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JP6382435B1 - 圧延接合体 - Google Patents

圧延接合体

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JP6382435B1 JP2017246862A JP2017246862A JP6382435B1 JP 6382435 B1 JP6382435 B1 JP 6382435B1 JP 2017246862 A JP2017246862 A JP 2017246862A JP 2017246862 A JP2017246862 A JP 2017246862A JP 6382435 B1 JP6382435 B1 JP 6382435B1
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【課題】本発明は、曲げ剛性に優れる圧延接合体を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体であって、ステンレス層のビッカース硬度A(HV)と、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率B(%)が、下記式(I)を満たす前記圧延接合体に関する。(226—0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (I)【選択図】図3

Description

本発明は、圧延接合体に関する。
金属材料は様々な分野で利用されており、例えば、モバイル電子機器(モバイル端末)などの電子機器用部品として用いられているが、具体的な用途によって金属材料に求められる特性は異なる。例えば、電子機器用の筐体には、放熱性、軽量性や強度に加えて、曲げ剛性(荷重によるひずみ・曲げ抑制)に優れることが求められる。
筐体に用いられる金属材料の一つとして、放熱性、軽量性に優れたアルミニウム合金があり、その加工方法として、アルミニウム合金の削り出しがある。近年、筐体に用いられる金属材料には、さらなる軽量化、薄化、小型化が求められている。この要求を満たすために、アルミニウム合金として、変形しにくい6000系や7000系のアルミニウム合金が用いられる。しかしながら、このような変形しにくいアルミニウム合金は、プレス加工性が極めて悪く、筐体への加工方法が削り出しに限定されてしまい、削り出しと比較してコストや生産性等の面で優れるプレス加工により加工することが難しい。
一方、金属材料として、2種類以上の金属板又は金属箔を積層した圧延接合体(金属積層材、クラッド材)も知られている。圧延接合体は、単独の材料では得られない複合特性を有する高機能性金属材料であり、例えば、ステンレスとアルミニウムとを積層させた圧延接合体が検討されている。
特許文献1には、引張強度を向上させた、ステンレスとアルミニウムとを積層させた圧延接合体について開示されており、具体的には、ステンレス層/アルミニウム層の2層構造又は第1ステンレス層/アルミニウム層/第2ステンレス層の3層構造を有する金属積層材であって、引張強度TS(MPa)が、200≦TS≦550であり、伸びELが15%以上であり、ステンレス層の表面硬度HVが300以下である金属積層材が記載されている。
特許文献1では、引張強度等の向上について開示されているが、曲げ剛性については開示されていない。ここで、引張強度と曲げ剛性とは力を加える方向が異なる。その上、単一材に対し圧延接合体の場合は、特に接合界面と平行方向に引っ張る引張強度に対し、曲げ剛性は界面に垂直方向から力を加え、その変形しにくさが必要となるという点が異なる。このように、圧延接合体の引張強度が高い場合に曲げ剛性も高いとは限らない。また、曲げ剛性は、圧延接合体の各層の最終的な調質や厚みによっても影響を受ける。従って、ステンレスとアルミニウムの圧延接合体において、高い剛性を有する圧延接合体を得るための方法はこれまで知られていなかった。
国際公開第2017/057665号
前記の通り、従来のステンレスとアルミニウムの圧延接合体において、曲げ剛性の改善についてはこれまで明らかになっていなかった。そこで本発明は、曲げ剛性に優れる圧延接合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ステンレスとアルミニウムの圧延接合体において、ステンレス層のビッカース硬度(HV)とステンレス層の厚み比率の制御が曲げ剛性の向上に重要であることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体であって、ステンレス層のビッカース硬度A(HV)と、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率B(%)が、下記式(I)を満たす前記圧延接合体。
(226―0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (I)
(2)圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率が、7%〜70%である前記(1)に記載の圧延接合体。
(3)ステンレス層のビッカース硬度(HV)が、180〜350である、前記(1)又は(2)に記載の圧延接合体。
(4)厚みが、0.2mm〜3.0mmである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の圧延接合体。
(5)モバイル電子機器の筐体用である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の圧延接合体。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の圧延接合体を用いたモバイル電子機器筐体。
本発明によれば、曲げ剛性に優れる圧延接合体を提供することができる。この圧延接合体は、高い曲げ剛性を利用して、モバイル筐体などの電子機器部品として好適に用いることができる。
図1は、実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の厚み比率と最大曲げ応力の関係を示す。 図2は、実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の硬度と最大曲げ応力の関係を示す。 図3は、実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の硬度と厚み比率の関係を示す。 図4は、実施例3の圧延接合体のSUS面から測定した曲げ荷重と曲げ変位のグラフである。 図5は、本発明に係る電子機器筐体の第1の実施形態を示す斜視図である。 図6は、本発明に係る電子機器筐体の第1の実施形態のX−X’方向における断面斜視図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.圧延接合体
本発明の圧延接合体は、ステンレス(SUS)層とアルミニウム合金(Al合金)層からなる。従って、本発明の圧延接合体は、2層以上からなり、好ましくは2〜4層からなり、より好ましくは2層又は3層からなり、特に好ましくは2層からなる。
好ましい実施形態において、圧延接合体は、SUS/Al合金の2層からなる圧延接合体、又はSUS/Al合金/SUS若しくはAl合金/SUS/Al合金の3層からなる圧延接合体である。本発明において、圧延接合体の構成は、圧延接合体の用途や目的とする特性に応じて選択できる。
アルミニウム合金としては、アルミニウム以外の金属元素として、少なくとも1種の添加金属元素を含有する板材を用いることができる。添加金属元素は、好ましくはMg、Mn、Si及びCuである。アルミニウム合金中の添加金属元素の合計含有量は、好ましくは0.5質量%超であり、より好ましくは1質量%超である。アルミニウム合金は、好ましくはMg、Mn、Si及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を1質量%超の合計含有量で含有する。
アルミニウム合金としては、例えば、JISに規定のAl−Cu系合金(2000系)、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Si系合金(4000系)、Al−Mg系合金(5000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)及びAl−Zn−Mg系合金(7000系)を用いることができ、プレス加工性、強度、耐食性及び曲げ剛性の観点から3000系、5000系、6000系及び7000系のアルミニウム合金が好ましく、特にこれらのバランスとコストの観点から5000系のアルミニウム合金がより好ましい。アルミニウム合金は、好ましくはMgを0.3質量%以上含有する。
ステンレスとしては、特に限定されずに、SUS304、SUS201、SUS316、SUS316L及びSUS430などの板材を用いることができる。ステンレスとして、クラッド接合時の密着強度確保の観点から焼鈍材(O材)又は1/2H材が好ましい。
本発明において、圧延接合体は、ステンレス層のビッカース硬度と、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率が特定の関係式を満たすことを特徴とする。
本発明者らは、ステンレスとアルミニウムの圧延接合体においてはステンレスの方が曲げ剛性への寄与が大きく、曲げ剛性の指標として最大曲げ応力(σfM=3FL/2bh(式中、Fは最大曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚みである))を用い、最大曲げ応力のパラメータとして、ステンレス層の硬度と厚み比率の制御が一番重要であることを見出した。具体的には、圧延接合体の最大曲げ応力σfMは、ステンレス層のビッカース硬度をA(HV)とし、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率をB(%)としたとき、下記式(II)で求めることができる。
σfM≒(0.028×A−2.2)×B+0.66×A+174 (II)
本発明者らは、式(II)から、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体において、ステンレス層のビッカース硬度A(HV)と、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率B(%)が、下記式(I)
(226−0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (I)
を満たす圧延接合体は、最大曲げ応力が400MPa以上と高くなり、曲げ剛性が高く、筐体の用途に適することを見出した。さらに、ステンレス層のビッカース硬度A(HV)と、ステンレス層の厚み比率B(%)が、下記式(III)
(276−0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (III)を満たす圧延接合体は、最大曲げ応力が450MPa以上とより高くなり、曲げ剛性がより高く、筐体の用途に特に適する。なお、この関係式はアルミニウム合金についてのものであり、アルミニウム材が純アルミニウムである場合にこの式を適用できるとは限らない。
本発明では、式(I)を満たすようにステンレス層の硬度と厚み比率を制御することにより、十分な接合強度を維持しつつ、高い曲げ剛性を有する圧延接合体を得ることが可能である。本発明の圧延接合体は、従来の0.6mmの5000系アルミニウム合金板のO材と同等程度の伸びを保持しつつ、H34材と同等の最大曲げ応力を有する。
ステンレスとアルミニウム合金の圧延接合体において、ステンレス層の硬度と厚み比率が曲げ剛性についての重要なパラメータとなることについて、本発明者らは以下のように考察する。具体的には、本発明の圧延接合体においては、製造方法について後述の通り、接合強度の向上のために所定の温度での熱処理を行う。この熱処理温度は、ステンレスは未再結晶温度域でありほぼ軟化せず、アルミニウム合金は加工ひずみが除かれて軟化する温度域である。この熱処理により、アルミニウム合金は接合前及び接合時の圧下状態から焼鈍されるため、結果的にアルミニウム合金の曲げ剛性への寄与率は低い。これに対し、この熱処理温度ではステンレスは焼鈍されない。よって、接合直前の状態及び接合時に入るひずみによるステンレスの硬化がそのまま接合体の硬化に直結するため、制御が必要となるものと考えられる。
圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率は、式(I)を満たしていれば特に制限されないが、好ましくは7〜70%であり、より好ましくは10〜70%である。ステンレス層の厚み比率がこの範囲であると、圧延接合体の曲げ剛性が十分に高くなり、筐体の用途に適する。式(II)からわかるように、ステンレス層のビッカース硬度が一定の場合、ステンレス層の厚み比率が高くなると、最大曲げ応力は高くなる。なお、ステンレス層の厚み比率とは、ステンレス層が2層以上存在する場合、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの合計の比率をいう。
圧延接合体の厚みは、特に限定されずに、通常、上限が3.0mm以下、好ましくは2.2mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。下限は0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。圧延接合体の厚みは、好ましくは0.2mm〜3.0mmであり、より好ましくは0.3mm〜2.2mmであり、より好ましくは0.4mm〜1.5mmである。圧延接合体の厚みとは、ステンレス層とアルミニウム合金層の総厚みをいう。圧延接合体の厚みは、圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値をいう。
ステンレス層の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、下限は成形性と強度の観点から、好ましくは0.045mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。上限は特に制限はないが、アルミニウム合金層に対して厚すぎると伸び及び成形性が低下する恐れがあるため、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに軽量化の観点を加えると0.4mm以下が特に好ましい。ステンレス層の厚みは、好ましくは0.01mm〜0.6mmであり、より好ましくは0.045mm〜0.5mmであり、さらに好ましくは0.1mm〜0.4mmである。圧延接合体のステンレス層の厚みとは、圧延接合体が2層以上のステンレス層を有する場合、各ステンレス層の厚みをいう。圧延接合体のステンレス層の厚みは、前記のアルミニウム合金層と同様にして決定することができる。
ステンレス層のビッカース硬度(HV)は、好ましくは180以上であり、より好ましくは200以上である。本発明では、式(II)からわかるように、ステンレス層の厚み比率が一定の場合、ステンレス層の硬度が高くなると最大曲げ応力が高くなり、曲げ剛性が高くなる。一方、成形性の観点からはステンレス層の硬度は低い方が好ましい。よって、ステンレス層のビッカース硬度(HV)は、好ましくは350以下であり、より好ましくは330以下である。ステンレス層のビッカース硬度(HV)は、好ましくは180〜350であり、より好ましくは200〜330である。ステンレス層の硬度がこの範囲であると、圧延接合体において曲げ剛性及び成形性を両立することができる。本発明において、ステンレス層のビッカース硬度は、例えばマイクロビッカース硬度計(荷重200gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定することができる。本発明の圧延接合体が2層以上のステンレス層を有する場合、そのいずれもが前記のビッカース硬度を有することが好ましい。
アルミニウム合金層の厚みは、通常0.05mm以上であれば適用可能であり、圧延接合体の機械的強度及び加工性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。上限は、軽量化やコストの観点から好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.7mm以下、さらに好ましくは1.1mm以下である。アルミニウム合金層の厚みは、好ましくは0.05mm〜2.5mmであり、より好ましくは0.1mm〜1.7mmであり、より好ましくは0.2mm〜1.1mmである。圧延接合体のアルミニウム合金層の厚みとは、圧延接合体が2層以上のアルミニウム合金層を有する場合、各アルミニウム合金層の厚みをいう。圧延接合体のアルミニウム合金層の厚みは、圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点におけるアルミニウム合金層の厚みを計測し、得られた値の平均値をいう。
アルミニウム合金層のビッカース硬度(HV)は、特に制限されないが、好ましくは40〜60である。本発明において、アルミニウム合金層のビッカース硬度は、前記のステンレス層の場合と同様にして測定することができる。本発明の圧延接合体が2層以上のアルミニウム合金層を有する場合、そのいずれもが前記のビッカース硬度を有する。
本発明においては曲げ剛性の指標として最大曲げ応力を用いる。本発明において、圧延接合体の最大曲げ応力は、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)およびJIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準じて測定した曲げ荷重(最大値)(最大曲げ荷重)から求めることができる。具体的にはJIS K 7171の用語および定義を用いて最大曲げ応力σfMを定めるとともに、3点曲げ試験についてはJIS Z 2248の図5を参照し、支えの半径を5mm、支点間距離を40mmとして測定を行い、図4に示すような曲げ荷重と曲げ変位のグラフを得た後、σfMを算出したものである。本発明において、最大曲げ応力とは、圧延接合体の両面それぞれについての最大曲げ応力値の平均値である。
本発明において、曲げ荷重は、圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)に準じて測定することができる。曲げ試験において、支点間距離は40mmとした。
圧延接合体は、好ましくは400MPa以上、より好ましくは450MPa以上の最大曲げ応力を有する。本発明では、ステンレス層のビッカース硬度と厚み比率の式(I)を満たすように設定することで400MPa以上の高い最大曲げ応力を有し、さらに、ステンレス層のビッカース硬度と厚み比率の式(III)を満たすように設定することで、450MPa以上の高い最大曲げ応力を有し、よって、高い曲げ剛性を有し、筐体用途に適する圧延接合体を得ることができる。また、本発明では、式(II)に従い、ステンレス層のビッカース硬度又は厚み比率を設定することで、目的とする最大曲げ応力を有する圧延接合体を得ることができる。
圧延接合体は、ステンレス層側から測定した最大曲げ応力が好ましくは400MPa以上であり、より好ましくは450MPa以上である。
圧延接合体は、アルミニウム合金層側から測定した最大曲げ応力が好ましくは360MPa以上であり、より好ましくは450MPa以上である。
圧延接合体は、曲げ荷重(最大値)が、好ましくは50N/20mm以上であり、より好ましくは90N/20mm以上である。圧延接合体の曲げ荷重は、圧延接合体の両面それぞれについて測定して得た値の平均値をいう。
圧延接合体は、アルミニウム層側から測定した曲げ荷重が、好ましくは50N/20mm以上であり、より好ましくは90N/20mm以上である。
圧延接合体は、ステンレス層側から測定した曲げ荷重が、好ましくは50N/20mm以上であり、より好ましくは90N/20mm以上である。
圧延接合体は、ピール強度(180°ピール強度、180°剥離強度ともいう)が、40N/20mm以上であり、圧延接合体が優れたプレス加工性を有するという観点から、好ましくは60N/20mm以上である。ピール強度は密着強度の指標とできる。なお、3層以上からなる圧延接合体では、各接合界面において、ピール強度が60N/20mm以上であることが好ましい。
本発明において、圧延接合体のピール強度は、圧延接合体から幅20mmの試験片を作製しステンレス層とアルミニウム合金層を一部剥離後、厚膜層側又は硬質層側を固定し、他方の層を固定側と180°反対側へ引っ張った際に引きはがすのに要する力を測定し、単位としてN/20mmを用いた。
圧延接合体は、好ましくは、試験片の幅が15mmの引張試験による伸びが35%以上であり、良好なプレス加工性の観点から、より好ましくは40%以上である。引張試験による伸びはJIS Z 2241又はJIS Z 2201に記載される破断伸びの測定に準じて、例えば後述の引張強さ試験の試験片を用いて測定することができる。
2.圧延接合体の製造方法
圧延接合体は、ステンレス板とアルミニウム合金板を用意し、以下のような圧延接合方法により得ることができる。
冷間接合法の場合、ステンレス板とアルミニウム合金板の接合面にブラシ研磨などを施した後、両者を重ねあわせて冷間圧延しながら接合し、さらに焼鈍処理を施すことで製造することが出来る。冷間圧延の工程は多段階で行ってもよく、また焼鈍処理後に調質圧延を加えてもよい。この方法では、最終的な圧下率(接合前原板と圧延接合体の厚みより算出される圧下率)として20〜90%の範囲で圧延接合される。冷間接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮すると、原板の厚みは、ステンレス板は0.0125〜6mm、好ましくは0.056〜5mm、より好ましくは0.063〜4mm、アルミニウム合金板は0.063〜25mm、好ましくは0.13〜17mm、より好ましくは0.25〜11mmである。
温間接合法の場合、冷間接合法と同様に接合面にブラシ研磨などを施した後、両者あるいは片方を200〜500℃に加熱して重ねあわせて温間圧延し接合することで製造することができる。この方法では、最終的な圧下率は15〜40%程度となる。温間接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮すると、原板の厚みは、ステンレス板は0.012〜1mm、好ましくは0.053〜0.83mm、より好ましくは0.059〜0.067mm、アルミニウム合金板は0.059〜4.2mm、好ましくは0.19〜2.8mm、より好ましくは0.24〜1.8mmである。
真空表面活性化接合法(以下、表面活性化接合法も同義)の場合、ステンレス板及びアルミニウム合金板の接合面をスパッタエッチングする工程と、スパッタエッチングした表面同士を、ステンレス層の圧下率が0%〜25%の軽圧延となるように圧接して接合する工程と、200℃〜370℃でのバッチ熱処理又は300℃〜800℃での連続熱処理を行う工程とを含む方法によって製造できる。この製造方法では、スパッタエッチング処理工程及び接合工程を行う回数に応じて、得られる圧延接合体が有する層の数を変えることができ、例えば、2層からなる圧延接合体は、スパッタエッチング処理工程及び接合工程の組み合わせを1回行った後、熱処理を行うことで製造することができ、3層からなる圧延接合体は、スパッタエッチング処理工程及び接合工程の組み合わせを2回繰り返した後、熱処理を行うことで製造することができる。
以上のように、接合体を得る接合方法は限られないが、ステンレスの硬度が高くなりすぎると靱性の低下に伴い、ステンレスの破損が生じやすくなる上に、アルミニウム合金とステンレスとの接合体においては、接合後の焼鈍においてステンレスの軟化焼鈍が困難なため、いずれの接合方法においても最終的な圧下率40%以下が好ましい。より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。特にステンレス層は圧下率が高くなりすぎると著しい加工硬化が生じ、靱性が低下する為、圧延接合時やそのハンドリング、または筐体として使用する際にステンレス層に割れが生じる恐れがあり、ステンレス層の圧下率は35%以下が好ましい。以下、圧下率が低くとも接合しやすい表面活性化接合の製造方法について説明する。
用いることができるステンレス板は、圧延接合体について前記のステンレスの板材である。
接合前のステンレス板の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、下限は圧延接合体としたときのハンドリング性やある程度ステンレスの厚みがあったほうが最大曲げ応力に対して好ましいという観点、また筐体にした後、加飾や鏡面加工時の研磨代を確保するという観点から、好ましくは0.045mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。上限はステンレス比率が高い方が最大曲げ応力がより高くなるので特に制限はないが、ステンレス厚みが厚くなり過ぎると重くなるため筐体としたときの軽量性の観点から、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下である。接合前のステンレス板の厚みは、マイクロメータなどによって測定可能であり、ステンレス板の表面上からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値をいう。
接合前のステンレス板のビッカース硬度(HV)は、好ましくは180以上であり、より好ましくは200以上である。本発明では、圧延接合体におけるステンレス層の硬度が曲げ剛性に影響するが、前記の通り、接合直前の状態及び接合時に入るひずみによるステンレスの硬化の影響が大きいと考えられるため、接合前のステンレス板においてもその硬度をある程度制御することが好ましい。よって、ステンレス層のビッカース硬度(HV)は、好ましくは350以下であり、より好ましくは330以下である。ステンレス層のビッカース硬度(HV)は、好ましくは180〜350であり、より好ましくは200〜330である。ステンレス層の硬度がこの範囲であると、圧延接合体において曲げ剛性及び成形性を両立することができる。
用いることができるアルミニウム合金板は、圧延接合体について前記のアルミニウム合金の板材である。
接合前のアルミニウム合金板の厚みは、通常0.05mm以上であれば適用可能であり、下限は好ましくは、0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。上限は、軽量化やコストの観点から通常3.3mm以下であり、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。接合前のアルミニウム合金板の厚みは、前記のステンレス板と同様にして決定することができる。
スパッタエッチング処理では、ステンレス板の接合面とアルミニウム合金板の接合面をそれぞれスパッタエッチングする。
スパッタエッチング処理は、具体的には、ステンレス板とアルミニウム合金板を、幅100mm〜600mmの長尺コイルとして用意し、接合面を有するステンレス板とアルミニウム合金板をそれぞれアース接地した一方の電極とし、絶縁支持された他の電極との間に1MHz〜50MHzの交流を印加してグロー放電を発生させ、且つグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極の面積を前記の他の電極の面積の1/3以下として行う。スパッタエッチング処理中は、アース接地した電極が冷却ロールの形をとっており、各搬送材料の温度上昇を防いでいる。
スパッタエッチング処理では、真空中でステンレス板とアルミニウム合金板の接合する面を不活性ガスによりスパッタすることにより、表面の吸着物を完全に除去し、且つ表面の酸化膜の一部又は全部を除去する。酸化膜は必ずしも完全に除去する必要はなく、一部残存した状態であっても十分な接合力を得ることができる。酸化膜を一部残存させることにより、完全に除去する場合に比べてスパッタエッチング処理時間を大幅に減少させ、金属積層材の生産性を向上させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトンなどや、これらを少なくとも1種類含む混合気体を適用することができるステンレス板とアルミニウム合金板のいずれについても、表面の吸着物は、エッチング量約1nm程度(SiO換算)で完全に除去することができる。
ステンレス板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W〜1KWのプラズマ出力で1〜50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、真空下で、例えば100W〜10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分〜30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、例えば1×10−5Pa〜10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、ステンレス板の温度は、アルミニウム合金板軟化防止の観点から、好ましくは常温〜150℃に保たれる。
表面に酸化膜が一部残存するステンレス板は、ステンレス板のエッチング量を、例えば1nm〜10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としても良い。
アルミニウム合金板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W〜1KWのプラズマ出力で1〜50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、100W〜10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分〜30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、1×10−5Pa〜10Paであればよい。
表面の酸化膜が一部残存するアルミニウム合金板は、アルミニウム合金板のエッチング量を、例えば1nm〜10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としても良い。
以上のようにしてスパッタエッチングしたステンレス板及びアルミニウム合金板の接合面を、ステンレス層の圧下率が0%〜25%、好ましくは0%〜15%の軽圧延となるように、例えばロール圧接により圧接して、ステンレス板とアルミニウム合金板を接合する。
ステンレス層の圧下率は、接合前のステンレス板の厚みと最終的な圧延接合体のステンレス層の厚みから求める。すなわち、ステンレス層の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のステンレス板の厚み−最終的な圧延接合体のステンレス層の厚み)/接合前の材料のステンレス板の厚み、により求められる。
ステンレス層とアルミニウム合金層の接合においては、アルミニウム合金層の方が変形しやすい場合が多く、ステンレス層の圧下率はアルミニウム合金層の圧下率よりも低くなる。ステンレス層は圧下率が高いと加工硬化が生じやすくなるため、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは8%以下である。なお、圧接の前後で厚みが変わらなくても良いため、圧下率の下限値は0%であるが、ステンレス板の硬度が低い場合、あえて加工硬化をさせることにより曲げ剛性を向上させることも可能である。この場合、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは3%以上である。ステンレス層の圧下率は、高い曲げ剛性及び加工硬化の抑制との両立の観点から、好ましくは0%〜15%である。また、表面活性化接合法においては特に10%以下とすることが可能であり、よりステンレスの硬化の抑制が可能となる。
本発明の製造方法において、アルミニウム合金層の圧下率は、特に制限されないが、拡散熱処理前の接合力確保のために5%以上が好ましく、より好ましくは8%以上であり、より好ましくは10%以上である。アルミニウム合金層の圧下率が5%以上であると、熱処理後のピール強度が向上する。アルミニウム合金層の圧下率は、接合前のアルミニウム合金板の厚みと最終的な圧延接合体のアルミニウム合金層の厚みから求める。すなわち、アルミニウム合金層の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のアルミニウム合金板の厚み−最終的な圧延接合体のアルミニウム合金層の厚み)/接合前の材料のアルミニウム合金板の厚み、により求められる。
アルミニウム合金層の圧下率の上限は、特に限定されずに、例えば表面活性化接合法に限らず70%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。アルミニウム合金層の圧下率の上限がこの範囲であると厚み精度を保ちつつ、接合力を確保しやすい。また、表面活性化接合法においては特に18%以下とすることが可能であり、よりアルミニウム合金層の平坦性を維持することが可能となる。
圧延接合体の圧下率は、表面活性化接合法の場合も40%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは14%以下である。なお、下限は、特に制限はないが、接合強度の観点から、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、特に好ましくは7.5%以上である。表面活性化接合法においては特に上限を15%以下、下限を4%以上とすることが可能であり、より安定的に特性を得やすい。圧延接合体の圧下率は、接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚みと、最終的な圧延接合体の厚みから求める。すなわち、圧延接合体の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚み−最終的な圧延接合体の厚み)/接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚み、により求められる。
ロール圧接の圧延線荷重は、特に限定されずに、アルミニウム合金層及び圧延接合体の所定の圧下率を達成するように設定し、例えば、表面活性化接合の場合、1.6tf/cm〜10.0tf/cmの範囲に設定することができる。例えば圧接ロールのロール直径が100mm〜250mmのとき、ロール圧接の圧延線荷重は、好ましくは1.9tf/cm〜4.0tf/cmであり、より好ましくは2.3tf/cm〜3.0tf/cmである。ただし、ロール直径が大きくなった場合や接合前のステンレス板やアルミニウム合金板の厚みが厚い場合などには、所定の圧下率を達成するために圧力確保のために圧延線荷重を高くすることが必要になる場合があり、この数値範囲に限定されるものではない。
接合時の温度は、特に限定されずに、例えば表面活性化接合の場合、常温〜150℃である。
表面活性化接合の場合、接合は、ステンレス板とアルミニウム合金板表面への酸素の再吸着によって両者間の接合強度が低下するのを防止するため、非酸化雰囲気中、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
以上のようにしてステンレス板とアルミニウム合金板を接合して得た圧延接合体について、熱処理を行う。熱処理によって、各層の間の密着性を高めて十分な接合力とできる。この熱処理は、圧延接合体の、特にアルミニウム合金層の焼鈍を兼ねることができる。
熱処理温度は、例えばバッチ熱処理の場合、200℃〜370℃であり、好ましくは250℃〜345℃であり、また、例えば連続熱処理の場合、300〜800℃であり、好ましくは350℃〜550℃である。この熱処理温度では、ステンレスは未再結晶温度域でありほぼ軟化せず、アルミニウム合金では加工ひずみが除かれて軟化する温度域である。なお、熱処理温度とは、熱処理を行う圧延接合体の温度をいう。
また、この熱処理では、少なくともステンレスに含まれる金属元素(例えば、Fe、Cr、Ni)がアルミニウム合金層に熱拡散する。また、ステンレスに含まれる金属元素と、アルミニウムとを相互に熱拡散させてもよい。
熱処理時間は、熱処理方法(バッチ熱処理又は連続熱処理)、熱処理温度や熱処理を行う圧延接合体のサイズに応じて適宜設定することができる。例えば、バッチ熱処理の場合、圧延接合体の温度が所定の温度になってから圧延接合体を0.5〜10時間均熱保持し、好ましくは2〜8時間均熱保持する。なお、金属間化合物が形成されなければ10時間以上のバッチ熱処理を行っても問題ない。また、連続熱処理の場合、圧延接合体の温度が所定の温度になってから圧延接合体を20秒〜5分間均熱保持する。なお、熱処理時間とは、熱処理を行う圧延接合体が所定の温度になってからの時間をいい、圧延接合体の昇温時間は含まない。熱処理時間は例えば、A4版(用紙サイズ)程度の小さい材料については、バッチ熱処理では1〜2時間程度で十分あるが、長尺もの、例えば幅100mm以上、長さ10m以上のコイル材などの大きい材料については、バッチ熱処理では2〜8時間程度必要である。
また、本発明の製造方法において、アルミニウム合金層のビッカース硬度を制御するために、目標とする厚みに対して、アルミニウム合金層が厚い圧延接合体を一旦作製した後、圧延接合体のアルミニウム合金層を研削して厚みを薄くし、目標とする厚みに仕上げてもよい。アルミニウム合金層を研削することにより、アルミニウム合金層の最表面を硬化させることができる。また、接合し熱処理を行って得られた圧延接合体について、1〜2%程度の伸び率になるようにテンションレベラーによる形状修正を実施しても良い。この形状修正により、厚みが1〜2%程度減少し、アルミニウム合金層を硬化させ、ビッカース硬度を向上させることができる。これらの手段は、適宜組み合わせても良く、例えば、テンションレベラーによる形状修正を実施した後に、アルミニウム合金層の研削を行うことができる。
また、圧延接合体のステンレス層のビッカース硬度を高めて所定の関係式を満たすように制御するための手段として、例えば、ビッカース硬度の高い原材料(硬さが高い順に、調質記号H>3/4H>1/2H>BA)を用意し、これを接合して圧延接合体を作製する方法が挙げられる。ただし、ステンレス層のビッカース硬度が高過ぎると加工が困難となるため留意するものとする。あるいは、接合時の荷重を高くすることで、接合後の圧延接合体のステンレス層のビッカース硬度を高めても良い。例えば、ステンレス層の圧下率が0.5〜10%になるように接合することで、ステンレス層のビッカース硬度は200(Hv)から270(Hv)程度まで増加する。
以上のようにして製造した圧延接合体は、プレスによる深絞り加工で外郭を形成し、背面を含む外側は研磨、化成処理、塗装等の表面処理を行う。また内面側は主に内部部品の組み込み用に必要に応じて切削、研削を行い凹凸を形成してもいい。また、必要に応じて樹脂によるインサート成形を行い、内外面に金属と樹脂との複合部を形成することも可能である。上記方法により筐体へと加工できるがこれに限定されるものではない。
3.圧延接合体の用途
本発明の圧延接合体は、電子機器部品として利用することができ、高い曲げ剛性と靱性を有することから、電子機器の筐体として、特にモバイル電子機器(モバイル端末)の筐体として利用することができる。本発明の圧延接合体は、高い形状保持性を有する。なお、筐体とした際には、変色抑制や加飾を目的とした処理が施されていてもよい。筐体成形後の工程でアルミニウム合金材及びステンレス材を研磨や研削などの加工を施した後であっても本願の厚み比率範囲内であれば問題ない。
電子機器筐体は、好ましくは背面及び/又は側面に本発明の圧延接合体を含む。
本発明の圧延接合体を用いた電子機器筐体の第1の実施形態を図5及び図6に示す。図5は、本発明の圧延接合体を用いた電子機器筐体の第1の実施形態を示す斜視図であり、図6は、本発明の圧延接合体を用いた電子機器筐体の第1の実施形態のX−X’方向における断面斜視図である。電子機器筐体5は、背面50と側面51からなり、背面50と側面51又はその一部が、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる本発明の圧延接合体を含むことができる。ここで背面とは、スマートフォン等の電子機器(モバイル端末)を構成する筐体における、表示部(ティスプレイ、図示せず)が設けられる側とは反対側の面を指す。また、電子機器筐体5の内側には圧延接合体とは別の金属材料やプラスチック材料等を積層させても良い。なお、電子機器筐体5は、圧延接合体を背面50に含む場合、背面50の全体又は一部(例えば、図5の平面部分Aで示すような、2cm×2cm以上、例えば25mm×25mmの平面部分)が、圧延接合体について記載した前記の特性を満たしていれば良い。なお、電子機器筐体5はその背面50に圧延接合体を含む構造であるが、電子機器の構造によっては本構造に限定されるものではなく、背面50と側面51が圧延接合体からなる構造であっても良く、また、側面51に圧延接合体を含む構造であっても良い。
次に、本発明の圧延接合体を用いた電子機器筐体の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、センターフレームである電子機器筐体が、ガラスや樹脂等の表示部及び背面によって挟まれた電子機器構造を示しており、電子機器筐体は、側面と、その側面に接続された内部補強フレーム(電子機器筐体における背面を構成する)から構成される。電子機器筐体は、側面と内部補強フレーム又はその一部が、ステンレス層とステンレスとは異なる金属層とからなる本発明の圧延接合体を含むことができる。ここで内部補強フレームとは、スマートフォン等の電子機器の内部に位置し、電子機器全体の剛性向上や電池やプリント基板などの部品を実装する支持体としての役割を果たす支持板のことを意味する。内部補強フレームは、通常、接続やアセンブリのための穴を有する。穴は、例えばプレス等によって開けることが可能である。本実施形態においては、側面と内部補強フレームとを一体に構成することができるが、それに限定されるものではなく、側面と内部補強フレームとを一体化しなくても良い。また、側面だけに圧延接合体を適用しても良い。なお、本実施形態の電子機器筐体についても、前記の電子機器筐体5と同様に、電子機器の構造に応じて適宜変形することができ、上記で説明したような構造に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
表面活性化接合法により、圧延接合体を準備した。ステンレス板としてSUS304 1/2Hを用い、アルミニウム板としてアルミニウム合金A5052を用いた。SUS304とA5052に対してスパッタエッチング処理を施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力700W、13分間の条件にて実施した。スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延ロール径100mm〜250mm、圧延線荷重1.9tf/cm〜4.0tf/cmの加圧力で、ステンレス層の圧下率0%〜5%にてロール圧接により接合して、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、300℃、2時間の条件でバッチ熱処理を行った。
実施例2〜3、5及び比較例1〜3
原板のステンレス板の調質、厚み及び/又は原板のアルミニウム板の厚みを変更し、また、接合時の加圧力を所定の値に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜3、5及び比較例1〜3の圧延接合体を得た。ステンレス板の調質は実施例4、5、6および比較例1、3はBA材を用い、その他は実施例1と同じく1/2H材を用いた。また、比較例2において、ステンレス板としてSUS316Lを用いた。
実施例4
ステンレス板としてSUS304 BAを用い、アルミニウム板としてアルミニウム合金A5052を用いた。SUS304とA5052に対してスパッタエッチング処理を施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力4800W、ライン速度4m/分の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、0.1Pa下で、プラズマ出力6400W、ライン速度4m/分の条件にて実施した。スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延線荷重3.0tf/cm〜6.0tf/cmにてロール圧接により接合して、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、300℃で8時間のバッチ焼鈍を行った。
実施例6
冷間接合法により、ステンレス板(SUS304 BA)とアルミニウム合金板(A5052)との圧延接合体(厚み:1.00mm)を準備した。ステンレス板とアルミニウム合金板の接合面にブラシ研磨などを施した後、両者を重ねあわせて冷間圧延しながら接合し、さらに焼鈍処理を施すことで製造した。
実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体について、厚み、ビッカース硬度及び曲げ荷重を測定し、曲げ荷重の値から最大曲げ応力を計算した。厚み、ビッカース硬度及び曲げ荷重は以下のようにして測定した。
[ステンレス層・アルミニウム層の厚み]
圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点におけるステンレス層又はアルミニウム合金層の厚みを計測し、得られた値の平均値を算出した。
[圧延接合体の厚み(総厚み)]
圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値を算出した。
[ビッカース硬度]
マイクロビッカース硬度計(荷重200gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定した。
[曲げ荷重]
圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、テンシロン万能材料試験機 RTC−1350A(株式会社オリエンテック製)を用い、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)および、JIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準じて曲げ荷重(最大値)(最大曲げ荷重)を測定した。具体的には、JIS Z 2248の図5を参照し、押し金具の半径を5mm、支えの半径を5mm、支点間距離を40mmとして3点曲げ試験を行い、図4に示すような曲げ荷重と曲げ変位のグラフを得て、曲げ荷重(最大値)(図4中、丸印で示す部分)を求めた。なお、図4は、実施例3の圧延接合体についてSUS面から測定した曲げ荷重と曲げ変位のグラフである。曲げ荷重は、圧延接合体のステンレス層及びアルミニウム合金層の各面から測定した。
[最大曲げ応力]
最大曲げ応力は、JIS K 7171の用語および定義を用いて、得られた最大曲げ荷重から、式:最大曲げ応力σfM=3FL/2bh(式中、Fは最大曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚み(総厚み)である)により計算した。最大曲げ応力は、ステンレス層及びアルミニウム合金層についてそれぞれ計算した。得られたステンレス層及びアルミニウム合金層の最大曲げ応力の平均値を算出した。
実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体の構成及び評価結果を表1に示す。また、図1に、実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の厚み比率(SUS比率)と最大曲げ応力の関係を示し、図2に、実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の硬度(SUS硬度)と最大曲げ応力の関係を示す。なお、図1及び2における最大曲げ応力の値は、表1の最大曲げ応力の平均値である。
なお、同様の測定方法にて、0.3mm厚みのアルミニウム合金A5052の、O材の最大曲げ応力を測定したところ、242.34であった。また、アルミニウム合金A5052のH34材の0.3mm、0.8mmを測定したところ、それぞれ442.67および462.66であった。
Figure 0006382435
表1、図1及び図2より、ステンレスとアルミニウム合金の圧延接合体の最大曲げ応力には、ステンレスの特性の影響が大きく、特にステンレス層の厚み比率及び硬度の寄与が大きいことが示された。具体的には、表1及び図1より、ステンレス層の硬度が同程度の場合、ステンレス層の厚み比率が高くなると最大曲げ応力が高くなった(実施例1、2、4の比較、実施例5及び比較例1、3の比較)。また、表1及び図2より、ステンレス層の厚み比率が同程度の場合、ステンレス層の硬度が高くなると最大曲げ応力が高くなることが示唆された(実施例3、4及び比較例3の比較)。
実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体において、圧延接合体の最大曲げ応力には、特にステンレス層の厚み比率及び硬度の寄与が大きいことから、圧延接合体の最大曲げ応力と、ステンレス層の厚み比率及び硬度との関係式を導出した。具体的には、まず、ステンレス層の硬度がほぼ一定の場合について、最大曲げ応力σfMとステンレス層の厚み比率B(%)との関係式を求めたところ、ステンレス層の硬度HVが約200(240以下)である場合(実施例5、比較例1、3)、最大曲げ応力σfMは、下記式(1):σfM=3.4×B+306で表され、ステンレス層の硬度HVが約280(275〜290)である場合(実施例1、2、4)、最大曲げ応力σfMは、下記式(2):σfM=5.6×B+359で表された(図1参照)。次に、ステンレス層のビッカース硬度をA(HV)とし、ステンレス層の厚み比率をB(%)としたとき、最大曲げ応力σfMは、下記式(3):σfM=(c×A+d)×B+(e×A+f)で表されるところ、この式(3)と、上記の式(1)について硬度HV200を、上記式(2)について硬度HV280を用いることにより、式(3)のc、d、e、fを求めた。その結果、最大曲げ応力σfMは下記式(II)によって表される。
σfM≒(0.028×A−2.2)×B+0.66×A+174 (II)
上記式(II)から、最大曲げ応力σfM≧400MPaとするためには、下記式(I)
(226―0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (I)
を満たせばよく、また、最大曲げ応力σfM≧450MPaとするためには、下記式(III)
(276―0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (III)を満たせばよい。
図3に実施例1〜6及び比較例1〜3の圧延接合体における、ステンレス層の硬度(SUS硬度)とステンレス層の厚み比率(SUS比率)の関係を示す。図3において、「σfM=400MPa」の実線は式(I)を表し、「σfM=450MPa」の点線は式(III)を表す。表1及び図3より、ステンレス層の厚み比率B(%)と硬度A(HV)が、式(I)を満たす実施例1〜6の圧延接合体はいずれも400MPa以上の高い最大曲げ応力を有し、曲げ剛性に優れる。さらに、ステンレス層の厚み比率B(%)と硬度A(HV)が、式(III)を満たす実施例3〜6の圧延接合体はいずれも450MPa以上の特に高い最大曲げ応力を有し、曲げ剛性に特に優れる。一方、式(I)を満たさない比較例1〜3の圧延接合体は、最大曲げ応力は400MPa未満に留まり、筐体用の圧延接合体としては不十分であった。
実施例7
ステンレス層/アルミニウム合金層よりなる圧延接合体から成形加工された電子機器筐体を作製した。まず、原板として以下の種類の材料を用意し、表面活性化接合法により、圧延接合体を製造した。
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.250mm)を用い、アルミニウム合金材としてアルミニウム合金A5052(厚み0.800mm)を用いた。
SUS304及びA5052の接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力4800W、ライン速度4m/分の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力6400W、ライン速度4m/分の条件にて実施した。
スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延線荷重3.0tf/cm〜6.0tf/cmにてロール圧接により接合し、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、320℃、8時間の条件でバッチ熱処理を行い、総厚み0.980mmの圧延接合体を製造した。
続いて、上記圧延接合体についてテンションレベラーによる伸び率1〜2%程度の形状修正を実施した。これによって、圧延接合体の総厚みを1〜2%程度減少させ、アルミニウム合金層を硬化させ、総厚み0.970mmの圧延接合体を製造した。
続いて、得られた圧延接合体について、縦150mm×横75mm、深さ10mmで深絞り加工を行った。次に、ステンレス層を研磨し、アルミニウム合金層を研削して、電子機器の背面となる総厚み0.580mmの筐体を製造した。
[ステンレス層・アルミニウム層の厚み等の測定]
得られた筐体背面の中央部を20mm×50mmのサイズに切り出した後、前記の圧延接合体の測定方法と同様にして、ステンレス層、アルミニウム合金層及び圧延接合体の厚み、ステンレス層及びアルミニウム合金層のビッカース硬度、並びに曲げ荷重を測定し、また、最大曲げ荷重の値から最大曲げ応力を算出した。結果を表1に示す。
[評価結果]
表1に示すように、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体を成形加工して得られた実施例7の電子機器筐体は、実施例の圧延接合体と同様に上記式(I)を満たしており、450MPa以上の高い最大曲げ応力を有し、曲げ剛性に優れていた。この最大曲げ応力は、電子機器筐体内部に実装される部品に悪影響を与えることが全くない範囲であり、電子機器全体の薄型化、電池容量の増加、実装容量の増加等を図ることができる。
5 電子機器筐体
50 背面
51 側面
A 平面部分

Claims (7)

  1. ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体であって、ステンレス層のビッカース硬度A(HV)と、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率B(%)が、下記式(I)を満たし、前記ステンレス層の厚みが0.045mm〜0.297mmである、前記圧延接合体。
    (226―0.66×A)/(0.028×A−2.2)≦B<100 (I)
  2. 圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの比率が、7%〜70%である請求項1に記載の圧延接合体。
  3. ステンレス層のビッカース硬度(HV)が、180〜350である、請求項1又は2に記載の圧延接合体。
  4. 厚みが、0.2mm〜3.0mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延接合体。
  5. モバイル電子機器の筐体用である請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧延接合体。
  6. 最大曲げ応力が400MPa以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧延接合体。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の圧延接合体を用いたモバイル電子機器筐体。
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