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JP6450371B2 - T細胞受容体α遺伝子を開裂するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼおよびその用途 - Google Patents

T細胞受容体α遺伝子を開裂するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼおよびその用途 Download PDF

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Description

発明の分野
本開示は、分子細胞生物学、遺伝学、ゲノミクス、およびヒト治療薬へのそれらの応用に関する。特定の局面は、TCRα遺伝子由来の核酸ターゲット配列を開裂するレアカッターエンドヌクレアーゼ(rare-cutting endonuclease)、より具体的には、T細胞におけるこの遺伝子の発現を特に効率よく妨害するI-OnuIまたはホモログの新しいメガヌクレアーゼ変異体、および癌治療のためのその使用に関する。
発明の背景
部位特異的ヌクレアーゼは複雑なゲノム内のDNA配列を特異的にかつ効率よく標的にして修飾するための有力な試薬である。部位特異的ヌクレアーゼによって生じた二本鎖DNA切断は、一般に、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)という異なる機序によって修復される。相同組換えは通例、遺伝子損傷の完全な修復を行うためのドナーマトリックスとして、損傷したDNAの姉妹染色分体を使用するが、NHEJは、二本鎖切断の部位でDNA配列を変化させることが多い不完全な修復プロセスである。機序には、2つのDNA末端に残っているものの直接再ライゲーション(Critchlow and Jackson 1998)、またはいわゆるマイクロホモロジー媒介末端結合(Ma, Kim et al. 2003)による再結合が関与する。非相同末端結合(NHEJ)による修復は小さな挿入および欠失をもたらすことが多く、特異的遺伝子ノックアウトの作出に使用することができる。部位特異的ヌクレアーゼによるゲノム工学には、基礎研究からバイオ産業への応用およびヒト治療薬まで、数多くの応用がある。これを目的とするDNA結合タンパク質のリエンジニアリングは、主として、天然LADLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)、人工ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEヌクレアーゼ)、および最近記述されたCRISPR-Cas系に限定されてきた。
メガヌクレアーゼとしても知られているホーミングエンドヌクレアーゼは、特異的遺伝子座にDNA二本鎖切断をもたらすことができる大きな(>14bp)開裂部位を有する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Thierry and Dujon 1992)。公知のホーミングエンドヌクレアーゼファミリーはいくつかあり、それらは、それを構成する規範的モチーフと構造特徴とに基づいて区別される。しかしそれらは全て、長いDNAターゲットを認識して開裂するという特性を共有している。ホーミングエンドヌクレアーゼは、「ゲノムレベル」の特異性またはそれに近い特異性を有する、つまりその宿主ゲノムにおいて極めて稀な、ことによると1ヶ所にしか存在しない推定ターゲット配列を有する、初めての、そして現時点では唯一の、天然エンドヌクレアーゼである。一般的特性として、HEは、そのDNAターゲット配列に対して中等度の忠実度を有するので、そのDNAターゲット配列に加えられた大半の塩基対置換は、それに結合しまたはそれを開裂するHEの能力を低減し、または排除することになる。それゆえにHEは、今までに発見された天然エンドヌクレアーゼのなかで最も特異的であり、実際、この特性は、それらがコードされている遺伝要素の天然のライフサイクルにとって決定的に重要である。
ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子(HEG)は、そのDNA認識および開裂活性が開裂部位へのHEGの複写をもたらすDNA修復イベントにつながりうるので、利己的遺伝要素の一タイプと分類される。「ホーミング」と呼ばれるこの遺伝子水平伝播の機序は、超メンデル的(super-Mendelian)遺伝パターンをもたらす。この機序を使って、HEGとそのエンドヌクレアーゼ遺伝子産物は、その宿主種個体群内に迅速に伝播することができ、また進化の過程で生物の全ての界に伝播してきた。HEGは、その宿主生物に適応コストを負荷しない高度に保存されたゲノム位置に、例えばイントロン内に、または宿主タンパク質への非破壊的N末端融合物またはC末端融合物として、最もよく見い出される。
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼファミリー(LHE)は、一群のコンパクトな(<320アミノ酸)ヌクレアーゼを含み、それらはゲノム工学への応用にとって魅力的な特性を持つことから、その構造的特性および機構的特性が広範に研究されてきた。LHEは、二量体として作動するか、擬似二量体型単量体(pseudo-dimeric monomer)として作動し、DNA開裂活性部位は、2つのサブユニット(二量体型LHEの場合)または2つのドメイン(単量体型LHEの場合)の界面の、DNAに面する末端に存在する。LHEの名前の由来であるLAGLIDADGコンセンサスモチーフは、2つのサブユニットまたは2つのドメインの間のこの界面を形成する2つの中央αヘリックス中に見い出される。各LAGLIDADGヘリックスの最下部には、適当な条件が満たされれば、例えばLHEが適当なDNAターゲット配列を見つけ出しそれに結合すれば、全体として加水分解反応をコーディネートする残基が存在する。活性部位はDNAターゲット配列の「中央4(central-4)」DNA塩基をカバーする。
活性部位の両端には、LHEがそのDNAターゲット配列を認識するために使用する2つのDNA結合ドメインが存在する。各ドメインは、ほぼ完全な1ターン分のDNAに巻き付いてDNA配列の9塩基対と接触する逆平行ベータシートを含んでいる。こうしてLHEファミリーのメンバーは22塩基対(各ドメインについての9塩基対と活性部位がカバーする4塩基対)のDNAターゲット配列を認識し、それは二量体型LHEの場合は部分的にパリンドロームであるが、単量体型LHEの場合は完全に非対称でありうる。各逆平行ベータシートからは、DNA認識界面を構成するアミノ酸側鎖が出ている。LHEファミリー内では非DNAインターフェース残基全体に多くのアミノ酸保存が存在するが、DNA認識界面アミノ酸組成は著しく多様である。これは、LHEごとにDNA認識界面が側鎖-側鎖接触および側鎖-DNA接触の広範なネットワークを含み、その大半は必然的に特定LHEのDNAターゲット配列に対してユニークだからである。それゆえに、DNA認識界面のアミノ酸組成(および特定DNA配列に対するその対応)が、どの天然LHEまたは改変LHEにとっても、その決定的特徴である。DNA認識界面は、収容され加水分解されうるDNAターゲット配列の実体を決定する機能を果たし、また応用の要求に応じてLHEの品質を画定するアフィニティーおよび特異性の特性を決定する機能も果たす。
LHEは、その小さなサイズと絶妙な特異性の特性ゆえに、そのDNA認識特性を改変しようとする数多くの努力の対象となり、研究、バイオテクノロジー、作物科学、グローバルヘルス、およびヒト治療薬への応用において、関心対象の遺伝子を切断し変化させるという所望の成果をもたらしてきた。しかし、一般的には、DNA認識界面を形成する残基のネットワークの広がりが、LHEの対象を関心対象のDNAターゲット配列に変更するための効率のよい方法の妨げになってきた。このことが、遺伝子特異的ヌクレアーゼ工学の分野における不断の技術革新につながり、現在では3つのエンドヌクレアーゼ代替プラットフォームが、さまざまな(ただし一般に高い)レベルの特異性でDNA配列を標的にする能力を有すると確証されていると共に、LHEのDNA認識界面の改変という難題を克服するための新しい改良された方法が登場している。
複数のジンクフィンガー系DNA結合ドメインを独立した触媒ドメインに融合することによって生成するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(Kim, Cha et al. 1996; Smith, Berg et al. 1999; Smith, Bibikova et al. 2000)は、遺伝子ターゲティングを刺激するためによく使用される別のタイプの改変ヌクレアーゼであり、研究的応用および治療的応用において、遺伝子矯正、遺伝子挿入および遺伝子欠失を誘発するために使用されて成功を収めている。原型的なZFNは、IIS型制限酵素FokIの触媒ドメインと、それぞれが1つのDNAトリプレットを認識する3個または4個の個別ジンクフィンガーのストリングでできたジンクフィンガー系DNA結合ドメインとに基づいている(Pabo, Peisach et al. 2001)。二本鎖開裂を触媒する触媒活性二量体を形成するには、2つのジンクフィンガー-FokI単量体が、逆ストランド上のそれぞれのジンクフィンガーDNA認識部位に、逆方向に結合する必要がある(Bitinaite, Wah et al. 1998)。
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、その次の人工エンドヌクレアーゼプラットフォームであった。キサントモナス(Xanthomonas)属またはラルストニア(Ralstonia)属の植物病原体が感染プロセスにおいて使用するタンパク質のファミリーから誘導されたTALEは、本質的に2つの位置が相違する33〜35アミノ酸の14〜20リピートを特徴とする反復タンパク質である。DNAターゲット中の各塩基対には、単一のリピートが、そのリピートの2つの変異アミノ酸(いわゆるリピート可変ジペプチド(repeat variable dipeptide)(RVD))に起因する特異性で接触する。これらのDNA結合ドメインの見た目のモジュール性は、新しい特異性を有する設計されたTALE由来タンパク質のモジュール組み立てによって、ある程度確認されている(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009)。ZFNとまさに同様に、TALEは、選ばれたターゲット配列に対応するRVDを有するTALEリピートを配列し、得られたアレイをFokIドメインに融合することによって、部位特異的ヌクレアーゼへと容易に改造された。したがって、TALEヌクレアーゼによるDNA開裂は、非特異的な中央領域に隣接する2つのDNA認識領域を必要とする。TALEヌクレアーゼは、その作製が容易であることと、改良された二本鎖切断生成効率を有することから、2010年以降、広く普及している。
これらの異なる技術のうち、それぞれの優れた特性を識別し、適当なゲノム工学的応用のためにこれらの特性を捕捉する革新的方法を決定することが重要である。部位特異的ヌクレアーゼ技術の最も有力な応用の一つはヒト治療薬の分野にあり、これには、ヒトの細胞または組織においてゲノム情報を安全にかつ効果的に編集するために、効率と特異性が高いヌクレアーゼ試薬の使用が要求される。重要でよく知られる一例はがん免疫療法の分野であり、これはヌクレアーゼ技術の進歩を応用する新規治療薬開発の最前線にある。これらのアプローチは、患者由来(自家)またはドナー由来(同種異系)T細胞の強力な抗腫瘍活性を利用し、細胞増殖、生着、遊走または長寿命などといった細胞固有の特性のゲノム工学によって、この潜在力を活用することに注力されている。強化された抗がん活性を付与されたT細胞のスケーラブルな製造の成功には、本願のいくつかの局面で述べるような高効率ヌクレアーゼ組成物の生成と簡単な送達戦略とが必要である。
免疫系には、ヒトがんの発生を検出し、防止する上で、重要な基礎的役割がある。トランスフォーム細胞の大半は、免疫センチネル(immune sentinel)によって迅速に検出され、クローン的に発現したT細胞受容体(TCR)による抗原特異的T細胞の活性化によって駆除される。したがって発がんは、免疫学的障害、すなわち疾患を永続的に抑制し排除するために必要な抗腫瘍応答を免疫系が展開しないことである。この数十年の間に開発されたいくつかの免疫療法的介入、例えば組換えサイトカイン注入などは、T細胞免疫を強化することに特に注力しており、これらは疾患寛解の散発例と関連付けられているものの、実質的な全般的成功を収めてはいない。T細胞活性化を阻害する分子、例えばCTLA-4やPD-1などを標的とするモノクローナル抗体による最近の治療法は、より実質的な抗腫瘍効果を示したが、これらの処置は全身性の免疫活性化による相当な毒性を伴う。ごく最近、T細胞の単離、修飾、拡大および再注入に基づく治療戦略が探究され、初期段階臨床治験で試験された。これらの処置は成功率にばらつきがあったが、多くの患者がかつてない他覚的応答および長期寛解を得たことから、T細胞に基づくがん免疫療法の潜在力が浮き彫りになった。この潜在力を利用してT細胞がん免疫療法の実施を広範に成功させることを意図したゲノム編集戦略を本明細書に記載する。
細胞傷害性T細胞による腫瘍細胞関連抗原認識の成功は、標的腫瘍溶解を開始させ、あらゆる効果的がん免疫療法アプローチを補強する。いくつかの腫瘍は、腫瘍関連抗原を特異的に指向するTCRを発現する腫瘍浸潤T細胞(TIL)を含んでいるが、相当数のTILへのアクセスはわずかなヒトがんに限定されている。この限定を受けて、T細胞に基づくがん免疫療法の範囲と有用性を拡げるために、キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる人工的な抗原認識およびシグナリングトランスジーンが考案されている。CARは膜貫通タンパク質であって、その細胞外部分は、最も典型的にはモノクローナル抗体の一本鎖可変フラグメント(scFv)に由来する抗原認識ドメインを含み、その細胞内ドメインは、TCR様活性化シグナルを模倣するシグナリングドメインの組合せを含んでいる。CARを発現するようにした初代ヒトT細胞が、そのscFvドメインによって認識される抗原を保持する細胞に応答し、その細胞を殺すことができるということは、広く実証されている。
CARを発現するトランスジェニックT細胞による非常に有望な初期の結果にもかかわらず、CARに基づくT細胞免疫療法の効力、安全性およびスケーラビリティは、クローン的に派生するTCRの継続的発現によって制限される。残存TCR発現は、改変T細胞におけるCARシグナリングと干渉するか、自己抗原または同種異系抗原に対するオフターゲットの病的応答を開始しうる。その結果、CARに基づくT細胞は自家応用でのみ使用されている。ヌクレアーゼ媒介遺伝子編集による内在性TCRの遺伝子消滅(genetic abolition)は、有害な付帯的応答のリスクを低減し、T細胞が媒介する移植片対宿主病(GVHD)の可能性を減少させるであろう。普遍的な同種異系T細胞治療を開発する際の主なハードルは、レシピエントのHLA複合体がドナーT細胞のTCRを活性化することによるGVHDの発生である。TCRを除去すれば、そのような移植片対宿主応答は防止され、簡単で幅広く応用できる同種異系T細胞療法の開発が可能になるであろう。
T細胞療法は、がんだけでなく、慢性ウイルス感染、自己免疫疾患および幹細胞移植を含む多種多様な治療的応用のために開発されている。疾患モデルおよび初期臨床モデルでは、GVHDおよびさまざまな自己免疫疾患の発生とその程度の制御における調節性T細胞サブセット(T-reg)の重要な役割が示されている。調節性T細胞の移植は幹細胞移植を受けた患者におけるGVHDを改善する。加えて、調節性T細胞の移植は、例えば関節リウマチ、1型糖尿病および全身性エリテマトーデスなどの前臨床モデルにおける疾患アウトカムも改良した。このアプローチは、B型肝炎(HBV)などの慢性ウイルス感染の患者でも試験されている。HBV特異的CARを含有する改変T細胞はHBV感染細胞に対して著しく活性である。これらのアプローチは臨床治験で試験されているが、それらの使用は、他の自家療法(autologous therapy)に付随するものと同じ製造上のハードルおよびスケーラビリティのハードルによって制限される。T細胞におけるTCRαの遺伝子ターゲティングを、寛容またはウイルスターゲットを標的とするCARと組み合わせることは、ヒト疾患の処置を目的とする同種異系T細胞治療を開発するための非常に有力な方法になる。
ヒト疾患の処置などにおいて治療用T細胞産物を生成させるためのゲノム工学的戦略には、TCRα遺伝子を破壊するための安全で効果的なエンドヌクレアーゼ試薬の使用が必要である。ニレ類立枯病菌(Ophiostoma novo-ulmi subsp americana)由来のRps3宿主遺伝子中のグループIイントロン内にコードされているエンドヌクレアーゼI-OnuIとその近縁ホモログは、最近、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼの特徴を示す単量体型タンパク質であって、ゲノム編集に使用できるほど十分に活性であると特徴づけられた(WO2011/156430; Sethuraman, Majer et al. 2009; Takeuchi, Lambert et al. 2011)。
特定の局面では、TCRα遺伝子中のさまざまなDNA配列を標的にする試みとして、いくつかのI-OnuI変異体を作出した。さらなる局面では、TCRα遺伝子の定常ドメインを標的とする新しいLHE変異体を提供する。この特定I-OnuI変異体はT細胞におけるTCRαの発現の妨害に高い効率を示した。さらなる局面では、改良された特性、とりわけ初代ヒト細胞を処理するための安全で有用な試薬を得るために要求される特異性および効率の増加を同様に示すキメラエンドヌクレアーゼが形成されるように、本発明のこの特定変異体をいくつかの改変核酸結合ドメインに融合した。これらの分子は、TCRα遺伝子座におけるゲノム編集に関する効率が実証されており、ヒト疾患を処置するためのT細胞に基づく数多くの方法に役立つであろう。
[本発明1001]
T細胞受容体α定常遺伝子(TRAC)内のターゲット核酸配列を開裂する変異体が得られるように突然変異が導入されている、I-OnuIまたはI-OnuIホモログ。
[本発明1002]
ターゲット核酸配列SEQ ID NO:3を開裂する、本発明1001の変異体。
[本発明1003]
SEQ ID NO:2に関して19、24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、77、78、80、82、138、159、168、178、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、207、223、225、227、229、231、232、234、236、238、240からなる群より選択される位置に、少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、さらにより好ましくは少なくとも25個のアミノ酸置換を含む、本発明1001または1002の変異体。
[本発明1004]
DNA認識界面と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、本発明1001〜1003のいずれかの変異体。
[本発明1005]
SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10からなる群より選択されるタンパク質配列を含む、本発明1001〜1003のいずれかの変異体。
[本発明1006]
SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID N0:10のタンパク質配列と、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、およびより好ましくは99%の配列同一性を有する、本発明1001〜1003のいずれかの変異体。
[本発明1007]
核酸結合ドメイン、触媒ドメイン、末端エピトープタグ、および蛍光タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの追加タンパク質ドメインに融合された本発明1001〜1006のいずれかのI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体のDNA認識界面を含む、キメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1008]
追加タンパク質ドメインがTALEおよびジンクフィンガードメインからなる群より選択される核酸結合ドメインである、本発明1007のキメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1009]
SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のMegaTAL TCRA_S02タンパク質配列である、本発明1008のキメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1010]
追加タンパク質ドメインが、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、メチラーゼ活性、トポイソメラーゼ活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、リコンビナーゼ活性からなる群より選択される触媒活性を有する、本発明1007または1009のキメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1011]
触媒ドメインが、5'-3'エキソヌクレアーゼ、より好ましくはTrex2、およびより好ましくは一本鎖Trex2である、本発明1010のキメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1012]
追加タンパク質ドメインがペプチドリンカーによってI-OnuI変異体に融合されている、本発明1007〜1011のいずれかのキメラエンドヌクレアーゼ。
[本発明1013]
本発明1001〜1012のいずれかのI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼをコードする、ポリヌクレオチド。
[本発明1014]
本発明1013のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[本発明1015]
本発明1001〜1012のいずれかのI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼを細胞内に導入する工程を含む、細胞内のTRAC遺伝子を修飾するための方法。
[本発明1016]
DNA末端プロセシング酵素を細胞に導入することによって突然変異誘発を増加させる、本発明1015の方法。
[本発明1017]
DNA末端プロセシング酵素が、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含む同じベクターによってコードされるトランスジーンとして、Onu-I変異体またはキメラエンドヌクレアーゼと共に細胞に導入される、本発明1016の方法。
[本発明1018]
DNA末端プロセシング酵素が3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有する、本発明1016または1017の方法。
[本発明1019]
DNA末端プロセシング酵素がTREX2である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
DNA末端プロセシング酵素が一本鎖TREX2ポリペプチドである、本発明1018の方法。
[本発明1021]
レアカッターエンドヌクレアーゼの核酸開裂部位の周囲にあるTRAC遺伝子の少なくとも1つの領域とホモロジーを共有する少なくとも1つの配列が隣接している導入されるべき配列を含むドナーマトリックスを導入する工程を含む、本発明1015の方法。
[本発明1022]
(a)本発明1001〜1012のいずれかのI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼを細胞内に導入することによって、該細胞内のT細胞受容体αをコードする遺伝子を修飾する工程、
(b)腫瘍抗原を認識するシグナル伝達分子を細胞内に導入する工程、および
(c)該細胞を対象に投与する工程
を含む、対象における癌を処置または防止するための方法。
[本発明1023]
シグナル伝達分子が、キメラ抗原受容体である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記細胞が、T細胞、造血幹細胞、リンパ球前駆細胞、またはCD34+細胞である、本発明1017〜1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
本発明1014のベクターを対象に投与する工程を含む、対象における癌を処置または防止するための方法。
表および図面の簡単な説明
本発明がよりよく理解されるように、また本発明を実施するためにとりうる方法を示すために、以下に、単なる例示として、本発明の具体的な態様、方法およびプロセスを、添付の図面を参照して示す。
優れたLHE-DNA認識配列が予想される、ヒトTRAC遺伝子の第1エクソン中の13個の推定ターゲット配列(Onu_S##と注釈されているもの)の場所を図示している。TRAC遺伝子の第1エクソンの場所が示されている。 LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)とそのDNA基質の間の相互作用を画定するタンパク質-DNA界面の場所を模式的および構造的に示す。模式図は、LHEにはDNAとの相互作用を構成する連続的領域が存在するという概念を、大まかに図示している。構造画像は、LHEのタンパク質-DNA界面残基(その側鎖原子が黒い球体として示されている)がDNAヘリックスの主溝に入り込んでいるという、この相互作用の性質をより詳細に示している。それ自体が配列特異的パターンを形成するDNAヌクレオチドの原子に対する天然LHEまたは改変LHEの相補性を決定するのは、界面側鎖原子の配置である。 タンパク質-DNA界面の改変のために選んだ2つのターゲット部位のうち、1つ(TCRA_S02)だけが、完全なターゲット配列を開裂する能力を有する変異体LHEを与えた。これらの変異体の1つをI-OnuI酵素およびそのコグネートターゲットと比較して示す。パネルはDNA加水分解のフローサイトメトリー解析を図示している。このフローサイトメトリー解析では、既に公表されているように、パン酵母サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)がその細胞の表面にLHEを発現し、そのパン酵母が蛍光色素標識合成DNA基質で調べられる。簡単に述べると、まず試料を、LHEのN末端またはC末端に付加したエピトープに対するビオチン化抗体で染色する。この染色手順中に、フィコエリトリン標識ストレプトアビジン(x軸)とビオチンおよびAlexa fluor-647(y軸)標識合成DNA基質とのコンジュゲートを、ストレプトアビジン上のビオチン結合部位がいくらか残る相対モル濃度で生成させる。次に、これらのプレコンジュゲートを使って酵母細胞を対比染色すると、共線的(co-linear)ストレプトアビジン-PE/Alexa fluor-647プロファイルが得られる。次に、開裂阻害(Ca2+)条件と開裂許容(Mg2+)条件を使って、ネイティブLHEまたは改変LHEが、繋留されたターゲットを開裂するかどうかを決定する。ターゲットは、もし開裂が起これば、Alexa fluor-647発蛍光団が失われることで、y軸のシグナルを失う。 TCRA_S02_2E5変異体の初期ターゲティング効率と活性精密化プロセスによって達成されたターゲティング効率の漸進的改良を示す。「トラフィックライトリポーター(traffic light reporter)」(TLR)と呼ばれる染色体に組み込まれた二本鎖切断蛍光リポーターを使って、ターゲティング効率を測定した。NHEJ DNA修復プロセスの3つの考えうるフレーム結果の一つで蛍光性になるアウトオブフレームmCherry蛍光タンパク質(y軸)のすぐ上流にTCRA_S02 DNA配列を含有するように、ヒト胎児腎臓293T(HEK 293T)線維芽細胞を構築した。それゆえに、y軸における細胞のパーセンテージは、不正確なヌクレアーゼ媒介修復イベントの約1/3を表す。次に、この細胞株に、TCRA_S02ターゲティングLHEをコードする合成的に生成させたインビトロ転写mRNA(IVT-mRNA)を、Trex2エキソヌクレアーゼをコードするmRNAと共に、またはそのようなmRNAなしで、トランスフェクトした。元のTCRA_S02_2E5変異体は二本鎖切断を引き起こす効率が不十分であり、それゆえに生産されたmCherry陽性細胞のパーセンテージはわずかだった(2列目)。2ラウンドの活性精密化スクリーニングが、mCherry陽性細胞の生成の非常に大きな改良につながった。 TCRA_S02_2E5変異体と、活性精密化の第2ラウンドで同定されたその誘導体TCRA_S02_RD2_8との比較アラインメントを示す。DNA結合ドメインを構成するストランド-ループ-ストランドモチーフが、整列した配列の上に描かれている。 DNA結合タイトレーションを使ってTCRA_S02部位を標的とする2つの異なるLHEのアフィニティー特性を確立するアッセイを示す。各LHE変異体をディスプレーする酵母の試料を、個別に、増加する一連の濃度の蛍光色素標識合成DNA基質(y軸)と共にインキュベートした。DNA結合活性を酵母表面に発現したLHEタンパク質の量に標準化することができるように、C末端エピトープに対する抗体(x軸)も含めることで、アフィニティーが強いほどx軸シグナルあたりのy軸のシグナルが高くなる共線的パターンを作出した。結果は、I-OnuI LHE(OnuWT)は約80pMのおよそのKdを有し、TCRA_S02_2E5変異体は約90pMのKdを有することを示している。 開裂分析(上側のパネル)およびアフィニティー分析(下側のパネル)を使ったTCRA_S02_2E5_RD2_8 LHE変異体の特異性プロファイリングを示す。開裂分析とアフィニティー分析は、それぞれ図3および図4で述べたように行ったが、DNA基質のパネルを試験に付し、ターゲット中の22ヶ所のそれぞれを順次に3つの非ネイティブ塩基対のそれぞれに変化させて、開裂阻害条件下および開裂許容条件下で試験した。その結果得られた67個の異なる基質(TRAC遺伝子中のターゲットと、66種類の「ワンオフ(one-off)」基質)についての開裂プロファイルおよびアフィニティープロファイルは、どのLHE変異体が最も理想的な特異性の特性を有し、それゆえに、ヒト治療薬の場合など、狭い特異性を要求する応用にとって、より良い候補であるかを示す。 遺伝毒性および細胞死をもたらす二本鎖DNA切断に対する感受性が高い初代ヒトT細胞のフローサイトメトリー散乱特性を示す。無害なタンパク質、例えば青色蛍光タンパク質(BFP)をコードするIVT-mRNA種をトランスフェクトしたT細胞は、インビトロ培養時に59%の生存率を示し、これは操作していないT細胞と類似するレベルである。TCRA_S02_2E5_RD2_8変異体は非常によく似たレベルのT細胞生存率をもたらすことから、そのグローバルなDNA特異性は高品質であることが確認される。 レンチウイルス調製物を生成させて、細胞株および初代細胞の形質導入にベクターとして使用した、自己不活性化(SIN)レンチウイルス生産プラスミド(A)(SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13)、ならびにレンチウイルス生産またはIVT-mRNAを生産するためのインビトロ転写に使用したMegaTALコンストラクトを含有する例示的非限定的ベクター(B)(SEQ ID NO:12)の模式図を示す。このベクターの主要な特徴は、当技術分野に詳しい人々には周知のレンチウイルスの特徴、例えば長末端反復(LTR)、プライマー結合部位(PBS)、セントラルポリプリントラクト(cPPT)、およびT7 RNAプロモーター(T7)などの他、T2Aペプチドリンカーモチーフを介してTrex2エキソヌクレアーゼに連結されたTCRAターゲティングLHE(図示したもの)またはMegaTALを発現させるための多重シストロン要素であり、これはさらに、配列内リボソーム進入部位(IRES)および形質導入細胞を追跡するための青色蛍光タンパク質(BFP)を保因している。 TCRA_S02_RD2_8 LHE変異体をコードするIVT-mRNAを、補助的Trex2エキソヌクレアーゼタンパク質をコードするIVT-mRNAと一緒にトランスフェクトした初代ヒトT細胞の細胞表面からのTCRαタンパク質の発現の完全な喪失を示す。これらのフローサイトメトリーパネルは、mRNAトランスフェクション後の異なる時点での解析を表す(左側のパネル: 72時間、右側のパネル: 14日)。細胞表面上のTCRαタンパク質の存在は、CD3補助受容体分子に特異的な抗体によって検出される。CD3補助受容体の表面発現はTCRαタンパク質の機能的発現を必要とし、CD3シグナルが存在しないことは、TRAC遺伝子の破壊が成功していることを意味する。 TCRA_S02_RD2_8 LHE変異体で処理した細胞からのTCRA_S02ターゲット部位における遺伝子配列決定データを表す。TCRA_S02_RD2_8 LHE変異体をコードするIVT-mRNAを、Trex2エキソヌクレアーゼをコードするIVT-mRNAと一緒にトランスフェクトした初代T細胞を培養し、CD3陰性細胞のフローサイトメトリー選択を使って精製した。選別されたCD3陰性細胞はTCRAアレルの50%に欠失を有し、サイレンシングされていないTRACアレルがTCRA_S02 LHE変異体の主要ターゲットであることと合致している。 がん、自己免疫または慢性ウイルス感染を処置するためのTCRA欠損T細胞の集団を生成させるために使用することができるであろう処置戦略の一つを模式的に図示している。簡単に述べると、末梢血単核球(PBMC)がアフェレーシスによって単離され、T細胞を精製し培養するために加工され、TRACターゲティングヌクレアーゼ送達剤で処理され、人工抗原受容体(CAR)と組み合わされ、患者に再注入されるであろう。 MegaTAL構造とTrex2発現の組み合わせに基づく超高効率TRAC遺伝子破壊技術の概略図を表す。TRAC遺伝子のDNA内のTCRA_S02 MegaTALターゲット配列も示されており、11マーTALEアレイの場所は模式的に示されていると共に(アノテーションはないが、TCRA_S02アノテーションの上流に、反復単位が示されている)、その配列がボールド体で示されている。 TCRA_S02_MegaTAL LHE変異体をコードするIVT-mRNAを、補助的Trex2エキソヌクレアーゼタンパク質をコードするIVT-mRNAと一緒にトランスフェクトした初代ヒトT細胞の細胞表面から、極めて高い効率で、TCRαタンパク質が除去されることを実証している。これらのフローサイトメトリーパネルは、蛍光タンパク質対照(BFP)またはTCRA_S02 MegaTAL LHE変異体を、Trex2をコードするIVT-mRNAと共にまたはそのようなIVT-mRNAなしでエレクトロポレートした後のTCR複合体アセンブリを実証している。 三成分TAL-LHE-Trex2融合タンパク質をコードするmRNA種のエレクトロポレーションによる初代ヒトT細胞における効率的なTCRA遺伝子不活性化を示している。 表1は、再特異化(re-specification)プロセス中に野生型I-OnuIタンパク質の一次配列との比較で変異または他の形で変化したTCRA_S02ターゲティングLHE中のアミノ酸残基の位置を示す。TCRA_S02_2E5 LHEは、タンパク質-DNA界面を構成する44残基にのみ変異を含有し、その全てが野生型I-OnuIタンパク質とは異なるアミノ酸をリチューン(retune)したわけではないが、全てが再特異化の初期段階で変異していた。精密化スクリーニング後の最も成績のよい変異体はさらに6つの突然変異を有し、そのうちの5つは、タンパク質-DNA界面内に位置し、1つはタンパク質内の他の場所にある。
発明の詳細な開示
本明細書において別段の具体的定義がある場合を除き、使用される技術用語および科学用語は全て、遺伝子治療、生化学、遺伝学、分子生物学、および免疫学の分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。
本明細書には適切な方法および材料を記載するが、本明細書に記載するものと類似するまたは等価な方法および材料は全て本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は全て、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。万一矛盾が生じた場合は、定義を含めて本明細書が優先されることになる。さらに、別段の明示がある場合を除き、材料、方法、および実施例は単なる例示であって、限定を意図していない。
本発明の実施には、別段の表示がある場合を除き、当技術分野の技能の範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法が使用されるであろう。そのような技法は文献に十分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition(Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Oligonucleotide Synthesis(M. J. Gait ed., 1984)、Mullisらの米国特許第4,683,195号、Nucleic Acid Hybridization(B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984)、Transcription And Translation(B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984)、Culture Of Animal Cells(R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987)、Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press, 1986)、B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、「Methods In ENZYMOLOGY」シリーズ(編集主幹J. Abelson and M. Simon, Academic Press, Inc., New York)、特に第154巻および第155巻(Wu et al. eds)ならびに第185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel, ed.)、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987)、Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV(D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986)、およびManipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
I-OnuIおよびI-OnuIホモログの変異体
本発明は、変異が導入されておりかつTRAC遺伝子中に存在する核酸配列を特異的に標的にすることができるI-OnuI変異体およびI-LtrI、I-LtrWI、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-GzeI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-GpiI、I-GpeMI、I-AabMI、I-AaeMI、I-ApaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-EjeMI、I-CkaMI、I-CraMI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrMI、I-OheMI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-SmaMI、I-SscMI、I-Vdi141I、I-PnoMI、I-ScuMI(Takeuchi, Lambert et al. 2011)のI-OnuIホモログ変異体が関わるレアカッターエンドヌクレアーゼに関する。
本発明のレアカッターエンドヌクレアーゼとは、DNA分子またはRNA分子(好ましくはDNA分子)内の核酸間の結合の加水分解(開裂)を触媒する能力を有する変異体酵素を指す。本発明のエンドヌクレアーゼは、特異的ポリヌクレオチド配列(以下「核酸ターゲット配列」という)において核酸を認識し、開裂する。
TRAC遺伝子中のターゲット部位に特異的なレアカッターエンドヌクレアーゼを改変するために、本発明者らは、天然I-OnuIのDNA認識界面中に局在するアミノ酸残基を変異させたI-OnuI変異体のライブラリーを構築した。このライブラリーを、各予想TRACターゲット部位に対するターゲット開裂活性について、以前に記述された開裂アッセイ(Jarjour, West-Foyle et al. 2009)を使ってスクリーニングした。こうして、ヒトTRAC遺伝子中に存在する配列を標的にするように、I-OnuIのDNA認識界面の特異性を変化させた。
「変異体(variant)」とは、自然界に天然には存在せず、遺伝子工学またはランダム突然変異誘発によって得られる、タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを意味する。本発明のI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体は、例えば、その野生型配列のアミノ酸配列中の少なくとも1つの残基を欠失させるか、異なるアミノ酸で置換することによって得ることができる。置換および欠失は、例えば定方向突然変異誘発および/またはランダム突然変異誘発によって導入することができる。本発明の骨格的局面(frame aspect)において、I-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体は、TRAC遺伝子を標的にする能力を有する。つまり、それらは、該遺伝子をコードするいくつかの特異的DNA配列と相互作用することができる。
本発明の変異体またはホモログは、本明細書において説明し、表1に掲載するDNA認識界面を含む。
DNA認識界面とは、核酸ターゲット塩基と相互作用するホーミングエンドヌクレアーゼまたはその変異体のタンパク質ドメインの残基ならびに隣接する残基を指す。ホーミングエンドヌクレアーゼごとに、DNA認識界面は、側鎖-側鎖接触および側鎖-DNA接触の広範なネットワークを含み、特定核酸ターゲット配列を認識するために、その大半は必然的にユニークである。したがって、DNA認識界面のアミノ酸組成(および特定核酸配列に対するその対応)は著しく変異し、それゆえに、どの天然ホーミングエンドヌクレアーゼまたは改変ホーミングエンドヌクレアーゼにとっても、その決定的特徴である。DNA認識界面は、核酸ターゲット配列のアイデンティティを決定し、かつ本出願の要望に応じたホーミングエンドヌクレアーゼの質を規定するアフィニティーおよび特異性の特徴もまた決定する。
本発明によれば、I-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体は、DNA認識界面に1つまたは複数の置換を含む。したがって、本発明のI-OnuI変異体またはホモログは、I-OnuIのDNA認識界面(Takeuchi, Lambert et al. 2011)に対して、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
一特定態様において、前記I-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体は、DNA認識界面中、特にI-OnuI(SEQ ID NO:2)の24〜50番目、68〜82番目、180〜203番目および223〜240番目に位置するサブドメイン中に、1つまたは複数の置換および/または突然変異を含む。I-OnuI変異体またはホモログは、全I-OnuI配列内のどこであってもさらなる位置に、1つまたは複数の置換を含むことができる。置換および/または突然変異が施される残基としては、Takeuchi, Lambert et al. 2011に記載されているように、核酸ターゲットと接触する残基、あるいは直接または水分子を介して、核酸主鎖もしくはヌクレオチド塩基と相互作用する残基を挙げることができる。
例えば、前記I-OnuI変異体は、I-OnuI(SEQ ID NO:2)の19番目、24番目、26番目、28番目、30番目、32番目、34番目、35番目、36番目、37番目、38番目、40番目、42番目、44番目、46番目、48番目、68番目、70番目、72番目、75番目、76番目、77番目、78番目、80番目、82番目、168番目、180番目、182番目、184番目、186番目、188番目、189番目、190番目、191番目、192番目、193番目、195番目、197番目、199番目、201番目、203番目、223番目、225番目、227番目、229番目、231番目、232番目、234番目、236番目、238番目、240番目からなる位置の群より選択される少なくとも1つの位置に、1つまたは複数の置換および/または突然変異、好ましくは少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、さらに好ましくは少なくとも25個の置換および/または突然変異を含む。特定の態様では、該置換および/または突然変異が、いずれの場合もA、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L、W、MおよびIからなる群より選択されるアミノ酸による、最初のアミノ酸の少なくとも1つの置き換えである。
非限定的な例として、26番目のロイシン(L)はイソロイシン(I)に置き換える/突然変異させることができ、28番目のアルギニンはアスパラギン酸(D)に置き換える/突然変異させることができ、32番目のアスパラギン(N)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができ、34番目のリジン(K)はアスパラギン(N)に置き換える/突然変異させることができ、35番目のセリン(S)はグルタミン酸(E)に置き換える/突然変異させることができ、37番目のバリン(V)はアスパラギン(N)に置き換える/突然変異させることができ、38番目のグリシン(G)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができ、40番目のセリン(S)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができ、42番目のグルタミン酸(E)はセリン(S)に置き換える/突然変異させることができ、44番目のグリシン(G)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができる(表1参照)。
68番目のバリン(V)はリジン(K)に置き換える/突然変異させることができ、70番目のアラニン(A)はスレオニン(T)に置き換える/突然変異させることができ、75番目のアスパラギン(N)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができ、78番目のセリン(S)はメチオニン(M)に置き換える/突然変異させることができ、80番目のリジン(K)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができる(表1参照)。
138番目のロイシン(L)はメチオニン(M)に置き換える/突然変異させることができ、159番目のセリン(S)はプロリン(P)に置き換える/突然変異させることができ、178番目のグルタミン酸(E)はアスパラギン酸(D)に置き換える/突然変異させることができ、180番目のシステイン(C)はチロシン(Y)に置き換える/突然変異させることができ、182番目のフェニルアラニン(F)はグリシン(G)に置き換える/突然変異させることができ、186番目のイソロイシン(I)はリジン(K)に置き換える/突然変異させることができ、188番目のセリン(S)はバリン(V)に置き換える/突然変異させることができ、190番目のセリン(S)はグリシン(G)に置き換える/突然変異させることができ、191番目のリジン(K)はアスパラギン(N)に置き換える/突然変異させることができ、192番目のロイシン(L)はアラニン(A)に置き換える/突然変異させることができ、193番目のグリシン(G)はリジン(K)に置き換える/突然変異させることができ、195番目のグルタミン(Q)はチロシン(Y)に置き換える/突然変異させることができ、197番目のグルタミン(Q)はグリシン(G)に置き換える/突然変異させることができ、199番目のバリン(V)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができ、203番目のスレオニン(T)はセリン(S)に置き換える/突然変異させることができ、207番目のリジン(K)はアルギニン(R)に置き換える/突然変異させることができる(表1参照)。
223番目のチロシン(Y)はセリン(S)に置き換える/突然変異させることができ、225番目のリジン(K)はトリプトファン(W)に置き換える/突然変異させることができ、236番目のアスパラギン酸(D)はグルタミン酸(E)に置き換える/突然変異させることができる(表1参照)。
より好ましい一態様では、I-OnuI変異体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:10からなる群より選択されるタンパク質配列を含む。
好ましい一態様では、本発明のI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:10のタンパク質配列と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
本発明の好ましい一態様によれば、本発明のI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体は、対応する野生型エンドヌクレアーゼのターゲット配列とは異なるターゲット配列を開裂する。核酸ターゲット配列中の開裂は二本鎖切断または一本鎖切断のどちらかに対応することができる。
本発明は、新規な特異性を有する上述の変異体エンドヌクレアーゼを使ってTRAC遺伝子の標的修飾を可能にすることができるという発見に基づいている。
実際、本発明者らは、Takeuchi, Lambert et al. 2011、Baxter, Lambert et al. 2012に最近記載された単量体型I-OnuI様LHEサブファミリーメンバーのグループに固有の一連の共通する特徴に基づいて、ヒトTRAC遺伝子中の推定I-OnuIターゲット配列を同定した。推定LHEターゲット配列の同定は、エンドヌクレアーゼが媒介する挿入または欠失によってTCRαタンパク質に有意な破壊が起こりうるTRAC遺伝子内の場所にも基づいて行われる。本発明者らは、ヒトTRAC遺伝子中に2つのターゲット配列(SEQ ID NO:3〜SEQ ID NO:4)を同定し、それに基づいてI-OnuI変異体のDNA認識界面を改変した。これら2つの推定ターゲット部位のうち、1つの配列(TCRA_S02)は、結果として生じたI-OnuI変異体によって標的とすることに成功した。
したがって本発明は、TRAC遺伝子内に存在するターゲット核酸配列、好ましくはTRAC遺伝子のエクソン1中に存在するもの、より好ましくは核酸配列SEQ ID NO:3を含むターゲット核酸配列を認識するI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体を含む、レアカッターエンドヌクレアーゼに関する。
キメラエンドヌクレアーゼ
別の局面において、本発明は、任意で少なくとも1つの追加タンパク質ドメインにペプチドリンカーによって融合された上述のI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体を含むキメラエンドヌクレアーゼの形態にあるレアカッターエンドヌクレアーゼに関する。追加タンパク質ドメインは、次に挙げるものからなる群より選択することができる:ターゲット核酸配列に対する特異性を高め、オフターゲット部位を避けるための核酸結合ドメイン;ターゲット核酸を加工(例えば重合、脱重合、修飾)するための触媒ドメイン;およびキメラタンパク質を追跡し可視化するための1つまたは複数の末端エピトープタグまたは蛍光タンパク質。
一特定態様では、I-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体が、非限定的な例としてTRAC遺伝子ターゲティングを改良するためのTALE核酸結合ドメインなどの核酸結合ドメインに融合される。
該転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、複数のTALEリピート配列を含み、各リピートがTALE認識部位の各ヌクレオチド塩基に特異的なRVDを含む、改変TALEに相当する。本発明において、該TALEの各TALEリピート配列は、30〜42個のアミノ酸、より好ましくは33〜34個のアミノ酸で構成され、12番目および13番目に位置する2つの決定的アミノ酸(いわゆるリピート可変ジペプチド、RVD)が該TALE結合部位配列の1つのヌクレオチドの認識を媒介する。また、特に33アミノ酸長または34アミノ酸長より長いTALEリピート配列では、等価な2つの決定的アミノ酸が、12番目および13番目に位置することができる。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDが、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、GまたはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN、およびTを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、およびAを認識するためのSWである。別の態様では、決定的アミノ酸12および13を、ヌクレオチドA、T、CおよびGに対するそれらの特異性を調整するために、また特にこの特異性を強化するために、他のアミノ酸残基へと突然変異させることができる。他のアミノ酸残基とは、20種類の天然アミノ酸残基または非天然アミノ酸誘導体のいずれかを意味する。
別の態様では、本発明の前記TALEが5〜30個のTALEリピート配列を含む。より好ましくは、本発明の前記TALEが8〜20個のTALEリピート配列を含み、さらに好ましくは10個のTALEリピート配列を含む。
別の態様では、前記TALEが、前記TALEリピート配列セットのC末端に位置する20個のアミノ酸でできた追加の単一短縮TALEリピート配列、すなわち追加C末端ハーフTALEリピート配列を含む。この場合、本発明の前記TALEは、5.5〜30.5個のTALEリピート配列を含み、ここで「.5」個とは、先に述べたハーフTALEリピート配列(末端RVDまたはハーフリーピートともいう)を指す。より好ましくは、本発明の前記TALEは、5.5個〜20.5個のTALEリピート配列を含み、さらに好ましくは10.5個のTALEリピート配列を含む。好ましい一態様では、前記ハーフTALEリピート配列が、ヌクレオチドA、C、G、Tに対する該ハーフTALEリピート配列の特異性の欠如を可能にするようなTALE環境にある。より好ましい一態様では、該ハーフTALEリピート配列が存在しない。別の態様では、本発明の前記TALEが、起源の異なるTALE様リピート配列を含む。好ましい一態様では、該TALEが、異なる天然TALエフェクターに由来するTALE様リピート配列を含む。別の好ましい態様では、本発明のTALEのいくつかのTALE様リピート配列の内部構造が、異なる天然TALエフェクターに由来する構造または配列によって構成される。別の態様では、本発明の前記TALEがTALE様リピート配列を含む。TALE様リピート配列は天然TALEリピート配列とは異なる配列を有するが、本発明の前記コアスキャフォールド内での機能および/または全体的構造は同じである。
それゆえに、本発明のキメラエンドヌクレアーゼは、先に述べたI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体の、例えばTALEドメインまたはジンクフィンガードメインなどのモジュール型核酸結合ドメインへの融合物に相当することができ、該融合物は、一本鎖ポリペプチドの一部として、単量体の形態で活性である。
本発明のさらに別の局面によれば、I-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体に融合されるタンパク質ドメインは、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、メチラーゼ活性、トポイソメラーゼ活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、リコンビナーゼ活性からなる群より選択される少なくとも1つの触媒活性を有しうる。好ましい一態様では、タンパク質ドメインがエンドヌクレアーゼ活性を有し、一方、Onu-I変異体はそれ自身の開裂活性を保持しているか、またはTRACへの結合アフィニティーだけを保持している。また、別の好ましい態様では、該タンパク質ドメインがエキソヌクレアーゼ活性であるか、エキソヌクレアーゼ活性を含む。非限定的な例として、触媒ドメインは、次に挙げるものからなる群より選択されるタンパク質の一つであるか、部分的にそれを含むことができる:MmeI、コリシン-E7(CEA7_ECOLX)、コリシン-E9、APFL、EndA、Endo I(END1_ECOLI)、ヒトEndo G(NUCG_HUMAN)、ウシEndo G(NUCG_BOVIN)、R.HinP1I、I-BasI、I-BmoI、I-HmuI、I-TevI、I-TevII、I-TevIII、I-TwoI、R.MspI、R.Mval、NucA、NucM、Vvn、Vvn_CLS、スタフィロコッカスヌクレアーゼ(NUC_STAAU)、スタフィロコッカスヌクレアーゼ(NUC_STAHY)、マイクロコッカスヌクレアーゼ(NUC_SHIFL)、エンドヌクレアーゼyncB、エンドデオキシリボヌクレアーゼI(ENRN_BPT7)、メトナーゼ(Metnase)、Nb.BsrDI、BsrDI A、Nt.BspD6I(R.BspD6I大サブユニット)、ss.BspD6I(R.BspD6I小サブユニット)、R.PIeI、MlyI、AlwI、Mva1269I、BsrI、BsmI、Nb.BtsCI、Nt.BtsCI、R1.BtsI、R2.BtsI、BbvCIサブユニット1、BbvCIサブユニット2、Bpu10Iαサブユニット、Bpu10Iベータサブユニット、BmrI、BfiI、I-CreI、hExol(EXO1_HUMAN)、酵母ExoI(EXO1_YEAST)、大腸菌(E.coli)ExoI、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)、TdT、およびVP16、またはそれらの機能的変種。
好ましい一態様では、触媒ドメインがDNA末端プロセシング酵素である。DNA末端プロセシング酵素の非限定的な例として、5'-3'エキソヌクレアーゼ、3'-5'エキソヌクレアーゼ、5'-3'アルカリエキソヌクレアーゼ、5'フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、ヒドロラーゼ、および鋳型非依存性DNAポリメラーゼが挙げられる。より好ましい一態様では、該触媒ドメインがエキソヌクレアーゼ活性、特に3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有する。より好ましい一態様では、該触媒ドメインがTREX2またはその機能的変異体である。別の好ましい態様では、該触媒ドメインが一本鎖TREX2ポリペプチドによってコードされる。一特定態様では、該触媒ドメインが、前記レアカッターエンドヌクレアーゼのN末端またはC末端に融合される。より好ましい一態様では、該触媒ドメインが前記レアカッターエンドヌクレアーゼにペプチドリンカーによって融合される。
特定の局面では、ペプチドリンカーが、レアカッターエンドヌクレアーゼと追加タンパク質ドメインとの間のコミュニケーションデバイス/連結または接合要素として作用することで、活性のために共同して作用する。該ペプチドリンカーは、融合タンパク質中の異なる単量体の接続と、該融合タンパク質活性のために正しいコンフォメーションをとることとを可能にするペプチド配列を提供するが、どちらの単量体についても、それぞれのターゲットに対する特異性は変化させない。ペプチドリンカーは、例えば限定ではない示唆的範囲として、2アミノ酸から50アミノ酸までの、さまざまなサイズを有しうる。また、ペプチドリンカーは明確な構造を示すか、構造不定であることができる。
代替として、本発明のI-OnuI変異体またはI-OnuIホモログ変異体を、そこに融合されていない別のタンパク質であって上述のタンパク質ドメインと同じ触媒活性を有するものと一緒に使用する。
本発明の別の局面は、本明細書に記載するレアカッターエンドヌクレアーゼ、好ましくはI-OnuI変異体、ホモログまたはキメラエンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本発明のさらなる局面の核酸またはベクターは、1つまたは複数の細胞内局在モチーフ、プロテアーゼ開裂部位またはリボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含むことができる。
特定の態様では、本発明の核酸が少なくとも1つの細胞内局在モチーフを含みうる。細胞内局在モチーフとは、核、細胞質、形質膜、小胞体、ゴルジ装置、エンドソーム、ペルオキシソームおよびミトコンドリアのうちの少なくとも1つを含む所定の細胞内位置へのタンパク質の輸送または封じ込めを容易にする配列を指す。細胞内局在モチーフは当技術分野において周知である。細胞内局在モチーフは、特異的配向、例えばタンパク質のN末端側および/またはC末端側を必要とする。非限定的な例として、シミアンウイルス40ラージT抗原の核局在化シグナル(NLS)は、N末端および/またはC末端に配向することができる。NLSは、タンパク質を核膜孔複合体を介して細胞核に誘導し、新たに合成されたタンパク質をサイトゾル核輸送受容体によるその認識を介して核内に向かわせるように作用するアミノ酸配列である。通例、NLSは、1つまたは複数の、リジンまたはアルギニンなどの正荷電アミノ酸の短い配列からなる。
ゲノム工学の方法
本発明の別の局面は、細胞内での効率のよいTRAC遺伝子ターゲティングを可能にするための、上述したI-OnuI変異体、I-OnuIホモログ変異体、またはI-OnuI由来のキメラエンドヌクレアーゼの使用に関する。より具体的には、本発明は、細胞内のTRAC遺伝子における標的修飾のための方法であって、細胞内に上述のレアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを導入する工程を含む方法に関する。一特定態様において、本発明は、細胞内のTRAC遺伝子を修飾するための方法であって、細胞内にレアカッターエンドヌクレアーゼ、より具体的にはI-OnuI変異体、I-OnuIホモログ変異体またはキメラエンドヌクレアーゼを導入して、前記レアカッターエンドヌクレアーゼがTRAC遺伝子中の核酸ターゲット配列を開裂するようにする工程を含む方法に関する。
本発明のさらに別の態様によれば、TRAC遺伝子座における標的突然変異誘発を達成するために、レアカッターエンドヌクレアーゼを細胞内で発現させる。レアカッターエンドヌクレアーゼが引き起こす核酸鎖切断は、一般に、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)という異なる機序によって修復される。しかしNHEJは、二本鎖切断の部位でDNA配列を変化させることが多い不完全な修復プロセスである。機序には、2つのDNA末端に残っているものの直接再ライゲーション(Critchlow and Jackson 1998)、またはいわゆるマイクロホモロジー媒介末端結合(Ma, Kim et al. 2003)による再結合が関与する。非相同末端結合(NHEJ)による修復は小さな挿入および欠失をもたらすことが多く、特異的遺伝子ノックアウトの作出に使用することができる。前記の修飾は、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、または付加でありうる。開裂誘発性突然変異誘発イベント、すなわちNHEJイベントに続いて起こる突然変異誘発イベントが起こった細胞は、当技術分野において周知の方法によって同定しかつ/または選択することができる。非限定的な一例として、標的遺伝子座付近の標的細胞ゲノムからディープシークエンス解析を作成することができる。したがって挿入/欠失イベント(突然変異誘発イベント)を検出することができる。別の非限定的一例として、完全にはマッチしていないDNAを認識するT7エンドヌクレアーゼに基づくアッセイを使って、与えられた細胞からのゲノムDNAでの遺伝子座特異的PCRから、開裂/非開裂DNA分子から得られる再アニールDNA鎖間のミスマッチを定量することができる。
本明細書において想定される方法の一特定態様では、細胞内に追加触媒ドメインを導入することによって突然変異誘発を増加させる。一特定態様において、本発明は、TRAC遺伝子における標的修飾を確実にするための改良された方法を提供し、標的TRAC核酸配列における突然変異誘発を増加させることで、少なくとも1つの核酸開裂と該ターゲット核酸配列付近の遺伝情報の喪失とを生じさせてNHEJによる傷跡のない再ライゲーション(scarless re-ligation)を防止するための方法を提供する。より好ましい一態様では、前記触媒ドメインがDNA末端プロセシング酵素である。DNA末端プロセシング酵素の非限定的な例として、5'-3'エキソヌクレアーゼ、3'-5'エキソヌクレアーゼ、5'-3'アルカリエキソヌクレアーゼ、5'フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、ヒドロラーゼ、および鋳型非依存性DNAポリメラーゼが挙げられる。そのような触媒ドメインの非限定的な例は、hExoI(EXO1_HUMAN)、酵母ExoI(EXO1_YEAST)、大腸菌ExoI、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、TdT(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)、ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質ドメインまたは同タンパク質ドメインの触媒活性誘導体を含む。より好ましい一態様では、前記触媒ドメインがエキソヌクレアーゼ活性、特に3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有する。より好ましい一態様では、前記触媒ドメインがTREX2またはその機能的変異体である。別の好ましい態様では、前記触媒ドメインが一本鎖TREXポリペプチドによってコードされている。一特定態様では、前記触媒ドメインが、前記レアカッターエンドヌクレアーゼのN末端またはC末端に融合される。酵素TREX2または一本鎖TREX2と、メガヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼとのカップリングは高頻度の標的突然変異誘発を確実にすることが見い出されている。代替として、上記触媒ドメインは、独立したタンパク質の一部として、別々に細胞内に入れることもできる。
エンド核酸分解切断(endonucleolytic break)が相同組換えを刺激することは公知である。それゆえに特定の態様において本発明は、ターゲットTRAC遺伝子の少なくとも一部分に相同な配列を含むドナーマトリックスを細胞内に導入することで、ターゲット核酸配列と前記ドナーマトリックスとの間で相同組換えが起こるようにする工程をさらに含む、ターゲット核酸配列内での相同遺伝子ターゲティングを誘発するための方法にも関係する。
特定の態様では、核酸ターゲット配列内での開裂または核酸ターゲット配列に隣接する開裂を誘発するための上記レアカッターエンドヌクレアーゼと、相同組換えによってトランスジーンを導入するために該トランスジーンを含むドナーマトリックスとを、細胞内に導入することによって、相同TRAC遺伝子ターゲティングが達成される。ターゲット核酸配列の開裂に続いて、ターゲット核酸配列を含有するゲノムとドナーマトリックスとの間で、相同組換えイベントが刺激される。該ドナーマトリックスは、ターゲット核酸配列とドナーマトリックスの間で相同組換えが起こるように、ターゲット核酸配列の少なくとも一部分に相同な配列を含む。好ましくは、長さが少なくとも50bp、好ましくは100bp超、より好ましくは200bp超の相同配列を、該ドナーマトリックス内に使用する。それゆえにドナーマトリックスは長さが好ましくは200bp〜6000bp、より好ましくは1000bp〜2000bpである。別の態様では、該ドナーマトリックスが、ターゲット核酸配列に導入するための配列に隣接して、前記ターゲット核酸配列の部分または隣接部分に相同な2つの配列を含む。実際には、切断部位の上流と下流に隣接する領域に、DNAホモロジーを共有する部分があり、導入しようとする核酸配列は、それら2つのホモロジーアームの間に位置すべきである。特定の態様では、前記ドナーマトリックスが、ターゲット核酸のそれぞれ5'側および3'側の領域に相同な第1部分と第2部分とを含む。これらの態様における前記ドナーマトリックスは、第1部分と第2部分の間に配置された第3の部分であって、DNA開裂部位の5'側および3'側の領域とのホモロジーをほとんどまたは全く含まないものも含むことができる。この場合、該ドナーマトリックスは、細胞内に新しい遺伝物質を導入することを可能にする。細胞内に導入される該新しい遺伝物質は、該細胞に選択上の利点または商業上の利点を付与することができる。別の態様において、前記ドナーマトリックスは、細胞内で遺伝物質を置き換えることを可能にする。別の態様において、前記ドナーマトリックスは、細胞内で遺伝子物質を修復することを可能にする。
特定の態様において、前記ドナーマトリックスは、2つのホモロジーアームの間に陽性選択マーカーを、そして最終的には第1ホモロジーアームの上流または第2ホモロジーアームの下流に陰性選択マーカーを含むことができる。このマーカーはターゲット部位での相同組換えによって関心対象の配列が挿入されている細胞の選択を可能にする。開裂イベントが起こった標的ゲノム配列の場所に依存して、上述のドナーマトリックスは、遺伝子をノックアウトするために使用するか(例えばドナーマトリックスが該遺伝子のオープンリーディングフレーム内に位置する場合)、または新しい配列または関心対象の遺伝子を導入するために使用することができる。上述のドナーマトリックスを使用することによる配列挿入は、標的既存遺伝子の矯正または置き換え(非限定的な一例としてアレル交換)によって該遺伝子を修飾するために使用するか、または標的遺伝子の発現(非限定的な例としてプロモーター交換)、該標的遺伝子の矯正もしくは置き換えをアップレギュレートまたはダウンレギュレートするために使用することができる。
相同組換えイベントが起こった細胞は、当技術分野において周知の方法によって選択することができる。非限定的な一例として、外因性核酸配列内でマッチする1本のオリゴヌクレオチドと、該外因性核酸の外側にあるが標的遺伝子座に近い細胞のゲノム核酸とマッチする1本のオリゴヌクレオチドとを使ったPCR分析を行うことができる。それゆえに、本発明の方法によって突然変異誘発イベントまたは相同組換えイベントが起こった細胞を選択することができる。
本発明のさまざまな方法では、レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを、任意でDNA末端プロセシング酵素またはドナーマトリックスと共に、細胞内に導入する。非限定的な例として、前記レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼは、任意でDNA末端プロセシング酵素またはドナーマトリックスと共に、1つのプラスミドベクターによって、または異なるプラスミドベクターとして、導入することができる。異なるトランスジーンは、2Aペプチドをコードする配列などのリボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含む1つのベクターに含めることができる。ピコナウイルスのアフトウイルス(Aphthovirus)サブグループにおいて同定された2Aペプチドは、コドンによってコードされている2つのアミノ酸の間にペプチド結合を形成することなく、一つのコドンから次のコドンへとリボソーム「スキップ」を引き起こす(Donnelly et al., J. of General Virology 82: 1013-1025 (2001); Donnelly et al., J. of Gen. Virology 78:13-21 (1997); Doronina et al., Mol. And. Cell. Biology 28(13): 4227-4239 (2008); Atkins et al., RNA 13: 803-810 (2007)参照)。「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上(またはDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドを意味する。したがって、2つのポリペプチドは、それらポリペプチドがインフレームの2Aオリゴペプチド配列で分離されている場合には、1本のmRNA内の単一の連続したオープンリーディングフレームから合成することができる。そのようなリボソームスキップ機構は当技術分野において周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされる数個のタンパク質を発現させるために、いくつかのベクターによって使用されていることが知られている。非限定的な例として、本発明では、レアカッターエンドヌクレアーゼとDNA末端プロセシング酵素とを細胞内で発現させるために、2Aペプチドを使用した。非限定的な例として、2Aペプチドは、レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼと、ターゲット核酸配列をプロセシングするためのヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、メチラーゼ活性、トポイソメラーゼ活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、リコンビナーゼ活性からなる群より選択される触媒活性を有する追加のタンパク質ドメインとを、細胞内で発現させるために使用することができる。2Aペプチドは、レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼと蛍光タンパク質とを細胞内で発現させるためにも使用することができる。
前記プラスミドベクターは、該ベクターを受け取った細胞の同定および/または選択を可能にする選択マーカーを含有することができる。ベクターはさまざまな方法(例えば注射、直接取り込み、プロジェクタイルボンバードメント、リポソーム、エレクトロポレーション)によって細胞内に導入することができる。本発明のレアカッターエンドヌクレアーゼ、キメラエンドヌクレアーゼ、DNA末端プロセシング酵素またはドナーマトリックスは、発現ベクターを使って細胞内で安定にまたは一過性に発現させることができる。真核細胞における発現の技法は、当業者には周知である。(Current Protocols in Human GeneticsのChapter 12「Vectors For Gene Therapy」およびChapter 13「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照されたい)。ポリペプチドは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に導入した結果として、細胞内で、インサイチュー合成されうる。前記タンパク質発現は、選択した細胞内で誘導することができ、前記レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼは、選択した細胞内でターゲット核酸配列を開裂する。代替として、ポリペプチドを細胞外で生産してから、それを当技術分野の周知の方法で細胞に導入することもできる。
別の態様では、本発明の前記方法を使って、標的二本鎖切断が起こった動物または植物を生成することができる。動物は、細胞または胚に本発明のレアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを導入することによって生成することができる。特に本発明は、遺伝子修飾を導入することが望まれるTCRα遺伝子中の核酸ターゲット配列を含む真核細胞を用意する工程、本発明の改変レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを導入することによって、前記核酸ターゲット配列内にまたはそれに隣接して開裂を生成する工程、および開裂が起こった前記細胞またはその子孫から動物を生成する工程を含む、動物を生成するための方法に関する。典型的には、胚は受精1細胞期胚である。前記レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、胚の核または細胞質へのマイクロインジェクションなどといった、当技術分野において公知のどの方法によって細胞内に導入してもよい。一特定態様において、動物を生成するための方法は、所望により、ドナーマトリックスを導入する工程を、さらに含む。該ドナーマトリックスは、前記細胞またはその子孫において該ドナーマトリックスと核酸ターゲット配列との間で相同組換えが起こるように、核酸ターゲット配列の少なくとも一部分に相同な配列を含む。ドナーマトリックスは、例えば、相同組換えによって遺伝子を破壊する核酸配列、相同組換えによって遺伝子を置き換える核酸配列、相同組換えによって遺伝子中に突然変異を導入する核酸配列、または相同組換えによって調節部位を導入する核酸配列を含むことができる。次に、胚を培養することで、動物を発生させる。本発明の一局面では、少なくとも関心対象の核酸ターゲット配列を改変さした動物が提供される。例えば改変遺伝子は、転写されないか、適正に翻訳されないか、または異なる形態の遺伝子が発現するように、不活性化された状態になりうる。動物は改変遺伝子に関してホモ接合またはヘテロ接合であることができる。より具体的には、本発明は、a)動物の多能性前駆体細胞または胚に、TCRα遺伝子中に存在する核酸ターゲットにおける核酸開裂を誘発するのに十分な/誘発する能力を有する上述のレアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを導入する工程、(b)工程(a)の動物前駆体細胞または胚に、任意で、該レアカッターエンドヌクレアーゼの核酸開裂部位の周囲にあるTCRα遺伝子の少なくとも1つの領域とホモロジーを共有する少なくとも1つの配列が隣接している導入されるべき配列を含むドナーマトリックスを導入する工程、(c)工程(b)のゲノム修飾動物前駆体細胞または胚をキメラ動物へと発生させる工程、および(d)工程(c)のキメラ動物からトランスジェニック動物を派生させる工程を含む、TCRαノックインまたはノックアウト動物を作るための方法に関する。好ましくは、工程(c)は、工程(b)において生成したゲノム修飾前駆体細胞を、キメラ動物が生成するように、胚盤胞に導入することを含む。
別の局面において、本発明は、上述の方法によって(例えば、典型的なTCRαタンパク質生合成および/またはTCRαタンパク質細胞表面発現に関して、および/またはTCRαタンパク質が介在する抗原認識と免疫受容体シグナル伝達に関して)不活性化されたTCRαタンパク質をコードする遺伝子を含む単離された細胞に関する。
本明細書にいう「細胞」とは、任意の原核生細胞または真核生細胞、これらの生物に由来するインビトロ培養用の細胞株、動物起源の初代細胞を指す。
本明細書にいう「初代細胞」とは、生組織(すなわち生検材料)から直接採取され、インビトロ成長のために樹立された細胞であって、ごくわずかな集団倍加しか経ておらず、それゆえに、連続腫瘍化細胞株または人工的に不死化した細胞株と比較して、その由来である組織の主要な機能的構成要素および特徴の典型をよりよく示しているものを指す。したがってこれらの細胞は、それらが関係するインビボ状態にとって、より有益なモデルである。
より好ましくは、動物細胞は、ヒト(Homo)属、クマネズミ(Rattus)属、ハツカネズミ(Mus)属、イノシシ(Sus)属、ウシ(Bos)属、ダニオ(Danio)属、イヌ(Canis)属、ネコ(Felis)属、ウマ(Equus)属、サケ(Salmo)属、タイヘイヨウサケ(Oncorhynchus)属、ニワトリ(Gallus)属、シチメンチョウ(Meleagris)属、ショウジョウバエ(Drosophila)属、線虫(Caenorhabditis)属の細胞であり、より好ましくは、動物細胞は、種ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、ハツカネズミ(Mus musculus)、イノシシ(Sus scrofa)、ウシ(Bos taurus)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、オオカミ(Canis lupus)、イエネコ(Felis catus)、ウマ(Equus caballus)、タイセイヨウサケ(Salmo salar)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、ニワトリ(Gallus gallus)、シチメンチョウ(Meleagris gallopavo)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エレガンス線虫(Caenorhabditis elegans)の細胞である。
本発明の諸局面において、細胞は、哺乳動物細胞、またはこれらの生物に由来するインビトロ培養用の細胞株、または生組織から直接採取されインビト培養用に樹立された初代細胞であることができる。非限定的な例として、細胞株は、CHO-K1細胞、HEK293細胞、Caco2細胞、U2-OS細胞、NIH 3T3細胞、NSO細胞、SP2細胞、CHO-S細胞、DG44細胞、K-562細胞、U-937細胞、MRC5細胞、IMR90細胞、Jurkat細胞、HepG2細胞、HeLa細胞、HT-1080細胞、HCT-116細胞、Hu-h7細胞、Huvec細胞、Molt4細胞からなる群より選択することができる。
より好ましい一態様では、前記単離された細胞は、複能性細胞、例えば幹細胞であることができる。幹細胞は成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であることができる。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。本発明の一特定態様では、細胞がT細胞、好ましくはヒトT細胞である。
癌、自己免疫疾患、またはウィルス感染を処置または防止するための方法
別の局面において、本発明は、医薬としての本発明のI-OnuI変異体、I-OnuIホモログ変異体またはI-OnuI由来のキメラエンドヌクレアーゼの使用に関する。
より具体的には、本発明は、癌、自己免疫疾患、またはウィルス感染を有する対象を処置するための方法であって、TRAC遺伝子における突然変異誘発または相同組換えをもたらすのに十分な本発明のレアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼを、任意で、ドナーマトリックスおよび/またはDNA末端プロセシング酵素と共に細胞内に導入する工程、および前記細胞を前記対象に投与する工程を含む方法に関する。特定の局面において、本方法は、レアカッターエンドヌクレアーゼまたはキメラエンドヌクレアーゼの導入を、腫瘍、ウィルス、または自己免疫関連ターゲットを認識する人工/キメラ抗原受容体の導入と組み合わせることができる。特定の態様において、本方法は、突然変異誘発イベントまたは相同組換えイベントがTRAC遺伝子内で起こっている培養細胞を当技術分野における周知の方法によって選択する工程を含むことができる。
前記の処置は、改善的処置、治療的処置、または予防的処置であることができる。これは自家処置の一部または同種異系処置の一部であることができる。自家とは、患者を処置するために使用される細胞、細胞株または細胞集団が、該患者に由来することを意味する。同種異系とは、患者を処置するために使用される細胞または細胞集団が該患者に由来するのではなく、ドナーに由来することを意味する。
開示する方法に使用することができる細胞は、複能性細胞、例えば幹細胞であることができる。幹細胞は成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、誘導多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であることができる。代表的ヒト細胞はCD34+細胞またはヒトT細胞である。本発明の細胞の拡大および遺伝子修飾に先だって、細胞の供給源は、さまざまな非限定的方法によって対象から得ることができる。T細胞は、例えば末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍など、いくつかの非限定的供給源から得ることができる。本発明の一定の態様では、当業者に公知であり入手可能な多くのT細胞株を使用することができる。
別の態様では、さまざまな方法によって得られた単離細胞、または該単離細胞に由来する細胞株を、医薬として使用することができる。別の態様では、該医薬を、それを必要とする患者において、癌または自己免疫疾患またはウィルス感染を処置するために使用することができる。別の態様では、本発明の前記単離細胞または該単離細胞に由来する細胞株を、それを必要とする患者において、癌、自己免疫疾患、またはウイルス感染を処置するための医薬の製造に使用することができる。
本発明の細胞または細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、植え込み、または移植などといった、任意の好都合な方法で行うことができる。本明細書に記載する組成物は、患者に皮下投与、皮内投与、腫瘍内投与、リンパ節内投与、髄内投与、筋肉内投与するか、静脈内注射またはリンパ管内注射によって投与するか、または腹腔内投与することができる。一態様では、本発明の細胞組成物が、好ましくは静脈内注射によって投与される。
特定の局面では、細胞または細胞集団の投与が、104〜109細胞/kg体重、好ましくは105〜106細胞/kg体重の投与を含む(前記範囲内にある細胞数の値は全て含む)。細胞または細胞集団は、1回または複数回投与することができる。別の態様では、前記有効量の細胞を単回投与として投与する。別の態様では、前記有効量の細胞をある期間にわたる2回以上の投与として投与する。投与のタイミングは主治医の判断により、患者の臨床状態に依存する。細胞または細胞集団は、細胞バンクまたはドナーなどといった、任意の供給源から得ることができる。個々のニーズはさまざまであるが、ある特定疾患または特定状態に関して、所与の細胞タイプの有効量の至適範囲の決定は、当技術分野の技能の範囲内にある。投与される1回量は、レシピエントの年齢、健康状態および体重、併用処置があればその種類、処置の頻度、所望する効果の性質に依存するであろう。
別の態様では、細胞の投与を免疫抑制薬レジメンの施行と組み合わせることができる。免疫抑制レジメンとしては、細胞分裂阻害薬、グルココルチコイドおよび抗体系薬物クラスを挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。免疫抑制レジメンは、細胞の投与前、投与中または投与後に施行することができる。免疫抑制レジメンは1回または複数回施行することができる。免疫抑制薬レジメンの投薬量、タイミングおよび組成物は、主治医の判断により、患者の臨床状態に依存する。
別の態様において、本発明は、本発明のレアカッターエンドヌクレアーゼをコードするベクターを対象に投与することを含む、対象中のTCRα遺伝子を標的とするための方法に関する。
定義
上記の説明では、いくつかの用語を広範に使用している。本態様の理解が容易になるように、以下の定義を提供する。
本明細書において使用する用語「約」は、値を決定するために使用する方法に固有の誤差の変動または実験間に存在する変動を、値が含んでいることを示す。
ポリペプチド配列中のアミノ酸残基を本明細書では1文字記号で指定する。この場合、例えばQはGln、すなわちグルタミン残基を意味し、RはArg、すなわちアルギニン残基を意味し、DはAsp、すなわちアスパラギン酸残基を意味する。
アミノ酸置換は、あるアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えばペプチド配列におけるグルタミン残基によるアルギニン残基の置き換えはアミノ酸置換である。
ヌクレオチドは次のように指定される。ヌクレオシドの塩基の指定には1文字記号を使用する。すなわち、aはアデニン、tはチミン、cはシトシン、そしてgはグアニンである。縮重ヌクレオチドの場合、rはgまたはa(プリンヌクレオチド)を表し、kはgまたはtを表し、sはgまたはcを表し、wはaまたはtを表し、mはaまたはcを表し、yはtまたはc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、aまたはtを表し、vはg、aまたはcを表し、bはg、tまたはcを表し、hはa、tまたはcを表し、nはg、a、tまたはcを表す。
本明細書にいう「核酸」または「核酸分子」は、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成するフラグメント、およびライゲーション、切断(scission)、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成するフラグメントを指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)もしくは天然ヌクレオチドの類似体(例えば天然ヌクレオチドのエナンチオマー型)または両者の組み合わせであるモノマーから構成されうる。修飾ヌクレオチドは糖部分中および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分中に変更を有しうる。糖修飾としては、例えばハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基による1つまたは複数のヒドロキシル基の置き換えが挙げられ、あるいは糖をエーテルまたはエステルとして官能化することができる。さらにまた、糖部分全体を、立体的および電子的に類似する構造、例えばアザ糖および炭素環式糖アナログで置き換えることもできる。塩基部分の修飾の例としては、アルキル化プリンおよびアルキル化ピリミジン、アシルカプリンまたはアシル化ピリミジン、あるいは他の周知の複素環式代替物が挙げられる。核酸モノマーはホスホジエステル結合またはそのような結合のアナログによって連結することができる。核酸は一本鎖または二本鎖であることができる。
「キメラエンドヌクレアーゼ」とは、別のタンパク質に由来する1つまたは複数のタンパク質機能ドメインに機能的に連結されたエンドヌクレアーゼの機能的部分を含むエンドヌクレアーゼを意味するものとする。
用語「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」は、そのタンパク質が、2つ以上の親タンパク質または親ポリペプチドに由来するポリペプチド構成要素を含むことを示す。典型的には、融合タンパク質は、あるタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチドに、異なるタンパク質からのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、任意でリンカーで隔てられて、インフレームに付加されている融合遺伝子から発現する。この場合、宿主細胞は融合遺伝子を単一のタンパク質として発現させることができる。融合タンパク質は、あるポリペプチドの少なくとも一部が別のポリペプチドと融合しているものを含むことができる。いくつかの態様において、融合タンパク質は、あるポリペプチドの少なくとも一部が同じポリペプチドの少なくとも一部と融合されているものを含むことができる。
「スクリーニング」とは、指定した表現型、例えば変化した開裂活性などを呈する1つまたは複数のメガヌクレアーゼ変異体の逐次的選択または同時選択を意味するものとする。
「突然変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)配列またはポリペプチド配列中の1つまたは複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意味する。該突然変異は遺伝子のコード配列またはその調節配列に影響を及ぼしうる。突然変異はゲノム配列の構造またはコードされているmRNAの構造/安定性にも影響を及ぼしうる。
「遺伝子」とは、染色体に沿って直線状に配置されたDNAのセグメントからなる遺伝の基本単位を意味し、特異的タンパク質またはタンパク質のセグメントをコードしている。遺伝子は典型的には、プロモーター、5'非翻訳領域、1つまたは複数のコード配列(エクソン)、任意でイントロン、3'非翻訳領域を含む。遺伝子は、さらに、ターミネーター、エンハンサーおよび/またはサイレンサーを含みうる。
本明細書において使用する用語「トランスジーン」は、ポリペプチドをコードする配列を指す。トランスジーンによってコードされるポリペプチドは、好ましくは、そのトランスジーンが挿入される細胞、組織または個体では発現していないか、または発現しているが生物学的に活性でない。トランスジーンは、最も好ましくは、個体の治療に役立つ治療用ポリペプチドをコードする。
「送達ベクター」とは、本発明において必要な作用物質/化学薬品および分子(タンパク質または核酸)を細胞接触状態にする(すなわち「接触させる」)または細胞もしくは細胞内コンパートメントの内部に送達するために、本発明において使用することができる任意の送達ベクターを意味する。これには、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学担体、ポリマー担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、マイクロバブル(超音波造影剤)、ナノ粒子、エマルション、または他の適当な伝達ベクターが含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの送達ベクターは、分子、化学薬品、高分子(遺伝子、タンパク質)または他のベクター、例えばプラスミド、Diatosによって開発されたペプチドなどの送達を可能にする。これらの場合、送達ベクターは分子担体である。「送達ベクター」とは、トランスフェクションを行うための送達方法も意味する。
「ベクター」という用語は、そこに連結された別の核酸を輸送する能力を有する核酸分子を指す。本発明における「ベクター」には、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または染色体核酸、非染色体核酸、半合成核酸もしくは合成核酸からなりうる線状または環状のDNA分子またはRNA分子などがあるが、それらに限定されるわけではない。好ましいベクターは、自律的複製能を有し(エピソームベクター)かつ/またはそれらが連結されている核酸を発現させる能力を有するもの(発現ベクター)である。数多くの好適なベクターが当業者に公知であり、市販されている。
ウイルスベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルソミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹ウイルスおよびセンダイウイルス)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルス、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バー・ウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えばワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、およびカナリア痘ウイルス)が挙げられる。他のウイルスには、例えばノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスなどがある。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型ウイルス(mammalian C-type)、B型ウイルス(B-type virus)、D型ウイルス(D type virus)、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルス(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
「レンチウイルスベクター」とは、比較的大きなパッケージング能、低減した免疫原性、および多種多様な細胞タイプに高い効率で安定に形質導入する能力を有することから遺伝子送達にとって極めて有望な、HIVに基づくレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、通常、3つ(パッケージング、エンベロープおよびトランスファー)またはそれ以上のプラスミドをプロデューサー細胞に一過性トランスフェクトした後に生成する。HIVのように、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上の受容体との相互作用によってターゲット細胞に進入する。進入すると、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは感染細胞のDNAへのウイルス組込みの基質である。
「組み込み型レンチウイルスベクター(すなわちLV)」とは、ターゲット細胞のゲノムを統合することができる、非限定的な例としての上述のベクターを意味する。
反対に、「非組込み型レンチウイルスベクター」(すなわちNILV)とは、ウイルスインテグラーゼの作用によってターゲット細胞のゲノムを統合しない効率のよい遺伝子送達ベクターを意味する。
好ましいベクターの一タイプはエピソーム、すなわち染色体外複製能を有する核酸である。好ましいベクターは、自律的複製能を有しかつ/またはそれらが連結されている核酸を発現させる能力を有するものである。遺伝子に機能的に連結された場合にその遺伝子の発現を指示する能力を有するベクターを、本明細書では「発現ベクター」という。本発明のベクターには、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、バキュロウイルスベクター、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または染色体DNA、非染色体DNA、半合成DNAもしくは合成DNAからなりうる線状または環状のDNA分子またはRNA分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一般に、組換えDNA技法に有用な発現ベクターは、多くの場合、一般に環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態にあり、これらは、そのベクター型では、染色体に結合しない。数多くの好適なベクターが当業者に公知である。ベクターは、例えば真核細胞培養用のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンテターゼ、およびヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ; S.セレビシア(S. cerevisiae)用のTRP1;大腸菌用のテトラサイクリン、リファンピシンまたはアンピシリン耐性などといった選択可能マーカーを含むことができる。好ましくは、前記ベクターは、関心対象のポリペプチドをコードする配列が該ポリペプチドの生産または合成を可能にする適当な転写および翻訳制御要素の制御下に置かれている発現ベクターである。それゆえに前記ポリヌクレオチドは発現カセットに含まれている。より具体的には、ベクターは、複製起点、前記コードポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを使用する場合)、ポリアデニル化部位および転写終結部位を含む。これはエンハンサー要素およびサイレンサー要素も含むことができる。プロモーターの選択は、ポリペプチドを発現させる細胞に依存するであろう。適切なプロモーターとして、組織特異的および/または誘導性プロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの例は、高い重金属レベルによって誘導される真核生物メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核生物lacZプロモーター、および高温によって誘導される真核生物熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ遺伝子、前立腺特異抗原(PSA)遺伝子、α-アンチトリプシンプロテアーゼ遺伝子、ヒトサーファクタント(SP)Aタンパク質およびBタンパク質遺伝子、β-カゼイン遺伝子および酸性ホエータンパク質(acidic whey protein)遺伝子である。
送達ベクターは、ソノポレーションもしくはエレクトロポレーションまたはこれらの技法から派生した技法など、任意の細胞透過処理技法と関連させるまたは組み合わせることができる。
用語「エンドヌクレアーゼ」または「ヌクレアーゼ」は、DNA分子またはRNA分子(好ましくはDNA分子)内の核酸間の結合の加水分解(開裂)を触媒する能力を有する任意の野生型または変異体酵素を指す。エンドヌクレアーゼは、典型的には、12塩基対(bp)長を上回るポリヌクレオチド認識、より好ましくは14〜45bpのポリヌクレオチド認識を有する場合に、レアカッターエンドヌクレアーゼと分類することができる。レアカッターエンドヌクレアーゼは、所定の遺伝子座におけるDNA二本鎖切断(DSB)を誘発することによって、HRを著しく増加させる(Perrin, Buckle et al. 1993; Rouet, Smih et al. 1994; Rouet, Smih et al. 1994; Choulika, Perrin et al. 1995; Pingoud and Silva 2007)。レアカッターエンドヌクレアーゼは、例えばホーミングエンドヌクレアーゼ(Paques and Duchateau 2007)、キメラジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(Eisenschmidt, Lanio et al. 2005 ; Arimondo, Thomas et al. 2006; Simon, Cannata et al. 2008)、TALEヌクレアーゼ、またはケミカルエンドヌクレアーゼ(chemical endonuclease)であることができる。ケミカルエンドヌクレアーゼでは、ケミカルな開裂因子またはペプチド開裂因子が、核酸のポリマーまたは特異的ターゲット配列を認識する別のDNAにコンジュゲートされており、それによって開裂活性が特異的配列に誘導される。ケミカルエンドヌクレアーゼは、DNA開裂分子オルトフェナントロリンと特異的DNA配列に結合することが知られている三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)のコンジュゲートのような合成ヌクレアーゼも包含する(Kalish and Glazer 2005)。そのようなケミカルエンドヌクレアーゼも、本発明では、用語「エンドヌクレアーゼ」に含まれる。
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、キサントモナス属の植物病原体が感染プロセスにおいて使用するタンパク質のファミリーである(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009; Christian, Cermak et al. 2010; Li, Huang et al. 2011; Li, Huang et al. 2011)。用語「TALエフェクターヌクレアーゼ」(TALEヌクレアーゼ)は、ヌクレアーゼドメインに融合されたTALエフェクタードメインを含むヌクレアーゼを指す。これらのDNA結合ドメインは、所望のターゲットに結合するように改変し、TALエフェクタードメイン-ヌクレアーゼ融合タンパク質が得られるように、Fok1ヌクレアーゼドメインなどのヌクレアーゼドメインに融合することができる。
用語「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA開裂ドメインに融合することによって生成する人工的制限酵素を指す。ジンクフィンガードメインは、所望のターゲット部位に結合するように改変することができる。いくつかの態様では、開裂ドメインがFokIの非特異的開裂ドメインを含む(Porteus and Carroll 2005)。別の態様では、開裂ドメインが別のヌクレアーゼの全てまたは活性部分を含む。
「触媒ドメイン」とは、酵素のタンパク質ドメインまたはモジュールであって、該酵素の活性部位を含有するものを意味し、活性部位とは、該酵素のうち、基質の触媒作用が起こる部分を意味する。酵素とその触媒ドメインは、それらが触媒する反応に従って分類され、命名される。酵素委員会番号(EC番号)は、酵素が触媒する化学反応に基づく、酵素の数字による分類スキームである。
用語「エキソヌクレアーゼ」は、3'端または5'端でホスホジエステル結合を切断する加水分解反応によって、ポリヌクレオチド鎖の末端にあるホスホジエステル結合を開裂する酵素を指す。ポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、RNA、DNAとRNAの二本鎖ハイブリッド、および合成DNA(例えばA、C、GおよびT以外の塩基を含有するもの)であってよい。用語「5'エキソヌクレアーゼ」は、5'末端でホスホジエステル結合を開裂するエキソヌクレアーゼを指す。用語「3'エキソヌクレアーゼ」は、3'末端でホスホジエステル結合を開裂するエキソヌクレアーゼを指す。エキソヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ切断部位におけるポリヌクレオチド鎖の末端で、または他の化学的手段もしくは機械的手段、例えばせん断、電離放射線、紫外線照射、酸素ラジカル、化学的加水分解および化学療法剤などによって生成した末端で、ホスホジエステル結合を開裂しうる。エキソヌクレアーゼは、平滑末端または付着末端でホスホジエステル結合を開裂しうる。大腸菌のエキソヌクレアーゼIとエキソヌクレアーゼIIIの2つは、よく使用される3'-エキソヌクレアーゼであって、3'-エキソ核酸分解的一本鎖分解活性を有する。3'-エキソヌクレアーゼの例として、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDK)、NDK1(NM23-H1)、NDK5、NDK7、およびNDK8、WRN、および3'修復エキソヌクレアーゼ(Three prime repair exonuclease)2(Trex2)が挙げられる。大腸菌エキソヌクレアーゼVIIとT7エキソヌクレアーゼ遺伝子6の2つは、よく使用される5'-3'エキソヌクレアーゼであって、5%エキソ核酸分解的一本鎖分解活性を有する。エキソヌクレアーゼは原核生物に由来するか(例えば大腸菌エキソヌクレアーゼ)、真核生物に由来しうる(例えば酵母、ワーム(worm)、マウス、またはヒトエキソヌクレアーゼ)。
「機能的変種」とは、タンパク質またはタンパク質ドメインの触媒活性変種を意味し、そのような変種はその親タンパク質または親タンパク質ドメインと比べて同じ活性を有するか、または追加の特性を有することができる。この定義は、本発明のキメラタンパク質または本発明のキメラタンパク質を構成するタンパク質ドメインに当てはまる。この定義の範囲には、他のタンパク質部分または化学部分、例えば非限定的な例としてタグ、抗体、ポリエチレングリコールなどに融合されたこれらのタンパク質またはタンパク質ドメインの全部または一部を含むこれらのタンパク質またはタンパク質ドメインの「誘導体」も包含される。
核酸またはタンパク質の「相同配列」とは、配列とヌクレオチドレベルまたはポリペプチドレベルで高いパーセンテージの同一性または高いパーセンテージのホモロジーを有する配列を意味する。高いパーセンテージの同一性または高いパーセンテージのホモロジーとは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%、または70%と99%の間の任意のパーセンテージ値を意味する。
「同一性」とは、2つの核酸分子または2つのポリペプチドの配列同一性を指す。同一性は、各配列(比較のために整列してもよい)中の位置を比較することによって決定することができる。比較した配列中のある位置が同じ塩基で占められている場合、その分子はその位置において同一である。核酸配列間またはアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度は、核酸配列が共有する位置における同一ヌクレオチドまたは一致ヌクレオチドの数の関数である。2つの配列間の同一性の計算には、FASTAまたはBLAST(これらはGCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin、ウィスコンシン州マディソン)の一部として利用することができ、例えばデフォルト設定で使用することができる)など、さまざまな整列アルゴリズムおよび/またはプログラムを使用することができる。
用語「開裂」は、ポリヌクレオチドの共有結合主鎖の切断を指す。開裂は、例えば限定するわけではないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解など、さまざまな方法によって開始させることができる。一本鎖開裂と二本鎖開裂の両方が考えられ、二本鎖開裂は2つの別個の一本鎖開裂イベントの結果として起こりうる。二本鎖DNA、RNA,、またはDNA/RNAハイブリッド開裂は、平滑末端または突出末端の生成をもたらすことができる。
用語「ターゲット部位」、「ターゲット配列」、「ターゲット核酸配列」または「核酸ターゲット配列」は、核酸の一部分であって、結合および/または開裂にとって十分な条件が存在するのであれば、そこに結合分子が結合しかつ/またはそれを開裂する部分を画定する核酸配列を指す。
タンパク質の「ドメイン」は、タンパク質全体の任意の部分であって、最大では完全なタンパク質部分であるが、典型的には完全なタンパク質より小さい。ドメインは、タンパク質の残りの部分とは独立して折りたたまれうるが、その必要はなく、かつ/または、特定の生物学的、生化学的、または構造的な機能もしくは場所と相関しうる(例えばエンドヌクレアーゼドメイン、ポリヌクレオチド結合ドメイン、例えばDNA結合ドメイン、または末端プロセシングドメイン)。
キメラ抗原受容体(CAR)とは、特異的抗ターゲット細胞性免疫活性を呈するキメラタンパク質が生成するように、ターゲット細胞上に存在する構成要素に対する結合ドメイン、例えば所望の抗原(例えば腫瘍抗原)に対する抗体に基づく特異性と、T細胞受容体活性化細胞内ドメインとを併せもつ分子を意味する。一般に、CARは、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖の細胞内シグナリングドメインに融合された細胞外一本鎖抗体(scFvFc)からなり(scFvFc:ζ)、T細胞内で発現した場合に、前記モノクローナル抗体の特異性に基づいて抗原認識をリダイレクト(redirect)する能力を有する。
本明細書において使用する用語「対象」には、非ヒト霊長類およびヒトを含む動物界の全てのメンバーが含まれる。
実施例1:ヒトTRAC遺伝子中のターゲットに特異的なDNA認識界面を有するLHEプロトタイプの改変を行った。
まず、本発明者らがそれに対する高品質な改変DNA認識界面を予想したヒトTRAC遺伝子中の推定LHEターゲット配列を同定した。そのような予想は、TRAC DNA認識界面を改変する土台としたLHEスキャフォールドI-OnuI(SEQ ID NO:1)に固有の一連の特徴に基づいている。エンドヌクレアーゼが媒介する挿入または欠失によってTCRαタンパク質に有意な破壊が起こる可能性が高いTRAC遺伝子内の場所、および/または免疫学的拒絶の根拠として働きうるアウトオブフレームペプチドの生産を制限するために隣接下流TGA、TAG、またはTAAストップコドンが代替読み枠に存在することなどといった他の考慮すべき事項も、ターゲット選択プロセスに組み入れた。推定ターゲット配列の場所を模式的に図解した図1を参照されたい。
2つの推定ターゲット配列(TCRA_S02およびTCRA_S10; SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4)を、DNA認識界面の改変の最初の段階のために選んだ。変異体ライブラリーを構築することで、DNA認識界面の局在小領域中のアミノ酸残基を変異させた。DNA認識界面の模式図と構造図を示す図2を参照されたい。酵母株サッカロミセス・セレビシアにおけるギャップ組換え(gap recombination)によって変異体ライブラリーを生成させるために、PCR反応の基質として働くオリゴヌクレオチド中に縮重コドンを組み入れることによって、I-OnuI核酸配列(SEQ ID NO:1)のDNA認識界面内での変異を達成した。結果として生じたライブラリーを、Jarjour, West-Foyle et al. 2009に記載されている表面ディスプレーとフローサイトメトリーに基づく方法によって、ターゲット開裂活性についてスクリーニングした。この方法で、ヒトTRAC遺伝子中のターゲットを認識するように、DNA認識界面の特異性を変化させた。特定の局面において、うまく再特異化されたDNA認識界面が得られたのは、TCRA_S02(SEQ ID NO:3)に限られ、他の推定ターゲット部位については、改変プロセスの初期の段階で失敗に終わった。TCRA_S02ターゲットを開裂する変異体の単離に成功したことを図解する図3を参照されたい。
実施例2:改変DNA認識界面を有するLHEは、改変の結果として認識するようになったターゲット配列に破壊突然変異を引き起こすことが示された。
TCRAターゲティングLHEの活性を測定するために、以前に記述された染色体組込み型のレポーター系を使用した。この系では、蛍光タンパク質mCherryをコードするアウトオブフレーム遺伝子の上流にTCRA_S02ターゲット配列を含有するように改変されたHEK293T線維芽細胞細胞株に、関心対象のLHEをトランスフェクトする。埋め込まれたTCRA_S02ターゲットの開裂と、それに続いて非相同末端結合(NHEJ)経路によるDNA修復が引き起こす小さな挿入または欠失は、修復された遺伝子座のおよそ3つに1つが、蛍光レポーター遺伝子を「インフレーム」にするという結果をもたらす。それゆえに、フローサイトメーターでのmCherryチャネルにおける蛍光は、染色体に埋め込まれたTCRA_S02ターゲット配列のLHE開裂の代用ハイスループットリードアウトになる。
TCRA_S02_2E5変異体(SEQ ID NO:6をコードするSEQ ID NO:5)での最初の結果は、非常に低いmCherry発現効率を示し、この変異体が、細胞染色体環境では、そのターゲットをあまり活発に開裂していないことが示された。改良された触媒活性を有する変異体を単離するために、TCRA_S02_2E5変異体のランダム突然変異誘発と、よりストリンジェントな開裂条件下での表面ディスプレーに基づくスクリーニングとを行った。2ラウンドの突然変異誘発とスクリーニングにより、mCherry発現細胞の生成率が40〜50倍高い変異体がもたらされた。図4を参照されたい。この図は、TCRA_S02_2E5_RD1_08(SEQ ID NO:8をコードするSEQ ID NO:7)およびTCRA_S02_2E5_RD2_23(SEQ ID NO:10をコードするSEQ ID NO:9)を含むTCRA_S02_2E5精密化変異体に関するレポーターアッセイからのフローサイトメトリーリードアウトを図解している。最も成績のよい変異体TCRA_S02_2E5_RD1_08(SEQ ID NO:7)は、TCRA_S02_2E5変異体と比較して6つの突然変異を含有しており、そのうちの4つはDNA認識界面内に位置し、2つはLHEの他の場所に位置している。表示した変異体の比較アラインメントとDNA認識界面を構成する残基の位置情報とを与える図5および表1を参照されたい。このプロセスによって同定された個々の突然変異が、LHEのDNA認識および開裂活性に影響を及ぼすLHEの特徴に寄与するとして、それがどの程度であるかは、わかっていない。それらは全体として、TCRA_S02ターゲット配列に破壊突然変異が発生する頻度の著しい改良をもたらした。
実施例3:高いアフィニティー、高い特異性、および低い毒性を有するDNA認識界面を持つLHEを弁別した。
TCRA_S02(SEQ ID NO:3)ターゲットに対する改変DNA認識界面を含有するLHEを、アフィニティー、特異性、および毒性の特徴について試験した。アフィニティーは、TCRA_S02_2E5_RD1-08変異体(SEQ ID NO:8をコードするSEQ ID NO:7)をディスプレーする酵母を個別にそのターゲット配列を含有するさまざまな濃度のDNA基質と共にインキュベートすることによって試験した。この変異体のアフィニティー特性を野生型I-OnuIタンパク質と比較して示す図6を参照されたい。これらのデータは、TCRA_S02_2E5_RD1_08変異体が、ネイティブI-OnuI LHEとそのターゲット配列(SEQ ID NO:11)との間の相互作用のアフィニティーに匹敵するかそれより高いアフィニティーで、そのDNAターゲットに結合することを実証している。特異性は、3つの代替DNA塩基対のそれぞれを基質中の各位置に含有するターゲット配列に対する各LHEの相対的アフィニティーおよびDNA開裂能力を解析することによって試験した。TCRA_S02_2E5_RD1_08(SEQ ID NO:7)変異体の特異性プロファイルを図解する図7を参照されたい。これらのデータは、TCRA_S02_2E5_RD1_08 LHE変異体が置換を許容せず、そのターゲット中の大半の位置で、もっぱらその特異的基質塩基対だけを開裂/結合するので、TCRA_S02_2E5_RD1_08 LHE変異体が高い総合的特異性を有することを実証している。毒性は、各LHEをmRNAにインビトロ転写して、それをエレクトロポレーションによって初代ヒトT細胞にトランスフェクトし、次に、青色蛍光タンパク質(BFP)をコードする対照mRNAのトランスフェクションと対比して、細胞の生存率のフローサイトメトリー解析を行うことによって解析した。TCRA_S02_2E5_RD1_08 LHE変異体をコードするIVT-mRNAをエレクトロポレートした後の初代ヒトT細胞のフローサイトメトリー解析を示す図8を参照されたい。これらのデータは、このTCRA_S02 LHEが初代ヒト細胞においてごくわずかな毒性しか持たないことを示している。
実施例4: TRACターゲティングLHEの一過性発現が、細胞表面からのTCRαタンパク質の喪失を引き起こし、TRAC遺伝子における破壊的突然変異につながることを示した。
次に、i)TRACターゲティングLHEがヒト細胞においてTRAC遺伝子中のTCRA_S02ターゲット部位(SEQ ID NO:3)を効率よく開裂するかどうか、およびii)結果として起こったNHEJ媒介性破壊が、細胞表面からのTRACタンパク質の喪失をもたらすかどうかを決定するために、TRACターゲティングLHEを調べた。高い効率を達成しようとする一つの主な動機づけは、TRAC破壊ヌクレアーゼに基づくヒトへの治療的介入を開発することにある。そのような応用では、永続的(例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたは泡沫状ウイルスベクターの場合)または一過性(例えばアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクター)にヌクレアーゼ試薬を送達するウイルスベクターを使用することは、多大の労力を要し、コストおよび資源集約的であり、スケーラビリティに乏しく、調節という観点からは対処することが困難である。より魅力的な治療用の試薬およびプロセスには、生物学的ベクターを、インビトロ転写mRNA(IVT-mRNA)などの合成発現試薬で置き換える必要があるだろう。初代ヒトT細胞に、BFPまたはTCRA_S02_2E5 LHEもしくは上述の変異体をコードするインビトロ転写mRNA(IVT-mRNA)を、当技術分野に詳しい人々には周知の方法を使ってトランスフェクトした。IVT-mRNAのエレクトロポレーションにより、4〜12時間持続するタンパク質発現の一過性バーストが起こる。タンパク質発現の持続時間と程度は、IVT-mRNAの構造に依存する。IVT-mRNA生産に使用したプラスミドの一例を図9に示す(SEQ ID NO:12)。IVT-mRNA生産の過程で二次的なmRNA安定性因子が付加される。5'mRNAキャップ(m7G)は真核生物翻訳開始因子(eIF)に結合することによって発現を調節する。ポリアデニル化(ポリ(A))テールの付加はIVT-mRNAの分解を遅延させ、LHEタンパク質発現量を増加させる。
TRACターゲティングLHEとTrex2をコードするIVT-mRNAを初代ヒトT細胞にエレクトロポレートした3日後に、細胞の15%超がTCRαタンパク質の細胞表面発現を失っていた。TRAC破壊と2週間の培養期間にわたるTRAC破壊の安定性のフローサイトメトリー解析を示す図10を参照されたい。フローサイトメトリーを使ってTCRα陰性細胞を選別し、TRAC遺伝子上のTCRA_S02ターゲット部位を配列決定することで、TRAC遺伝子の遺伝子破壊を解析すると共に、LHE誘発性突然変異のスペクトルを確認し、特徴づけた。TRAC遺伝子は、T細胞発生時の非生産性アレル(non-productive allele)のサイレンシングにより、単一アレル的に発現する。全TRACアレルの50%がTCR_S02ターゲット部位にNHEJ破壊イベントを含有していたことを示す配列決定結果については、図11を参照されたい。決定的結論は、TCRA_S02_LHE変異体は活発に転写されるTRACアレルを効果的に標的にしてTCRα発現を遮断するということである。
実施例5:TALEドメインとの融合によってTRACターゲティングLHEを改良し、一過性合成送達法による、さらに効率のよいTRAC遺伝子破壊を可能にした。
上記の実施例の結果は、本明細書に記載するヌクレアーゼ試薬がTCRα発現を欠く初代細胞を効果的に生成させうることを実証している。本明細書に記載するLHE酵素および変異体の重要な目標は、がん、自己免疫およびウイルス感染を処置するためのTCRα欠損T細胞の生成である。TRACターゲティングLHEを第二のCAR試薬と組み合わせてがんおよび他の疾患を処置するためのT細胞を生産するという治療戦略案を模式的に図解する図12を参照されたい。TCRA_S02ターゲティングLHEとTrex2とをIVT-mRNAの形態で送達した本発明者らの最初の研究は、有望ではあるが最適とはいえない総合的なTRAC遺伝子破壊率を示した。限定するわけではないが、TCRα破壊率が高くなれば、製品製造が簡単になり、開発コストが低減するであろう。
TRACターゲティングLHEの効率を改良しうるキメラエンドヌクレアーゼ構造を作出した。本明細書で述べるように、TALEタンパク質はユニークなモジュール様式のDNA認識を提供する。そこで本発明者らは、TCRA_S02ターゲットに隣接するターゲット配列を認識するTALEリピートのアレイをTCRA_S02ターゲティングLHEに融合すれば、ヌクレアーゼとその基質の共局在を効果的に強化することができるのではないかと推論した。キメラエンドヌクレアーゼとその認識配列(SEQ ID NO:3)を模式的に図解する図13を参照されたい。次に、このキメラエンドヌクレアーゼ(SEQ ID NO:13によってコードされるSEQ ID NO:14)-「MegaTAL」と名付けられた構造-を、上述のインビトロ転写法によってmRNAに転化した。次に、TCRA_S02ターゲティングMegaTALとTrex2エキソヌクレアーゼをコードするIVT-mRNA種をエレクトロポレーションによって初代ヒトT細胞に送達した。これらのヌクレアーゼ試薬を一過性に発現させるこの方法は、細胞表面からの極めて効率のよいTCRαタンパク質の除去をもたらした。図14を参照されたい。細胞の>65%がTCRα発現を欠いていたことから、この図は、megaTALとTrex2エキソヌクレアーゼをコードするIVT-mRNA種で処理した初代T細胞におけるTCRα発現のフローサイトメトリー解析を使って、このアプローチの有効性を実証している。
実施例6: Trex2との融合によってTCRAターゲティングTALE-LHE融合物を改良し、単一のmRNA種から発現される三成分融合タンパク質による超高効率TCRA遺伝子破壊を可能にした。
次に、TALアレイ、TCRA.S02ターゲティングLHE、およびTrex2を含む融合タンパク質を発現する単一のmRNA種を送達することによる効率のよいTCRA遺伝子破壊の達成を評価した。インビトロ転写と、それに続くポリアデニル化およびキャッピングが容易になるように、T7プロモーターを含有するベクターに、この三成分融合タンパク質(SEQ ID NO:15によってコードされるSEQ ID NO:16)を入れた。結果として生じたmRNAをエレクトロポレーションによって初代ヒトT細胞に送達し、72時間後に、細胞表面でのCD3複合体の発現をフローサイトメトリーによって評価した(図16)。対照試料には、非トランスフェクト初代ヒトT細胞、TCRA.S02ターゲティングMegaTALをトランスフェクトしたT細胞、TCRA.S02ターゲティングMegaTALを、別個に合成したTrex2コードmRNA種と同時トランスフェクトした試料を含めた。Trex2を与えた試料では、TCRA.S02ターゲティングMegaTALとは別個に与えたものも、TCRA.S02ターゲティングMegaTALとの直接融合物として与えたものも、CD3陰性細胞のパーセンテージの増加を示したことから、これらの試料におけるTCRA遺伝子破壊率の向上が示された。
参考文献
Figure 0006450371
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Claims (27)

  1. T細胞受容体α定常遺伝子(TRAC)内のターゲット核酸配列を開裂する、I-OnuI変異体であって、配列番号2の野生型配列に関して19、24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、77、78、80、82、138、159、168、178、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、207、223、225、227、229、231、232、234、236、238、240からなる群より選択される位置に少なくとも10個のアミノ酸置換を含み、かつ配列番号6、配列番号8、または配列番号10のタンパク質配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、前記I-OnuI変異体
  2. ターゲット核酸配列 配列番号3を開裂する、請求項1記載の変異体。
  3. 配列番号2に関して19、24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、77、78、80、82、138、159、168、178、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、207、223、225、227、229、231、232、234、236、238、240からなる群より選択される位置に少なくとも15個のアミノ酸置換を含む、請求項1または2記載の変異体。
  4. 配列番号2に関して19、24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、77、78、80、82、138、159、168、178、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、207、223、225、227、229、231、232、234、236、238、240からなる群より選択される位置に少なくとも20個のアミノ酸置換を含む、請求項1または2記載の変異体。
  5. 配列番号2に関して19、24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、77、78、80、82、138、159、168、178、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、207、223、225、227、229、231、232、234、236、238、240からなる群より選択される位置に少なくとも25個のアミノ酸置換を含む、請求項1または2記載の変異体。
  6. 配列番号6、配列番号8、または配列番号10のタンパク質配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の変異体。
  7. 配列番号6、配列番号8、および配列番号10からなる群より選択されるタンパク質配列を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の変異体。
  8. 核酸結合ドメイン、触媒ドメイン、末端エピトープタグ、および蛍光タンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの追加タンパク質ドメインに融合された請求項1〜7のいずれか一項記載のI-OnuI変異体を含む、キメラエンドヌクレアーゼ。
  9. 追加タンパク質ドメインがTALEおよびジンクフィンガードメインからなる群より選択される核酸結合ドメインである、請求項8記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
  10. 配列番号14および配列番号16のMegaTAL TCRA_S02タンパク質配列である、請求項9記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
  11. 追加タンパク質ドメインが、ヌクレアーゼ活性、ポリメラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、メチラーゼ活性、トポイソメラーゼ活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、リコンビナーゼ活性からなる群より選択される触媒活性を有する、請求項8または10記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
  12. 触媒ドメインが、5'-3'エキソヌクレアーゼである、請求項11記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
  13. 追加タンパク質ドメインがペプチドリンカーによってI-OnuI変異体に融合されている、請求項8〜12のいずれか一項記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項記載のI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼをコードする、ポリヌクレオチド。
  15. 請求項14記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  16. 請求項1〜13のいずれか一項記載のI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼを細胞内に導入する工程を含む、細胞内のTRAC遺伝子を修飾するためのインビトロまたはエクスビボの方法。
  17. DNA末端プロセシング酵素を細胞に導入することによって突然変異誘発を増加させる、請求項16記載の方法。
  18. DNA末端プロセシング酵素が、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含む同じベクターによってコードされるトランスジーンとして、I-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼと共に細胞に導入される、請求項17記載の方法。
  19. DNA末端プロセシング酵素が3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項17または18記載の方法。
  20. DNA末端プロセシング酵素がTREX2である、請求項19記載の方法。
  21. DNA末端プロセシング酵素が一本鎖TREX2ポリペプチドである、請求項19記載の方法。
  22. レアカッターエンドヌクレアーゼの核酸開裂部位の周囲にあるTRAC遺伝子の少なくとも1つの領域とホモロジーを共有する少なくとも1つの配列が隣接している導入されるべき配列を含むドナーマトリックスを導入する工程を含む、請求項16記載の方法。
  23. 前記細胞が、T細胞、造血幹細胞、リンパ球前駆細胞、またはCD34+細胞である、請求項18〜22のいずれか一項記載の方法。
  24. 細胞を含む、対象における癌を処置または防止するための医薬であって、該細胞が、請求項1〜13のいずれか一項記載のI-OnuI変異体またはキメラエンドヌクレアーゼを該細胞内に導入することによって修飾されたT細胞受容体αをコードする遺伝子を含み、かつ腫瘍抗原を認識するシグナル伝達分子が、該細胞内に導入される、医薬。
  25. シグナル伝達分子が、キメラ抗原受容体である、請求項24記載の医薬。
  26. 前記細胞が、T細胞、造血幹細胞、リンパ球前駆細胞、またはCD34+細胞である、請求項24または25記載の医薬。
  27. 請求項15記載のベクターを含む、対象における癌を処置または防止するための医薬。
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