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JP6232747B2 - 多層プリント配線板の製造法 - Google Patents

多層プリント配線板の製造法 Download PDF

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JP6232747B2
JP6232747B2 JP2013110386A JP2013110386A JP6232747B2 JP 6232747 B2 JP6232747 B2 JP 6232747B2 JP 2013110386 A JP2013110386 A JP 2013110386A JP 2013110386 A JP2013110386 A JP 2013110386A JP 6232747 B2 JP6232747 B2 JP 6232747B2
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Description

本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関する。
多層プリント配線板は各種電子機器・電子部品に広く使用されている。多層プリント配線板の製造技術としては、回路導体を備えた内層回路基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルトアップ方式による製造方法が知られている。
ビルドアップ方式による製造方法は、一般に、下記手順で実施される。はじめに内層回路基板上に樹脂組成物層を設け該樹脂組成物層を硬化させて絶縁層を形成する。次いで、絶縁層表面を膨潤液で膨潤させた後に酸化剤で粗化して、絶縁層表面に微小凹凸を形成する。その後、セミアディティブ法等の公知の方法に従って所定の配線パターンを有する導体層を絶縁層表面に形成する。
近年、多層プリント配線板を製造するに際して、絶縁層と導体層との熱膨張の差に起因する層間剥離や回路歪みを防止するために、絶縁層の形成に使用する樹脂組成物に無機充填材を高い配合量にて配合する傾向にある(特許文献1)。
特開2010−202865号公報
近年の電子機器・電子部品の小型化のニーズにより、多層プリント配線板はますます薄型化される傾向にあり、絶縁層を薄くすることが求められている。しかしながら、絶縁層が薄くなると、絶縁層の絶縁信頼性の低下が新たな課題となる。
本発明の課題は、絶縁層の厚さが薄い場合であっても、絶縁信頼性に優れる多層プリント配線板の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題につき鋭意検討する過程において、多層プリント配線板の製造において、絶縁層の絶縁信頼性が、絶縁層表面を膨潤液で膨潤させる膨潤工程と絶縁層表面を酸化剤で粗化する粗化工程の条件によって大きな影響を受けることを見出した。とりわけ、1)多層プリント配線板の薄型化の結果、回路導体上の絶縁層の厚さが15μm以下である場合、2)熱膨張率を低減すべく、無機充填材含有量が高い(例えば、50質量%以上)樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合に膨潤工程及び粗化工程の影響は顕著となり、絶縁層の絶縁信頼性が低下し易いことを見出した。
そして本発明者等は、上記の知見に基づき検討を進めた結果、膨潤工程における絶縁層単位面積当たりの質量増加量と、粗化工程における絶縁層単位面積当たりの質量減少量を一定値以下とし、かつ粗化工程における質量減少量が膨潤工程における質量増加量よりも大きくなるように膨潤工程および粗化工程を実施することによって、絶縁層が薄い場合であっても、良好な絶縁信頼性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
〔1〕 (I)内層回路基板上に形成された絶縁層を膨潤液で膨潤させる工程、及び(II)絶縁層表面を酸化剤で粗化する工程を含む多層プリント配線板の製造方法であって、工程(I)における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)が0.30mg/cm以下であり、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)が0.40mg/cm以下であり、かつM1とM2がM1≦M2の関係を満たす、多層プリント配線板の製造方法。
〔2〕 M1とM2がM1<M2の関係を満たす、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 M1とM2がM1+0.05<M2の関係を満たす、〔1〕に記載の方法。
〔4〕 内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さが15μm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さが1μm以上15μm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 絶縁層が樹脂組成物層を熱硬化して形成される、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、樹脂組成物中の無機充填材の含有量が50質量%以上である、〔6〕に記載の方法。
〔8〕 樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、樹脂組成物中の無機充填材の含有量が50質量%以上90質量%以下である、〔6〕に記載の方法。
〔9〕 樹脂組成物がエポキシ樹脂、硬化剤を更に含む、〔7〕又は〔8〕に記載の方法。
〔10〕 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が400nm以下である、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が300nm以下である、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下である、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕 工程(I)の前に、下記工程(A)、(B)及び(C)を含む、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の方法。
(A)支持フィルムと該支持フィルム上に設けられた樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板にラミネートする工程
(B)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
(C)絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成する工程
〔14〕 工程(II)の後に、下記工程(D)及び(E)を含む、〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の方法。
(D)絶縁層表面を中和液で中和処理する工程
(E)絶縁層表面にめっきにより導体層を形成する工程
本発明によれば、絶縁層の厚さが薄い場合であっても、絶縁信頼性に優れる多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、例えば、1)回路導体上の絶縁層の厚さが15μm以下である場合、2)無機充填材含有量が高い(例えば、50質量%以上)樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合であっても、絶縁信頼性に優れる多層プリント配線板を実現し得る。
さらには、本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、絶縁層表面の粗度を低く抑えることができるという効果が同時にもたらされる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[多層プリント配線板の製造方法]
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、(I)内層回路基板上に形成された絶縁層を膨潤液で膨潤させる工程、及び(II)絶縁層表面を酸化剤で粗化する工程を含み、工程(I)における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)が0.30mg/cm以下であり、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)が0.40mg/cm以下であり、かつM1とM2がM1≦M2の関係を満たすことを特徴とする。
本発明者等は、工程(I)の膨潤工程及び工程(II)の粗化工程を上記特定の条件にて実施することにより、絶縁層の厚さが薄い場合であっても、絶縁信頼性に優れる多層プリント配線板を実現し得ることを見出したものである。
絶縁層の絶縁信頼性の観点から、工程(I)における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)は、0.30mg/cm以下であり、好ましくは0.25mg/cm以下、さらに好ましくは0.20mg/cm以下、さらにより好ましくは0.15mg/cm以下である。質量増加量(M1)が0.30mg/cmを超えると、特に1)回路導体上の絶縁層の厚さが薄い場合、2)無機充填材含有量の高い樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合などに、絶縁信頼性の低下が顕著となる傾向にある。質量増加量(M1)の下限は特に限定されないが、通常、0.02mg/cm以上である。膨潤が不十分であると、後の粗化工程(すなわち、工程(II))における絶縁層表面の粗化が不十分となり易く、絶縁層表面に形成される導体層の密着強度が低下する傾向にある。質量増加量(M1)は、後述の<膨潤工程における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)の測定>の記載に従って測定することができる。
絶縁層の絶縁信頼性の観点から、工程(II)における絶縁層単位面積当たり質量減少量(M2)は、0.40mg/cm以下であり、好ましくは0.35mg/cm以下、さらに好ましくは0.30mg/cm以下である。質量減少量(M2)が0.40mg/cmを超えると、特に1)回路導体上の絶縁層の厚さが薄い場合、2)無機充填材含有量の高い樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合などに、絶縁信頼性の低下が顕著となる傾向にある。質量減少量(M2)の下限は特に限定されないが、通常、0.05mg/cm以上である。粗化が不十分であると、絶縁層表面に形成される導体層の密着強度が低下する傾向にある。質量減少量(M2)の値を上記範囲内とすることによって、絶縁層表面の粗度を低く抑えつつ、絶縁層表面に十分な密着強度にて導体層を形成することができ、微細配線化に著しく寄与することができる。質量減少量(M2)は、後述の<粗化工程における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)の測定>の記載に従って測定することができる。
絶縁層の絶縁信頼性の観点から、工程(I)における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)と工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)とは、M1≦M2の関係を満たすことが重要である。M1>M2の場合には、特に1)回路導体上の絶縁層の厚さが薄い場合、2)無機充填材含有量の高い樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合などに、絶縁信頼性の低下が顕著となる傾向にある。絶縁層の絶縁信頼性を一層高める観点および絶縁層表面の粗度を低く抑える観点から、上記質量増加量(M1)と質量減少量(M2)とは、好ましくはM1+0.05<M2の関係、より好ましくはM1+0.10<M2の関係を満たすことが好適である。
以下、工程(I)及び工程(II)について説明する。
<工程(I)>
工程(I)において、内層回路基板上に形成された絶縁層を膨潤液で膨潤させる。
工程(I)は、絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)が上記特定の範囲となる限り特に限定されず、多層プリント配線板の製造において絶縁層表面を膨潤させるに際し従来公知の任意の手順にて実施してよい。
好適な実施形態において、工程(I)は、内層回路基板上に形成された絶縁層表面を、50〜80℃(好ましくは55〜70℃)にて5〜20分間(好ましくは8〜15分間)、膨潤液に浸漬させることによって実施する。
工程(I)で使用する膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、アルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物を含有する溶液が挙げられ、具体的には、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。膨潤液は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
膨潤液としては市販品を使用してもよい。膨潤液の市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製の「Circuposit MLB211」及び「Cuposit Z」、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)」及び「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)」等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて使用してよい。
工程(I)における絶縁層の膨潤の程度(すなわち、絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1))は、樹脂組成物の組成に応じて、膨潤処理時の温度や時間、膨潤液の種類等を調整することによって、制御することができる。絶縁層の形成に使用する樹脂組成物に関しては後述することとする。
絶縁層がビアホールを有する場合、ビアホールの形状を良好に維持する観点から、工程(I)の後、水洗処理を実施することが好ましい。したがって、好適な一実施形態において、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、工程(I)と工程(II)の間に、絶縁層を水洗処理する工程を含む。
<工程(II)>
工程(II)において、絶縁層表面を酸化剤で粗化する。
工程(II)は、絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)が上記特定の範囲となる限り特に限定されず、多層プリント配線板の製造において絶縁層表面を粗化するに際し従来公知の任意の手順にて実施してよい。
好適な実施形態において、工程(II)は、絶縁層表面を、60〜80℃(好ましくは70〜80℃)にて10〜30分間(好ましくは15〜25分間)、酸化剤に浸漬させることによって実施する。
工程(II)で使用する酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液に過マンガン酸塩(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)を溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩(例えば、重クロム酸カリウム等)、オゾン、過酸化水素、硫酸、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられ、アルカリ性過マンガン酸溶液が好ましい。アルカリ性過マンガン酸溶液中の過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%であることが好ましい。酸化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸化剤としては市販品を使用してもよい。酸化剤の市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製の「Circuposit MLB213A−1」及び「Circuposit MLB213B−1」、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクト CP」及び「ドージングソリューション セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて使用してよい。
工程(II)における絶縁層の粗化の程度(すなわち、絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2))は、樹脂組成物の組成に応じて、粗化処理時の温度や時間、酸化剤の種類等を調整することによって、制御することができる。工程(II)における絶縁層の粗化の程度はまた、樹脂組成物中の粗化成分の含有量を調整することによって、制御することができる。例えば、熱可塑性樹脂、ゴム粒子などの粗化成分の含有量を高くすると、粗化の程度は増大する傾向にある。また、樹脂組成物中のエポキシ樹脂、硬化剤の種類及び含有量を調整することによっても、粗化の程度を調整することができる。例えば、エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂の含有比率の高いエポキシ樹脂を使用すると、粗化の程度は増大する傾向にある。また硬化剤としてフェノール系硬化剤を使用すると粗化の程度は増大する傾向にあり、活性エステル系硬化剤を使用すると粗化の程度は減少する傾向にある。
工程(I)及び工程(II)を実施することによって、内層回路基板上に形成された絶縁層の表面に凹凸が形成される。一般に絶縁層表面の粗度が大きいと、絶縁層表面に形成される導体層の密着強度はアンカー効果により高くなる傾向にある一方で、回路形成にあたり微細配線化の妨げになるという問題が生じる。この点、特定の条件にて工程(I)及び工程(II)を実施する本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、十分な密着強度をもたらす範囲において表面粗度の低い絶縁層をもたらすことができる。
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、さらにより好ましくは150nm以下又は100nm以下である。Ra値の下限は、十分な密着強度を得る観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。
絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
以下、内層回路基板及び絶縁層について説明する。
本発明の多層プリント配線板の製造方法において、「内層回路基板」とは、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路導体)を有し、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び導体層が形成されるべき中間製造物をいう。
内層回路基板の備える回路導体の寸法は、所望の特性に応じて決定してよい。例えば、回路導体の厚さは、多層プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm以下、19μm以下、又は18μm以下である。回路導体の厚さの下限は特に制限されないが、通常、1μm以上、3μm以上、5μm以上などである。
また、内層回路基板の表面における回路導体占有率((回路導体部分の面積)/(内層回路基板の表面積)×100[%])は、所望の特性に応じて決定してよい。回路導体占有率は、回路導体が銅で形成される際には「残銅率」とも称される。回路導体占有率は、内層回路基板の表面にわたって分布があってもよい。例えば、第1の回路導体占有率を有する領域と第2の回路導体占有率を有する領域とが形成された内層回路基板を使用してもよい。一般的な傾向として、回路導体占有率が低いほど、内層回路基板上に形成される絶縁層の回路導体上の厚さは薄くなる。特に、絶縁層を形成するために使用する樹脂組成物層の厚さが薄いほど、斯かる傾向は顕著となる。ここで、「絶縁層の回路導体上の厚さ」とは、回路導体の直上における絶縁層の厚さをいう。本発明においては、厚さの薄い樹脂組成物層と、回路導体占有率の低い領域を有する内層回路基板とを組み合わせて使用する場合であっても、優れた絶縁信頼性を示す絶縁層を実現することができる。
本発明においては、内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さが15μm以下と薄い場合であっても、優れた絶縁信頼性を実現することができる。本発明においては、絶縁信頼性の低下の問題なしに、内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さを、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、又は10μm以下と薄くすることができ、多層プリント配線板の薄型化に著しく寄与するものである。内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さの下限は特に限定されないが、十分な絶縁信頼性を得る観点から、好ましくは1μm以上である。
好適な実施形態において、絶縁層は、樹脂組成物層を熱硬化して形成される。
絶縁層の熱膨張率を十分に低下させて絶縁層と導体層との熱膨張差に起因する層間剥離や回路歪みを抑制する観点から、樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
なお、本発明において、樹脂組成物を構成する各成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
先述のとおり、無機充填材含有量の高い樹脂組成物を使用する場合、得られる絶縁層の絶縁信頼性に及ぼす工程(I)の膨潤工程及び工程(II)の粗化工程の影響は顕著となり、絶縁信頼性は低下し易い。これに対し、特定の条件にて工程(I)及び工程(II)を実施する本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、絶縁層の絶縁信頼性を低下させることなく、無機充填材含有量が更に高い樹脂組成物を使用することができる。例えば、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、62質量%以上、64質量%以上、66質量%以上、68質量%以上、70質量%以上、又は72質量%以上にまで高めてよい。
樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、絶縁層の機械強度の低下を防止する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
無機充填材としては、例えば、シリカ、窒化ケイ素、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが特に好適である。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
無機充填材の平均粒径は、内層回路基板上に樹脂組成物層をラミネートする際の回路導体の埋め込み性の観点から、0.01μm〜2μmの範囲が好ましく、0.05μm〜1.5μmの範囲がより好ましく、0.07μm〜1μmの範囲が更に好ましく、0.1μm〜0.8μmが更により好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製LA−500等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性向上のため、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
一実施形態において、樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、上記無機充填材に加えて、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、多層プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。樹脂組成物層を構成する樹脂組成物はまた、硬化剤を含んでいてもよい。したがって一実施形態において、樹脂組成物は、無機充填材に加えて、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、必要に応じて、さらに熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及びゴム粒子等の添加剤を含んでいてもよい。
以下、樹脂組成物の材料として使用し得るエポキシ樹脂、硬化剤、及び添加剤について説明する。
−エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びトリメチロール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下、「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物を熱硬化して形成される硬化体(絶縁層)の破断強度も向上する。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜3000、より好ましくは80〜2000、さらに好ましくは110〜1000である。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂が挙げられる。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「EXA4032SS」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ESN475」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YX4000HK」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:5の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)後述する樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する絶縁層を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.5〜1:5の範囲がより好ましく、1:1〜1:4.5の範囲がさらに好ましく、1:1.5〜1:4.5の範囲が特に好ましい。先述のとおり、液状エポキシ樹脂の含有比率の高いエポキシ樹脂を使用すると、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)は増大する傾向にある。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、3質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜45質量%がより好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましく、7質量%〜35質量%が特に好ましい。
−硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度(ピール強度)の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度(ピール強度)を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることが好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、東都化成(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」、群栄化学工業(株)製の「GDP−6140」等が挙げられる。
導体層との密着強度(ピール強度)の観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1が更に好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
先述のとおり、硬化剤としてフェノール系硬化剤を使用すると工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)は増大する傾向にあり、活性エステル系硬化剤を使用するとM2は減少する傾向にある。シアネートエステル系硬化剤は、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)に与える影響の点で、フェノール系硬化剤と活性エステル系硬化剤の中間の特性を示す。
一実施形態において、本発明の多層プリント配線板の製造方法において絶縁層を形成するために使用する樹脂組成物は、上述の無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む。樹脂組成物は、無機充填材としてシリカを、エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は1:0.1〜1:5の範囲が好ましく、1:0.5〜1:4.5の範囲がより好ましく、1:1〜1:4.5の範囲がさらに好ましく、1:1.5〜1:4.5の範囲が特に好ましい)を、硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を、それぞれ含むことが好ましい。斯かる特定の成分を組み合わせて含む樹脂組成物層に関しても、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤の好適な含有量は上述のとおりであるが、中でも、無機充填材の含有量が50質量%以上、エポキシ樹脂の含有量が3質量%〜50質量%であることが好ましく、無機充填材の含有量が50質量%〜90質量%、エポキシ樹脂の含有量が5質量%〜45質量%であることがより好ましい。硬化剤の含有量に関しては、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、硬化剤の反応基の合計数との比が、好ましくは1:0.2〜1:2の範囲、より好ましくは1:0.3〜1:1.5の範囲、さらに好ましくは1:0.4〜1:1の範囲となるように含有させることが好ましい。
樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、必要に応じて、さらに熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及びゴム粒子等の添加剤を含んでいてもよい。
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等が挙げられ、中でも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲が更に好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、東都化成(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく、その具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば0.1質量%〜20質量%の範囲としてよい。先述のとおり、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量が高くなると、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)は増大する傾向にある。
−硬化促進剤−
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。
硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分の合計量を100質量%としたとき、0.01質量%〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
−難燃剤−
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物層中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜9質量%がより好ましく、1.5質量%〜8質量%が更に好ましい。
−ゴム粒子−
ゴム粒子としては、例えば、後述する有機溶剤に溶解せず、上述のエポキシ樹脂、硬化剤、及び熱可塑性樹脂などとも相溶しないものが使用される。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。
ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メチルメタクリレート重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ゴム粒子の平均粒径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。ゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
樹脂組成物中のゴム粒子の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%であり、より好ましくは2質量%〜5質量%である。先述のとおり、樹脂組成物中のゴム粒子の含有量を高くすると、工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)は増大する傾向にある。
樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
<その他の工程>
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、上記特定の条件にて工程(I)及び工程(II)を実施する限り、他の工程を含んでもよい。以下、斯かる他の工程について好適な例を示す。
好適な実施形態において、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、工程(I)の前に、下記工程(A)、(B)及び(C)を含む。
(A)支持フィルムと該支持フィルム上に設けられた樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板にラミネートする工程
(B)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
(C)絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成する工程
−工程(A)−
工程(A)において、支持フィルムと該支持フィルム上に設けられた樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板にラミネートする。
樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、上記のとおりである。樹脂組成物層の厚さは、絶縁層の厚さを薄くして多層プリント配線板の薄型化を図る観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下又は20μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、得られる絶縁層の絶縁信頼性の観点から、通常、3μm以上である。
支持フィルムとしては、プラスチック材料からなるフィルムが好適に用いられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下、「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持フィルムは、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持フィルムとしては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持フィルムを使用してもよい。
支持フィルムの厚さは、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、支持フィルムが離型層付き支持体である場合、離型層付き支持フィルム全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持フィルム上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう。)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3〜10分乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持フィルムと接合していない面(即ち、支持フィルムとは反対側の面)には、支持フィルムに準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、多層プリント配線板を製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
ラミネート処理の条件は特に限定されず、樹脂シートを用いて多層プリント配線板の絶縁層を形成するにあたり使用される公知の条件を採用することができる。例えば、加熱されたSUS鏡板等の金属板を樹脂シートの支持体側からプレスすることにより行うことができる。この場合、金属板を直接プレスするのではなく、内層回路基板の回路凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスを行うのが好ましい。プレス温度は、好ましくは70℃〜140℃の範囲であり、プレス圧力は好ましくは1kgf/cm〜11kgf/cm(0.098MPa〜1.079MPa)の範囲で行われ、プレス時間は好ましくは5秒間〜3分間の範囲である。また、ラミネート処理は、好ましくは20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で実施する。ラミネート処理は、市販されている真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
ラミネート処理の後、内層回路基板にラミネートされた樹脂シートを、加熱及び加圧して、平滑化処理を実施してもよい。
平滑化処理は、一般に、常圧(大気圧)下、加熱された金属板又は金属ロールにより、樹脂シートを加熱及び加圧することにより実施される。加熱及び加圧の条件は、上記ラミネート処理の条件と同様の条件を用いることができる。
ラミネート処理及び平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に実施してよい。
なお、工程(A)の後、支持フィルムを剥離する。支持フィルムは、工程(A)と工程(B)との間、工程(B)と工程(C)との間、又は工程(C)と工程(I)との間に実施してよい。支持体の剥離は、手動で剥離してもよく、自動剥離装置により機械的に剥離してもよい。
−工程(B)−
工程(B)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
熱硬化の条件は特に限定されず、多層プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物層に用いる樹脂組成物の組成等によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜210℃の範囲、より好ましくは170℃〜190℃の範囲)、硬化時間は5分間〜90分間の範囲(好ましくは10分間〜75分間、より好ましくは15分間〜60分間)とすることができる。
熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、熱硬化に先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。樹脂組成物層の熱硬化は、大気圧下(常圧下)にて行うことが好ましい。
−工程(C)−
工程(C)において、絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成する。
ビアホールは、層間の電気接続のために設けられ、絶縁層の特性を考慮して、ドリル、レーザー、プラズマ等を用いる公知の方法により形成することができる。例えば、支持フィルムが存在する場合は、支持フィルム上からレーザー光を照射して、絶縁層にビアホールを形成することができる。ビアホールの開口の大きさは、搭載する部品の微細度で選択されるが、トップ径40μm〜500μmの範囲が好ましい。
レーザー光源としては、例えば、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。中でも、加工速度、コストの観点から、炭酸ガスレーザーが好ましい。
穴あけ加工は、市販されているレーザー装置を用いて実施することができる。市販されている炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、日立ビアメカニクス(株)製のLC−2E21B/1C、三菱電機(株)製のML605GTWII、松下溶接システム(株)製の基板穴あけレーザ加工機が挙げられる。
ビアホールの形成時、ビア底部に絶縁層由来の樹脂残渣(スミア)が沈着する場合があるが、斯かるスミアは、工程(I)及び工程(II)を実施することにより除去することができる。
好適な実施形態において、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、工程(II)の後に、下記工程(D)及び(E)を含む。
(D)絶縁層表面を中和液で中和処理する工程
(E)絶縁層表面にめっきにより導体層を形成する工程
−工程(D)−
工程(D)において、絶縁層表面を中和液で中和処理する。
中和処理は、多層プリント配線板の製造において従来公知の任意の手順にて実施してよい。好適な実施形態では、中和処理は、絶縁層表面を、30〜50℃(好ましくは35〜45℃)にて3〜10分間(好ましくは3〜8分間)、中和液に浸漬させることによって実施する。中和液としては、酸性水溶液が好ましく、市販品としては、ローム・アンド・ハース電子材料(株)製「Circuposit MLB216−5」、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューシン・セキュリガントP」が挙げられる。
−工程(E)−
工程(E)において、絶縁層表面にめっきにより導体層を形成する。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望の多層プリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層は、フルアディティブ法、セミアディティブ法等の従来公知の各種方法を用いてめっきにより絶縁層表面に形成することができる。
導体層をセミアディティブ法により形成する場合、以下の手順で形成してよい。まず、絶縁層表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
絶縁層と導体層とは十分な密着強度(ピール強度)を示すことが求められ、一般に、絶縁層表面の凹凸に起因するアンカー効果によって斯かる密着性を得ている。しかしながら、絶縁層表面の凹凸が大きいと、配線パターン形成時にエッチングで不要なめっきシード層を除去する際、凹凸部分のシード層が除去され難く、また、凹凸部分のめっきシード層を十分に除去し得る条件でエッチングした場合、配線パターンの溶解が顕著化し、微細配線化の妨げとなっていた。これに対し、特定の条件にて工程(I)及び工程(II)を実施する本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、絶縁層と導体層との間の十分な密着強度を保ちつつ、粗度の低い表面を有する絶縁層を有利に得ることができる(絶縁層表面の粗度については先述のとおりである)。絶縁層の厚さを薄くした場合にも優れた絶縁信頼性を実現し得る効果も相俟って、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、多層プリント配線板の薄型化と微細配線化の双方に著しく寄与するものである。
本発明の方法により製造される多層プリント配線板は、絶縁層表面の粗度が上記のとおり低いもかかわらず、該絶縁層表面に十分な密着強度(ピール強度)、即ち、好ましくは0.4kgf/cm以上、より好ましくは0.45kgf/cm以上、さらに好ましくは0.5kgf/cm以上、さらにより好ましくは0.51kgf/cm以上、0.52kgf/cm以上、又は0.53kgf/cm以上、を呈する導体層を備える。密着強度は高い程好ましいが、一般的に1.5kgf/cmが上限となる。
なお本発明において、絶縁層と導体層との密着強度とは、導体層を絶縁層に対して垂直方向(90度方向)に引き剥がしたときのピール強度(90度ピール強度)をいい、導体層を絶縁層に対して垂直方向(90度方向)に引き剥がしたときのピール強度を引っ張り試験機で測定することにより求めることができる。引っ張り試験機としては、例えば、(株)TSE製の「AC−50C−SL」等が挙げられる。
無機充填材含有量の高い樹脂組成物を使用して絶縁層を形成する場合であっても良好な絶縁信頼性を実現し得る効果も相俟って、本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、リフロー耐性に著しく優れる多層プリント配線板を実現することができる。
以上、本発明の多層プリント配線板の製造方法が含み得る他の工程について例示したが、特定の条件にて工程(I)及び工程(II)を実施する限り、本発明の方法は上記以外の工程を含んでもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
まず、本明細書での物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
〔測定・評価用基板の調製〕
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路基板として、1mm角格子の配線パターン(残銅率が60%の領域と残銅率が90%の領域とを有する)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.3mm、Panasonic(株)製「R1515F」]を用意した。該内層回路基板の両面を、メック(株)製「CZ8100」に浸漬して銅表面の粗化処理(銅エッチング量1μm)をおこなった。
(2)樹脂シートのラミネート
下記作製例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)ニチゴー・モートン製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接するように、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
(3)樹脂組成物層の熱硬化
樹脂シートがラミネートされた内層回路基板を、180℃で30分間加熱し、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成した。
(4)絶縁層の膨潤及び粗化
ビアホールの形成後、絶縁層表面を膨潤させ、粗化した。膨潤工程は、絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)が下記表1に示す値となるように、絶縁層表面を膨潤液(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製「Circuposit MLB211」及び「Cuposit Z」を含む混合膨潤液、Circuposit MLB211:20%、Cuposit Z:10%)に60℃又は80℃で5〜20分間浸漬させることにより実施した。粗化工程は、絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)が下記表1に示す値となるように、絶縁層表面を酸化剤(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製「Circuposit MLB213A−1」及び「Circuposit MLB213B−1」を含む混合酸化剤溶液、Circuposit MLB213A−1:12%、Circuposit MLB213B−1:15%)に80℃で5〜20分間浸漬させることにより実施した。膨潤及び粗化工程の後、水洗処理した。これにより絶縁層表面の粗化処理を行った。
(5)絶縁層の中和処理
次いで、絶縁層表面を、中和液(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製「Circuposit MLB216−5」)に45℃で5分間浸漬した後、130℃で15分間乾燥した。
(6)めっきによる導体層の形成
セミアディティブ法に従って、絶縁層表面にめっきにより導体層を形成した。詳細には、はじめにアトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきにより厚さ1μmの銅層を形成した。その後、電解銅めっきを行い、全体厚さ15μmの導体層(銅層)を形成した。
なお、残銅率が90%の領域における回路導体上の絶縁層の厚さは約16μm、残銅率が60%の領域における回路導体上の絶縁層の厚さは約10μmであった。
<膨潤工程における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)の測定>
上記(3)において得られた基板を10cm角に切断し、支持フィルムを剥離した。次いで、基板を130℃にて15分間乾燥させ、乾燥直後の基板質量X1(mg)を測定した。その後、基板を膨潤工程に付し、水洗処理を行った。次いで、基板表面の水滴をエアーナイフで除去した後、基板質量X2(mg)を測定した。
膨潤工程における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)は、X1及びX2の測定値を下記式(1)に代入して求めた。下記式(1)中、Aは絶縁層の表面積を表し、100cmである。
M1(mg/cm)=(X2−X1)/A (1)
<粗化工程における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)の測定>
粗化工程における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)は、下記式(2)により求めた。式(2)中、X1及びAは上記と同じ意味を表し、X3は、粗化工程後の基板質量(mg)を表す。X3は、粗化工程後の基板を水洗処理し、130℃にて15分間乾燥させた直後の基板質量である。
M2(mg/cm)=(X1−X3)/A (2)
<絶縁層の絶縁信頼性の評価方法>
上記(6)において得られた評価基板の導体層側に、直径10cmの円形導体パターンを形成した。そして、円形導体側を+電極とし、内層回路基板の回路導体(銅)側を−電極として、高度加速寿命試験装置(ETAC製「PM422」)を使用し、130℃、85%相対湿度、3.3V直流電圧印加の条件で200時間経過させた際の絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスター(J−RAS(株)製「ECM−100」)にて測定した(n=5)。5回の試験全てにおいてその抵抗値が10Ω以上の場合を「○」、1回でも10Ω未満の場合は「×」とした。
<導体層の密着強度(ピール強度)の測定>
上記(6)において得られた評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具((株)TSE製のオートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、ピール強度を求めた。
<リフロー耐性試験>
上記(6)において得られた評価基板を、3cmx12cmの寸法に切断し、ピーク温度260℃のリフロー装置(日本アントム(株)製「HAS−6116」)に10回繰り返して通した際の外観変化を観察した(n=5)。5回の試験全てにおいて導体層(銅層)や絶縁層の剥離(ブリスター)の無い場合を「○」、1回でもブリスターのあるものを「×」とした。
実施例及び比較例で使用した樹脂シート1、2及び3は、下記の手順で作製した。
<作製例1(樹脂シート1の作製)>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828EL」、エポキシ当量約185)12部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量約288)25部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、固形分30質量%のMEK/シクロヘキサノン=1/1溶液)20部を、ソルベントナフサ15部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125、固形分60%のMEK溶液)20部、ナフトール系硬化剤(新日鐵化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)10部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)0.5部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m)80部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を調製した。
次いで、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)の離型層側に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが18μmとなるように樹脂ワニス1を均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、樹脂シート1を作製した。
<作製例2(樹脂シート2の作製)>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP7200H」、エポキシ当量約275)9部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK/シクロヘキサノン=1/1溶溶液)16部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発分65質量%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分5質量%のMEK溶液)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を調製した。
次いで、樹脂ワニス2を使用して、作製例1と同様の手順で樹脂シート2を作製した。
<作製例3(樹脂シート3の作製)>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169)3部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)3部、ビフェニル型樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP7200H」、エポキシ当量約275)20部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)8部を、ソルベントナフサ20部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30S」、シアネート当量約133、不揮発分85質量%のMEK溶液)8部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)8部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分5質量%のMEK溶液)0.3部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート、固形分1質量%のMEK溶液)4部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m)100部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を調製した。
次いで、樹脂ワニス3を使用して、作製例1と同様の手順で樹脂シート3を作製した。
樹脂シート1乃至3の樹脂組成物層の組成を表1にまとめて示す。
Figure 0006232747
<実施例1>
樹脂シート1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.12mg/cm、M2が0.29mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<実施例2>
樹脂シート2を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.10mg/cm、M2が0.20mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<実施例3>
樹脂シート3を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.09mg/cm、M2が0.22mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<比較例1>
樹脂シート1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.26mg/cm、M2が0.21mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<比較例2>
樹脂シート2を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.22mg/cm、M2が0.18mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<比較例3>
樹脂シート1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.31mg/cm、M2が0.46mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<比較例4>
樹脂シート3を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.18mg/cm、M2が0.42mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
<比較例5>
樹脂シート1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に手順に従って、M1が0.31mg/cm、M2が0.38mg/cmの条件下で評価基板を製造した。各評価結果を表2に示す。
Figure 0006232747

Claims (14)

  1. (I)内層回路基板上に形成された絶縁層を膨潤液で膨潤させる工程、及び
    (II)絶縁層表面を酸化剤で粗化する工程
    この順に含む多層プリント配線板の製造方法であって、
    工程(I)における絶縁層単位面積当たりの質量増加量(M1)が0.30mg/cm以下であり、
    工程(II)における絶縁層単位面積当たりの質量減少量(M2)が0.40mg/cm以下であり、かつ
    M1とM2がM1≦M2の関係を満たす、多層プリント配線板の製造方法。
  2. M1とM2がM1<M2の関係を満たす、請求項1に記載の方法。
  3. M1とM2がM1+0.05<M2の関係を満たす、請求項1に記載の方法。
  4. 内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さが15μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 内層回路基板上に形成された絶縁層の回路導体上の厚さが1μm以上15μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 絶縁層が樹脂組成物層を熱硬化して形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、樹脂組成物中の無機充填材の含有量が50質量%以上である、請求項6に記載の方法。
  8. 樹脂組成物層を構成する樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、樹脂組成物中の無機充填材の含有量が50質量%以上90質量%以下である、請求項6に記載の方法。
  9. 樹脂組成物がエポキシ樹脂、硬化剤を更に含む、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が400nm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が300nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 工程(II)の後、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 工程(I)の前に、下記工程(A)、(B)及び(C)を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
    (A)支持フィルムと該支持フィルム上に設けられた樹脂組成物層とを含む樹脂シートを、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板にラミネートする工程
    (B)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
    (C)絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成する工程
  14. 工程(II)の後に、下記工程(D)及び(E)を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
    (D)絶縁層表面を中和液で中和処理する工程
    (E)絶縁層表面にめっきにより導体層を形成する工程
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