傾転支持部10Aに対し摺動可能に嵌合されている。
一方、斜板11の表面側は、各シュー8を摺動可能に案内する平滑面11Bとなっている。また、斜板11には、その板厚方向に貫通して延びる貫通穴11Cが設けられ、該貫通穴11C内には、一対の脚部11A間に位置して回転軸4が隙間をもって挿通されている。斜板11は、後述の傾転アクチュエータ12(サーボピストン13,14)を用いて図1中に示す矢示A,B方向に傾転駆動される。油圧ポンプ1の吐出容量(圧油の吐出流量)は、斜板11の傾転角に応じて可変に制御される。
傾転アクチュエータ12は、斜板11を傾転駆動する油圧アクチュエータである。図1に示す如く、この傾転アクチュエータ12は、シリンダブロック5の径方向で互いに対向して位置するように、ケーシング2のケーシング本体2Aに設けられた一対のサーボピストン13,14により構成されている。ここで、該サーボピストン13,14は、シリンダブロック5の径方向外側に位置してケーシング本体2Aに形成されたシリンダ穴13A,14Aと、該シリンダ穴13A,14A内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ穴13A,14Aとの間に液圧室13B,14Bを画成した傾転ピストン13C,14Cと、液圧室13B,14B内に配設され傾転ピストン13C,14Cを斜板11側に向けて常時付勢するばね13D,14Dとを含んで構成されている。
傾転アクチュエータ12(サーボピストン13,14)の液圧室13B,14Bには、図2、図3に示す後述の制御圧通路26を通じて外部から傾転制御圧が給排される。この場合、サーボピストン13のシリンダ穴13A、傾転ピストン13Cは、サーボピストン14のシリンダ穴14A、傾転ピストン14Cよりも小径に形成されている。これにより、サーボピストン14の傾転ピストン14Cは、サーボピストン13の傾転ピストン13Cよりも傾転制御圧に対する受圧面積が大きくなっている。
このため、傾転アクチュエータ12の液圧室13B,14Bに対して等しい圧力の傾転制御圧を供給するときには、両者間の受圧面積差によって傾転ピストン14Cがシリンダ穴14A内から伸長し、サーボピストン13の傾転ピストン13Cがシリンダ穴13A内に縮小する。これにより、斜板11は傾転アクチュエータ12(即ち、傾転ピストン13Cと傾転ピストン14C)によって矢示A方向へと、傾転角が小さくなる方向に傾転駆動される。
一方、図3に示すように、傾転制御圧を液圧室13Bに供給し、液圧室14B内の圧力を後述の容量制御弁29を通じてタンク17側に排出するときには、傾転ピストン13Cがシリンダ穴13A内から伸長し、傾転ピストン14Cがシリンダ穴14A内へと縮小する。これにより、斜板11は傾転ピストン13Cと傾転ピストン14Cによって矢示B方向(即ち、傾転角が大きくなる方向)に傾転駆動される。このように、斜板11は、傾転アクチュエータ12の液圧室13B,14Bに給排される傾転制御圧に従って、矢示A,B方向に傾転駆動されるものである。
弁板15は、ケーシング2内に位置してリヤケーシング2Cとシリンダブロック5との間に設けられている。この弁板15は、シリンダブロック5を挟んで斜板11とは軸方向の反対側となる位置に配置されている。弁板15は、回転軸4と一体に回転するシリンダブロック5を回転可能にリヤケーシング2Cと一緒に支持し、この状態でシリンダブロック5の端面に摺接している。
図2および図3に示すように、弁板15には、一対の眉形状をなす給排ポート(即ち、吸入ポート15Aと吐出ポート15Bと)が一対の切換ランド15C,15Dを挟んで形成されている。ここで、吸入ポート15Aは、リヤケーシング2Cの給排通路3A,3Bのうち低圧側となる給排通路3Aに常時連通し、吐出ポート15Bは、高圧側となる給排通路3Bと常時連通している。
弁板15の吸入ポート15Aと吐出ポート15Bとは、シリンダブロック5の回転時に各シリンダ6のシリンダポート6Aと間欠的に連通する。このとき、各シリンダ6内を往復動するピストン7は、その吸入行程で低圧側の給排通路3Aから吸入ポート15Aを介して各シリンダ6内に作動油を吸込みつつ、吐出行程では各シリンダ6内で高圧状態となった圧油を吐出ポート15Bを介して高圧側の給排通路3Bに向けて吐出させる。
弁板15に形成した一対の切換ランド15C,15Dのうち第1の切換ランド15Cは、ピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる位置(即ち、上死点TDC側の位置)に配置されている。第2の切換ランド15Dは、ピストン7が吸入行程から吐出行程に切換わる位置(即ち、下死点BDC側の位置)に配置されている。また、弁板15の吐出ポート15Bには、ノッチ15Eが第2の切換ランド15D側に向けて三角形状に延びる切欠きとして形成されている。一方、弁板15の吸入ポート15Aには、ノッチ15Fが第1の切換ランド15C側に向けて三角形状に延びる切欠きとして形成されている。
パイロットポンプ16はタンク17と共にパイロット油圧源を構成する。このパイロットポンプ16は、原動機としてのエンジン18によりメインの油圧ポンプ1と一緒に回転駆動される。パイロットポンプ16の吐出側には、タンク17との間に低圧リリーフ弁19が設けられている。この低圧リリーフ弁19は、パイロットポンプ16の吐出圧(即ち、斜板11の傾転制御圧)を予め決められたリリーフ設定圧以下の圧力に抑えるものである。
ここで、低圧リリーフ弁19は、パイロットポンプ16(即ち、エンジン18)の停止時に閉弁している。一方、エンジン18によりパイロットポンプ16が回転されると、その吐出側のパイロット圧を前記リリーフ設定圧以下の圧力に抑えるために、低圧リリーフ弁19は開弁する。この状態で、パイロットポンプ16の吐出圧は、前記リリーフ設定圧以下の圧力に抑えられる。
メインの油圧ポンプ1には、その吐出管路20とタンク17との間に高圧リリーフ弁21が設けられている。この高圧リリーフ弁21は、油圧ポンプ1に過剰圧が発生するのを防ぐため、油圧ポンプ1の吐出圧を予め決められたリリーフ設定圧以下の圧力に抑える。このリリーフ設定圧は、低圧リリーフ弁19よりも十分に高い圧力に設定される。メインの油圧ポンプ1は、タンク17と共にメインの油圧源を構成している。
油圧シリンダ22は油圧アクチュエータを構成している。この油圧シリンダ22は、例えば油圧ショベルの作業装置(図示せず)に設けられるブームシリンダ、アームシリンダまたはバケットシリンダ等を構成するものである。なお、油圧アクチュエータとしては、油圧シリンダ22に限らず、例えば旋回用の油圧モータ、走行用の油圧モータ等を用いることができる。
方向制御弁23は、油圧ポンプ1、タンク17と油圧シリンダ22との間に設けられている。この方向制御弁23は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁からなり、左,右両側には油圧パイロット部23A,23Bが設けられている。方向制御弁23は、後述の操作弁24から油圧パイロット部23A,23Bにパイロット圧が供給されることにより、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれかに切換えられる。このとき、油圧ポンプ1から油圧シリンダ22に給排される圧油の流量は、方向制御弁23のストローク量(即ち、後述する操作レバー24Aの傾転操作量)に対応して可変に制御される。
油圧シリンダ22は、方向制御弁23を介して減圧弁型のパイロット操作弁24(以下、操作弁24という)により遠隔操作される。この操作弁24は、例えば油圧ショベルの運転室(図示せず)内に設けられ、オペレータによって傾転操作される操作レバー24Aを有している。操作弁24は、そのポンプポートがパイロットポンプ16の吐出側に接続され、タンクポートがタンク17に接続されている。操作弁24の出力ポートは、パイロット管路25A,25Bを介して方向制御弁23の油圧パイロット部23A,23Bに接続されている。
操作弁24は、オペレータが操作レバー24Aを傾転操作したときに、その操作量に対応したパイロット圧をパイロット管路25A,25Bを通じて方向制御弁23の油圧パイロット部23A,23Bに供給する。これにより、方向制御弁23は、中立位置(I)から切換位置(II),(III)のいずれか一方に切換えられ、このときのストローク量(切換え量)は、操作レバー24Aの操作量に対応して増減される。操作弁24には、例えば図4に示す後述の操作量検出器44が付設されている。この操作量検出器44は、操作レバー24Aのレバー操作量を検出し、その検出信号を後述のコントローラ43に出力する。
傾転アクチュエータ12とパイロットポンプ16との間には、制御圧通路26が設けられている。この制御圧通路26は、図2、図3に示すように、一側がパイロットポンプ16と低圧リリーフ弁19との間でパイロットポンプ16の吐出側に接続された第1通路26Aと、該第1通路26Aの他側に位置する接続点27で2つに分岐した第2,第3通路26B,26Cとを含んで構成されている。制御圧通路26の第2通路26Bは、傾転アクチュエータ12の液圧室13Bに接続され、第3通路26Cは液圧室14Bに切換え可能に接続されている。
傾転制御用のレギュレータ28は、制御圧通路26の途中(例えば、第3通路26Cの途中)に設けられている。このレギュレータ28は、パイロットポンプ16から傾転アクチュエータ12の液圧室13B,14Bに給排される傾転制御圧を可変に制御するものである。レギュレータ28は、第3通路26Cの途中に設けられ傾転制御圧の供給位置(a)と排出位置(b)とに切換えられる容量制御弁29と、該容量制御弁29を切換え制御する電磁比例弁31とを含んで構成されている。
レギュレータ28の容量制御弁29は、油圧パイロット部29A、ばね29Bおよびスリーブ29Cを有する油圧パイロット式のサーボ弁(制御弁)を用いて構成されている。容量制御弁29の油圧パイロット部29Aには、電磁比例弁31を介してパイロット圧(例えば、パイロットポンプ16からの制御圧通路26を介したパイロット圧またはタンク圧レベルの低圧)が供給され、このパイロット圧に従って容量制御弁29は供給位置(a)と排出位置(b)とに切換えられる。ばね29Bは、容量制御弁29が供給位置(a)に戻るようにスプール(図示せず)を付勢している。
ここで、容量制御弁29には、前記スプールの外周側にスリーブ29Cが摺動可能に挿嵌して設けられている。このスリーブ29Cには、傾転アクチュエータ12(例えば、傾転ピストン13C)との間にフィードバックリンク30が設けられている。このフィードバックリンク30は、傾転アクチュエータ12の動きに追従してスリーブ29Cを摺動変位させ、容量制御弁29が供給位置(a)と排出位置(b)とに切換わる位置をスリーブ29Cを介して可変に調整する。
電磁比例弁31には、後述のコントローラ43から図5に示す特性線45に従って制御信号(電流信号)が出力される。この制御信号は操作レバー24Aの傾転操作量に比例または対応して電流値が増減され、電磁比例弁31は、制御信号の電流値に比例して低圧位置(c)から昇圧位置(d)へと漸次切換えられる。このため、容量制御弁29の油圧パイロット部29Aには、図5の特性線45に対応したパイロット圧が供給される。これにより、容量制御弁29は、供給位置(a)から排出位置(b)へと操作レバー24Aの傾転操作量に対応して切換えられる。
図3に示すように、操作レバー24Aを傾転操作して油圧ポンプ1の容量を小容量(Min)側から大容量(Max)側へと大きくする場合、傾転アクチュエータ12の液圧室14Bは、容量制御弁29が供給位置(a)から排出位置(b)へと切換わるに応じて内部の圧力が低下する。一方、液圧室13Bには制御圧通路26の第2通路26Bから傾転制御圧が供給される。これによって、傾転ピストン13Cは漸次伸長し、傾転ピストン14Cは漸次縮小する。この結果、油圧ポンプ1の吐出容量は、図5の特性線45に沿うように操作レバー24Aの傾転操作量に対応して可変に制御される。油圧ポンプ1の吐出容量は、操作レバー24Aの傾転操作量(レバー操作量)を小さくすると最小容量(Min)となり、レバー操作量を大きくしたときには最大容量(Max)となる。このような制御は、一般的にポジティブコントロールと呼ばれている。
弁板15の第1の切換ランド15Cには小径の開放穴32が設けられている。この開放穴32は、弁板15に形成した一対の切換ランド15C,15Dのうち各シリンダ6内のピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる位置にある第1の切換ランド15Cに開口した小径穴である。開放穴32は、前記吐出行程の最後で各シリンダ6のうち、吐出行程にあるシリンダ6内に残った圧油をタンク17に導いて圧力を開放する。換言すると、開放穴32は、シリンダブロック5の回転に伴って各ピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる途中で該当するシリンダ6内に残った圧力(圧油)をタンク17に排出(開放)するものである。
図2に示すように、シリンダブロック5(点線で示すシリンダポート6A)が弁板15に対して矢示C方向に回転する場合、開放穴32は、第1の切換ランド15Cのうち上死点TDCに対応する位置よりも僅かに手前側となる位置に配置されている。開放穴32の位置を通過するシリンダポート6A(図2中に点線で示す)は、各シリンダ6内のピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる段階(即ち、上死点TDCから下死点BDCに向けて摺動変位する段階)でノッチ15Fを介して吸入ポート15Aに連通し、各シリンダ6内のピストン7は、シリンダブロック5の矢示C方向の回転に伴って吸入行程を行う。
弁板15の第1の切換ランド15Cには、小径の開放穴32をタンク17に接続する通路(以下、タンク通路33という)が設けられている。該タンク通路33の途中には、開弁時に開放穴32をタンク17に連通させ、閉弁時には開放穴32をタンク17に対して遮断する切換弁34が設けられている。この切換弁34は、後述する固定絞り36の前,後で制御圧通路26の第1通路26Aに生じる差圧が、一対のパイロット管路35A,35Bを介したパイロット圧として供給される油圧パイロット式の切換弁により構成されている。
油圧パイロット式の切換弁34は、第1,第2の油圧パイロット部34A,34Bとばね34Cとを有し、常時は図2に示す如く、ばね34Cにより閉弁位置(e)に切換えた状態に保持されている。第1,第2の油圧パイロット部34A,34Bは、例えば切換弁34の左,右両側に互いに対向して設けられ、第2の油圧パイロット部34Bは、ばね34Cと同方向にパイロット管路35Bからのパイロット圧を作用させる。一方、第1の油圧パイロット部34Aは、第2の油圧パイロット部34Bおよびばね34Cとは反対方向にパイロット管路35Aからのパイロット圧を作用させる。
このため、パイロット管路35A,35Bから第1,第2の油圧パイロット部34A,34Bに供給されるパイロット圧の差圧(即ち、絞り36の前,後の差圧)が、ばね34Cの設定圧よりも高くなると、切換弁34は図3に示す如く、ばね34Cの付勢力に抗して閉弁位置(e)から開弁位置(f)に切換わる。開弁位置(f)にある切換弁34は、タンク通路33を通じて開放穴32をタンク17に連通させる。このとき、シリンダブロック5の回転に伴って各ピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる途中で該当するシリンダ6内に残った圧力(吐出行程での残圧)は、タンク通路33と切換弁34とを介してタンク17に排出(開放)される。
これにより、各ピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わるときには、該当するシリンダ6内に残圧があったとしても、この圧力は開放穴32側からタンク17に排出(開放)される。この結果、シリンダブロック5の回転に伴って吸入行程を迎える各シリンダ6内は、吐出行程時の残圧をなくしタンク17と同等の圧力状態に保たれるものである。
しかし、切換弁34は、前記差圧が小さくなって閉弁位置(e)に戻ったときに、開放穴32をタンク17に対して遮断する。このため、切換弁34が閉弁位置(e)に保持されている間は、前記シリンダ6内に残った圧力(吐出行程での残圧)がタンク17に排出(開放)されることはない。この場合、前記シリンダ6内に残った圧力(吐出行程での残圧)は、後述のチェック弁39を介して第1の油通路38側に導かれる。
制御圧通路26の途中には固定絞り36が設けられている。この固定絞り36は、制御圧通路26の第1通路26Aに設けられ、パイロットポンプ16から傾転アクチュエータ12に向けて前記傾転制御圧(圧油)を供給するときに、圧油の流れを絞る流量制限部を構成している。固定絞り36は、第1通路26Aに対する第2,第3通路26B,26Cの接続点27よりも上流側(パイロットポンプ16側寄りの位置)に配置されている。固定絞り36は、パイロットポンプ16から第1通路26Aを介して第2,第3通路26B,26Cへと傾転制御圧(圧油)を供給するときに、第1通路26Aを流通する作動油(圧油)の流れを絞る。
図3に示すように、パイロットポンプ16からの傾転制御圧を第1通路26Aから第2通路26Bに向けて供給するときには、このときの作動油(圧油)の流れが固定絞り36により絞られる。このため、パイロットポンプ16から供給される傾転制御圧は、固定絞り36の下流側(即ち、接続点27側)で圧力降下し、これに伴って第1,第2のパイロット管路35A,35B内のパイロット圧には圧力差(差圧)が発生する。
ここで、第1のパイロット管路35Aは、その一端側が固定絞り36の上流側で第1通路26Aに接続され、第1のパイロット管路35Aの他端側は、切換弁34の第1の油圧パイロット部34Aに接続されている。第2のパイロット管路35Bは、その一端側が固定絞り36の下流側で第1通路26Aに接続され、第2のパイロット管路35Bの他端側は、切換弁34の第2の油圧パイロット部34Bに接続されている。
このため、固定絞り36の上流側と下流側との間に差圧(即ち、絞り36の前,後の差圧)が発生すると、第1のパイロット管路35Aから切換弁34の油圧パイロット部34Aに供給されるパイロット圧の方が、第2のパイロット管路35Bから第2の油圧パイロット部34Bに供給されるパイロット圧よりも高くなる。このときの差圧(第1,第2の油圧パイロット部34A,34B間の差圧)がばね34Cの設定圧よりも高くなると、図3に示す如く切換弁34は、ばね34Cの付勢力に抗して閉弁位置(e)から開弁位置(f)に切換わる。
即ち、斜板11の傾転角を大きくしポンプ容量を小容量(Min)側から大容量(Max)側に増大させるときには、傾転アクチュエータ12が図3中の矢示B方向に駆動されるように、電磁比例弁31は低圧位置(c)から昇圧位置(d)に切換えられており、これに伴って容量制御弁29は供給位置(a)から排出位置(b)へと切換えられている。これにより、レギュレータ28は、液圧室14B内の圧油を容量制御弁29を介してタンク17側に排出させ、パイロットポンプ16からの傾転制御圧は、第1通路26Aから第2通路26Bに向けて供給される。
このように、パイロットポンプ16から吐出された圧油(傾転制御圧)が第1通路26Aから第2通路26Bに向けて供給される場合、この圧油(作動油)の流れは固定絞り36により絞られる。このため、傾転制御圧は接続点27側で圧力降下し、これに伴ってパイロット管路35A,35B内のパイロット圧には、固定絞り36の前,後で大きな圧力差(差圧)が発生する。切換弁34は、第1,第2の油圧パイロット部34A,34B間の差圧がばね34Cの設定圧よりも高くなると、ばね34Cの付勢力に抗して閉弁位置(e)から開弁位置(f)に切換えられる。
一方、斜板11の傾転角が小さくなるように傾転アクチュエータ12を図2中の矢示A方向に駆動するときには、パイロットポンプ16からの傾転制御圧が第1通路26A、第3通路26Cから容量制御弁29を介して液圧室14Bに供給される。液圧室13B内の圧油は、第2通路26B内に向けて排出される。この排出油は、固定絞り36とは逆向きに第3通路26C側へと流れ、容量制御弁29を介して液圧室14Bに供給(補給)される。
このため、固定絞り36を流通する作動油(傾転制御圧)の流量は大幅に低下し、固定絞り36でほとんど圧力降下されることなく、接続点27側の圧力は、高い圧力状態(即ち、固定絞り36の前,後で差圧がほとんど生じない状態)を保つ。これにより、第1,第2のパイロット管路35A,35B内のパイロット圧は、両者間の差圧が小さくなる。この結果、切換弁34は、第1,第2の油圧パイロット部34A,34B間の差圧がばね34Cの設定圧よりも小さくなって、該ばね34Cにより開弁位置(f)から閉弁位置(e)に戻されるように切換えられる。
弁板15の第2の切換ランド15Dには小径の供給穴37が設けられている。この供給穴37は、弁板15に形成した一対の切換ランド15C,15Dのうち各ピストン7が吸入行程から吐出行程に切換わる位置にある第2の切換ランド15Dに開口した小径穴である。供給穴37は、前記吸入行程の最後(または吐出行程の最初)で各シリンダ6のうち、吸入行程から吐出行程に切換り始めるシリンダ6内に後述の圧油(圧力)を供給するために第2の切換ランド15Dに形成されている。
図2に示すように、シリンダブロック5(点線で示すシリンダポート6A)が弁板15に対して矢示C方向に回転する場合、供給穴37は、第2の切換ランド15Dのうち下死点BDCに対応する位置よりも僅かに手前側となる位置に配置されている。供給穴37の位置を通過するシリンダポート(図2中に点線で示す)は、各シリンダ6内のピストン7が吸入行程から吐出行程に切換わる段階(即ち、下死点BDCから上死点TDCに向けて摺動変位する段階)でノッチ15Eを介して吐出ポート15Bに連通し、各シリンダ6内のピストン7は、シリンダブロック5の矢示C方向の回転に伴って吐出行程を行う。
弁板15には、第1の切換ランド15C側の開放穴32と第2の切換ランド15D側の供給穴37とが接続される第1の油通路38が設けられている。この第1の油通路38は、開放穴32と供給穴37とを接続する通路であればよく、弁板15を含んだ複数の部材にわたって設ける構成であってもよい。開放穴32と供給穴37との間には、例えば第1の油通路38の途中に位置して第1のチェック弁39が設けられている。
第1のチェック弁39は、切換ランド15C側の開放穴32から油通路38を介して切換ランド15D側の供給穴37に向け圧油が流通するのを許容し、逆流を防止する第1の通路開閉弁としての逆止弁である。このため、供給穴37から開放穴32側に向けて圧油が逆流することはなく、第1のチェック弁39は、開放穴32から供給穴37に向けてのみ一方向に圧油を流通させる。
ここで、切換ランド15C側の開放穴32は、切換弁34によりタンク通路33がタンク17に対して遮断されている間、前述の如く吐出行程の最後でシリンダ6内に残った圧力(吐出行程での残圧)をタンク17側に排出(開放)することはできない。このため、開放穴32に導かれた圧力(吐出行程での残圧)は、第1のチェック弁39を開弁させた状態で第1の油通路38を介して供給穴37に達し、供給穴37からシリンダポート6Aに向けて供給される。即ち、シリンダブロック5が図2中の矢示C方向に回転するときに、吸入行程の最後(または吐出行程の最初)で各シリンダ6のうち、吸入行程から吐出行程に切換り始めるシリンダ6内には、供給穴37からの圧油(吐出行程での残圧)を供給することができる。
第1の実施の形態では、パイロット油圧源をタンク17と共に構成するパイロットポンプ16が圧油供給源となっている。パイロットポンプ16の吐出側と供給穴37との間には、両者間に接続された第2の油通路40が設けられている。この油通路40は、上流側がパイロットポンプ16の吐出側に接続された第1通路26Aに連通し、下流側が供給穴37に接続されている。第2の油通路40の下流側は、第1の油通路38の下流側と共通の通路として形成されている。なお、両者を別々の通路として供給穴37に接続する構成としてもよい。
パイロットポンプ16の吐出側と供給穴37との間には、例えば第2の油通路40の途中に位置して第2のチェック弁41が設けられている。第2のチェック弁41は、パイロットポンプ16の吐出側から油通路40を介して供給穴37に向け圧油が流通するのを許容し、逆流を防止する第2の通路開閉弁としての逆止弁である。このため、供給穴37からパイロットポンプ16側に向けて圧油が逆流することはなく、第2のチェック弁41は、パイロットポンプ16の吐出側から供給穴37に向けてのみ一方向に圧油(即ち、パイロットポンプ16からのパイロット圧)を流通させる。
他のタンク通路42は、低圧リリーフ弁19とタンク17との間に設けられている。このタンク通路42は、パイロットポンプ16の吐出圧が低圧リリーフ弁19の設定圧以上に上昇すると、このときの過剰圧を低圧リリーフ弁19の開弁に伴ってタンク17側にリリーフさせる。
図4に示すコントローラ43は、電磁比例弁31に制御信号を出力する制御手段である。該コントローラ43は、その入力側に操作量検出器44が接続され、出力側には電磁比例弁31が接続されている。操作量検出器44は、操作弁24(操作レバー24A)のレバー操作量を検出するもので、その検出信号をコントローラ43に出力する。
コントローラ43は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等の記憶部43Aを有し、この記憶部43Aには、図5に示す特性線45が特性マップとして更新可能に格納されている。この特性線45は、前述したポジティブコントロールにより油圧ポンプ1の容量制御を行うために、コントローラ43から電磁比例弁31に出力する制御信号を操作レバー24Aの操作量に対応して増減させる特性(例えば、操作量に比例する特性)に設定されている。
なお、電磁比例弁31は、図5に示す特性線45のように操作レバー24Aの操作量に基づいて制御信号の電流値が可変に制御される構成であればよく、必ずしもコントローラ43を用いる必要はない。例えば、ポテンショメータ等の可変抵抗器を用い、その操作量に応じて電磁比例弁31を低圧位置(c)から昇圧位置(d)に漸次切換える構成としてもよい。
第1の実施の形態による可変容量型斜板式の油圧ポンプ1と当該油圧ポンプ1の容量制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、油圧ショベルの運転室に搭乗したオペレータが、エンジン18を始動して回転させると、油圧ポンプ1の回転軸4がシリンダブロック5と一緒に回転駆動される。このとき、エンジン18によってパイロットポンプ16も回転駆動される。このため、パイロットポンプ16から制御圧通路26に向けて傾転制御圧が供給され、固定絞り36の前,後位置からはパイロット管路35A,35Bに向けてパイロット圧が供給される。
ここで、図2に示す油圧ポンプ1の容量制御装置は、エンジン18が始動前で停止している初期状態では低圧リリーフ弁19が閉弁している。しかし、エンジン18を稼働して油圧ポンプ1とパイロットポンプ16とを回転駆動している状態では、低圧リリーフ弁19が開弁して制御圧通路26内の圧力(傾転制御圧)をほぼ一定のリリーフ設定圧に調整(設定)している。
レギュレータ28の電磁比例弁31が低圧位置(c)にある間、容量制御弁29は、ばね29Bにより供給位置(a)に戻された状態に保持されている。このため、パイロットポンプ16からの傾転制御圧は、第1通路26A、第3通路26Cから容量制御弁29を介して液圧室14Bに供給される。これにより、傾転アクチュエータ12は、斜板11の傾転角を小さくする方向(図2中の矢示A方向)に駆動され、液圧室13B内の圧油は第2通路26Bに向けて排出される。
このため、固定絞り36を流通する作動油(傾転制御圧)の流量は低下し、固定絞り36の前,後では、差圧がほとんど生じない状態となる。これにより、第1,第2のパイロット管路35A,35B内のパイロット圧は、両者間の差圧が小さくなる。この結果、切換弁34は、第1,第2の油圧パイロット部34A,34B間の差圧がばね34Cの設定圧よりも小さくなり、ばね34Cによって閉弁位置(e)に戻された状態となる。
このように、切換弁34が閉弁位置(e)に保持されている間、弁板15の開放穴32は、切換弁34によりタンク17に対して遮断されているため、前述の如く吐出行程の最後でシリンダ6内に残った圧油(吐出行程での残圧)をタンク17側に排出することはない。しかし、この場合には、第1の油通路38が開放穴32の圧油(吐出行程での残圧)を第1のチェック弁39を介して供給穴37に導くことができ、供給穴37から下死点BDC側でシリンダポート6Aに圧油を供給することができる。
即ち、シリンダブロック5が図2中の矢示C方向に回転するときに、吸入行程の最後(または吐出行程の最初)で各シリンダ6のうち、吸入行程から吐出行程に切換り始めるシリンダ6内には、供給穴37からの圧油(吐出行程での残圧)を供給することができる。なお、吐出行程での残圧がパイロットポンプ16の吐出圧よりも低い場合には、後述の如く、第2の油通路40から供給穴37に向けて圧油が供給される。
このため、第2の切換ランド15D側では、各シリンダ6のうち吸入ポート15Aを通過したシリンダ6内に前記圧油(残圧またはパイロット圧)を補給して当該シリンダ6内を予め昇圧させ、この昇圧状態のシリンダ6を吐出ポート15Bにノッチ15Eを介して連通することができる。この結果、吸入行程から吐出行程に切換り始めたシリンダ6内に、吐出ポート15B側の高圧が逆流するのを抑えることができ、このときの油圧脈動の発生を低減し、これによる騒音を低減することができる。
即ち、下死点BDC側のシリンダ6(シリンダポート6A)内は、上死点TDC側のシリンダ6から開放穴32、第1の油通路38(チェック弁39)および供給穴37を介して補給された圧油により予め昇圧され、吐出ポート15B側との圧力差が小さくなっているから、吐出行程に達し始めたシリンダ6内に吐出ポート15Bのノッチ15Eを介して流入(逆流)する圧油の量を低減でき、ピストン7やホース配管(図示せず)等の脈動が低減され、吐出ポート15B内の急激な圧力変動を抑えることができる。
ここで、第1の油通路38の途中に設けたチェック弁39は、開放穴32から供給穴37に向けて圧油が流通するのを許容するが、逆向きの流れを阻止し逆流を防止する。このため、下死点BDC側の供給穴37が上死点TDC側の開放穴32よりも高い圧力になる前に、チェック弁39は閉弁するようになり、供給穴37側から開放穴32側に向けて圧油が逆流するのを阻止することができる。従って、下記のように切換弁34が閉弁位置(e)から開弁位置(f)に切換わった場合でも、供給穴37側から開放穴32側に向けて圧油が逆流することはない。
次に、図3に示すように、オペレータが操作弁24の操作レバー24Aを中立位置から大きく傾転操作すると、操作弁24から方向制御弁23の油圧パイロット部23A,23Bのいずれかにパイロット圧が供給される。油圧パイロット部23Bにパイロット圧を供給した場合を例に挙げると、方向制御弁23は中立位置(I)から切換位置(III)に漸次切換えられる。このため、油圧ポンプ1からの圧油は、方向制御弁23を介して油圧シリンダ22に供給され、該油圧シリンダ22を伸長方向に駆動することができる。
また、操作弁24の操作レバー24Aを傾転操作したときには、例えばコントローラ43から電磁比例弁31に、図5に示す特性線45に沿ってレバー操作量に対応した制御信号が出力される。このため、電磁比例弁31は、操作弁24の操作量に対応して低圧位置(c)から昇圧位置(d)へと漸次切換わる。これにより、容量制御弁29の油圧パイロット部29Aには、図5の特性線45に対応したパイロット圧が電磁比例弁31を介して供給され、容量制御弁29は、供給位置(a)から排出位置(b)へと操作弁24の操作量にほぼ比例して切換えられる。
この結果、傾転アクチュエータ12は、液圧室14B内の圧油が容量制御弁29を介してタンク17側に排出され、液圧室13B内には制御圧通路26内の傾転制御圧が第2通路26Bを介して供給される。これにより、傾転ピストン13Cは漸次伸長し、傾転ピストン14Cは漸次縮小する。このため、傾転アクチュエータ12は、小容量(Min)側から大容量(Max)側に漸次切換わり、油圧ポンプ1の斜板11を矢示B方向に傾転駆動する。このとき、油圧ポンプ1の吐出容量は、図5の特性線45に沿うように操作レバー24Aの傾転操作量に対応して可変に制御される。
このように、油圧ポンプ1の容量が小容量から大容量に切換わるときには、パイロットポンプ16からの傾転制御圧が第1通路26Aから第2通路26Bに向けて供給されると共に、このときの作動油の流れは固定絞り36によって絞られる。このため、固定絞り36の前,後で大きな圧力差(差圧)が発生し、これに伴った差圧がパイロット管路35A,35B内のパイロット圧にも発生する。切換弁34は、第1,第2の油圧パイロット部34A,34B間の差圧がばね34Cの設定圧よりも高くなると、ばね34Cの付勢力に抗して閉弁位置(e)から開弁位置(f)に切換えられる。
このように、切換弁34が開弁すると、弁板15の切換ランド15Cに設けられた開放穴32は、タンク通路33を介してタンク17に連通する。このため、開放穴32は、シリンダブロック5の回転により各ピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わる途中(即ち、上死点TDC側の位置)で該当するシリンダ6内に残った圧力をタンク17に排出(開放)することができる。
即ち、傾転制御用のレギュレータ28により斜板11の傾転角を大きくする方向に傾転アクチュエータ12を駆動するときには、切換弁34を開弁することにより、吐出行程の最後でシリンダブロック5の各シリンダ6内に残った圧力をタンク17側に開放して逃がすことができる。このため、斜板11に働く合力の着力点「∞」は、図3に示す如く斜板11の傾転中心の軸O−Oに近付く方向(即ち、下死点BDC側にシフトする方向)に移動するようになり、合力の着力点「∞」が図2に示すように、傾転中心の軸O−Oに対し上死点TDC側にずれて作用するのを抑えることができる。
従って、傾転アクチュエータ12により斜板11を傾転角が大きくなる方向に駆動するときには、斜板11の傾転角を小さくする方向の復帰モーメントが働くのを抑制でき、斜板11を傾転角が大きくなる方向(即ち、ポンプ容量を小容量から大容量)に駆動しようとするときの動作速度を速くすることができる。これにより、油圧ポンプ1の容量を小容量から大容量に増やすときの応答性を高めることができ、オペレータの操作フィーリングを向上することができる。
一方、油圧ポンプ1の容量が傾転アクチュエータ12により大容量状態(または、中間の容量状態)に保持されるときには、パイロットポンプ16から制御圧通路26に向けて作動油がほとんど流通せず、固定絞り36の前,後差圧も小さくなる。このため、パイロット管路35A,35B内のパイロット圧も差圧が小さくなり、切換弁34は、図2に示す如くばね34Cによって開弁位置(f)から閉弁位置(e)に戻される。
これにより、弁板15の開放穴32は、切換弁34によりタンク17に対して遮断される。しかし、弁板15の切換ランド15C,15D間には、上死点TDC側の開放穴32を下死点BDC側の供給穴37にチェック弁39を介して連通させる第1の油通路38が形成されている。このため、各シリンダ6内のピストン7が吐出行程から吸入行程に切換わるときに、該当するシリンダ6内に残圧があったとしても、第1の油通路38が開放穴32の圧油(吐出行程での残圧)を第1のチェック弁39を介して供給穴37に導くことができ、この供給穴37から下死点BDC側を通過しているシリンダポート6Aに圧油を供給することができる。
従って、第2の切換ランド15D側で、各シリンダ6のうち吸入ポート15Aを通過したシリンダ6内に前記残圧を補給して当該シリンダ6内を予め昇圧することができ、この状態で吐出ポート15Bにノッチ15Eを介して連通させることができる。この結果、吸入行程から吐出行程に切換り始めたシリンダ6内に、吐出ポート15B側の高圧が逆流するのを抑えることができ、このときの油圧脈動の発生を低減し、これによる騒音を低減することができる。
しかも、パイロットポンプ16の吐出側と供給穴37との間には、両者間を接続する第2の油通路40と、該油通路40の途中に位置しパイロットポンプ16の吐出側から油通路40を介して供給穴37に向け圧油が流通するのを許容し、逆流を防止する第2のチェック弁41とが設けられている。このため、切換弁34が開弁して圧油の補給(即ち、開放穴32からの前記残圧の補給)ができない場合でも、パイロットポンプ16から吐出される圧油(傾転制御圧となるパイロット圧)を第2の油通路40を介して供給穴37に導くことができる。
このように、切換弁34が開弁(即ち、斜板11の傾転角を大きく)し、吐出行程での前記残圧を開放穴32からタンク17に開放する場合でも、パイロットポンプ16からの圧油を、第2の油通路40、チェック弁41を介して供給穴37からシリンダポート6A(即ち、下死点BDC側を通過しているシリンダポート6A)に供給することができる。このため、吸入行程から吐出行程に切換り始めたシリンダ6内に、吐出ポート15B側の高圧が逆流するのを抑えることができる。
かくして、第1の実施の形態による油圧ポンプ1の容量制御装置によれば、斜板11を大傾転側に駆動するときの動作速度を速くし、ポンプ容量を大容量側に増やすときの応答性を向上することができる。これにより、例えば油圧ショベルのレバー操作開始時に、動き出しの応答性がアップし、操作性を高めることができる。また、第2の切換ランド15D側では、各シリンダ6のうち吸入ポート15Aを通過したシリンダ6内に吐出ポート15B側の高圧が逆流するのを抑え、油圧脈動を低減することができ、騒音の低減化を図ることができる。
また、油圧ポンプ1のポンプ容量をほぼ一定の容量(小容量、中間の容量または大容量を含む)に保った場合、あるいは大容量側から小容量側に制御する場合)には、切換弁34を閉弁して開放穴32がタンク17に連通するのを阻止できる。さらに、切換弁34の閉弁時には、第1の油通路38が開放穴32の圧油(吐出行程での残圧)を第1のチェック弁39を介して供給穴37に導き、下死点BDC側を通過しているシリンダポート6Aに供給穴37から圧油を供給する。
しかし、このときの圧油量は、切換弁34の開弁時に比較して開放穴32から排出される油量が小さくなる。このため、吐出行程の最後でシリンダブロック5の各シリンダ6内に残った圧力が必要以上にタンク17(または、供給穴37)側に排出されるのを抑制でき、油圧ポンプ1の容積効率が開放穴32によって低下するのを抑えることができる。
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、該第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。しかし、第2の実施の形態の特徴は、圧油供給源と供給穴37との間を接続する第2の油通路51を、パイロット油圧源側通路52、吐出ポート側通路53および供給側通路54により構成し、第2の油通路51の途中に設ける第2の通路開閉弁を高圧選択弁55により構成している。
ここで、高圧選択弁55は、第1,第2のチェック弁55A,55Bを含んで構成され、油圧ポンプ1の吐出ポート15B側とパイロットポンプ16の吐出側とのうち、より高圧となる方を第1,第2のチェック弁55A,55Bにより選択する。即ち、高圧選択弁55は、第1,第2のチェック弁55A,55Bのうち、その一方が開弁するときには他方が閉弁されるため、パイロットポンプ16の吐出側(パイロット油圧源側通路52)と吐出ポート15B側(吐出ポート側通路53)のうち高圧側となる通路を選択し、選択した通路を供給側通路54に連通させる。
この場合、パイロット油圧源側通路52は、その上流側がパイロットポンプ16の吐出側に接続され、下流側は高圧選択弁55の第1のチェック弁55Aを介して供給側通路54に接続されている。第1のチェック弁55Aは、供給側通路54からパイロット油圧源側通路52に向けて圧油が流通(逆流)するのを防止し、逆向きの流れを許容する。吐出ポート側通路53は、その上流側が油圧ポンプ1の吐出ポート15B側に接続され、下流側は高圧選択弁55の第2のチェック弁55Bを介して供給側通路54に接続されている。第2のチェック弁55Bは、供給側通路54から吐出ポート側通路53に向けて圧油が流通(逆流)するのを防止し、逆向きの流れを許容する。
供給側通路54は、高圧選択弁55(即ち、第1,第2のチェック弁55A,55B)の流出側を供給穴37に常時連通(接続)する通路であり、その一部(供給穴37への接続部位)が第1の油通路38と共通通路であってもよく、別々に供給穴37に接続される構成であってもよい。これにより、供給側通路54は、高圧選択弁55により選択された前記通路(即ち、パイロット油圧源側通路52または吐出ポート側通路53)を供給穴37に接続する。
このため、第2の実施の形態においては、供給穴37に圧油を供給する圧油供給源は、油圧ポンプ1の吐出ポート15B側またはパイロットポンプ16の吐出側のいずれか一方により構成される。なお、切換弁34の閉弁時には、開放穴32からの圧油(吐出行程での残圧)が第1の油通路38、チェック弁39を介して供給穴37に導かれる。しかし、この場合の圧油(吐出行程での残圧)が高圧選択弁55を介した前記圧油供給源からの圧力よりも小さいときには、第1のチェック弁39が閉弁するので、前記吐出行程での残圧が供給穴37に導かれることはない。
かくして、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で述べたように、切換弁34が開弁して圧油の補給(即ち、開放穴32からの前記残圧の補給)ができない場合でも、パイロットポンプ16の吐出側(即ち、パイロット油圧源側通路52)と吐出ポート15B側(即ち、吐出ポート側通路53)のうちより高圧側の圧油を高圧選択弁55、供給側通路54を介して供給穴37に導くことができ、この圧油を供給穴37からシリンダポート6A(即ち、下死点BDC側を通過しているシリンダポート6A)に供給することができる。
このため、吸入行程から吐出行程に切換り始めたシリンダ6内に、吐出ポート15B側の高圧が逆流するのを抑えることができ、油圧脈動を低減することができ、騒音の低減化を図ることができる。しかも、パイロットポンプ16の吐出側および吐出ポート15B側のうちより高圧側の圧油を供給穴37に導くことにより、吐出ポート15B側の圧油のみを導く場合と比較してメインの油圧ポンプ1の容積効率をより向上させることができる。また、パイロットポンプ16の吐出側の圧油のみを導く場合と比較して吐出ポート15B側の高圧が逆流することをより効果的に抑制することができる。また、第1の実施の形態と同様に、斜板11を大傾転側に駆動するときの動作速度を速くし、ポンプ容量を大容量側に増やすときの応答性を向上することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、レギュレータ28の電磁比例弁31をレバー操作量に応じて所謂ポジティブコントロールで制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばネガティブコントロールにより油圧ポンプの容量制御を行う構成としてもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、レギュレータ28を、容量制御弁29と電磁比例弁31とにより構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばレギュレータを容量制御弁のみで構成し、電磁比例弁を省略する構成としてもよい。この場合、容量制御弁を電気的に制御する弁で構成することにより、例えば図5に示す特性線45の如く、レバー操作量に対応してポンプ容量を可変に制御することができる。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、スリーブ29Cを有する油圧パイロット式のサーボ弁で容量制御弁29を構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばスリーブ29Cとフィードバックリンク30とを廃止した油圧パイロット式の制御弁からなる容量制御弁で構成してもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
さらに、前記各実施の形態では、油圧ポンプ1の容量制御装置を油圧ショベルに適用する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械に適用してもよいものである。