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JP6301095B2 - 自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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JP6301095B2 JP2013202462A JP2013202462A JP6301095B2 JP 6301095 B2 JP6301095 B2 JP 6301095B2 JP 2013202462 A JP2013202462 A JP 2013202462A JP 2013202462 A JP2013202462 A JP 2013202462A JP 6301095 B2 JP6301095 B2 JP 6301095B2
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Description

本発明は、自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
地球環境問題である温暖化の対策として、自動車の軽量化による燃費向上を図るべく、自動車パネル用の板材料を従来の鋼板からアルミニウム合金板に置換することが試みられている。自動車パネル用としては、成形性や塗装焼付加工性に比較的優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板が着目されている。
自動車パネル用板材に適用するアルミニウム合金板には、多岐にわたる特性要求があるが、その一つとして、優れた成形性(深絞り性、曲げ加工性など)を有していることが求められる。アルミニウム合金板の曲げ加工性の改善方法としては、キューブ方位を集積させる方法が提案されている(特許文献1)。しかし、キューブ方位を有する結晶粒の割合を多くした場合、結晶方位の異方性により、材料特性に異方性が生じてプレス成形性が悪化する。これは、異方性を有する材料をプレス成形する場合、プレス成形時に特定方向への材料流入が大きくなり、流入の小さい方向で破断が生じやすくなるためである。
特開2003−226926号公報
上記のごとく、曲げ加工性向上の対策を施せばプレス成形性が悪化する場合もあり、両者を同時に具備するアルミニウム合金板を作製することは容易ではない。また、自動車パネル用アルミニウム合金板には、良好なプレス成形性及びフラットヘム加工が可能な優れた曲げ加工性を具備するだけではなく、優れた形状凍結性、優れた塗装焼付硬化性、及び優れた耐食性という多岐にわたる要求特性を全て具備することが求められている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、プレス成形性、フラットヘム加工が可能な曲げ加工性、形状凍結性、塗装焼付硬化性、及び耐食性のすべてに優れた自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することにある。
本発明の一態様は、Si:0.4〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.2%、Cu:0.001〜1.0%、Zn:0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下を含有し、さらにMn:0.30%以下、Cr:0.20%以下、Zr:0.15%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
表面から板厚の1/4深さ部分における結晶方位分布関数解析によるCube方位密度分布が10〜25の範囲であり、
圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r値の平均値rave(但し、rave=(r0+r90+r45×2)/4)が0.50以上、
r値の面内異方性指数Δr(但し、Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.30以下であり
平均結晶粒径が50μm以下であり、かつ、
製造時の最終熱処理後1か月室温時効させた状態での耐力が130MPa以下であるとともに、さらに170℃の温度に20分保持する加熱を施した後の耐力が200MPa以上であるという特性を有することを特徴とする自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板にある。
本発明の他の態様は、上記第1の態様の自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造する方法であって、
Si:0.4〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.2%、Cu:0.001〜1.0%、Zn:0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下を含有し、さらにMn:0.30%以下、Cr:0.20%以下、Zr:0.15%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる鋳塊を準備し、
該鋳塊を450℃以上の温度で均質化処理した後、100℃/時間以上の冷却速度で350℃未満の温度まで冷却し、さらに380℃〜500℃の温度に再加熱して圧延を開始する熱間圧延を行って、厚みが4〜20mmの板材を作製し、
該板材を、板厚減少率20%以上かつ板厚が2mm以上となるように冷間圧延した後、
350〜580℃の温度で中間焼鈍し、
さらに板厚が0.8〜1.5mmの範囲となるまで、圧下率50.0%〜87.5%の範囲で冷間圧延し、
その後、450〜600℃の温度範囲で溶体化処理を行った後100℃/分以上の平均冷却速度で150℃未満の温度域まで急冷し、
急冷後60分以内に40〜120℃の温度に10〜500分保持する熱処理を行うことを特徴とする自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法にある。
上記自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、上記特定の化学成分を有していると共に、特定の結晶方位分布、特定のr値特性、特定の面内異方性指数Δr、及び特定の平均結晶粒径という要件を全て具備し、さらに、製造時の最終熱処理後1か月室温時効させた状態での耐力が130MPa以下であるとともに、170℃の温度に20分保持する加熱を施した後の耐力が200MPa以上であるという特性を有する。これによって、上述した要求特性を全て満たすものとなる。そして、このような優れた自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、上記製造方法により得ることができる。
上記アルミニウム合金板の化学成分の限定理由は次の通りである。
Si:0.4〜1.5%、
Siは、高強度を得るために必要である。Siは、Mgと共にMg2Siを形成して高強度を得ることができる。Si含有量が0.4%未満の場合には塗装焼付による加熱がなされても十分な強度が得られない。一方、Si含有量が1.5%を超えると、溶体化処理後もしくは最終熱処理完了後の耐力が高くなりすぎ、深絞り性、曲げ性及び形状凍結性が劣る。
Mg:0.2〜1.2%、
Mgは、Siと同様に高強度を得るために必要である。Mg含有量が0.2%未満の場合には塗装焼付時の加熱で十分な強度が得られない。また、Mg含有量が1.2%を超えると、溶体化処理後もしくは最終熱処理後の耐力が高くなりすぎ、深絞り性、曲げ性及び形状凍結性が劣る。
Cu:0.001〜1.0%、
Cuの添加により、さらに強度を増すことができる。Cu含有量が0.001%未満の場合には塗装焼付時の加熱で充分な強度が得られない。また、Cu含有量が1.0%を超える場合には、溶体化処理後もしくは最終熱処理後の耐力が高くなりすぎ、深絞り性、曲げ性及び形状凍結性が劣るとともに、耐食性が劣る。
Zn:0.5%以下、
Znを添加することにより、さらに強度を増すことができ、かつ、表面処理性が向上する。一方、Zn添加量が0.5%を超えた場合には、耐食性が劣ってくる。
Ti:0.1%以下、B:50ppm以下、
Ti及びBは、Al−Mg−Si系合金における微細化剤として通常添加される。その許容量は、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下の範囲である。Ti及びBの添加量がそれぞれ上限値をこる場合には、粗大な金属間化合物が増加するため、深絞り性及び曲げ性が低下する。
Mn:0.30%以下、Cr:0.20%以下、Zr:0.15%以下のいずれか1種または2種以上、
Mn、Cr、Znはいずれも選択的に含有される元素であり、強度を増すことができ、また結晶粒を微細化することができ、深絞り性が向上する。好ましい含有範囲は、Mn:0.30%以下、Cr0.20%以下、Zr:0.15%以下の範囲であり、それぞれの上限の範囲を超えると、溶体化処理後もしくは最終熱処理後の耐力が高くなりすぎ、深絞り性、曲げ性及び形状凍結性が劣るとともに、粗大な金属間化合物が増えてくるため、深絞り性及び曲げ性が低下する。
また、上記アルミニウム合金板は、表面から板厚の1/4深さ部分における結晶方位分布関数解析によるCube方位密度分布が10〜25の範囲にある。これにより、曲げ加工性と深絞り性とを両立可能なように集合組織を最適化することができる。すなわち、Cube方位({100}<001>)は曲げ加工性は向上させるが、深絞り性を低下させる傾向にある。そのため、ランダムな方位に対するCube方位密度分布は10から25になるように制御する。Cube方位密度分布が10未満の場合には曲げ加工性が低下し、25を超える場合には深絞り性が低下するおそれがある。
また、上記アルミニウム合金板は、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r値の平均値rave(但し、rave=(r0+r90+r45×2)/4)が0.50以上である。これにより、非常に優れた深絞り性を確保することができる。上記raveが0.50未満の場合には、深絞り性向上効果が十分には得られない。
また、上記アルミニウム合金板は、r値の面内異方性指数Δr(但し、Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.30以下である。これにより、非常に優れた深絞り性を確保することができる。上記Δrが0.30を超える場合には、プレス加工時に特定方向への材料流入が大きくなり、流入の小さい方向で破断が生じやすくなり、深絞り性向上効果が十分には得られない。
また、上記アルミニウム合金板は、平均結晶粒径が50μm以下である。平均結晶粒径は深絞り時の肌荒れに影響する。平均結晶粒径を上記範囲に制御することにより、深絞り時の表面の肌荒れを防止し、優れた表面性状の自動車用パネルを得ることができる。
次に、上記アルミニウム合金板の製造方法では、上述したごとく、まず上記化学成分を有する鋳塊を作製し、該鋳塊を450℃以上の温度で均質化処理する。均質化処理の加熱温度が450℃未満の場合には、鋳塊偏析の除去や均質化が不十分で、強度に寄与するMg2Si成分の固溶が不十分となり、深絞り性及び塗装焼付硬化性が低下する。
均質化処理後、100℃/時間以上の冷却速度で350℃未満の温度まで鋳塊を冷却する。均質化処理後の冷却の冷却速度が100℃/時間未満の場合には、Mg−Si系化合物が析出し、凝集化するため、深絞り性及び焼き付け硬化性が低下する。
均質化処理後の冷却を上記条件で行った後、さらに鋳塊を380℃〜500℃の温度に再加熱して圧延を開始する熱間圧延を行う。熱間圧延の開始温度が380℃未満の場合には、Mg−Si系化合物が析出し、凝集化するため、深絞り性及び焼き付け硬化性が低下する。熱間圧延の開始温度が500℃を超えると圧延中に結晶粒が粗大化し、リジングマークが発生しやすい材料となる。
上記熱間圧延では4〜20mmの板材を作製する。すなわち、熱間圧延の上り板厚は4〜20mmとする。熱間圧延の上り板厚が4mm未満の場合には、その後の冷間圧延工程で充分な圧下率が得られず、Cube方位の集積が不十分となり曲げ加工性が低下するとともに、溶体化処理後に結晶粒の粗大化が生じ、プレス加工後に肌荒れが生じる。熱間圧延の上り板厚が20mmを超えると、鋳塊組織が最終製品にまで残存し、リジングマークが発生するとともに、最終冷間圧延工程での圧下率が大きく、Cube方位への集積が大きくなり、材料に異方性が生じ、深絞り性が低下する。
上記熱間圧延得られた板材は、板厚減少率20%以上かつ板厚が2mm以上となるように冷間圧延する(中間焼鈍前冷間圧延)。この冷間圧延の板厚減少率が20%未満の場合には、中間焼鈍後の冷間圧延で加工度が大きくなりすぎ過剰にCube方位が形成するため、深絞り性が低下する。また、中間焼鈍前の冷間圧延の上がり板厚が2.0mm以下の場合には、中間焼鈍後の冷間圧延において充分な圧下率が得られず、Cube方位の形成が不十分で曲げ性が低下するとともに、溶体化処理後に結晶粒の粗大化が生じ、プレス加工後に肌荒れが生じるおそれがある。
上記冷間圧延で得られた板材は、350〜580℃の温度で中間焼鈍する。中間焼鈍の処理温度が350℃未満の場合には、再結晶が不十分となり、r値の異方性が生じ、深絞り性が低下する。中間焼鈍の処理温度が580℃を超える場合には、結晶粒が粗大化し、深絞り性や曲げ性が低下する。この中間焼鈍処理はバッチ炉、又は連続焼鈍炉を用いて行うことができる。
上記中間焼鈍を経た板材は、さらに冷間圧延する。この冷間圧延では、最終板厚まで圧延する。自動車パネル用の最終板厚は、通常0.8〜1.5mmである。
最終板厚まで冷間圧延された板材は、450〜600℃の温度範囲で溶体化処理を行った後100℃/分以上の平均冷却速度で150℃未満の温度域まで急冷する。溶体化処理の加熱温度が450℃未満の場合には、析出物の固溶が不十分であり、塗装焼付後に十分な強度が得られず、600℃を超えると共晶融解により深絞り性が低下する。
また、溶体化処理後の冷却工程においては、溶体化処理後の150℃までの冷却速度が100℃/分未満の場合に、粒界に粗大な金属間化合物が析出し、塗装焼付硬化性が低下するとともに、延性が低下するので深絞り性が低下する。
上記溶体化処理後の急冷後60分以内に、上記板材に次の熱処理を施す。溶体化処理後の急冷後に板材を放置した場合には、いわゆる室温時効が進むこととなる。この室温時効を生じさせる放置は、できるだけ短い方が良く、60分以内に制限する。上記溶体化処理後の急冷後の放置が60分を超えると、金属組織におけるGPゾーンが発達し、プレス加工後に170℃程度で塗装焼き付けしても、GPゾーンの分解に時間がかかり塗装焼付硬化性が低下する。
そして、上記溶体化処理後の急冷後60分以内に、上記板材には、40〜120℃の温度に10〜500分保持する熱処理を行う。この熱処理を施すことにより、金属組織にクラスタを形成する。これにより、GPゾーン形成による室温時効硬化を抑制し、良好な深絞り性を維持するとともに塗装焼き付けの170℃程度に加熱した時に短時間で硬化しやすくなる。この熱処理の温度が40℃未満もしくは時間が10分未満の場合には、クラスタの形成が不十分で、塗装焼付硬化性が低下する。この熱処理の温度が120℃を超えるもしくは時間が500分を超える場合には、形状凍結性が低下する。
(実施例1)
上記自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板及びその製造方法にかかる実施例について説明する。本例では、まず、表1に示す複数種類の化学成分組成のアルミニウム合金(合金A〜T)を用いて、同じ製造条件で表4に示す試験材(No.1〜21)を作製し、評価した。
試験材の作製は、まず、表1に示す化学成分組成を有する各合金を半連続鋳造して鋳塊を得、その鋳肌部の表面面削を行った。次いで、表2に示すA1条件(均質化処理〜最終冷間圧延の条件)および表3に示すB1条件(溶体化処理〜最終熱処理の条件)で試験材を作製した。得られた試験材の評価は、最終熱処理後1か月室温時効させた後に行った。各評価の方法及び評価基準は次のとおりである。
<引張試験>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)から、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向になるようにJIS5号試験片をそれぞれ切り出し、JIS Z2241に従って、耐力、r値を測定した。
<形状凍結性>
上記引張試験の結果得られた耐力(ベーク前耐力)が130MPa以下のものを、優れた形状凍結性がある合格品とした。
<深絞り性>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)から直径110.0mmの円板を切り出し、円板に低粘度潤滑油(29cst)を塗布し、エリクセン試験機を用いて、直径50mmの平頭パンチにより、しわ押さえ力10kN、成形速度2.0mm/sで押出し、割れ発生直前の成形高さを測定した。割れ発生直前の成形高さが13.0mm以上のものを、深絞り性が良好な合格品とした。
<塗装焼付硬化性>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)に、170℃の温度に20分保持する加熱をした後、上記と同様の引張試験を行い、耐力(ベーク後耐力)を測定した。耐力が200MPa以上であるものを、塗装焼付硬化性が良好な合格品とした。
<肌荒れ>
深絞り試験した後のサンプルの外観を目し観察し、肌荒れの有無を評価した。
<曲げ加工性>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)に、15%引張予ひずみを付与した後、180°の密着曲げを行った。曲げ試験後、試験片湾曲部の外側の割れの発生有無を肉眼で観察し、割れが生じないものを合格とした。
<耐食性>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)に化成処理液によるリン酸亜鉛処理を施した後に電着塗装を行い、アルミニウムの素地まで達するクロスカットを施して、JIS Z2371規格に従って、塩水噴霧試験を24時間行い、その後、温度50℃−湿度95%の湿潤雰囲気に1か月放置した後、クロスカット部から発生する最大糸錆長さを測定した。最大糸錆長さが4mm以下のものを合格とした。
<リジングマーク>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)から、圧延方向に対して90°の方向の引張試験片を採取し、10%引張変形を加えた後、電着塗装後においてリジングマークの有無を目視観察により判定した。
<平均結晶粒径>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)の圧延面を電解研磨し、偏光フィルターを通して光学顕微鏡組織を倍率100倍で撮影し、ASTM E91比較法に準拠した方法で平均結晶粒を測定した。
試験材1〜21の評価結果を表4に示す。表4から知られるように、試験材1〜10はいずれも、全ての評価結果が良好であった。
一方、試験材11〜21は合金成分が適切でないため、いずれかの評価結果において不合格となった。
試験材11は、Si含有量が少なすぎたため、塗装焼き付け硬化性が悪かった。
試験材12は、Si含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性が悪かった。
試験材13は、Mg含有量が少なすぎたため、塗装焼き付け硬化性が悪かった。
試験材14は、Mg含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性が悪かった。
試験材15は、Cu含有量が少なすぎたため、塗装焼き付け硬化性が悪かった。
試験材16は、Cu含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性が悪く、耐食性も悪かった。
試験材17は、Mn含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性も悪かった。
試験材18は、Cr含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性も悪かった。
試験材19は、Zn含有量が多すぎたため、耐食性が悪かった。
試験材20は、Ti及びBの含有量が多すぎたため、曲げ性および深絞り性が悪かった。
試験材21は、Zr含有量が多すぎたため、1か月室温時効後の耐力が高く形状凍結性が劣り、曲げ性及び深絞り性も悪かった。
Figure 0006301095
Figure 0006301095
Figure 0006301095
Figure 0006301095
(実施例2)
本例では、表1中の1種類の化学成分組成のアルミニウム合金(合金J)を用いて、製造条件を種々変更して試験材(No.22〜49)を作製し、評価した。試験材の作製は、表5〜表7に示すごとく、表2のA1〜A21の条件のいずれか、及び表3のB1〜B8の条件のいずれかを選択し、鋳塊の表面面削までの条件は実施例1と同様として行った。得られた試験材の評価は、実施例1の場合と同様に、最終熱処理後1か月室温時効させた後に行った。また、各評価の方法及び評価基準も実施例1と同様である。なお、本例では以下のように、結晶方位密度も測定した。
<結晶方位密度>
各試験材(最終熱処理後1か月室温時効させたもの)から、25mm×25mmの試験片を切り出し、板面をペーパー研磨することにより板厚1/4面を露出させ、マクロエッチングを行った後、X線反射法により結晶方位密度関数を測定した。
試験材22〜42の評価結果を表5及び表6に示す。また、試験材43〜49の評価結果を表7に示す。表5及び表6から知られるように、試験材22〜32はいずれも、全ての評価結果が良好であった。
一方、試験材33〜42は、均質化処理から冷間圧延までの製造条件が適切ではないため、いずれかの評価項目において不合格となった。
試験材33は、均質化処理温度が低すぎたため、焼き付け塗装硬化性及び深絞り性が低下した。
試験材34は、均質化処理後の冷却速度が低すぎたため、Mg−Si系化合物の析出凝集化が生じ、焼き付け塗装硬化性及び深絞り性が低下した。
試験材35は、熱間圧延開始温度が低すぎたため、Mg−Si系化合物の析出凝集化が生じ、焼き付け塗装硬化性及び深絞り性が低下した。
試験材36は、熱間圧延開始温度が高すぎたため、リジングマークが発生した。
試験材37は、熱間圧延後の板厚が厚すぎたため、リジングマークが発生するとともに、材料に異方性が生じ、深絞り性が低下した。
試験材38は、熱間圧延後の板厚が薄すぎたため、Cube方位の形成が不十分となり、結晶粒が粗大となり肌荒れが生じた。
試験材39は、中間焼鈍前の冷間圧延後の板厚が厚すぎたため、Cube方位が過剰に形成され、深絞り性が低下した。
試験材40は、冷間圧延後の板厚が薄すぎたため、Cube方位の形成が不十分となり、曲げ性が低下するとともに、結晶粒が粗大となり肌荒れが生じた。
試験材41は、中間焼鈍処理の温度が低すぎたため、材料に異方性が生じ、深絞り性が低下した。
試験材42は、中間焼鈍処理の温度が高すぎたため、Cube方位への集積が大きくなり、材料に異方性が生じ、深絞り性が低下するとともに、結晶粒が粗大化し肌荒れが生じた。
また、表7に示すように試験材43〜49は溶体化処理条件及びその後の室温放置条件、最終熱処理が最適ではないために、いずれかの評価項目において不合格となった。
試験材43は、溶体化処理温度が低すぎたため、溶体化が十分に進まず、塗装焼付硬化性が悪かった。
試験材44は、溶体化処理温度が高すぎたため、共晶融解が生じ、深絞り性が悪かった。
試験材45は、焼き入れ速度が低すぎたため、塗装焼付硬化性が悪く、深絞り性も悪かった。
試験材46は、溶体化処理後の室温放置時間が長すぎたため、塗装焼付硬化性が悪く、深絞り性も悪かった。
試験材47は、最終熱処理温度が低すぎたため、塗装焼付硬化性が悪かった。
試験材48は、最終熱処理温度が高すぎたため、形状凍結性が悪く、深絞り性も悪かった。
試験材49は、最終熱処理時間が低すぎたため、塗装焼付硬化性が悪かった。
Figure 0006301095
Figure 0006301095
Figure 0006301095

Claims (2)

  1. Si:0.4〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.2%、Cu:0.001〜1.0%、Zn:0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下を含有し、さらにMn:0.30%以下、Cr:0.20%以下、Zr:0.15%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
    表面から板厚の1/4深さ部分における結晶方位分布関数解析によるCube方位密度分布が10〜25の範囲であり、
    圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r値の平均値rave(但し、rave=(r0+r90+r45×2)/4)が0.50以上、
    r値の面内異方性指数Δr(但し、Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.30以下であり
    平均結晶粒径が50μm以下であり、かつ、
    製造時の最終熱処理後1か月室温時効させた状態での耐力が130MPa以下であるとともに、さらに170℃の温度に20分保持する加熱を施した後の耐力が200MPa以上であるという特性を有することを特徴とする自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板。
  2. 請求項1に記載の自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造する方法であって、
    Si:0.4〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.2%、Cu:0.001〜1.0%、Zn:0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下を含有し、さらにMn:0.30%以下、Cr:0.20%以下、Zr:0.15%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる鋳塊を準備し、
    該鋳塊を450℃以上の温度で均質化処理した後、100℃/時間以上の冷却速度で350℃未満の温度まで冷却し、さらに380℃〜500℃の温度に再加熱して圧延を開始する熱間圧延を行って、厚みが4〜20mmの板材を作製し、
    該板材を、板厚減少率20%以上かつ板厚が2mm以上となるように冷間圧延した後、
    350〜580℃の温度で中間焼鈍し、
    さらに板厚が0.8〜1.5mmの範囲となるまで、圧下率50.0%〜87.5%の範囲で冷間圧延し、
    その後、450〜600℃の温度範囲で溶体化処理を行った後100℃/分以上の平均冷却速度で150℃未満の温度域まで急冷し、
    急冷後60分以内に40〜120℃の温度に10〜500分保持する熱処理を行うことを特徴とする自動車パネル用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
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