以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。以下では、荷台付車両の座席が1つである1人乗り車両である場合を説明するが、座席の数は1つに限定せず、2つの座席を有する車両でもよい。以下ではすべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
図1から図5は、本発明の実施形態に係る荷台付電動車両10を示している。図1は、荷台付電動車両10の側面図である。図2は、図1の車両において、コネクタを外部に露出させた状態を示す斜視図である。図3は、図1のA−A断面図である。なお、以下では、荷台付電動車両10は、単に車両10という。まず、車両10において、動力源である電動モータ11(図3)の動力を車輪16,18,20,22に伝達する動力伝達機構32を中心に車両構造を説明し、その後、電動モータ11を制御する制御システム150(図5)を説明する。
図1に示すように、車両10は、除雪部23を有する除雪車両である。車両10は、車体24の左右前側に支持された左右前車輪16,20と、車体24の左右後側に支持された左右後車輪18,22と、車体24の前側に設けられた除雪部23と、車体24の前後方向中間部に設けられた座席である運転席26と、運転席26の後側に設けられた荷台28と、走行用の動力源である電動モータ11と、バッテリ30と、動力伝達機構32とを含む。車両10は、左右後車輪18,22を駆動可能とする後輪駆動型である。なお、本例の車両は除雪車両に限定せず、後述する多目的車両であってもよい。
車体24は、上側に運転席26及び荷台28が設けられ、左右前車輪16,20と左右後車輪18,22とを支持する下部構造34と、下部構造34の上部に一体に設けられた上部構造36とを含む。下部構造34において、運転席26の前側には旋回指示具であるステアリング操作子38と、アクセルペダル40及び図示しないブレーキペダルとが支持される。ステアリング操作子38は、円形または非円形のステアリングハンドルである。ステアリング操作子はバー状に形成されてもよい。
除雪部23は、ハウジング300、ロータリ式の掻き込みオーガ302、ブロアモータ304、ブロア306、及びシュータ308を含んで構成される。ハウジング300は、前側に開口部310を有し、車体24の前側に支持される。掻き込みオーガ302及びブロア306は、ハウジング300の内側に支持される。
掻き込みオーガ302は、外周面にらせん状の突起を有する略円柱状の回転部材312を含み、車両の走行経路上に雪が存在する場合に、回転部材312の駆動により前側中央部に雪を集めてブロア306に送る機能を有する。回転部材312の軸方向は車両の左右方向と略一致する。回転部材312の両端部はハウジング300に回転可能に支持される。
ブロアモータ304のケースは、ハウジング300の後側に固定され、ブロアモータ304の回転軸はハウジング300の内側に前後方向に突出し、回転軸の前端部に設けられたウォームと、回転部材312に固定されたウォームホイールとが噛合する。ブロアモータ304の回転により、ブロア306が駆動するとともに、回転部材312が回転駆動する。ブロア306に送られた雪は、シュータ308に送られ、シュータ308の上部に設けられた開口を通じて走行経路外に噴出される。これによって、走行経路上の雪が除去される。
運転席26は、オペレータである運転者が座部41に着座可能な「基準状態」と、着座不可能に座部41の後側が上昇した「後側上昇状態」との間で切り替え可能に、車体に支持される。運転席26の座部41の前側部分が車体24の前後方向中間部に設けられた台座部42の上部に、左右方向に向いた軸を中心として揺動変位を可能に支持される。
運転席26の下側には、充放電器164(図5)を介してバッテリ30に接続されるコネクタ166が設けられる。コネクタ166には、後述の図5に示す外部交流電源168に接続されたケーブルC1に設けられたプラグG1、または、外部電気機器である電動作業機172に接続されたケーブルC2に設けられたプラグG2が接続可能である。
コネクタ166は、運転席26の座部41を略水平状態とした基準状態の場合に、運転席26の下側に、その座部41により覆われるように配置される。図2に示すように、運転席26を後側上昇状態とした場合に、コネクタ166は、プラグG1またはプラグG2と接続可能に露出される。運転席26を基準状態から後側上昇状態に切り替える場合、図示しないシートロック機構を、後述するキースイッチ158(図5)において使用されるキーを使って解除する。これにより第三者による不正な給電行為を阻止できる。
荷台28は、運転席26の後側に設けられ、上端が開口して作業機器等の搭載物180を上側から挿入して搭載可能な挿入孔43を含む。荷台28は、車体24の下部構造34と一体的に形成され、または下部構造34に固定されている。図1は、荷台28に搭載物180が搭載された状態を示している。荷台28は、挿入孔43を上側から下側に見た場合に挿入孔43の周囲を取り囲む壁部W1,W2,W3,W4と、挿入孔43の下端を塞ぐ底板部U1とによって形成される孔周辺部44を含む。荷台28の左右両側壁部W1,W3の外側面には、左右後車輪18,22の上側及び前側を覆い泥除け機能を有する突出部45が設けられる。
荷台28の後側に図示しない開閉扉を設けて、開閉扉を開いた状態で搭載物180を荷台28の後側から積み下ろし可能、または搭載可能に構成してもよい。好ましくは、開閉扉の下端は挿入孔43の下端と上下方向について略同じ位置か、または挿入孔43の下端よりも低くする。開閉扉の下端部は、荷台28の後端の左右両端部において、左右方向に向いた軸を中心として揺動可能に支持され、開閉扉は、上端を後方下側に下げるように揺動されることで挿入孔43の後側が解放可能とされてもよい。荷台28において、挿入孔43の上端開口周辺部に蓋部が揺動可能に支持され、蓋部によって挿入孔43の上端開口が解放と閉鎖との間で切替可能とされてもよい。
また、図2のみで図示するように、荷台28の後端部には牽引部材314が設けられる。牽引部材314は、図示しない被牽引車両の前側に設けられた係止部材と係合可能であり、車両10は被牽引車両を牽引可能である。牽引部材314は省略してもよい。
図3に示すように、下部構造34は、本体部46と、本体部46の前側で、本体部46の左右両側の外側面の間の幅よりも小さい左右両側の外側面の間の幅を有し、断面形状が枠形である前側支持部47とを含む。前側支持部47の幅方向外側には、上アームと下アームとを含む懸架装置48を介して左右前車輪16,20が、前側支持部47に対する上下変位を可能に支持されている。左右前車輪16,20は、左右の前車軸50、51に結合固定され、前車軸50、51を支持する車軸支持部52の間には、複数のロッドの連結構造であるロッド連結部材54が連結されている。ロッド連結部材54の中間部には図示しないラックが設けられる。ステアリング操作子38に図示しないステアリングシャフトが連結され、ステアリングシャフトの下端部に設けられたピニオンギヤがラックと係合する。ステアリング操作子38がいずれかの方向に操作されることに伴ってステアリングシャフトが回転し、ロッド連結部材54の押し引きにより左右前車輪16,20が所望方向に操舵される。なお、図3ではロッド連結部材54を簡略化して示している。
本体部46の後側において、幅方向外側には、歯車減速機構56を含む左右の後側ギヤケース58がボルト等の結合手段により固定されている。左右後車輪18,22は、左右の後側ギヤケース58に支持された後車軸60,62に固定される。左右後車輪18,22は、後車軸60,62を介して後側ギヤケース58に回転可能に支持されている。左右の後車軸60,62には、後述の動力伝達機構32によって電動モータ11の動力が伝達される。
電動モータ11は、例えば3相の同期モータまたは誘導モータである。電動モータ11の駆動は、後述する制御装置であるECU152(図5)により、互いに独立して制御される。
図1に戻って、上部構造36は、運転席26及び荷台28の上側を覆うように設けられた屋根64と、運転席26の前側に屋根64と一体に設けられた窓ガラス66と有する。窓ガラス66は透明樹脂材であってもよい。上部構造36において、屋根64と一体に設けられ、略直立した後壁部68の後方に突出する上側荷台70が設けられ、上側荷台70に搭載物180Aを搭載可能とする。搭載物180Aは、図示しないロープ等で上側荷台70に固定されてもよい。
また、車両10に屋根を設けずに、ステアリング操作子38よりも前側に車体24に一体に、風防のみが設けられてもよい。上部構造36において、運転席26の左右両側には、運転者の昇降を可能とする開口部72が設けられる。上部構造36において、左右の開口部72を塞ぐように、左右両側のドア及び左右窓ガラスを含む両側構造が設けられてもよい。
図3のように車両10を上側から下側に見た場合に、荷台28のうちの少なくとも挿入孔43の下側周囲を含む下側部分の少なくとも一部は、左右後車輪18,22の間に配置され、バッテリ30は、前後方向において荷台28よりも前方に配置される。
図1に示すように、バッテリ30は、運転席26の下側に配置される。バッテリ30は、電動モータ11に電力を供給する蓄電部である。バッテリ30は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウム電池等を用いることができる。蓄電部としてバッテリ30以外にキャパシタを用いることもできる。バッテリ30は、左右に分かれて配置され互いに電気的に直列または並列に接続されている。なお、バッテリ30は左右に2つに分かれて配置されたものではなく、単一の一体構造を用いてもよい。左右のバッテリ30の少なくとも一方のみが電動モータ11に電力を供給する構成としてもよい。
次に図3、図4A、図4Bを用いて動力伝達機構32を説明する。動力伝達機構32は、電動モータ11の動力を左後出力軸74と右後出力軸76とに出力する後差動装置78と、左動力伝達部80及び右動力伝達部82とを含む。動力伝達機構32は、後差動装置78を介して電動モータ11の動力の少なくとも一部を左右の後車軸60,62に伝達する。
図4Aは、図3のB部拡大図である。図4Aに示すように、電動モータ11は、荷台28よりも前側で後述する差動ケース88に固定されたモータケース90と、モータケース90及び差動ケース88に回転可能に支持されたモータ軸92とを有する。モータ軸92は、車両10の左右方向である幅方向に沿って配置される。モータ軸92は、差動ケース88の内側に配置される部分の外周面に小径ギヤ部94を有する。
後差動装置78は、車体24において、荷台28の前側でバッテリ30よりも下側に固定された差動ケース88と、左右後出力軸74,76と、差動ケース88に収容された内側部材96と、ピニオンギヤ98と、サイドギヤ100と、外側部材102とを含む。
左右後出力軸74,76は、互いに同軸上に配置される。内側部材96は、左右後出力軸74,76の端部の周囲に設けられる。ピニオンギヤ98は、内側部材96の周方向一部または複数個所において、径方向を中心として回転可能に支持される。サイドギヤ100は、ピニオンギヤ98に噛合した状態で、左右後出力軸74,76に相対回転不能に固定される。外側部材102は、内側部材96の周囲に相対回転不能に係合する。
外側部材102は、外周面に大径ギヤ部104を有し、大径ギヤ部104は、モータ軸92の小径ギヤ部94に噛合する。なお、モータ軸92には同軸上にリングギヤ106が固定されているが、このリングギヤ106は省略してもよい。
このような後差動装置78では、電動モータ11の駆動によって小径ギヤ部94から外側部材102に動力が伝達されると、左右後出力軸74,76に電動モータ11の動力に基づく動力が出力される。後差動装置78に電動モータ11から動力が入力された場合に、後差動装置78は、互いに差動的に連結された左右後出力軸74,76に動力を出力する。左右後出力軸74,76の車両幅方向外側端部は、車体24に回転可能に支持される。
図4A、図4Bに示すように、左動力伝達部80は、左後出力軸74に固定された第1プーリ108、左の後側ギヤケース58に支持された第1軸110に固定された第2プーリ112、第1動力伝達要素である左のベルト114、及び左の歯車減速機構56を含む。ベルト114は歯付ベルトであり、第1プーリ108及び第2プーリ112に掛け渡される。左後出力軸74の動力は、第1プーリ108、ベルト114、第2プーリ112を介して第1軸110に伝達される。また、該ベルト114は、チェーンベルトとして構成してもよい。
歯車減速機構56は、左後車軸60と平行に設けられた第1軸110及び第2軸116と、第1軸110、第2軸116及び左後車軸60に固定された歯車118,120,122,124とを含み、入力側から出力側へ2段階で減速する。歯車減速機構56は、1段階または3段階以上で減速する構成としてもよい。
第2軸116は、左後車軸60の回転中心軸よりも前側で下側に配置された回転中心軸を有し、第1軸110は、第2軸116の回転中心軸よりもさらに前側で下側に配置された回転中心軸を有する。第1軸110、第2軸116及び左後車軸60は、それぞれ後側ギヤケース58に幅方向に沿って回転可能に支持される。左後側ギヤケース58の最も車両10の幅方向中央側の一方端P1は、荷台28の最も左右方向外側に位置する左側面S1と幅方向において略同位置、またはこれよりも幅方向外側に位置する。
左のベルト114は、左右方向において、荷台28の左側面S1と左後車輪18の最も幅方向中央側に位置する「最内端P2」との間に設けられる。
図3に戻って、右動力伝達部82は、右後出力軸76に固定された第1プーリ108、第2プーリ112、第2動力伝達要素であり、右の第1プーリ108及び第2プーリ112に掛け渡される右のベルト114、及び右の歯車減速機構56を含む。右後出力軸76の動力は、第1プーリ108、ベルト114、第2プーリ112を介して右の第1軸110に伝達される。
右のベルト114は、左右方向において、荷台28の右側面S2と右後車輪22の最も幅方向中央側に位置する「最内端P3」との間に設けられる。右動力伝達部82の構成要素のその他の構成は、左動力伝達部80の構成要素と左右方向についての関係が逆になるだけで同様である。これによって、左右後出力軸74,76は、左右後車軸60,62に作動的に連結され、左右歯車減速機構56は、左右後出力軸74,76のそれぞれの回転を減速して、左右車輪18,22に固定された左右後車軸60,62のそれぞれに伝達する。
図1、図3に示すように、動力伝達機構32の少なくとも一部である、左右後出力軸74,76及び差動ケース88は、左右のバッテリ30の下方に設けられる。
なお、複数のベルト114及びプーリ108,112の代わりに、チェーン及びチェーンを駆動するスプロケットを用いることもできる。
次に、図5を用いて、電動モータ11の駆動を制御する制御システム150を説明する。制御システム150は、電動モータ11にインバータ153及びリレーRAを介して接続されたバッテリ30と、制御装置であるECU152と、メインスイッチであるキースイッチ158と、ペダルセンサ162とを含む。制御システム150は、車両10に搭載される。
インバータ153は複数のスイッチング素子を有し、スイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換する。ペダルセンサ162は、アクセルペダル40の操作位置を検出する。ペダルセンサ162の検出信号はECU152に送信される。
キースイッチ158は、キーを入れた状態でオンオフ操作可能なキー操作部がユーザによってオン操作またはオフ操作されたことをそれぞれ取得可能である。キースイッチ158は、バッテリ30とECU152との間に接続され、オン操作されることでバッテリ30からECU152への電力供給を可能とし、かつ、リレーRAのオンによってバッテリ30からインバータ153への電力供給を可能とする。一方、キースイッチ158はオフ操作されることでリレーRAをオフしてバッテリ30からインバータ153への電力供給を遮断する。
ECU152は、CPU、メモリを有するマイクロコンピュータを含む。ECU152は、リレーRAの開閉動作を制御する。ECU152はペダルセンサ162の検出信号を受け取って、検出ペダル位置に応じた目標車速を算出し、目標車速に基づいて、電動モータ11の目標回転速度を算出する。ECU152は、目標回転速度に基づいて、インバータ153のスイッチングを制御することで、電動モータ11を目標回転速度で駆動する。
本明細書において、電動モータの「回転速度」は、電動モータの単位時間(例えば1分)当たりの回転数の意味も含む。
充放電器164は、AC/DCコンバータと充放電切替回路とを含み、バッテリ30とコネクタ166との間に接続される。充放電器164は、ECU152により制御されて、外部交流電源168に接続されたケーブルC1に設けられた電源プラグG1がコネクタ166に接続された状態で、充放電切替スイッチ170がオンされた場合に、外部交流電源168からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッテリ30に充電する。
充放電切替スイッチ170は、車両10の運転席26の前側等において、ユーザに操作可能に設けられ、オンオフの切り替え可能な操作部を有する。外部交流電源168として、運転者の自宅等の建物設備に設けられた電力取り出し部に接続された系統電源を用いてもよい。
一方、コネクタ166には、外部電気機器である電動作業機172に接続されたケーブルC2に設けられた機器プラグG2も接続可能である。ECU152は、充放電切替スイッチ170の操作に応じて、コネクタ166に接続された外部交流電源168からバッテリ30への充電許可と、コネクタ166に接続された電動作業機172に対するバッテリ30からの給電許可とを切り替えるように充放電器164を制御する。
具体的には、充放電器164は、上記のように外部交流電源168からの交流電力を直流電力に変換するだけでなく、ECU152により制御され、コネクタ166に機器プラグG2が接続された状態で、充放電切替スイッチ170がオフされた場合に、バッテリ30からの直流電力を交流電力に変換して、電動作業機172に交流電力を出力する機能を有する。これによって電動作業機172が給電されて駆動される。電動作業機172として、例えば荷台28に搭載可能なものを用いることができる。例えば、電動作業機172として、電動モータでポンプを駆動させてタンクから農薬または水等の液体を噴霧する噴霧器を用いることができる。電動作業機として、噴霧器以外に、作業者が手で持って操作する草刈り取り機、または周囲を照射するための投光機を用いることができる。外部電気機器は、電動作業機に限定せず、テレビ、ラジオ、電気コンロ等の電気機器であってもよい。充放電切替スイッチ170のオフで外部交流電源168からバッテリ30への充電を可能とし、充放電切替スイッチ170のオンでバッテリ30から電動作業機172への電力出力を可能としてもよい。
充電認識部174は、コネクタ166に電源プラグG1が接続されている場合、またはその接続状態で外部交流電源168からバッテリ30に充電されている場合にそれを検知して、充電接続状態であることを表す信号をECU152に送信する。ECU152は充電接続信号を受け取った場合に、図示しないLED等の点灯部または液晶表示部等の表示部でユーザに充電接続状態を通知するように制御する。
図2では、運転席の下側で、2つのバッテリ30の上側に2つのコネクタ166が設けられる場合を示している。この場合、2つのバッテリ30は2つのインバータ153のそれぞれに対してリレーを介して並列接続されてもよい。この場合、2つのバッテリ30のそれぞれに別の充放電器が接続されてもよい。2つのコネクタ166は、直列接続された2つのバッテリ30に並列接続されてもよい。コネクタ166は、運転席26の座部41の下側に1つのみが設けられてもよい。
上記の車両10によれば、エンジンを動力源として走行する荷台付車両の場合と異なり、走行時の静粛性を高くでき、走行時間及び走行経路等の走行状況の制限を小さくできる。
また、動力伝達機構32を構成するベルト114が左右方向において、荷台28の左右両側面S1,S2と後車輪18,22との間に設けられるので、荷台28の下側にベルトが配置される場合と異なり、荷台28の最下面の地面からの高さである最低地上高を小さくできる。このため、荷台28の挿入孔43の下面を低くすることによって荷台28の搭載容量を大きくでき、荷台28に搭載される搭載物180(図1)の大きさ等の制限を小さくできる。
また、電動モータ11は、荷台28よりも前側に配置されるので、電動モータが荷台28の下側に配置される場合と異なり、荷台28の下面の最低地上高をより小さくできる。
また、電動モータ11の動力は動力伝達部80,82で大きく減速して後車軸60,62に伝達でき、車輪16,18,20,22を高トルクで駆動でき、走破性を高くできる。
図6は、本発明の実施形態の別例の第1例の車両10を示している図3に対応する図である。本例の車両10は、図1から図5の車両10において、除雪部は設けられていない。本例の車両10は、多目的車両(utility vehicle)と呼ばれる。
また、バッテリ30よりも前方に左右後出力軸74,76と電動モータ11とが配置される。また、車両10の上方から下方に差動ケース88及びバッテリ30を見た場合に、差動ケース88は、左右のバッテリ30と重畳しないように設けられる。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成と同様である。なお、図6の構成、及び、後述の実施形態の別例の構成において、図1の構成と同様に除雪部23を持つ構造としてもよい。
図7は、本発明の実施形態の別例の第2例の車両10を示している図3に対応する図である。本例の車両10において、バッテリ30は、車体24の前後方向において、運転席26(図1参照)よりも前方の左右前車輪16,20と同じ位置に設けられる。この場合、コネクタ166(図5参照)は、運転席26よりも前方において、バッテリ30の周辺部で、プラグを接続可能な位置に設けてもよい。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成、または図6の構成と同様である。
図8は、本発明の実施形態の別例の第3例の車両10を示している図3に対応する図である。図9は、図8のD部拡大図である。本例の車両10は、電動モータ11の動力を左右後車輪18,22及び左右前車輪16,20に伝達可能とする四輪駆動機能を有する。
具体的には、動力伝達機構32は、車体24の下側で、左右方向である幅方向の中央に前後方向に沿って配置される動力伝達軸126と、前差動装置128と、前差動装置128を構成する左右前出力軸130,132に減速歯車機構134及び第2左右前出力軸135,136を介して作動的に連結された左右前車軸50、51とを含む。動力伝達機構32は、前差動装置128を介して電動モータ11の動力の少なくとも一部を左右前車軸50,51に伝達する。
図9に示すように、前差動装置128は、車体24の前側に固定された前側差動ケース137と、前側差動ケース137に収容支持されたリングギヤ軸138と、左右前出力軸130,132と、内側部材96と、ピニオンギヤ98と、サイドギヤ100と、外側部材102とを含む。
リングギヤ軸138は、前側差動ケース137に左右方向に沿って回転可能に支持される。リングギヤ140はリングギヤ軸138に固定され、リングギヤ軸138に設けられた小径ギヤ部142は、外側部材102の外周面に設けられた大径ギヤ部104に噛合する。リングギヤ140は、動力伝達軸126の前側端部に設けられた軸側第1ピニオンギヤ144と噛合する。前差動装置128のその他の構成は、前後の関係が逆になるだけで後差動装置78の構成と同様である。前差動装置128に動力伝達軸126から動力が入力された場合に、前差動装置128は左右前出力軸130,132に動力を出力する。
左右前出力軸130,132の動力は、減速歯車機構134に伝達される。減速歯車機構134は、左右前出力軸130,132の車両外側の端部に同軸上に固定された小歯車146と、小歯車146と噛合し、第2左右前出力軸135,136に同軸上に結合固定された大歯車148とを含む。減速歯車機構134は、左右前出力軸130,132の回転を減速して第2左右前出力軸135,136に伝達する。減速歯車機構134の構成要素は、前側差動ケース137と一体に固定された左右の前側ギヤケース230に収容支持される。前側ギヤケース230は、前側支持部47の内側面にボルト等の結合手段により結合固定される。
左右第2出力軸135,136は、図示しない等速ジョイントまたはユニバーサルジョイントを介して、図8に示す左右前車軸50,51に動力を伝達可能に連結されている。
動力伝達軸126の前側部分は前側差動ケース137に回転可能に支持され、動力伝達軸126の後側部分は後側の差動ケース88に回転可能に支持される。
図9に示すように、動力伝達軸126は、軸本体232と、軸本体232の前端部に同軸上に連結された第1ピニオン軸234と、軸本体232の後端部にクラッチスライダ236を介して同軸上に連結された第2ピニオン軸238とを含んで構成される。
第1ピニオン軸234の前側端部に軸側第1ピニオンギヤ144が設けられる。第2ピニオン軸238の後側端部に軸側第2ピニオンギヤ240が設けられる。軸側第2ピニオンギヤ240は、電動モータ11のモータ軸92に固定されたリングギヤ106と噛合する。
クラッチスライダ236は、軸本体232と第2ピニオン軸238との外周面にスプライン係合しており、軸方向に移動可能に配置される。クラッチスライダ236は図示しないクラッチフォークと、レバー部材242と、図示しないリンク機構とを介して、運転席26の周辺部に設けられた図示しない操作レバーに連結される。レバー部材242は、差動ケース88に回転可能に支持され、その回転によってクラッチフォークを介してクラッチスライダ236を軸方向に移動可能とする。
ユーザの操作レバーの操作に伴って、クラッチスライダ236が軸方向に移動して、軸本体232と第2ピニオン軸238との両方に係合した状態では、電動モータ11で駆動される第2ピニオン軸238の動力に基づく動力が動力伝達軸126、前差動装置128、第2左右出力軸135,136を介して左右前車軸50,51に伝達され四輪駆動状態が実現される。
一方、ユーザの操作レバーの操作に伴って、クラッチスライダ236が逆方向に移動して、軸本体232と第2ピニオン軸238とのうち、軸本体232のみに係合した場合には、電動モータ11の動力に基づく動力が、左右後車軸60,62のみに伝達されて二輪駆動状態となる。
図8、図9の構成によれば、四輪駆動機能を有することで路面の走破性を高くできる。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成、または図6の構成と同様である。
図10から図13は、本発明の実施形態の別例の第4例の車両を示している。図10は、車両10の側面図である。図11は、図10のE−E断面図である。まず、車両10において、動力源である電動モータ12,14(図11)の動力を車輪16,18,20,22に伝達する左右動力伝達部244,246を中心に車両構造を説明する。
図10に示すように、車両10は、走行用の動力源である第1電動モータ12及び第2電動モータ14と、バッテリ30と、左動力伝達部244及び右動力伝達部246とを含む。車両10は、図8、図9の構成と同様に、左右前車輪16,20及び左右後車輪18,22のすべてを駆動可能とする四輪駆動機能を有する多目的車両である。
図11に示すように、左右前車輪16,20は、左右の前車軸50、51に結合固定され、前車軸50、51を支持する車軸支持部52の間にはロッド55が連結されている。ロッド55はラックを持たず、ステアリングシャフトの下端部にピニオンギヤは設けられていない。その代わりに、車両10は、ステアリング操作子38の直線走行に対応する中立状態からの回転角を検出する角度センサ160(図13)を備える。角度センサ160の検出信号はECU(図13)に送信される。
前車軸50、51には、後述する左右動力伝達部244,246によって第1電動モータ12及び第2電動モータ14の動力が伝達される。第1電動モータ12のケースが固定された左前側ギヤケース252と、第2電動モータ14のケースが固定された右前側ギヤケース254とは、前側支持部47の幅方向内側面に図示しないボルト等の結合手段により固定される。
電動モータ12,14は、図1から図5の電動モータ11と同様に構成され、電動モータ12,14のそれぞれの駆動は、ECU152により、互いに独立して制御される。
次に左右動力伝達部244,246を説明する。左動力伝達部244は、第1電動モータ12の動力を左前車輪16と左後車輪18とに伝達し、右動力伝達部246は、第2電動モータ14の動力を右前車輪20と右後車輪22とに伝達する。
左動力伝達部244は、左前側ギヤケース252に収容支持された左前側歯車機構256と、左前出力軸258と、左前車軸50と、左後側動力伝達機構260とを含む。
図12は、図11のF部拡大図である。図12に示すように、第1電動モータ12は、車両10の左右方向である幅方向に沿って配置されるモータ軸262を有し、荷台28よりも前方に配置される。左前側歯車機構256は、モータ軸262に同軸上に固定された小歯車264と、大歯車266とを有する複数の歯車264,266,268,270を含み、入力側から出力側へ2段階に減速させる減速歯車機構である。左前側歯車機構256は、1段階または3段階以上に減速される構成としてもよい。第1電動モータ12の動力は、左前側歯車機構256により減速されて、大歯車266が同軸上に固定された左前出力軸258に伝達される。
左前車軸50は、左前車輪16に固定され、左前出力軸258に図示しない等速ジョイントまたはユニバーサルジョイントを介して連結され、左前車輪16が車体24に対し上下に変位した場合でも、左前出力軸258の動力が左前車軸50に伝達されるように構成される。
左後側動力伝達機構260は、第1電動モータ12のモータ軸262に同軸上に固定された第1プーリ272と、車体24に回転可能に支持された左の中間軸274に固定された内側プーリ276及び外側プーリ278と、第2プーリ112(図11)と、複数のベルト282,114と、歯車減速機構56と、左後車軸60とを含む。内側プーリ276は、左の中間軸274の幅方向中央側(図12の右側)に固定される。外側プーリ278は、左の中間軸274の幅方向外側(図12の左側)に固定される。第2プーリ112は、後側ギヤケース58に収容支持された第1軸110に固定される。
複数のベルト282,114は、第1プーリ272と内側プーリ276との間、外側プーリ278と第2プーリ112との間にそれぞれ掛け渡される。左の外側プーリ278と第2プーリ112との間に掛け渡される第1動力伝達要素であるベルト114は、左右方向において、荷台28の左側面S1と左後車輪18の最も幅方向中央側に位置する「最内端P2」との間に設けられる。
後側ギヤケース58と、後側ギヤケース58に収容された歯車減速機構56との構成は、図3、図4Bの構成と同様である。歯車減速機構56は、入力側の回転を減速して左後車軸60に伝達するので、左後側動力伝達機構260は、第1電動モータ12の動力を左後車軸60に伝達可能である。
右動力伝達部246は、右前側ギヤケース254に収容支持された右前側歯車機構284と、右前出力軸286と、右前車軸51と、右後側動力伝達機構288とを含む。
左前側ギヤケース252と右前側ギヤケース254とは、前側支持部47の前後方向において同じ位置に固定されるが、第2電動モータ14は、幅方向に沿って配置されるモータ軸263を有し、第1電動モータ12及び第2電動モータ14のモータ軸262,263は、前後方向に離れて互いに平行に配置される。図示の例ではモータ軸263は、モータ軸262の前側に配置される。
右動力伝達部246の構成要素において、その他の構成は、左動力伝達部244の構成要素と左右方向についての関係が逆になるだけで同様である。右前車軸51は、右前車輪20に固定され、かつ、右前出力軸286に図示しない等速ジョイントまたはユニバーサルジョイントを介して連結され、右前車輪20が車体24に対し上下に変位した場合でも、右前出力軸286の動力が右前車軸51に伝達されるように構成される。
右後側動力伝達機構288は、第2電動モータ14の動力を右後車輪22に固定された右後車軸62に伝達する。右後側動力伝達機構288は、第2電動モータ14のモータ軸263に同軸上に固定された第1プーリ272と、車体24に回転可能に支持された右の中間軸274に固定された内側プーリ276及び外側プーリ278と、第2プーリ112と、複数のベルト283,114と、歯車減速機構56と、右後車軸62とを含む。
右の中間軸274は、車体24に、バッテリ30の前側において左の中間軸274と同軸上に回転可能に支持される。左右の中間軸274は、各電動モータ12,14のモータ軸262,263に対して平行に配置される。なお、左右の中間軸274は前後方向において互いに異なる位置に配置されてもよい。
複数のベルト283,114は、右の第1プーリ272と内側プーリ276との間、右の外側プーリ278と第2プーリ112との間にそれぞれ掛け渡される。右の歯車減速機構56は、入力側の回転を減速して右後車軸62に伝達するので、右後側動力伝達機構288は、第2電動モータ14の動力を右後車軸62に伝達可能である。
右の外側プーリ278と第2プーリ112との間に掛け渡される第2動力伝達要素であるベルト114は、左右方向において、荷台28の右側面S2と右後車輪22の最も幅方向中央側に位置する「最内端P3」との間に設けられる。
次に、図13を用いて、第1電動モータ12及び第2電動モータ14の駆動を制御する制御システム150を説明する。制御システム150は、電動モータ12,14のそれぞれにインバータ154,156及びリレーR1,R2を介して接続されたバッテリ30と、ECU152と、キースイッチ158と、角度センサ160及びペダルセンサ162とを含む。
キースイッチ158は、オン操作されることでバッテリ30からECU152への電力供給を可能とし、かつ、リレーR1,R2のオンによってバッテリ30からインバータ154,156への電力供給を可能とする。一方、キースイッチ158はオフ操作されることでリレーR1,R2をオフしてバッテリ30からインバータ154,156への電力供給を遮断する。
ECU152は、リレーR1,R2の開閉動作を制御する。ECU152は角度センサ160及びペダルセンサ162の検出信号を受け取って、検出ペダル位置に応じた目標車速と、検出角度に応じた第1電動モータ12及び第2電動モータ14の間の目標回転速度差とを算出する。ECU152は目標車速と目標回転速度差とに基づいて、第1電動モータ12及び第2電動モータ14それぞれの目標回転速度を算出する。ECU152は、目標回転速度に基づいて、電動モータ12,14のそれぞれに対応するインバータ154,156のスイッチングを制御することで、電動モータ12,14のそれぞれを対応する目標回転速度で互いに独立して駆動する。これによって、電動モータ12,14が同一回転速度で駆動された場合には車両10が直進走行し、回転速度差が発生した場合にはその差に応じた方向に車両10が旋回する。
ECU152は、検出角度に応じた第1電動モータ12及び第2電動モータ14の目標回転速度差を算出する代わりに、検出角度に応じた第1電動モータ12及び第2電動モータ14の目標回転速度の比を算出し、目標車速と目標回転速度比とに基づいて、第1電動モータ12及び第2電動モータ14それぞれの目標回転速度を算出してもよい。
図10から図13の構成によれば、図8、図9の構成と同様に、四輪駆動機能を有することで路面の走破性を高くでき、しかも、動力伝達機構を構成するベルト114が左右方向において、荷台28の左右両側面S1,S2と後車輪18,22との間に設けられるので、荷台28の最低地上高を小さくできる。このため、荷台28に搭載される搭載物180(図10)の制限を小さくできる。
また、第1電動モータ12及び第2電動モータ14のそれぞれは、荷台28よりも前側に配置されるので、電動モータが荷台28の下側に配置される場合と異なり、荷台28の下面の最低地上高をより小さくできる。
また、電動モータ12,14の動力は動力伝達部244,246で大きく減速して前車軸50,51及び後車軸60,62に伝達されるので、車輪16,18,20,22を高トルクで駆動でき、走破性をより高くできる。
また、第1電動モータ12及び第2電動モータ14のモータ軸262,263は、前後方向に離れて互いに平行に配置されるので、車体24の前側の電動モータ配置空間の上下方向の高さを小さくできる。このため、車体24の前側の空間を有効利用できる。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成と同様である。
図14は、後輪駆動用の動力伝達部の別例を示している図4Bに対応する図である。本例の場合、後側ギヤケース58は、車体24の本体部46の内側面に固定されている。荷台28(図1)は、後側ギヤケース58よりも車両10の幅方向中央側に配置される。以下では、左後車輪18用の動力伝達部を説明するが、右後車輪22(図3)用の動力伝達部も同様である。
左後車輪18に固定された左後車軸60は、歯車124が固定される出力軸176に対して自在継手178を介して接続され、車体24に対する左後車輪18の変位にかかわらず、電動モータ12から出力軸176に伝達された動力が、左後車軸110に伝達されるように構成される。その他の構成及び作用は、図1から図5の場合と同様である。図14の構成は、図6から図12の構成のいずれか1と組み合わせてもよい。
図15は、本発明の実施形態の別例の第5例の車両10を示している図3に対応する図である。本例の場合、左右の前側ギヤケース252,254は、車両10の幅方向中央に対して左右対称に車体24に固定されている。また、荷台28の下側に電動モータ12,14が配置されている。
具体的には、第1電動モータ12のモータ軸262に左側の小歯車118及び第2プーリ112が同軸上に固定される。第2電動モータ14のモータ軸263に右側の小歯車118及び第2プーリ112が同軸上に固定される。モータ軸262,263に固定された小歯車118は、第1電動モータ12及び第2電動モータ14により駆動される。この場合、左右のベルト282は、左右前側歯車機構256,284を構成する歯車軸に固定された第1プーリ272と内側プーリ276との間に掛け渡される。後側動力伝達機構260A,288Aは、小歯車118を含む歯車減速機構56と、後車軸60,62とを含んで構成され、電動モータ12,14の動力を後車軸60,62に伝達する。
この構成では、荷台28の下側に電動モータ12,14が配置されるが、モータ軸262,263は小歯車118と同軸上に配置され、小歯車118は、後車軸60,62と同軸上に結合された歯車124に別の歯車を介して噛合する。また、歯車118は、歯車124の回転中心軸よりも前側で下側に配置された回転中心軸を有する。このため、電動モータ12,14のモータ軸262,263は、後車輪18,22の車軸中心よりも前側で下側に配置されるので、荷台28において、左右の後車輪18,22の間に配置される部分の多くにおいて、下側面の地上高を低くできる。また、電動モータ12,14の上側部分における荷台28の下側面の地上高も比較的低くできる。このため、荷台28に搭載される搭載物の制限を小さくできる。その他の構成及び作用は、図10から図13の構成と同様である。
なお、図15の構成において、左右の後側動力伝達機構260A,288Aが動力伝達要素としてプーリに掛け渡されるベルトを含む場合に、そのベルトも、ベルト114とともに、左右方向において、荷台28の左側面S1と左後車輪18の最内端P2との間、荷台28の右側面S2と右後車輪22の最内端P3との間にそれぞれ設けられてもよい。
図16は、本発明の実施形態の別例の第6例の車両10を示している図3に対応する図である。図17は、図16のG部拡大図であり、図18は、図17のH−H断面図である。
本例の場合、前車輪16,20は電動モータによって駆動せず、車両10は二輪駆動状態で走行する。一方、後車輪18,22の内側には、車体24に固定されたギヤケース182が配置されている。ギヤケース182において、車両幅方向中央側には電動モータ12,14のケース184が固定されている。
車両10は、電動モータ12,14のモータ軸と後車輪18,22に固定された後車軸60,62との間に設けられ、モータ軸の動力を減速して後車軸60,62に伝達する歯車減速機構186を含む。
以下、図17、図18を用いて、右後車輪22用の動力伝達部について説明する。左後車輪18用の動力伝達部も左右方向についての関係が逆になるだけで右後車輪22用の場合と同様である。歯車減速機構186は、第1偏心部材188、第1外歯部材190、第2偏心部材192、第2外歯部材194、内歯196、フランジ部198、及び複数のキャリアピン200とを含む。第1偏心部材188、第1外歯部材190、第2偏心部材192、第2外歯部材194、及びキャリアピン200は、ギヤケース182に収容支持される。
第1偏心部材188は、ギヤケース182の内側に突出したモータ軸263の外周側に、モータ軸263の回転中心軸である基準軸L1に対し偏心した状態で固定される。第1外歯部材190は、第1偏心部材188の外周側に基準軸L1に対し偏心した偏心軸周りに、複数のローラ202を介して相対回転可能に嵌装される。
第2偏心部材192は、第1偏心部材188に隣接して、モータ軸263の外周側に基準軸L1に対し第1偏心部材188とは180度反対側に偏心した状態で固定される。第2外歯部材194は、第2偏心部材192の外周側に基準軸L1に対し第2偏心部材192と同じ側に偏心した偏心軸周りに、複数のローラ202を介して相対回転可能に嵌装される。
内歯196は、ギヤケース182の内周面に一体に設けられる。内歯196は、第1外歯部材190及び第2外歯部材194の外周側に設けられた外歯204,206とそれぞれ噛合するように設けられる。内歯196は、基準軸L1回りに同心円上に配置され、外歯204,206のそれぞれよりも多い歯数を有する。
フランジ部198は、後車軸62の電動モータ14側の端部において、ギヤケース182の内側に突出する軸部208に一体に設けられ、軸部208とともにギヤケース182に回転可能に支持される。フランジ部198及び軸部208は、基準軸L1中心に回転する。
複数のキャリアピン200の外側端部(図17の右端部)は、フランジ部198に基準軸L1周りの同心円上に固定されている。キャリアピン200の中間部及び内側端部は、第1外歯部材190及び第2外歯部材194にそれぞれの偏心軸周りの同心円上に貫通するように形成され、キャリアピン200の外径よりも大きいカム孔210,212に挿入されている。
一方、電動モータ14の内端側には、ブレーキ装置213が設けられている。ブレーキ装置213は、ブレーキケースの内側に突出したモータ軸263の端部に固定された断面U字形の円板状の摩擦部材214と、摩擦部材214と対向するカム部材216に固定されるアームA1と、回転中心軸L2を中心にアームA1を回転させる第2アームA2とを含む。第2アームA2は、図示しないブレーキペダルにリンクまたはケーブル等により連結される。
ブレーキ解除時には図17に示すように、カム部材216は摩擦部材214から離れているが、ブレーキ実行時にブレーキペダルの踏み込みによって第2アームA2が回転中心軸L2を中心に一方向に回転し、カム部材216がブレーキケースの内側面に形成された図示しないカム面に沿って移動する。これによって、カム部材216は、摩擦部材214をブレーキケースに押圧し、電動モータ14を摩擦制動する。これによって車輪22の制動が行われる。
上記の構成によれば、電動モータ14の回転時に偏心部材188,192の偏心軸周りの回転によって、外歯部材190,194も偏心軸周りに回転する。この場合、外歯204,206の歯数と内歯196の歯数とに応じた減速比で、外歯部材190,194の回転が減速され、キャリアピン200を介して後車軸62にその回転が伝達される。この場合、第1外歯部材190と第2外歯部材194とは基準軸L1に対して互いに反対側に偏心しているので、偏心部材188,192の回転に伴う偏心トルクを相殺でき、モータ軸263を安定して回転できる。また、歯車減速機構186の部品点数を少なくでき、低コスト化を図れ、さらに平歯車機構で減速機構を構成する場合に比べて小型化を図れる。なお、第2偏心部材192及び第2外歯部材194は省略してもよい。
図19は、本発明の実施形態の別例の第7例の車両10を示している図3に対応する図である。本例の場合、図11のように車両10の前側に配置された第1電動モータ12及び第2電動モータ14を有する構成で、左後車輪18駆動用の第3電動モータ218と、右後車輪22駆動用の第4電動モータ220とを含んでいる。第3電動モータ218及び第4電動モータ220は、図15の構成で用いていた第1電動モータ12及び第2電動モータ14と同様の位置に設けられる。
本例では、第1電動モータ12により駆動される小歯車264と、第3電動モータ218により駆動される小歯車290との間には動力伝達機構が設けられておらず、小歯車264,290間で動力は伝達されない。同様に、第2電動モータ14により駆動される小歯車264と、第4電動モータ220により駆動される小歯車290との間には動力伝達機構が設けられておらず、小歯車264,290間で動力は伝達されない。
第3電動モータ218及び第4電動モータ220は、ECU152によって、ペダルセンサ162からの検出ペダル位置と角度センサ160からの検出角度とに応じたそれぞれの目標回転速度で駆動が制御される。第3電動モータ218及び第4電動モータ220のそれぞれの目標回転速度は、第1電動モータ12及び第2電動モータ14のそれぞれの目標回転速度と同じとしてもよいが、異ならせてもよい。
上記の構成の場合も、図15の構成と同様に、荷台28に搭載される搭載物の制限を小さくできる。その他の構成及び作用は、図10から図13の構成、または、図15の構成と同様である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。