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JP6235795B2 - 細胞のリプログラミングのための組成物 - Google Patents

細胞のリプログラミングのための組成物 Download PDF

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JP6235795B2 JP2013113297A JP2013113297A JP6235795B2 JP 6235795 B2 JP6235795 B2 JP 6235795B2 JP 2013113297 A JP2013113297 A JP 2013113297A JP 2013113297 A JP2013113297 A JP 2013113297A JP 6235795 B2 JP6235795 B2 JP 6235795B2
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Description

本発明は、細胞再生医療分野における複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現亢進による治療用細胞/組織の分化誘導および製造に関する。より具体的には、本発明は、複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現亢進を可能とするエキソソーム、ならびに該エキソソームを用いた体細胞リプログラミングおよび多分化能を持つ細胞(iPS細胞など)の誘導に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、生体に存在する全ての細胞へと分化できる多能性を維持したまま培養することができる。この性質を利用して、多能性をもつ幹細胞は、パーキンソン病、若年性糖尿病、白血病など多くの疾患に対する細胞移植療の手段として期待されている。しかし、ES細胞は、臓器移植と同様に拒絶反応を惹起してしまうという問題がある。また、胚を破壊して樹立されるES細胞の利用に対しては倫理的見地から反対意見も多い。
iPS細胞は、拒絶反応や倫理的問題のない理想的な多能性細胞として利用できるものと期待されている。iPS細胞の樹立方法として、下記特許文献1が知られている。特許文献1には、複数の特定因子(Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子、Klf4遺伝子およびc−Myc遺伝子の4因子)を体細胞に導入してリプログラミングを行う工程が記載されている。遺伝子の導入のために、レトロウイルス等を体細胞に導入することから、iPS細胞、またはiPS細胞を分化誘導することによって得られる細胞において腫瘍発生の危険性が危惧されている。
近年、エキソソームやマイクロベシクル(Microvesicles)と呼ばれる小型脂質小胞を細胞に投与し、細胞の脱分化を試みる研究がなされている。例えば、非特許文献1には、Oct3/4遺伝子およびNanog遺伝子を多量に含むES細胞由来のマイクロベシクルをマウス骨髄由来単核球の培養系に加えると、Oct4遺伝子が細胞内で発現することが報告されている。また、非特許文献2には、ES細胞のマイクロベシクルを媒介として、網膜のミュラー細胞にOct4遺伝子、Sox−2遺伝子およびmiRNAを導入すると、Oct4遺伝子およびSox−2遺伝子の発現が亢進することが報告されている。
国際公開WO2007/069666号のパンフレット
Leukemia(2006), 20, 847-856, Embryonic Stem Cell-Derived Microvesicles Preprogram Hematopoietic Progenitors: Evidence for Horizontal Transfer of mRNA and Protein Delivery PLOS ONE(2012), 7, e50417, Embryonic Stem Cell-Derived Microvesicles Induce Gene Expression Changes in Muller Cells of the Retina
非特許文献1および2では、ES細胞を利用するため、その取得方法に倫理上の問題が伴う。さらに、非特許文献1および2では、Oct4遺伝子やSox−2遺伝子の発現量を上昇させるものであるが、幹細胞性に関与するNanog遺伝子の発現量を上昇させるものではない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ES細胞を利用することなく、体細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させる手段であって、腫瘍発生の危険性の低い手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、エキソソームの作製に胎盤由来細胞を利用することで、少なくともES細胞を利用する場合に生じる倫理上の問題を解決できる点に着目した。また、胎盤由来細胞は、腫瘍性や腫瘍増殖性が極めて低いか、またはこれを有しないため、従来のiPS細胞のように腫瘍発生の危険性を低下させることできる点にも着目した。これらの知見をもとに、本発明者らは、更に研究を進め、胎盤由来細胞を利用することで、Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子のみならず、Nanog遺伝子の発現を亢進させる能力をもつエキソソームを抽出できることを見出した。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させるための組成物であって、
培養によりコロニー形成した胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを含む、前記組成物。
(2)胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、(1)記載の組成物。
(3)リプログラミングに関わる転写因子として、Oct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させるための組成物である、(1)または(2)記載の組成物。
(4)エキソソームが、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子を実質的に含まない、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)標的細胞をリプログラミングするための組成物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させるための組成物の製造方法であって、
a)胎盤由来細胞を培養してコロニー形成させる工程と、
b)コロニー形成した胎盤由来細胞を取得してさらに培養する工程と、
c)工程b)で得られた培養上清からエキソソームを抽出する工程と、
を含む、前記方法。
(7)工程a)が、胎盤由来細胞を14cells/cm以下の密度で播種して培養し、コロニー形成させる工程である、(6)記載の方法。
(8)組成物が、リプログラミングに関わる転写因子として、Nanog遺伝子、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させるための組成物である、(6)または(7)記載の方法。
(9)胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、(6)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させる方法であって、
a)胎盤由来細胞を培養してコロニー形成させる工程と、
b)コロニー形成した胎盤由来細胞を取得してさらに培養する工程と、
c)工程b)で得られた培養上清からエキソソームを抽出する工程と、
d)エキソソームと標的細胞とを接触させる工程と、
を含む、前記方法。
(11)工程a)が、胎盤由来細胞を14cells/cm以下の密度で播種して培養し、コロニー形成させる工程である、(10)記載の方法。
(12)リプログラミングに関わる転写因子として、Nanog遺伝子、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させる、(10)または(11)記載の方法。
(13)胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることにより、標的細胞をリプログラミングする方法である、(10)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることにより、多分化能を持つ細胞を製造する方法である、(10)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(16)培養によりコロニー形成した胎盤由来細胞であって、体細胞のOct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させるエキソソームを産出することを特徴とする、前記細胞。
本発明により、ES細胞を利用することなく、体細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させる手段であって、腫瘍発生の危険性の低い手段を提供することができる。
コロニー形成したヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームについて、リアルタイムPCRを用い、歯根膜由来幹細胞をポジティブコントロールとして融解曲線分析法を行い、Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子、Nanog遺伝子の定量化を行った結果を示す。 コロニー形成したヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームのリアルタイムPCR産物を、アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色し、リアルタイムPCR産物のサイズを定性的に調べた結果を示す。 図3aは、コロニー形成したヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるOct3/4遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図3bは、コロニー形成していないヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるOct3/4遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図3cは、コロニー形成していないヒト頭蓋冠骨芽細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるOct3/4遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。対照は、エキソソームを接触させていないヒト皮膚線維芽細胞におけるOct3/4遺伝子の発現量を示す。 図4aは、コロニー形成したヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるSox−2遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図4bは、コロニー形成していないヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるSox−2遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図4cは、コロニー形成していないヒト頭蓋冠骨芽細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるSox−2遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。対照は、エキソソームを接触させていないヒト皮膚線維芽細胞におけるSox−2遺伝子の発現量を示す。 図5aは、コロニー形成したヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるNanog遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図5bは、コロニー形成していないヒト胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるNanog遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。図5cは、コロニー形成していないヒト頭蓋冠骨芽細胞から抽出されたエキソソームを接触させたヒト皮膚線維芽細胞におけるNanog遺伝子の発現量を対照と比較した結果を示す。対照は、エキソソームを接触させていないヒト皮膚線維芽細胞におけるNanog遺伝子の発現量を示す。
本発明者らは、培養によりコロニー形成した胎盤由来細胞から抽出されたエキソソーム(以下本発明のエキソソームと称する場合がある)を用いて、標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進できることを見出した。
エキソソームは、後期エンドソーム区画由来の直径30〜100nmの小型脂質小胞であって、脂質だけではなくタンパク質および核酸等を含むものをいう(Nature Reviews Immunology 9, 581-593, 2009)。エキソソームは、細胞が分泌する脂質二重膜に囲まれた膜小胞であり、それを別の細胞が取り込むことで細胞間のコミュニケーション、生体現象の調節が行われていることが明らかになってきている。エキソソームは、細胞の産生する生体物質であり、血中などでも分解されにくく安定な膜粒子であり、エキソソーム内部の核酸はエキソソームが取り込まれた他の細胞のなかで機能する、といった性質を有する。
本発明で用いるエキソソームは胎盤由来細胞から抽出されたものである。胎盤を有する動物由来のものであれば特に制限されず、例えば、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等)由来のものを使用できるが、好ましくは、標的細胞と同種の動物由来のものを使用する。
本発明においては、培養によりコロニー形成した胎盤由来細胞からエキソソームを抽出する。胎盤由来細胞には、羊膜由来細胞および臍帯由来細胞も包含される。好ましくは胎盤由来幹細胞を含むものからエキソソームを抽出する。胎盤由来幹細胞は、胎児に由来し、低免疫原性であり、三胚葉分化能を有するものである。胎盤由来幹細胞には、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、胎盤多能性細胞および胚性様幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
胎盤由来細胞の調製方法は、当技術分野で公知の方法を使用でき、特に制限されない。例えば、破砕した組織を用いたoutgrowth法や、消化酵素を用いる方法などを使用できる。用いる消化酵素としては、マトリクスメタロプロテインナーゼ(例えば、コラーゲナーゼ)、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、プロテインナーゼK、ディスパーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルパインおよびスブチリシンが挙げられるが、これらに限定されない。
組織を破砕する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、ミンチにする、ミキサーにかける等が含まれる。胎盤組織を破砕することにより、結果として、浮遊する胎盤細胞と胎盤組織の組織混合物が生じる。組織混合物を1つまたは複数の篩、例えば、50μm〜500μmまでの範囲の様々な孔径のストレイナーにかけることで、浮遊している胎盤細胞から組織を分離することが可能である。例えば、胎盤組織混合物を繰り返し徐々に小さな孔径のメッシュに通すことで、最後には、ほぼ全ての組織を除去し、胎盤細胞懸濁液(例えば、単細胞懸濁液)を取得することができる。
胎盤細胞懸濁液は、胎盤由来幹細胞以外に、一つまたは複数のその他の胎盤由来細胞種、例えば、上皮細胞(例えば、胎生繊毛膜細胞)を含んでいてもよい。胎盤由来幹細胞以外の胎盤由来細胞は、1回または複数回の洗浄、遠心分離、密度勾配遠心分離、溶出、ポジティブセレクションおよびネガティブセレクションなど、すでに確立している方法を用いて分離することができる。
胎盤由来細胞を培養してコロニー形成させる方法は、当技術分野で公知の方法を使用でき特に制限されない。例えば、上記のようにして得た胎盤由来細胞を、培養容器の培養面に低密度で播種して培養することにより、コロニー形成させることができる。胎盤由来細胞を、好ましくは5,000cells/cm以下の密度、より好ましくは500cells/cm以下の密度、さらに好ましくは50cells/cm以下の密度で、さらにより好ましくは25cells/cm以下の密度で、好ましくは0.5cells/cm以上の密度、より好ましくは1.5cells/cm以上の密度、さらに好ましくは5cells/cm以上の密度で、播種して培養することにより、コロニー形成させることができる。
細胞をコンフルエントにならない条件で、低密度で播種して培養することによりコロニーを形成させ、コロニー形成能を有する細胞のみを選択することができる。培養条件は、当技術分野で公知の方法を使用でき特に制限されない。培地としては、胎盤由来細胞の培養に使用される公知の培地を使用でき、例えば、MSCGM培地、199培地、BME培地(BME−Earle、BME−Hanks)、Ames'培地、Ham's F10培地、Ham's F12培地、HAT培地、L−15培地、McCoy5a培地、RPMI1629倍地、RPMI1640培地、Alpha−MEM培地、MEM培地(MEM−Earle、MEM−Hanks)、D−MEM培地(低グルコース(1.0g/Lグルコース)、高グルコース(4.5g/Lグルコース))やCD培地(Chemically−Defind)等を使用できる。培養は、36〜38℃の温度で、培地交換しながら、12〜16日間培養する。
多種の細胞を含む初代培養細胞から、標的細胞に対するリプログラミング効果を有する細胞を濃縮培養するためにはコロニー形成が有効である。リプログラミング効果を有する細胞は高い増殖能を有するため、コロニー形成を行うことで、多種類の細胞のなかで、その割合を高めることができる。コロニーを形成させる具体的方法としては、当技術分野で公知の方法を使用できる(STEM CELLS (2001), 19 , 219-225, Rat Marrow Stromal Cells are More Sensitive to Plating Density and Expand More Rapidly from Single-Cell-Derived Colonies than Human Marrow Stromal Cells)。
このようにしてコロニー形成した胎盤由来細胞は、優れた増殖能を有する細胞であり、この胎盤由来細胞から抽出したエキソソームは、コンフルエントになった胎盤由来細胞から抽出したエキソソームと比較して、効果的にリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させる能力において優れ、細胞をリプログラミングする能力および多分化能を持つ細胞を誘導する能力において優れている。
コロニー形成した胎盤由来細胞(以下、コロニー形成細胞と称する場合がある)のみを取得し、さらに培養することにより増殖させ、増殖した胎盤由来細胞からエキソソームを抽出することが好ましい。例えば、コロニー形成細胞を別の培養容器に播種して培養し、60〜80%コンフルエントになったら、PBSで洗浄し、培地交換を行いながら、37℃、5%CO、飽和水蒸気条件下でインキュベートし、培養上清を回収して遠心分離後、フィルトレーションを行う。培地として無血清培地を用いることにより、他の細胞種に由来するエキソソームの混入を防ぐことができる。無血清培地としては、例えば、199培地、BME培地(BME−Earle、BME−Hanks)、Ames'培地、Ham's F10培地、Ham's F12培地、HAT培地、L−15培地、McCoy5a培地、RPMI1629倍地、RPMI1640培地、Alpha−MEM培地、MEM培地(MEM−Earle、MEM−Hanks)、D−MEM培地(低グルコース(1.0g/Lグルコース)、高グルコース(4.5g/Lグルコース))やCD培地(Chemically−Defind)が挙げられる。他の細胞に由来するエキソソームが混入していても問題ない場合は、培地は特に無血清培地に制限されない。
このとき細胞を播種する密度は、特に制限されないが、好ましくは500cells/cm以下の密度、より好ましくは50cells/cm以下の密度で、好ましくは1.5cells/cm以上の密度、より好ましくは5cells/cm以上の密度とする。
エキソソームは、任意の適切な技術を用いて、コロニー形成細胞の細胞培養上清から調製することができる(例えば、Current Protocols in Cell Biology (2006) 3.22.1-3.22.29に記載の方法が挙げられる)。具体的には、まず、得られた培養上清を、5000〜20000g、好ましくは8000〜12000gの速度で、15〜60分間、好ましくは20〜40分間遠心分離を行う。次に、得られた上清をさらに、50000〜150000g、好ましくは90000〜110000gの速度で、50〜100分間、好ましくは60〜80分間遠心分離を行う。続いて、得られたペレットをPBSに懸濁し、50000〜150000g、好ましくは90000〜110000gの速度で、50〜100分間、好ましくは60〜80分間遠心分離を行う。こうして得られたペレットをエキソソームとして取得することができる。
別の好ましいエキソソーム画分の調製法としては、遠心分離とゲルろ過カラムを用いる方法を挙げることができる。具体的には、まず、得られた培養上清をエキソソーム画分が沈殿しない条件で1回目の遠心分離を行う。例えば、1〜30℃、500〜4000gの速度で5〜30分間遠心分離を行う。最適な例として室温、2000g、15分間の遠心分離が挙げられる。更に、2回目の遠心分離として1回目の遠心分離よりも速い速度でなおかつエキソソーム画分が沈殿しない条件で遠心分離を行う。2回目の遠心分離の例としては1〜30℃、5000〜25000gの速度で5〜120分間の遠心分離を挙げることができ、最も好ましい例として室温、12000g、35分間の遠心分離を挙げることができる。得られた上清画分を一般的な生化学実験に用いられるゲルろ過カラムに供し、溶出液の260nmの吸光度を測定し、吸光度の高いフラクションをエキソソーム画分とする。ゲルろ過カラムは担体を購入し自ら作製しても、市販品を使用してもよく、ここではSephacryl S−400 HR(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を適した例として挙げることができる。また、吸光度の高いフラクションとしては吸光度値の上位10フラクション程度を用いればよいが、もちろん最高値を示すフラクションを以てエキソソーム画分とすることも可能である。
別の好ましいエキソソーム画分の調製法としては、例えば分画遠心分離法を挙げることができる。好ましい一具体例として、Raposo et.al.J.Exp.Med.183:1161−1172(1996)記載の方法を以下に示す。細胞培養物を300g、10分間遠心分離する。得られた上清を300g、10分間の遠心分離を2回、10000g、30分間の遠心分離を1回、70000g、60分間の遠心分離を1回行う。得られた沈殿を2.5M スクロース、20mM Hepes/NaOH、pH7.2を含む溶液に溶解し、2〜0.25Mの密度勾配を持つスクロース溶液に重層する。100000×g、15時間の遠心分離を行った後、得られた残渣をPBSに溶解し、更に200000×g、1時間の超遠心分離を行う。
本発明のエキソソームは、標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることができるが、好ましくは、亢進可能なリプログラミングに関わる転写因子をコードするすべての遺伝子、例えば亢進可能なリプログラミングに関わる転写因子をコードするmRNAやDNAのすべてを含まない。本発明のエキソソームは、好ましくはOct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子、すなわち、これらをコードするmRNAやDNAを実質的に含まない。ここで、遺伝子を実質的に含まないとは、検出可能な範囲で含まないことを意味し、例えば、エキソソームからのtotal RNA抽出および逆転写を経て得られたcDNAの定量PCRにおいて、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子が検出されないことをさす。本発明のエキソソームが、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子を含まないにもかかわらず、標的細胞においてこれらをコードする遺伝子の発現を亢進可能なことは、驚くべきことである。
本発明のエキソソームを標的細胞に接触させることにより、標的細胞において、複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることができる。本発明のエキソソームは、標的細胞において、特にOct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させることから、標的細胞をリプログラミングすることができ、体細胞から多分化能を持つ細胞を誘導することができる。
Oct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現亢進により細胞のリプログラミングが可能であることは、例えば、Differentiation (2010), 80 , 123-129(Rapid and efficient reprogramming of human amnion-derived cells into pluripotency by three factors OCT4/SOX2/NANOG)において報告されている。
「リプログラミング」または「リプログラム」とは、細胞分化とは逆のプロセス、すなわち、分化した細胞がかつて保持していた未分化状態を再度獲得することをいう。特に、細胞のリプログラミングによって、その細胞が三胚葉形成能および個体発生能を有する分化多能性を獲得した場合には、このプロセスを「核初期化」または「初期化」といい、得られた細胞を「iPS細胞」という。この「核初期化」または「初期化」は、典型的には、体細胞の核が受精卵の状態に戻ることをいう。
リプログラミングに関わる転写因子は、標的細胞に独立してまたは組み合わせて発現した場合に、細胞をリプログラミングするために使用することができる核タンパク質をさす。リプログラミングに関わる転写因子としては、Octファミリー遺伝子(例えばOct3/4遺伝子)、Soxファミリー遺伝子(例えばSox−2遺伝子)、Nanogファミリー遺伝子(例えばNanog遺伝子)、Klfファミリー遺伝子(例えばKlf4遺伝子)、およびMycファミリー遺伝子(例えばc−Myc遺伝子)の各遺伝子が知られている(WO2007/069666)。本発明のエキソソームは、標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることを特徴とするが、少なくともNanog遺伝子の発現を亢進させるものであり、好ましくはさらにSox−2遺伝子およびOct3/4遺伝子の発現を亢進させるものである。
Oct3/4は、多能性の維持に重大な役割を果たすことが知られている。割球および胚性幹細胞などのOct3/4+細胞にOct3/4が不在になると、栄養芽層の自然分化に繋がることから、Oct3/4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化能の元となると考えられている。Oct3/4タンパク質の例として、マウスOct3/4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_013633)およびヒトOct3/4遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_002701)によってコードされるタンパク質が挙げられる。
Soxファミリー遺伝子は、Oct3/4に類似して多能性の維持に関連するが、多能性幹細胞にのみ発現されるOct3/4とは対照的に、多能性および単能性幹細胞に関連する。Sox−2は、誘導のために使用される最初の遺伝子であったが(Takahashi et al, Cell, 2006, 126: 663-76; Takahashi et al. Cell, 2007, 131-861-72; Yu et al, Science 2007, 318: 1917)、Soxファミリーの他の遺伝子も同様に誘導過程において作用することが見出されている。Sox−2タンパク質の例として、マウスSox−2遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_011443)およびヒトSox−2遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_003106)によってコードされるタンパク質が挙げられる。
Nanogはホメオボックス転写因子であり、遺伝子をノックアウトするとES細胞は分化多能性を失い原始内胚葉系の細胞へと分化する。また、Nanog遺伝子を正常の数倍発現させると、マウスES細胞はLIF/STAT3シグナル非存在下で分化多能性を維持できることが報告されている。したがって、NanogはES細胞の分化多能性にとって必要かつ十分な因子であると考えられている(Yamanaka et al, Cell, 2003, 113: 631-642)。Nanogタンパク質の例として、マウスNanog遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_028016)およびヒトNanog遺伝子(GenbankアクセッションナンバーNM_024865)によってコードされるタンパク質が挙げられる。
標的細胞においてリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進(増大)させることには、リプログラミングに関わる転写因子を過剰発現させることが包含され、標的細胞におけるリプログラミングに関わる転写因子タンパク質の量を増加させること、標的細胞におけるリプログラミングに関わる転写因子をコードするmRNAの量を増加させることが包含される。また、上記で例示したリプログラミングに関わる転写因子の遺伝子には、各遺伝子のオルソログやホモログも包含される。本発明において、遺伝子には、DNAおよびRNAを含む核酸が包含され、RNAにはmRNAが包含され、DNAにはゲノムDNAおよびcDNAが包含される。
本発明のエキソソームを接触させた標的細胞は、リプログラミングに関わる転写因子の発現が亢進する一方、テロメア逆転写酵素(TERT)をコードする遺伝子の発現量は変化しない。TERTは、腫瘍増殖性およびテラトーマ形成との関連性が報告されており、TERT遺伝子の発現量は、腫瘍性または腫瘍増殖性の指標として使用される。したがって、本発明のエキソソームは、接触させた標的細胞の腫瘍化や癌化を促進せず、腫瘍性または腫瘍増殖性が低いかまたはこれを有しないと考えられる。
本発明においてリプログラミングの標的となる標的細胞は、好ましくは、幹細胞を除く、分化した体細胞である。例えば、線維芽細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)、上皮細胞(例えば、胃上皮細胞、肝上皮細胞)、内皮細胞(例えば血管、リンパ管)、神経細胞(例えば、ニューロン、グリア細胞)、すい臓細胞、血球細胞、骨髄細胞、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞)、肝実質細胞、非肝実質細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、歯周組織を構成する細胞(例えば、歯根膜細胞、セメント芽細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞)、腎臓・眼・耳を構成する細胞などが挙げられる。
本発明の好ましい実施態様によれば、リプログラミングの標的とする細胞は線維芽細胞、特に皮膚線維芽細胞である。本発明においてリプログラミングの標的となる細胞は、いかなる動物に由来するものであってもよいが、好ましくは哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等)由来の細胞、より好ましくはマウスまたはヒトに由来する細胞である。
以上のようにしてリプログラミングした細胞の用途としては、まず、治療用細胞としての利用が可能である。このような治療用細胞としては、組織幹細胞やその前駆細胞の分化状態にリプログラミングした細胞が挙げられる。すなわち、リプログラミングされた細胞は疾患の治療に用いることができ、具体的には、組織幹細胞やその前駆細胞の分化状態にリプログラミングされた細胞を用いて各種疾患の治療を行うことができる。例えば、高橋ら、実験医学、vol.26、No.5(増刊)、2008年(羊土社);再生医療、第7巻、第3号、2008年(メディカルレビュー社);および医学のあゆみ、vol.229、No.9、2009年(医歯薬出版株式会社)を参照されたい。
例えば、血球系細胞をリプログラミングして造血幹細胞を得た場合には、造血幹細胞移植への利用が可能となる。具体的には、得られた造血幹細胞を点滴またはカテーテルなどを用いて移植することにより、白血病やリンパ腫、あるいは自己免疫疾患、あるいはリソソーム病やペルオキシソーム病を含む先天性代謝異常症(例えばムコ多糖症、Gaucher病、Fabry病、Pompe病、副腎白質ジストロフィー、I−cell病、異染性ロイコジストロフィー、GM1ガングリオドーシスなど)などへ適用できる。また、骨髄球系またはリンパ球系前駆細胞を得た場合には、それらの細胞そのもの、または更に赤血球、好中球、好塩基球、好酸球、血小板、樹状細胞または制御性T細胞へ分化誘導した後に、直接注射するか点滴で移植することにより、造血幹細胞移植後や抗ガン化学療法後の免疫回復、抗ガン細胞治療、自己免疫疾患細胞治療、リューマチ治療、多発性硬化症治療、再生不良性貧血などの貧血治療、血小板減少症治療、外傷治療などへ利用できる。また、間葉系幹細胞を得た場合には、点滴かカテーテルなどを用いて移植することにより、移植片対宿主病(GvHD)の治療、あるいは関節障害の治療などへ利用できる。
同様に、神経系では、例えば体細胞からのリプログラミングによりドーパミン産生細胞を得た場合には、これをカテーテルなどで移植することによりパーキンソン病治療へ利用できる。また、例えばオリゴデンドロサイト前駆細胞を得た場合には、これを患部へ直接注入あるいはカテーテルなどを用いて移植することにより脊髄損傷治療などへ利用できる。また、例えばニューロン前駆細胞やアストロサイト前駆細胞を得た場合には、これを患部へ直接注入あるいはカテーテルなどを用いて移植することにより運動神経障害の治療などへ利用できる。また、例えばNestinやMusashiなどの分化マーカー発現で識別できる神経幹細胞や神経前駆細胞を得た場合には、これを患部へ直接注入あるいはカテーテルなどを用いて移植することにより脳梗塞や脳出血治療などへ利用できる。
同様に、動静脈などの血管/リンパ管系、心筋/平滑筋/骨格筋/オーバル細胞などの筋組織系、膵臓、肝臓、胃、腸などの消化器系、表皮/真皮/毛髪などの皮膚系、角膜などの視覚系、内耳などの聴覚系などにおける治療用細胞を得ることもできる。例えば、腸系では、クリプト細胞などの腸前駆細胞を得た場合には、これをカテーテルなどで移植することにより、潰瘍性大腸炎、クローン病、短腸症などの治療へ利用できる。視覚系では、例えば体細胞からリプログラミングにより網膜前駆細胞や網膜色素上皮細胞や視細胞を得た場合には、これを直接注入あるいは細胞シート化して移植することにより加齢黄斑変性症や網膜色素変性症の治療へ利用できる。膵臓系では、例えばβ細胞やインスリン産生細胞を得た場合には、これをカテーテルなどであるいは免疫遮断デバイスに封入して移植することにより、糖尿病の治療へ利用できる。肝臓系では、例えばアルブミン産生細胞を得た場合には、これをカテーテルなどであるいは免疫遮断デバイスに封入して移植することにより、大量出血を伴う外傷治療などへ利用できる。また、例えば血液凝固因子産生細胞を得た場合には、これをカテーテルなどであるいは免疫遮断デバイスに封入して移植することにより、大量出血を伴う外傷治療や血友病などの先天性遺伝病などへ利用できる。
本発明に従ってリプログラミングした細胞はまた、治療用再生組織、器官、臓器の材料としての利用が可能である。例えば、心筋細胞、あるいはislet−1遺伝子などを発現する心筋前駆細胞やnkx−2.5遺伝子、gata−4遺伝子などの心筋分化関連マーカー因子を発現する細胞を誘導し、これをカテーテルなどで直接移植する他、誘導した心筋細胞などをシート化/積層化して移植することにより、心筋梗塞などの心不全や拡張型心筋症などの心臓疾患に適用することができる。細胞のシート化/積層化は、例えば温度感受性培養皿などを利用して行うことができる。また、誘導した心筋細胞に加えて血管内皮細胞を混合して細胞シート化/積層化することにより、血管網が再構築された細胞積層シートを作ることができる。
同様に、例えば脂肪細胞や骨髄細胞や血球細胞などの体細胞から間葉系幹細胞を得た場合、軟骨細胞を誘導し、これをカテーテルなどで直接移植する他、誘導した軟骨細胞などを高分子支持担体とともに移植することにより、軟骨や骨組織を再構築や関節障害の治療へ適用できる。同様に、例えば膵臓、肝臓、胃、腸などの消化器系、表皮/真皮/毛髪などの皮膚系、内耳などの聴覚系などにおける治療用組織を高分子支持担体などを利用して培養することにより得ることもできる。例えば、肝臓組織を誘導して得た場合は、肝癌、肝硬変、急性肝不全や、ヘモクロマトーシスなどの肝代謝障害の治療へ利用できる。平滑筋/骨格筋などの筋組織系を誘導して得た場合には、これを直接注入あるいはカテーテルなどを用いて移植することにより、筋ジストロフィー治療などへ利用できる。肺細胞組織を得た場合、これを患部へ移植することにより嚢胞性線維症や喘息などの肺呼吸器疾患治療へ利用できる。腎臓系では、メサンギウム細胞や尿細管上皮細胞、糸球体細胞など含む組織を得た場合、これを直接移植することにより、腎不全や腎炎の治療や透析治療などへ利用できる。動静脈などの血管/リンパ管系では、細胞シート化または高分子支持担体などを用いて血管を構築し、これを直接移植することにより、冠動脈大動脈バイパス移植などの心臓疾患治療、下肢虚血性疾患治療、虚血性心疾患治療などへ利用できる。
さらに、本発明に従ってリプログラミングした細胞は、創薬研究ツールとしての利用が可能である。例えば、ヒト体細胞をリプログラミングしてヒト組織幹細胞やその前駆細胞、あるいはiPS細胞を得た場合には、これらの細胞を用いて目的の分化状態の細胞、または組織もしくは器官を誘導し、これを被検物質の薬効/毒性評価や作用メカニズムの解明、あるいは生物現象メカニズムの解析に用いることが可能である。
また、本発明は、遺伝子組換え体製剤を製造する細胞への応用も可能である。すなわち、本発明のリプログラミング法により、ホルモン、代謝酵素などを産生する細胞を得た場合、これを治療用タンパク質の製造細胞とすることができる。例えば、肝臓系の、物質代謝が可能な細胞を得ることにより、アルブミン産生細胞、血液凝固因子産生細胞、α1アンチトリプシンなどの代謝酵素産生細胞を作製し、産生した代謝酵素を直接注射するか点滴投与することにより、これらのタンパク質の欠乏症の治療に用いることができる。例えばβ細胞などの、物質代謝が可能な膵臓系の細胞を得ることにより、インスリン産生細胞を作製し、産生したインスリンを直接注射することにより、I型糖尿病の治療に用いることもできる。さらに、得られた細胞へ所望の外来遺伝子を導入することにより、遺伝子組換え体を付加する治療用タンパク質製剤の製造細胞とすることができる。同様に、産生タンパク質に機能付加したり分泌能力を高める機能遺伝子を細胞に導入することにより、該細胞の物質生産能力を高めることができる。
本発明のエキソソームを含む組成物は、そのまま液剤として、または薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とともに適当な剤型の医薬組成物として製剤化することができる。ここで、薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、賦形剤、溶剤(分散剤)、溶解補助剤、懸濁化剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、保存剤、抗酸化剤などの製剤添加物を用いることもできる。
前記医薬組成物の剤形としては、例えば注射剤(例:皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、動脈内注射剤など)、点滴剤等の注入型製剤が挙げられる。
医薬組成物は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。医薬組成物中のエキソソームの含量は、剤形、投与量などにより異なるが、例えば約0.01〜約50重量%である。投与は、経口投与、例えば母乳、経鼻投与、非経口投与、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮投与などである。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されるものではない。
(1)胎盤由来細胞採取
帝王切開の分娩により、ヒトの胎盤組織を得た。この胎盤組織をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した。胎盤組織から外膜を除去し、メスや剃刀等を用いて組織を個片化した。胎盤組織10gあたり40mlの3mg/mlのコラーゲナーゼ(collagenase)、4mg/mlのディスパーゼ(dispase)を含有する溶液で、37℃で60分間の酵素処理を行った。その後、孔径100μmのストレイナーでフィルトレーションし、遠心分離装置で600g、5分間遠心分離し、その上清をアスピレートした。次に、胎盤組織10gあたり35mlのACKバッファーで5分間、溶血処理し、胎盤組織10gあたり35mlの3%ウシ胎児血清(FBS)と5U/mlヘパリン(Heparin)で溶血反応を止めた。さらに、遠心分離装置で600g、15分間遠心分離し、その上清をアスピレートした。MSCGM培地(Lonza社)でペレットを再懸濁し、細胞数計測した。
(2)コロニー形成
上記のようにして得られた胎盤由来細胞を、MSCGM培地を含むφ10cmディッシュに800個播種した(14cells/cm)。3日おきに培地交換しながら2週間培養した。増殖してきた細胞をCFC(コロニー形成細胞)とした。
(3)培養上清作製
上記のCFCを定法に従い、φ15cmディッシュに2x10個播種した(13,000cells/cm)。70%コンフルエントになったら、PBSで3回洗浄後、無血清DMEMに培地交換した。その後、48時間、37℃、5%CO、飽和水蒸気条件下でインキュベートした。48時間経過後、培養上清を回収し、遠心分離装置で2000g、20分間遠心分離し、その上清を回収し、孔径0.2μmのフィルターでフィルトレーションすることにより、細胞成分を除去した。
(4)エキソソーム調製
上記培養上清を遠心分離装置で10,000g、30分間遠心分離した後、さらにその上清を100,000g、70分間遠心分離した。このペレットをPBSに懸濁し、さらに100,000g、70分間遠心分離した。このペレットを培養上清20mlあたり100μlのPBSにサスペンドした。以上のようにしてエキソソーム1を製造した。
また同様の手法において、(2)の工程でコロニー形成していないヒト胎盤由来細胞からエキソソームを抽出したものをエキソソーム2とし、コロニー形成していないヒト頭蓋冠骨芽細胞からエキソソームを抽出したものをエキソソーム3として調製した。
上記のエキソソーム1について、LightCycler Real−Time PCR System(Roche Applied Science)を用い、歯根膜由来幹細胞をポジティブコントロールとして融解曲線分析法を行い、Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子、Nanog遺伝子の定量化を試みた。エキソソーム1には、Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子が実質的に含まれていないことが示唆され、Nanog遺伝子は含まれている可能性があることが示唆された(図1)。また、リアルタイムPCR産物を、アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色し、リアルタイムPCR産物のサイズを定性的に調べた(図2)。リアルタイムPCR産物のサイズから、エキソソーム1にはOct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子が実質的に含まれず、Nanog遺伝子は含まれている可能性があることが示唆された。
(5)ヒト皮膚線維芽細胞への添加実験
組織培養用6ウェルプレート(AGC旭硝子)を準備し、このディッシュにヒト皮膚線維芽細胞(Lonzaより入手)を1×10個ずつ播種した。24時間後、ディッシュにエキソソーム1〜3をそれぞれ100μlずつ加えた(この時点を0日とする)。1日目および3日目のタイミングで、totalRNAをISOGEN II(NIPPON GENE)を用いて回収した。
(6)リアルタイムRT−PCRによるヒト皮膚線維芽細胞中のmRNAの定量
上記RNAからLightCycler Real−Time PCR System(Roche Applied Science)を用いて、Oct3/4遺伝子、Sox−2遺伝子、Nanog遺伝子、TERT遺伝子のmRNAを定量した。
(7)結果を図3〜5に示す。縦軸は、各遺伝子のmRNAの相対発現量を示す。
コロニー形成した胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを皮膚線維芽細胞に接触させることにより、Oct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現が亢進することが確認された。一方、コロニー形成していなかったヒト胎盤由来細胞およびヒト頭蓋冠骨芽細胞から抽出したエキソソームを皮膚線維芽細胞に接触させても、Oct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現亢進は観察されなかった。また、コロニー形成した胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを接触させた皮膚線維芽細胞においては、TERT遺伝子の発現量に変化は見られなかった。

Claims (17)

  1. 標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させるための組成物であって、
    培養によりコロニー形成した胎盤由来細胞から抽出されたエキソソームを含む、前記組成物。
  2. 胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、請求項1記載の組成物。
  3. リプログラミングに関わる転写因子として、Oct3/4遺伝子、Nanog遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させるための組成物である、請求項1または2記載の組成物。
  4. エキソソームが、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子を実質的に含まない、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
  5. 標的細胞をリプログラミングするための組成物である、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
  6. 標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させるための組成物の製造方法であって、
    a)胎盤由来細胞を培養してコロニー形成させる工程と、
    b)コロニー形成した胎盤由来細胞を取得してさらに培養する工程と、
    c)工程b)で得られた培養上清からエキソソームを抽出する工程と、
    を含む、前記方法。
  7. 工程a)が、胎盤由来細胞を14cells/cm以下の密度で播種して培養し、コロニー形成させる工程である、請求項6記載の方法。
  8. 工程b)が、無血清培地中でさらに培養する工程である、請求項6または7記載の方法。
  9. 組成物が、リプログラミングに関わる転写因子として、Nanog遺伝子、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させるための組成物である、請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. 胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、請求項6〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させる方法であって、
    a)胎盤由来細胞を培養してコロニー形成させる工程と、
    b)コロニー形成した胎盤由来細胞を取得してさらに培養する工程と、
    c)工程b)で得られた培養上清からエキソソームを抽出する工程と、
    d)エキソソームと標的細胞とを接触させる工程と、
    を含む、前記方法。
  12. 工程a)が、胎盤由来細胞を14cells/cm以下の密度で播種して培養し、コロニー形成させる工程である、請求項11記載の方法。
  13. 工程b)が、無血清培地中でさらに培養する工程である、請求項11または12記載の方法。
  14. リプログラミングに関わる転写因子として、Nanog遺伝子、Oct3/4遺伝子およびSox−2遺伝子の発現を亢進させる、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
  15. 胎盤由来細胞が胎盤由来幹細胞を含む、請求項11〜14のいずれか1項記載の方法。
  16. 標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることにより、標的細胞をリプログラミングする方法である、請求項11〜15のいずれか1項記載の方法。
  17. 標的細胞において複数のリプログラミングに関わる転写因子の発現を亢進させることにより、多分化能を持つ細胞を製造する方法である、請求項11〜15のいずれか1項記載の方法。
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