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JP6385484B2 - 非発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法 - Google Patents

非発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェノールの総含有量が高いにもかかわらず、後に残る渋味が非常に少なく、後キレのよい非発酵ビールテイスト飲料、及びその製造方法に関する。
ビールとは異なり、発酵工程を経ずに製造される非発酵ビールテイスト飲料は、特別な発酵装置を要することなく製造することができるため、低コストで大量生産するのに向いており、アルコールを含有しないノンアルコール飲料の製造にも適している。一方で、非発酵ビールテイスト飲料には、ビールらしい風味やコク感に劣る傾向がある。特に、麦芽の使用比率が低い非発酵ビールテイスト飲料では、麦芽由来成分による複雑な味感がもたらすコク感が不足しがちである。
非発酵ビールテイスト飲料において、コク感を高める方法としては、原料として使用する麦芽の量を増やす方法が挙げられる。しかしながら、麦芽には、「麦臭さ」や「穀物臭」といわれる特有の臭いの成分も多く含まれており、麦芽を原料とするビールテイスト飲料においては、この麦芽オフフレーバーが官能的に問題となっている。特に、止渇感・ドリンカビリティーを主たる特徴とするビールテイスト飲料では、麦芽オフフレーバーはよりネガティブに働く傾向がある。
非発酵ビールテイスト飲料に「のどにグッとくる飲み応え」及び「飲んだ後のキレの良さ」を増強し、適度にバランスさせることにより、ビールらしい風味を付与する方法としては、例えば特許文献1には、高分子糖と甘味物質を所定の割合で含有させる方法が開示されている。
一方で、ビールテイスト飲料が含有する成分のうち、主に麦芽やホップに由来する成分としてポリフェノールがある。ポリフェノールは、様々な有用な生理作用が知られており、その作用を目的として飲食品へ添加されることも多い。しかしながら、ポリフェノールは渋味や苦味が強く、ポリフェノール含有量の多い飲食品は、苦味や渋味が強く、特に過剰に後に残る渋味により後味が悪くなる。
渋味を呈する飲食品等に、キキョウ科植物の抽出物又はクルクチンを添加することにより渋味をマスキングする方法が提案されている(特許文献1参照。)。また、茶飲料に、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコールを添加することにより、苦味や渋味を改善する方法も提案されている(特許文献2参照。)。さらに、ステビア、アスパルテーム、スクラロース等の甘味料を閾値以下の量で用いることにより、飲食品の渋味や苦味を低減し得ることが知られている(特許文献3参照。)。
その他、シクロデキストリンの包接作用を利用して香気成分を保持するために、米等の澱粉質副原料を含む膠にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させてシクロデキストリンを含有するビールを製造する方法が開示されている(特許文献4参照。)。また、低アルコール無糖飲料において、高感度甘味料と酸味料の含有量を調節することによりアルコール感を抑制する方法も開示されている(特許文献5参照。)。
特公平4−76659号公報 特開平7−274829号公報 特開平10−248501号公報 特開平6−237750号公報 特開2011−036228号公報
キキョウ科植物抽出物やクルクチンは天然物であるために供給量や供給質が不安定であり、高品質で得ることが困難であるという問題がある。また、キキョウ科植物の抽出物、クルクチン、糖アルコールは、呈味への影響が大きく、添加した飲食品本来の味のバランスを崩すおそれがある。
本発明は、ポリフェノールの総含有量が高いにもかかわらず、後に残る渋味が非常に少なく、後キレのよい非発酵ビールテイスト飲料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、非発酵ビールテイスト飲料に充分量のポリフェノールを含有させることによりビールらしいコク感を増大させることができること、及び、シクロデキストリンやソーマチンはポリフェノールによる渋味に対するマスキング作用を有しており、これらを含有させることにより、ポリフェノールの総含有量が高いにもかかわらず、後に残る渋味が非常に少なく、後キレのよい非発酵ビールテイスト飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料、及び非発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、下記[1]〜[]である。
[1] ポリフェノールの総含有量が100ppm以上1500ppm以下であり、シクロデキストリン及びソーマチンからなる群より選択される1種以上のマスキング素材を含有し、
前記ポリフェノールがプロシアニジン類又はプロシアニジン類を含有する混合物であり、
前記マスキング素材がシクロデキストリンの場合、シクロデキストリンの含有量が100〜5000ppmであり、
前記マスキング素材がソーマチンの場合、ソーマチンの含有量が0.5〜10ppmであることを特徴とする、非発酵ビールテイスト飲料。
] 前記シクロデキストリンが、γ−シクロデキストリンである、前記[1]非発酵ビールテイスト飲料。
] 高分子糖の含有量が8g/L以上である、前記[1]又は[2]の非発酵ビールテイスト飲料。
] 甘味料、酸味料、カラメル、及びアルコールからなる群より選択される1種以上を含有する、前記[1]〜[]のいずれかの非発酵ビールテイスト飲料。
] ポリフェノールの総含有量が100ppm以上1500ppm以下となるように、粗精製又は精製されたポリフェノールを原料とし、前記ポリフェノールがプロシアニジン類又はプロシアニジン類を含有する混合物であり、
マスキング素材としてシクロデキストリン及びソーマチンからなる群より選択される1種以上を原料とし、
前記マスキング素材がシクロデキストリンの場合、飲料中のシクロデキストリンの含有量が100〜5000ppmとなるように調整し、
前記マスキング素材がソーマチンの場合、飲料中のソーマチンの含有量が0.5〜10ppmとなるように調整することを特徴とする、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。
本発明により、ビールらしいコク感と、後に残る渋味が非常に少なく、後キレのよい非発酵ビールテイスト飲料を得ることができる。
本発明及び本願明細書において、非発酵ビールテイスト飲料とは、発酵工程を経ずに製造され、アルコール含有量に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する発泡性飲料である。すなわち、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。非発酵ビールテイスト飲料としては、具体的には、発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料が挙げられる。その他、発酵工程を経ずに製造された飲料を、アルコール含有蒸留液及び炭酸ガスと混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。
本発明及び本願明細書において、ポリフェノールとは、1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称を意味する。ポリフェノールは、リンゴ、麦芽、ホップ、お茶、ブドウ、ブドウ種子、カカオ、シソの葉、ピーナッツ、松樹皮、黒豆、柑橘など様々な天然物に含まれており、特徴的な苦味や渋味を有する。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が含有するポリフェノールとしては、特にプロシアニジン類又はプロシアニジン類を含有する混合物であることが好ましい。本発明及び本願明細書において、プロシアニジン類とは、カテキン類のn重合体(n≧1、但し、nは整数)又はそれらの総称であり、n=1のカテキンも含む。カテキン類としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンが含まれるが、特にこれらに限定されるものではない。プロシアニジン類としては、カテキン類のn重合体又はそれらの混合物であれば特に限定されるものではない。また、天然のプロシアニジン類でもよく、合成されたプロシアニジン類であってもよい。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、ポリフェノールの総含有量(総ポリフェノール含有量)が100ppm以上である。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、充分量のポリフェノールを含有するため、総ポリフェノール含有量が低い非発酵ビールテイスト飲料に比べて、複雑な味やコクが高められている。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料の総ポリフェノール含有量としては、150ppm以上が好ましく、200ppm以上がより好ましい。なお、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料の総ポリフェノール含有量は、クエン酸第二鉄アンモニウムを加え発色させて比色定量する方法により測定できる。
非発酵ビールテイスト飲料中の総ポリフェノール含有量を100ppm以上に調節する方法としては、例えば、ポリフェノール含有量の多い原料を用いる方法が挙げられる。中でも、麦芽やホップは、ポリフェノール含有量が多いことに加えて、ビールテイスト飲料の原料としても汎用されている。そこで、原料として用いる麦芽やホップとして、ポリフェノール含有量の多い品種を選択して用いることや、用いる麦芽やホップの量を調節することにより、非発酵ビールテイスト飲料中のポリフェノール含有量を高めることができる。また、天然物から抽出された、粗精製又は精製されたポリフェノールを原料として添加してもよく、合成されたポリフェノールを原料として添加してもよい。天然物から抽出・精製されたポリフェノールとしては、リンゴ、麦芽、ホップ、ブドウ種子、黒豆等から抽出されたポリフェノールや、茶から抽出されたカテキン類等が挙げられる。例えば、麦芽穀皮部分を80℃以上の温水に接触させることにより、ポリフェノールを溶出させることができ、この溶出されたポリフェノールを原料として添加してもよい。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、1種類の天然物由来のポリフェノールを含有していてもよく、2種類以上の天然物由来のポリフェノールを含有していてもよい。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が含有するポリフェノールとしては、特に限定はされないが、リンゴ由来ポリフェノール、麦芽由来ポリフェノール、ホップ由来ポリフェノール、茶由来ポリフェノール、黒豆由来ポリフェノール、及びブドウ種子由来ポリフェノールからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、リンゴ由来ポリフェノール、麦芽由来ポリフェノール、及びホップ由来ポリフェノールからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、リンゴ由来ポリフェノール及びホップ由来ポリフェノールからなる群より選択される1種以上であることがさらに好ましい。
リンゴ等の天然物からのポリフェノールの抽出・(粗)精製は、例えば、搾汁果汁や抽出液から精製することにより行うことができる。搾汁方法としては、リンゴ等の原料を洗浄し、そのまま又は亜硫酸を添加しながら破砕、圧搾により搾汁果汁を得、好ましくはペクチン分解酵素を添加する。得られた搾汁果汁は、遠心分離処理、濾過処理等の手段により清澄果汁としてもよい。また、抽出方法としては、洗浄した原料をアルコール(エタノール、メタノール等)と混合して破砕し、そのまま浸漬及び圧搾、又は加熱還流しながら抽出し、次いで減圧濃縮によりアルコールを留去した後、遠心分離処理及び濾過処理、又は有機溶媒(ヘキサン、クロロホルム等)による分配処理及び濾過処理を行ない、清澄抽出液を得る方法を挙げることができる。
精製方法としては、ポリフェノール類を選択的に吸着かつ溶離できる吸着剤、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、陰イオン交換樹脂、オクタデシル基化学結合型シリカゲル(ODS)等を充填したカラムに、上記の清澄果汁又は清澄抽出液を通すことによりポリフェノール画分を吸着させる。次いで、蒸留水を通すことにより洗浄した後、20〜100容量%アルコール(例えばエタノール)溶液、好ましくは約50容量%アルコール溶液をカラムに通すことによりポリフェノール画分が溶出、回収できる。当該ポリフェノール画分は、一般的に、単純ポリフェノール化合物としてカフェー酸誘導体、p−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類(カテキン類)、フラボノール類(ケルセチン配糖体類)、ジヒドロカルコン類(フロレチン配糖体類)など、また高分子ポリフェノール化合物として縮合型タンニン類などにより、大部分が占められる。
得られたポリフェノール溶液を濃縮処理することによりポリフェノール液体製剤を得ることができる。当該濃縮処理としては、減圧濃縮することによりアルコールを留去することが好ましい。また、得られたポリフェノール液体製剤には、リンゴ酸等の有機酸を添加することも好ましい。さらに、当該ポリフェノール液体製剤をそのまま又はデキストリン等の粉末助剤を添加した後に噴霧乾燥又は凍結乾燥を行ない、ポリフェノール粉末製剤を得ることができる。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、これらのポリフェノール画分、ポリフェノール液体製剤、又はポリフェノール粉末製剤を原料として添加することにより製造し得る。
ポリフェノールは、ビールテイスト飲料において味感に寄与し、コク感をもたらす効果があるが、それ自体が渋味や苦味が強い。このため、非発酵ビールテイスト飲料にポリフェノールを補完した場合には、コク感や複雑味を増大させることができるが、過剰に後に残る渋味により後キレが悪くなるという問題がある。本発明においては、ポリフェノール由来の渋味に対するマスキング素材を含有させることにより、ポリフェノール含有量を一定量以上にすることによってコク感を付与しつつ、後キレの良い非発酵ビールテイスト飲料を製造することができる。当該マスキング素材としては、シクロデキストリン又はソーマチンが挙げられる。すなわち、非発酵ビールテイスト飲料において、ポリフェノールと、マスキング素材としてシクロデキストリン及びソーマチンからなる群より選択される1種以上とを原料とすることにより、後キレを悪化させることなく、コク感を向上させることができる。
なお、本発明及び本願明細書において、非発酵ビールテイスト飲料の「後キレ」とは、後味の消えやすさを意味する。「後キレがよい」飲料とは、後味が速やかに消えてしまう飲料であり、「後キレが悪い」飲料とは、苦味や渋味、甘味等の呈味が飲料を飲み終えた後にも残る飲料である。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料としては、マスキング素材として、シクロデキストリンのみを含有していてもよく、ソーマチンのみを含有していてもよく、シクロデキストリンとソーマチンの両方を含有していてもよい。
シクロデキストリンには、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリンの3種類があるが、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が含有するシクロデキストリンは、これら3種のうちのいずれであってもよく、これら3種のうちの2種類以上を適宜組み合わせたものであってもよい。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料としては、ポリフェノールの渋味に対するマスキング作用が非常に優れていることから、β−シクロデキストリンとγ−シクロデキストリンの少なくとも一方を含有するものが好ましく、少なくともγ−シクロデキストリンを含有するものがより好ましい。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料がシクロデキストリンを含有する場合、シクロデキストリンの含有量は、ポリフェノールの渋味に対するマスキング作用を奏するために充分な量であれば特に限定されるものではなく、当該飲料のポリフェノールの含有量や目的とする味品質に応じて適宜調整することができる。例えば、シクロデキストリンの含有量を100〜5000ppm、好ましくは200〜3000ppm、より好ましくは300〜2000ppm、さらに好ましくは500〜1000ppmとすることにより、ポリフェノールの渋味をより効果的にマスキングすることができる。
ソーマチンは高感度甘味料の1種であり、それ自身が甘味を呈する。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料がソーマチンを含有する場合、ソーマチンの含有量は、ポリフェノールの渋味に対するマスキング作用を奏するために充分な量であり、かつソーマチン自身の甘味が悪影響を与えない量であれば特に限定されるものではなく、当該飲料のポリフェノールの含有量や目的とする味品質に応じて適宜調整することができる。例えば、ソーマチンの含有量を0.5〜10ppm、好ましくは0.7〜8ppm、より好ましくは1〜5ppmとすることにより、ソーマチンの甘味による影響を抑制しつつ、ポリフェノールの渋味をより効果的にマスキングすることができる。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、麦芽や麦類を原料とするものであってもよく、麦芽等を原料としないものであってもよい。原料、特に含炭素化合物を含有する原料全体に占める麦芽の使用比率が低い非発酵ビールテイスト飲料は、コク感等が不足する傾向にあるが、充分量のポリフェノールを含有させることにより、コク感を補うことができる。このため、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料としては、含炭素化合物を含有する原料全体に占める麦芽の使用比率が50質量%未満であるものが好ましく、含炭素化合物を含有する原料全体に占める麦芽の使用比率が25質量%未満であるものがより好ましく、原料として麦芽を使用しないものがさらに好ましい。ここで「麦芽の使用」とは、非発酵ビールテイスト飲料に対し、麦芽を実質的な量で配合することを意味する。例えば、香料等の原料として麦芽が用いられており、麦芽が香料として非発酵ビールテイスト飲料に少量配合された場合は、原料として麦芽を使用して製造したことに該当しない。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料としては、高分子糖を含有することが好ましい。高分子糖を含有することにより、ボディ感を増大させることができる。特に、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が、麦芽使用量が少ない又は麦芽を原料として使用していない場合であっても、ポリフェノールと高分子糖を含有することにより、ビールらしいコク感とボディ感を共に有することができる。
高分子糖とは、各種の糖がグリコシド結合によって重合した高分子化合物をいう。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が含有する高分子糖としては、非発酵性糖質であることが好ましい。高分子糖には、例えば、デキストリン、難消化性デキストリン等のデンプン分解物や、ポリデキストロース、イヌリン等が含まれる。高分子糖は、分子量が低すぎると、非発酵ビールテイスト飲料のボディ感改善効果が不充分となるおそれがある。
デンプン分解物とは、デンプンを酵素及び/又は酸を用いて適当な分子量にまで分解したものを総称する。デンプン分解物としては、デンプンを水に分散し、これに酵素(例えば、アルファーアミラーゼ)及び/又は酸(例えば、塩酸や蓚酸)を添加し、加熱して糊化して加水分解したデキストリン、デンプンを酸焙焼して得られるデキストリンにアルファーアミラーゼなどの酵素を作用させて得られる難消化性デキストリン等が例示され、必要に応じて脱色、脱イオンなどの精製をし、液状、或は噴霧乾燥、ドラム乾燥などで粉末状にして利用できる。また、これらに水素添加した還元デンプン分解物も同じように効果があるのでこれも包含する。
これらデンプン分解物の中でも、非発酵ビールテイスト飲料のボディ感改善効果を考慮すると、DE24以下のものが適している。DEが24を越えると、非発酵ビールテイスト飲料のボディ感改善効果が弱く、風味のバランスが悪くなるおそれがある。好ましくは、デンプン分解物のDEは20以下であり、より好ましくは17以下である。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料に含まれる高分子糖の量は、濃度約8mg/mL以上であることが好ましく、12〜50mg/mLであることがより好ましく、16〜32mg/mLであることがさらに好ましい。高分子糖の濃度が約8mg/mL未満になると、非発酵ビールテイスト飲料のボディ感改善効果が弱くなるおそれがある。高分子糖の濃度が50mg/mLを超えると、非発酵ビールテイスト飲料の風味が悪くなる場合がある。
ビールテイスト飲料において、泡品質は重要な外観品質である。ビールの泡は、主に麦芽由来の気泡性タンパク質によるものであり、麦芽を使用しない又は麦芽の使用比率が低いビールテイスト飲料は、気泡性タンパク質の含有量も少ないため、ビール様の泡が立ちにくい場合がある。一方で、ポリフェノールはタンパク質等の含窒素化合物と複合体を形成しやすいが、当該複合体は混濁の原因となる場合がある。このため、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、窒素を含有していない気泡素材を含有することが好ましい。窒素を含有していない気泡素材としては、サポニン、アルギン酸エステル、増粘多糖類等が挙げられる。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料としては、サポニン、アルギン酸エステル、アカシアガム、キサンタンガム、及びグァーガムからなる群より選択される1種以上からなる気泡素材を含有することが好ましい。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が気泡素材を含有する場合、飲料中における気泡素材の含有量は、所望の泡品質を達成するために充分量であればよく、非発酵ビールテイスト飲料の種類、気泡素材の種類等を考慮して適宜調整することができる。本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料における気泡素材の含有量としては、50ppm以上であることが好ましい。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、ビール特有の爽やかな苦味を再現するために、ホップ又はホップ抽出物(ホップエキス)を含有することが好ましい。ホップ又はホップ抽出物とは、ホップの葉やその磨砕物、これらを水や熱湯で抽出した抽出液、抽出液の濃縮物や乾燥物を指す。ホップ又はホップ抽出物の添加量は、ホップに由来する風味が与えられる量であり、例えばホップに含まれる代表的な苦味成分であるα酸の含有量を目安としてもよい。例えば、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料に含有させるホップ等の含有量としては、飲料中のα酸含有量が概ね0.005〜2質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%となる量が挙げられる。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料は、本発明の目的を損なわない範囲において、酸味料(酸類)、甘味料(ただし、ソーマチンを除く。)、酵母エキス、香料、着色料、苦味料、香草等の原料を含有することができる。酸味料としては、乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸等の有機酸や、塩酸、リン酸等の鉱酸、及びこれらの塩類が例示できる。香料としては、モルトフレーバー、ホップフレーバー、ビールフレーバー、アルコールフレーバー、カラメルフレーバー等を挙げることができる。着色料としては、カラメル等が挙げられる。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が酸類を含有する場合には、飲料のpHが3.0〜4.6、好ましくは3.0〜4.0になるように、酸類の添加量を調整することが好ましい。飲料に添加する酸類の量が多すぎると、酸味が強調されてしまい、飲み辛くなる。酸類の量を、飲料のpHが3.0〜4.6程度になるように調節して添加することにより、製造される非発酵ビールテイスト飲料において、香味のバランスをより改善させることができる。
当該甘味料としては、糖類、糖アルコール類、甘味性のアミノ酸、高感度甘味料等が挙げられる。糖類としては、ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖等の単糖類;スクロース、マルトース、ラクトース、異性化乳糖、イソマルツロース(パラチノース(登録商標))等の二糖類;フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等のオリゴ糖類等が挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール等の単糖アルコール類;マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール等の2糖アルコール類;マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の3糖アルコール類;オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコール類等が挙げられる。甘味性のアミノ酸としては、グリシン又はアラニンが挙げられる。高感度甘味料としては、アセスルファムK、アスパルテーム、ステビア、酵素処理ステビア、スクラロース等が挙げられる。 本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料が甘味料を含有する場合、当該甘味料としては、カロリーを低く抑えることができるため、高感度甘味料が好ましい。
当該苦味料としては、製品である非発酵ビールテイスト飲料において、ビールと同質若しくは近似する苦味を呈するものであれば特に限定されるものではなく、ホップ中に含まれている苦味成分であってもよく、ホップには含まれていない苦味成分であってもよい。当該苦味料としては、具体的には、マグネシウム塩、カルシウム塩、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ナリンジン、クワシン、イソα酸、テトライソα酸、β酸の酸化物、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン等の苦味付与成分、及びゴーヤ、センブリ茶、苦丁茶、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物等の苦味付与素材が代表的に挙げられる。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、非発酵ビールテイスト飲料を製造する際に通常行われる工程を包含する。一例として、まず、ポリフェノールを含有する原料又は(粗)精製ポリフェノールをはじめとする、原料水以外の原料(シクロデキストリンやソーマチンも含む。)を所定量混合して配合物を調製する。次いで、配合物に飲用水を所定量添加して一次原料液を調製する。
また、麦芽をはじめとする穀物原料を原料として使用して製造される非発酵ビールテイスト飲料は、例えば、前記一次原料液を次の仕込工程で製造することができる。まず、麦芽等の穀物原料及び水を含む混合物を糖化した後、煮沸して麦汁を調製する。具体的には、麦芽の破砕物や米やコーンスターチ等の澱粉質に、温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用して、澱粉質を糖化させる。原料としてホップを用いる場合には、この糖化液を濾過して得られた濾液にホップを加え、煮沸する。この糖化液の濾液に替わり、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前であればどの段階で混合してもよい。煮沸後の糖化液が前記一次原料液となる。
麦芽を原料とせず、液糖を使用する非発酵ビールテイスト飲料を製造する場合には、仕込工程として、まず、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製する。該液糖溶液は、麦芽を原料として使用する非発酵ビールテイスト飲料の製造工程と同様に、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。煮沸後の液糖溶液が前記一次原料液となる。
一次原料液を煮沸後、必要に応じてアルコールを加え、カーボネーション工程によって炭酸ガスを導入する。前記原料液を濃厚な状態で作成した後に、炭酸水を添加してもよい。なお、カーボネーション工程における濾過方法や炭酸ガスの添加方法は、常法により行うことができる。得られた非発酵ビールテイスト飲料は、通常、充填工程により瓶詰めされて、製品として出荷される。
カーボネーション工程や炭酸水添加工程の前に濾過処理により沈殿を除去すると、オリや雑味の原因物質が除去でき、より好ましい。また、殺菌処理を行ってもよい。その他、カーボネーション工程や炭酸水添加工程の後に、必要に応じて濾過処理又は殺菌処理を行ってもよい。
ポリフェノールを含有する原料若しくは(粗)精製ポリフェノール、シクロデキストリン、又はソーマチンを添加する時期は、最終製品中にこれらが残留可能な添加時期であれば特に限定されるものではない。麦芽や液糖を原料とする場合には、添加後に分解や変性、揮発による損失等のリスクが小さいため、ポリフェノール等は、糖化処理後の糖液や濾過後の濾液に添加することが好ましい。より詳細には、糖液に添加する場合には、糖化処理後に直ちに添加してもよく、煮沸後の糖液(煮汁)に添加してもよく、煮沸後沈殿物除去後の糖液に添加してもよい。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
<総ポリフェノール含有量の測定>
以下の実施例等において、飲料中の総ポリフェノール含有量は、次のようにして測定した。
まず、10mLのサンプルを入れた2本の25mL容の共栓付丸底試験管(ブランク用試験管及び測定用試験管)にそれぞれ8mLのCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液を当該試験管の内壁を伝わらせながら添加した後、4回緩やかに撹拌した。次いで、測定用試験管に0.5mLのクエン酸第二鉄アンモニウム溶液(0.35gのクエン酸第二鉄アンモニウムを10mLのイオン交換水に溶解させた溶液)を添加し、4回緩やかに撹拌した。その後、両方の試験管にそれぞれ0.5mLのアンモニア溶液(28容量%のアンモニア水とイオン交換水を1:1(容量比)で混合した溶液)を添加し、4回緩やかに撹拌した。さらに、ブランク用試験管に6.5mLのイオン交換水を入れ、測定用試験管に6.0mLのイオン交換水を入れ、両方の試験管をそれぞれ4回緩やかに撹拌した後、10分間静置した。これらの試験管内の溶液の600nmの吸光度(A600)を測定し、得られた測定値から下記式に従い、サンプルの総ポリフェノール濃度を求めた。
[総ポリフェノール濃度(ppm)]=([測定用試験管内溶液のA600]−[ブランク用試験管内溶液のA600])×820
[参考例1]
麦芽を用いない非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料へのポリフェノール添加の影響を調べた。
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、0.025gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.005gとなる量のホップ、及びリンゴ由来ポリフェノール(製品名:アップルフェノンSH、アサヒフードアンドヘルスケア社製)を混合した混合物を、1Lになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、蒸発分の水を追加した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が表1に記載の量である6種類の非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料を得た。ホップは、Barth−Haas GroupのCO2 Hop Extractを用い、得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料には、ホップ由来のポリフェノールが2ppm含有されていた。
得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料について、コク及び後キレをビール類専門パネル3名により評価した。評価結果を、パネルによる自由コメントと共に表1に示す。表1のコク及び後キレの評価中、「◎」は非常に良い、「○」は良い、「△」は普通、「×」は良くない、を意味する。表1中、「総ポリフェノール含有量」が2ppmの非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料は、リンゴ由来ポリフェノールを添加しなかったものである。
Figure 0006385484
この結果、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料にリンゴ由来ポリフェノールを配合して総ポリフェノール含有量を100ppm以上にしたことにより、複雑な香味となりコク感が上昇することが確認された。一方で、総ポリフェノール含有量が100ppm以上の非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料では、過剰に強い渋味により、後キレが悪くなることがわかった。
[参考例2]
麦芽を用いない非発酵アルコールビールテイスト飲料へのポリフェノール添加の影響を調べた。
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、0.010gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.02gとなる量のホップ、及びリンゴ由来ポリフェノールを混合した混合物を、900mLになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、液温が15℃になるまで冷却し、42gの原料用アルコールと適量の水を添加して1Lに調整した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が表2に記載の量である6種類の非発酵アルコールビールテイスト飲料を得た。ホップ及びリンゴ由来ポリフェノールは、参考例1で用いたものと同種のものを用い、得られた非発酵アルコールビールテイスト飲料には、ホップ由来のポリフェノールが6ppm含有されていた。
得られた非発酵アルコールビールテイスト飲料のコク及び後キレについて、参考例1と同様にして評価した。評価結果を、パネルによる自由コメントと共に表2に示す。表2中、「総ポリフェノール含有量」が6ppmの非発酵アルコールビールテイスト飲料は、リンゴ由来ポリフェノールを添加しなかったものである。この結果、非発酵アルコールビールテイスト飲料にリンゴ由来ポリフェノールを配合して総ポリフェノール含有量を100ppm以上にしたことにより、複雑な香味となりコク感が上昇することが確認された。一方で、総ポリフェノール含有量が100ppm以上の非発酵アルコールビールテイスト飲料では、過剰に強い渋味により、後キレが悪くなることがわかった。
Figure 0006385484
[参考例3]
麦芽を用いた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料へのポリフェノール添加の影響を調べた。
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、33.3gの麦糖化液(濾過後エキス分(不揮発性成分)15質量%のもの)、0.018gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.005gとなる量のホップ、及びリンゴ由来ポリフェノールを混合した混合物を、1Lになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、蒸発分の水を追加した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が表3に記載の量である6種類の非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料を得た。ホップ及びリンゴ由来ポリフェノールは、参考例1で用いたものと同種のものを用い、得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料には、ホップ及び麦由来のポリフェノールが30ppm含有されていた。
得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料のコク及び後キレについて、参考例1と同様にして評価した。評価結果を、パネルによる自由コメントと共に表3に示す。表3中、「総ポリフェノール含有量」が30ppmの非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料は、リンゴ由来ポリフェノールを添加しなかったものである。この結果、麦芽を用いた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料にリンゴ由来ポリフェノールを配合して総ポリフェノール含有量を100ppm以上にしたことにより、複雑な香味となりコク感が上昇することが確認された。一方で、総ポリフェノール含有量が100ppm以上の非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料では、過剰に強い渋味により、後キレが悪くなることがわかった。
Figure 0006385484
[実施例1]
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、0.025gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.005gとなる量のホップ、リンゴ由来ポリフェノール、及び表4に記載の後キレ改善剤候補素材を混合した混合物を、1Lになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、蒸発分の水を追加した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が1500ppmである10種類の非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料を得た。ホップ及びリンゴ由来ポリフェノールは、参考例1で用いたものと同種のものを用いた。ネオテームは「ミラスィー200」(DSP五協フード&ケミカル社製)を、ソーマチンは「ネオサンマルクDC」(三栄源社製)を、α−シクロデキストリンは「CAVAMAX(R) W6(α)」(シクロケム社製)を、β−シクロデキストリンは「CAVAMAX(R) W7(β)」(シクロケム社製)を、γ−シクロデキストリンは「CAVAMAX(R) W8(γ)」(シクロケム社製)を、クラスターデキストリンは日本食品化工社製のものを、ニゲロオリゴ糖は「テイストオリゴ」(日本食品化工社製)を、ステビアは「レバウディオJ−100」又は「バウディオIM」(守田化学社製)を、それぞれ用いた。これらのうち、ニゲロオリゴ糖は高甘味度甘味料で現れる後味の苦味を改善する効果を有することが知られている。
得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料のコク及び後キレについて、参考例1と同様にして評価した。評価結果を、パネルによる自由コメントと共に表4に示す。
Figure 0006385484
この結果、ソーマチン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリンを添加した非発酵ビールテイスト飲料では、ポリフェノールのみを添加した場合と同様にコク感が良好であり、さらに後キレが改善されていた。特に、γ−シクロデキストリンを添加したものは、コク感と後キレの両方に優れていた。すなわち、非発酵ビールテイスト飲料において、ポリフェノールに加えてシクロデキストリンやソーマチンを含有させることにより、後キレを悪化させることなくコク感を向上させることができた。一方で、後味改善効果が知られているニゲロオリゴ糖や、ソーマチンと同様に高感度甘味料であるネオテームやステビア、シクロデキストリンと同様に包接作用があり、かつ低感度甘味料であるクラスターデキストリンでは、後味改善効果はみられなかった。
[実施例2]
γ−シクロデキストリンの含有量と後味改善効果について調べた。
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、0.025gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.005gとなる量のホップ、リンゴ由来ポリフェノール、及びγ−シクロデキストリンを混合した混合物を、1Lになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、蒸発分の水を追加した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が1500ppmであり、γ−シクロデキストリン濃度が表5に記載の濃度である6種類の非発酵ビールテイスト飲料を得た。ホップ及びリンゴ由来ポリフェノールは、参考例1で用いたものと同種のものを、γ−シクロデキストリンは実施例1で用いたものと同種のものを、それぞれ用いた。
得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料のコク及び後キレについて、参考例1と同様にして評価した。評価結果を表5に示す。この結果、γ−シクロデキストリン含有量が100〜5000ppm程度では後キレ改善効果が見られ、10000ppm程度ではγ−シクロデキストリンの溶解性が悪く、粉っぽく感じられた。
Figure 0006385484
[実施例3]
ソーマチンの含有量と後味改善効果について調べた。
10gの難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、0.025gのアセスルファムK、0.3gのカラメル、0.5gのクエン酸ナトリウム、0.7gのリン酸、飲料中の最終イソα酸含有量が0.005gとなる量のホップ、リンゴ由来ポリフェノール、及びソーマチンを混合した混合物を、1Lになるように水でメスアップし、1時間煮沸を行った後、蒸発分の水を追加した。次いで、清澄化のために、この1Lに調整した溶液に対して珪藻土濾過及びフィルター濾過を行った。清澄化後の溶液に対して液中に炭酸ガスを吹き込むことで炭酸ガスを2.9ガスボリュームとなるように溶解させて、飲料中の総ポリフェノール含有量が1500ppmであり、ソーマチン濃度が表6に記載の濃度である6種類の非発酵ビールテイスト飲料を得た。ホップ及びリンゴ由来ポリフェノールは、参考例1で用いたものと同種のものを、ソーマチンは実施例1で用いたものと同種のものを、それぞれ用いた。
得られた非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料のコク及び後キレについて、参考例1と同様にして評価した。評価結果を表6に示す。この結果、ソーマチン含有量が0.5〜10ppm程度では後キレ改善効果が見られ、10ppmよりも多くなると、後をひく甘味によりバランスが悪く感じられた。
Figure 0006385484

Claims (5)

  1. ポリフェノールの総含有量が100ppm以上1500ppm以下であり、シクロデキストリン及びソーマチンからなる群より選択される1種以上のマスキング素材を含有し、
    前記ポリフェノールがプロシアニジン類又はプロシアニジン類を含有する混合物であり、
    前記マスキング素材がシクロデキストリンの場合、シクロデキストリンの含有量が100〜5000ppmであり、
    前記マスキング素材がソーマチンの場合、ソーマチンの含有量が0.5〜10ppmであることを特徴とする、非発酵ビールテイスト飲料。
  2. 前記シクロデキストリンが、γ−シクロデキストリンである、請求項1記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  3. 高分子糖の含有量が8g/L以上である、請求項1又は2に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  4. 甘味料、酸味料、カラメル、及びアルコールからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  5. ポリフェノールの総含有量が100ppm以上1500ppm以下となるように、粗精製又は精製されたポリフェノールを原料とし、前記ポリフェノールがプロシアニジン類又はプロシアニジン類を含有する混合物であり、
    マスキング素材としてシクロデキストリン及びソーマチンからなる群より選択される1種以上を原料とし、
    前記マスキング素材がシクロデキストリンの場合、飲料中のシクロデキストリンの含有量が100〜5000ppmとなるように調整し、
    前記マスキング素材がソーマチンの場合、飲料中のソーマチンの含有量が0.5〜10ppmとなるように調整することを特徴とする、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。
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