JP6201817B2 - チタン含有ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
1−1.晶析工程
1−2.ニッケル粉末生成工程
2.チタン含有ニッケル粉末
まず、本発明に係るチタン含有ニッケル粉末の製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。本製造方法は、ニッケル粉末を晶析させる晶析工程と、晶析工程で得られたニッケル粉末にチタンを含有させてチタン含有ニッケル粉末を得るニッケル粉末生成工程とを含んでいる。以下、本製造方法における晶析工程及びニッケル粉末生成工程の詳細について説明する。
晶析工程は、ニッケル粉末を晶析させることができれば特に限定されず、例えば、晶析工程においては、純水によるスラリーを作製するのに好適な湿式還元法により、ニッケル粉末を析出させることが好ましい。特に、晶析工程では、保護コロイド剤と、コロイド作製用の還元剤と、ニッケルよりも貴な金属塩とからなる複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液と、錯化剤と、アルカリ性物質と、還元剤と、ニッケル塩水溶液とを混合することにより、ニッケル粉末を析出させることがより好ましい。
晶析工程では、コロイド粒子の凝集を抑制するために、保護コロイド剤を添加する。保護コロイド剤としては、後述するニッケルよりも貴な金属の塩を含む複合コロイド粒子、例えば、パラジウムと銀とを含む複合コロイド粒子を取り囲み、保護コロイドの形成に寄与することができるものであればよく、特にゼラチンが好ましい。晶析工程では、ゼラチンの他、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の保護コロイド剤を用いることができる。
コロイド作製用の還元剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドラジン(N2H4)、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等から選ばれる少なくとも1種類を適宜選択することができる。晶析工程では、これらのコロイド作製用の還元剤の中でも水溶性のヒドラジン化合物が好ましく、特に、不純物が少ない点でヒドラジンが最も好ましく用いられる。また、晶析工程では、選択したコロイド作製用の還元剤を、水等の溶媒に溶解して用いることができる。例えば、晶析工程では、ヒドラジン化合物を水に溶解して得られたヒドラジン水溶液を用いることが好ましい。
ニッケルよりも貴な金属の塩としては、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩、銅塩等の水溶性の塩が挙げられ、これらの中では特に、パラジウム塩若しくは銀塩の何れか、又は、これらの混合物が適している。晶析工程では、パラジウム塩と銀塩との混合物を水等の溶媒に混合した溶液を用いることが最適である。その理由は、核として働く貴な金属種の凝集が抑制され、その結果、ニッケル粉末の粗大粒子や連結粒子の形成を抑制することができるためである。
晶析工程では、コロイド溶液の原材料として特に適している、保護コロイド剤としてのゼラチン、コロイド作製用の還元剤としてのヒドラジン、ニッケルよりも貴な金属塩としてのパラジウム塩と銀塩の配合比率は、ニッケル塩水溶液中のニッケル質量100%に対して、ゼラチンが0.025質量%〜0.2質量%、ヒドラジンが0.1質量%〜0.8質量%、パラジウム塩中のパラジウム量で0.0025質量%〜0.02質量%、銀塩中の銀量で0.25質量ppm〜2質量ppmであることが望ましい。
晶析工程において用いられる錯化剤としては、錯体を形成する効果を有するものであればよく、アンモニウム、又はカルボキシル基を有する蟻酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等を用いることができる。晶析工程では、これらの中でも、酢酸、酒石酸、クエン酸が望ましく、更には、酒石酸が最も望ましい。その理由は、酒石酸によれば、連結粒子が少なく、最も球状度が高く理想とするニッケル粉末が得られるためである。
晶析工程において用いられるアルカリ性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶性のアルカリ性物質が望ましい。また、晶析工程においては、これらの水溶性のアルカリ性物質と、後述する還元剤を純水中で混合して、アルカリ性のヒドラジン水溶液を作製して用いることができる。
晶析工程において用いられる還元剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、上述したコロイド作製用の還元剤と同様のものを用いることができる。
晶析工程において用いられるニッケル塩水溶液としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル等から選ばれる少なくとも1種類のニッケル塩を含む水溶液を用いることができる。晶析工程では、これらの水溶液の中では、特に廃液処理が簡易である塩化ニッケル水溶液が好ましい。
晶析工程では、上述した通りの湿式還元法が好ましいが、この方法に限定されることはなく、湿式還元法以外の方法でニッケル粉末の晶析を行うことができ、例えば、他の湿式還元法や気相還元法、液相還元法、固相還元法等の公知の方法を適用することができる。なお、湿式還元法以外の方法によりニッケル粉末を作製する場合には、得られたニッケル粉末に純水を混合させながら撹拌することによりニッケル粉末を含むスラリーを得ることができる。
晶析工程では、純水に保護コロイド剤を添加した水溶液に、コロイド作製用の還元剤と、ニッケルよりも貴な金属の塩とを、順序を問わずに添加することによって、コロイド溶液を作製することができる。
晶析工程では、コロイド溶液、錯化剤、アルカリ性物質、及び還元剤の混合順序としては、コロイド溶液、錯化剤、アルカリ性物質、及び還元剤を混合した溶液が得られるのであれば、特に限定されるものではない。例えば、晶析工程では、コロイド溶液に、錯化剤、還元剤、及びアルカリ性物質を順次混合してもよいし、前もって、錯化剤、アルカリ性物質、及び還元剤を混合した溶液と、コロイド溶液とを混合してもよい。
ニッケル粉末生成工程では、晶析工程で得られたニッケル粉末を含むスラリーに、ニッケル粉末と純水とチタン仕込量とが所定の重量比率になるように、硫酸チタンと純水とを添加して乾燥し、チタン含有ニッケル粉末を得る。
晶析工程において湿式還元法を適用する場合には、析出したニッケル粉末と晶析反応後の液とのニッケル粉末を含むスラリーが得られ、晶析工程で得られたニッケル粉末を含むスラリー中の晶析反応後の液を除去して固形分のニッケル粉末を回収できる方法を適用すればよく、その回収方法は、特に限定されない。
ニッケル粉末生成工程では、ニッケル粉末を含むスラリー又はケーキをサンプリングし、乾燥前のニッケル粉末を含むスラリー又はケーキの重量を求め、その後、105℃の大気乾燥機にセットし、24時間乾燥させた後に、水分を除去したニッケル粉末を取り出し、その重量を確認し、ニッケル粉末を含むスラリー又はケーキの含水率を求める。
ニッケル粉末生成工程では、求めたニッケル粉末を含むスラリー又はケーキの含水率から、ニッケル粉末と純水の重量における比率が、1:20〜1:40程度になるように純水を混合し、ニッケルスラリーを作製する。
ニッケル粉末生成工程では、得られたニッケルスラリーを撹拌しながら、硫酸チタン水溶液を添加した後のニッケル粉末、純水、硫酸チタンのチタン仕込量の質量比率が、1:30:0.01〜1:80:0.03になるように、ニッケルスラリーに硫酸チタン水溶液を添加する。
ニッケル粉末生成工程では、硫酸チタン処理を行った後のスラリー中の処理後の液を除去してニッケル粉末を回収できる方法を適用すればよく、その回収方法は、特に限定されない。
ニッケル粉末生成工程では、得られた硫酸チタン処理後のケーキ又はチタン含有ニッケル粉末のケーキの乾燥は、公知の手法を採用してもよく、例えば、真空下もしくは不活性ガス雰囲気にて行うことが望ましい。
次に、本発明に係るチタン含有ニッケル粉末の製造方法から得られるチタン含有ニッケル粉末について説明する。
ニッケル粉末の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、日本電子社製、JSM−5510)を用いて、倍率20000倍の写真(縦19.2μm×横25.6μm)を撮影し、写真中の粒子形状の全様が見える粒子の面積を測定し、面積から各粒子の半径を求め、その平均値により定めた。
ニッケル粉末を直径5mmの円柱ペレットに成形し、熱機械的分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyzer、マックサイエンス社製、TMA4000S)を用いて、2vol%水素−窒素ガス中で、5℃/minの昇温速度で、1300℃まで昇温し、成形した円柱ペレットの収縮曲線を測定し、この曲線より、ニッケル粉末の熱収縮挙動を評価した。熱収縮開始温度は、収縮率が5%(膨張率が−5%)になった温度とし、膨張の有無は、熱収縮挙動の曲線から判断した。
ニッケル粉末を酸で溶解し、ICP質量分析装置(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry)を用いて、得られたニッケル酸溶液中のチタン量を算出することで、ニッケル粉末のチタン含有量を求めた。
[晶析工程]
実施例1の晶析工程では、6.5Lの純水に、ニッケルの全質量に対してゼラチン量が600ppmとなるようにゼラチンを溶解した後、ヒドラジン濃度が0.02g/Lとなるようにヒドラジンを混合し、ニッケルの全質量に対してパラジウムが60質量ppm及び銀が0.6質量ppmとなるように塩化パラジウム水溶液と硝酸銀水溶液とを混合した水溶液10mLを添加し、コロイド溶液を得た。
実施例1のニッケル粉末生成工程では、晶析工程で得られたニッケル粉末を含むスラリーを静置沈降し、晶析反応後の液のみを極力除去した後に、ヌッチェにてニッケル粉末のみをろ過して分離した。その後、ニッケル粉末生成工程では、分離したニッケル粉末について掛け水洗浄を行い、晶析反応後の液を除去したニッケル粉末のニッケル粉末を含むケーキを得た。
実施例2では、ニッケル粉末生成工程におけるニッケル粉末と純水と硫酸チタンのチタン仕込量の重量比率が1:60:0.03になるように、硫酸チタンと純水との混合液を得られたニッケルスラリーに添加した以外は、実施例1と同様にして各操作を行った。
比較例1では、ニッケル粉末生成工程で得られたニッケル粉末を含むケーキを150℃、24時間で真空乾燥し、チタンを含有しないニッケル粉末を得た。
比較例2では、ニッケル粉末生成工程におけるニッケル粉末と純水と硫酸チタンのチタン仕込量の重量比率が1:60:0.002になるように、硫酸チタンと純水との混合液を得られたニッケルスラリーに添加した以外は、実施例1と同様にして各操作を行った。
比較例3では、ニッケル粉末生成工程におけるニッケル粉末と純水と硫酸チタンのチタン仕込量の重量比率が1:60:0.005になるように、硫酸チタンと純水との混合液を得られたニッケルスラリーに添加した以外は、実施例1と同様にして各操作を行った。
比較例4では、ニッケル粉末生成工程におけるニッケル粉末と純水と硫酸チタンのチタン仕込量の重量比率が1:60:0.05になるように、硫酸チタンと純水との混合液を得られたニッケルスラリーに添加した以外は、実施例1と同様にして各操作を行った。
Claims (7)
- ニッケル粉末を晶析させる晶析工程と、
前記晶析工程で得られたニッケル粉末表面にチタンを被覆させてチタン被覆ニッケル粉末を得るニッケル粉末生成工程と
を有し、
前記ニッケル粉末生成工程では、前記ニッケル粉末と純水とを混合して得られたスラリーに、該ニッケル粉末と該純水と硫酸チタンのチタン仕込量との質量比率が1:30:0.01〜1:80:0.03となるように、該硫酸チタンを添加して混合し、チタン被覆ニッケル粉末を得ることを特徴とするチタン含有ニッケル粉末の製造方法。 - 前記晶析工程では、前記ニッケル粉末を湿式還元法により析出させ、該ニッケル粉末を含むスラリーを作製し、
前記ニッケル粉末生成工程では、前記晶析工程で得られたニッケル粉末を含むスラリーから晶析反応後の液を除去した固形分に純水を混合して上記スラリーを得ることを特徴とする請求項1に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。 - 前記晶析工程では、ニッケルよりも貴な金属の塩と保護コロイド剤と還元剤とを含む複合コロイド粒子が分散したコロイド溶液、錯化剤、アルカリ性物質、還元剤及びニッケル塩水溶液を混合して、前記ニッケル粉末を析出させることを特徴とする請求項2に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケルよりも貴な金属の塩は、パラジウム塩及び銀塩の混合物であり、前記還元剤は、ヒドラジンであり、前記ニッケル塩水溶液は、塩化ニッケル水溶液であることを特徴とする請求項3に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケル粉末生成工程では、前記スラリーを固液分離して得られた固形分を、真空中又は不活性雰囲気下で乾燥させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。
- 前記チタン含有ニッケル粉末のニッケルに対するチタン含有量は、0.9質量%〜2.8質量%であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。
- 前記チタン含有ニッケル粉末の平均粒径は、0.05μm〜0.20μmであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のチタン含有ニッケル粉末の製造方法。
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