JP6332618B2 - スクライブ用カッターホイール並びにスクライブ装置 - Google Patents
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Description
強化ガラスの特徴は、圧縮応力層の影響で外力に対し割れにくい性質を有する反面、一旦、ガラス板表面に亀裂が生じて残留引張応力が存在するガラス板内部まで進むと、今度は逆に亀裂が深く浸透しやすくなる性質を有している。
しかし、強化ガラス板の場合は、その表面層の残留応力の影響でガラス板端部に刃先を食い込ませるのに強い押圧荷重を必要とし、特に図8に示すような端面Rを面取りした基板では刃先がすべりやすいことからさらに強い押圧荷重を必要として、基板端部での衝突時の衝撃が大きくなる。このため、強化ガラス板の端部にカケが生じたり、ガラス板端部から破断して不規則な亀裂が先走ったりすることがある。また、カッターホイール側にも強化ガラス板端部との強い衝突で刃先の摩耗や刃こぼれ等が生じやすく、使用寿命が短くなる。
しかし、強化ガラス板の場合には、刃先を押し下げてガラス板表面に当接させたときに、ガラス板表面層への刃先の食い込みが非常に悪く、そのため、スリップが発生してスクライブ加工が困難となる場合がある。また、刃先を食い込ませるために強い押圧荷重でスクライブすると、強化ガラス板内部の残留引張応力の影響で一挙に破断して完全分断したり、刃先の先端角度を小さくすると、不規則な亀裂が刃先の進行方向前方に生じる先走りが発生しやすくなったりするなどの不具合が発生することがある。
これにより、放電加工の治具電極を左右の傾斜面に押しつけるだけで、幅狭で微細な刃先領域を容易かつ精密に加工することができるとともに、放電加工によって切除した窪み部は、スクライブ時に加工すべきガラス板に接触してスクライブする部分ではないので、研磨仕上げ等の後処理を必要とせず、そのまま製品として使用することができる。
図1は本発明に係るスクライブ装置を示すものであって、脆性材料基板Wを載置して保持するテーブル1を備えている。脆性材料基板としては、例えばガラス基板や、低温焼成セラミックスや高温焼成セラミックス等からなるセラミック基板、シリコン基板、化合物半導体基板、サファイア基板、石英基板などが挙げられる。本実施例においては、脆性材料基板として強化ガラス板を用いた。テーブル1は、水平なレール2に沿ってY方向(図1の前後方向)に移動できるようになっており、モータ(図示せず)によって回転するネジ軸3により駆動される。さらに、テーブル1はモータを内蔵する回転駆動部4により水平面内で回動できるようになっている。
カッターホイールAは、工具特性に優れた硬質材料から作られ、かつ、周面に刃先領域20を備えている。刃先領域20は、刃先となる円形の稜線21と、この刃先稜線21から続く左右斜面22a、22bとによって形成されている。左右斜面22a、22bの傾斜端は窪み部23のエッジに連なっている。窪み部23は、図3に示すように、左右斜面22a、22bを延長した仮想傾斜面24a、24bをえぐるようにして形成されており、これにより刃先領域20の左右幅L1が細くなっている。
また、カッターホイールAの直径は約0.5mm〜6.0mm、好ましくは1.0mm〜3.0mm、厚みL2は約0.4mm〜1.2mmのサイズで形成され、刃先領域20の左右斜面22a、22bによって形成される刃先稜線の角度αは、125°以上の鈍角、好ましくは140°〜160°で形成されている。また、窪み部23の深さは仮想傾斜面24a、24bから1.0μm〜30.0μm、好ましくは3.0μm〜10.0μmとなっている。
本実施例では、カッターホイールAの直径を2.5mm、厚みL2を0.65mmとし、刃先角度αを150°とし、刃先領域20の幅L1を15μmとした。また、刃先の食い込み深さは通常1.0μm〜5.0μmであり、好ましくは1.0μm〜3.0μmである。
図5に示すように、円形の刃先稜線21’と、これに連なる左右の傾斜面25、25を備えたカッターホイールBを、放電加工可能な硬質材料、例えば超硬合金または焼結ダイヤモンド、導電性を有する単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドによって作製する。この場合、左右の傾斜面25、25によって形成される刃先角度αを、製品となるカッターホイールAの刃先角度と同じにする。このようなカッターホイールBは、刃先角度αが製品となるカッターホイールAの刃先角度と同じであれば、一般的なスクライブ用カッターホイールをそのまま利用することもできる。また、カッターホイールBとして刃先稜線21’部分に溝を設けたカッターホイールを用いることもできる。
このカッターホイールBの刃先稜線21’近傍の先端部分(図2の刃先領域20となる部分)を残すとともに、先端部分に続く左右の傾斜面25、25の一部を放電加工により切除することにより窪み部23(図3参照)を形成する。
これにより、図5で示したカッターホイールBに追加加工を行うことによって本発明のカッターホイールAを形成することができる。
この方法では、カッターホイールBの軸穴26に回転軸(図示せず)を嵌め込み、カッターホイールBを回転させながら、切除すべき部分の反転形状を有する雌型27を備えた治具電極28を、回転するカッターホイールBの左右の傾斜面25、25に対して同時に、または交互に押しつけることにより傾斜面25の一部を1.0μm〜30.0μmの深さで切除する。これにより、カッターホイールBの刃先稜線21’に続く左右の傾斜面25、25の一部が陥没し、刃先領域20の幅L1(図3参照)を狭くする窪み部23が形成されたカッターホイールAが作製される。
図4は上記実験値から、カッターホイールAが強化ガラスWの端部に乗り上げたときの状態を推測した拡大断面図である。刃先稜線21のガラス板Wへの食い込み深さL3を3μmとすると、刃先が食い込んだ部分の幅は、刃先角度150°から計算して刃先領域20の幅L1及びスクライブ予定幅の22μmより小さい約15μmとなる。このように、低荷重であっても有効なイニシャルクラックが形成されるのは、細く加工した刃先領域20の部分に荷重が集中するためであると考えられる。このイニシャルクラックを形成した後、引き続いてカッターホイールAを上記押圧荷重で押しつけながら進行させることにより、強化ガラスWにスクライブラインを刃先領域20の幅L1で効率よく形成することができる。
また、本実施例では、幅狭の刃先領域20は、左右幅を刃先領域20より広くしたカッターホイールAのボディ部分に連なって形成されているので、スクライブに必要な強度を保持することができ、スクライブ中の破損を抑制することができる。
L1 刃先領域の幅
L2 カッターホイールの幅
W 強化ガラス
α 刃先角度
1 テーブル
10 スクライブヘッド
11 ホルダ
20 刃先領域
21 刃先稜線
22a、22b 左右斜面
23 窪み部
Claims (3)
- 刃先となる円形の稜線と、当該稜線から続く左右斜面とからなる刃先領域を備えたカッターホイールであって、前記左右斜面によって形成される刃先角度が125°以上の鈍角であり、前記刃先領域の幅が、予定されるスクライブラインの幅と同等もしくはそれ以下の値であって10μm〜30μmであり、前記カッターホイールの左右幅が前記刃先領域の幅より大きく形成され、当該カッターホイールの左右側面と前記稜線とを結ぶ左右の傾斜面に窪み部を有するスクライブ用カッターホイール。
- 前記カッターホイールの材料が放電加工可能な超硬合金または焼結ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドである請求項1に記載のスクライブ用カッターホイール。
- 前記請求項1または2に記載のカッターホイールを、ホルダを介して保持するスクライブヘッドと、加工すべき脆性材料基板を載置するテーブルとを備え、前記スクライブヘッドを前記脆性材料基板に対して相対的に移動させることにより、前記カッターホイールの刃先で前記脆性材料基板の表面に有限深さのスクライブラインを形成するようにしたスクライブ装置。
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