以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
(細線パターンの形成方法)
以下、本発明の細線パターンの形成方法の一実施形態について説明する。
本実施形態では、基材の少なくとも一方の面側に形成された金属層積層体から金属層積層体用エッチング液を用いたエッチングにより細線パターンを形成する細線パターンの形成方法について以下に説明する。
本実施形態の細線パターンの形成方法を好適に適用できる金属層積層体は、黒化層と配線層とを有することができる。黒化層は、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも1種以上の金属と、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素と、を含むことができる。また、配線層は、Cuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含むことができる。
そして、金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上10重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上5重量%以下の塩酸と、を含有することができる。
ここでまず、本実施形態の細線パターンの形成方法を適用できる金属層積層体の構成例について説明する。
金属層積層体は、上述のように基材の少なくとも一方の面側に形成することができる。
ここで、金属層積層体を形成する基材としては特に限定されるものではなく、例えば、絶縁体フィルムや、ガラス基板、セラミックス基板等を好ましく用いることができる。特に基材上に金属層積層体を形成した導電性基板を例えばタッチパネル等の用途に用いる場合には、基材は可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板であることが好ましい。
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。
基材の厚さについては特に限定されず、要求される強度等に応じて任意に選択することができる。基材の厚さとしては例えば20μm以上200μm以下とすることができる。特に基材上に金属層積層体を形成した導電性基板をタッチパネルの用途に用いる場合、基材の厚さは40μm以上120μm以下であることが好ましい。
次に黒化層について説明する。
後述する配線層は金属光沢を有するため、例えば基材上に配線層をエッチングした細線パターンを形成したのみでは配線層が光を反射する。このため、例えば透明基材上に配線層を形成し、タッチパネルの用途に使用した場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、黒化層を形成することにより、配線層表面での光の反射を抑制することが可能となる。
黒化層としては特に限定されるものではないが、上述のように、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも1種以上の金属と、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素と、を含むことが好ましい。
なお、黒化層は、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金と、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素と、を含むこともできる。この際、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Ni−Cu合金や、Ni−Ti合金、Ni−W合金を好ましく用いることができる。
黒化層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を好ましく用いることができる。特に、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法(反応性スパッタリング法)を用いることがより好ましい。
反応性スパッタリング法により黒化層を成膜する場合、ターゲットとしては、黒化層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。黒化層が合金を含む場合には、黒化層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め黒化層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
また、黒化層に含まれる炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素は、黒化層を成膜する際の雰囲気中に添加しておくことにより、黒化層中に添加することができる。例えば、黒化層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスを、窒素を添加する場合には窒素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、スパッタリングを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。黒化層を成膜する際の不活性ガス中にこれらのガスを添加することにより、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素を黒化層中に添加することができる。なお、不活性ガスとしてはアルゴンを好ましく用いることができる。
なお、黒化層をスパッタリング法により形成する場合、例えば後述するロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて形成することもできる。
黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。黒化層は、上述のように黒色をしており、配線層による光の反射を抑制する黒化層として機能するが、黒化層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず配線層による光の反射を十分に抑制できない場合がある。これに対して、黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、配線層の反射をより確実に抑制できるため好ましい。
黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、黒化層の厚さは60nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
配線層についても特に限定されないが、Cuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含むことが好ましい。
配線層と基材との間、または、配線層と黒化層との間には接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち配線層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
他の部材の上面に配線層を直接形成するため、スパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を用いて配線層を形成することが好ましい。なお、配線層をスパッタリング法により形成する場合、例えば後述するロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて形成することもできる。
配線層をより厚くする場合であって、湿式めっき法を適用できる材料の場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いて成膜することが好ましい。すなわち、例えば基材または黒化層上に、乾式めっき法により銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を形成し、該銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅合金めっき層、または、銅めっき層を形成することができる。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて配線層を形成することにより基材または黒化層上に接着剤を介さずに直接配線層を形成できるため好ましい。
配線層の厚さは特に限定されるものではなく、用途等に応じて任意に選択できる。例えば、細線パターンとした配線層を配線として用いる場合、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。この場合、特に十分に電流を供給できるように配線層は厚さが100nm以上であることが好ましく、200nm以上とすることがより好ましい。配線層の厚さの上限値は特に限定されないが、配線層が厚くなると、配線層をパターニングするためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、配線層の厚さは2000nm以下であることが好ましい。なお、配線層が上述のように銅合金薄膜層または銅薄膜層と、銅合金めっき層または銅めっき層を有する場合には、銅合金薄膜層または銅薄膜層の厚さと、銅合金めっき層または銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
次に、金属層積層体の各層の配置例について説明する。
上述のように、本実施形態の細線パターンの形成方法に好適に用いることができる金属層積層体は基材の少なくとも一方の面に形成され、黒化層と、配線層と、を備えている。黒化層と、配線層と、を基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、黒化層と、配線層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、配線層表面での光の反射の抑制のため、配線層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されていることが好ましい。特に黒化層が配線層の表面に形成された積層構造を有することがより好ましい、このため、例えば基材が透明基材の場合、配線層は黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
具体的な構成例について、図1、図2を用いて以下に説明する。図1、図2は、基材上に本実施形態の細線パターンの形成方法に好適に用いることができる金属層積層体を積層した導電性基板の、基材、黒化層、配線層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。なお以後、基材上に金属層積層体を積層した部材を導電性基板とも記載する。
例えば、図1(a)に示したように、基材11上に、基材11の一方の面(表面)11a側から順に、配線層12と、黒化層13とが積層された構造を有する金属層積層体を配置した導電性基板10Aとすることができる。
また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ配線層12A、12Bと、黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、配線層12(12A、12B)、及び、黒化層13(13A、13B)を積層する順は、図1(a)、(b)の例に限定されるものではない。図1(a)、(b)において、配線層12と、黒化層13と、の順を入れ替え、例えば基材11の一方の面(表面)11a側から順に、黒化層13と、配線層12とが積層された構造を有する金属層積層体を配置することもできる。
また、例えば黒化層を基材11の1つの面側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、基材11の一方の面11a側に、第1の黒化層131と、配線層12と、第2の黒化層132と、をその順に積層することができる。
この場合も基材11の両面に配線層、第1の黒化層、第2の黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の黒化層131A、131Bと、配線層12A、12Bと、第2の黒化層132A、132Bと、をその順に積層できる。
なお、図1(b)、図2(b)において、基材11の両面に配線層と、黒化層と、を積層した場合において、基材11を対称面として基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、配線層12と、黒化層13と、をその順に積層した形態とし、基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
また、黒化層と、配線層の層数も上記の例に限定されるものではなく、さらに複数の層を配置することもできる。
本実施形態の細線パターンの形成方法は、ここまで説明してきた基板上に形成した金属層積層体をエッチングするエッチング工程を有しており、該エッチング工程を実施することにより細線パターンを形成することができる。
金属層積層体、すなわち、黒化層及び配線層をエッチングし、細線パターンを形成する際に好適に用いることができるエッチング液について説明する。
本実施形態の細線パターンの形成方法に用いる金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上10重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上5重量%以下の塩酸と、を含有することが好ましい。特に、金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上5重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上3重量%以下の塩酸と、を含有することがより好ましい。本実施形態の細線パターンの形成方法に用いる金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上3重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上1重量%以下の塩酸と、を含有することがさらに好ましい。
過マンガン酸塩は主に黒化層のエッチングに効果を示し、0.5重量%以上含むことにより黒化層に対する十分な反応性を示し、10重量%以下の範囲であれば一定の時間をかけて黒化層を溶解できるためサイドエッチングを抑制できる。
また、塩酸は主に配線層のエッチングに効果を示し、0.1重量%以上含むことにより配線層に対する十分な反応性を示し、5重量%以下の範囲であれば一定の時間をかけて配線層を溶解できるためサイドエッチングを抑制できる。
ここで、本実施形態の細線パターンの形成方法で形成する細線パターンの線幅は特に限定されるものではないが、既述のように従来では黒化層及び配線層をエッチングにより形成する際、所望の形状に形成することが困難であった。特に、線幅が細い細線パターンを形成する際、黒化層及び配線層のいずれか一方が過度にエッチングされ所望の線幅とすることが困難であった。このため、本実施形態の細線パターンの形成方法においては、細線パターンが線幅の細い部分を含む場合に特に優れた効果を発揮するものであるから、線幅が20μm以下の部分を含む細線パターンであることが好ましい。特に、線幅が10μm以下の部分を含む細線パターンであることがより好ましく、線幅が5μm以下の部分を含む細線パターンであることがさらに好ましい。
中でも細線パターンが線幅の細い部分のみから構成されている場合に、より優れた効果を示す。このため、本実施形態の細線パターンの形成方法で形成する細線パターンは線幅が20μm以下の細線パターンであることが好ましく、線幅が10μm以下の細線パターンであることがより好ましく、線幅が5μm以下の細線パターンであることがさらに好ましい。
また、本実施形態の細線パターンの形成方法で形成する細線パターンは配線として用いられる部分を含む細線パターンに限定されるものではなく、例えば、ディスプレイのブラックストライプ、ディスプレイ外周部分の遮光等として用いられる部分の細線パターンであってもよい。特に、タッチ入力型のディスプレイでは、ディスプレイ外周部に配される位置装置のリード線を隠すことが求められている。
特に近年では配線基板において、配線を視覚的に見えなくするため、配線の一部または全部を細線パターンとし、該細線パターンの配線幅を10μm以下、より好ましくは5μm以下とすることが求められる場合がある。上述のような細線パターンをエッチングにより形成する際、細線パターンの形状を崩すことなくエッチングできることが好ましい。
そして、上述のように線幅が特に細い細線パターンとなるようにエッチングする際には、瞬時に黒化層や配線層を溶解するよりも、例えば基材上に形成された黒化層や配線層を10秒程度かけて溶解することが好ましい。本実施形態の細線パターンの形成方法に好適に用いることができるエッチング液においては、上述の範囲で過マンガン酸塩及び塩酸を含有することにより、黒化層や配線を適切な時間をかけて溶解することが可能になる。
このため、過マンガン酸塩と、塩酸とを上述の所定の割合で含むことにより、配線層と、黒化層とを同時にエッチングするエッチング液として好ましく使用することができる。また、配線層及び黒化層に対するエッチング液の反応性の差を十分に抑制できるため、容易に所望の形状の細線パターン(配線パターン)を形成することができる。
エッチング液に含まれる過マンガン酸塩としては特に限定されるものではなく、例えば過マンガン酸カリウムや、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸アルカリ金属塩を好ましく用いることができる。特に過マンガン酸塩としては、黒化層に対する反応性が十分に高いことから過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを好ましく用いることができる。
本実施形態の細線パターンの形成方法で好適に用いることができる金属層積層体用エッチング液の過マンガン酸塩と、塩酸以外の成分については特に限定されるものではなく、例えば残部は水とすることができる。
本実施形態の細線パターンの形成方法で好適に用いることができるエッチング液については過マンガン酸塩と、塩酸とが、それぞれ上述の範囲で含まれていればよく、過マンガン酸塩と、塩酸との添加量比は特に限定されるものではない。ただし、黒化層、配線層をより確実に所望の形状とするためには、エッチング液が黒化層及び配線層を溶解するのに要する時間が同程度になるように過マンガン酸塩と塩酸との添加量比が調整されていることが好ましい。具体的には例えば、黒化層及び配線層のいずれか一方の層を溶解するのに要する溶解時間が、他方の層を溶解するのに要する溶解時間の3倍以内であることが好ましく、2倍以内であることがより好ましい。黒化層及び配線層に対する溶解時間は過マンガン酸塩と、塩酸との添加量比により調整することができるため、予めエッチングを行う基板に形成した黒化層と、配線層の膜厚等に応じて過マンガン酸塩と、塩酸との添加量比を調整することが好ましい。例えば配線層の厚さが厚い導電性基板のエッチングを行う場合には、エッチング液中の塩酸の含有量を上述の範囲内で調整することが好ましい。
次に、本実施形態の細線パターンの形成方法のエッチング工程について説明する。
エッチング工程においては例えばまず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板のうち金属積層体の最表面に形成するレジスト形成工程を実施できる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。そして、金属積層体に対してエッチング液を供給するエッチング液供給工程を実施することにより所望の細線パターンを形成できる。エッチング液供給工程において、黒化層及び配線層にエッチング液を供給する方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により供給することができる。ただし、エッチングを行う領域について均一にエッチング処理を行えるよう、シャワーによりエッチング液を導電性基板表面に噴射する方法や、導電性基板をエッチング液に浸漬する方法を好ましく用いることができる。
次に、本実施形態の細線パターンの形成方法を用いて形成した細線パターンの構成例として、メッシュ状の細線パターンについて説明する。なお、以下に説明するメッシュ状の細線パターンは配線層をエッチングして形成した配線パターンであり、メッシュ状の細線パターンが配線として機能するため、該細線パターンを配線とも記載する。
図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を配線層、黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、基材11と、図中X軸方向に平行な複数の配線31AとY軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは配線層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層が形成されている。また、黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた黒化層32A、32Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の基材11を用い、一方の基材11を挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは基材11間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされ細線パターンとなった黒化層32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、黒化層と、配線層との配置は限定されるものではない。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも黒化層32A、32Bと配線31A、31Bの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば黒化層を複数層設けることもできる。
ただし、黒化層は配線層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、例えば、基材11が透明基材であり、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆にすることが好ましい。また、黒化層32Bに加えて、配線31Bと基材11との間に黒化層をさらに設けてもよい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)、図2(b)のように基材11の両面に配線層12A、12Bと、黒化層13A、13B(131A、132A、131B、132B)と、を備えた導電性基板から形成できる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、基材11の一方の面11a側の配線層12A及び黒化層13Aを、図1(b)中X軸方向に平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1(b)中のX軸方向とは、図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。
そして、基材11のもう一方の面11b側の配線層12B及び黒化層13Bを図1(b)中Y軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のY軸方向は、紙面と垂直な方向を意味している。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、配線層12A、12B、黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、配線層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4(b)のように配線層12等が積層された図1(a)における面Aと、配線層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せてもよい。
なお、黒化層は配線層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、基材11が透明基材で、図中下面側からの光の反射を抑制する必要がある場合には、黒化層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆に配置することが好ましい。また、黒化層32Bに加えて、配線31Bと基材11との間に黒化層をさらに設けてもよい。
また、例えば基材11の配線層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるように貼り合せてもよい。
なお、図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
なお、ここでは、細線パターンとしてメッシュ状の配線を形成した例を用いて説明したが、係る形態に限定されるものではなく、細線パターンは用途等に応じて任意の形状とすることができる。
ここまで説明した本実施形態の細線パターンの形成方法によれば、黒化層と配線層とを同時に所望の形状にエッチングできる。このため、本実施形態の細線パターンの形成方法を用いることにより、エッチング工程の工程数を削減でき生産性よくメッシュ状の細線パターンを形成することができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本発明の導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、基材の少なくとも一方の面側に形成された金属層積層体から金属層積層体用エッチング液を用いたエッチングにより配線パターンを形成する導電性基板の製造方法に関する。
そして、金属層積層体は黒化層と、配線層とを有することができる。
黒化層は、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも1種以上の金属と、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素と、を含むことができる。
また、配線層はCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含むことができる。
金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上10重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上5重量%以下の塩酸と、を含有することができる。
金属層積層体の形成方法は特に限定されないが、例えば、乾式めっき法および/または湿式めっき法で形成することができる。
本実施形態の導電性基板の製造方法は例えば以下の工程を有することができる。
基材を準備する基材準備工程。
基材の少なくとも一方の面側にNi,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cuから選ばれる少なくとも1種以上の金属と、炭素、酸素、窒素から選ばれる1種以上の元素と、を含む黒化層を成膜する黒化層形成工程。
基材の少なくとも一方の面側にCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または、銅を含む配線層を形成する配線層形成工程。
黒化層及び配線層をエッチングするエッチング工程。
そして、エッチング工程においては、0.5重量%以上10重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上5重量%以下の塩酸と、を含有する金属層積層体用エッチング液を用いて配線層及び黒化層を同時にエッチングすることができる。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について具体的に説明するが、本実施形態の導電性基板の製造方法においては、上述した細線パターンの形成方法を用いて導電性基板を製造することが好ましい。このため、以下に説明する点以外については上述の細線パターンの形成方法、及びあわせて説明した導電性基板に関する既述の構成とすることができるため説明を省略している。
本実施形態の導電性基板の製造方法において得られる導電性基板は細線パターンの形成方法で説明した場合と同様に、黒化層と、配線層と、を基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、黒化層と、配線層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記黒化層形成工程と、配線層形成工程と、を実施する順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する導電性基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
以下に各工程について説明する。
基材を準備する基材準備工程は、例えば絶縁体フィルムや、ガラス基板、セラミックス基板等により構成された基材を準備する工程である。既述のように導電性基板を例えばタッチパネル等の用途に用いる場合には、基材は可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板であることが好ましい。基材準備工程における、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の工程での各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
次に、黒化層形成工程について説明する。
黒化層形成工程における黒化層の成膜方法として、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を好ましく用いることができる。特に、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
黒化層は例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いた場合を例に黒化層形成工程を説明する。
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
図5において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。
ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は10−3Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−4Pa以下まで減圧できることがより好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域のみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
筐体51内には、黒化層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、前フィードロール55a、後フィードロール55b、テンションロール56a、56b、巻取ロール57を配置することができる。また、黒化層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロール58a〜58hや、ヒーター61等を設けることもできる。
巻出ロール52、キャンロール53、前フィードロール55a、巻取ロール57にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール57は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって黒化層を成膜する基材の張力バランスが保たれるようになっている。
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
テンションロール56a、56bは例えば、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられていることが好ましい。
また、前フィードロール55aや、後フィードロール55bや、ガイドロール58a〜58hについても表面が硬質クロムめっきで仕上げられていることが好ましい。
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの黒化層を成膜する基材の巾方向の寸法は、黒化層を成膜する基材の巾より広いことが好ましい。
黒化層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで黒化層が成膜される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて黒化層を成膜する場合、黒化層を構成する金属を含むターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着する。
なお、黒化層が合金を含む場合、予め合金を合成して合金のターゲットを用いることもできるが、合金に含まれる金属のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに配置し、基材等の被成膜体の表面で合金を形成することもできる。
そして、黒化層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。その後、アルゴンと、黒化層に添加する炭素、酸素、窒素いずれかに対応したガスとを含むスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5m〜10m程度程度の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の黒化層を連続成膜することができる。
次に配線層形成工程について説明する。
配線層は既述のように、乾式めっき法を用いて形成することが好ましい。また配線層が湿式めっき法を適用できる材料であって、その膜厚をより厚くする場合には、乾式めっき法を実施した後に湿式めっき法を用いることが好ましい。
このため、配線層形成工程は乾式めっき法により銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を形成する工程を含むことができる。また、乾式めっき法により銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を形成する工程と、該銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅合金めっき層、または、銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。特に、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
配線層についても例えば上述のロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50については既に説明したためここでは説明を省略する。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて配線層を成膜する場合、ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、配線層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴン等のスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して筐体51内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m〜20m程度の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の配線層を連続成膜することができる。
なお、配線層が銅合金を含む場合、予め銅合金を合成して銅合金のターゲットを用いることもできるが、銅合金に含まれる金属のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに配置し、基材等の被成膜体の表面で銅合金を形成することもできる。
乾式めっき法の後、湿式めっき法により銅合金めっき層、または、銅めっき層をさらに形成する場合、その成膜条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、めっき液を入れためっき槽に銅合金薄膜層、または、銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅合金めっき層、または、銅めっき層を形成できる。
上述のように、黒化層形成工程と、配線層形成工程と、は任意の回数、順序で繰り返し実施することができる。そして、黒化層及び配線層を所定の層数形成した後に、エッチング工程を実施し、メッシュ状の配線基板とすることができる。
エッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1(a)に示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した黒化層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、配線層12、黒化層13のエッチングを実施することができる。
この際用いる金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上10重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上5重量%以下の塩酸と、を含有することが好ましい。特に、金属層積層体用エッチング液は、0.5重量%以上5重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上3重量%以下の塩酸と、を含有することがより好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以上3重量%以下の過マンガン酸塩と、0.1重量%以上1重量%以下の塩酸と、を含有する。
また、エッチング液は黒化層及び配線層のいずれか一方の層を溶解するのに要する溶解時間が、他方の層を溶解するのに要する溶解時間の3倍以内であることが好ましい。このため、エッチング液に含まれる過マンガン酸塩と、塩酸との添加量比を上述の範囲で調整しておくことが好ましい。
なお、過マンガン酸塩としては特に限定されるものではないが、例えば過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを好適に用いることができる。
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していることが好ましく、例えば30℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
基材上に形成した黒化層及び配線層をエッチングする際に、黒化層及び配線層にエッチング液を供給する方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により供給することができる。ただし、エッチングを行う領域について均一にエッチング処理を行えるよう、シャワーによりエッチング液を導電性基板表面に噴射する方法や、導電性基板をエッチング液に浸漬する方法を好ましく用いることができる。
本エッチング工程で形成するパターンは特に限定されないが、例えば、上述のメッシュ状の配線を備えた導電性基板に対応するようにエッチングを実施することができる。
また、既述のように、図1(a)、図2(a)に示した基材11の一方の面側に配線層、黒化層を有する導電性基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた導電性基板とする場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
以上に説明した本実施形態の導電性基板の製造方法では、黒化層と配線層とを同時に所望の形状にエッチングできる。このため、本実施形態の導電性基板の製造方法を用いることにより、エッチング工程の工程数を削減でき生産性よく導電性基板を製造することができる。また、黒化層と配線層とを容易に所望の形状にエッチング処理できるため、導電性基板の良品率を向上させることができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
[実施例1]
基材の一方の面に以下の手順により膜1、膜2をその順に積層した導電性基板を作製した後、エッチング液により該導電性基板の膜1、膜2の溶解試験を実施した。また、同様にして作製した導電性基板に細線パターンを形成した。
(基材準備工程)
まず、幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50にセットした。
(膜1の成膜工程)
膜1として基材の一方の面に黒化層を形成した。黒化層としては窒素を含有するNi−17重量%W合金層を形成した。
図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dにNi−17重量%W合金のターゲットを接続して、以下の手順により黒化層を成膜した。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター61を60℃に加熱し、透明基材を加熱し、基材中に含まれる水分を除去した。
続いて筐体51内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスと窒素ガスとを導入し、筐体51内の圧力が1.3Paになるように調整した。この際、筐体51内の雰囲気が体積比で30%窒素、残部がアルゴンになるようにアルゴンガスと窒素ガスの供給量を調整した。
そして、透明基材を巻出ロール52から搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、基材上に所望の黒化層を連続成膜した。係る操作により透明基材上に黒化層を厚さ30nmになるように成膜した。
(膜2の成膜工程)
膜2として膜1の成膜工程で成膜した膜1上に配線層を成膜した。配線層としては銅層を形成した。
配線層については、図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dに銅のターゲットを接続して成膜し、基材としては、膜1の成膜工程で、基材上に膜1を成膜したものを用いた。
膜2の成膜時の条件としては、以下の2点を変更した以外は膜1の成膜工程と同様にして実施した。
筐体51内を1×10−3Paまで排気した後、アルゴンガスを導入し、筐体51内の圧力が1.3Paになるように調整した点。
配線層である銅層を膜厚が500nmになるように成膜した点。
(溶解試験)
上述の手順により基材の表面に膜1、膜2をその順に積層した導電性基板について、以下の手順により溶解試験を実施した。
溶解試験は、過マンガン酸カリウムを1重量%、塩酸1重量%含有し、残部がイオン交換水である温度40℃のエッチング液を用いて実施した。
そして、導電性基板をエッチング液に浸漬し、膜1、膜2をそれぞれ溶解するのに要した溶解時間を測定した。
導電性基板の成膜条件及び、溶解試験のエッチング液の組成、溶解試験の結果を表1に示す。
(細線パターンの形成試験)
上述の手順により基材の表面に膜1、2をその順に積層した導電性基板について、以下の手順により膜1、2に線幅4μm、長さ15cmの細線パターンを形成した。
細線パターンの形成は、上記導電性基板の膜2の表面に上記細線パターンに対応した形状のレジストを配置した後、溶解試験で用いたエッチング液と同じエッチング液を用いることにより実施した。形成した細線パターンについて走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、所望の形状の細線パターンが得られていることが確認できた。
[実施例2〜5、比較例1〜8]
実施例2〜5、比較例1〜8については、溶解試験、及び、細線パターンの形成試験において用いるエッチング液を、表1に示した濃度で過マンガン酸カリウムと、塩酸と、を含有し、残部がイオン交換水であるエッチング液に変えた点以外は、実施例1と同様にして導電性基板の作製、溶解試験、細線パターンの形成試験を実施した。
なお、比較例3、5においては導電性基板をエッチング液に浸漬しても配線層の溶解が起きておらず、溶解する見込みがなかったため溶解試験を途中で中断した。
また、比較例4、6においては、導電性基板をエッチング液に浸漬した瞬間に配線層が溶解したため、その時点で導電性基板をエッチング液から取り出し、溶解試験は途中で中断した。
溶解試験の結果を表1に示す。
また、細線パターンの形成試験を行ったところ、実施例2〜5においては、所望の形状の細線パターンを得られることが確認できた。これに対して比較例1〜3、5については、配線層または黒化層のいずれか一方が溶解せず所望の形状とすることができなかった。また、比較例4、6については配線層が瞬時に溶解したため、所望の形状とすることはできなかった。比較例7、8においては、配線層の溶解に比較して黒化層が短時間で溶解したため、黒化層が溶解してしまい所望の形状とすることはできなかった。
[実施例6]
膜1と、膜2を実施例1の場合と入れ替え、膜1を配線層である銅層とし、膜2を黒化層である窒素を含有するNi−17重量%W合金層とした。
膜1である銅層は、実施例1の膜2を成膜したときと同じ条件で成膜した。
また、膜2である窒素を含有するNi−17重量%W合金層は、実施例1の膜1を成膜したときと同じ条件で成膜した。
溶解試験、細線パターンの形成試験は実施例1と同様にして実施した。
溶解試験の結果を表1に示す。また、細線パターンの形成試験については所望の形状の細線パターンが得られていることが確認できた。
[実施例7]
実施例7においては、以下の2点を変更した以外は実施例1と同様にして導電性基板の作製、溶解試験、細線パターンの形成試験を実施した。
溶解試験において用いるエッチング液を、表1に示した濃度で過マンガン酸カリウムと、塩酸と、を含有し、残部がイオン交換水であるエッチング液に変えた点。
膜2の膜厚を1000nmとした点。
溶解試験の結果を表1に示す。
また、細線パターンの形成試験については所望の形状の細線パターンが得られていることが確認できた。
実施例1〜7いずれの場合でも溶解試験の結果、黒化層及び配線層を溶解できることを確認できた。また、いずれか一方の層が瞬時に溶解したり、いずれか一方の層の溶解時間が他方の層の溶解時間に比べて著しく遅くなることもなかった。
さらに、実施例1〜7においては、いずれも黒化層及び配線層のいずれか一方の層を溶解するのに要する溶解時間が、他方の層を溶解するのに要する溶解時間の3倍以内となっていることが確認できた。このように黒化層の溶解時間と、配線層の溶解時間とが大きく異ならないエッチング液を用いることによって、より確実に黒化層及び配線層のいずれも形状を崩すことなく、黒化層と配線層を同時に所望の形状にエッチングすることができる。
また、実施例1と、実施例6との比較から明らかなように、黒化層と、配線層との積層の順番に関係なく、エッチングを行えることが確認できた。
これに対して、エッチング液に過マンガン酸カリウムを添加しなかった比較例1、2は、配線層のみが溶解し、黒化層を溶解することはできなかった。また、エッチング液に塩酸を添加しなかった比較例3、5では黒化層のみが溶解し、配線層を溶解することができなかった。このため、これらのエッチング液では黒化層と配線層とを同時にエッチングできないことが確認できた。
そして、塩酸の濃度が10重量%と高い比較例4、6においては、導電性基板をエッチング液に浸漬した瞬間に配線層のみが溶解してしまった。このため、これらのエッチング液では、黒化層と配線層とを同時に所望の形状にエッチングすることは困難であることが確認できた。
また、過マンガン酸カリウムの濃度が15重量%と高い比較例7、8においては黒化層がごく短時間で溶解することが確認できた。このため、これらのエッチング液では、黒化層と配線層とを同時に所望の形状にエッチングすることは困難であることが確認できた。
そして、細線パターンの形成試験においては、実施例1〜7では配線層及び黒化層共に所望の形状とすることができた。これに対して、比較例1〜8においては、配線層または黒化層の一部が溶け残ったり、配線層または黒化層の一方が一瞬にして溶解したりしたために、所望の形状の細線パターンを形成することはできなかった。