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JP6237282B2 - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池の製造方法 Download PDF

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JP6237282B2 JP2014018424A JP2014018424A JP6237282B2 JP 6237282 B2 JP6237282 B2 JP 6237282B2 JP 2014018424 A JP2014018424 A JP 2014018424A JP 2014018424 A JP2014018424 A JP 2014018424A JP 6237282 B2 JP6237282 B2 JP 6237282B2
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Description

本発明は、非水電解質二次電池の製造方法に関する。
特許文献1には、核材の表面が炭素材料からなる被覆層で被覆された負極活物質を含む負極を用いて作製されたリチウムイオン二次電池が開示されている。
特開2013−222681号公報
しかしながら、特許文献1に記載の負極活物質を含む負極スラリーを通常の塗工方法等によって負極集電体に付着して負極を作製した場合には、負極集電体に対する合材の密着性が悪く、集電体から合材が剥離しやすいという問題があった。また、リチウムイオン二次電池においては、大電流充電におけるリチウムイオン(Li+)の負極活物質への受け入れ性を向上させて、電池特性を向上させることも要望されている。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、負極集電体からの合材の剥離を抑制することができるとともに、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上させて電池特性を向上させることができる非水電解質二次電池を提供することにある。
(1)本発明は、正極と負極と非水電解質とを含み、負極が負極集電体と負極集電体上に転写成形により形成された負極合材層とを含み、負極合材層は負極活物質を含み、負極活物質は核材と核材の表面上の膨張化黒鉛とを含む非水電解質二次電池である。
本発明の非水電解質二次電池においては、膨張化黒鉛によって負極活物質の表面の平滑性が向上するため、転写成形による負極合材層の形成時に負極活物質を負極合材層中に均一かつ高密度に配置することができる。そして、均一かつ高密度に配置された負極活物質により、溶媒の蒸発に伴う結着材の負極合材層の上面方向(負極集電体側とは反対の方向)へのマイグレーションを抑制することができるため、結着材を負極集電体の近傍に位置させることができる。これにより、負極集電体と負極合材層との接合強度を向上することができるため、負極集電体からの合材の剥離を抑制することができる。また、結着材の負極合材層の上面方向へのマイグレーションを抑制することができるため、大電流充電時に負極合材層の上面側に位置する結着材によるLi+の負極合材層内部への侵入への妨害を抑制することができる。これにより、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる。
また、膨張化黒鉛は、結着材と同様に、負極集電体と負極合材層との接合強度の向上に寄与する機能を有しているために結着材の含有量を低減することができることから、結着材の含有量を低減することによって、結着材の負極合材層の上面方向へのマイグレーションをさらに抑制することができる。また、膨張化黒鉛は通常の天然黒鉛と比べて大きな層間距離を有しており、Li+をより容易に受け入れることができるため、この観点からも、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる。
以上の理由により、本発明の非水電解質二次電池によれば、負極集電体からの合材の剥離を抑制することができるとともに、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上させて電池特性を向上させることができる。
(2)本発明の非水電解質二次電池において、膨張化黒鉛の平均粒径は5μm以上15μm以下であることが好ましい。
膨張化黒鉛の平均粒径が5μm以上である場合には、膨張化黒鉛の平均粒径が小さすぎず、膨張化黒鉛と非水電解質との副反応が生じにくいため、たとえば60℃といった高温環境下で保存した後の電池容量の維持率を高くすることができる。また、膨張化黒鉛の平均粒径が15μm以下である場合には、膨張化黒鉛の平均粒径が大きすぎないために、核材の表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出を抑制することができる。
(3)本発明の非水電解質二次電池において、膨張化黒鉛の含有量は負極合材層の0.5質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の0.5質量%以上である場合には、膨張化黒鉛の含有量が少なすぎないために、核材の表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出を抑制することができる。また、膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の3質量%以下である場合には、膨張化黒鉛の含有量が多すぎず、膨張化黒鉛と非水電解質との副反応が生じにくいため、たとえば60℃といった高温環境下で保存した後の電池容量の維持率を高くすることができる。
(4)本発明の非水電解質二次電池において、負極合材層は膨張化黒鉛の表面上の増粘材を含むことが好ましい。負極合材層が膨張化黒鉛の表面上の増粘材を含む場合には、増粘材を介して核材の表面上に膨張化黒鉛を付着させやすくなるため、負極集電体からの負極合材層の剥離の抑制効果および大電流充電におけるLi+の受け入れ性の向上による電池特性の向上効果をより高くすることができる。
(5)さらに、本発明は、膨張化黒鉛と膨張化黒鉛の表面を被覆する増粘材とを含む被覆体を作製する工程と、核材と核材の表面に付着した被覆体とを含む湿潤体を作製する工程と、湿潤体を負極集電体の表面上に転写成形することによって負極集電体上に負極合材層を形成する工程とを含む非水電解質二次電池の製造方法である。本発明の非水電解質二次電池の製造方法においては、負極集電体からの合材の剥離を抑制することができるとともに、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる本発明の非水電解質二次電池を製造することができる。
本発明によれば、負極集電体からの合材の剥離を抑制することができるとともに、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる非水電解質二次電池の製造方法を提供することができる。
実施の形態の非水電解質二次電池の模式的な側面透視図である。 図1に示す電極体の模式的な展開斜視図である。 図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図である。 負極の模式的な拡大断面図である。 膨張化黒鉛のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。 実施の形態の非水電解質二次電池の製造方法の一例のフローチャートである。 負極を作製する工程の一例のフローチャートである。 湿潤体を転写成形する工程において用いられる転写成形装置の一例の模式的な斜視図である。
以下、本発明の一例である実施の形態の非水電解質二次電池について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<非水電解質二次電池の構造>
図1に、実施の形態の非水電解質二次電池の模式的な側面透視図を示す。実施の形態の非水電解質二次電池は、電池外装体10と、電池外装体10の内部に配置された電極体30とを備えている。電極体30は、負極集電体31aと、正極集電体32aとを備えている。負極集電体31aは、負極集電リード21aを介して負極端子21に電気的に接続されている。また、正極集電体32aは、正極集電リード22aを介して正極端子22に電気的に接続されている。さらに、電池外装体10の内部には、非水電解質(図示せず)が充填されている。以下、実施の形態の非水電解質二次電池を構成する主な部材について説明する。
<電池外装体>
電池外装体10の材質は特に制限されず、耐電圧または強度等を考慮して各種金属または合金材料等から適宜選択することができる。電池外装体10の材質は、たとえば、アルミニウム(Al)、Al合金、鉄(Fe)またはステンレス材等を用いることができる。また、電池外装体10の形状は、図1に示す角形に限られず、たとえば円筒形にすることもできる。
<電極体>
図2に、図1に示す電極体30の模式的な展開斜視図を示す。電極体30は、負極31と、正極32と、セパレータ33とを備えている。負極31は、負極集電体31aと、負極集電体31a上に転写成形により形成された負極合材層31bとを備えている。正極32は、正極集電体32aと、正極集電体32a上に設けられた正極合材層32bとを備えている。
負極31、正極32およびセパレータ33はいずれも帯状のシート部材であり、図2に示すように、負極31と正極32とがセパレータ33を挟んで巻回されることにより電極体30が構成されている。
図3に、図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図を示す。図3に示すように、電極体30においては、負極31の負極合材層31bと、正極32の正極合材層32bとがセパレータ33を挟んで対向するように配置されている。また、電極体30の巻回軸方向において、負極31の負極合材層31bの非設置部である負極集電体31aと、正極32の正極合材層32bの非設置部である正極集電体32aとが互いに異なる方向からセパレータ33の外に露出している。
また、図2および図3に示すように、負極合材層31bは、正極合材層32bよりも幅広に形成(すなわち、負極合材層31bの面積が正極合材層32bの面積よりも大きくなるように形成)されている。そのため、負極合材層31bは、正極合材層32bと対向する対向部Fと、正極合材層32bと対向しない非対向部NFとを有している。
以下、電極体30を構成する負極31、正極32およびセパレータ33について説明する。
<負極>
図4に、負極31の模式的な拡大断面図を示す。上述のように、負極31は、負極集電体31aと、負極集電体31a上の負極合材層31bとを備えている。負極合材層31bは、負極活物質41と、結着材42とを含んでいる。
負極活物質41は、核材41aと、核材41aの表面に付着する膨張化黒鉛41bとを含んでいる。
核材41aとしては、たとえば、Li+が電気化学的に挿入および脱離できる黒鉛若しくはコークス等の炭素系材料、またはLiと合金化および脱合金化が可能である珪素(Si)、錫(Sn)若しくはこれらの酸化物等を用いることができる。
膨張化黒鉛41bは、(002)面の面間隔が0.03370nmよりも大きい黒鉛である。図5に、膨張化黒鉛41bの一例のSEM写真を示す。膨張化黒鉛41bの(002)面の面間隔は、X線回折法により確認することができる。
なお、膨張化黒鉛41bは、たとえば図4に示すように、核材41aの表面に直接接触して付着していてもよく、カルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymethylcellulose)、CMCの誘導体またはポリビニルアルコール(PVA:Polyvinyl Alcohol)等の図示しない増粘材を介して核材41aの表面に付着していてもよい。また、核材41aの表面上の膨張化黒鉛41bは、核材41aの表面の少なくとも一部に付着していればよく、必ずしも核材41aの全表面に付着している必要はない。
負極合材層31bにおける負極活物質41の含有量は、たとえば、負極合材層31bの90質量%以上99質量%以下とすることができ、電池のエネルギー密度を高くする観点からは、負極合材層31bの95質量%以上99質量%以下とすることが好ましい。
結着材42は、負極活物質41同士を固着するとともに、負極活物質41と負極集電体31aとを固着するために用いられており、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR:Styrene-Butadiene Rubber)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンオキサイド(PEO:Polyethylene Oxide)またはアクリル樹脂等を用いることができる。
負極合材層31bにおける結着材42と増粘材との総含有量は、たとえば、負極合材層31bの1質量%以上10質量%以下とすることができ、電池のエネルギー密度を高くする観点からは、1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
負極集電体31aとしては、導電性が高く、化学的および電気化学的な安定性が高い金属箔を用いることが好ましく、たとえば、銅(Cu)箔またはCu合金箔等を用いることができる。負極集電体31aにCu箔を用いる場合には、負極集電体31aの強度および導電性を高くする観点から、Cu箔の厚さは5μm以上20μm以下とすることが好ましい。
<正極>
正極32は、図2および図3に示すように、正極集電体32aと、正極集電体32a上の正極合材層32bとを備えている。
正極集電体32aとしては、導電性が高く、耐食性の高い金属箔を用いることが好ましく、たとえば、Al箔またはAl合金箔等を用いることができる。正極集電体32aにAl箔を用いる場合には、正極集電体32aの強度および導電性を高くする観点から、Al箔の厚さは10μm以上30μm以下とすることが好ましい。
正極合材層32bは、正極活物質と導電助材と結着材とを含む正極合材が正極集電体32a上に固着されることにより形成される。正極合材層32bの塗工量および合材密度は特に限定されず、正極活物質の種類や電池仕様に合わせて適宜変更することができる。正極合材層32bの合材密度は、たとえば、2g/cm3以上4g/cm3以下とすることができる。
正極活物質としては、Li+を電気化学的に吸蔵および放出可能であるリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。このようなリチウム含有遷移金属酸化物としては、たとえば、LiCoO2、LiNiO2、LiNiaCob2(a+b=1、0<a<1、0<b<1)、LiMnO2、LiMn24、LiNiaCobMnc2(a+b+c=1、0<a<1、0<b<1、0<c<1)またはLiFePO4等を用いることができる。
正極合材層32bにおける正極活物質の含有量は、たとえば、正極合材層32bの80質量%以上99質量%以下とすることができ、電池のエネルギー密度を高くする観点からは、正極合材層32bの90質量%以上99質量%以下とすることが好ましい。なお、正極合材層32bは、2種以上の正極活物質を含んでいてもよい。
正極合材層32bに含まれる導電助材は、正極活物質同士および正極活物質と正極集電体32aとの電気伝導を補助するためのものであり、導電性の高い炭素材料を用いることが好ましく、なかでも、アセチレンブラック(AB:Acetylene Black)、ケッチェンブラック(KB:Ketjen Black)、グラファイト(graphite)または気相成長炭素繊維(VGCF:Vapor Growth Carbon Fiber)を用いることが好ましい。
正極合材層32bにおける導電助材の含有量は、たとえば、正極合材層32bの1質量%以上10質量%以下とすることができ、電池のエネルギー密度を高くする観点からは、正極合材層32bの1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
正極合材層32bに含まれる結着材は、正極活物質同士を固着するとともに、正極活物質と正極集電体32aとを固着するために用いられており、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF:Polyvinylidene difluoride)、PTFE、ポリ塩化ビニリデン(PVDC:Polyvinylidene Chloride)、またはPEO等を用いることができる。なかでも、塗工性を高くする観点からは、正極合材層32bに含まれる結着材としてはPVdFを用いることが好ましい。
正極合材層32bにおける結着材の含有量は、たとえば、正極合材層32bの1質量%以上10質量%以下とすることができ、電池のエネルギー密度を高くする観点からは正極合材層32bの1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
<セパレータ>
セパレータ33は、負極31と正極32との間に挟まれる部材であり、負極31と正極32との間におけるLi+の移動を可能にするとともに、負極31と正極32との電気的な接触を防止するために用いられる。
セパレータ33としては、機械的な強度および化学的な安定性を高くする観点から、ポリオレフィン系材料からなる微多孔膜を用いることが好ましい。ここで、ポリオレフィン系材料としては、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)またはこれらの組み合わせを好適に用いることができる。さらに、セパレータ33としては、上記の微多孔膜を複数積層して用いてもよい。また、セパレータ33の表面には、金属酸化物粒子(たとえば、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)またはチタニア(TiO2)等)と、結着材とからなる多孔層が設けられていてもよい。
セパレータ33の厚さは、たとえば、5μm以上40μm以下とすることができる。また、セパレータ33に形成される孔の径および空孔率は、セパレータ33の透気度が所望の値となるように、適宜調整することができる。
<非水電解質>
非水電解質は、典型的には、非プロトン性溶媒に溶質(リチウム塩)が溶解されてなる液体状の電解質である。ここで、非プロトン性溶媒としては、たとえばエチレンカーボネート(EC:Ethylene Carbonate)、プロピレンカーボネート(PC:Propylene Carbonate)、ブチレンカーボネート(BC:Buthylene Carbonate)、γ−ブチロラクトン(GBL:Gamma-Butyrolactone)およびビニレンカーボネート(VC:Vinylene Carbonate)等の環状カーボネート類、ならびにジメチルカーボネート(DMC:Dimethyl Carbonate)、エチルメチルカーボネート(EMC:Ethyl Methyl Carbonate)およびジエチルカーボネート(DEC:Diethyl Carbonate)等の鎖状カーボネート類等の少なくとも1種を用いることができる。
非プロトン性溶媒は、電気伝導率および電気化学的な安定性を高くする観点から、2種以上を併用して用いることが好ましい。なかでも、非プロトン性溶媒としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合して用いることが好ましく、非プロトン性溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比((環状カーボネートの体積)/(鎖状カーボネートとの体積))は、1/9以上1以下であることが好ましい。非プロトン性溶媒の具体例としては、たとえば、EC、DMCおよびEMCの3種の混合溶媒を用いることができる。なお、本実施形態の非水電解質としては、ゲル状または固体状の非水電解質を用いてもよい。
また、溶質であるリチウム塩としては、たとえば、ヘキサフルオロ燐酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロ硼酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフロオロ砒酸リチウム(LiAsF6)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CF3SO22N)またはトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Li(CF3SO3))等を用いることができる。また、溶質であるリチウム塩も、上記の2種以上を併用して用いてもよい。非水電解質中における溶質の濃度は、特に限定されないが、放電特性および保存特性を良好とする観点から、0.5mol/L以上2mol/L以下とすることが好ましい。
<非水電解質二次電池の製造方法>
図6に、実施の形態の非水電解質二次電池の製造方法の一例のフローチャートを示す。図6に示すように、実施の形態の非水電解質二次電池の製造方法は、負極31を作製する工程(S10)と、正極32を作製する工程(S20)と、電極体30を作製する工程(S30)と、電極体30を電池外装体10の内部に配置する工程(S40)と、非水電解質を充填する工程(S50)と、電池外装体10を封止する工程(S60)とを含んでいる。なお、実施の形態の非水電解質二次電池の製造方法においては、上記のS10〜S60以外の工程が行われてもよく、少なくともS10とS20との順序は限定されない。以下、上記のS10〜S60の各工程について説明する。
<工程S10>
負極31を作製する工程(S10)は、負極集電体31a上に負極合材層31bを転写成形することにより行う。図7に、負極31を作製する工程(S10)の一例のフローチャートを示す。図7に示すように、工程S10は、被覆体を作製する工程(S101)と、湿潤体を作製する工程(S102)と、湿潤体を転写成形する工程(S103)とを含んでおり、S101、S102およびS103の順に行われる。
被覆体を作製する工程(S101)は、膨張化黒鉛41bの表面に増粘材を付着させた被覆体を作製することにより行う。たとえば、膨張化黒鉛41bと、CMC等の増粘材と水等の溶媒とをハイスピードミキサを用いて混合して、膨張化黒鉛41bの表面に増粘材を付着させることにより行うことができる。なお、被覆体において、増粘材は、膨張化黒鉛41bの表面の少なくとも一部に付着していればよく、必ずしも膨張化黒鉛41bの全表面に付着している必要はない。
湿潤体を作製する工程(S102)は、核材41aの表面に工程S101で作製した被覆体が付着してなる負極活物質41を含む湿潤体を作製することにより行う。たとえば、工程S101で作製した被覆体と、核材41aと、結着材42と、水等の溶媒とをハイスピードミキサを用いて混合して、核材41aの表面に被覆体を付着させることにより行うことができる。なお、湿潤体において、被覆体は、核材41aの表面の少なくとも一部に付着していればよく、必ずしも核材41aの全表面に付着している必要はない。また、湿潤体中の溶媒以外の固形分の含有量は、後述の湿潤体の転写成形により良好な負極合材層31bを形成する観点から、湿潤体の75質量%以上であることが好ましい。
湿潤体を転写成形する工程(S103)は、工程S102で作製した湿潤体を負極集電体31a上に転写成形することにより行う。なお、転写成形とは、通常の塗工方法のように負極集電体上に負極合材スラリーを塗工する方法ではなく、湿潤体を負極合材層の形状に成形し、負極集電体上に転写する方法を意味する。
図8に、湿潤体を転写成形する工程(S103)で用いられる転写成形装置の一例の模式的な斜視図を示す。以下に、図8に示す転写成形装置を用いて、負極集電体31a上に湿潤体54を転写成形する方法の一例について説明する。
まず、図8に示すように、工程S102で作製した湿潤体54は、材料供給部51から供給され、端部障壁53によって負極合材層31bの形状に成形されながら、ロール52aとロール52bとの間の圧力によって、ロール52bに転写される。
次に、ロール52bに転写された湿潤体54は、ロール52b,52cの回転によって前方に送り出された負極集電体31aとともに、ロール52bとロール52cとの間の圧力によって圧縮される。これにより、負極集電体31a上に負極合材層31bが形成されて、負極集電体31aと負極合材層31bとが一体化した負極31が作製される。
<工程S20>
正極32を作製する工程(S20)は、正極集電体32a上に正極合材層32bを形成することにより行う。たとえば、正極活物質と導電助材と結着材と有機溶媒(たとえばN−メチル−2−ピロリドン(NMP:N-methylpyrrolidone))とを混練することにより得た正極合材スラリーを、正極集電体32a上に塗工、乾燥して正極合材層32bを正極集電体32a上に形成した後、正極合材層32bを所定の厚さに圧縮することによって行うことができる。
<工程S30>
電極体30を作製する工程(S30)は、負極31と正極32とセパレータ33とから電極体30を作製することにより行う。たとえば、負極31と正極32との間にセパレータ33を挟んで負極31と正極32とを対向配置させた状態で、これらを巻回することにより行うことができる。
<工程S40>
電極体30を電池外装体10の内部に配置する工程(S40)は、工程S30で作製した電極体30を電池外装体10の内部に配置することにより行う。たとえば、電極体30の負極集電体31aを負極集電リード21aを介して負極端子21に電気的に接続するとともに、正極集電体32aを正極集電リード22aを介して正極端子22に電気的に接続した後に電池外装体10の内部に配置することにより行うことができる。
<工程S50>
非水電解質を充填する工程(S50)は、電池外装体10の内部に非水電解質を充填することにより行う。たとえば、電池外装体10に設けられた注入孔から非水電解質を注入することにより行うことができる。この工程では、電極体30への非水電解質の浸透を促進するために、減圧若しくは加圧または加温を行なってもよい。
<工程S60>
電池外装体10を封止する工程(S60)は、電池外装体10に設けられた注入孔を封止することにより行う。たとえば、非水電解質の注入後に電池外装体10に設けられた注入孔を封止栓で塞ぐことにより行うことができる。以上により、実施の形態の非水電解質二次電池が作製される。
<作用効果>
実施の形態の非水電解質二次電池においては、核材41aの表面に膨張化黒鉛41bが付着した負極活物質41が用いられているため、膨張化黒鉛41bによって、負極活物質41の表面の平滑性が向上するため、転写成形による負極合材層31bの形成時に負極活物質41を均一かつ高密度に配置することができる。そして、均一かつ高密度に配置された負極活物質41により、溶媒の蒸発に伴う結着材42の負極合材層31bの上面方向(負極集電体31aとは反対側の方向)へのマイグレーションを抑制することができるため結着材42を負極集電体31aの近傍に配置することができる。これにより、負極集電体31aと負極合材層31bとの接合強度を向上することができる。また、結着材42の負極合材層31bの上面方向へのマイグレーションを抑制することができるため、大電流充電時に負極合材層31bの上面側に位置する結着材42によるLi+の負極合材層31b内部への侵入への妨害を抑制することができる。これにより、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる。
また、膨張化黒鉛41bは、負極集電体31aと負極合材層31bとの接合強度の向上に寄与する結着材42と同様の機能を有していることから、結着材42の含有量を低減することができる。結着材42の含有量を低減した場合には、結着材42の負極合材層31bの上面方向へのマイグレーションをさらに抑制することができる。また、膨張化黒鉛41bは通常の天然黒鉛と比べて大きな層間距離を有しており、Li+をより容易に受け入れることができるため、この観点からも、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上して電池特性を向上させることができる。
以上の理由により、実施の形態の非水電解質二次電池においては、負極集電体31aからの負極合材層31bの剥離を抑制することができるとともに、大電流充電におけるLi+の受け入れ性を向上させて電池特性を向上させることができる。
なお、膨張化黒鉛41bの平均粒径は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。膨張化黒鉛41bの平均粒径が5μm以上である場合には、膨張化黒鉛41bの平均粒径が小さすぎず、膨張化黒鉛41bと非水電解質との副反応が生じにくいため、たとえば60℃といった高温環境下で保存した後の電池容量の維持率を高くすることができる。また、膨張化黒鉛41bの平均粒径が15μm以下である場合には、膨張化黒鉛41bの平均粒径が大きすぎないために、核材41aの表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出を抑制することができる。なお、膨張化黒鉛41bの平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定した累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒子径(D50)を意味する。
また、負極合材層31bにおける膨張化黒鉛41bの含有量が、0.5質量%以上3質量%以下であることが好ましい。負極合材層31bにおける膨張化黒鉛41bの含有量が0.5質量%以上である場合には、膨張化黒鉛41bの含有量が少なすぎないために、核材41aの表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出を抑制することができる。また、負極合材層31bにおける膨張化黒鉛41bの含有量が3質量%以下である場合には、膨張化黒鉛41bの含有量が多すぎず、膨張化黒鉛41bと非水電解質との副反応が生じにくいため、たとえば60℃といった高温環境下で保存した後の電池容量の維持率を高くすることができる。
さらに、負極合材層31bは、膨張化黒鉛41bの表面上の増粘材をさらに含むことが好ましい。この場合には、増粘材を介して核材41aの表面上に膨張化黒鉛41bを付着させやすくなるため、負極集電体31aからの負極合材層31bの剥離の抑制効果および大電流充電におけるLi+の受け入れ性の向上による電池特性の向上効果をより高くすることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1の電池の作製>
[負極の作製]
まず、膨張化黒鉛(株式会社中越黒鉛製のBSP−10AK、平均粒径:10μm)1質量部と、増粘材としてのCMC1質量部と、イオン交換水0.5質量部とを、ハイスピードミキサ(株式会社アーステクニカ製)を用いて、主翼回転数1000rpmおよび解砕回転数2000rpmの条件で、5分間混合することによって、膨張化黒鉛の表面上にCMCが被覆された被覆体を作製した。
次に、上記のようにして作製した被覆体に、黒鉛(平均粒径:20μm、BET:4m2/g)100質量部と、イオン交換水30質量部とを添加し、ハイスピードミキサ(株式会社アーステクニカ製)を用いて、主翼回転数500rpmおよび解砕回転数1500rpmの条件で、15分間混合した後、結着材としてのSBRを20%含むSBR水溶液2.5gを投入して、ハイスピードミキサ(株式会社アーステクニカ製)を用いて、主翼回転数1000rpmおよび解砕回転数2000rpmの条件で、2分間混合することによって、黒鉛の表面に膨張化黒鉛が付着した負極活物質を含む湿潤体を作製した。なお、黒鉛の平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定した累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒子径(D50)を意味している。また、黒鉛のBETは、BET(Brunauer, Emmett, Teller)の吸着等温式に基づき求められた平均比表面積を意味している。
次に、図8に示す転写成形装置を用いて、上記のようにして作製した湿潤体を負極集電体としての厚さ10μmのCu箔上に、片面の乾燥後の質量が14mg/cm2となるように転写成形した。そして、Cu箔の他方の面にも湿潤体を上記と同一の条件で転写成形した後、所定の厚さになるようにプレスした後に所定の幅にスリットして、負極を作製した。ここで、負極の厚さは150μmとし、負極合材層の幅は100mmとし、負極の長さは4700mmとした。また、負極合材層中における黒鉛と膨張化黒鉛とCMCとSBRとの質量比は、黒鉛:膨張化黒鉛:CMC:SBR=100:1:1:0.5とした。
[正極の作製]
正極活物質としてのLiCoO2を準備した。次いで、正極活物質と、導電助材としてのABと、NMPに結着材としてのPVdFを溶解させた溶液とを、質量比で正極活物質:AB:PVdF=90:5:5となるように混合し、さらに混練することにより正極スラリーを作製した。そして、正極スラリーを正極集電体としてのAl箔の両面に均一に塗工した後に乾燥して圧縮することによって正極を作製した。ここで、正極の厚さは170μmとし、正極合材層の幅は94mmとし、正極の長さは4500mmとした。
[セパレータの作製]
PP/PE/PPの3層の積層構造を有する厚さ25μmの基材を用意した。また、フィラー(アルミナ)、アクリル中空樹脂およびバインダーを溶媒とともにクレアミクス(エムテクニック株式会社)を用いて混合してスラリーを作製した。そして、スラリーを上記の基材の表面上にグラビア塗工装置を用いて塗工することにより、表面に耐熱層を有するセパレータ(以下、「HRL塗布セパレータ」と言う。)を作製した。
[電極体の作製]
上記のようにして作製した負極と正極との間にHRL塗布セパレータを挟んだ状態で、図2に示すように、楕円状に巻回した後、常温下で、平板等によって4kN/cm2の圧力で2分間加圧して扁平状にすることによって電極体を作製した。
[電極体の配置]
上記のようにして作製した電極体の負極集電体を負極集電リードを介して負極端子に電気的に接続するとともに、正極集電体を正極集電リードを介して正極端子に電気的に接続した後に角形のAlケースの内部に配置した。
[電解液の充填]
次に、Alケースに設けられた注入孔から電解液をAlケースの内部に注入することによって、電解液の充填を行った。ここで、電解液は、ECとDMCとEMCとが体積比でEC:DMC:EMC=3:4:3になるように混合した混合液にシクロヘキシルベンゼン(CHB)を1質量%およびビフェニル(BP)を1質量%添加してなる非プロトン性溶媒に、溶質としてLiPF6を1.0M(1.0mol/L)を溶解させることにより作製した。また、電解液の充填量は125gとした。
[Alケースの封止]
最後に、Alケースの注入孔を封止栓で塞いだ。これにより、定格容量が24.0Ahの角形非水電解質二次電池である実施例1の電池を作製した。
<実施例2の電池の作製>
膨張化黒鉛の平均粒径を5μmとしたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例2の電池を作製した。
<実施例3の電池の作製>
膨張化黒鉛の平均粒径を15μmとしたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例3の電池を作製した。
<実施例4の電池の作製>
負極合材層における膨張化黒鉛の含有量を負極合材層の0.5質量%としたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例4の電池を作製した。
<実施例5の電池の作製>
負極合材層における膨張化黒鉛の含有量を負極合材層の3質量%としたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例5の電池を作製した。
<実施例6の電池の作製>
膨張化黒鉛の平均粒径を3μmとしたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例6の電池を作製した。
<実施例7の電池の作製>
膨張化黒鉛の平均粒径を20μmとしたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例7の電池を作製した。
<実施例8の電池の作製>
負極合材層における膨張化黒鉛の含有量を負極合材層の0.2質量%としたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例8の電池を作製した。
<実施例9の電池の作製>
負極合材層における膨張化黒鉛の含有量を負極合材層の5質量%としたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で実施例9の電池を作製した。
<比較例1の電池の作製>
膨張化黒鉛を混合しなかったこと(負極合材層における膨張化黒鉛の含有量を負極合材層の0質量%としたこと)以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で比較例1の電池を作製した。
<比較例2の電池の作製>
以下のようにして負極を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で比較例2の電池を作製した。すなわち、まず、実施例1と同一の方法および同一の条件で作製した被覆体に、黒鉛(平均粒径:20μm、BET:4m2/g)100質量部と、イオン交換水65質量部とを添加し、プラネタリデスパPVM10−2D(浅田鉄工株式会社製)を用いて、混合羽根30rpmで40分間硬練混合した。次に、当該混合物にイオン交換水15質量部を加えて、混合羽根30rpmで15分間希釈分散した後、結着材としてのSBRを20%含むSBR水溶液2.5gを投入して、混合羽根23rpm、デスパ1000rpmで5分間混合して負極スラリーを作製した。そして、ダイコーターを用いて負極スラリーをCu箔上に塗工することによって負極を作製した。
<比較例3の電池の作製>
以下のようにして負極を作製したこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件で比較例3の電池を作製した。すなわち、まず、実施例1と同一の方法および同一の条件で作製した被覆体に、黒鉛(平均粒径:20μm、BET:4m2/g)100質量部と、イオン交換水65質量部とを添加し、プラネタリデスパPVM10−2D(浅田鉄工株式会社製)を用いて、混合羽根30rpmで40分間硬練混合した。次に、当該混合物にイオン交換水5質量部を加えて、混合羽根30rpmで15分間希釈分散した後、結着材としてのSBRを20%含むSBR水溶液2.5gを投入して、混合羽根23rpm、デスパ1000rpmで5分間混合して負極スラリーを作製した。そして、ダイコーターを用いて負極スラリーをCu箔上に塗工することによって負極を作製した。
<実施例1〜9および比較例1〜3の電池の評価>
実施例1〜9および比較例1〜3の電池の評価は、以下のサイクル試験後の容量維持率、電池抵抗、0℃容量維持率、60℃保存後容量維持率、および剥離強度の試験により行った。なお、以下の説明において、「定電流」を「CC(Constant Current)」と記し、「定電圧」を「CV(Constant Voltage)」と記すものとする。
[サイクル試験後の容量維持率]
まず、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池について、初期の電池容量を求めた。具体的には、まず、1Cの電流で電池電圧が4.1Vとなるまで充電を行った後に5分間休止した。次に、電池電圧が3.0Vとなるまで放電を行った後に5分間休止した。その後、電池電圧が4.1Vに達するまで1Cの電流(定電流)で充電を行い、電池電圧が4.1Vに達した後に電池電圧が4.1Vを維持するように電流を下げて充電を行い、電流が0.1C(カット電流)まで低下した時点で充電を停止した(CCCV充電)。その後、電池電圧が3.0Vに達するまで1Cの電流(定電流)で放電を行い、電池電圧が3.0Vに達した後に電池電圧が3.0Vを維持するように電流を下げて放電を行い、電流が0.1C(カット電流)まで低下した時点で放電を停止した(CCCV放電)。そして、初期の電池容量を求めた。
次に、50℃に設定された恒温槽でCCサイクル充放電試験を行った。この試験では、1回のCC充電と1回のCC放電とを1サイクルとするサイクルを1000サイクル行った。CC充電では、電池電圧が4.1Vとなるまで2Cの電流(定電流)で充電を行った。CC放電では、電池電圧が3.0Vとなるまで2Cの電流(定電流)で放電を行った。そして、初期の電池容量の測定方法にしたがって、サイクル試験後の電池容量を求めた。
実施例1〜9および比較例1〜3の各電池について、上記方法にしたがって初期の電池容量の測定とサイクル試験後の電池容量の測定とを行った。そして、以下の式(I)により、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池のサイクル試験後の容量維持率[%]を算出した。その結果を表1の「サイクル試験後の容量維持率」の欄に示す。なお、表1の「サイクル試験後の容量維持率」の欄の数値は、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の5個の平均値である。
サイクル試験後の容量維持率[%]=100×((サイクル試験後の電池容量)/(初期の電池容量)) …(I)
[電池抵抗]
まず、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池を25℃の環境下でSOC(State of Charge)60%の状態に調整した。次に、10Cの電流で放電(パルス放電)を10秒間行った後の電圧変化量(△V)を求めた。求められた△Vを電流で除してI−V抵抗[mΩ]を測定した。その結果を表1の「電池抵抗」の欄に示す。なお、表1の「電池抵抗」の欄の数値は、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の10個の平均値である。
[0℃容量維持率]
まず、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の初期の電池容量を上記の方法で確認した。次に、各電池のSOCを50%の状態に調整し、0℃の環境下で、20Cの電流でのパルス充電(10秒間)と20Cの電流でのパルス放電(10秒間)とを1サイクルとするサイクルを50000サイクル行って、ハイレートパルスサイクル試験を行った。その後、初期の電池容量の測定方法にしたがって、ハイレートパルスサイクル試験後の電池容量を求めた。
そして、以下の式(II)により、ハイレートパルスサイクル試験後の容量維持率[%]を算出した。その結果を表1の「0℃容量維持率」の欄に示す。なお、表1の「0℃容量維持率」の欄の数値は、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の5個の平均値である。
ハイレートパルスサイクル試験後の容量維持率[%]=100×((ハイレートパルスサイクル試験後の電池容量)/(初期の電池容量)) …(II)
[60℃保存後容量維持率]
まず、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の初期の電池容量を上記の方法で確認した。次に、各電池のSOCを25℃の環境下で100%の状態に調整した後、60℃の環境下で100日間保存した。その後、初期の電池容量の測定方法にしたがって、60℃保存後の電池容量を求めた。
そして、以下の式(III)により、60℃保存後の容量維持率[%]を算出した。その結果を表1の「60℃保存後容量維持率」の欄に示す。なお、表1の「60℃保存後容量維持率」の欄の数値は、実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の50個の平均値である。
60℃保存後の容量維持率[%]=100×((60℃保存後の電池容量)/(初期の電池容量)) …(III)
[剥離強度]
実施例1〜9および比較例1〜3の各電池の負極合材層の負極集電体からの剥離強度[N/m]を「JIS−Z 0237」に規定される90°剥離試験に準拠した方法により測定した。その結果を表1の[剥離強度]の欄に示す。
表1に示すように、黒鉛の表面に膨張化黒鉛が付着した負極活物質を含む湿潤体を負極集電体上に転写成形することにより負極合材層を形成した実施例1〜9の電池は、膨張化黒鉛を含まない比較例1および転写成形により負極合材層を形成していない比較例2〜3の電池と比べて、0℃容量維持率および剥離強度の値が高くなることが確認された。
また、表1に示すように、膨張化黒鉛の平均粒径が5μmである実施例2の電池は、膨張化黒鉛の平均粒径が3μmである実施例6の電池と比べて、60℃保存後の容量維持率が高くなっていた。これは、膨張化黒鉛の平均粒径が小さすぎなかったため、膨張化黒鉛と電解液との副反応が生じにくかったことによるものと考えられる。
また、表1に示すように、膨張化黒鉛の平均粒径が15μmである実施例3の電池は、膨張化黒鉛の平均粒径が20μmである実施例7の電池と比べて、0℃容量維持率が高くなっていた。これは、膨張化黒鉛の平均粒径が大きすぎなかったため、黒鉛の表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出が生じにくかったことによるものと考えられる。
また、表1に示すように、膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の0.5質量%である実施例4の電池は、膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の0.2質量%である実施例8の電池と比べて、0℃容量維持率が高くなっていた。これは、膨張化黒鉛の含有量が少なすぎなかったため、黒鉛の表面を十分に被覆することができ、低温でのLiの析出が生じにくかったことによるものと考えられる。
また、表1に示すように、膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の3質量%である実施例5の電池は、膨張化黒鉛の含有量が負極合材層の5質量%である実施例9の電池と比べて、60℃保存後の容量維持率が高くなっていた。これは、膨張化黒鉛の含有量が多すぎなかったため、膨張化黒鉛と電解液との副反応が生じにくかったことによるものと考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 電池外装体、21 負極端子、21a 負極集電リード、22 正極端子、22a 正極集電リード、30 電極体、31 負極、31a 負極集電体、31b 負極合材層、32 正極、32a 正極集電体、32b 正極合材層、33 セパレータ、41 負極活物質、41a 核材、41b 膨張化黒鉛、42 結着材、51 材料供給部、52a,52b,52c ロール、53 端部障壁、54 湿潤体。

Claims (1)

  1. 膨張化黒鉛と前記膨張化黒鉛の表面を被覆する増粘材とを含む被覆体を作製する工程と、
    核材と前記核材の表面に付着した被覆体とを負極活物質として含む湿潤体を作製する工程と、
    前記湿潤体を負極集電体の表面上に転写成形することによって前記負極集電体上に負極合材層を形成する工程とを含む、非水電解質二次電池の製造方法。
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