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JP6367709B2 - ガスセンサ素子およびガスセンサ - Google Patents

ガスセンサ素子およびガスセンサ Download PDF

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JP6367709B2 JP2014266162A JP2014266162A JP6367709B2 JP 6367709 B2 JP6367709 B2 JP 6367709B2 JP 2014266162 A JP2014266162 A JP 2014266162A JP 2014266162 A JP2014266162 A JP 2014266162A JP 6367709 B2 JP6367709 B2 JP 6367709B2
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Description

本発明は、測定対象ガス(被測定ガス)中に含まれる特定ガスを検出するためのガスセンサ素子およびガスセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
従来、被測定ガス(例えば排気ガス等)に含まれる特定ガス(例えばNOx等)を検出するためのガスセンサ素子、およびそのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。
このガスセンサ素子としては、板型の固体電解質体と、固体電解質体の外面に形成される一対の電極部と、を有するセルを複数備えているものがある(特許文献1参照)。
例えば、NOxを検出するガスセンサ素子は、セルとして、第1ポンプセル、酸素濃度検知セル、第2ポンプセルなどを備えており、それらは、絶縁層等を介して積層されている。
このうち、第1ポンプセルは、被測定ガス(排気ガス等)における酸素の汲み入れおよび汲み出し(ポンピング)を行い、被測定ガスの酸素濃度を調整する。酸素濃度検知セルは、第1ポンプセルによって調整された測定対象の酸素濃度を検知する。第2ポンプセルには、酸素濃度が調整された被測定ガスに含まれるNOx濃度に応じた第2ポンピング電流が流れる。この第2ポンピング電流に基づいて被測定ガスにおけるNOx濃度を判定できる。
特開2010−122187号公報
上述した従来技術では、各セルの固体電解質体は、絶縁層等を介して積層されており、各固体電解質体の側面がガスセンサ素子の側面の一部を構成しており、固体電解質体が外部に露出しているので、使用状況等によっては、ガスセンサの測定精度が低下することがあった。
詳しくは、ガスセンサを例えば排気管等に取り付けて、排気ガス中の例えばNOxを検出する場合には、ガスセンサを使用しているうちに、ガスセンサ素子の側面にカーボン等の導電物質が付着することがあった。
この導電物質がガスセンサ素子の側面に付着すると、例えば酸素濃度検知セルの固体電解質体と第2ポンプセルの固体電解体とが導通状態となり、例えば酸素濃度の検出やNOx濃度の検出の際に、各固体電解質体に測定ノイズとなる電流が流れることがあった。
そのため、酸素濃度検知セルにて酸素濃度を検知する精度が低下し、また、第2ポンプセルにてNOx濃度を精度良く検知することが難しくなることがあった。つまり、従来技術では、被測定ガス中の特定ガスの検出精度が低下するおそれがあった。
そこで、本発明は、特定ガスの検出精度の低下を抑制できるガスセンサ素子を提供すること、および、そのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供することを目的とす
る。
(1)本発明の第1局面におけるガスセンサ素子は、三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、第1測定室と、第2測定室と、導入路と、第1ポンプセルと、酸素濃度検知セルと、第2ポンプセルとを有する。
第1測定室は、三つ以上のセラミック層のうち、二つのセラミック層の層間に形成さており、外部から被測定ガスが導入される。
第2測定室は、第1測定室を形成する層間とは異なる二つのセラミック層の層間に形成されており、第1測定室と少なくとも一部がセラミック層の積層方向に重なり合う。
導入路は、第1測定室と第2測定室との間に配置されるセラミック層を積層方向に貫いており、第1測定室と第2測定室とを連通する。
第1ポンプセルは、第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、第1測定室内に晒される第1内側電極と、第1内側電極と対をなす第1対電極とを備えている。この第1ポンプセルは、第1測定室内の被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする。
酸素濃度検知セルは、第1ポンプセルより被測定ガスの導入方向下流側に配置されている。この酸素濃度検知セルは、第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、第1測定室内に晒される検知電極と、検知電極と対をなす基準電極とを備えている。この酸素濃度検知セルは、被測定ガス中の酸素濃度を測定する。
第2ポンプセルは、酸素濃度検知セルより被測定ガスの導入方向下流側に配置されている。この第2ポンプセルは、第2測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、第2測定室内に晒される第2内側電極と、第2内側電極と対をなす第2対電極とを備えている。この第2ポンプセルは、第2測定室内における被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる。
このようなガスセンサ素子において、酸素濃度検知セルを構成するセラミック層は、積層方向に貫く挿通孔を有する検知セル用絶縁性セラミック部と、検知セル用絶縁性セラミック部の挿通孔内に配置された検知セル用固体電解質部とを有する検知セル用複合セラミック層である。また、第2ポンプセルを構成するセラミック層は、積層方向に貫く挿通孔を有する第2ポンプセル用絶縁性セラミック部と、第2ポンプセル用絶縁性セラミック部の挿通孔内に配置された第2ポンプセル用固体電解質部とを有する第2ポンプセル用複合セラミック層である。
さらに、検知セル用固体電解質部には、導入路が設けられている。そして、検知セル用固体電解質部の積層方向の厚みは、第2ポンプセル用固体電解質部の積層方向の厚みより厚く設定されている。
このように、第1局面のガスセンサ素子では、酸素濃度検知セル及び第2ポンプセルを構成するセラミック層が、それぞれ複合セラミック層にて形成されており、挿通孔が形成された絶縁性セラミック部の挿通孔内に固体電解質部が配置されているので、被測定ガス中の特定ガスの検出精度が高いという効果がある。
つまり、第1局面のガスセンサ素子では、固体電解質部が絶縁性セラミック部の挿通孔内に配置されており、従来のように、固体電解質部の側面がガスセンサ素子の側面の一部を構成しておらず、固体電解質部が外部に露出していないので、ガスセンサ素子の側面に
カーボン等の導電物質が付着しても、例えば酸素濃度検知セルや第2ポンプセルの固体電解体部同士が導通状態となりにくい。
従って、例えばガスセンサ素子を長期間使用した場合でも、例えば酸素濃度を精度良く検出できるとともに、被測定ガス中の特定ガスの検出精度の低下を抑制できるという顕著な効果を奏する。
また、第1局面のガスセンサ素子では、被測定ガスが導入される導入路が、検知セル用固体電解質部を貫通するように設けられているので、その点からも、特定ガスの検出精度が高いという効果がある。
詳しくは、被測定ガスを第1測定室から導入路を介して第2測定室に導入し、第2測定室にて特定ガスの濃度を精度良く検出するためには、導入路に導入される被測定ガス中の酸素濃度を精度良く検出し、所定の酸素濃度となるように第1ポンプセルを駆動する必要がある。
これに対して、第1局面のガスセンサ素子では、導入路は検知セル用固体電解質部を貫通するように設けられているので、酸素濃度検知セルの近傍に導入路が配置されることとなり、導入路に導入される被測定ガス中の酸素濃度を精度良く検出できる。
従って、このような精度の良い酸素濃度の検出に基づいて、第1ポンプセルによってポンピングされて所定の酸素濃度となった被測定ガスが、導入路を介して第2測定室に導入されるので、被測定ガスの特定ガスを精度良く検出できる。
このように、第1局面のガスセンサ素子は、導入路の近傍の被測定ガス(即ち実質的に導入路に導入されると考えられる被測定ガス)中の酸素濃度を精度良く検出できるので、結果として、特定ガスも精度良く検出することができる。
さらに、第1局面のガスセンサ素子では、検知セル用固体電解質部の積層方向の厚みは、第2ポンプセル用固体電解質部の積層方向の厚みより厚く設定されているので、検知セル用固体電解質部の強度が高いという利点がある。
通常、固体電解質部を構成する固体電解質は、例えばアルミナ等の絶縁性セラミックに比べて強度が低いが、第1局面のガスセンサ素子では、検知セル用固体電解質部の厚みが、上述のように十分に大きく設定されているので、固体電解質部を貫通するような導入路を設けても、固体電解質部にクラックや割れが生じにくく、強度が高いという利点がある。
ここで、前記特定ガスの検出とは、特定ガスの有無の検出又は特定ガスの濃度の検出を含むものである。
また、前記固体電解質部は、イオン伝導性を有している固体である。また、前記絶縁性セラミック部は、固体電解質部に比べて、電子伝導性及びイオン伝導性が低いものである。
(2)本発明の第2局面のガスセンサ素子では、第1ポンプセルを構成するセラミック層は、積層方向に貫く挿通孔を有する第1ポンプセル用絶縁性セラミック部と、該第1ポンプセル用絶縁性セラミック部の挿通孔内に配置された第1ポンプセル用固体電解質部と、を有する第1ポンプセル用複合セラミック層であってもよい。また、検知セル用固体電解質部の積層方向の厚みは、第1ポンプセル用固体電解質部の積層方向の厚みより厚くてもよい。
このような構成の第2局面のガスセンサ素子では、第1ポンプセル用絶縁性セラミック部の挿通孔に第1ポンプセル用固体電解質部が配置されているので、第1ポンプセル用固体電解質部は他の固体電解質部と同様に外部に露出していない。そのため、ガスセンサ素子の側部に導電物質が付着しても、外部からの電流による影響を受けにくいので、第1ポンプセルの動作を好適に行うことができる。
また、第2局面のガスセンサ素子では、検知セル用固体電解質部の厚みは十分に厚いので、その固体電解質部の強度が高いという効果がある。
さらに、第1ポンプセル用固体電解質部の厚みは、検知セル用固体電解質部の厚みに比べて薄いので、好適に酸素のポンピングを行うことができる。
つまり、第1ポンプセル用固体電解質部は十分に薄いので、酸素のポンピングの際の抵抗が小さく、よって、電流を流して必要なポンピングを行う際に、特定ガスが分解するような高い電圧となりにくい。そのため、特定ガスの濃度が変化し難いので、特定ガスを精度良く検出することができる。
(3)本発明の第3局面のガスセンサ素子では、第1内側電極と、第1対電極と、検知電極と、基準電極と、第2内側電極と、第2対電極とが、それぞれ配置される第1ポンプセル用固体電解質部、検知セル用固体電解質部、第2ポンプセル用固体電解質部の周縁よりも内側に設けられていてもよい。
各電極を構成する電極材料としては、例えば白金のような高価な金属が使用されるが、第3局面のガスセンサ素子では、電極は固体電解質部の周縁より内側(積層方向から見た場合(平面視)で内側)に形成されるので、電極に使用する金属が少なくて済む。よって、省資源に寄与するとともに、コスト低減に寄与するという利点がある。
ここで、「内側」とは、積層方向から見た場合(平面視)で、固体電解質部の内周側のことである。なお、各電極は、各固体電解質部の全周に渡って内側に形成されていることが望ましいが、一部、固体電解質部と同一又は外側に形成されていてもよい。
(4)本発明の第4局面のガスセンサは、被測定ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子として、上述のいずれかのガスセンサ素子を備える。
このように、上述のいずれかのガスセンサ素子を備えるガスセンサは、特定ガスの検出精度の低下を抑制できる。また、構成部品の強度を高めることができるので、耐久性が向上するという効果がある。
本発明のガスセンサ素子およびガスセンサによれば、被測定ガス中の特定ガスの検出精度の低下を抑制でき、また、導入路の設けられた固体電解質部の強度を高めることができる。
実施形態のNOxセンサを軸方向に沿って破断した状態を示す断面図である。 ガスセンサ素子の外観を示す斜視図である。 ガスセンサ素子を分解して示す斜視図である。 ガスセンサ素子を長手方向に沿って積層方向に破断し、その先端側における内部構造を模式的に示す説明図である。 (a)は第1セラミック層の先端側を示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は第2セラミック層の先端側を示す平面図、(d)は(c)の側面図、(e)は第3セラミック層の先端側を示す平面図、(f)は(e)の側面図である。 ガスセンサ素子の成形体の製造方法に関する説明図である。
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に示す実施形態では、ガスセンサの一種であるNOxセンサを例に挙げる。具体的には、自動車や各種内燃機関における排気管に装着されるガスセンサであって、測定対象となる排気ガス中の特定ガス(窒素酸化物:NOx)を検出するガスセンサ素子(検出素子)が組み付けられて構成されるNOxセンサを例に挙げて説明する。
[1.実施形態]
[1−1.NOxセンサの全体構成]
まず、本実施形態のガスセンサ素子が使用されるNOxセンサの全体の構成について、図1に基づいて説明する。
図1に示す様に、本実施形態におけるNOxセンサ1は、排気管に固定するためのネジ部3が外表面に形成された筒状の主体金具5と、軸線O方向(NOxセンサ1の長手方向:図1の上下方向)に延びる板状形状のガスセンサ素子7と、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ9と、軸線O方向に貫通する貫通孔11の内壁面がガスセンサ素子7の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される第1セパレータ13と、ガスセンサ素子7と第1セパレータ13との間に配置される6個(図1には2個のみ図示)の接続端子15と、を主に備えている。
ガスセンサ素子7は、後に詳述する様に、長手方向に伸びる直方体形状(板型形状)に形成されており、その先端側に、被測定ガスに含まれる特定ガス(ここではNOx)を検出する検知部17を備える。また、ガスセンサ素子7は、後端側(図1の上方:長手方向後端部)の外表面のうち表裏の位置関係となる第1主面21および第2主面23に、電極パッド25,26,27,28,29,30(詳細は、図2、図3参照)が形成されている。
接続端子15は、ガスセンサ素子7の電極パッド25,26,27,28,29,30にそれぞれ電気的に接続されるとともに、外部からNOxセンサ1の内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されている。これにより、リード線35が接続される外部機器と電極パッド25,26,27,28,29,30との間に流れる電流の電流経路が形成される。
主体金具5は、軸線O方向に貫通する貫通孔37を有し、貫通孔37の径方向内側に突出する棚部39を有する略筒状形状に構成されている。この主体金具5は、検知部17を貫通孔37の先端よりも先端側に配置し、電極パッド25,26,27,28,29,30を貫通孔37の後端よりも後端側に配置する状態で、貫通孔37に挿通されたガスセンサ素子7を保持するよう構成されている。
また、主体金具5の貫通孔37の内部には、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、滑石リング43,45、及び上述のセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
このセラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締パッキン49が配置され、一方、セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、滑石リング
43,45やセラミックホルダ41を保持するための金属ホルダ51が配置されている。なお、主体金具5の後端部47は、加締パッキン49を介して、セラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
更に、主体金具5の先端部53の外周には、ガスセンサ素子7の突出部分を覆う金属製(例えば、ステンレスなど)の二重構造とされたプロテクタ55が溶接等によって取り付けられている。
一方、主体金具5の後端側外周には、外筒57が固定されており、外筒57の後端側の開口部には、グロメット59が配置されている。このグロメット59には、各電極パッド25,26,27,28,29,30とそれぞれ電気的に接続される6本のリード線35(図1では2本が図示)が挿通されるリード線挿通孔61が形成されている。
なお、第1セパレータ13の外周には、鍔部63が形成されており、鍔部63は、保持部材65を介して外筒57に固定されている。また、第1セパレータ13の後端側には、第1セパレータ13とグロメット59に挟持される第2セパレータ67が配置されており、接続端子15の後端側が第2セパレータ67内に挿入されている。
[1−2.ガスセンサ素子の構成]
次に、本実施形態の要部であるガスセンサ素子7について、図2〜図5に基づいて説明する。
なお、図3〜図5において、図面左方向がガスセンサ素子7の先端側であり、図面右方向がガスセンサ素子7の後端側である。また、図2では、図面下方がガスセンサ素子の7の先端側であり、図面上方がガスセンサ素子7の後端側である。なお、図4では、ガスセンサ素子7の長手方向における中間位置の図示を省略するとともに、ガスセンサ素子7と外部機器(制御部70)との電気的な接続状態を模式的に表している。
<ガスセンサ素子の全体構成>
図2に示す様に、ガスセンサ素子7は、長手方向(Y軸方向)に延びる長尺の板材である。なお、図2において、長手方向がガスセンサの軸線O方向に沿う形態となる。また図2のZ軸方向は、長手方向に垂直な積層方向であり、X軸方向は、長手方向及び積層方向に垂直な幅方向である。
ガスセンサ素子7は、長手方向に伸びる直方体形状(板型形状)に形成されており、長手方向に伸びる板状の素子部71と、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73とが、積層されて構成されている。ガスセンサ素子7は、その先端側に、被測定ガスに含まれる特定ガスを検出する検知部17を備える。
つまり、図3及び図4に示すように、ガスセンサ素子7は、積層方向(図3の上下方向及び図4の左右方向)の一方の側(図3の上側及び図4の左側)に配置されて、長手方向に伸びる板状の素子部71と、素子部71の反対側(裏側)に配置されて、同じく長手方向に延びる板状のヒータ73とを備える。
更に、素子部71は、後述するように、第1ポンプセル75と、酸素濃度検知セル77と、第2ポンプセル79とを備える。
<素子部及びヒータの構成>
素子部71は、第1絶縁層81、第1セラミック層83、第2絶縁層85、第2セラミック層87、第3絶縁層89、第3セラミック層91を、この順に積層した構造を有する。また、ヒータ73は、第4絶縁層93、第5絶縁層95をこの順に積層した構造を有す
る。
なお、第1〜第3セラミック層83,87,91は、ガスセンサ素子7の長手方向に延びる板状である。
第1セラミック層83と第2セラミック層87との間には、第1測定室97が形成されている。第1測定室97の先端側領域は、2つの拡散抵抗体99(図3参照)を介して外部に繋がっており、拡散抵抗体99を介して外部から外気である被測定ガス(排気ガス)がガスセンサ素子7の内部に導入される。第1測定室97は、その後端側領域において、第2セラミック層87に形成される後述する導入路101を介して、第3絶縁層89に形成される第2測定室103に繋がっている。なお、拡散抵抗体99は、アルミナ等の多孔質物質を用いて形成され、気体の流通が可能になっている。
第5、第6絶縁層93,95の間には、タングステン等の導体によって形成された発熱抵抗体105が備えられている。発熱抵抗体105は、ヒータ73の一部として備えられている。
ヒータ73は、外部から供給された電力によって発熱抵抗体105が発熱することで、ガスセンサ素子7(特に、素子部71)を所定の活性温度に昇温し、固体電解質体の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させるために用いられる。
また、図3、図4に示すように、第1セラミック層83は、長手方向に延びる板状の第1絶縁性セラミック部111と、長手方向先端側に設けられ、第1絶縁性セラミック部111を厚み方向に貫通する第1挿通孔113と、第1挿通孔113を埋めるように配置された板状の第1固体電解質部115とを備えている。
また、第2セラミック層87は、長手方向に延びる板状の第2絶縁性セラミック部117と、長手方向先端側に設けられ、第2絶縁性セラミック部117を厚み方向に貫通する第2挿通孔119と、第2挿通孔119を埋めるように配置された板状の第2固体電解質部121とを備えている。
さらに、第3セラミック層91は、長手方向に延びる板状の第3絶縁性セラミック部123と、長手方向先端側に設けられ、第3絶縁性セラミック部123を厚み方向に貫通する第3挿通孔125と、第3挿通孔125を埋めるように配置された第3固体電解質部127とを備えている。
なお、第1セラミック層83、第2セラミック層87、第3セラミック層91の詳細については、後述する。
<各セルの構成>
図3及び図4に示すように、本実施形態では、素子部71は、第1ポンプセル75と、酸素濃度検知セル77と、第2ポンプセル79とを有している。
第1ポンプセル75は、第1セラミック層83の第1固体電解質部115と、これを挟持するように配置された一対の電極(第1内側電極137、第1対電極139)とを備えている。第1内側電極137は、第1測定室97に面している。第1内側電極137及び第1対電極139は、いずれも白金を主成分にして形成されている。
第1対電極139は、第1絶縁層81のうちの第1対電極139と対向する部分(開口部141)に埋め込まれた多孔質部143(例えば、アルミナ)により覆われている。多孔質部143は、ガス(例えば、酸素)が通過可能に構成されている。
酸素濃度検知セル77は、第2セラミック層87の第2固体電解質部121と、これを挟持するように配置された検知電極145及び基準電極147とを備えている。
第3絶縁層89のうち、基準電極147に接する部分には、第3絶縁層89の厚さ方向に貫通する空間部分としての基準酸素室149が形成されている。基準酸素室149は、平面視で、円形状に形成されると共に、その内部の第3固体電解質部127に面する領域に、多孔質部151(図4参照)が配置され、その他の領域が空洞として形成されている。
また、第3絶縁層89のうち、基準酸素室149より後端側には、第3絶縁層89の厚さ方向に貫通する空間部分としての第2測定室103が形成されている。なお、第2測定室103は、平面視で、矩形状である。
この酸素濃度検知セル77については、予め定められた微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素が酸素濃度検知セル77を介して第1測定室97から基準酸素室149に送り込まれる。そして、基準酸素室149の酸素濃度は、所定の濃度に維持される。これにより、基準酸素室149は、酸素濃度の基準として利用される。
第2ポンプセル79は、第3固体電解質部127と、第3固体電解質部127のうち、第2測定室103に面した表面に配置された第2内側電極153と、基準酸素室149に面した表面に配置された第2対電極155とを備えている。
前記各電極139,137,145,147,153,155は、各電極139,137,145,147,153,155が設けられた各固体電解質部115,121,127において、平面視で、各固体電解質部115,121,127の外周より内側(内周側)に形成されている。
なお、前記各電極139,137,145,147,153,155は、いずれも白金を主成分として形成されている。また、各電極139,137,145,147,153,155は、電極反応を良好に維持するために、気体を内部に流通可能な程度の多孔質状に形成されている。すなわち、被測定ガスの気体(酸素やNOx等の気相)と電極(触媒相)と固体電解質部(酸素イオン伝導相)とが接する三相界面を良好に形成する程度の多孔質状に形成されている。
また、第1絶縁層81の後端側外表面には、3つの電極パッド25,26,27が形成されており、第5絶縁層95の後端側外表面にも、3つの電極パッド28,29,30が形成されている。
図3に示すように、各電極139,137,145,147,153,155および発熱抵抗体105は、配線ユニットL1,L2,L3,L4,L5,L6によって、対応する電極パッド25,26,27,28,29,30と電気的に接続されている。
詳細には、第1電極パッド25は、第1配線ユニットL1によって第1対電極139と電気的に接続される。第2電極パッド26は、第2配線ユニットL2によって基準電極147と電気的に接続される。第3電極パッド27は、第3配線ユニットL3によって第1内側電極137、検知電極145、第2内側電極153に電気的に接続される。第4電極パッド30は、第4配線ユニットL4によって第2対電極155に電気的に接続される。
また、第1ヒータ用電極パッド28は、第1ヒータ用配線ユニットL5によって発熱抵抗体105に電気的に接続される。第2ヒータ用電極パッド29は、第2ヒータ用配線ユニットL6によって発熱抵抗体105に電気的に接続される。
第1配線ユニットL1は、第1リード部L1aと第1スルーホール導体部L1bとを有する。第1スルーホール導体部L1bは、貫通孔H1によって形成される。第1スルーホール導体部L1bは、貫通孔H1の内表面に導体を形成することで作成される(なお、他のスルーホール導体部の導体の形成も同様である)。
第2配線ユニットL2は、第2リード部L2aと、第2スルーホール導体部L2bとを有する。第2スルーホール導体部L2bは、各貫通孔H2,H3,H4,H5によって形成される。
第3配線ユニットL3は、第3リード部L3aと、第4リード部L3bと、第5リード部L3cと、第3スルーホール導体部L3dとを有する。第3スルーホール導体部L3dは、各貫通孔H6,H7,H8,H9,H10によって形成される。
上記のように、第1内側電極137、検知電極145、第2内側電極153は、共通の第3電極パッド27に電気的に接続されている。そして、第3電極パッド27は、制御部70のグランド電位に接続されている。
第4配線ユニットL4は、第6リード部L4aと、第4スルーホール導体部L4bとを有する。第4スルーホール導体部L4bは、各貫通孔H11,H12,H13によって形成される。
第1ヒータ用配線ユニットL5は、第1ヒータ用リード部L5aと、第1ヒータ用スルーホール導体部L5bとを有する。第1ヒータ用スルーホール導体部L5bは、貫通孔H14によって形成される。
第2ヒータ用配線ユニットL6は、第2ヒータ用リード部L6aと、第2ヒータ用スルーホール導体部L6bとを有する。第2ヒータ用スルーホール導体部L6bは、貫通孔H15によって形成される。
<各セラミック層の構成>
本実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、第1セラミック層83は、長手方向に延びる板状の第1絶縁性セラミック部111と、第1絶縁性セラミック部111を厚み方向に貫通する第1挿通孔113と、第1挿通孔113の全体を埋めるように配置された板状の第1固体電解質部115とを備えている。
つまり、第1セラミック層83は、第1絶縁性セラミック部111と第1固体電解質部115とからなる第1ポンプセル用複合セラミック層である。なお、第1挿通孔113及び第1固体電解質部115は、平面視で、例えば矩形状である。
図5(c)、(d)に示すように、第2セラミック層87は、長手方向に延びる板状の第2絶縁性セラミック部117と、第2絶縁性セラミック部117を厚み方向に貫通する第2挿通孔119と、第2挿通孔119の全体を埋めるように配置された板状の第2固体電解質部121とを備えている。
つまり、第2セラミック層87は、第2絶縁性セラミック部117と第2固体電解質部121とからなる検知セル用複合セラミック層である。
また、図5(a)、(c)に示すように、第2固体電解質部121は、平面視で、第1固体電解質部115より後端側に配置されている。なお、第2挿通孔119及び第2固体電解質部121は、平面視で、例えば矩形状である。
この第2固体電解質部121には、平面視で略中央に、例えば面積中心(平面形状における重心)より若干後端側に、前記導入路101が設けられている。この導入路101は、第2固体電解質部121を厚み方向に貫通する円柱状の貫通孔である。なお、導入路101の平面形状は、例えば直径0.4〜1.2mmの範囲内の例えば直径0.8mmの円形である。
図5(e)、(f)に示すように、第3セラミック層91は、長手方向に延びる板状の第3絶縁性セラミック部123と、第3絶縁性セラミック部123を厚み方向に貫通する第3挿通孔125と、第3挿通孔125の全体を埋めるように配置された第3固体電解質部127とを備えている。
つまり、第3セラミック層91は、第3絶縁性セラミック部123と第3固体電解質部127とからなる第2ポンプセル用複合セラミック層である。
また、図5(c)、(e)に示すように、第3固体電解質部127は、平面視で、第2固体電解質部121と同様な位置に配置されている。なお、第3挿通孔125及び第3固体電解質部127は、平面視で、例えば矩形状である。
なお、第1〜3挿通孔113,119,125及び第1〜第3固体電解質部115,121,127の四隅は、平面視でR形状となるように丸めてある。
そして、本実施形態では、前記第2固体電解質部121の厚みT2は、第1、第3固体電解質部115,127の厚みT1、T3より大きく設定されている。例えば、各厚みは、T2>T3>T1のように設定されている。詳しくは、第2固体電解質部121の厚みT2は、例えば100〜300μmの範囲内の例えば200μmである。第1固体電解質部115の厚みT1は、例えば20〜160μmの範囲内の例えば90μmである。第3固体電解質部127の厚みT3は、例えば60〜220μmの範囲内の例えば140μmである。
ここで、第1〜第3固体電解質部115,121,127は、それぞれ、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主成分に用いて形成されている。第1〜第5絶縁層81,85,89,93,95、第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123は、電気絶縁性を有するアルミナを主成分に用いて形成されており、気体等の流体の透過(流通)を防止できる程度に密に形成されている。
なお、主成分とは、「各構成中の主材料の含有量が50wt%以上であること」を指し、例えば、第1〜第3固体電解質部115,121,127は、ジルコニアが50wt%以上含有されている。
[1−3.ガスセンサ素子の動作]
次に、ガスセンサ素子7の動作の一例について説明する。
まず、エンジンの始動によって制御部70(図4参照)が起動すると、制御部70は、ヒータ73に電力を供給する。ヒータ73は、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79を活性化温度まで加熱する。
そして、各セル75、77、79が活性化温度まで加熱されると、制御部70は、第1ポンプセル75に電流(第1ポンピング電流Ip1)を流す。これにより、第1ポンプセル75は、第1固体電解質部115を介して第1内側電極137と第1対電極139との間で酸素を移動させることで、第1測定室97に流入した被測定ガス(排気ガス)における酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う。
制御部70は、酸素濃度検知セル77の電極間電圧(端子間電圧)が一定電圧V1(例えば425mV)になるように、第1ポンプセル75に通電する第1ポンピング電流Ip1を制御する。酸素濃度検知セル77の電圧は、基準酸素室149の酸素濃度を基準として、検知電極145における酸素濃度に応じた値となる。この制御によって、第1測定室97の内部の酸素濃度は、NOxが分解しない程度に調整される。
第1測定室97にて酸素濃度が調整された被測定ガスは、第2固体電解質部121の導入路101を介して、第2測定室103に向かってさらに流れる。
制御部70は、第2ポンプセル79に電極間電圧(端子間電圧)を印加する。この電圧は、被測定ガス中のNOxガスが酸素と窒素ガスに分解する程度の一定電圧に設定されている(酸素濃度検知セル77の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)。これにより、被測定ガス中のNOxが、窒素と酸素に分解される。
制御部70は、NOxの分解により生じた酸素を第2測定室103から汲み出すように、第2ポンプセル79に電流(第2ポンピング電流Ip2)が流れる。第2ポンピング電流Ip2とNOx濃度の間には比例関係があるので、第2ポンピング電流Ip2の電流値を検出することによって被測定ガス中のNOx濃度を検出することができる。
なお、ガスセンサ素子7は、接続端子15およびリード線35を介して、外部機器(制御部70)に接続される。制御部70は、ヒータ73に発熱用の電力を供給するとともに、素子部71の各セル(第1ポンプセル75,酸素濃度検知セル77,第2ポンプセル79)との間で信号を送受信することによって、ガスセンサ素子7を制御する。
なお、本実施形態では、制御部70は、オペアンプ等を用いて形成された電子回路として備えられる。制御部70は、CPUやメモリなどを有するコンピュータを用いて形成してもよい。
[1−4.ガスセンサの製造方法]
次に、本実施形態のNOxセンサ1の製造方法について、前記図3及び図6を用いて簡単に説明する。
なお、ここでは、以下に述べるように、図3に示す下方の層から順次他の層を積層するようにしてNOxセンサ1を製造する例について説明するが、各構成の製造手順は、これに限定されるものではない。
<材料作製工程>
図3に示すように、ガスセンサ素子7を製造する場合、まず、公知のガスセンサ素子7の材料となる各種積層材料、即ち、素子部71の第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123となる未焼成絶縁シート、第1〜第3固体電解質部115,121,127となる未焼成固体電解質シート、第1絶縁層81となる未焼成絶縁層シート、ヒータ73の第4、第5絶縁層93、95となる未焼成絶縁シートを作製する。
具体的には、未焼成絶縁シートを形成する場合には、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、ブチラール樹脂とジブチルフタレートとを加えて、更に混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成絶縁シートを作製する。
特に、第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123となる各未焼成絶縁シートには、第1〜第3固体電解質部115,121,127の未焼成固体電解質シートの平
面形状に対応した矩形状の貫通孔を形成する。
つまり、ガスセンサ素子7は、第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123の挿通孔113,119,125に、第1〜第3固体電解質部115,121,127が埋め込まれた構成であるので、予め、第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123となる各未焼成絶縁シートに、第1〜第3固体電解質部115,121,127の各挿通孔113,119,125の平面形状に対応した貫通孔を形成する。
また、第1絶縁層81となる未焼成絶縁シートにも、開口部141に対応した矩形状の貫通孔を形成する。
なお、後述する焼成によって、各未焼成絶縁シート及びその貫通孔の形状は若干変化する(以下、未焼成の部材についても、焼成の前後で形状は変化する)。
また、前記未焼成固体電解質シートを形成する場合、まず、ジルコニアを主体とするセラミック粉末に対して、アルミナ粉末やブチラール樹脂などを加えて、さらに混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、スラリーを生成する。そして、このスラリーをドクターブレード法によりシート状とし、混合溶媒を揮発させることで未焼成固体電解質シートを作製する。
そして、この第1〜第3各固体電解質部115,121,127となる未焼成固体電解質シートを、第1〜第3各固体電解質部115,121,127に対応した矩形状に切断する。
詳しくは、第1〜第3各固体電解質部115,121,127となる未焼成固体電解質シートを、第1〜第3絶縁性セラミック部111,117,123の未焼成絶縁シートに開けられた貫通孔(即ち、各挿通孔113,119,125に対応した形状の貫通孔)に隙間無く埋め込むことができるような矩形状に切断する。
これとは別に、焼成後に、第2、第3絶縁層85,89となる材料として、アルミナを主体とするセラミック粉末に対して、ブチラール樹脂とジブチルフタレートとを加えて、更に混合溶媒(トルエン及びメチルエチルケトン)を混合して、アルミナスラリーを作製する。
また、焼成後に、拡散抵抗体99、多孔質部143、多孔質部151などになる未焼成の多孔質を形成ために、アルミナ粉末100質量%、加熱焼失材(例えば、カーボンなど)及び可塑剤を湿式混合により分散した多孔質用スラリーを作製する。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPを有する。
そして、これらの材料を用いて、下記に示すように、ガスセンサ素子7を作製する。
<積層工程>
まず、ヒータ73の第5絶縁層95となる未焼成絶縁シートの表面(上面)に、発熱抵抗体105及び第1、第2ヒータ用リード部L5a,L6aとなるヒータパターンを形成する。
ヒータパターンの材料として、例えば白金を主成分とし、セラミック(例えば、アルミナ)が含まれる白金ペーストを作製し、この白金ペーストを印刷してヒータパターンを形成する。
また、未焼成絶縁シートの下面には、例えば白金等のメタライズインクを用いて、各電極パッド28,29,30の形状に印刷しておく。
さらに、第5絶縁層95には、貫通孔H13,H14,H15となる孔をあけておき、この孔の内周面には、前記メタライズインクを塗布しておく。
なお、他の貫通孔H1〜H15の形成方法及びメタライズインクの塗布方法も同様であるので、以下では、他の貫通孔H1〜H15に関する同様な説明は省略する。
次に、ヒータパターン等を形成した第5絶縁層95の表面に、ヒータパターンを覆うように、第4絶縁層93となる未焼成絶縁シートを積層する。
次に、第3絶縁性セラミック部123となる未焼成絶縁シートの挿通孔125に対応した貫通孔に、第3固体電解質部127となる未焼成固体電解質シートを埋め込んで、第3セラミック層91となる第3複合シート91a(図3参照)を作製する。
次に、第4絶縁層93となる未焼成絶縁シートの表面(上面)に、第3セラミック層91となる第3複合シート91aを積層する。なお、第3複合シート91aを作製する時期は、第3複合シート91aを積層する前であればよい(以下、他の第1、第2複合シート83a,87a(図3参照)の作製時期も同様である)。
次に、第3複合シート91aの表面に、上述したメタライズインクを用いて、第2内側電極153と第2対電極155となる電極パターンを印刷する。また、上述した白金ペーストを用いて、第4、第5リード部L3c,L4aとなるリードパターンを印刷する。
なお、電極パターンとリードパターンの材料は、他のセラミック層83,87でも同様である。
また、第3複合シート91aの表面(上面)に、上述したアルミナスラリーを用いて、第3絶縁層89となる層を印刷する。
この層を形成する際には、基準酸素室149及び第2測定室103となる部分には層を形成せずに、開口としておく。そして、基準酸素室149となる開口の底部には、多孔質部151となる多孔質スラリーを印刷する。また、多孔質スラリーの上面と第2測定室103となる開口には、昇華剤としてカーボンペーストを印刷する。
次に、第2絶縁性セラミック部117となる未焼成絶縁シートの挿通孔119に対応した貫通孔に、第2固体電解質部121となる未焼成固体電解質シートを埋め込んで、第2セラミック層87となる第2複合シート87aを作製する。
次に、第2複合シート87aの未焼成固体電解質シートに、導入路101となる貫通孔を開ける。なお、この貫通孔には、カーボンペーストを充填する。
そして、第2複合シート87aの上面に、検知電極145となる電極パターンと第3リード部L3bとなるリードパターンを形成する。一方、第2複合シート87aの下面には、基準電極147と第2リード部L2aとなるリードパターンを形成する。
次に、前記第3絶縁層89となる層の表面に、前記電極パターン等を設けた第2複合シート87aを積層する。
次に、第2複合シート87aの表面(上面)に、アルミナスラリーを用いて、第2絶縁層85となる層を印刷する。
この層には、拡散抵抗体99を形成する位置に第1の開口を設けるとともに、第1測定室115となる位置にも第2の開口を設けておく。そして、第1の開口には、拡散抵抗体99となる多孔質スラリーを印刷する。また、第1測定室115となる第2の開口には、カーボンペーストを印刷する。なお、第1、第2の開口は連通している。
次に、第1絶縁性セラミック部111となる未焼成絶縁シートの挿通孔113に対応した貫通孔に、第1固体電解質部115となる未焼成固体電解質シートを埋め込んで、第1セラミック層83となる第1複合シート83aを作製する。
そして、この第1複合シート83aの上面に、第1対電極139となる電極パターンと第1リード部L1aとなるリードパターンを形成する。一方、第1複合シート83aの下面には、第1内側電極137と第3リード部L3aとなるリードパターンを形成する。
次に、前記第2絶縁層85となる層の表面に、前記電極パターン等を設けた第1複合シート83aを積層する。
次に、第1複合シート83aの表面に、第1絶縁層81となる未焼成絶縁シートを積層する。
なお、この未焼成絶縁シートの開口部141に対応した貫通孔には、予め多孔質スラリーを印刷しておく。また、この未焼成絶縁シートの下面には、前記メタライズインクを用いて、各電極パッド25,26,27の形状に印刷しておく。
このようにして、各層を積層することにより、未焼成積層体が形成される。
そして、この未圧着積層体を1MPaで加圧することにより、図6に示す様な圧着された成形体161を得る。
その後、加圧により得られた成形体161を、所定の大きさで切断することにより、ガスセンサ素子7と大きさが同等の複数(例えば10個)の未焼成積層体を得る。
その後、この未焼成積層体を樹脂抜きし、さらに焼成温度1500℃にて、1時間で本焼成して、図2に示す様なガスセンサ素子7を得る。
このようにしてガスセンサ素子7を得た後、ガスセンサ素子7を主体金具5に組み付ける組付工程を行う。
即ち、この工程では、上記製造方法で作製されたガスセンサ素子7を金属ホルダ51に挿入し、さらにガスセンサ素子7をセラミックホルダ41、滑石リング43で固定し、組み立て体を作製する。その後、この組み立て体を主体金具5に固定し、ガスセンサ素子7の軸線O方向後端部側を滑石リング45、セラミックスリーブ9に挿通させつつ、これらを主体金具5に挿入する。
そして、主体金具5の後端部47にてセラミックスリーブ9を加締め、下部組立体を作製する。なお、下部組立体には、あらかじめプロテクタ55が取付けられている。
一方、外筒57、セパレータ13、グロメット59などを組みつけ、上部組立体を作製する。そして、下部組立体と上部組立体とを接合し、NOxセンサ1を得る。
[1−5.効果]
(1)本実施形態のガスセンサ素子7では、酸素濃度検知セル77及び第2ポンプセル79を構成する第2、第3セラミック層87,91は、それぞれ、検知セル用複合セラミック層、第2ポンプセル用複合セラミック層にて形成されており、挿通孔119,125が形成された第2、第3絶縁性セラミック部117,123を備えている。そして、この挿通孔119,125内には第2、第3固体電解質部121,127が配置されている(即ち埋め込まれている)ので、被測定ガス中のNOxの検出精度が高いという効果がある。
つまり、このガスセンサ素子7では、第2、第3固体電解質部121,127の側面が
ガスセンサ素子7の側面の一部を構成しておらず、第2、第3固体電解質部121,127が外部に露出していないので、ガスセンサ素子7の側面にカーボン等の導電物質が付着しても、酸素濃度検知セル77や第2ポンプセル79に測定ノイズとなる電流が流れにくい。
従って、例えばガスセンサ素子7を長期間使用した場合でも、NOx等の検出精度の低下を抑制できるという顕著な効果を奏する。
また、本実施形態のガスセンサ素子7では、被測定ガスが導入される導入路101が、第2セラミック層(即ち検知セル用複合セラミック層)87の第2固体電解質部121を貫通するように設けられているので、その点からも、NOx検出精度が高いという効果がある。
つまり、このガスセンサ素子7では、実際に導入路101に導入される近傍に酸素濃度検知セル77が配置されるため、導入路101に導入される被測定ガス中の酸素濃度を精度良く検知できるので、NOx濃度を精度良く検出できる。
さらに、本実施形態のガスセンサ素子7では、第2セラミック層87の第2固体電解質部121の厚みは、第3セラミック層(即ち第2ポンプセル用複合セラミック層)91の第3固体電解質部127の厚みより厚い。
よって、例えばアルミナより強度が低いジルコニア等からなる第2固体電解質部121を貫通するように導入路101を設けても、第2固体電解質部121にクラックや割れが生じにくいという利点がある。
(2)本実施形態のガスセンサ素子7では、第2セラミック層87の第2固体電解質部121の厚みは、第1セラミック層(即ち第1ポンプセル用複合セラミック層)83の第1固体電解質部115の厚みより厚いので、第2固体電解質部121の強度が第1固体電解質部115の強度よりも高いという効果がある。
また、第1セラミック層83の第1固体電解質部115の厚みは、第2セラミック層87の第2固体電解質部121の厚みに比べて薄いので、NOxの分解を抑制しつつ、好適に酸素のポンピングを行うことができる。よって、この点からも、NOx濃度を精度良く検出できる。
(3)本実施形態のガスセンサ素子7では、平面視で、第1内側電極137と、第1対電極139と、検知電極145と、基準電極147と、第2内側電極153と、第2対電極155とが、各固体電解質部115,121,127の周縁よりも内側にて、各固体電解質部115,121,127上に設けられている。
従って、各電極137,139,145,147,153,155に使用する金属が少なくて済むので、省資源に寄与するとともに、コスト低減に寄与するという利点がある。
(4)本実施形態のNOxセンサ1は、上述したガスセンサ素子7を備えているので、NOxの検出精度の低下を抑制できる。また、構成部品の強度を高めることができるので、耐久性が向上するという効果がある。
[1−6.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
NOxセンサ1、ガスセンサ素子7、第1ポンプセル75、酸素濃度検知セル77、第2ポンプセル79が、それぞれ、ガスセンサ、ガスセンサ素子、第1ポンプセル、酸素濃度検知セル、第2ポンプセルの一例に相当する。
また、また、第1測定室97、導入路101、第2測定室103が、それぞれ、第1測定室、導入路、第2測定室の一例に相当する。
また、セラミック層83,87,91が、セラミック層の一例に相当し、第1セラミック層83、第2セラミック層87、第3セラミック層が、それぞれ、第1ポンプセル用複合セラミック層、検知セル用複合セラミック層、第2ポンプセル用複合セラミック層の一例に相当する。
また、第1内側電極137、第1対電極139、検知電極145、基準電極147、第2内側電極153、第2対電極155が、それぞれ、第1内側電極、第1対電極、検知電極、基準電極、第2内側電極、第2対電極の一例に相当する。
さらに、第1絶縁性セラミック部111、第2絶縁性セラミック部117、第3絶縁性セラミック部123が、それぞれ、第1ポンプセル用絶縁性セラミック部、検知セル用絶縁性セラミック部、第2ポンプセル用絶縁性セラミック部の一例に相当し、第1固体電解質部115、第2固体電解質部121、第3固体電解質部127が、それぞれ、第1ポンプセル用固体電解質部115、検知セル用固体電解質部121、第2ポンプセル用固体電解質部の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
(1)例えば、第1〜第3固体電解質部の平面形状(平面視での形状)としては、本実施形態では矩形状が挙げられているが、それ以外の多角形や円形等の他の形状であってもよい。
(2)第2固体電解質部の導入路の平面形状としては、本実施形態では円形が挙げられているが、それ以外の多角形や楕円形等の他の形状であってもよい。
(3)基準酸素室としては、本実施形態では周囲が密閉された空間を採用しているが、例えば大気と連通するように構成してもよい。
(4)第1ポンプセル75は、本実施形態では、第1セラミック層83を用いて形成されていたが、例えば、第2セラミック層87を用いて形成してもよい。具体的には、第2セラミック層87の第2挿通孔119よりも先端側に、第1挿通孔113を設け、この第1挿通孔113に第1固体電解質部115を配置してもよい。つまり、この場合には、第2セラミック層87は、第1ポンプセル用複合セラミック層と検知セル用複合セラミック層とを兼ねる。
(5)酸素濃度検知セル77は、本実施形態では、第2セラミック層87を用いて形成されていたが、例えば、第1セラミック層83を用いて形成してもよい。具体的には、第1セラミック層83の第1挿通孔113よりも後端側に、第2挿通孔119を設け、この第2挿通孔119に第2固体電解質部121を配置してもよい。つまり、この場合には、第1セラミック層83は、第1ポンプセル用複合セラミック層と検知セル用複合セラミック層とを兼ねる。
(6)第1〜第3固体電解質部を形成する場合として、本実施形態では、未焼成固体電解質シートを、第1〜第3絶縁性セラミック部となる未焼成絶縁シートの挿通孔に対応した貫通孔に埋め込むようにしたが、例えば、これらの挿通孔に対応した貫通孔に、それぞ
れ第1〜第3固体電解質部となる材料のペーストを印刷して埋め込むようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、第1測定室と導入路と第2測定室とを空間にて接続しているが、例えば酸素濃度検知セルの下流側から第2ポンプセルの上流側の間の空間内に、この空間を遮断するように配置された多孔質層を設けてもよい。
(8)上記実施形態では、ガスセンサとしてNOxセンサを例に挙げたが、本発明は、例えばアンモニアセンサ等の他のガスセンサにも適用することができる。
1…ガスセンサ、7…ガスセンサ素子、75…第1ポンプセル、77…酸素濃度検知セル、79…第2ポンプセル、83、87、91…セラミック層、97…第1測定室、101…導入路、103…第2測定室、111、117、123…絶縁性セラミック部、113、119、125…挿通孔、115、121、127…固体電解質部、137…第1内側電極、139…第1対電極、145…検知電極、147…基準電極、153…第2内側電極、155…第2対電極

Claims (4)

  1. 三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、
    三つ以上の前記セラミック層のうち、二つのセラミック層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1測定室と、
    前記第1測定室を形成する前記層間とは異なる二つのセラミック層の層間に形成されると共に、前記第1測定室と少なくとも一部が積層方向に重なり合う第2測定室と、
    前記第1測定室と前記第2測定室との間に配置されるセラミック層を前記積層方向に貫くと共に、前記第1測定室と前記第2測定室とを連通する導入路と、
    前記第1測定室内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、前記第1測定室内に晒される第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、
    前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1測定室に隣接するセラミックと、該セラミック層上に設けられ、前記第1測定室内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、
    前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第2測定室内における被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第2測定室に隣接するセラミック層と、該セラミック層上に設けられ、前記第2測定室内に晒される第2内側電極と、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと、
    を有するガスセンサ素子であって、
    前記酸素濃度検知セルを構成するセラミック層は、前記積層方向に貫く挿通孔を有する検知セル用絶縁性セラミック部と、該検知セル用絶縁性セラミック部の前記挿通孔に配置された検知セル用固体電解質部とを有する検知セル用複合セラミック層であり、
    前記第2ポンプセルを構成する前記セラミック層は、前記積層方向に貫く挿通孔を有する第2ポンプセル用絶縁性セラミック部と、該第2ポンプセル用絶縁性セラミック部の前記挿通孔内に配置された第2ポンプセル用固体電解質部とを有する第2ポンプセル用複合セラミック層であり、
    さらに、前記検知セル用固体電解質部には、前記導入路が設けられており、
    前記検知セル用固体電解質部の前記積層方向の厚みは、前記第2ポンプセル用固体電解質部の前記積層方向の厚みより厚いことを特徴とするガスセンサ素子。
  2. 前記第1ポンプセルを構成する前記セラミック層は、前記積層方向に貫く挿通孔を有する第1ポンプセル用絶縁性セラミック部と、該第1ポンプセル用絶縁性セラミック部の前記挿通孔内に配置された第1ポンプセル用固体電解質部とを有する第1ポンプセル用複合セラミック層であり、
    前記検知セル用固体電解質部の前記積層方向の厚みは、前記第1ポンプセル用固体電解質部の前記積層方向の厚みより厚いことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ素子。
  3. 前記第1内側電極と、前記第1対電極と、前記検知電極と、前記基準電極と、前記第2内側電極と、前記第2対電極とが、それぞれ配置される前記第1ポンプセル用固体電解質部、前記検知セル用固体電解質部、前記第2ポンプセル用固体電解質部の周縁よりも内側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
  4. 被測定ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を備えるガスセンサであって、
    前記ガスセンサ素子として、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のガスセンサ素子を備えることを特徴とするガスセンサ。
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