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JP6273219B2 - 天然の免疫グロブリン形式を有する容易に単離される二重特異性抗体 - Google Patents

天然の免疫グロブリン形式を有する容易に単離される二重特異性抗体 Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2012年3月13日に出願された米国特許仮出願第61/610,141号の恩典を主張する。この出願の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、重鎖のヘテロ二量体を有する、すなわち、少なくとも1個のアミノ酸が異なる2種の免疫グロブリン重鎖を有する抗原結合タンパク質または抗体であって、親和性試薬に対する免疫グロブリン重鎖の親和性と改変または変異した免疫グロブリン重鎖の親和性との違いに基づいて抗原結合タンパク質を単離することが可能な前記抗原結合タンパク質または抗体に関する。本発明はまた、重鎖のヘテロ二量体を有する、すなわち、少なくとも2個のアミノ酸が異なる2種の免疫グロブリン重鎖を有する抗原結合タンパク質または抗体であって、親和性試薬に対する免疫グロブリン重鎖の親和性と改変または変異した免疫グロブリン重鎖の親和性との違いに基づいて抗原結合タンパク質を単離することが可能な前記抗原結合タンパク質または抗体に関する。本発明はまた、親和性試薬に対して異なる親和性を有するIgG CH1領域を有する抗原結合タンパク質(二重特異性抗体を含む)であって、親和性試薬に対するIgG領域の異なる結合により迅速な単離が可能である、前記抗原結合タンパク質に関する。
発明の背景
抗体は、標的抗原または複数の標的に対して特有の結合特異性を保有し、かつ、抗原非依存性である機構を介して免疫系と相互作用する能力を有する、多機能分子である。現在使用されている癌のための生物学的治療法の多くは、標的とする癌細胞上に典型的に過剰発現している抗原に対するモノクローナル抗体である。そのような抗体が腫瘍細胞に結合すると、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)が誘発され得る。不幸なことに、癌性細胞は、これらの正常な免疫応答を抑制する機構を引き起こすことが多い。加えて、単一のタンパク質を標的とすることまたは中和することは、ある特定の疾患において有効性を達成するのに必ずしも十分ではなく、そのため、モノクローナル抗体の治療用途が限定される。多くの適応症において、生体系の1つの構成要素を中和することは有効性を達成するのに十分ではないことが、次第に明らかになっている。
従って、上述の不利点のいくつかまたはすべてを最小化する、特に治療応用のための二重特異性抗体形式について、必要性が残っている。
本発明は、二重特異性抗原結合タンパク質において少なくとも1個のアミノ酸が異なり、かつヘテロ二量体を形成する2種の免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメイン配列を使用することに、少なくとも一部基づく。アミノ酸配列の相違は結果として、CH1ドメイン配列の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1(BAC BV)親和性試薬に対する結合能の相違をもたらすため、ホモ二量体からヘテロマータンパク質を迅速かつ効率的に単離する能力の改善を結果としてもたらす。1つの局面において、第1および第2のポリペプチドを含む抗原結合タンパク質であって、該第1のポリペプチドが、N末端からC末端の順に、第1の抗原に選択的に結合する第1の抗原結合領域と、続いて、IgG1(SEQ ID NO: 1)、IgG2(SEQ ID NO: 2)、IgG3(SEQ ID NO: 3)、IgG4(SEQ ID NO: 4)、およびこれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む定常領域とを含み;かつ、該第2のポリペプチドが、N末端からC末端の順に、第2の抗原に選択的に結合する第2の抗原結合領域と、続いて、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびこれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む定常領域とを含み、該第2のCH1領域が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬への第2のCH1ドメインの結合を低減または排除する改変を含む、前記抗原結合タンパク質が提供される。
本発明はまた、二重特異性抗原結合タンパク質において少なくとも2個のアミノ酸が異なり、かつヘテロ二量体を形成する2種の免疫グロブリンCH1重鎖定常ドメイン配列を使用することに、少なくとも一部基づく。2個のアミノ酸の相違は結果として、CH1ドメイン配列の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1(BAC BV)親和性試薬に対する結合能の相違をもたらすため、ホモ二量体からヘテロマータンパク質を迅速かつ効率的に単離する能力の改善を結果としてもたらす。1つの局面において、第1および第2のポリペプチドを含む抗原結合タンパク質であって、該第1のポリペプチドが、N末端からC末端の順に、第1の抗原に選択的に結合する第1の抗原結合領域と、続いて、IgG1(SEQ ID NO: 1)、IgG2(SEQ ID NO: 2)、IgG3(SEQ ID NO: 3)、IgG4(SEQ ID NO: 4)、およびこれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む定常領域とを含み;かつ、該第2のポリペプチドが、N末端からC末端の順に、第2の抗原に選択的に結合する第2の抗原結合領域と、続いて、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびこれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む定常領域とを含み、該第2のCH1領域が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬への第2のCH1ドメインの結合を低減または排除する改変を含む、前記抗原結合タンパク質が提供される。
1つの態様において、第2のCH1領域は、IMGTエクソンナンバリングシステム(IMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標))によるS40およびT47の残基を改変する変異を含む。
いくつかの態様において、第2のCH1領域は、S40TおよびT47Sの改変を含む。本明細書において使用される際、「S40T」変異は、40位の野生型残基のセリンがスレオニンで置換されているもの(すなわち、残基40でのS→T変異)である。同様に、本明細書において使用される際、「T47S」変異は、40位の野生型残基のスレオニンがセリンで置換されているもの(すなわち、残基47でのT→S変異)である。
具体的な態様において、第2のCH1領域は、SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 17、およびSEQ ID NO: 18から選択される。
1つの態様において、第2のCH1領域は、改変されたヒトIgG1(SEQ ID NO: 15)であるか、またはこれに由来する。
1つの態様において、第2のCH1領域は、改変されたヒトIgG2(SEQ ID NO: 16)であるか、またはこれに由来する。
1つの態様において、第2のCH1領域は、改変されたヒトIgG3(SEQ ID NO: 17)に由来する。
1つの態様において、第2のCH1領域は、改変されたヒトIgG4(SEQ ID NO: 18)に由来する。
1つの態様において、CH1ドメインは、2種以上のヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4の配列を含むキメラドメインである。
1つの態様において、CH1ドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4に由来し、抗原結合タンパク質は、CH2ドメインおよびCH3ドメインをさらに含み、該CH2ドメインおよび該CH3ドメインは、ヒトIgG1のCH2またはCH3ドメイン、ヒトIgG2のCH2またはCH3ドメイン、ヒトIgG3のCH2またはCH3ドメイン、ヒトIgG4のCH2またはCH3ドメインからなる群より独立して選択される。
1つの態様において、抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン軽鎖をさらに含む。
他の態様において、免疫グロブリン軽鎖は、ヒトλ軽鎖およびヒトκ軽鎖から選択される。
1つの態様において、第1および第2の抗原結合領域は各々、少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)を含む。別の態様において、第1および第2の抗原結合領域は各々、少なくとも2個のCDRを含む。別の態様において、第1および第2の抗原結合領域は各々、3個のCDRを含む。具体的な態様において、CDRは、免疫グロブリン重鎖由来である。別の具体的な態様において、重鎖はヒト重鎖である。
1つの態様において、第1の抗原結合領域は、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含み、第2の抗原結合領域は、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含む。
1つの態様において、第1および第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインは独立して、ヒトCDR、マウスCDR、ラットCDR、ウサギCDR、サルCDR、類人猿CDR、合成CDR、および/またはヒト化CDRを含む。1つの態様において、CDRはヒトCDRでありかつ体細胞変異している。
1つの態様において、第1および第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインは、ヒトフレームワーク領域(FR)を含む。1つの態様において、ヒトFRは、体細胞変異したヒトFRである。
1つの態様において、第1および/または第2の抗原結合領域は、関心対象の抗原に対する反応性について、抗体可変領域を含むファージライブラリーをスクリーニングすることにより取得される。
別の態様において、第1および/または第2の抗原結合領域は、マウス、ラット、ウサギ、サル、または類人猿などの非ヒト動物を関心対象の抗原で免疫化する工程、および関心対象の抗原に特異的な可変領域をコードする抗体可変領域核酸配列を同定する工程により取得される。
別の具体的な態様において、1種または複数種のヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子は、内在性免疫グロブリン遺伝子座での置換として、または非ヒト動物のゲノム中に無作為に組み込まれた導入遺伝子として、非ヒト動物において染色体外に存在する。1つの態様において、第1および/または第2の抗原結合領域は、ハイブリドーマまたはクアドローマから取得され、別の態様においては、免疫化した非ヒト動物の免疫細胞を、細胞選別を用いてスクリーニングすることにより取得される。
1つの態様において、抗原結合タンパク質は二重特異性抗体である。1つの態様において、二重特異性抗体は完全ヒト二重特異性抗体であり、各エピトープについて独立して、マイクロモル、ナノモル、またはピコモル範囲の親和性を有する。
1つの態様において、抗原結合タンパク質は、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である。具体的な態様において、抗原結合タンパク質は、非天然のヒトT細胞エピトープを欠いている。1つの態様において、CH1領域の改変は、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である。
1つの態様において、抗原結合タンパク質は、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である重鎖を含む。
1つの態様において、重鎖は、非天然のT細胞エピトープを含有しないアミノ酸配列を有する。1つの態様において、重鎖は、それをタンパク質分解しても、ヒトにおいて免疫原性である約9個のアミノ酸からなるアミノ酸配列が形成され得ない、アミノ酸配列を含む。具体的な態様において、当該ヒトは、抗原結合タンパク質で処置される人間である。1つの態様において、重鎖は、それをタンパク質分解しても、ヒトにおいて免疫原性である約13個〜約17個のアミノ酸からなるアミノ酸配列が形成され得ない、アミノ酸配列を含む。具体的な態様において、当該ヒトは、抗原結合タンパク質で処置される人間である。
1つの局面において、本発明は、複数の抗原結合特異性を有する単離された多重特異性抗体を提供し、該多重特異性抗体は、少なくとも(i)第1のエピトープに結合する第1の可変領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第1のポリペプチド、ならびに(ii)第2のエピトープに結合する第2の領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第2のポリペプチドを含み、該第1および第2のエピトープは異なるエピトープであり、かつ該第1および第2のCH1領域の少なくとも一方は、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬への第2のCH1ドメインの結合を低減または排除する改変を含む。
本発明はまた、(a)N末端からC末端の順に、第1のエピトープに選択的に結合する第1のエピトープ結合領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第1のポリペプチド;ならびに、b)N末端からC末端の順に、第2のエピトープに選択的に結合する第2のエピトープ結合領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質であって、該第2のCH1領域が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬への第2のCH1ドメインの結合を低減または排除する改変を含む、前記ヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質も提供する。
多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、ヒトIgG重鎖を含むか、またはヒトIgG重鎖に由来する。いくつかの態様において、多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質はまた、免疫グロブリン軽鎖も含む。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、免疫グロブリン軽鎖は、ヒト免疫グロブリン軽鎖であるか、またはヒト免疫グロブリン軽鎖に由来する。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、第1および第2のポリペプチドは各々、ヒトIgG1重鎖であるか、またはヒトIgG1重鎖に由来する。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、第2のCH1領域は改変を含む。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、第2のCH1ドメインにおける改変は、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40を改変する変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47を改変する変異、またはこれらの組み合わせを含む。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、第2のCH1ドメインにおける改変は、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせを含む。多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの態様において、二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方は、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である。
1つの局面において、以下の工程を含む、二重特異性抗体を作製するための方法を提供する:第1のエピトープを認識する第1の可変ドメインを含む第1の免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列を取得する工程であって、第1の免疫グロブリン重鎖が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;第2のエピトープを認識する第2の可変ドメインを含む第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を取得する工程であって、第2の免疫グロブリン重鎖が、そのCH1ドメインにおいて、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬への結合を絶つかまたは低減する改変を含む、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4アイソタイプの定常ドメインまたはこれらのキメラアイソタイプの定常ドメインを含む、工程;第1および第2の免疫グロブリン重鎖と対を形成する免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を取得する工程;第1、第2、および第3の核酸配列を哺乳動物細胞内に導入する工程;該細胞に免疫グロブリンを発現させる工程、ならびに、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬を用いて免疫グロブリンを単離する工程。
1つの態様において、細胞は、CHO、COS、293、HeLa、およびウイルス核酸配列を発現する網膜細胞(例えば、PERC.6(商標)細胞)から選択される。
1つの局面において、二重特異性抗体を作製するための方法であって、破壊された細胞または抗体の混合物から、異なるように改変されたIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH1ドメインを有する二重特異性抗体を単離する工程を含み、該異なるように改変されたCH1ドメインが、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性であり、該改変が、その単量体が親和性試薬に対して異なる親和性を有するヘテロ二量体重鎖を有する二重特異性抗体を結果としてもたらし、かつ該二重特異性抗体が、破壊された細胞または混合物から親和性試薬を用いて単離される、方法を提供する。
1つの態様において、ヘテロ二量体二重特異性抗体は、特定のpH範囲および塩濃度で優先的に精製することができる。本態様において、ヘテロ二量体二重特異性抗体は、2種の異なる重鎖から構成され、一方は、そのCH1ドメイン上の、40および47位(IMGT(登録商標)ナンバリング)、または40、45、および47位(IMGT(登録商標)ナンバリング)で改変されており;かつ他方は、そのCH1ドメイン上の、40および47位(IMGT(登録商標)ナンバリング)、または40、45、および47位(IMGT(登録商標)ナンバリング)の改変を欠いている。
1つの局面において、本発明は、多重特異性抗体、例えばヘテロ二量体二重特異性抗原結合タンパク質を、以下の工程によって生産するための方法を提供する:(a)第1のエピトープを認識する第1の可変ドメインを含む第1の免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列を取得する工程であって、第1の免疫グロブリン重鎖が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;(b)第2のエピトープを認識する第2の可変ドメインを含む第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を取得する工程であって、第2の免疫グロブリン重鎖が、そのCH1ドメインにおいて、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬への結合を絶つかまたは低減する改変を含む、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;(c)第1および第2の免疫グロブリン重鎖と対を形成する免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を取得する工程;(d)第1、第2、および第3の核酸配列を哺乳動物細胞内に導入する工程;(e)該細胞に二重特異性抗体を発現させる工程;ならびに(f)該二重特異性抗体の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に結合する能力に基づいて、該二重特異性抗体を単離する工程。
いくつかの態様において、第2のCH1ドメインにおける改変は、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方は、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬を含む固体支持体において単離される。いくつかの態様において、固体支持体は、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラム、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬を含み、二重特異性抗体は、pH勾配を用いて単離される。いくつかの態様において、pH勾配は、pH 3とpH 5との間の1つまたは複数のpH段階を含む段階的勾配である。
1つの局面において、本発明は、破壊された細胞または抗体の混合物から、異なるように改変されたIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH1ドメインを有する該二重特異性抗体を単離することにより該二重特異性抗体を単離するための方法であって、該異なるように改変されたCH1ドメインが、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性であり、該改変が結果として、その単量体がCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に対して異なる親和性を有するヘテロ二量体重鎖定常領域を有する二重特異性抗体をもたらし、かつ該二重特異性抗体が、破壊された細胞または混合物から、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に対するその親和性に基づいて単離される、前記方法を提供する。
いくつかの態様において、ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体はヒトIgG1であり、ヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体は、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される改変を含む、改変されたヒトIgG1である。いくつかの態様において、第1の免疫グロブリン重鎖は、親和性クロマトグラフィー樹脂に対するその結合特性を変更する変異または改変を含む。いくつかの態様において、第1の免疫グロブリン重鎖は、プロテインAに対するその結合特性を変更する変異を含む。いくつかの態様において、第1の免疫グロブリン重鎖は、プロテインAに対するその結合特性を変更するH435R変異を含む。
[本発明1001]
複数の抗原結合特異性を有する単離された多重特異性抗体であって、
(i)第1のエピトープに結合する第1の可変領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第1のポリペプチド、ならびに
(ii)第2のエピトープに結合する第2の可変領域と、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第2のポリペプチド
を含み、
該第1および第2のエピトープが異なるエピトープであり、かつ該第1および第2のCH1領域の少なくとも一方が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬への第2のCH1ドメインの結合を低減または排除する改変を含む、前記多重特異性抗体。
[本発明1002]
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、ヒトIgG重鎖を含むか、またはヒトIgG重鎖に由来する、本発明1001の単離された多重特異性抗体。
[本発明1003]
免疫グロブリン軽鎖をさらに含む、本発明1001の単離された多重特異性抗体。
[本発明1004]
免疫グロブリン軽鎖が、ヒト免疫グロブリン軽鎖を含むか、またはヒト免疫グロブリン軽鎖に由来する、本発明1003の単離された多重特異性抗体。
[本発明1005]
第1および第2のポリペプチドが各々、ヒトIgG1重鎖を含むか、またはヒトIgG1重鎖に由来する、本発明1001の単離された多重特異性抗体。
[本発明1006]
第2のCH1領域が改変を含み、かつ第2のCH1ドメインにおける該改変が、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40を改変する変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47を改変する変異、またはこれらの組み合わせを含む、本発明1001の単離された多重特異性抗体。
[本発明1007]
第2のCH1ドメインにおける前記改変が、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせを含む、本発明1006の単離された多重特異性抗体。
[本発明1008]
二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方が、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である、本発明1006の単離された多重特異性抗体。
[本発明1009]
以下の工程を含む、単離された多重特異性抗体を生産するための方法:
a)第1のエピトープに結合する第1の可変領域を含む第1の免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列を取得する工程であって、第1の免疫グロブリン重鎖が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;
b)第2のエピトープに結合する第2の可変領域を含む第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を取得する工程であって、第2の免疫グロブリン重鎖が、そのCH1ドメインにおいて、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬への結合を絶つかまたは低減する改変を含む、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;
c)第1および第2の免疫グロブリン重鎖と対を形成する免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を取得する工程;
d)第1、第2、および第3の核酸配列を哺乳動物細胞内に導入する工程;
e)該細胞に二重特異性抗体を発現させる工程;ならびに
f)該二重特異性抗体の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に結合する能力に基づいて、該二重特異性抗体を単離する工程。
[本発明1010]
第2のCH1ドメインにおける前記改変が、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせを含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方が、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性である、本発明1010の方法。
[本発明1012]
二重特異性抗体が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬を含む固体支持体において単離される、本発明1009の方法。
[本発明1013]
前記固体支持体が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラム、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬を含み、かつ前記二重特異性抗体がpH勾配を用いて単離される、本発明1012の方法。
[本発明1014]
pH勾配が、pH 3とpH 5との間の1つまたは複数のpH段階を含む段階的勾配である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
第1の免疫グロブリン重鎖が、親和性クロマトグラフィー樹脂に対するその結合特性を変更する変異または改変を含む、本発明1009の方法。
[本発明1016]
第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更する変異を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更するH43R5変異を含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
二重特異性抗体を単離するための方法であって、破壊された細胞または抗体の混合物から、異なるように改変されたIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH1ドメインを有する該二重特異性抗体を単離する工程を含み、該異なるように改変されたCH1ドメインが、ヒトにおいて非免疫原性または実質的に非免疫原性であり、かつ該改変が結果として、その単量体がCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に対して異なる親和性を有するヘテロ二量体重鎖定常領域を有する二重特異性抗体をもたらし、かつ該二重特異性抗体が、破壊された細胞または混合物から、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4 CH1ドメインを標的とする任意の親和性試薬に対するその親和性に基づいて単離される、前記方法。
[本発明1019]
前記ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体がヒトIgG1であり、かつ前記ヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体が、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるS40T変異、IMGTエクソンナンバリングシステムにおけるT47S変異、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される改変を含む改変されたヒトIgG1である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
第1の免疫グロブリン重鎖が、親和性クロマトグラフィー樹脂に対するその結合特性を変更する変異または改変を含む、本発明1015の方法。
[本発明1021]
第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更する変異を含む、本発明1020の方法。
[本発明1022]
第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更するH43R5変異を含む、本発明1021の方法。
本明細書において記載される任意の態様および局面を、別途示されるかまたは文脈から明らかでない限り、互いに組み合わせて使用することができる。以下の説明を検討することにより、他の態様が当業者に明らかになるであろう。
様々な種および様々なアイソタイプの公知の精製抗体についてCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬の特異性を示す表である。 以下の種およびアイソタイプのCH1ドメインの配列アラインメントを示す図である:ヒトIGHG1(H-IGHG1, SEQ ID NO: 1)、ヒトIGHG2(H-IGHG2, SEQ ID NO: 2)、ヒトIGHG3(H-IGHG3, SEQ ID NO: 3)、ヒトIGHG4(H-IGHG4, SEQ ID NO: 4)、ハムスターIGHG(Ha-IGHG, SEQ ID NO: 5)、マウスIGHG1(M-IGHG1, SEQ ID NO: 6)、マウスIGHG2A(M-IGHG2A, SEQ ID NO: 7)、マウスIGHG2B(M-IGHG2B, SEQ ID NO: 8)、マウスIGHG2C(M-IGHG2C, SEQ ID NO: 9)、マウスIGHG3(M-IGHG3, SEQ ID NO: 10)、ラットIGHG1(R-IGHG1, SEQ ID NO: 11)、ラットIGHG2A(R-IGHG2A, SEQ ID NO: 12)、ラットIGHG2B(R-IGHG2B, SEQ ID NO: 13)、およびラットIGHG2C(R-IGHG2C, SEQ ID NO: 14)。 40位にセリン残基(40S)および47位にスレオニン残基(47T)を持つ野生型CH1ドメインを有する二重特異性抗体の例を示す図である。 下記に提供される実施例において試験された、CH1ドメインの変異を示す表である。 H-IGHG1(SEQ ID NO: 1)CH1ドメインおよびH-IGHG1 M2(SEQ ID NO: 15)CH1ドメインの配列アラインメントを示す図である。(H-IGHG1 M2変異体は、40位にスレオニン(本明細書においてS40T変異とも呼ばれる)および47位にセリン(本明細書においてT47S変異とも呼ばれる)を有するH-IGHG1配列の変種である) プロテインA親和性カラムまたはCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムのいずれかにおける精製後に取得された精製抗体の量を示すグラフである。 CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムを用いた精製抗体の回収と比較した際の、プロテインA親和性カラムを用いた精製抗体の回収率を示すグラフである。 H-IGHG1(SEQ ID NO: 1)CH1ドメインおよびH-IGHG1 M2(SEQ ID NO: 15)CH1ドメイン;H-IGHG2(SEQ ID NO: 2)CH1ドメインおよびH-IGHG2 M2(SEQ ID NO: 16)CH1ドメイン(H-IGHG2 M2変異体は、40位にスレオニン(本明細書においてS40T変異とも呼ばれる)および47位にセリン(本明細書においてT47S変異とも呼ばれる)を有するH-IGHG2配列の変種である);H-IGHG3(SEQ ID NO: 3)CH1ドメインおよびH-IGHG3 M2(SEQ ID NO: 17)CH1ドメイン(H-IGHG3 M2変異体は、40位にスレオニン(本明細書においてS40T変異とも呼ばれる)および47位にセリン(本明細書においてT47S変異とも呼ばれる)を有するH-IGHG3配列の変種である);ならびにH-IGHG4(SEQ ID NO: 4)CH1ドメインおよびH-IGHG4 M2(SEQ ID NO: 18)CH1ドメイン(H-IGHG4 M2変異体は、40位にスレオニン(本明細書においてS40T変異とも呼ばれる)および47位にセリン(本明細書においてT47S変異とも呼ばれる)を有するH-IGHG42配列の変種である)の配列アラインメントを示す図である。 2つの親和性段階により精製される、可能性のある二重特異性抗体形式を示す図である。この抗体は、1種の共通の軽鎖および2種の異なる重鎖を有する。これらの2種の異なる重鎖に変異が導入されている。一方の重鎖は、そのCH1ドメイン中に、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬への結合を撤廃するS40TおよびT47S変異を有し、他方の鎖は、そのCH3ドメイン中に、プロテインAへの結合を撤廃するH435R変異を有する。変異した位置が、示されている。 2種の重鎖および1種の軽鎖の単一細胞における発現時に生成される抗体の混合物から二重特異性抗体を単離するために使用される非対称性精製戦略を示す図である。両方の重鎖上にH435Rを保持する単一特異性抗体は、プロテインA樹脂に結合せず、フロースルー中に失われる。両方の重鎖上にS40TおよびT47S変異を保持する第2の単一特異性抗体は、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬に結合せず、フロースルー中に失われる。二重特異性抗体は、最終的な溶出段階で回収される。 ELISAにより得られた、CD3に対する抗体結合の結果を示すグラフである。ELISAの形式は、右のパネルに漫画により記載されている。 ELISAにより得られた、IL-17に対する抗体結合の結果を示すグラフである。ELISAの形式は、右のパネルに漫画により記載されている。 ELISAにより得られた、CD3およびIL-17の両方に対する抗体の共連結(co-engagement)の結果を示すグラフである。ELISAの形式は、右のパネルに漫画により記載されている。 Biacore 2000機器において得られた、ストレプトアビジンでコーティングされたCM5チップ上に固定化されたCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1のビオチン化リガンドと、改変されていないまたは改変されたCH1ドメインを保有する異なるIgGとの間の相互作用についてのセンサーグラムを示すグラフである。変異したhIgG1は、図4に記載される変異を保持する。
詳細な説明
単一の抗原のみを標的とし得るモノクローナルかつ一価の抗体療法の限界を克服するため、または一価の抗体療法の組み合わせの限界を克服するために、二重特異性抗体形式を用いた複数の抗原の標的化に精力的な努力が向けられている。二重特異性抗体は、複数の標的化を可能にし、治療の可能性を増大させ、生体系の多重性に対処し、かつ、再標的化および/または特異性の増大などの能力を通して新規の作用機構を提供するために有利である。有効な単一の治療標的がますます尽きるようになるため、二重特異性抗体により許容される組み合わせは、治療剤および治療適用のための新規かつ拡大する標的領域を提供する。
近年、複数の抗原結合特異性を有する治療剤、例えば二重特異性抗体のような抗体を開発する努力が進行中である。癌の治療法の場合、多重特異的形式は使用の可能性を与えることができ、例えば、一方の特異性は腫瘍細胞抗原についての分子を標的とし、他方の特異性は免疫系に対して通常は利用できない応答を誘発する。二重特異性抗体はまた、二成分のヘテロ二量体受容体系(通常は、天然のリガンドが両成分に結合してそれらを引き合わせると、該リガンドにより活性化される)に対する代替リガンドとしての使用も見出すことができる。
複数の結合特異性を有する分子によりもたらされる治療機会に対処するために、当技術分野において数々の形式が開発されてきている。理想的には、そのような分子は、生産および精製するのが容易な、良好に挙動するタンパク質であるべきであり、かつ、好都合なインビボ特性、例えば、意図される目的に対して適切な薬物動態、最小の免疫原性、および、望ましい場合、従来の抗体のエフェクター機能を有するべきである。
二重特異性抗体を生産する(単一細胞において2種の別個の抗体を発現する)最も直接的な方法は、それぞれの重鎖がホモ二量体およびヘテロ二量体の両方を形成するため、多数の種を生じさせるが、ヘテロ二量体のみが望ましい。また、軽鎖および重鎖は、不適切に対を形成する可能性がある。様々な方法でこれらの問題に対処するように試みる形式のいくつかの例を、以下に記載する。
二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T cell Engager)(BiTE)分子(例えば、Wolf, E. et al. (2005) Drug Discovery Today 10:1237-1244を参照されたい)のために使用される1つの形式は、一本鎖可変断片(scFv)モジュールに基づく。scFvは、可撓性リンカーを介して融合された抗体の軽鎖および重鎖の可変領域からなり、概して適切にフォールティングすることができ、そのため領域が同起源の抗原に結合することができる。BITEは、異なる特異性の2種のscFvを一本鎖上で縦列に連結する。この形態は、同一の重鎖可変領域の2個のコピーを有する分子の産生を防止する。加えて、リンカーの形態は、それぞれの軽鎖および重鎖の正確な対形成を保証するように設計される。
BITE形式は、いくつかの不利点を有する。第1に、scFv分子は、凝集する傾向がよく知られている。かつ、scFvリンカーの免疫原性は世評によると低いが、BiTEに対する抗体を生成する可能性を除外することはできない。また、BiTE形式中にFc部分が存在しないために、その血清半減期は非常に短くなり、これにより、頻繁な反復投与またはポンプを介した持続注入の複雑な状況が必要となる。最後に、Fcが存在しないことはまた、いくつかの状況において有益であり得るFc媒介性のエフェクター機能が存在しないことも意味する。
第2の形式は、マウスおよびラットのモノクローナル抗体のハイブリッドであり、従来のプロテインA親和性クロマトグラフィーの改変に依拠する(例えば、Lindhofer, H. et al. (1995) J. Immunol. 155:219-225を参照されたい)。この形式においては、マウスIgG2a抗体およびラットIgG2b抗体が、同一細胞において一緒に生産される(例えば、2種のハイブリドーマのクアドローマ融合体としてまたは遺伝子組換えCHO細胞においてのいずれか)。各抗体の軽鎖は、その同起源の種の重鎖と優先的に会合するため、異なる3種の抗体(2種の親抗体、および、各々の1つの重鎖/軽鎖対を含む2種の抗体のヘテロ二量体がそれらのFc部分を介して会合したもの)のみが構築され得る。望ましいヘテロ二量体は、プロテインAに対するその結合特性が親抗体のものとは異なる(ラットIgG2bはプロテインAに結合しないが、マウスIgG2aは結合する)ため、この混合物から容易に精製することができる。その結果、マウス-ラットのヘテロ二量体は、プロテインAに結合するが、マウスIgG2aホモ二量体よりも高いpHで溶出し、これにより、二重特異性ヘテロ二量体の選択的な精製が可能になる。このハイブリッド形式は、BiTE形式の場合のように2種の一価抗原結合部位を有する。
マウス/ラットハイブリッドの不利点は、非ヒトであるため、患者において免疫応答を惹起する可能性があり、これが有害な副作用を有し得、かつ/または治療の効力を消し得ることである。
上記の概念、すなわち、ヘテロ二量体分子のプロテインAへの異なる結合に基づいて、プロテインAへの結合を担うFc領域の改変に依拠する他の形式が、米国特許出願公開第20100331527A1号に記載されている。抗体のFc領域を遺伝子操作することの限界は、導入された変異が、Fc受容体との相互作用、従ってFc媒介性の機能に影響を及ぼし得ることである。特に、FcRnとの相互作用は、抗体の長い半減期にとって重要であり、この相互作用部位は、プロテインA結合部位の近くに位置する。
「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」と呼ばれる別の形式が、二重特異性抗体の生産に潜在的に有用であるとして、先行技術において議論されている(米国特許第7,183,076号)。この戦略においては、2種の抗体のFc部分を、一方を突出した「ノブ」にし、他方を相補的な「ホール」にするように、遺伝子組み換えを行う。同一細胞において生産される際、重鎖は、遺伝子組み換えされた「ノブ」と、遺伝子組み換えされた「ホール」との会合により、ホモ二量体よりもむしろヘテロ二量体を優先的に形成すると言われている。軽鎖と重鎖との正確な対形成の問題は、異なる特異性を有するが同一の軽鎖を使用する抗体を選択することにより、対処される。
この形式の不利点は、「ノブ・イントゥ・ホール」戦略が、有意な量の望ましくないホモ二量体の産生を結果としてもたらし得、従ってさらなる精製段階を必要とすることである。この難点は、混入している種が、それらの特性の多くにおいて望ましい種とほぼ同一であるという事実により悪化する。遺伝子組み換えされた形はまた、「ノブ」および「ホール」を産生する変異が外来配列を導入するため、潜在的に免疫原性である可能性もある。
本明細書において記載される二重特異性抗体を生成するアプローチは、Fc領域の変異誘発を含まないが、代わりに、CH1特異的親和性クロマトグラフィー媒体に対するその結合能を変更するCH1ドメイン改変に依拠するため、他のアプローチの不利点を克服する。抗体のCH1領域は、受容体または他のタンパク質との相互作用に関与することが知られておらず、従って、本発明の二重特異性形式のエフェクター機能および薬物動態特性は無変更のままである。本明細書において記載されるCH1ドメインの変異のいくつかの追加的な有益性は、非常に保存的な変化(すなわち、セリンからスレオニン、およびスレオニンからセリン)でさえも、CH1特異的クロマトグラフィー媒体への結合を無効にできることである。これらの保存的な変異は、好ましい変化に相当するが、当業者は、より保存的でない変異もまたこのアプローチに適用され得ることを、認識するであろう。
本発明は、単一特異性抗体に由来する未改変のCH1ドメインを1つのみ含有する二重特異性抗体種の精製を可能にする。これは、単一細胞において2種の異なる抗体重鎖および1種の抗体軽鎖を共発現することにより、達成することができる。2種の重鎖は、共通の軽鎖と対を形成した際に、2種の異なる抗原に対する特異的結合を媒介する。2種の重鎖のうちの1種は、CH1特異的クロマトグラフィー媒体へのその結合を妨げる改変されたCH1ドメインを含有する。3種の鎖の共発現により、3種の抗体(未改変のCH1ドメインを2つ保有するホモ二量体単一特異性抗体、改変されたCH1ドメインを2つ保有するホモ二量体単一特異性抗体、ならびに、改変されたCH1ドメインを1つと改変されていないCH1ドメインを1つ保有するヘテロ二量体二重特異性抗体)の混合物の産生がもたらされる。3種の異なる分子の特性の差異を、単一特異性抗体から二重特異性抗体を効率よく精製するために活用することができる。
本明細書において記載されるCH1ドメインの改変は、Fcドメインなどの抗体の一部の他の変異または改変と組み合わせることができる。そのような組み合わせにより、二重特異性分子の単離をさらに促進する2段階の非対称性精製アプローチが可能になる。
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をいかに作製および使用するかを当業者に説明するために提供されるものであり、本発明者らが自分たちの発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しては正確性を保証する努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差が計上されるべきである。別途記載がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、かつ圧力は大気圧または大気圧近くである。
実施例1. CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬はヒトおよびハムスターのIgGに特異的に結合する
CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬の特異性を試験するために、様々な種および様々なアイソタイプの公知の精製抗体で結合実験を実施した。これらの実験により、ヒトおよびハムスターのIgGのみを、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性樹脂上に保留することができ、他方、様々なアイソタイプのマウスおよびラットのIgGは、この親和性試薬に結合できないことが、明らかになった(図1)。
実施例2. CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬へのIgGの結合を担う配列決定基の同定
ヒト(IGHG1 SEQ ID NO: 1, IGHG2 SEQ ID NO: 2, IGHG3 SEQ ID NO: 3, IGHG4 SEQ ID NO: 4)、ハムスター(IGHG SEQ ID NO: 5)、マウス(IGHG1 SEQ ID NO: 6, IGHG2A SEQ ID NO: 7, IGHG2B SEQ ID NO: 8, IGHG2C SEQ ID NO: 9, IGHG3 SEQ ID NO: 10)、およびラット(IGHG1 SEQ ID NO: 11, IGHG2A SEQ ID NO: 12, IGHG2B SEQ ID NO: 13, IGHG2C SEQ ID NO: 14)のアイソタイプの配列アラインメントを行った(図2)。ヒトおよびハムスターのCH1中で保存されているが、マウスおよびラットの配列中では保存されていない2個の残基:40Sおよび47Tを同定した。これらの溶媒への曝露をまた、抗体構造において判定し、これらの残基が高度に接触可能であることを示した。別の残基である45Aは、40Sおよび47Tの近傍に位置し、溶媒に十分曝露され、かつ異なる種において部分的に保存されている(図3)。
実施例3. CH1親和性クロマトグラフィー媒体への結合を変更するヒトCH1ドメインの改変
ヒトIGHG1の改変を、単一(S40TまたはT47S)、二重(S40T、T47S)、または三重(S40T、A45S、T47S)の変異として部位特異的変異誘発によりCH1ドメイン中に導入し、それぞれM2ST、M2TS、M2、およびM3と呼んだ(図4、図5、および図8)。これらの異なる変異体をさらに、標準的な哺乳動物細胞トランスフェクション手順を用いて293細胞において発現させ、下記のように上清から精製した。
異なるように改変されたIgG1の、プロテインAおよびCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1による精製:異なるように改変された単量体IgG1(例えば、WT、M2ST、M2TS、M2、およびM3参照)を、293細胞において発現させた。細胞上清を収集して、2つに分けた。次に、抗体を、プロテインAまたはCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムのいずれかにおいて精製した。精製後に取得された精製抗体の量を測定した(図6)。プロテインAカラムとCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムとの間の抗体回収率も計算した(図7)。この率により、単一の変異であるM2STおよびM2TSはCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムへの抗体結合を低下させたが撤廃はしなかったことが示された。二重および三重の変異体であるM2およびM3のCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムについての回収率は極めて低く、S40T、T47Sの二重変異が、この親和性試薬へのIGHG1の結合を撤廃するのに十分であったことが示された。
実施例4. 抗IL17×抗CD3二重特異性抗体の生成および精製
ヒトIgG1アイソタイプの2種の公知の抗体である、IL-17に対するものおよびタンパク質CD3に対するものは、1個のアミノ酸のみが異なる軽鎖を有することが見出された。共発現実験により、抗IL-17抗体の軽鎖は、抗CD3抗体由来の軽鎖で置換され得、かつ依然としてIL-17への高親和性結合を維持し、従って、抗IL-17重鎖、抗CD3重鎖、および同一の軽鎖を用いた二重特異性抗体の産生を実行可能にすることが明らかになった。従って、抗IL-17抗体の重鎖を、M2形(すなわち、CH1改変である、IMGT(登録商標)エクソンナンバリングによるS40TおよびT47S)に改変した。
さらに、二重特異性抗体の精製を促進するために、H435R変異を抗CD3抗体の重鎖のCH3ドメイン中に導入して、プロテインA親和性試薬への結合を破壊した(図9)。IgG3-Fc領域のCH3ドメインのC末端部分について遺伝子組み換えを行ってIgG3のプロテインAへの結合を導いたNatsumeらの論文(Cancer Res 2008;68:3863-3872、この内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる)に基づいて、IgG3のCH3ドメインのC末端残基をヒトIgG1中に導入した。CH3ドメインのこの部分において、2個の残基のみがIgG1とIgG3との間で異なり、残基His435およびTyr436(それぞれ、IgG3においてArgおよびPhe残基である)に対応する。部位特異的変異誘発後、H435R変異は、プロテインAへの結合を撤廃するのに十分であることが判明した。従って、抗CD3および抗IL-17の重鎖を、293細胞において同一軽鎖と共発現させ、二重特異性抗体を、非対称性精製を用いて上清から精製した。第1の精製をプロテインA樹脂で実施して、二重特異性抗体および抗IL17単一特異性抗体を捕捉した。次に、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラムでの第2の精製を用いて、二重特異性抗体を特異的に捕捉した(図10)。最後に、ELISA実験を実施して、CD3、IL-17に対する抗体結合、またはCD3およびIL-17の両方の共連結を判定した。唯一、非対称性精製により取得された二重特異性抗体は、単一特異性抗体と比較した際に、IL-17およびCD3の両方を連結することができた(図11〜図13)。
実施例5. 表面プラズモン共鳴による、変異したCH1ドメインを含有する抗体の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性樹脂のリガンドへの結合
改変されたおよび改変されていないCH1ドメインを保有するIgGの相互作用を、Biacore 2000機器において表面プラズモン共鳴を用いて特徴決定した。CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性樹脂(BAC BV)のビオチン化リガンドを、ストレプトアビジンでコーティングされたCM5チップ(GE Healthcare)上に固定化した。M2、M3、M2ST、および改変されていないIgG1を表面上に注入し、センサーグラムを記録した(図14)。改変されていないCH1ドメインを含有するIgGとCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性樹脂のリガンドとの間の明らかな相互作用を、非常に遅いオフ速度で観察することができる。対照的に、M2およびM3中に存在する二重および三重の変異は、この相互作用を完全に消滅させる。単一の変異S40Tは、相互作用の部分的な阻害をもたらす。
他の態様
本発明が、その詳細な説明と共に記載されてきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明を例証するように意図され、本発明の範囲を限定するようには意図されない。他の局面、利点、および改変が、添付の特許請求の範囲内である。

Claims (14)

  1. 複数の抗原結合特異性を有する単離された多重特異性抗体であって、
    (i)第1のエピトープに結合する第1の可変領域と、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むIgG1アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含むIgG2アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むIgG3アイソタイプの定常ドメイン、およびSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むIgG4アイソタイプの定常ドメインから選択されるヒトIgGの第1のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第1のポリペプチド、ならびに
    (ii)第2のエピトープに結合する第2の可変領域と、SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含むIgG1アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含むIgG2アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含むIgG3アイソタイプの定常ドメイン、およびSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含むIgG4アイソタイプの定常ドメインから選択されるヒトIgGの第2のCH1領域を含む免疫グロブリン定常領域とを含む第2のポリペプチドであって、該第2のCH1領域が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬に結合しない、第2のポリペプチド
    を含み、
    該第1および第2のエピトープが異なるエピトープである、前記多重特異性抗体。
  2. 第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、ヒトIgG重鎖を含むか、またはヒトIgG重鎖に由来する、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
  3. 免疫グロブリン軽鎖をさらに含む、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
  4. 免疫グロブリン軽鎖が、ヒト免疫グロブリン軽鎖を含むか、またはヒト免疫グロブリン軽鎖に由来する、請求項3に記載の単離された多重特異性抗体。
  5. 第1および第2のポリペプチドが各々、ヒトIgG1重鎖を含むか、またはヒトIgG1重鎖に由来する、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
  6. 二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方が、ヒトにおいて非免疫原性ある、請求項1に記載の単離された多重特異性抗体。
  7. 以下の工程を含む、単離された多重特異性抗体を生産するための方法:
    a)第1のエピトープに結合する第1の可変領域を含む第1の免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列を取得する工程であって、第1の免疫グロブリン重鎖が、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むIgG1アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含むIgG2アイソタイプの定常ドメインSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むIgG3アイソタイプの定常ドメイン、またはSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むIgG4アイソタイプの定常ドメインを含む、工程;
    b)第2のエピトープに結合する第2の可変領域を含む第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を取得する工程であって、第2の免疫グロブリン重鎖が、そのCH1ドメインにおいて、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬の結合を絶つかまたは低減する改変を含むIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインを含かつIgG1アイソタイプの定常ドメインがSEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含み、IgG2アイソタイプの定常ドメインがSEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含み、IgG3アイソタイプの定常ドメインがSEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含み、またはIgG4アイソタイプの定常ドメインがSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む、工程;
    c)第1および第2の免疫グロブリン重鎖と対を形成する免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を取得する工程;
    d)第1、第2、および第3の核酸配列を哺乳動物細胞内に導入する工程;
    e)該細胞に二重特異性抗体を発現させる工程;ならびに
    f)該二重特異性抗体の、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬結合する能力に基づいて、該二重特異性抗体を単離する工程。
  8. 二重特異性抗体の第1のCH1ドメイン、第2のCH1ドメイン、または第1および第2のCH1ドメインの両方が、ヒトにおいて非免疫原性ある、請求項7に記載の方法。
  9. 二重特異性抗体が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬含む固体支持体において単離される、請求項7に記載の方法。
  10. 前記固体支持体が、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性カラム含み、かつ前記二重特異性抗体がpH勾配を用いて単離される、請求項9に記載の方法。
  11. pH勾配が、pH 3とpH 5との間の1つまたは複数のpH段階を含む段階的勾配である、請求項10に記載の方法。
  12. 第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更するH435R変異をさらに含む、請求項7に記載の方法。
  13. 以下の工程を含む、二重特異性抗体を単離するための方法
    a)破壊された細胞または抗体の混合物から、異なるように改変されたIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 CH1ドメインを有する重特異性抗体を単離する工程であって、該異なるように改変されたCH1ドメインが、ヒトにおいて非免疫原性あり、かつ該改変が結果として、その単量体がCaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬対して異なる親和性を有するヘテロ二量体重鎖定常領域を有する二重特異性抗体をもたらし、該単量体が、
    (i) ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体が、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を含むヒトIgG1であり、かつヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体が、SEQ ID NO: 15のアミノ酸配列を含む改変されたヒトIgG1であること;
    (ii) ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体が、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含むヒトIgG2であり、かつヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体が、SEQ ID NO: 16のアミノ酸配列を含む改変されたヒトIgG2であること;
    (iii) ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体が、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むヒトIgG3であり、かつヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体が、SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含む改変されたヒトIgG3であること;
    (iv) ヘテロ二量体重鎖定常領域の一方の単量体が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むヒトIgG4であり、かつヘテロ二量体重鎖定常領域の他方の単量体が、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む改変されたヒトIgG4であること
    からなる群より選択される、工程;ならびに
    b)該二重特異性抗体、破壊された細胞または混合物から、CaptureSelect(登録商標)IgG-CH1親和性試薬対するその親和性に基づいて単離工程
  14. 第1の免疫グロブリン重鎖が、プロテインAに対するその結合特性を変更するH435R変異をさらに含む、請求項13に記載の方法。
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