JP6483540B2 - ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents
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Description
前記(1)の実現には、PやSなどの不純物を低減することが有効であるが、これらの不純物は工業的に既に十分低いレベルで管理されており、溶製能力上これ以上の低減は難しい。
また、前記(2)の実現には、CやCrなどの主要合金成分を低減することが有効であるが、いずれの合金元素もクリープ強度の確保に必要不可欠であり、安易に低減することはできない。しなしながら、CやCr以外の合金元素については改善の余地が残されている。よって、本発明では前記(2)に関して、CやCr以外の合金元素について検討した。
前記(3)の実現には、フェライト相を安定化するSiやCr、Moなどの合金成分を低減するか、オーステナイト相を安定化して相対的にフェライト相を不安定化するMnやNi、Coなどの合金成分を増量することが有効である。しかしながら、これらの合金元素の中には炭窒化物の析出量を変化させ、溶着金属の靭性やクリープ性能に影響を与えるものがある点にも留意せねばならない。なお、ここで言う炭窒化物とは主にNb、Vの炭化物、窒化物による複合化合物を指す。
また、前記(4)の実現には、CrやNb、Vなどの炭窒化物形成元素の増量が有効であるが、炭窒化物の析出量増大は靭性を劣化させる。よって、本発明では炭窒化物の析出量には影響を与えずにクリープ強度を向上させる合金元素について検討した。
これに対し、本発明では後記するように「Ni量を0.50%以下(好ましくは0.20%以下)、Cr量を8.00〜10.50%(好ましくは8.00〜9.50%)」と規定して各種特性を両立していることに特徴がある。
本実施形態に係る溶接用ワイヤは、質量%で、C:0.07〜0.13%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.55〜1.00%、S:0.002〜0.010%、Cr:8.00〜10.50%、Mo:0.85〜1.20%、V:0.15〜0.30%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.03〜0.07%含有し、且つNi:0.50%以下、P:0.010%以下、Cu:0.30%以下、Al:0.04%以下、B:0.0015%以下、O:0.030%以下、に制限し、含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、含有するMn量/S量:87以上であり、残部がFe及び不可避不純物からなる。
なお、化学成分を前記したとおりとするとともに、前記含有するMn量/S量を150以上とするのが好ましい。
Cは、溶着金属中の焼き入れ性と炭窒化物の析出量に大きな影響を及ぼすとともに、オーステナイト安定化元素として機能し、溶着金属中のδフェライト相の残存を抑制する。溶着金属中のC量が低いと炭化物の析出量が不十分となり、また、δフェライト相が残存して所定のクリープ強度が得られない。一方で、C量が過剰に高くなると高温割れ感受性が高まり、また、炭化物の析出量が増大して溶着金属の強度を著しく高め、靭性を劣化させる。よって、C量は0.07〜0.13%とする。なお、C量の下限は0.08%であるのが好ましく、上限は0.11%であるのが好ましい。
Siは、溶接ビードのなじみ性を改善するとともに、脱酸剤として機能し、溶着金属の強度・靭性を向上させる。溶着金属中のSi量が低すぎると溶接作業性(例えば、溶接ビードのなじみ性や融合性)が劣化し、クリープ強度及び靭性も劣化させる。一方で、Si量が過剰になると溶着金属の強度を著しく高め、靭性を劣化させる。よって、Si量は0.10〜0.50%とする。なお、Si量の下限は0.18%であるのが好ましく、上限は0.41%であるのが好ましい。
(Ni:0.50%以下)
(含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%)
Mnは、Siと同様、脱酸剤として機能し、溶着金属の靭性を向上させる。Niは、ミクロ組織を微細化して靭性を向上させる。さらに、Mnは、オーステナイト安定化元素として機能し、溶着金属中のδフェライト相の残存を抑制する。溶着金属のMn量又はNi量が低すぎると所定の靭性が得られず、また、軟質なδフェライト相が溶着金属中に残存してクリープ強度を劣化させる。一方で、溶着金属中のMn量及びNi量が過剰に高くなると、炭窒化物を不安定化させ、クリープ強度を劣化させる。Mnは後述するとおり、Sの高温割れ性への悪影響を緩和する効果もある。よって、Mn量は0.55〜1.00%とする。Mn量の下限は0.60%とするのが好ましく、上限は0.80%とするのが好ましい。
また、Niは、凝固完了温度を低温化することで高温割れ感受性を高める。よって、Ni量は0.50%以下とする。Ni量は0.20%以下とするのが好ましい。
(含有するMn量/S量:87以上)
Sは、溶接時にFeと結合してFe−FeSの低融点共晶を最終凝固部に形成し、高温割れ性を高めるだけでなく、溶着金属を脆化させて靭性を劣化させる。一方で、溶接ビードのなじみ性や融合性を改善する効果があるが、S量が少なすぎるとなじみ性改善効果や融合性を改善する効果が得られない。よって、S量は0.002〜0.010%とする。S量の下限は0.003%とするのが好ましく、上限は0.007%とするのが好ましい。
また、Mnは、溶接凝固過程でSと結合してMnSを形成し、上述の悪影響を緩和することで高温割れ性を低減する。このような効果を得るためには、含有するMn量/S量を87以上とすることが必要である。好ましくは前記したように、含有するMn量/S量を150以上とし、より好ましくは、含有するMn量/S量を156以上とする。
Crは、PWHT時に炭窒化物を形成して溶着金属のクリープ強度を高める。Cr量が少なすぎると炭窒化物の析出量が不足して所定のクリープ強度が得られない。一方、Cr量が多くなると凝固完了温度を低下させて高温割れ感受性を高めるとともに、δフェライト相が溶着金属中に残留してクリープ強度を劣化させる。よって、Cr量は8.00〜10.50%とする。Cr量の下限は8.21%とするのが好ましく、上限は9.56%とするのが好ましい。
Moは、PWHT時にCr系炭化物中又は母相中に固溶して溶着金属のクリープ強度を向上させる。Mo量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、Mo量が多くなると、Cr系炭化物及び母相中への固溶量が過剰に増加して溶着金属の強度が著しく高まり、靭性を劣化させる。よって、Mo量は0.85〜1.20%とする。Mo量の下限は0.94%とするのが好ましく、上限は1.05%とするのが好ましい。
Vは、PWHT時に炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。V量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、V量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。よって、V量は0.15〜0.30%とする。V量の下限は0.21%とするのが好ましく、上限は0.27%とするのが好ましい。
Nbは、Vと同様、PWHT時に炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。Nb量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、Nb量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。よって、Nb量は0.02〜0.10%とする。Nb量の下限は0.04%とするのが好ましく、上限は0.07%とするのが好ましい。
Nは、PWHT時にCrやV、Nbなどと結合して炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。N量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、N量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。さらに、N量が多くなると溶接過程で発生するN2ガスが溶融金属中に残留し易くなり、ブローホールを発生させる。よって、N量は0.03〜0.07%とする。N量の下限は0.04%とするのが好ましく、上限は0.06%とするのが好ましい。
Pは、溶接時の最終凝固部に低融点化合物を形成し、高温割れ感受性を高めるだけでなく、溶着金属を脆化させて靭性を劣化させる。よって、P量は0.010%以下とする。P量は0.0006%以下とするのが好ましい。
溶接用ワイヤのCu量が増加すると、溶着金属中のCu量も増加し、靭性を劣化させる。よって、Cu量は0.30%以下とする。Cu量は0.10%以下とするのが好ましい。なお、Cu量は、溶接用ワイヤ中に含有されているCu、及び溶接時の溶接用ワイヤ送給性改善のために電気めっき等の手法で溶接用ワイヤの表面にCuをコーティングしている場合には、当該コーティングしているCuを含めて前記したように0.30%以下とする。
Alは、脱酸元素として機能するが、凝固過程で溶融金属中のOと結合してスラグ発生量を増加させる。また、Alは、溶着金属中に粗大な酸化物を形成し、脆性破壊の発生起点として作用して溶着金属の靭性を劣化させる。さらに、Alは、Nとも結合してAlNを形成し、クリープ強度の確保に必要不可欠なCrやNb、Vの炭窒化物析出量を低減し、クリープ強度を劣化させる。よって、Al量は0.04%以下とする。Al量は0.03%以下とするのが好ましい。
Bは、溶接時の最終凝固温度を低下させ、高温割れ感受性を高める。よって、B量は0.0015%以下とする。B量は0.0003%以下とするのが好ましい。
Oは、溶接時の凝固過程でSiやMn、Alなどと結合して酸化物を形成し、スラグ量を増加させる。また、形成された酸化物は、脆性破壊の発生起点として作用し、溶着金属の靭性を劣化させる。よって、O量は0.030%以下とする。O量は、0.005%以下とするのが好ましい。
本発明に係る溶接用ワイヤを構成する組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はFe及び不可避不純物である。不可避不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物であり、溶接用ワイヤの諸特性を害さない範囲で含有される。不可避不純物としては、例えば、Ti、Co、W、Sn、Sb、As、Pb、Biなどが挙げられる。これらの元素は高温割れ性や靭性、クリープ強度などの必須特性に悪影響を及ぼすが、それぞれに定められた所定量未満又は所定量以下であれば前記した必須特性に悪影響を及ぼさないので、それぞれに定められた所定量未満又は所定量以下で含有することは許容される。不可避不純物として含有することが許容される許容量として具体的には、Tiであれば0.010%未満、Coであれば0.10%未満、Wであれば0.10%未満、Sn、Sb及びAsであればそれぞれ0.015%以下、Pb及びBiであればそれぞれ0.0015%以下である。なお、本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記した不可避不純物以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
前記したように、Ti及びCoについては、クリープ強度を向上させる作用がある。従って、溶接用ワイヤの他の実施形態として、Ti及びCoのうちの少なくとも一方を所定量含有させることもできる。
Tiは、必須元素ではないが、溶接時の凝固過程及びPWHT時に微細な炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる。Ti量が少なすぎると十分な効果が得られず、Ti量が多すぎると溶着金属の強度が著しく高まり、靭性を劣化させる。よって、クリープ強度をさらに高めたい場合には、Ti量を0.010〜0.030%含有させるとよい。
Coは、必須元素ではないが、オーステナイト安定化元素として機能する。そのため、Coは、δフェライト相の残存を抑制し、クリープ強度を向上させることができる。Co量が少なすぎるとその効果を発揮せず、多すぎると溶着金属の強度が向上し、靭性を劣化させる。よって、クリープ強度をさらに高めたい場合には、Co量を0.10〜0.75%含有させるのが好ましく、0.10〜0.50%含有させるのがより好ましい。
(溶加棒)
本発明に係る溶接用ワイヤは、ソリッドワイヤ又は溶加棒であるのが好ましい。このようにすると、高Crフェライト系耐熱鋼の溶接に好適に用いることができる。ソリッドワイヤや溶加棒は原料の組成を前記したように調整した後、一般的な条件・設備で製造することができる。
表1のワイヤ番号1〜41に示す化学成分のガスシールドアーク溶接用ワイヤ(以下、単に「ワイヤ」という。)を製造した。そして、ワイヤ番号1〜41に係るワイヤと、図1に示す開先形状の試験板と、を用いて、表2に示す溶接条件でGTAWを行った。その後、GTAWを行った溶接試験材にPWHT(760℃×4h)を実施し、外観試験及び放射線透過試験を実施して溶接部の健全性を評価するとともに、全溶着金属の靭性及びクリープ強度を評価した。各評価は以下のようにして行った。
なお、供試材料であるワイヤの形態は種々存在するが、全溶着金属の各種特性評価はφ1.2mmのスプールワイヤで代表した。
外観試験は、外観不良が認められなかったものを「○」、外観不良が認められたものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
放射線透過試験は、ASTM E1032に準拠し、その判定基準はASME SFA−5.28(“11.Radiographic Test”)に従った。
放射線透過試験において、ASME SFA−5.28の判定基準を満足するものを「○」、満足しないものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
全溶着金属のクリープ強度を評価するためクリープ試験を行った。
全溶着金属のクリープ強度の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線方向にクリープ試験片(試験片直径:φ6.0mm、平行部長さ:30.0mm)を供した。図2A及び図2Bにクリープ試験片の形状を示す。
クリープ試験は、試験温度を650℃、初期負荷応力を100MPaとし、クリープ破断時間(Tr)が2500h以上のものを「◎」、1500h以上2500h未満のものを「○」、1500h未満のものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
全溶着金属の靭生を評価するためシャルピー衝撃試験を行った。
全溶着金属の靭性の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線と法線方向(継手方向)にAWS B4.0に準拠した10mm角の2mm−Vノッチ(サイドノッチ)のシャルピー衝撃試験片を供した。また、試験温度は20℃、試験数は3としてその平均値を求めた。なお、図3にシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す。
全溶着金属の靭性は、20℃におけるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギー(vE20℃)の3点平均が114J以上のものを「◎」、76J以上114J未満のものを「○」、76J未満のものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
各ワイヤの高温割れ性を下記のとおり評価した。GTAWでは特に初層のクレータ割れが問題となり易いため、図4A及び図4Bに示す開先形状の試験板を用い、表3に示す溶接条件でパイプ初層のGTAWを模擬した1パス溶接を実施し、クレータ割れの有無を確認した。高温割れ性の評価試験には、表1に示す化学成分のφ2.4mmの切断線を供した。高温割れ性の評価試験は、詳細には、まず、200mm長さの試験片に30mm程度の溶接ビードを5本形成した(つまり、N=5で試験を実施した)。そして、5本の溶接ビードのうち、クレータ割れが発生しなかったものを「◎」、割れが1〜2個発生したものを「○」、割れが3個以上発生したものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
これに対し、本発明の発明特定事項のうちのいずれかを備えていない(要件を満たしていない)ワイヤ番号13〜41に係るワイヤを用いた場合、溶接部が健全でないか、溶接時に高温割れが生じるか、PWHT後のクリープ強度及び靭性のうちの少なくとも一方に劣ることが確認された。これらはいずれも総評が×であった(比較例)。具体的には以下のとおりであった。
ワイヤ番号14に係るワイヤは、C量が多かったので、クレータ割れ試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号16に係るワイヤは、Si量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号18に係るワイヤは、Mn量が多かったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号20に係るワイヤは、含有するMn量とNi量の合計量(表1において「Mn+Ni」と示す。)が少なかったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号21に係るワイヤは、含有するMn量とNi量の合計量が多かったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号23に係るワイヤは、S量が多く、また、含有するMn量/S量(表1において「Mn/S」と示す。)が少なかったので、クレータ割れ試験及びシャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号25に係るワイヤは、P量が多かったので、クレータ割れ試験及びシャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号26に係るワイヤは、Cu量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号28に係るワイヤは、Cr量が多かったので、クレータ割れ試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号30に係るワイヤは、Mo量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号32に係るワイヤは、V量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号33に係るワイヤは、V量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号35に係るワイヤは、B量が多かったので、クレータ割れ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号37に係るワイヤは、Nb量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号38に係るワイヤは、Co量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号40に係るワイヤは、N量が多かったのでブローホールが発生し、放射線透過試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号41に係るワイヤは、O量が多かったので、スラグが発生し、外観試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
表1のワイヤ番号1〜12に示す化学成分のワイヤを製造した。そして、ワイヤ番号1〜12に係るワイヤと、図5に示す開先形状の試験板と、を用いて、表5に示す溶接条件でGMAWを行った。その後、GMAWを行った溶接試験材にPWHT(760℃×4h)を実施し、外観試験及び放射線透過試験を実施して溶接部の健全性を評価するとともに、全溶着金属の靭性及びクリープ強度を評価した。
なお、供試材料であるワイヤの形態は種々存在するが、全溶着金属の各種特性評価はφ1.2mmのスプールワイヤで代表した。
外観試験は、GTAWに関する検討で行ったのと同様の評価基準にて評価した。
放射線透過試験は、ASTM E1032に準拠し、その判定基準はASME SFA−5.28(“11.Radiographic Test”)に従った。
放射線透過試験において、ASME SFA−5.28の判定基準を満足するものを「○」、満足しないものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
全溶着金属のクリープ強度を評価するためクリープ試験を行った。
全溶着金属のクリープ強度の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線方向にクリープ試験片(試験片直径:φ6.0mm、平行部長さ:30.0mm)を供した。なお、クリープ試験片の形状は前述のものと同一とした。
クリープ試験は試験温度を650℃、初期負荷応力を100MPaとし、クリープ破断時間が800h以上のものを「○」、800h未満のものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
全溶着金属の靭生を評価するためシャルピー衝撃試験を行った。
全溶着金属の靭性の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線と法線方向(継手方向)にAWS B4.0に準拠した10mm角の2mm−Vノッチ(サイドノッチ)のシャルピー衝撃試験片を供した。また、試験温度は20℃、試験数は3としてその平均値を求めた。なお、図6にシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す。
全溶着金属の靭性は20℃におけるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギー(vE20℃)の3点平均が38J以上のものを「○」、38J未満のものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
各ワイヤの高温割れ性を下記のとおり評価した。GMAWでは溶接ビード表面及び内部の高温割れが問題となり易いため、図7A及び図7Bに示す開先形状の試験板を用い、前述と同一の表5に示す溶接条件でパイプ開先内のGMAWを模擬した1パス溶接を実施した。そして、外観試験、浸透探傷試験を行って、溶接ビード表面について高温割れの有無を確かめた。また、溶接ビード内部の高温割れの有無を「1.GTAWに関する検討」で述べた放射線透過試験にて同時に確かめた。
なお、浸透探傷試験はJIS Z2343−1に準拠して行った。
外観試験、浸透探傷試験及び放射線透過試験にて不良がなかったものをそれぞれ「○」、不良があったものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
Claims (22)
- 質量%で、
C:0.07〜0.13%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.55〜1.00%、
S:0.002〜0.010%、
Cr:8.00〜10.50%、
Mo:0.85〜1.20%、
V:0.15〜0.30%、
Nb:0.02〜0.10%、
N:0.03〜0.07%含有し、
且つ
Ni:0.50%以下、
P:0.010%以下、
Cu:0.30%以下、
Al:0.04%以下、
B:0.0015%以下、
O:0.030%以下、
Pb:0.0015%以下、
Bi:0.0015%以下、
に制限し、
含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、
含有するMn量/S量:87以上であり、
残部がFe及び不可避不純物からなる
ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤ。 - 質量%で、
C:0.07〜0.13%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.55〜1.00%、
S:0.002〜0.010%、
Cr:8.00〜10.50%、
Mo:0.85〜1.20%、
V:0.15〜0.30%、
Nb:0.02〜0.10%、
N:0.03〜0.07%含有し、
且つ
Ni:0.50%以下、
P:0.010%以下、
Cu:0.30%以下、
Al:0.04%以下、
B:0.0015%以下、
O:0.030%以下、
に制限し、
含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、
含有するMn量/S量:150以上であり、
残部がFe及び不可避不純物からなる
ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤ。 - 前記C量を0.08〜0.11%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Ni量を0.20%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Cr量を8.21〜10.50%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記含有するMn量とNi量の合計量を0.70〜1.00%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Cu量を0.10%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Al量を0.03%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記N量を0.04〜0.07%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- Sn:0.015%以下、
As:0.015%以下、
Sb:0.015%以下、
に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。 - 前記C量を0.08〜0.11%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Ni量を0.20%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Cr量を8.21〜10.50%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記含有するMn量とNi量の合計量を0.70〜1.00%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Cu量を0.10%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記Al量を0.03%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- 前記N量を0.04〜0.07%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- Sn:0.015%以下、
As:0.015%以下、
Sb:0.015%以下、
に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。 - Pb:0.0015%以下、
Bi:0.0015%以下、
に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。 - 前記含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.01%であり、Ti:0.010〜0.030%含有することを特徴とする請求項1〜19のうちのいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- Co:0.10〜0.75%含有することを特徴とする請求項1〜19のうちのいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
- Co:0.10〜0.75%含有することを特徴とする請求項20に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
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