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JP6271076B2 - 標的核酸検出法、アッセイキットおよびプローブ固定基体 - Google Patents

標的核酸検出法、アッセイキットおよびプローブ固定基体 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、標的核酸検出法、アッセイキットおよびプローブ固定基体に関する。
遺伝子検査技術の進展に伴い、臨床現場や犯罪捜査などの様々な場面で核酸検査が実施されている。その後の検査を効率的に行うためや遺伝子の発現量を分析するために核酸を定量することが重要なものとなっている。
核酸を定量するための方法として、リアルタイムPCR法やマイクロアレイ法などが知られている。
リアルタイムPCR法は、核酸の増幅を伴うために感度が高く、広い定量範囲に亘り分析を行うことができる。その一方で検出する核酸の種類が多くなると種類ごとに分析を行う必要がある。他方、マイクロアレイ法は、同時に数万種類以上の核酸を分析することができる。しかしながら感度および定量分析の精度はリアルタイムPCR法に劣る。
米国特許第8551697号明細書
Stephen S.W.Yeung,Thomas M.H.Lee,and I−Ming Hsing,J.AM.CHEM.SOC. vol.128,No.41,2006,13374−13375 Agnes Anne and Christpphe Demaille,J.AM.CHEM.SOC. vol.128,No.2,2006,542−557
上記のような状況におい、現在、核酸を簡便かつ高感度に検出する方法の更なる開発が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、核酸を簡便かつ高感度に検出できる標的核酸検出法、アッセイキットおよびプローブ固定基体を提供することである。
実施形態によれば、標的核酸検出法は、(A)標的核酸を含み得る試料と、核酸プローブと、被覆核酸鎖と、標識物質と、プライマーセットとを含む反応場を等温増幅反応条件下に置くこと、(B)等温増幅反応条件下で、核酸プローブからの信号をモニタリングするまたは2つ以上の時点で検出すること、(C)(B)で得られた信号に基づいて標的核酸を検出することを含む。核酸プローブは、反応場を支持するための基体の少なくとも1面に固定されている。被覆核酸鎖は、ハイブリダイズによって核酸プローブに結合している。核酸プローブおよび被覆核酸鎖の塩基配列は、(a)等温増幅反応条件下で、被覆核酸鎖に対する増幅産物と核酸プローブとの競合、核酸プローブからの被覆核酸鎖の脱離、被覆核酸鎖と増幅産物とのハイブリダイズを介した結合が得られる配列であるか、(b)等温増幅反応条件下で、核酸プローブと被覆核酸との結合が維持された状態で、被覆核酸鎖と増幅産物とのハイブリダイズを介した結合、増幅産物を鋳型とした被覆核酸鎖の伸長が得られる配列である。標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されている。
実施形態の標的核酸検出法の1例を示すフローチャートである。 実施形態の核酸プローブ固定基体の模式図である。 被覆核酸鎖の第1の配列および第2の配列が、連続している、部分的もしくは完全に重なっている、または1つの配列である実施形態の核酸プローブ固定プローブ固定基体の模式図である。 電気化学的に活性な物質を標識物質として備える実施形態の核酸プローブ固定基体と、標識物質が光学的に活性な物質であり、被覆核酸鎖が光学的に活性な物質が発する信号を強調するための物質を含んでいる実施形態の核酸プローブ固定基体の模式図である。 実施形態の核酸プローブ固定基体を示す図である。 実施形態の核酸プローブ固定基体の使用時の様子を示す図である。 実施形態のアレイ型核酸プローブ固定基体の平面図である。 実施形態のアレイ型核酸プローブ固定基体の平面図である。 実施形態のアレイ型核酸プローブ固定基体の一部分とそれにより得られる検出信号を示す図である。 実施形態のアレイ型核酸プローブ固定基体の一部分とそれにより得られる検出信号を示す図である。 実施形態のアレイ型核酸プローブ固定基体の一部分とそれにより得られる検出信号を示す図である。 実施形態のチップ素材の1例を示す図である。 実施形態のマルチ核酸増幅検出反応具の1例を示す図である。 実施形態のマルチ核酸増幅検出反応具の使用例を示す図である。 実施形態のマルチ核酸増幅検出反応具の使用例を示す図である。 実施形態の標的核酸測定方法のフローチャートを示す図である。 実施形態における測定した電気信号の波形の一例を示す図である。 実施形態の核酸プローブ固定基体の使用時の様子の一例を示す図である。 実施形態の核酸プローブ固定基体の使用時の様子の一例を示す図である。 実施形態の標的核酸検出装置の一例を示すブロック図である。 実施形態の電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体の模式図である。 例1の実験結果を示す図である。 例1の実験結果を示す図である。 実施形態の蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体の模式図である。 例2の実験結果を示す図である。 例2の実験結果を示す図である。 例3の実験結果を示す図である。 例3の実験結果を示す図である。 例4の実験結果を示す図である。
以下に、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
1.定義
「増幅」とは、プライマーセットを用いて鋳型核酸を連続して複製することをいう。実施形態において使用される増幅法は、プライマーセットを用いて標的核酸を等温増幅する方法であれはよい。増幅法は、これらに限定するものではないが、例えば、PCR増幅、LAMP増幅、RT−LAMP増幅、SMAP増幅およびICAN増幅などを含んでもよい。また、所望に応じて逆転写反応を増幅反応と同時に行ってもよい。
「標的配列」とは、プライマーセットにより増幅されるべき配列をいい、使用されるプライマーが結合する領域も含み得る。
「標的核酸」とは、標的配列を含む核酸である。標的核酸は、使用されるプライマーセットにより鋳型として使用される核酸であり、「鋳型核酸」とも称する。標的核酸は、増幅反応に供されるべき試料に含まれる被検核酸であってもよく、標的配列をそれを増幅するためのプライマーセットを用いて増幅して得られる増幅産物であってもよい。
「プライマーセット」とは、1つの標的核酸を増幅するために必要なプライマーの集合体である。例えば、PCR増幅用のプライマーセットの場合、1つのプライマーセットは、1つの標的核酸を増幅するための1種類のフォワードプライマーと1種類のリバースプライマーとを含めばよい。また例えば、LAMP増幅用のプライマーセットの場合、1つのプライマーセットは、少なくとも1つの標的核酸を増幅するためのFIPプライマー、BIPプライマーを含めばよく、必要に応じてF3プライマー、B3プライマー、LPプライマー、即ち、LFプライマーおよび/またはLBプライマーを含んでもよい。
「試料」とは、核酸プローブ固定基体の反応場に持ち込まれ、そこにおいて増幅および検出されるべき標的核酸を含む物質である。試料は、これらに限定するものではないが、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰などであってもよく、またはこれらの何れかまたはその混合物から何れかの手段によって抽出された核酸成分を含む液体であってよい。
2.第1の実施形態
2−1.標的核酸検出法
第1の実施形態に従うと標的核酸検出法が提供される。検出されるべき標的核酸は、第1の配列および/またはその相補配列を含む。標的核酸検出法は、図1(a)に示すような以下の(A)〜(C)の工程を含み得る。
(A)では、試料、核酸プローブ、被覆核酸鎖、標識物質およびプライマーセットを含む反応液により形成されている反応場を等温増幅反応条件下に置く。試料は、標的核酸を含み得るものである。核酸プローブは、第1の配列とは異なる第2の配列を含む核酸鎖を含み、これによって、反応場を支持するための基体の少なくとも1面に固定されている。被覆核酸鎖は、第2の配列に相補的な第2の配列結合領域と第1の配列に相補的な第1の配列結合領域とを含む。被覆核酸鎖の第2の配列結合領域が、核酸プローブの第2の配列にハイブリダイズすることによって、被覆核酸鎖は、核酸プローブに結合している。検出可能な信号を生ずる標識物質は、標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害される。プライマーセットは、標的核酸の第1の配列を増幅するためのプライマーセットであり、このプライマーセットにより、第1の配列を含む増幅産物を形成する。
(B)では、等温増幅反応条件下で、核酸プローブからの信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出する。
(C)では、(B)で得られた試料についての信号に基づいて、標的核酸についての検出結果を得る。
ここにおいて、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、以下の(a)または(b)の特徴を有する。
(a)等温増幅反応条件下で、被覆核酸鎖に対する増幅産物と核酸プローブとの競合、それによる核酸プローブからの被覆核酸鎖の脱離、および被覆核酸鎖の第1の配列結合領域と増幅産物の第1の配列とのハイブリダイズを介した結合が得られる配列である。
(b)等温増幅反応条件下で、核酸プローブと被覆核酸との結合が維持された状態で、被覆核酸鎖の第1の配列結合領域と増幅産物の第1の配列とのハイブリダイズを介した結合、および増幅産物を鋳型とした被覆核酸鎖の伸長が得られる配列である。
例えば、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(a)の配列であるとき、核酸プローブおよび被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、例えば、等温増幅反応条件下で、ハイブリダイズによる核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が、反応場に前記標的核酸が存在しない場合には維持され、反応場に標的核酸が存在する場合には、標的核酸と核酸プローブとが被覆核酸鎖に対して競合することにより解消するような範囲にある。
また例えば、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(b)の配列であるとき、核酸プローブおよび被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、例えば、等温増幅反応条件下で、ハイブリダイズによる核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が、反応場において標的核酸が存在する場合および不在の場合に拘わらず、共に維持されるような範囲にある。
また、標的核酸についての検出結果は、コントロールプローブからの信号と比較することにより得てもよい。その場合、図1(b)に示すように上記の(A)および(B)に加えて、以下の(D)、(E)および(F)の工程を含む方法が提供され得る。
(D)では、コントロールプローブおよび標識物質を含む反応液により形成されている反応場を等温増幅反応条件下に置く。
(E)では、等温増幅反応条件下で、コントロールプローブからの信号をモニタリングまたは2つ以上の時点で検出する。
(F)では、(B)で得られた試料についての信号と、(E)で得られたコントロールプローブからの信号とを比較することにより、標的核酸についての検出結果を得る。
このような方法は、例えば、以下のようなアッセイキットおよびプローブ固定基体を用いて行われ得る。
2−2.アッセイキット
実施形態に従うと、アッセイキットが提供され得る。標的核酸を検出するためのアッセイキットの1例は、標的核酸を増幅するためのプライマーセットと、そこにおいて等温増幅反応を行い、それにより生じた増幅産物を検出するためのプローブ固定基体と、検出可能な電気化学的信号を生ずる標識物質と、任意に反応試薬とを含む。
プローブ固定基体の1例は、等温増幅反応を行うための反応場を支持する基体、反応場が形成された際に反応場に接する基体の少なくとも1つの面に配置されたプローブ固定領域、プローブ固定領域に固定された第2の配列を含む核酸鎖を含む核酸プローブ、および第1の配列に相補的な第1の配列結合領域と、第2の配列に相補的な第2の配列結合領域とを含み、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列とのハイブリダイズによって核酸プローブに結合している被覆核酸鎖を含む。
標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害され得る。標識物質は、プローブ固定基体と別体でアッセイキットに含まれてもよく、或いは、核酸プローブが固定されている基体の少なくとも1面の核酸プローブに対応する位置に、間接的若しくは遊離可能に直接に、固定されている。
更なる例としてのプローブ固定基体は、プライマーセットを用いて、第1の配列番号および/またはその相補配列を増幅し、増幅産物を得るための等温増幅反応を行う反応場を支持する基体、反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に配置されたプローブ固定領域、プローブ固定領域に固定された第2の配列を含む核酸鎖を含む核酸プローブ、第1の配列に相補的な第1の配列結合領域と第2の配列に相補的な第2の配列結合領域とを含み、第2の配列結合領域での第2の配列とのハイブリダイズによって核酸プローブに結合している被覆核酸鎖、基体の面の核酸プローブに対応する位置に、間接的または遊離可能に直接に、固定されている検出可能な信号を生ずる標識物質を備える。
2−3.プローブ固定基体
実施形態に従うと、例えば、次のようなプローブ固定基体が提供される。
基体は、第1〜第nのプライマーセットを用いる等温増幅反応が、第1〜第nの標的核酸をそれぞれ鋳型として、互いに異なる配列の第1〜第1の配列をそれぞれ含む第1〜第nの増幅産物を生成する反応場を支持するものであり得る。
プローブ固定領域として、反応場が形成された際に反応場に接する基体の少なくとも1つの面に独立して配置された第1〜第nのプローブ固定領域を含み得る。
核酸プローブとして、第1〜第nのプローブ固定領域のそれぞれにそれぞれ固定された第2〜第2の配列をそれぞれ含む第1〜第nの核酸鎖をそれぞれ含む核酸プローブ群を含み得る。
被覆核酸として、第1〜第1の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第1〜第1の配列結合領域と、第2〜第2の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第2〜第2の配列結合領域とをそれぞれ含み、第2〜2の配列結合領域それぞれでの第2〜2の配列それぞれとのハイブリダイズによって第1〜第nの核酸プローブそれぞれに対して結合している第1〜第nの被覆核酸鎖を含み得る。
第1〜第nの核酸プローブおよび第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、次の(a)または(b)の条件を満たす。
(a)形成された反応場での等温増幅反応条件下で、第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれに対応する第1〜第nの増幅産物と1〜第nの核酸プローブ配列とのそれぞれの競合、それらによる第1〜第nの核酸プローブそれぞれからの第1〜第nの被覆核酸鎖の脱離、および第1〜第nの被覆核酸鎖の第1〜1の配列結合領域と第1〜第nの増幅産物の第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合が得られる配列である。
(b)形成された反応場での等温増幅反応条件下で、第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれの第1〜1の配列結合領域と第1〜第nの増幅産物の第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合、および第1〜第nの増幅産物のそれぞれを鋳型とした第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの伸長が得られる配列である。
以上のような第1の実施形態に従うと、核酸を簡便かつ高感度に検出できる。
3.第2の実施形態
核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が、上記(a)の配列である場合の標的核酸検出法の1例を第2の実施形態として以下において更に詳しく説明する。
第2の実施形態の標的核酸検出法は、第1の配列および/またはその相補配列を含む標的核酸を検出する方法である。第1の配列は、任意の配列であればよい。当該方法は、等温増幅反応と、核酸プローブからの信号を指標とする増幅産物の検出を同じ反応場で同じ反応条件下で並行して行う。
等温増幅に使用するプライマーセットは、標的核酸に含まれる第1の配列を増幅するためのプライマーセットであればよい。また、プライマーセットは、反応場において得られる増幅産物の1本鎖部分に第1の配列を含むように設計されることが好ましい。例えば、LAPM法を利用する場合、LAMP増幅産物は、1本鎖領域であるループ部分と、2本鎖領域であるステム部分とを有するステムループ構造を有する。この場合、ループ部分に第1の配列が含まれるように設計され得る。
核酸プローブは、固相に固定されている核酸鎖と、それに結合している検出可能な信号を生ずる標識物質とを含む。核酸鎖は、第1の配列とは異なる第2の配列を含む。このような核酸プローブは、検出方法を行う以前の初期状態において、被覆核酸鎖とハイブリダイズしている。
被覆核酸鎖は、2つの配列領域を含む核酸である。1つめの領域は、第2の配列結合領域である。この領域は、核酸プローブに含まれる第2の配列に相補的な配列を有する。この領域と核酸プローブの第2の配列とのハイブリダイズによって、被覆核酸鎖は、核酸プローブに結合している。被覆核酸鎖が核酸プローブに結合していることにより、核酸プローブ中の標識物質の信号の検出が阻害されている。本実施形態において、標識物質の信号の検出の阻害とは、標識物質が本来的に生ずる信号を検出できない状態、または被覆核酸鎖が核酸プローブに結合していないときに検出されるべき信号が検出できない状態に修飾するなど、検出が阻害される、または検出可能性が阻害されることをいう。例えば、標識物質を有する核酸プローブが独立して1本鎖で存在するときには検出される信号が、核酸プローブへの被覆核酸鎖の結合によって、減弱若しくは消失または検出不可能な信号に変更若しくは変調するなどをいう。このような標識物質の信号の検出の阻害は可逆的である。核酸プローブへの被覆核酸の結合の解消、即ち、被覆核酸が核酸プローブから脱離すると、本来的に標識物質の生じる信号が検出できる状態になる。
被覆核酸鎖が含む2つめの領域は、第1の配列結合領域である。この領域は、増幅産物に含まれる第1の配列に相補的な配列を有する。この第1の配列結合領域には、増幅産物中の第1の配列がハイブリダイズする。
被覆核酸鎖が、上記のような2つの領域、即ち、核酸プローブが結合するための領域と増幅産物が結合するための領域とを有することにより、被覆核酸鎖についての核酸プローブと増幅産物との間での競合反応を得ることが可能となる。競合反応を利用することによって、増幅産物の存在量に応じて、被覆核酸鎖は核酸プローブから脱離する。そして被覆核酸鎖の第1の配列結合領域の配列が、増幅産物中の第1の配列とハイブリダイズする。それにより被覆核酸鎖は増幅産物と結合する。
標的核酸検出法では、このような被覆核酸鎖の結合によって信号の検出または検出可能性がマスクされている核酸プローブが存在している反応場において、等温増幅反応を行う。それと同時に等温増幅反応により生じた増幅産物と核酸プローブとの競合反応を行わせる。同時に核酸プローブからの被覆核酸鎖の脱離により生じた標識物質からの信号を検出する。信号の検出は、連続してモニタリングしてもよく、或いは断続的に複数の時点で検出を行ってもよい。
核酸プローブおよび被覆核酸鎖は、前記等温増幅反応条件下で次の2つの条件を満たす;
(i)ハイブリダイズを介する核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が、反応場に第1の配列を含む核酸が存在しない場合には維持される;
(ii)反応場に前記第1の配列を含む核酸が存在する場合、この核酸と核酸プローブとが被覆核酸鎖に対して競合し、核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が解消する。
このような条件は、Tm値を考慮し、核酸プローブおよび被覆核酸鎖の塩基配列および塩基長を設計することにより満たすことができる。プライマーセットの反応場への持ち込みは、核酸プローブが固定されている固相に対するプライマーセットの添加であってもよく、それによる増幅産物が核酸プローブと遭遇できるように固相に対して遊離可能に固定されていてもよい。
このような標的核酸検出法は、より簡便かつ高感度に核酸を検出することが可能である。また、当該方法により、定量的に標的核酸を検出することが可能である。当該方法は、核酸プローブ固定基体を用いて行われ得る。
3−1.核酸プローブ固定基体
核酸プローブ固定基体の例を、図2を参照しながら説明する。この核酸プローブ固定基体は、試料中の標的核酸を等温で増幅し、且つ当該増幅により得られた増幅産物を検出することによって試料中の標的核酸を検出する反応具の例である。
図2(a)は、核酸プローブ固定基体の1例の初期状態を示す。図2(b)は、増幅産物の1例を模式的に示す。図2(c)は、更なる核酸プローブ固定基体の初期状態を示す。図2(d)および(e)は、図2(c)の核酸プローブ固定基体の使用時の状態を示す模式図である。
図2(a)に示すように、核酸プローブ固定基体1は、基体2と核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とを備える。核酸プローブ3は、基体2に固定されている核酸鎖3aと、核酸鎖3aに結合している標識物質とを備える。このような核酸プローブ固定基体1により検出されるべき標的核酸からの増幅産物の1例を図2(b)に示す。増幅産物6は、1本鎖領域に第1の配列8を有する。一方、核酸プローブ3の核酸鎖3aは、第2の配列7を有する。図2(a)に示す被覆核酸鎖5は、核酸鎖3aの配列、即ち、第2の配列7の相補配列であると共に、第1の配列8の相補配列である。言い換えれば、この被覆核酸鎖5では、第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’とが完全に重なって配置されており、第1の配列結合領域8’の配列と第2の配列結合領域7’の配列は等しい。
図2(c)には、核酸プローブ固定基体1の更なる例を示す。この例は、核酸プローブ3および被覆核酸鎖5の配列の構成を除いて図2(a)の核酸プローブ固定基体1と同じ構成である。この例では、被覆核酸鎖5は、1本の核酸鎖上で更なる核酸10を介して隣り合っている第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’とを有する。このような核酸プローブ固定基体1において増幅産物6が、被覆核酸鎖5で覆われた核酸プローブ3に接近する(図2(d))と、被覆核酸鎖5を結合対象として、即ち、被覆核酸鎖5に対して、核酸プローブ3と増幅産物6とが競合する。ここで、図2(b)には、1本鎖領域であるループ部分と、2本鎖領域を含むステム部分とを有するステムループ構造を有する増幅産物の1例を増幅産物6として示す。それによって被覆核酸鎖5と核酸プローブ3との間の結合は不安定になり、被覆核酸鎖5に増幅産物6が結合する。この結合は、被覆核酸鎖5の第1の配列結合領域への第1の配列のハイブリダイズによる。被覆核酸鎖5が脱離した結果、核酸プローブ3が含む標識物質4の信号が検出可能となる。この標識物質からの検出可能な信号を指標にして、試料中の標的核酸を測定することが可能となる。
核酸プローブ3への標識物質4の結合は、核酸プローブ3における何れの位置でもよい。また、核酸プローブ3の基体2への固定は、核酸鎖3aの3’末端または5’末端の何れであってもよい。標識物質4の結合は、核酸鎖3aの基体2への結合部付近であってもよく、核酸鎖3aの非結合末端またはその付近であってもよく、核酸鎖3aの中央部またはその付近であってもよい。標識物質4の核酸鎖3aへの結合方法は、標識物質の種類に応じて選択されればよく、核酸と標識物質とを結合するための何れの方法が選択されてもよい。
ここで、基体2は液相の反応場を支持するように構成されている。核酸プローブ3は、液相により反応場が形成された際に反応場に接する基体2の少なくとも1つの面に、一方の末端で固定されている。なお、図中、ここでは図2(a)〜(e)では、相補的な配列同士を同様の斜線で示している。図2(a)の被覆核酸鎖5は、第1の配列8と第2の配列7の双方に相補的であることをクロスで示している。
ここにおいて、「反応場」とは、理論上、そこにおいて増幅反応の進行が可能な反応液により規定される領域、即ち、反応液が存在する領域をいう。また、反応場のうち、実際にそこにおいて増幅反応が開始され進行する領域を「反応領域」という。仮に実際に増幅反応が領域内のみで進行する場合には、反応領域が反応場と解される。
基体2は、容器形状、板状、球状、棒状およびそれらの一部分からなる形状であってよい。基体2の大きさおよび形状は実施者が任意に選択すればよい。また、基体2として、流路を有する基板を用いてもよい。
核酸プローブ3は、そこに含まれる核酸鎖3aを形成した後に、そこに標識物質4を結合させた後に、基体2へ固定されてもよく、基体上に核酸プローブ3を形成し、そこに標識物質4を結合させてもよい。核酸プローブ3への被覆核酸鎖5の結合は、核酸プローブ3の基体2への固定の前に行ってもよく、固定の後に行ってもよい。
核酸プローブ3の基体2への固定は、これらに限定されるものではないが、例えば、メルカプト基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基およびビオチンなど末端修飾基を介して行ってよい。これらの官能基の選択および核酸プローブ3の固定は、それ自身公知の手段により達成することが可能である。
核酸プローブ3の長さは、例えば、3塩基〜10塩基、10塩基〜20塩基、20塩基〜30塩基、30塩基〜40塩基、40塩基〜50塩基、50塩基〜60塩基、好ましくは10塩基〜50塩基であってよい。
被覆核酸鎖5は、第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’とを含む。第1の配列結合領域8’は、増幅産物6の少なくとも一部分の配列に相補的な配列を含んでよい。第2の配列結合領域7’は、核酸プローブ3の少なくとも一部分の配列に相補的な配列を含んでよい。
図2(c)に示すように、核酸プローブ3は、第2の配列7に加えて更なる配列を含んでもよい。また、被覆核酸鎖5は、第1の配列結合領域8’(増幅産物6の第1の配列8の相補配列)および第2の配列結合領域7’(核酸プローブ3の第2の配列7の相補配列)に加えて更なる配列、例えば、スペーサ配列などを含んでいてもよい。
被覆核酸鎖5は、第2の配列7を介して核酸プローブ3とハイブリダイズすることにより、標識物質4が発する信号に影響を与えている。被覆核酸鎖5と核酸プローブ3との間のハイブリダイズは、被覆核酸鎖5に対して増幅産物6と核酸プローブ3とが競合し、被覆核酸鎖5が核酸プローブ3から脱離し、被覆核酸鎖5が増幅産物6と結合することによって解消する(図2(e))。ここで、核酸プローブ3からの被覆核酸鎖5の解離と、被覆核酸鎖5および増幅産物6の結合とは、どちらかが先に生じ得る、或いは当該解離と当該結合とが同時に生じ得る。
図2(a)〜(d)および(a’)〜(d’)に更なる例を示した。これらの例は、被覆核酸鎖5の第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’の配置を除いて図2(c)の核酸プローブ固定基体1と同じ構成である。
被覆核酸鎖5は、第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’との間に更なる塩基を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。図3(a)および(a’)は、被覆核酸鎖5が第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’との間に更なる塩基を含まずに、これらが隣り合って配置されている例を示す。また第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’は、部分的に互いに重なり合って配置されてもよい(例えば、図3(b)および(b’))。また第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’は、一方の領域の一部分または全体が、他方の領域に含まれていてもよい(例えば、図3(b)、(b’)、(c)および(c’))。一方の領域の全体が他方の領域に含まれる場合の例を図3(c)および(c’)に示す。或いは、第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’が、完全に重なり合い、1つの配列を共有していてもよい(例えば、図2(a)、図3(d)および(d’))。また被覆核酸鎖5は、第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’のみを含んでいてもよく(例えば、図2(a))、それらの3’端側および5’端側に更なる塩基または塩基配列を含んでもよい(例えば、図2(d)、図3(a)〜(d)および(a’)〜(d’))。
被覆核酸鎖5は、図2(c)および図3(a)に示すように、第1の配列結合領域8’と第2の配列結合領域7’とが互いに重ならずに独立して配置されていることがより好ましい。この場合、第1の配列結合領域8’は増幅産物6とのハイブリダイズのために使用され、第2の配列結合領域7’は核酸プローブ3とのハイブリダイズのために使用される。これにより、核酸プローブ3の配列7(即ち、第2の配列)またはその相補鎖である被覆核酸鎖5の第2の配列結合領域7’の配列と、増幅産物6の配列(即ち、第1の配列)とを同じ配列にする必要がなくなる。その結果、核酸プローブ3および被覆核酸鎖5の設計の自由度が大きくなり、設計が簡便になる。例えば、後述するように複数の核酸プローブを1つの核酸プローブ固定基体において用いるときにはより有利である。
被覆核酸鎖5の長さは、例えば、3塩基〜10塩基、10塩基〜20塩基、20塩基〜30塩基、30塩基〜40塩基、40塩基〜50塩基、50塩基〜60塩基、60塩基〜70塩基、70塩基〜80塩基、80塩基〜90塩基、90塩基〜100塩基、好ましくは10塩基〜50塩基であってよい。
第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’の塩基長は同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、第1の配列結合領域8’と増幅産物6中の第1の配列との間の親和性(第1の親和性)と、第2の配列結合領域7’と核酸プローブ3との間の親和性(第2の親和性)は、第1の親和性の方が、第2の親和性よりも強く、結合の後により安定して存在することが好ましい。
第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’の塩基長は、それぞれ独立して例えば、3塩基〜10塩基、10塩基〜20塩基、20塩基〜30塩基、30塩基〜40塩基、40塩基〜50塩基、50塩基〜60塩基、好ましくは10塩基〜50塩基であってよい。また、第1の配列結合領域8’および第2の配列結合領域7’の塩基長は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
標的配列の長さは、例えば、10塩基〜100塩基、100塩基〜200塩基、塩基200〜300塩基、300塩基〜400塩基、好ましくは100塩基〜300塩基であってよい。また、標的核酸の長さは、使用するプライマーセットにより規定され得る。
増幅産物中の第1の配列の長さは、例えば、例えば、3塩基〜10塩基、10塩基〜20塩基、20塩基〜30塩基、30塩基〜40塩基、40塩基〜50塩基、50塩基〜60塩基、好ましくは10塩基〜50塩基であってよい。
反応場への等温増幅に使用するプライマーセットの持ち込みは、反応液などの液体中に混合し、その液体を基体の核酸プローブが固定されている面に添加することにより行ってもよい。或いは、反応液などの液体中にプライマーセットを混合し、得られた混合液中に核酸プライマー固定基体を浸漬してもよい。また、詳しくは後述するが、プライマーセットは、核酸プライマーの固定されている基体表面に接する反応場に接する基体表面に遊離可能に固定されていてもよい。
反応液は、所望の増幅反応に必要な成分を含めばよい。これらに限定するものではないが、例えば、ポリメラーゼなどの酵素、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、逆転写を同時に行う場合には、逆転写酵素およびそれに必要な基質など、更に、適切な増幅環境を維持するための塩類などの緩衝剤が反応液に含まれてもよい。
反応液は、例えば、プライマーセット、更なる増幅試薬、例えば、増幅酵素、dNTP、緩衝剤などを水中に含む液体であってもよい。検査されるべき試料は、反応液に含まれて反応場に持ち込まれてもよく、反応液を反応場に持ち込んだ後に、その反応場に持ち込まれてもよい。
等温増幅反応条件、例えば、反応場の温度および塩濃度などは、そこにおいて使用される増幅酵素の種類の選択によって定まる。また、核酸プローブ固定基体1において使用される核酸プローブ3および被覆核酸鎖5の長さおよび塩基配列は、選択された増幅酵素の種類、等温増幅反応条件、例えば、温度および塩濃度などに応じて設計すればよい。核酸プローブおよび被覆核酸鎖は、等温増幅反応条件下で、次の2つの条件を満たす;
(i)ハイブリダイズを介する核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が、反応場に第1の配列を含む核酸が存在しない場合には維持される;
(ii)反応場に第1の配列を含む核酸が存在する場合、この核酸と核酸プローブとが被覆核酸鎖に対して競合し、核酸プローブと被覆核酸鎖との結合が解消する。
例えば、核酸プローブ3および被覆核酸鎖5は、反応場の塩濃度および増幅反応時の温度においてもハイブリダイズを維持するように、Tm値および配列の長さが設計される。
核酸プローブ3および被覆核酸鎖5を設計する、並びに等温増幅反応条件を決定する際の基準は、核酸プローブ、被覆核酸鎖および増幅反応物の塩基配列長さ、並びに等温増幅反応条件、例えば、温度および塩濃度の何れかを最初に設定し、上記の2つの条件を満たすように他の条件を設定すればよい。
反応場の塩濃度は、増幅反応が可能である範囲であればよく、例えば、10mM〜120mMの範囲であってもよく、10mM〜60mMの範囲がより好ましい。増幅反応時の反応場の温度は、増幅反応が可能な範囲であればよく、例えば、25℃〜70℃の範囲であってもよく、例えば、55℃〜65℃の範囲であってもよい。
例えば、等温増幅反応条件として、反応場の温度条件が25℃〜60℃であり、ハイブリダイズによる核酸プローブと被覆核酸鎖とを含む2本鎖核酸のTm値が60℃以上となるように、核酸プローブおよび被覆核酸鎖の塩基長および塩基配列が調整されていることも好ましい。
例えば、第1の配列結合領域8’、第2の配列結合領域7’、第1の配列および第2の配列の塩基長は、全てが互いに同じ塩基長であってもよく、全てが互いに異なる塩基長であってもよい。また、第1の配列と第1の配列結合領域との塩基長が等しくてもよく異なってもよい。および/または第2の配列と第2の配列結合領域との塩基長が等しくても異なっていてもよい。更に、第1の配列と第2の配列とが同じ塩基長であってもよく、異なった塩基長であってもよい。第1の配列結合領域8’、第2の配列結合領域7’、第1の配列および第2の配列の塩基長は、それぞれ等温増幅反応条件下でのTm値に応じて選択されればよい。
核酸プローブ3および被覆核酸鎖5の塩基長は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、図2(c)、図3(a)〜(d)に示すように、核酸プローブ3および被覆核酸鎖5の一方が他方よりも長くてもよい。この場合では、核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とがハイブリダイズして2本鎖を形成すると、一方の5’側または3’側が、他方の3’側または5’側に一本鎖として延出している。
反応液中に検出されるべき第1の配列を有する核酸、即ち、標的核酸が存在した場合には、反応場に存在するプライマーセットは、等温増幅条件下で標的核酸を増幅する。これにより増幅産物6が産生される。
当該プライマーの長さは、これに制限されるものではないが、約5塩基以上、約6塩基以上、約7塩基以上、約8塩基以上、約9塩基以上、約10塩基以上、約15塩基以上、約20塩基以上、約25塩基以上、約30塩基以上、約35塩基以上、約40塩基以上、約45塩基以上または約55塩基以上であってよく、約80塩基以下、約75塩基以下、約70塩基以下、約65塩基以下、約60塩基以下、約55塩基以下、約50塩基以下、約45塩基以下、約40塩基以下、約35塩基以下、約30塩基以下、約25塩基以下または約20塩基以下であってもよく、これらの下限および上限の何れかを組み合わせた範囲であってもよい。例えば、好ましい塩基長の例は、約10塩基〜約60塩基、約13塩基〜40塩基、約10塩基〜30塩基などであってもよい。
標的核酸中の第1の配列は、プライマーセットに含まれる各プライマーの配列と同じであってもよく、一部が同じであってもよく、一部または全長に亘って異なっていてもよい。好ましいプライマーセットにおいて、そこに含まれる全てのプライマーが第1の配列とは異なる配列を有する。
図4(a)、(b)および(c)に、標識物質24として電気化学的活性な物質を備える核酸プローブ固定基体の1例の模式図を示す。この例は、標識物質24が電気化学的活性な物質であり、それが生ずる信号を検出するためのセンサを備えること以外は、図2(c)と同じ構成である。
この例では、図4(a)に示すように、核酸プローブ固定基体1は、電気化学的に活性な物質である標識物質24が発する信号を検出するために基体2に配置されたセンサ、例えば、電極および配線などを含むセンサを備える(図示せず)。そして核酸プローブ3は電極に固定されている。核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とを含む2本鎖は、核酸プローブ3と競合する増幅産物6の存在に応じて(図4(b))、被覆核酸鎖5が脱離した結果、核酸プローブ3からなる1本鎖となる(図4(c))。この1本鎖は、基体2に固定された核酸プローブ3である。電気化学的に活性な物質からの信号、例えば、電流値(I)は、対応する増幅産物が存在せず、核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とが結合して2本鎖を形成しているときの電流値(I)よりも、増幅産物の存在によって1本鎖になったときの電流値(I)の方が大きい。等温増幅反応の開始から所望の時間に亘りモニタリングする、または所望の時間間隔で複数の時点で測定すると、増幅産物が存在する場合には、増幅産物が存在しない場合に比べて大きな電流値が得られ得る。或いは、より早い時点で電流値の増加の立ち上がりが観察され得る。即ち、核酸プローブ3が1本鎖のときの信号の大きさと2本鎖のときの信号の大きさとの間には、増幅産物の有無および量を判定するために必要な差がある。このような信号特性の違いから、当該核酸プローブ固定基体1は、試料中の標的核酸を簡便かつ高感度に検出できる。当該核酸プローブ固定基体1は、反応場に存在する増幅産物を定量的に検出することが可能である。従って、当該核酸プローブ固定基体1は、試料中の増幅産物の量を決定することが可能である。
電気化学的に活性な物質からの信号は、例えば、電流値、電位値、電気容量値、インピーダンス値などの何れかの電気的な指標であればよい。核酸プローブからの被覆核酸鎖5の脱離に伴う当該信号の量的変化および/または予め定めた電気的特性の変化を測定することによって、標的核酸の有無または存在量を決定することが可能となる。信号の量的変化または電気的特性の変化は、例えば、信号の大きさの変化、例えば、信号の減少または消失であってもよく、これらの大きさの変化が生じるまでの時間の長さ、大きさの変化の開始時点のシフトなどであってよく、特定時間内での積算値の変化などであってもよい。
核酸プローブからの電気信号は、核酸プローブが固定される基板から獲得され得る。その場合、例えば、少なくとも一部の基板表面に電極が配置されればよい。その場合、核酸プローブは、電極上に固定され得る。
電気化学的に活性な物質としては、これらに限定するものではないが、例えば、電気的化学的に活性な金属錯体、鉄錯体、ルテニウム錯体、ルビジウム錯体、アントラキノン(Anthraquinone)、メチレンブルー(Methylene Blue)などを用いることができる。例えば、フェロセンを含む化合物を用いることは好ましい。電気化学的に活性な物質を標識物質4として使用する場合、標識物質4はセンサのより近くに配置される方が、センサから遠くにあるよりも、より好ましい。標識物質4のセンサからの距離は、例えば、50塩基程度のときであっても、電気化学的な信号を好ましく検出可能である。標識物質4のセンサからの距離は、これらに限定するものではないが、例えば、60塩基以下、55塩基以下、50塩基以下、40塩基以下、30塩基以下、20塩基以下、10塩基以下であってもよい。標識物質4は、核酸プローブに含まれる核酸鎖中に配置されてもよく、核酸鎖の基板から近い末端若しくは遠い末端に付与されてもよく、核酸プローブの核酸鎖と基体とを結合するための末端修飾基と当該核酸鎖との間に配置されてもよい。更に、標識物質4は1つの核酸プローブ中に複数で含まれてもよく、単数で含まれてもよい。複数で含まれる場合、それらは同じ種類であっても、異なる種類であってもよい。
また、標識物質として光学的に活性な物質を用いてもよい。図4(d)、(e)および(f)に、標識物質として光学的に活性な物質を備える核酸プローブ固定基体の1例の模式図を示す。この例は、標識物質として光学的に活性な物質を用い、更に被覆核酸鎖5が、クエンチャー9を備えること以外は、図2(c)および図4(a)〜(c)と同じ構成である。クエンチャー9は、光学的に活性な物質からの光学的信号をより効果的に検出に利用するために用いられる。
図4(a)に示すように、使用前または増幅産物が存在しないときの核酸プローブ固定基体1は、基体2と、それに結合している核酸プローブ3と、核酸プローブ3にハイブリダイズしている被覆核酸鎖5とを備える。核酸プローブ3は、基体2に対してその一端で固定されている核酸鎖3aと、その他方の末端に光学的に活性な物質である標識物質34とを備える。被覆核酸鎖5は、核酸鎖3aの一部分の配列7(第2の配列7)に相補的な配列(第2の配列結合領域7’の配列)と増幅産物6の一部分の配列8(第1の配列8)に相補的な配列(第1の配列結合領域8’の配列)と、第2の配列結合領域7’と第1の配列結合領域8’との間に配置されたクエンチャー9とを含む。
核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とを含む2本鎖は、核酸プローブ3と競合する増幅産物6の存在下では(図4(e))、被覆核酸鎖5が脱離し、その結果、核酸プローブ3からなる1本鎖となる(図4(f))。核酸プローブ3に含まれる光学的に活性な物質からの信号は、被覆核酸鎖5の結合によって検出が阻害される。この例では、この阻害を増強するために被覆核酸鎖5が更にクエンチャー9を含んでいる。
光学的に活性な物質からの信号、例えば、蛍光値(F)は、対応する増幅産物が存在せず、核酸プローブ3に被覆核酸鎖5が結合して2本鎖を形成しているときの蛍光値(F)よりも、増幅産物の存在によって1本鎖になったときの蛍光値(F)の方が大きい。等温増幅反応の開始から所望の時間に亘りモニタリングする、または所望の時間間隔で複数の時点で測定すると、増幅産物が存在する場合には、増幅産物が存在しない場合に比べて大きな蛍光値が得られる。それと共に、早い時点で蛍光値の増加の立ち上がりが観察される。即ち、核酸プローブ3が1本鎖のときの信号特性と2本鎖のときの信号特性との間には、増幅産物の有無および量を判定するために必要な差がある。このような信号特性の違いにより、当該核酸プローブ固定基体1は、試料中の標的核酸を簡便かつ高感度に検出できる。当該核酸プローブ固定基体1は、反応場に存在する増幅産物を定量的に検出することが可能である。従って、当該核酸プローブ固定基体1は、試料中の増幅産物の量を決定することが可能である。
光学的に活性な物質からの信号は、何れかの光学的な指標であればよく、例えば、特定の波長を有する光、例えば、蛍光、発光などであってよい。核酸プローブ3からの被覆核酸鎖5の脱離に伴う当該信号の量的および/または予め定めた光学的特性の変化を測定することによって、標的核酸の有無または存在量を決定することが可能となる。信号の量的または光学的特性の変化は、例えば、光強度の変化、光強度の増加、減弱若しくは消失、波長の変化などであってもよく、光強度の大きさまたは波長の変化が生じるまでの時間の長さ、当該変化の開始時点のシフトなどであってよく、また特定時間内での積算値の変化であってもよい。
標識物質として使用される蛍光物質の例は、これらに限定するものではないが、例えば、Alexa flour、BODIPY、Cy3、Cy5、FAM、Fluorescein、HEX、JOE、Marina Blue(商標)、Oregon Green、Pacific Blue(商標)、Rhodamine、Rhodol Green、ROX、TEMRA、TETおよびTexas Red(登録商標)などを含む。
例えば、被覆核酸鎖5に含まれるクエンチャーの例は、例えば、BHQ−1、BHQ−2およびDabcylなどを含む。また、例えば、標識物質4としてCy3またはCy5が選択される場合には、クエンチャーとして例えば、EuキレートまたはUlightを用い得る。
上述の例では、被覆核酸鎖5がクエンチャー9を含んでいる例を示した。クエンチャー9が被覆核酸鎖5に含まれることにより、核酸プローブ3に被覆核酸鎖5のみが結合している場合に比べて、光学的に活性な物質からの信号の発生は更に抑制される。即ち、核酸プローブ3と被覆核酸鎖5とが結合して2本鎖を形成している状態の信号値と、2本鎖から被覆核酸鎖5が脱離した状態の信号値との差が大きくなる。言い換えれば、増幅産物6が存在するときの信号値と、増幅産物6が存在しないときの信号値の差が大きくなる。これにより、更により高精度に標的核酸の検出を行うことが可能となる。
当該核酸プローブ固定基体は、上述したクエンチャーのように、被覆核酸鎖5による信号検出の阻害効果を増強または補助する修飾物質が被覆核酸鎖5に含まれてもよい。そのような修飾物質は、被覆核酸鎖5の核酸プローブへの結合によって阻害される標識物質の本来的な信号の検出の阻害を促進または補助する物質であればよい。例えば、そのような修飾物質は、被覆核酸鎖5の結合による標識物質4からの信号のマスキング、減少若しくは消失を増強する物質および/または標識物質4の信号特性を検出不可能な方向に変更若しくは修飾する物質などであればよい。例えば、電気化学的に活性な物質を標識物質として用いる場合には、被覆核酸鎖5による電気信号の減少または消失を増強または補助する物質であってもよい。例えば、光学的に活性な物質を標識物質として用いる場合には、被覆核酸鎖5による本来的に生じる光学信号を減少および/または光学的信号の波長を変更する物質などであってもよい。言い換えれば、被覆核酸鎖5は、それ単独で用いられる場合よりも、修飾物質と共に用いられる方が、増幅産物の存在量若しくは不在に応じた、標識物質の信号特性の変化量を大きくできる。従って、修飾物質の使用によって、より高い精度で増幅産物6の存在状態を示すことが可能となる。
上述したように、プライマーセットが基体に遊離可能に固定され、液体が持ち込まれて反応場が形成されたときに、反応場に遊離してもよい。この反応場への遊離により、プライマーセットが反応場に持ち込まれる。
このような固定されたプライマーセットを備える核酸プローブ固定基体は、反応場が形成された際に当該反応場に接する基体の少なくとも1つの面に配置されたプライマー固定領域と、このプライマー固定領域に遊離可能に固定されているプライマーセットとを更に備え得る。プライマー固定領域は、対応する核酸プローブが存在する反応場に接する基体の少なくとも1つの面に配置されてもよい。
また、核酸プローブ固定基体は、1つの基体に固定された複数種類の核酸プローブを備えてもよい。1つの核酸プローブ固定基体において、核酸プローブ3および/または被覆核酸鎖5を複数種類用いる場合には、反応場が形成された際に、当該反応場に接する基体2の少なくとも1つの面に、互いに独立して配置された複数のプローブ固定領域13を配置することが好ましい。
図5(a)および(c)は、更なる実施形態の核酸プローブ固定基体の例の斜視図である。
図5(a)に記載の核酸プローブ固定基体1は、容器形状の基体2を有する。基体2の内側の底部14、例えば、底面には、互いに独立した複数のプローブ固定領域13を備える。プローブ固定領域13には、標識物質4と核酸鎖とを備え、且つ被覆核酸鎖5が結合している2本鎖の核酸プローブ3が複数固定されている。図5(b)は、図5(a)の核酸プローブ固定基体1のプローブ固定領域13の様子を示す。
容器形状の基体2は、例えば、チューブ、ウェル、チャンバー、流路、カップおよびディッシュ並びにそれらを複数個備えたプレート、例えば、マルチウェルプレートなどであってよい。また基体2の材質は、それ自身反応に関与しない材質であればよく、そこにおいて増幅反応を行うことが可能な材質であればよい。例えば、シリコン、ガラス、樹脂および金属などから任意に選択されてよい。また、容器形態の基体2は、商業的に入手可能な何れの容器を利用してもよい。
1つの基体2に配置される複数のプローブ固定領域13に固定される核酸プローブ3は、全ての領域に亘り互いに同じ種類の核酸プローブ3であってもよく、任意の複数の領域が互いに同じ種類の核酸プローブ3であってもよく、全ての領域が互いに異なった種類の核酸プローブ3であってもよい。また、核酸プローブ3に結合している被覆核酸鎖5は、全ての領域の核酸プローブ3に亘り同じであってもよく、任意の複数の領域が互いに同じであってもよく、核酸プローブ3の種類毎に異なっていてもよく、全ての領域が互いに異なる被覆核酸鎖5を割り振られてもよい。また、1つの核酸プローブ固定基体1に含まれる被覆核酸鎖5を有する核酸プローブ3は、1種類の増幅産物を検出するための核酸プローブであってもよく、異なる種類の複数の増幅産物を検出するための核酸プローブであってもよい。互いに同じ種類の核酸プローブは、同じ塩基長を有し、且つ同じ塩基配列を有する。互いに異なる種類の2つの核酸プローブは、互いに同じ塩基長で異なる配列を有してもよく、互いに異なる塩基長で一部分同じ配列を有してもよく、互いに異なる塩基長で異なる配列を有してもよい。
例えば、被覆核酸鎖5の第1の配列結合領域8’の配列は、増幅産物6に含まれる第1の配列8の種類毎に異なっていてもよい。或いはそれは、1つの核酸プローブ固定基体において検出されるべき互いに異なる複数種類の増幅産物のために、共通する第1の配列結合領域8’が選択されてもよい。またそれは、検出されるべき複数種類の増幅産物のうちの幾つかのために、共通する第1の配列結合領域8’が選択されてもよい。また更に、用いられる複数種類の被覆核酸鎖5の配列が正規直交化配列であってもよい。被覆核酸鎖5の第2の配列結合領域7’の配列についても、核酸プローブとの関係および配列が同様に選択されてもよい。
正規直交化配列とは特定の関係性を有する配列群を指す。それらの配列は、Tm値が均一、即ちTm値が一定範囲内に揃うように設計された互いに異なる配列である。それらは、核酸分子自身が分子内で構造化しないので、相補的な配列とのハイブリダイズを阻害することがない。またそれらは相補的な塩基配列以外の配列とは安定したハイブリダイズを形成しない配列である。このような正規直交化配列の使用も好ましい。
例えば、隣り合うプローブ固定領域13の間の距離は、0.1μm〜1μm、1μm〜10μm、10μm〜100μm、100μm〜1mm、1mm〜10mm、またはそれ以上でもあってもよく、好ましくは、100μm〜10mmであってもよい。
1つの核酸プローブ固定基体1において、複数種類のプライマーセットを用いてもよい。例えば、複数種類のプライマーセットは、反応場を形成するための液体、少なくとも緩衝剤を含む水溶液、或いは更なる反応試薬および/または試料を含む反応液に含ませて反応場または所望の基体表面に持ち込んでもよい。或いは、複数種類のプライマーセットを基体2に遊離可能に固定して反応場に持ち込んでもよい。例えば、複数種類の標的核酸を検出する場合などにおいては、プライマーセット、核酸プローブ3および/または被覆核酸鎖5を複数種類用い得る。
プライマーセットが固定されている核酸プローブ固定基体は、基体と、基体の少なくとも1つの表面に独立して遊離可能に固定されているプライマーセットと、プライマーセットに対応して独立して固定され、検出可能な信号を生ずる標識物質を含む核酸プローブと、核酸プローブ3に結合しており、それによって核酸プローブからの信号の検出を阻害している被覆核酸鎖とを含み得る。
プライマーセットを複数種類用いる場合、反応場が形成された際に、当該反応場に接する基体2の少なくとも1つの面に、互いに独立して配置された複数のプライマー固定領域を配置することも好ましい。
図5(c)は、核酸プローブとプライマーセットとを共に固定して備える核酸プローブ固定基体の1例の斜視図である。この例では、それぞれのプローブ固定領域13に近接してプライマー固定領域11が配置されている。図5(d)は、図5(c)の核酸プローブ固定基体1のプローブ固定領域13の様子を示す。プローブ固定領域13には、標識物質4によって標識され、被覆核酸鎖5が結合している核酸プローブ3が複数本で固定されている。図5(e)は、プライマー固定領域11の様子を示す拡大図である。プライマー固定領域11には、複数本のプライマーとしての核酸鎖が固定されている。
図5(c)の核酸プローブ固定基体は、核酸プローブ3と共にプライマーセット12が固定されていることを除いて図5(a)に示す核酸プローブ固定基体1と同じ構成を有する。即ち、基体2の内側底部14、例えば、底面には、互いに独立した複数のプローブ固定領域13のそれぞれに対応して、互いに独立した複数のプライマー固定領域11が配置されている。各プライマー固定領域11には、プライマーセット12がそれぞれ固定されている。
プライマーセット12の基体2への固定は、反応場を提供するための液相と接触して遊離可能な状態で固定されればよい。例えば、プライマーセット12の基体2への固定は、プライマーセット12を含む溶液を基体2に滴下し、その後乾燥させることにより達成される。プライマーセット12を含む溶液を滴下する方法の場合、プライマーセット12を含む溶液は、例えば、水、緩衝液または有機溶剤などであってもよい。複数のプライマー固定領域11に、それぞれ所望の種類のプライマーセット12を含む溶液を滴下し、乾燥する。それにより基体2の1つの面に独立して配置されている複数または全てのプライマー固定領域11にプライマーセット12が遊離可能に固定される。
プライマーセット12の基体2への固定は、核酸プローブ3の固定の前に行われてもよく、核酸プローブ3の固定の後に行われてもよい。
1つのプライマー固定領域11には1つの種類のプライマーセット12が、複数セットで固定され得る。複数のプライマー固定領域11のそれぞれには、種類毎に複数のプライマーセット12がそれぞれ固定され得る。
プライマーセット12は、目的とする複数の標的核酸をそれぞれ増幅するために複数種類で用意され得る。例えば、1つのプライマー固定領域11には、特定の1つの標的核酸を増幅するための1種類のプライマーセット12が複数セットで固定され得る。例えば、LAMP増幅用の反応具の場合には、1つのプライマー固定領域11に、1種類の特定の標的核酸を増幅するために必要なFIPプライマー、BIPプライマー、必要に応じてF3プライマー、B3プライマー、およびLPプライマーがそれぞれ複数本で含まれ得る。
ここで、固定領域について「独立して配置される」とは、反応場においてプライマーセット毎に開始および/または進行される増幅を妨げることのない間隔で配置されることである。例えば、隣り合う固定領域は、互いに接して配置されてもよく、僅かな距離を隔てて互いに近傍に配置されてもよく、或いは、通常使用される所謂DNAチップなどの検出反応具において固定されるプローブと同様な距離を隔てて互いに配置されてもよい。
例えば、隣り合うプライマー固定領域11の間の距離は、0.1μm〜1μm、1μm〜10μm、10μm〜100μm、100μm〜1mm、1mm〜10mm、またはそれ以上でもあってもよく、好ましくは100μm〜10mmであってもよい。
反応場を提供するための液相は、固定されたプライマーセット12が遊離された後に、それらを用いて増幅反応を進行できる液相であればよく、例えば、所望の増幅に必要な反応液であってよい。
例えば、プローブ固定領域13とプライマー固定領域11の間の距離は、0μm〜0.1μm、0.1μm〜1μm、1μm〜10μm、10μm〜100μm、100μm〜1mm、1mm〜10mm、またはそれ以上でもあってもよく、好ましくは100μm〜10mmであってもよい。
例えば、プローブ固定領域13とプライマー固定領域11との間の距離が0μmである場合には、プローブ固定領域13とプライマー固定領域11は、基体2の表面の同じ位置にあると解されてよい。また、プローブ固定領域13がプライマー固定領域11に含まれてもよく、プライマー固定領域11がプローブ固定領域13に含まれてもよい。
1つのプライマー固定領域11に固定されるプライマーセット12の種類は、1種類の標的核酸を増幅するための1種類であってもよく、2種類以上の標的核酸をそれぞれ増幅するための複数種類、例えば、2種類以上であってもよい。従って、1つのプライマー固定領域11に固定される複数のプライマーセット12は、所望に応じて互いに異なってもよく、一部が互いに異なる配列または一部が互いに同じ配列であってもよい。また、1つの基体2に固定されるプライマーの長さは、全てのプライマーで同じであってもよく、全てのプライマーが互いに異なっていてもよく、一部のプライマーが互いに同じ長さであってもよく、一部のプライマーが互いに異なる長さであってもよい。また、プライマーセット毎またはプライマーセットに含まれるプライマーの種類毎に長さが異なっていてもよい。
1つの核酸プローブ固定基体1に配置されるプライマー固定領域11とプローブ固定領域13の数は同じであっても異なっていてもよい。即ち、全てのプライマー固定領域11に対応するように同数のプローブ固定領域13が配置されてもよく、プライマー固定領域11の数がプローブ固定領域13の数よりも多くてもよく、プライマー固定領域11の数がプローブ固定領域13の数よりも少なくてもよい。
核酸プローブ固定基体1は、更に陽性信号および/または陰性信号を確認するためのポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロールを含ませてもよい。ポジティグコントロールおよびネガティブコントロールは、コントロール固定領域に固定され得る。また、このようなポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロールは、プライマーセット12および/または核酸プローブ3について設けてもよい。
ポジティブコントロールは、例えば、標識された1本鎖状態のプローブを用い得る。ネガティブコントロールは、例えば、増幅産物と相補的な配列を持たない2本鎖状態のプローブを用い得る。
図5(a)および(c)では、プローブ固定領域13およびプライマー固定領域11が基体2の内側底部14に配置された例を示したが、これに限定するものではなく、基体2の内側側面の少なくとも一部分に配置されてもよく、内側底部14および内側側面、例えば、基体2に取り付けられた被覆部により形成される天井面などのいずれか、または全てに配置されてもよい。
図5(c)の核酸プローブ固定基体1の使用時の様子を図6を参照しながら説明する。図6は、容器形状の核酸プローブ固定基体1において行われる核酸反応の様子を経時的に示す模式図である。
図6(a−1)および(b−1)は、反応前の核酸プローブ固定基体1を示す。基体2の内側の底部14、例えば、底面に配置された複数のプライマー固定領域11に複数のプライマーセット12がそれぞれ固定されている。それぞれのプライマー固定領域11に対応して、それぞれのプライマー固定領域11の近傍にプローブ固定領域13が配置されている。プローブ固定領域13には、複数の核酸プローブ3が所望の種類毎に固定され、当該複数の核酸プローブ3には被覆核酸鎖がハイブリダイズしている。
核酸プローブ固定基体1に反応液RSを添加し、それを収容した状態を図6(a−2)および(b−2)に示す。
基体2の内部への試料の添加は、核酸プローブ固定基体1に反応液RSを添加する以前に反応液に予め添加することにより行われてもよい。または、それは反応液RSを核酸プローブ固定基体1に添加した後に反応液RSに添加することにより行われてもよい。または、それは、核酸プローブ固定基体1に反応液RSを添加する以前に、試料を核酸プローブ固定基体1に添加することにより行われてもよい。
図6(a−2)および(b−2)に示すように、反応液RSが添加された後の核酸プローブ固定基体1では、底部14に固定されたプライマーセット12が遊離して、徐々に拡散する。遊離および拡散した領域を模式的に領域で示す。遊離し、拡散していくプライマーセット12は、その近傍に存在する鋳型核酸、ポリメラーゼおよび基質などの増幅に必要な他の成分と出会い、増幅反応が開始される。種類毎に独立して複数固定されたプライマーセット12は、その種類毎に独立して鋳型核酸について増幅反応を開始および進行することが可能である。それにより、複数種類のプライマーセット12を用いた複数の鋳型配列についての増幅が、独立して同時に達成される。
図6(a−3)および(b−3)は、遊離および拡散した領域に、増幅の対象となる鋳型核酸が存在し、増幅反応が生じ、それが進行している状態を模式的に示す。
図6(a−3)には、全てのプライマー固定領域11に固定されたプライマーセット12により増幅反応が生じ、それが進行している領域を反応領域として模式的に示す。図6(b−3)には、内側の底部14に固定された全てのプライマー固定領域11のうちの一部分、即ち、図6(b−3)では3つの領域のみにおいて増幅が生じ、それが進行している領域を反応領域として模式的に示す。
図7はチップ型の核酸プローブ固定基体、即ち、アレイ型の核酸プローブ固定基体1である。図7に記載のアレイ型の核酸プローブ固定基体1は、基板を基体2として用いる例である。基体2の1つの面16には、複数のプライマー固定領域11が互いに独立して配置されている。プライマー固定領域11には、図5(c)と同様に、1つのプライマー固定領域11に対して1つの種類のプライマーセット12が固定されている。複数のプライマー固定領域11のそれぞれには、種類毎に複数のプライマーセット12がそれぞれ固定されている。1つプライマー固定領域11に含まれるプライマーセット12は、例えば、1種類の特定の標的核酸を増幅するために必要な異なる種類のプライマーを含み得る。
それぞれのプライマー固定領域11に対応して、その近傍にプローブ固定領域13が配置される。プローブ固定領域13には、種類毎に複数の核酸プローブ3が固定され、それぞれの核酸プローブ3には被覆核酸鎖5がハイブリダイズしている。
このアレイ型核酸プローブ固定基体1を用いて核酸の増幅および検出を行う際には、少なくとも基体2のプライマーセット12および核酸プローブ3が固定された領域または面に対して、反応液を載せることにより反応場を形成することにより行い得る。
或いは、核酸の増幅および検出を行う際には、このアレイ型核酸プローブ固定基体1が容器内に配置され得る。その容器内に反応液を添加することにより反応場が形成され得る。この場合、基体2の両面にプライマーセット12と核酸プローブ3とが固定され得る。これにより、アレイ型核酸プローブ固定基体1の基体2に、より多くの種類のプライマーセット12および核酸プローブ3を固定し得る。その結果、より多くの標的配列が増幅および検出され得る。
更に、アレイ型核酸プローブ固定基体1におけるプライマーセット12および/または核酸プローブ3の位置を識別するためのラベルが基体2に付与され得る。ラベルの付与は、それ自身公知の手段により行い得る。
核酸プローブ固定基体の更なる例を、図8を参照しながら説明する。
図8は、アレイ型核酸プローブ固定基体の平面図である。図8に記載のアレイ型核酸プローブ固定基体1は、流路を有する基板を基体2として用いる例である。基体2の1つの面16には、直線上に伸び、互いに平行に並ぶ複数の溝により構成された複数の流路15が形成されている。それぞれの流路15の底部14には、複数のプライマー固定領域11が、流路15の長手方向に沿って互いに独立して配置される。プライマー固定領域11には、1つのプライマー固定領域11に対して1つの種類のプライマーセット12が固定されている。複数のプライマー固定領域11のそれぞれには、種類毎に複数のプライマーセット12がそれぞれ固定されている。1つプライマー固定領域11に含まれるプライマーセット12は、例えば、1種類の特定の標的核酸を増幅するために必要な異なる種類のプライマーを含んでよい。
それぞれのプライマー固定領域11に対応するように、プライマー固定領域11の近傍にプローブ固定領域13が配置されている。1つの流路15において、プライマー固定領域11とプローブ固定領域13は、流路15の長手方向に沿って交互に配置されている。1つのプローブ固定領域13には、標識物質4を含み、被覆核酸鎖5と結合している核酸プローブが固定されている。複数配置されたプローブ固定領域13のそれぞれには、互いに異なる標的核酸を検出するための核酸プローブが固定され得る。
この実施形態を用いての核酸の増幅および検出は、図7の実施形態と同様に行われ得る。或いは、流路15に対して流体を流すことによって、反応場を形成し、核酸の増幅および検出を行ってもよい。更に、流路15を形成している溝を所望の蓋体(図示せず)によって覆ってもよい。
上述のアレイ型核酸プローブ固定基体1は、基体2の表面に流路を形成し、形成された流路内の少なくとも1つの壁面に対してプライマーセット12および核酸プローブ3を固定することと、核酸プローブ3に被覆核酸鎖5をハイブリダイズさせることとにより製造されてよい。
流路15の形成は、基体2の1つの面16に凹部若しくは凸部、または凹部と凸部を形成することにより行われてよい。それにより、流路15の形状は、凹部若しくは凸部、または凹部と凸部により規定され得る。例えば、流路15の形成は、基体2の表面に対して、エッチングなど、基板に溝を形成するためのそれ自身公知の何れかの手段を施すことにより行われ得る。基体2に含まれる流路15の数は、1または複数であってもよく、好ましくは複数である。
プライマー固定領域11およびプローブ固定領域13の配置、並びにプライマーセット12および核酸プローブ3の固定は上述の実施形態と同様に行われ得る。
流路15に対して配置されるプライマー固定領域11およびプローブ固定領域13の位置は、流路底面または底部のみに限られるものではなく、流路内の何れかの面であればよい。例えば、そのような面は、流路15の底面、側面および/または任意の天井面であり得る。流路15の天井面は、例えば、全ての流路15を覆う、または各流路15を独立して覆うように構成された被覆体または蓋体を基体2に取り付けて提供される流路15の天井面であり得る。
流路15内にプライマー固定領域11およびプローブ固定領域13を配置したアレイ型核酸プローブ固定基体1における増幅反応の様子および検出結果を図9〜11を用いて説明する。
図9は、図8に示すアレイ型核酸プローブ固定基体1に形成された流路15のうちの1つの流路15aについて示す図である。
図10は、プライマー固定領域11およびプローブ固定領域13の位置が流路15bの側面であることを除いて、図9に示すアレイ型核酸プローブ固定基体1と同様な核酸プローブ固定基体の1つの流路を示す。
図11は、プライマー固定領域11とプローブ固定領域13とが実質的に同じ位置に配置されたことを除いて、図9に示すアレイ型核酸プローブ固定基体1と同じ構成の核酸プローブ固定基体の1つの流路15cについて示す。
図9(a)、10(a)および11(a)は、プライマーセット12と核酸プローブセットが流路15に固定されている状態を示す。図9(a)、10(a)および11(a)の何れにおいても、流路15の長手方向に沿った流路15内面に領域A、B、C、D、E、FおよびGが配置されている。領域A、B、C、D、E、FおよびGのそれぞれには、プライマーセット12が遊離可能に固定され、それに対応して配置されるべき核酸プローブ3が固定されている。領域A〜Gにそれぞれ固定されたプライマーセット12は、互いに異なる標的配列を増幅するために互いに異なるように設計されている。核酸プローブ3とハイブリダイズしている被覆核酸鎖5は、領域毎に異なる第1の配列を検出するために互いに異なる配列を有する。即ち、領域A〜領域Gにそれぞれ配置されたプライマー固定領域11とプローブ固定領域13には、領域毎に異なる種類の配列を標的配列および第1の配列とするプライマーセット12と核酸プローブ3が固定され、被覆核酸鎖5が核酸プローブ3にハイブリダイズしている。
具体的には、各流路内の領域A〜Gにおいて、プライマーセット12と核酸プローブ3が固定される位置は次の通りである。図9(a)では、各領域の位置に対応する流路15aの底部14に、プライマーセット12とそれに対応する核酸プローブ3とが隣り合って、流路15の長手方向に沿って配置されている。図10(a)では、流路15bの各領域の位置に対応する一方の側面に対して、プライマーセット12が遊離可能に固定されている。核酸プローブ3は、プライマーセット12が固定された側面に対向する、流路15bのもう一方の側面に固定されている。図11(a)では、流路15cの各領域の位置に対応する底部14の同じ位置に対して、プライマーセット12が遊離可能に固定され、核酸プローブ3が固定されている。これらの核酸プローブ3には、被覆核酸鎖5が結合している。
図9(a)、10(a)および11(a)のそれぞれの流路15に反応液を加えた後の状態を図9(b)、10(b)および11(b)に示す。各流路15に反応液が添加されると、プライマーセット12が反応液中に遊離し、拡散する。反応液中に標的となる鋳型核酸が存在した場合、増幅反応が生じ、増幅産物6が産生される。図9(b)、10(b)および11(b)では、増幅反応が生じ、進行している領域を増幅領域17として模式的に示す。増幅領域17において産生された増幅産物6に検出されるべき第1の配列が含まれる場合、対応する被覆核酸鎖5について、核酸プローブ3と増幅産物6とが競合反応をする。そして、核酸プローブ3と被覆核酸鎖5との間のハイブリダイズが解消し、検出信号が生じる。
図9(c)、10(c)および11(c)では、それぞれ流路15a,b,cの領域A〜Gで検出される検出信号の大きさを表すグラフが示される。このグラフは、添加された反応液に含まれる試料が、各流路15a,b,cの領域A、CおよびFに固定されたプライマーセット12により増幅される標的配列を含み、且つそれらのプライマーセット12により得られた増幅産物6には、領域A、CおよびFに固定された核酸プローブ3とハイブリダイズしている被覆核酸鎖5の第1の配列結合領域8’の配列に相補的な第1の配列が含まれることを示す。即ち、図9(c)、10(c)および11(c)のグラフにおいて、領域A、CおよびFについて得られる信号(図中「検出信号」と記載する)は、バックグラウンドレベルよりも大きい検出信号である。このような結果から、試料中に目的とする第1の配列を有する増幅産物が存在することが示される。それに対して、領域B、D、EおよびGについて得られる信号は、バックグラウンドレベル以下である。これらの結果に基づいて、「試料中に検出されるべき標的核酸が存在する」と判定される。
上記の例では、増幅のための試薬としてプライマーセット12のみが基体2に固定された例を示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、プライマーセット12が種類毎に各固定領域に固定される条件において、増幅に必要な他の成分、例えば、ポリメラーゼ、逆転写酵素などの酵素、基質、基質および/または緩衝剤などがプライマーセット12と共に基体2に固定され得る。その場合、固定しようとする物質をプライマーセット12と一緒に所望の液体媒体に含ませて、上述の方法と同様に滴下および乾燥などにより固定すればよい。そのような核酸プローブ固定基体1において、増幅反応を行う場合には、固定された成分に応じてそこに添加される反応液の組成が選択されればよい。
1つの実施形態において、核酸プローブ固定基体は、第1〜第nの標的核酸を検出するための核酸プローブ固定基体であってもよい(ここにおいて、nは、2以上の整数である)。前記第1〜第nの標的核酸は、それぞれ第1〜第1の配列および/またはその相補配列である第1〜第nの相補配列を含む。核酸プローブ固定基体は;
(i)そこにおいて第1〜第nのプライマーセットを用いる等温増幅反応が、当該第1〜第nの標的核酸をそれぞれ鋳型として、互いに異なる配列の前記第1〜第1の配列をそれぞれ含む第1〜第nの増幅産物を生成する反応場を支持するように構成されている基体;
(ii)前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に独立して配置された第1〜第nのプローブ固定領域;
(iii)前記第1〜第nのプローブ固定領域にそれぞれ固定された第2〜第2の配列を含む第1〜第nの核酸鎖と、当該第1〜第nの核酸鎖にそれぞれ結合している検出可能な信号をそれぞれ生ずる第1〜第nの標識物質とを含む第1〜第nの核酸プローブ;および
(iv)前記第1〜第1の配列にそれぞれ相補的な第1〜第1の配列結合領域と、前記第2〜第2の配列にそれぞれ相補的な第2〜第2の配列結合領域とを有し、前記第2〜2の配列結合領域それぞれでの前記第2〜2の配列それぞれとのハイブリダイズによって前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれに結合しており、それらによって前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれからの当該信号の検出をそれぞれ阻害している第1〜第nの被覆核酸鎖;
を備え得る。ここにおいて、第1〜第nの核酸プローブおよび前記第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれに対する対応する前記第1〜第nの増幅産物と前記1〜第nの核酸プローブ配列との競合、それらによる前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれからの前記第1〜第nの被覆核酸鎖の脱離、および前記第1〜1の配列結合領域それぞれでの前記第1〜第1の配列それぞれとのハイブリダイズを介した前記第1〜第nの被覆核酸鎖と前記第1〜第nの増幅産物とのそれぞれの結合が得られるようにそれぞれ設計されている。
このような実施形態において、形成された前記反応場における前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれと対応する前記第1〜第nの被覆核酸鎖との結合は次の通りである。即ち、対応する前記第1〜第1の配列をそれぞれ含む核酸が当該反応場に存在しない場合には維持される。これに対して、対応する前記第1〜第1の配列をそれぞれ含む核酸が当該反応場に存在し、これらの核酸と対応する前記核酸プローブとが対応する前記被覆核酸鎖に対してそれぞれ競合する場合には、当該結合は解消する。このような条件は、例えば、前記第1〜第nの核酸プローブおよび前記第1〜第nの被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値を調整することにより達成され得る。
また、このような核酸プローブ固定基体は、更に、前記第1〜第nのプローブ固定領域のそれぞれと同じ位置またはそれぞれの近傍に独立してそれぞれ配置されている第1〜第nのプライマー固定領域、および前記第1〜第nのプライマー固定領域のそれぞれに遊離可能にそれぞれ固定されている当該第1〜第nのプライマーセットを備え得る。
また、そこおいて、前記第2〜第2の配列が互いに同じ配列を有し、前記第1〜第1の配列結合領域が互いに異なる配列を有することも好ましい。
従来の技術においては、被覆核酸鎖5を用いずに、直接に核酸プローブに対して検出されるべき核酸鎖をハイブリダイズさせて検出していた。このような技術では、一つの反応場で、増幅と検出とを同時に行うことは困難である。例えば、増幅反応に適する塩濃度は、核酸のハイブリダイズに適する塩濃度よりも低い。そのため、増幅反応を行った反応場では安定したハイブリダイズが得られず、増幅反応と核酸のハイブリダイズの測定とを1つの反応場で行うことは困難であった。
本実施形態に拠る核酸プローブ固定基体では、増幅産物の存在に応じて生ずる核酸プローブと被覆核酸鎖との間のハイブリダイズの解消を利用して検出を行う。そのため、増幅反応条件下で、増幅反応と同時に増幅産物をより高感度かつ高精度で測定することが可能となった。これにより、試料中の標的核酸を定量することも可能である。また、複数の標的核酸を同時に増幅し、同時に検出することが可能であるために、従来よりも短時間で標的核酸に関する検査を行うことが可能となる。また、試料の取り違いが生じる可能性も低くなる。
また、流路を備える反応具の場合には、流路内で反応を行うことが可能である。従って、より操作性に優れたアレイ型核酸プローブ固定基体が提供される。
また、流路を設けることによって、反応液をより簡便且つ短時間に全てのプライマーセットおよび核酸プローブに行き渡らせることが可能である。複数の流路を設けることによって、複数の試料についてそれぞれに標的核酸の検出を行うことも可能である。
更なる実施形態として、複数の標的核酸を検出するためのマルチ核酸増幅検出反応具の例を図12〜図15を参照しながら説明する。
(1)チップ素材
まず、電気化学的検出により核酸プローブからの信号を検出するマルチ核酸増幅検出反応具のチップ素材の構成および製造方法の1例について図12(a)および(b)を用いて説明する。図12(a)は、チップ素材111の平面図であり、図12(b)は、図11(a)のチップ素材111の線B−Bに沿う断面図である。
チップ素材111は、矩形状の基板112上にその長手方向に沿って配置された例えば4つの電極113a〜113dを備えている。各電極113a〜113dは、第1の金属薄膜パターン114および第2の金属薄膜パターン115をこの順序で積層した構造を有する。また、各電極113a〜113dは大矩形部116と小矩形部117を細線118で連結した形状を有する。絶縁膜119は、各電極113a〜113dを含む基板112上に被覆されている。円形窓120は、大矩形部116に対応する絶縁膜119部分に開口されている。矩形窓121は、小矩形部117に対応する絶縁膜119部分に開口されている。電極113aの円形窓120から露出する大矩形部116は第1の作用極122aとして機能する。電極113bの円形窓120から露出する大矩形部116は第2の作用極122bとして機能する。電極113cの円形窓120から露出する大矩形部116は対極123として機能する。電極113dの円形窓120から露出する大矩形部116は参照極124として機能する。また、電極113a〜113dの矩形窓121から露出する小矩形部117はプローバー接触部として機能する。
このようなチップ素材111は、次のような方法により作製することができる。
まず、基板112上に第1の金属薄膜および第2の金属薄膜を例えば、スパッタリング法または真空蒸着法によりこの順序により堆積する。続いてこれらの金属薄膜を例えば、レジストパターンをマスクとして順次選択的にエッチングして、第1の金属薄膜パターン114および第2の金属薄膜パターン115をこの順序で積層した、例えば4つの電極113a〜113dを基板112の長手方向に沿って形成する。これらの電極113a〜113dは、大矩形部116と小矩形部117を細線118で連結した形状を有する。
次いで、電極113a〜113dを含む基板112上に、絶縁膜119を例えば、スパッタリング法またはCVD法により堆積する。続いて、各電極113a〜113dの大矩形部116に対応する絶縁膜119部分および小矩形部117に対応する絶縁膜119部分をレジストパターンをマスクとして選択的にエッチングして、大矩形部116に対応する絶縁膜119部分に円形窓120を、および小矩形部117に対応する絶縁膜119部分に矩形窓121を開口する。それにより前述したチップ素材111を作製する。
基板112は、例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのようなガラスまたは樹脂から作られる。
第1の金属薄膜は、第2の金属薄膜を基板112に密着させるための下地金属膜として働き、例えば、Tiから作られる。第2の金属薄膜は、例えば、Auから作られる。
第1および第2の金属薄膜をパターニングするときのエッチングの例は、エッチングガスを用いるプラズマエッチングまたは反応性イオンエッチングを含む。
絶縁膜119は、例えば、シリコン酸化膜のような金属酸化膜、シリコン窒化膜のような金属窒化膜を挙げることができる。
絶縁膜119をパターニングするときのエッチングの例は、エッチングガスを用いるプラズマエッチングまたは反応性イオンエッチングを含む。
(2)マルチ核酸増幅検出反応具
次に、上記(1)において製造されたチップ素材111にプライマーセットと核酸プローブを固定したマルチ核酸増幅検出反応具の構成および製造方法の1例を図13(a)および図13(b)を参照しながら説明する。図13(a)はマルチ核酸増幅検出反応具の平面図であり、図13(b)は図13(a)のマルチ核酸増幅検出反応具の線B−Bに沿う断面図である。このマルチ核酸増幅検出反応具は、互いに異なる2つの配列をそれぞれに含む2種類の増幅産物の存在をそれぞれ検出するための装置である。検出されるべき2種類の標的核酸は、それぞれ第1の配列と第1の配列とを含む。第1の配列を検出するための第1の核酸プローブ202aは、第1の配列を含む第1の核酸鎖とこれに結合した第1の標識物質とを含む。これは初期状態において、第1の核酸鎖の配列に相補的な配列を有する第1の被覆核酸鎖を結合して含む第1の2本鎖核酸を形成している。第1の配列を検出するための第2の核酸プローブ202bは、第1の配列を含む第2の核酸鎖とこれに結合した第2の標識物質とを含む。これは初期状態において、第2の核酸鎖に相補的な配列を有する第2の被覆核酸鎖を含む第2の2本鎖核酸を形成している。
チップ素材111に形成された電極113aの第1の作用極122aを第1のプローブ固定領域201aとし、この第1のプローブ固定領域201aに第1の2本鎖核酸を固定する。第1の核酸プローブ202aを含む第1の2本鎖核酸は、複数本で1つの固定領域に固定され、1つの核酸プローブ群として機能する。
同様に、電極113bの第2の作用極122bを第2のプローブ固定領域とし、この第2のプローブ固定領域に第2の核酸プローブ202bを含む第2の2本鎖核酸を複数本で固定する。第2の核酸プローブ202bを含む第2の2本鎖核酸は、複数本で1つの固定領域に固定され、1つの核酸プローブ群として機能する。
第1および第2の核酸プローブ202a,202bを第1および第2のプローブ固定領域201a,201bに固定する方法の例は、金電極を具備したチップ素材111の場合にはチオール基を第1および第2の核酸プローブ202a,202bの3’末端に導入する方法などが含まれる。
次いで、第1の作用極122aの近傍に第1のプライマー固定領域203aを、第2の作用極122bの近傍に第2のプライマー固定領域203bを配置する。この第1のプライマー固定領域203a上に第1のプライマーセット204aと増粘剤205を遊離可能に固定し、第2のプライマー固定領域203b上に第2のプライマーセット204bと増粘剤205を遊離可能に固定する。それによりマルチ核酸増幅検出反応具を作製する。
第1のプライマーセット204aは第1の配列を増幅するように設計された複数のプライマーを含み、第2のプライマーセット204bは第1の配列とは異なる配列からなる第1の配列を増幅するように設計された複数のプライマーを含む。
第1および第2のプライマーセット204a,204bをそれぞれ第1および第2のプライマー固定領域203a,203bに固定することは、例えば、水、緩衝液または有機溶剤のような液体にプライマーセットを含ませて滴下して、その後例えば、室温などの適切な温度条件下で乾燥するまでの時間例えば、室温の場合では10分間放置することにより行う。
増粘剤の使用は任意であり、使用する場合には、それは固定されて用いられてもよく、反応液に含ませて用いられてもよい。増粘剤の固定は、所望の増粘剤を液体に溶解し、プライマーセットの固定と前後して所望の位置に滴下乾燥することにより行う。増粘剤を溶解するための液体は、プライマーセットの固定のために準備された液体であってもよく、或いは他の液体であればよい。固定の位置は、プライマー固定領域であってもよく、プライマー固定領域および/またはプローブ固定領域の近傍であってもよい。
(3)使用時のマルチ核酸増幅検出反応具
上記(2)において作製されたマルチ核酸増幅検出反応具の使用例について図14および図15を参照しながら説明する。
図14(a)は、使用時のマルチ核酸増幅検出反応具の平面図であり、図14(b)は、図14(a)のマルチ核酸増幅検出反応具の線B−Bに沿う断面図である。
本実施形態のマルチ核酸増幅検出反応具91を使用する場合、電極113a〜113dにそれぞれ形成された第1の作用極122a、第2の作用極122b、対極123および参照極124、並びに第1のプライマー固定領域203aおよび第2のプライマー固定領域203bが同じ1つの反応場に含まれるように反応液が維持される。そのために、例えば、シリコンゴムのようなシリコン樹脂および/またはフッ素樹脂など、或いは何れかの樹脂を例えば、押出成形、射出成形または型押成形および/または接着剤による接着などのそれ自身公知の何れかの樹脂成形法により成形された被覆体301が、マルチ核酸増幅検出反応具91の使用前にマルチ核酸増幅検出反応具91上に装着される。被覆体301が装着された後に、鋳型核酸303を含む反応液302がマルチ核酸増幅検出反応具91と被覆体301とにより形成された空間に添加される。
被覆体301が装着されたマルチ核酸増幅検出反応具91において、電極113a〜113dのそれぞれの矩形窓121から露出する小矩形部117は露出している。
被覆体301をマルチ核酸増幅検出反応具91に装着する例は、例えば、圧着、接着剤による接着などが含まれる。
次いで、反応液302は被覆体301がマルチ核酸増幅検出反応具91に装着された後に添加される。
マルチ核酸増幅検出反応具91と被覆体301とにより形成される空間に液体を添加する方法は、例えば、被覆体301の一部に開口部を予め設けておき、その開口部から添加してもよく、また先端の鋭利な例えば、針のような先端を有した注入器を用いて被覆体301の一部に差し込んで添加してもよい。
反応液302は、例えば、試料と、増粘剤と、増幅試薬、例えば、ポリメラーゼなどの酵素、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸などの基質、逆転写を同時に行う場合には、逆転写酵素およびそれに必要な基質など、更に、適切な増幅環境を維持するための塩類などの緩衝剤などを含み得る。検査されるべき試料中に特定のプライマー固定領域に固定されたプライマーセットによって増幅されるべき標的配列を含む鋳型核酸が存在している場合、そのプライマー固定領域とそれに対応するプローブ固定領域を含む反応場において増幅産物が形成される。その様子を模式的に図15に示す。
図15(a)は、反応場401において増幅産物が形成された状態を模式的に示す。図15(a)は、使用時のマルチ核酸増幅検出反応具の平面図であり、図15(b)は、図15(a)のマルチ核酸増幅検出反応具の線B−Bに沿う断面図である。上述のように図14において添加された試料中には、第2のプライマーセット204bが結合できる配列を含む核酸が含まれていたために、図15(a)および図15(b)に示すように、反応場401に第2のプライマーセットが遊離および拡散し、鋳型核酸と出会った後に増幅反応が行われる。それにより増幅産物が形成される。第2のプライマーセット204bによる増幅産物は、第2のプライマー固定領域203bの周辺に拡散し、第2のプローブ固定領域201bに到達する。到達した増幅産物が、第1の配列を含む場合、第2の核酸プローブ202bに結合している被覆核酸と増幅産物とが競合し、被覆核酸が核酸プローブ202bから脱離し、増幅産物とハイブリダイズする。これにより核酸プローブ202bは、1本鎖核酸となる。1本鎖核酸となったことにより第2の核酸プローブに含まれる標識物質からの信号が検出可能となる。
核酸プローブからの信号は、例えば、電極113a〜113dのそれぞれの矩形窓121から露出する小矩形部117にプローバーを接触させ、標識物質の電流応答を測定することにより行われ得る。
電気化学的検出を利用するアレイ型プライマープローブチップを使用することによって、より簡単に且つ短時間に試料に含まれる標的核酸を増幅した後に、その増幅産物に含まれる検出されるべき核酸の検出を簡便かつより正確に行うことが可能である。また、複数の標的核酸を定量的に検出することも可能である。
(4)核酸の検出方法
例として上述したようなマルチ核酸増幅検出反応具を使用して、複数の標的核酸を増幅して、標識物質からの信号を指標として増幅産物を検出する方法も更なる実施形態として提供される。
また、特定の容器、チューブ、ディッシュまたは流路を形成した基板などの支持体の少なくとも1つの表面に対して、複数種類の標的核酸をそれぞれ増幅するために設計された複数種類のプライマーセットを遊離可能に固定する工程および/または1種類以上の核酸プローブをプローブ固定領域に固定する工程を含む標的核酸の検出方法も更なる実施形態として提供される。
そのような標的核酸の検出方法は、例えば、所望の基体の少なくとも1つの表面に対して、複数種類の標的核酸をそれぞれ増幅するための複数種類のプライマーセットを遊離可能に固定することと、複数のプライマーが固定されている位置またはその近傍の位置にそれぞれのプライマーセットに対応する核酸プローブを固定することと、反応液をプライマーセットおよび核酸プローブに対して添加することと、反応液に試料を添加することと、反応液により反応場を形成することと、反応場の反応環境を増幅反応に適した環境に維持することと、核酸増幅反応を行うことと、核酸プローブからの検出可能な信号を検出および/または測定することとを備えてよい。
反応液は、増幅反応に必要な試薬、例えば、ポリメラーゼなどの酵素、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸などの基質、逆転写を同時に行う場合には、逆転写酵素などの酵素およびそれに必要な基質など、更に、適切な増幅環境を維持するための塩類などの緩衝剤を含み得る。また反応試薬として増粘剤が更に含まれ得る。
反応液への試料の添加は、反応液をプライマーセットおよび核酸プローブに添加する以前に行っても、後に行ってもよい。
反応環境の形成および維持は、温度および/または塩濃度を増幅反応に適切な範囲に調整することにより行い得る。反応環境において行われる核酸増幅反応は、複数種類のプライマーセットによる対応する標的核酸の増幅反応であり、これらの複数のプライマーセットが順次または同時に行ってよい。実施形態に従う方法によれば、1つの反応具の連続する空間において複数のプライマーセットによる増幅反応を行うが、このような増幅反応は一般的にマルチ核酸増幅反応と称される反応であり得る。
実施形態に従う方法によれば、標的核酸を簡便かつ高感度に検出することができる。また、異なる配列による干渉を受けずに複数種類の標的配列についての増幅を独立して同時に行うことができる。増幅反応と同時に、等温増幅反応条件下で増幅反応により生じた特定の配列を含む増幅産物についての有無および/または量を検出することができる。更に、増粘剤を適用すれば、複数種類の標的配列について並行して行われる増幅反応をより効率よく行うことができる。
増粘剤は、反応液への添加に代えて、上述した通りに基体に固定されてもよい。また増粘剤は、反応液中に含ませて反応場に提供されてもよく、および/または支持体表面に固定されて提供されてもよい。
マルチ核酸増幅検出反応具を使用して増幅反応を行うと、プライマーセットが固定された領域の付近でのみ増幅反応が進行し、それと並行して増幅産物の検出を行うため、同一容器中および/または同一溶液中でありながら、複数の増幅反応は、互いに干渉せず、各種の標的核酸について独立して進行され得る。また、実施形態によれば、増幅産物を高感度に行うことが可能であり、また定量的に検出することが可能である。それにより標的核酸を高感度、また定量的に検出することが可能である。
3−2.標的核酸測定方法
1つの実施形態として、標的核酸を測定する方法が提供され得る。標的核酸を測定する方法は、核酸プローブ固定基体を準備することと、反応場に標的核酸を含む試料を持ち込むことと、標的核酸を増幅することと、増幅産物と核酸プローブ固定基体を反応させ、核酸プローブと被覆核酸との間のハイブリダイズを解消させることと、前記ハイブリダイズの解消により、標識物質から発せられる検出可能な信号の変化を検出することと、を含み得る。
例えば、標的核酸検出法は、第1の配列および/またはその相補配列を含む標的核酸を検出し得る。そのような方法は、次の工程を含んでもよい;
(a)検出可能な信号を生ずる標識物質を含み、前記第1の配列とは異なる第2の配列を含む核酸鎖により固相に固定されている核酸プローブであり、前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域と前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域とを有する被覆核酸鎖が、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列へのハイブリダイズにより当該核酸プローブに結合していることによって、前記信号の検出が阻害されている核酸プローブの存在下で、前記標的核酸を鋳型として前記第1の配列を含む増幅産物を形成するためのプライマーセットを用いて等温増幅を行うことと;
(b)前記等温増幅反応において形成された前記増幅産物と、前記核酸プローブとを競合させ、それにより前記被覆核酸を前記核酸プローブから脱離させ、前記第1の配列結合領域での前記第1の配列のハイブリダイズを介して前記被覆核酸に前記増幅産物を結合させることと;
(c)前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブからの当該信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出することと。
また、標的核酸検出法は、図16に示すように核酸プローブ固定基体を用いて行われてもよい。当該方法は、(a)核酸プローブ固定基体を準備すること、(b)増幅反応液を添加して反応場を形成すること、(d)反応場に標的核酸を含む試料を持ち込むこと、(d)標的核酸を等温増幅すること、(e)増幅産物と核酸プローブとを競合させることにより、核酸プローブと被覆核酸との間のハイブリダイズを解消すること、および(f)標識物質からの信号を検出することを含み得る。
そのような核酸プローブ固定基体の準備は、反応場を支持するように構成された基体の反応場が形成された際に反応場に接する少なくとも1つの面に核酸プローブ固定することと、核酸プローブと被覆核酸鎖とをハイブリダイズさせることと、検出可能な信号を発生する標識物質を核酸プローブと結合させることとを含み得る。
また上述した通り、当該核酸プローブ固定基体は、プライマー固定領域に遊離可能にプライマーセットを固定して含んでもよい。
基体の内部への試料の添加は、例えば、核酸プローブ固定基体に反応液を添加する以前に反応液に予め添加することにより行われてもよい。或いはそれは、反応液を核酸プローブ固定基体に添加した後に反応液に添加することにより行われてもよい。或いは核酸プローブ固定基体に反応液を添加する以前に、試料を核酸プローブ固定基体に添加することにより行われてもよい。
反応液は、固定されたプライマーセットが遊離された後に、プライマーセットと標的核酸との間の増幅反応が可能な液相であればよい。この反応液は、反応場(最初は空気で満たされている)に対し、増幅反応開始前に機械的に若しくは人為的に、何らかの手法で注入されればよい。
標的核酸の定量は、あらかじめ閾値を設定し、検出信号が当該閾値を超えるまでに要する時間を立ち上がり時間として計測し、得られた結果に基づいて行い得る。或いは、標的核酸の定量は、核酸の存在量が既知である異なる複数の標準試料核酸を用意すること、標準試料核酸を用いて測定し、各核酸の存在量に対して得られた測定結果から検量線を作成すること、および標的核酸の測定結果と作成された検量線とを比較することによって、試料中の標的核酸の存在量を算出することによって行われてもよい。
実施形態の方法によれば、標的核酸を簡便に定量することが可能となる。また、従来よりも短時間で多くの標的核酸の検査を行うことが可能となる。また、試料の取り違いが生じる可能性が低くなる。
4.第3の実施形態
上述した第1の実施形態において、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が、上記(a)の配列である場合の標的核酸検出法の更なる例を第3の実施形態として図17を参照しながら説明する。
第2の実施形態では、標識物質が、核酸プローブに結合した標的核酸検出法の1例について記載した。しかしながら、信号を発する標識物質は、前記核酸鎖に結合しておらず、反応溶液中に含まれていてもよい。第3の実施形態は、そのような方法の1例である。
第3の実施形態のために用いられるプローブ固定基体の1例を図17に示す。この例は、標識物質が反応液中に存在し、核酸プローブに結合していないこと以外は、図4(a)、(b)および(c)と同じ構成である。このプローブ固定基体101の基体2は、反応場を形成する基体2の少なくとも一部分の面に電極2aを含む。核酸プローブ3は、この電極2a上に固定されている(図17(a))。核酸プローブ3には、被覆核酸鎖5が結合している。これらが含まれる反応液中には、標識物質44が存在している。標識物質44は、電気化学的信号を生ずる物質であって、増幅産物を鋳型とした被覆核酸の伸長によって信号の検出が阻害されるような物質であり、更に反応液中、即ち、反応場において負の電荷を有する電気化学的に活性な物質であり得る。標識物質44からの検出可能な信号は、電気信号であり、核酸プローブが固定されている電極により検出される。そして、標識物質44が生ずる検出可能な信号の検出は、前記核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されている。即ち、図17(a)に示すように、電極2aの上方には、核酸プローブ3とこれに結合している被覆核酸鎖5が存在しているために、それ以外の領域と比べて、核酸に由来して負の電荷が多く存在する。これによって、標識物質44からの電気信号の検出が阻害されている。反応場を等温増幅条件下に維持すると、標的核酸を鋳型とする増幅反応が進み、時間の経過と共に増幅産物6が形成され(図17(b))、存在量が増加していく。増幅産物6は、核酸プローブ3と競合し、被覆核酸鎖5が脱離する。その結果、被覆核酸鎖5は、核酸プローブ3から脱離し、電極に結合している核酸は、2本鎖から1本鎖になる(図17(c))。核酸プローブ3が1本鎖になると、2本鎖で存在していたときよりも負の電荷が少なくなる。その結果、2本鎖で存在するときよりも大きな電気信号が生じる。このような電気信号の差を検出することにより、標的核酸の存在を検出またはその存在量、例えば、濃度を測定することが可能となる。
第3の実施形態において使用される標識物質は、増幅産物を鋳型とした被覆核酸の伸長によって信号の検出が阻害されるような物質のうちの反応場において負または正の電荷を有する電気化学的に活性な物質であり得る。そのような物質の例は、その酸化還元電位が検出可能な電気的化学的信号となり得る酸化剤などであり得る。標識物質の例は、例えば、フェリシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、鉄錯イオン、ルテニウム錯イオン、コバルト錯イオンなどを含む。これらの標識物質は、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、鉄錯体、ルテニウム錯体、コバルト錯体を反応液に溶解することにより得られる。それらの反応液中の濃度は、例えば、10μM〜100mMであってもよく、また例えば約1mMであってもよい。
例えば、標識物質としてフェリシアン化物イオン(Fe(CN) 4−)を用いた場合には、Fe(CN) 4−がFe(CN) 3−になる酸化反応により電子が放出される。この電子は、Fe(CN) 4−が電極に近づいた際に電極に流れ込む。この電子の流れが、検出されるべき電気化学的信号を生ずる。
これらの標識物質は、他の標識物質と組み合わせて用いてもよい。反応場において負または正の電荷を有する電気化学的に活性な物質と、例えば、フェロセンで標識した核酸プローブとを組み合わせて用いると、フェロセンがメディエーターとして働き、電気化学的な信号を増幅するので、感度がよりよくなり得る。
このような反応場において負の電荷を有する電気化学的に活性な物質を標識物質として使用した場合、比較的長い核酸鎖や比較的短い核酸が複数存在する反応液中の部位からは遠ざけられる。これは、核酸鎖が同様に負の電荷を有しているためであり、核酸の電荷が標識物質と反発するためである。このような性質により、被覆核酸鎖が結合している核酸プローブを介する標識物質からの信号、例えば、酸化還元電位の検出が阻害される。
一方で、反応場に増幅産物6などの第1の配列8を含む核酸が増幅し、1本鎖の核酸プローブ(図17(b))が増加するに従って、核酸プローブ3に結合している核酸の量が減少する。その結果、標識物質4の酸化還元電位が検出されやすくなる。
標識物質の反応場への持ち込みは、核酸プローブ固定基体の反応場に接する基体の少なくとも1つの面に遊離可能に固定されていてもよく、反応液にあらかじめ溶解されていてもよい。また、反応場が、流路の内部に形成される場合には、流路の内壁の少なくとも一部分に遊離可能に固定されていてもよい。流路内部に複数の核酸プローブが固定される場合には、各核酸プローブに均等に対応できるように固定されることが好ましい。例えば、各核酸プローブに対応する位置となる流路の内部、即ち、そこにおいて各増幅反応が行われるべき各反応場内またはその周辺などに等量ずつ固定されることが好ましい。
即ち、標的核酸の検出または定量は、標識物質からの信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で信号を検出することにより行われてもよい。
第3の実施形態における標的核酸に関する信号は、例えば、標識物質からの信号を電位の関数における電流値として測定され得る。測定には、例えばサイクリックボルタンメトリー法が用いられ得る。与えられる電位は、使用する標識物質に依存して選択され、この電位が、三角波として掃引され得る。この時、与えられる電位および電流から標識物質の存在を反映する電気信号を得ることができる。
被覆核酸鎖が結合した核酸プローブ、検出されるべき標的核酸およびそれを増幅するためのプローブセットを反応場に存在させ、反応場を等温増幅反応条件下に維持したときに得られる電気信号の経時的変化をイメージ図として図18に示す。図18に示すように、は、連続して電極からの信号をモニタリングすると、反応液により反応場を形成した時点では、検出される電位は相対的に低く、図18の波形のa領域のように示される。このとき、図17(a)のように核酸プローブに対して被覆核酸鎖が結合している。それにより標識物質は、被覆核酸により増加された負電荷に反発して電極から遠ざけられている。一定時間が経過した後に、電気信号は急速に高くなる(図18、b領域)。これは、等温増幅反応条件下におかれた反応場で、標的核酸の増幅が進み、ある時点で急速に被覆核酸が核酸プローブから脱離したことを示している。その後、電気信号は緩慢に大きくなるものの特定のレベルで安定する(図18、c領域)。
標的核酸を検出および定量は、このような標識物質に由来する電気信号の経時的検出または複数時点での検出によって得られる波形に基づいて行われ得る。例えば、等温増幅反応の開始から所望の時間に亘りモニタリングするか、または等温増幅反応の開始から所望の時間の2つ以上の時点で標識物質からの電気信号を測定すればよい。得られた結果に基づいて、例えば、波形の変化に基づいて、または予め決定された閾値と比較することによって、或いは予めまたは並行して得られたコントロールプローブからのデータ、例えば、波形または数値と比較することによって、標的核酸の検出および定量が行われ得る。
例えば、得られたピーク電位が、予め定めた閾値よりも低い値になるまでの時間、またはある時点のピーク電位の値の違いによって標的核酸を検出または定量し得る。または、予め検量線を作成しておいてもよい。
例えば、コントロールと比較して標的核酸を定量する場合には、当該方法は、次のような工程を含み得る。コントロールとして、例えば、被覆核酸鎖とハイブリダイゼ−ションしていない一本鎖の核酸プローブ(以下「コントロールプローブ」と称する)を準備する。これを固定試料用の反応場とは独立した反応場に接する基体の少なくとも1つの面に固定する。このコントロールプローブは、試料について試験を行う反応場と同じ容器、例えば、流路内に存在してもよく、異なる容器に存在してもよい。コントロールプローブからの信号の測定は、コントロール用の反応場に試料が存在しないこと以外は、標的核酸の検出するための核酸プローブ(即ち、検出用プローブ)からの信号を測定するための手順と同様に行い得る。コントロールプローブおよび検出用プローブのそれぞれについて等温増幅反応を行い、標識物質からの電気信号を電位の関数における電流値として測定する。
電流値の測定には、例えばサイクリックボルタンメトリー法が用いられ得る。ここで、与えられる電位は、使用する標識物質に依存して選択され得、三角波として掃引され得る。与えられた電位と電流との酸化方向のグラフは図18のような波形を示し得る。このグラフから、ピーク電流およびピーク電位を求める。続いて、コントロールプローブと検出用プローブとからそれぞれ得られたピーク電位の差をΔピーク電位として求める。例えば、電気信号、例えば、ピーク電流、ピーク電位およびΔピーク電位は、コンピュータにより管理されて測定され、任意に算出され得る。Δピーク電位の測定または算出は、得られた電気信号から公知の何れかの方法により行われ得る。得られたΔピーク電位が、あらかじめ定めた閾値よりも低い値になるまでの時間、またはある時点のΔピーク電位の値の違いによって核酸の濃度を同定すればよい。
第3の実施形態に従う標的核酸検出法は、以下の工程を含んでもよい;
前記第1の配列とは異なる第2の配列を含む核酸鎖により固相に固定されている核酸プローブであって、前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域と前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域とを有する被覆核酸鎖が、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列へのハイブリダイズにより結合している核酸プローブの存在下で、前記標的核酸を鋳型として前記第1の配列を含む増幅産物を形成するためのプライマーセットを用いて等温増幅を行うことと;
前記等温増幅反応において形成された前記増幅産物と、前記核酸プローブとを競合させ、それにより前記被覆核酸を前記核酸プローブから脱離させ、前記第1の配列結合領域での前記第1の配列のハイブリダイズを介して前記被覆核酸に前記増幅産物を結合させることと;
前記等温増幅反応条件下で、核酸プローブと被覆核酸鎖が結合していることによって信号の検出可能性が阻害されるような標識物質からの当該信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出することと。
第3の実施形態の核酸検出法によって検出できる核酸の濃度は1aM〜1nMであり得る。
実施形態の方法によれば、標的核酸を簡便に定量することが可能となる。また、従来よりも短時間で多くの標的核酸の検査を行うことが可能となる。また、試料の取り違いが生じる可能性が低くなる。また、第3の実施形態によれば、第2の実施形態よりも、標的核酸の濃度をさらに精度よく簡便に定量でき得る。第3の実施形態の標的核酸検出法およびそこにおいて用いられるプローブ固定基体構成は、標識物質が反応液中に存在し、核酸プローブに結合していないこと以外は、上述した第2の実施形態と同様であり得る。従って、上述した第2の実施形態のために記載された何れの構成およびその組み合わせなどを第3の実施形態に組み込んでまたは上述の第3の実施形態の一部を変更して用いることが可能である。
4.第4の実施形態
上述した第1の実施形態において、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が、上記(b)の配列である場合の標的核酸検出法の例を第4の実施形態として以下に説明する。この実施形態では、第3の実施形態と同様に、標識物質として反応場において負の電荷を有する電気化学的に活性な物質を用いる。第4の実施形態は、核酸プローブおよび被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が、上記(b)の配列であることを除いて第3の実施形態と同様の核酸プローブ固定基体を用いて同様に行われ得る。
図19を参照しながら、第4の実施形態のために用いられるプローブ固定基体の1例について説明する。プローブ固定基体の基本的な構造は、図17(a)に示される構成と同じである。このプローブ固定基体102の基体2が備える電極2a上に、核酸プローブ3が固定されている。核酸プローブ3には、被覆核酸鎖5が結合している(図19(a))。これらが存在する反応場には、標識物質44が存在している。反応場を等温増幅条件下に維持すると、標的核酸を鋳型とする増幅反応が進み、時間の経過と共に増幅産物6が形成される(図19(b))。形成された増幅産物6は、被覆核酸鎖5に結合し、この状態を維持したままで増幅産物6を鋳型とした被覆核酸鎖5の伸長が開始される。その結果、核酸プローブ3に結合している核酸に由来する負の電荷は、当初の被覆核酸鎖5よりも大きくなっていく(図19(c))。その結果、電極2aで得られる電気信号は、経時的に小さくなる。これは、標識物質44の負の電荷と核酸プローブ3に結合した核酸の負の電荷の反発が大きくなるためである。
このようなプローブ固定基体102を用いて連続してモニタリングした際に、電極から得られる電気信号の経時的変化をイメージ図として図19(d)に示す。そこに示されるように、得られる電気信号は、増幅反応開始当初から増幅産物の形成および増加に伴い小さくなる。即ち、前記標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、前記核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されている。
このような現象を利用し、標識物質から検出される電気信号に基づいて、標的核酸の存在を検出すること、またはその存在量を測定することが可能となる。
第4の実施形態に従う標的核酸検出法は、以下の工程を含んでもよい;
前記第1の配列とは異なる第2の配列を含む核酸鎖により固相に固定されている核酸プローブであって、前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域と前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域とを有する被覆核酸鎖が、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列へのハイブリダイズにより結合している核酸プローブの存在下で、前記標的核酸を鋳型として前記第1の配列を含む増幅産物を形成するためのプライマーセットを用いて等温増幅を行うことと;
前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と、前記等温増幅反応において形成された前記増幅産物の前記第1の配列とをハイブリダイズを介して結合させ、前記増幅産物を鋳型として前記被覆核酸鎖を伸長させることと;
前記等温増幅反応条件下で、増幅産物を鋳型とした被覆核酸の伸長によって信号の検出可能性が阻害されるような標識物質からの当該信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出することと。
第4の実施形態の核酸検出法によって検出できる核酸の濃度は1aM〜1nMであり得る。
実施形態の方法によれば、標的核酸を簡便に定量することが可能となる。また、従来よりも短時間で多くの標的核酸の検査を行うことが可能となる。また、試料の取り違いが生じる可能性が低くなる。
第4の実施形態において使用される標識物質は、第3の実施形態において使用される標識物質と同様に、増幅産物を鋳型とした被覆核酸の伸長によって信号の検出が阻害されるような物質のうちの反応場において負の電荷を有する電気化学的に活性な物質であり得る。その具体的な物質の例は、上述の通りである。例えば、核酸プローブおよび被覆核酸鎖は、反応場の塩濃度および増幅反応時の温度においてもハイブリダイズを維持するように、更にまた、標的核酸からの増幅産物が存在する環境中でもハイブリダイズを維持するように、Tm値および配列の長さが設計される。
核酸プローブ3および被覆核酸鎖5を設計する、並びに等温増幅反応条件を決定する際の基準は、核酸プローブ、被覆核酸鎖および増幅反応物の塩基配列長さ、並びに等温増幅反応条件、例えば、温度および塩濃度の何れかを最初に設定し、上記の2つの条件を満たすように他の条件を設定すればよい。
第4の実施形態の標的核酸検出法およびそこにおいて用いられるプローブ固定基体構成は、被覆核酸鎖との結合が、増幅産物の存在に拘わらず維持されること以外は、上述した第3の実施形態と同様であり、また、それに加えて、標識物質が反応液中に存在し、核酸プローブに結合していないことを除けば、上述の第2の実施形態と同様であり得る。上述した第2および第3の実施形態のために記載された何れの構成およびその組み合わせなどを第4の実施形態に組み込んでまたは上述の第3の実施形態の一部を変更して用いることが可能である。言い換えれば、ここに記載される何れの実施形態についても、他の実施形態に記載された何れの構成およびその組み合わせ、並びにそれらの一部分などを互いに組み込み合う、または何れかの一部分を変更して他の実施形態の一部分と入れ替え得る。
5.標的核酸検出キット
本実施形態は、上述の標的核酸検出を行うためのアッセイキットとして提供されてもよい。標的核酸検出キットは、核酸プローブ固定基体とプライマーセットとを備え得る。或いは、標的核酸測定キットは、プライマーセットと、核酸プローブ固定基体と、検出可能な信号を生ずる標識物質とを備え得る。
これらの核酸プローブ固定基体、プライマーセット、標識物質の詳細は、上述した通りである。標的核酸検出キットに含まれる構成成分は、何れも独立した形態でアッセイキットに含まれてもよく、使用時に反応液の存在により形成される対応する反応場に持ち込まれ得るように、核酸プローブ固定基体以外の全ての成分または一部分の成分が核酸プローブ固定基体の少なくとも1つの面に固定された状態でアッセイキットに含まれてもよい。
プライマーセットは、核酸プローブ固定基体に遊離可能に固定されていてもよく、核酸プローブ固定基体に固定されずにキットに含まれてもよい。
またアッセイキットは、核酸プローブ固定基体およびプライマーセットに加えて、標的核酸を増幅するための更なる反応試薬を含んでもよい。更なる反応試薬は、例えば、酵素、dNTAおよび/または緩衝剤であり得る。
実施形態に従うアッセイキットは、より高い精度で簡便に標的核酸を検出することが可能であり、更に定量的に検出することも可能である。従来よりも短時間で標的核酸に関する検査を行うことが可能である。また、試料の取り違いが生じる可能性が低くなる。
上述のようなアッセイキット、プローブ固定化基体を用いた核酸検出方法は、例えば、以下のような標的核酸検出装置を用いて行われ得る。
6.標的核酸検出装置
実施形態に従うと、標的核酸検出装置が提供され得る。図20は標的核酸検出装置の実施形態の1例を示すブロック図である。標的核酸を検出するための標的核酸検出装置501は、測定ユニット510と、測定ユニット510を制御する制御機構515と、制御機構515を制御するコンピュータ516とを備える。測定ユニット510は、これに対して着脱可能に配置され、そこにおいて反応を行うチップカートリッジ511と、チップカートリッジ511からの信号を得る測定系512と、チップカートリッジへの液体の送りおよび/または出しをする送液系513と、チップカートリッジ511の温度を制御する温度制御機構514とを含む。
標的核酸検出装置501は、使用される標識物質およびチップカートリッジの構成などに応じて、以下のような構成を取り得る。
(1)チップカートリッジの外部から反応液を供給し、かつ電気的な信号を発する標識物質を用いる場合
標的核酸検出装置501は、チップカートリッジ511、このチップカートリッジ511と電気的に接続される測定系512、チップカートリッジ511内に設けられた流路とインタフェース部を介して物理的に接続し、チップカートリッジ511の外に配置された容器に貯蔵された試薬をチップカートリッジ511に送る送液系513およびチップカートリッジ511の温度制御を行う温度制御機構514を備える。
(2)チップカートリッジ内部に反応液が備えられ、かつ電気的な信号を発する標識物質を用いる場合
標的核酸検出装置501は、チップカートリッジ511、このチップカートリッジ511と電気的に接続される測定系512、チップカートリッジ511に設けられたバルブをインタフェース部を介して物理的に開閉することでチップカートリッジ511内部に貯蔵される試薬を所定の位置に移動させる送液系513およびチップカートリッジ511の温度制御を行う温度制御機構514を備える。
(3)チップカートリッジの外部から反応液を供給し、かつ光学的な信号を発する標識物質を用いる場合
標的核酸検出装置501は、チップカートリッジ511、このチップカートリッジ511からの光学的な信号を測定するための測定系512、チップカートリッジ511内部に設けられた流路とインタフェース部を介して物理的に接続し、チップカートリッジ511外部に配置された容器に貯蔵された試薬をチップカートリッジ511に送る送液系513およびチップカートリッジ511の温度制御を行う温度制御機構514を備える。
(4)チップカートリッジ内部に反応液が備えられ、かつ光学的な信号を発する標識物質を用いる場合
標的核酸検出装置501は、チップカートリッジ511、このチップカートリッジ511からの光学的な信号を測定するための測定系512、チップカートリッジ511に設けられたバルブをインタフェース部を介して物理的に開閉することでチップカートリッジ511内部に貯蔵される試薬を所定の位置に移動させる送液系513およびチップカートリッジ511の温度制御を行う温度制御機構514を備える。
例えば、上記(1)に示した標的核酸検出装置の1例について以下に説明する。
チップカートリッジ511は、例えば、図14に示されるマルチ核酸増幅検出反応具91と、この反応具91上に固定された被覆体301とを備える。反応具91と被覆体301とにより形成された空間は、向かって左手側を上流とし、右手側を下流とする流路を形成している。この流路内が反応部に相当し、そこに反応場が形成されて所望の増幅および検出反応が行われる。上流側の被覆体301の上面には、液体を送入するための送入口が設けられている(図示せず)。下流側の被覆体301の上面には、液体を送出するための排出口が設けられている(図示せず)。
測定系512は、チップカートリッジ511の電極に電圧を印加すると共に、チップカートリッジ511から発せられる電気的な信号を受け取り、制御機構515に送る。
送液系513は、反応液などの液体が収容されるべき容器、およびチップカートリッジ511とのインタフェースを備え得る。制御機構515による制御により、送液系513は、容器内の液体を、必要に応じて、インタフェースを介してチップカートリッジ511内に送る。
温度制御機構514は、増幅および検出反応のための温度条件を満たすように、チップカートリッジ511内の少なくとも反応部の温度を制御する。そのために温度制御機構514は、例えば、ヒーターおよび/またはペルティエ素子などを備え得る。温度制御機構514は、制御機構515により制御され、チップカートリッジ511内の反応部の温度を制御する。
制御機構515は、測定系512、送液系513、温度制御機構514、およびコンピュータ516に電気的に接続されている。制御機構515は、コンピュータ516に備えられたプログラムに従って、測定系512と、送液系513と、温度制御機構514とを制御し、測定系512から得た信号を検出し、当該信号を測定データとして格納する機構を有する。
コンピュータ516は、制御機構515に制御条件パラメータを与えて制御機構515を制御するとともに、制御機構515に格納された測定データに基づいて解析処理を実行し、核酸を検出および/または定量する。
このような核酸検出装置による核酸検出は、例えば、以下のように行われ得る。まず、実施者は、チップカートリッジ511の反応部に試料を注入し、そのチップカートリッジ511を測定ユニット510に挿入し、標的核酸検出装置501による検出を開始する。送液系513の容器には、予め標識物質を含む反応液が充填されている。コンピュータに予め格納されたプログラムに従い、コンピュータが送液系213を作動させ、反応液がチップカートリッジ511の反応部に送られる。コンピュータおよび制御機構の制御の下で、温度制御機構514が、反応場の温度を調節して等温増幅反応を開始させる。コンピュータおよび制御機構の制御の下で測定系512が反応部からの電気信号を獲得する。測定系512により得られた電気信号は、制御機構に送られて、データとして格納される。格納されたデータは、プログラムに従って、コンピュータにより呼び出され、処理および解析され、試料中に含まれる検出されるべき核酸についての情報、即ち、検出結果および/または定量結果が得られる。コンピュータにより得られた結果は、所望に応じてコンピュータが備えるディスプレイまたはプリンタなどに出力されてもよく、或いはコンピュータに記憶されてもよい。
上述の実施形態の例では、電気信号を検出する装置の例を示したが、光信号を生ずる標識物質を使用する場合についても、同様に標的核酸検出装置を使用することが可能である。その場合、標的核酸検出装置は、測定系512が光信号を検出するように構成されること以外は、上述と同様の構成を有し得る。例えば、標識物質として蛍光物質を使用する場合の測定系512は、反応部に励起光を照射する光照射ユニット、標識物質からの蛍光を光信号として得るセンシングユニット、光信号を電気信号に変換する光電変換ユニットなどを備え得る。
実施形態に従う標的核酸検出装置は、従来よりも高い精度で簡便に標的核酸を検出または定量することが可能である。また、当該標的核酸検出装置によれば、従来よりも短時間で標的核酸に関する検査を行うことが可能である。
[例]
<例1>
図14に示された反応具と同様の構成を有する電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体1を作製し、使用した例を記載する。何れの電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体も、プライマー固定領域に固定されたプライマーセットと、プライマー固定領域の近傍のプローブ固定領域に固定された核酸プローブとしてのプローブDNAとを含む。プローブ固定領域を電極上に配置し、ハイブリダイズの存在に依存して生じる電流応答を検出するためのセンサとして使用した。
図21(a)および(b)は、アレイ型核酸プローブ固定基体のプローブ固定領域の一部分を拡大した模式図である。電極上に配置されたプローブ固定領域13には、核酸プローブ3としてのプローブDNAが固定されている。核酸プローブ3は、核酸鎖3aとその一端に付与された標識物質4と他端に結合された末端修飾基18とを含む。核酸鎖3aには、被覆核酸鎖5が結合されている。核酸鎖3aと被覆核酸鎖5とは、その配列が互いに相補的である。被覆核酸鎖5の核酸プローブ3からの離脱により検出可能となる標識物質からの検出信号は、核酸プローブ3が固定されている電極を含むセンサによって検出される。
図21(b)は、被覆核酸鎖を結合していない核酸プローブ3を固定したときのアレイ型核酸プローブ固定基体のプローブ固定領域の一部分を拡大した模式図である。被覆核酸鎖5を結合していないこと以外は図21(a)と同じである。
(1)チップ素材の作製
パイレックス(登録商標)ガラス表面にチタンおよび金の薄膜をスパッタリングにより形成した。その後、エッチング処理により、チタンおよび金の電極をガラス表面上に形成した。更にその上に絶縁膜を塗付して、エッチング処理により絶縁膜に円形窓および矩形窓を開口して作用極、対極、参照極およびプローバー接触部を露出させた。これをアレイ型プライマープローブチップ用のチップ素材とした。
(2)アレイ型核酸プローブ固定基体の作製
まず、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(A)を用意した。この配列(A)の3’末端をチオールで標識し、5’末端をフェロセンで標識した。配列(B)からなる核酸鎖を被覆核酸鎖として用意し、配列(A)を含む核酸プローブにハイブリダイズさせて、2本鎖核酸プローブ(A)を準備した。同様に、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(A)を用意した。この配列(A)の3’末端をチオールで標識し、5’末端をフェロセンで標識した。被覆核酸鎖を結合させずに1本鎖核酸プローブ(B)とした。2本鎖核酸プローブは、1本鎖核酸プローブを固定した基板上に、被覆核酸鎖を添加することで作成することも可能である。
これらの2本鎖核酸プローブ(A)および1本鎖核酸プローブ(B)を2つの作用極上に種類毎にそれぞれ固定した。使用した核酸鎖の塩基配列を表1に示す。
Figure 0006271076
固定は次の通りに行った。2本鎖核酸プローブ(A)および1本鎖核酸プローブ(B)をそれぞれ3μMずつ含むプローブ溶液(A)および(B)を調製した。これらの溶液100nLをそれぞれ作用極上にスポットした。40℃にて乾燥し、超純水により洗浄した。その後、作用極表面に残った超純水を除去し、チップ素材の2つの作用極に核酸プローブを固定した。
図21(a)は、電極上に配置されたにプローブ固定領域13に、固定された2本鎖核酸プローブ(A)を模式的に示す。図21(b)は、電極上に配置されたプローブ固定領域13に固定された1本鎖核酸プローブ(B)を模式的に示す。
(3)電気化学的信号の検出
核酸プローブ(A)および核酸プローブ(B)からの電気化学的な応答を電気化学アナライザーALS660aを用いて測定した。測定方法にはサイクリックボルタンメトリーを使い、電位掃引速度は100V/sで行った。
測定した結果を図22(a)および(b)に示す。これらのグラフの横軸は電位(V)であり、縦軸は電流(nA)を示す。図22(a)は、核酸プローブ(A)を固定した電極から検出された結果であり、図22(b)は、核酸プローブ(B)を固定した電極から検出された結果である。核酸プローブと被覆核酸鎖とがハイブリダイズして核酸プローブが2本鎖であることによって、被覆核酸鎖を結合していない核酸プローブで得られる電流値の約半分の電流値であった。この結果から、被覆核酸鎖の核酸プローブへのハイブリダイズにより核酸プローブ中の標識物質からの信号をマスクできることが明らかとなった。
(4)プライマーセットの準備
次に、プライマーセット12として使用するプライマーDNAを用意した。使用するプライマーDNAは、Loop−mediated Isothermal amplification(LAMP)法による増幅のためのプライマーセット12である。使用したプライマーDNAの塩基配列を表2に示す。
Figure 0006271076
LAMP増幅反応に使用するプライマーの濃度については、FIPプライマーおよびBIPプライマーは3.2μM、F3プライマーおよびB3プライマーを0.4μM、LPFプライマーを1.6μMで行った。
(5)LAMP反応液の作製
LAMP反応液の組成を以下の表3に示す。
Figure 0006271076
通常のLAMP反応では0.8Mのベタインを添加するが、電気化学的な測定ではベタインが反応を阻害するために用いなかった。鋳型としては10copy/μLのプラスミド(長さ:約4kbp)を使用し、LAMP増幅反応は63℃で行った。使用されたプラスミドは、pMAベクターに表3−2に示す配列番号9により示される配列(Parvo virusのVP遺伝子、長さ1000bp)が挿入されたものである。そこにおいて、配列番号9は、その一部分に配列番号2のポリヌクレオチドを含む。表3−2の配列番号2の配列に対応する部分に下線を付す。
Figure 0006271076
(5)電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を用いたLAMP増幅および核酸プローブによる標的核酸の検出
核酸プローブを固定したチップ上でLAMP増幅を行いながら、フェロセンの酸化電流の測定を行った。結果を図23に示す。鋳型を添加したチップと添加していないチップとの電流値の比(S/N)をプロットした結果、30分の時点からS/Nが変化し始め、45分時点でS/Nが2まで変化した。このことから、フェロセンの電流をモニタリングし、S/Nの変化する時間をモニタリングする電気化学的な方法で標的核酸を定量的に検出できることが明らかとなった。
<例2>
以下に、蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を作製して使用した例を記載する。
何れのアレイ型核酸プローブ固定基体も、標識物質として蛍光物質を用い、更に、被覆核酸鎖により蛍光物質からの信号の検出の阻害を補助するための修飾物質を用いたこと以外は、例1と同様に蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体1を準備した。光学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体は、プライマー固定領域に固定されたプライマーセットと、プライマー固定領域の近傍のプローブ固定領域に固定された核酸プローブとしてのプローブDNAとを含む。プローブ固定領域は、電極上に配置したが、検出信号の検出は、標識物質からの蛍光強度を光学的に測定することにより行った。
図24(a)および(b)は、アレイ型核酸プローブ固定基体のプローブ固定領域の一部分を拡大した模式図である。図24(a)の核酸プローブ3は、核酸鎖3aとその一端に付与された標識物質4と、他端に結合された末端修飾基とを含む。被覆核酸鎖5と核酸鎖3aとは、互いに相補配列を有する。被覆核酸鎖5と核酸鎖3aとがハイブリダイズしたときに、核酸鎖3aの標識物質4が結合している末端と対向している、被覆核酸鎖5の一端には修飾物質が付与されている。図24(b)の核酸プローブ3は、被覆核酸鎖5を結合していない。
(1)チップ素材の作製
パイレックス(登録商標)ガラス表面にチタンおよび金の薄膜をスパッタリングにより形成した。これをアレイ型プライマープローブチップ用のチップ素材とした。
(2)アレイ型核酸プローブ固定基体の作製
まず、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(A)を用意した。この配列(A)の3’末端をチオールで標識し、5’末端をFAMで標識した。これを核酸プローブ(C)とした。配列(B)からなる核酸鎖を被覆核酸鎖として用意し、配列(A)を含む核酸プローブ(C)にハイブリダイズさせて、2本鎖核酸プローブ(C)を準備した。同様に、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(A)を用意した。この配列(A)の3’末端をチオールで標識し、5’末端をFAMで標識した。被覆核酸鎖を結合させずに1本鎖核酸プローブ(D)とした。
これらの2本鎖核酸プローブ(C)および1本鎖核酸プローブ(D)を2つの作用極上に種類毎にそれぞれ固定した。使用した核酸鎖の塩基配列を表4に示す。
Figure 0006271076
固定は次の通りに行った。2本鎖核酸プローブ(C)および1本鎖核酸プローブ(D)をそれぞれ3μMずつ含むプローブ溶液(C)および(D)を調製した。これらの溶液100nLをそれぞれ作用極上にスポットした。40℃にて乾燥し、超純水により洗浄した。その後、作用極表面に残った超純水を除去し、チップ素材の2つの作用極に核酸プローブを固定した。図24(a)は、電極上に配置されたプローブ固定領域13に固定された2本鎖核酸プローブ(C)を模式的に示す。図24(b)は、電極上に固定されたプローブ固定領域13に固定された1本鎖核酸プローブ(D)を模式的に示す。
(3)光学的信号の検出
これらの核酸プローブからの蛍光強度を測定した。その結果、2本鎖核酸プローブ(C)からは、1本鎖核酸プローブ(D)で測定された蛍光強度の約2倍の蛍光強度が測定された。
(4)プライマーセットの準備
次に、プライマーセット12として使用するプライマーDNAを用意した。使用するプライマーDNAは、LAMP法による増幅のためのプライマーセットである。使用したプライマーDNAの塩基配列を表5に示す。
Figure 0006271076
LAMP増幅反応に使用するプライマーの濃度については、FIPプライマーおよびBIPプライマーは3.2μM、F3プライマーおよびB3プライマーを0.4μM、LPFプライマーを1.6μMで行った。
(5)LAMP反応液の作製
LAMP反応液の組成を以下の表6に示す。
Figure 0006271076
蛍光測定では通常のLAMP反応と同様に、0.8Mのベタインを添加した。鋳型としては10copy/μLのプラスミド(長さ:約4kbp)を使用し、LAMP増幅反応は63℃で行った。プラスミドは、例1と同じプラスミドを使用した。
(6)蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を用いたLAMP増幅および核酸プローブによる標的核酸の検出
上述と同様な方法により、2本鎖核酸プローブ(C)を固定したチップ上でLAMP増幅を行い、60分後に蛍光測定を行った。コントロールとして、鋳型を含まないLAMP反応液で実験を行った。結果を図25に示す。鋳型を含まない条件で得られた蛍光強度比は0.7程度であった(図中「対象遺伝子無」と記す)。これに対して、鋳型を含む条件で得られた蛍光強度比は、その1.8倍程度にまで増大した(図中「対象遺伝子有」と記す)。これらのことから、FAMの蛍光強度を測定することによって、光学的に標的核酸の有無を決定できることが明らかとなった。
(7)蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を用いたLAMP増幅および核酸プローブによる標的核酸の検出
鋳型濃度がそれぞれ10copy/μLと10copy/μLの試料を準備した。他方、上記(6)と同様の蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を準備した。蛍光検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体上で増幅反応の開始時から蛍光強度を経時的に測定した。結果を図26に示す。グラフの横軸は、反応開始時からの時間(分)を示す。
図26から明らかであるように、反応後60分で鋳型核酸の濃度依存的な蛍光強度の増大が観察された。また、特に、10copy/μLと鋳型濃度の高い試料において顕著に強い蛍光強度値が得られた。このことから、FAMなどの蛍光物質からの蛍光信号をモニタリングすることにより、光学的に標的核酸を定量することが可能であることが証明された。
以上のことから、本実施形態によれば、核酸を簡便かつ高感度に測定できる基体、キットおよび方法を提供することができることが証明された。
<例3>
以下に、第3の実施形態に従う核酸検出方法により標的核酸を定量する例を記載する。これは、標識物質が反応溶液中に含まれる。標的核酸が反応場に存在したとき、被覆核酸鎖は、核酸プローブから脱離し、それにより標識物質が対応する電極によって検出可能となる例である。
何れのアレイ型核酸プローブ固定基体も、プライマー固定領域に固定されたプライマーセットと、プライマー固定領域の近傍のプローブ固定領域に固定された核酸プローブとしてのプローブDNAとを含む。プローブ固定領域を電極上に配置し、ハイブリダイズの存在に依存して生じる電流応答を検出するためのセンサとして使用した。使用した核酸プローブには、被覆核酸鎖が結合されていて2本鎖を形成している。また、標識物質は、反応液中に存在させた。
(1)チップ素材の作製
例1と同様の方法でチップを作製した。
(2)アレイ型核酸プローブ固定基体の作製
まず、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(E)を用意した。この配列の3’末端をチオールで標識した。配列(G)からなる核酸鎖を被覆核酸鎖として用意し、配列(E)を含む核酸プローブにハイブリダイズさせて、2本鎖核酸プローブ(EG)を準備した。同様に、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(F)を用意した。この配列(F)の3’末端をチオールで標識した。被覆核酸鎖を結合させずに1本鎖核酸プローブ(F)とした。2本鎖核酸プローブは、1本鎖核酸プローブを固定した基板上に、被覆核酸鎖を添加することで作成することも可能である。
これらの2本鎖核酸プローブおよび1本鎖核酸プローブを2つの作用極上に種類毎にそれぞれ固定した。使用した核酸鎖の塩基配列を表7に示す。
Figure 0006271076
これらの核酸プローブの固定は、例1の固定と同じ方法によって、チップ素材の2つの作用極に固定することにより行った。
(3)電気化学的信号の検出
2本鎖核酸プローブおよび1本鎖核酸プローブによる1mMフェリシアン化物イオンからの電気化学的な応答を電気化学アナライザーALS660aを用いて測定した。測定方法にはサイクリックボルタンメトリーを使い、電位掃引速度は0.25V/sで行った。
測定した結果を図27(a)および(b)に示す。これらのグラフの横軸は電位(V)であり、縦軸は電流(nA)を示す。
図27(a)は、2本鎖核酸プローブと1本鎖核酸プローブを固定した電極から検出された結果である。核酸プローブと被覆核酸鎖とがハイブリダイズして核酸プローブが2本鎖である場合よりも、被覆核酸鎖とハイブリダイズせず核酸プローブが一本鎖である場合では、フェリシアン化物イオンから得られる酸化還元電位がプラスにシフトすることが分かった。
(4)プライマーセットの準備
次に、プライマーセットとして使用するプライマーDNAを用意した。使用するプライマーDNAは、LAMP法による増幅のためのプライマーセットである。使用したプライマーDNAの塩基配列を表8に示す。
Figure 0006271076
LAMP増幅反応に使用するプライマーの濃度については、F3プライマーおよびB3プライマーを0.4μM、FIPプライマーおよびBIPプライマーは3.2μM、LPFプライマーを1.6μMで行った。
(5)LAMP反応液の作製
LAMP反応液の組成を以下の表9に示す。
Figure 0006271076
通常のLAMP反応では0.8Mのベタインを添加するが、電気化学的な測定ではベタインが反応を阻害するために用いなかった。鋳型となる標的核酸は、10copy/μLのプラスミド(長さ:約4kbp)を使用した。LAMP増幅反応は63℃で行った。このプラスミドは、pMAベクターに表10に示す配列番号9により示されるパルボウイルス由来のVP遺伝子(Parvo virusのVP遺伝子、長さ1000bp)が挿入されたものである。
Figure 0006271076
前記LAMP反応液に、フェリシアン化カリウムを1mMの濃度になるように加えた。
(6)電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を用いたLAMP増幅および核酸プローブによる標的核酸の検出
核酸プローブを固定したチップ上でLAMP増幅を行いながら、フェリシアン化物イオンの酸化還元電位の測定を行った。結果を図27(B)に示す。増幅前には、一本鎖の核酸プローブ(F)と2本鎖の核酸プローブ(EG)の場合では、フェリシアン化物イオンの酸化還元電位が異なっていたが、増幅後には同じ波形になることが明らかとなった。
次に、核酸プローブを固定したチップ上でLAMP増幅を行いながら、標的核酸を0copy/μLまたは10−5copy/μLで反応場に存在させて、それぞれ電気信号をモニタリングすることにより、電流信号の経時変化を測定した。結果を図28に示す。図28のグラフには、上記2段階の濃度について、1本鎖の鋳核酸プローブ(F)について得たコントロール実験区と、2本鎖の核酸プローブ(EG)について得た実験区との電位の差であるΔピーク電位をプロットした。その結果、標的核酸の濃度が0copy/μLの場合も、10copy/μLの何れの場合にも、時間と共にΔ電位の値が小さくなった。しかしながら、Δ電位の減少率を示すグラフの傾きの大きさは、10copy/μLの方が大きかった。従って、この結果から、反応液中に存在する標的核酸の濃度が低い程、Δ電位の値の減少速度が遅く、標的核酸の濃度が高い程、Δ電位の減少速度が速いことが明らかになった。このことから、例えば、特定のΔ電位の値になるまでの時間を測定することにより、標的核酸の濃度を明らかにすることができる。或いは、例えば、特定の時間でのΔ電位の大きさを測定することにより、標的核酸の濃度を明らかにすることができる。即ち、これらの特定のΔ電位の値および特定の時間を閾値とすることができ得る。以上のことから、フェリシアン化物イオンの電位をモニタリングし、Δピーク電位の変化する時間をモニタリングする電気化学的な方法により、標的核酸を定量的に検出できることが明らかとなった。
以上のことから、本実施形態によれば、核酸を簡便かつ高感度に測定できる基体、キットおよび方法を提供することができることが証明された。
<例4>
以下に、第4の実施形態に従う核酸検出方法により標的核酸を定量する例を記載する。これは次のような例である。標識物質が反応溶液中に含まれ状態で標的核酸の等温増幅反応が行われる。反応により増幅産物が形成されると、核酸プローブに被覆核酸鎖が結合した状態のまま、増幅産物が被覆核酸鎖に結合する。その後、被覆核酸鎖は、そこに結合した増幅産物を鋳型として伸長する。それにより標識物質は、反応当初よりも更に電極から遠ざけられる。
標識物質から、被覆核酸鎖の伸長による信号を検出する標的核酸検出法の例を記載する。
何れのアレイ型核酸プローブ固定基体も使用した
例3と同様のセンサを使用した。
(1)チップ素材の作製
例1と同様の方法でチップを作製した。
(2)アレイ型核酸プローブ固定基体の作製
まず、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(E)を用意した。この配列(E)の3’末端をチオールで標識した。配列(H)からなる核酸鎖を被覆核酸鎖として用意し、配列(E)を含む核酸プローブにハイブリダイズさせて、2本鎖核酸プローブ(EH)を準備した。同様に、核酸プローブに含まれる核酸鎖として配列(F)を用意した。この配列(F)の3’末端をチオールで標識した。被覆核酸鎖を結合させずに1本鎖核酸プローブ(F)とした。2本鎖核酸プローブは、1本鎖核酸プローブを固定した基板上に、被覆核酸鎖を添加することで作成することも可能である。
これらの2本鎖核酸プローブ(E)および1本鎖核酸プローブ(F)を2つの作用極上に種類毎にそれぞれ固定した。使用した核酸鎖の塩基配列は前出の表7に示す。
これらの核酸プローブの固定は、例1の固定と同じ方法によって、チップ素材の2つの作用極に固定することにより行った。
(3)電気化学的信号の検出
例3と同様の方法により電気化学的信号を検出した。
(4)プライマーセットの準備
例3と同様のプライマーセットを準備し、例3と同様の濃度で使用した。
(5)LAMP反応液の作製
LAMP反応液の組成を以下の表11に示す。酵素としてGspSSDを使用し、KCl濃度を60mMに調整した。標的核酸および標識物質は、例3と同じものを使用した。
Figure 0006271076
(6)電気化学的検出用のアレイ型核酸プローブ固定基体を用いたLAMP増幅および核酸プローブによる標的核酸の検出
核酸プローブを固定したチップ上でLAMP増幅を行いながら、標的核酸を0、10、10、10および10copy/μLで反応場に存在させて、それぞれの電気信号をモニタリングすることによって電流信号の経時変化を測定した。それによりフェリシアン化物イオンの酸化還元電位を行った。結果を図29に示す。図29のグラフには、上記5段階の濃度について、1本鎖の鋳核酸プローブ(F)について得たコントロール実験区と、2本鎖の核酸プローブ(EH)について得た実験区との電位の差であるΔピーク電位をプロットした。その結果、標的核酸の何れの濃度の場合にも時間と共にΔ電位の値が小さくなった。そのようなΔ電位の減少の速度は、標的核酸の濃度が高くなるにしたがって小さくなった。即ち、この結果から、反応液中に存在する標的核酸の濃度が低い程、Δ電位の値の減少速度が速く、標的核酸の濃度が高い程、Δ電位の減少速度が遅いことが明らかになった。このことから、例えば、特定のΔ電位の値になるまでの時間を測定することにより、標的核酸の濃度を明らかにすることができる。或いは、例えば、特定の時間でのΔ電位の大きさを測定することにより、標的核酸の濃度を明らかにすることができる。即ち、これらの特定のΔ電位の値および特定の時間を閾値とすることができ得る。以上のことから、フェリシアン化物イオンの電位をモニタリングし、Δピーク電位の変化する時間をモニタリングする電気化学的な方法により、標的核酸を定量的に検出できることが明らかとなった。
以上のことから、本実施形態によれば、核酸を簡便かつ高感度に測定できる基体、キットおよび方法を提供することができることが証明された。鋳型の濃度に応じて酸化還元電位が異なり、本実施形態によれば、核酸を簡便かつ高感度に測定できる基体、キットおよび方法を提供することができることが証明された。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…核酸プローブ固定基体、2…基体、2a…電極、3…核酸プローブ、3a…核酸鎖、4…標識物質、5…被覆核酸鎖、6…増幅産物、7…第2の配列、7’…第2の配列結合領域、8…第1の配列、8’…第1の配列結合領域、9…クエンチャー、11…プライマー固定領域、12…プライマーセット、13…プローブ固定領域、14…底部、15,15a,15b,15c…流路、16…面、17…増幅領域、44…標識物質、91…マルチ核酸増幅検出反応具、101…プローブ固定基体、102…プローブ固定基体、111…チップ素材、112…基板、113,113a,113b,113c,113d…電極、114…金属薄膜パターン、115…金属薄膜パターン、116…大矩形部、117…小矩形部、118…細線、119…絶縁膜、120,120a,120b,120c,120d…円形窓、121…矩形窓、122,122a,122b…作用極、123…対極、124…参照極、201a,201b…プローブ固定領域、202a,202b…核酸プローブ、203a,203b…プライマー固定領域、204a,204b…プライマーセット、205…増粘剤、301…被覆体、302…反応液、303…鋳型核酸、501…標的核酸検出装置、510…測定ユニット、511…チップカートリッジ、512…測定系、513…送液系、514…温度制御機構、515…制御機構、516…コンピュータ。

Claims (31)

  1. 標的核酸検出法であって、
    当該標的核酸は、第1の配列および/またはその相補配列を含み、
    当該方法が、
    (A)前記標的核酸を含み得る試料と、
    前記第1の配列とは異なる第2の配列を含む核酸鎖を含み、これによって、反応場を支持するための基体の少なくとも1面に固定された核酸プローブと、
    前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域と前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域とを含み、前記第2の配列結合領域が前記第2の配列にハイブリダイズによって当該核酸プローブに結合している被覆核酸鎖と、
    検出可能な信号を生ずる標識物質と、
    前記第1の配列を含む増幅産物を形成するためのプライマーセットと
    を含む反応液により形成されている反応場を等温増幅反応条件下に置くこと、および
    (B)前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブからの当該信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出すること、
    (C)前記(B)で得られた前記試料についての当該信号に基づいて、前記標的核酸についての検出結果を得ること
    を含み、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、
    (a)前記等温増幅反応条件下で、前記被覆核酸鎖に対する前記増幅産物と前記核酸プローブとの競合、それによる前記核酸プローブからの前記被覆核酸鎖の脱離、および前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合が得られる配列であるか、または
    (b)前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が維持された状態で、前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合、および前記増幅産物を鋳型とした前記被覆核酸鎖の伸長が得られる配列であり、
    前記標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、前記核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されている
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(a)の配列であり、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場に前記標的核酸が存在しない場合には維持され、当該反応場に前記標的核酸が存在する場合には、当該標的核酸と前記核酸プローブとが前記被覆核酸鎖に対して競合することにより解消するような範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(b)の配列であり、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場において前記標的核酸が存在する場合および不在の場合共に維持されるような範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記等温増幅反応条件が、25℃〜70℃の反応場の温度条件を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記等温増幅反応条件が、10mM〜120mMの反応場の塩濃度条件を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記被覆核酸鎖の塩基長が、前記核酸プローブの塩基長よりも長いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記第1の配列結合領域と第2の配列結合領域とが、前記被覆核酸鎖上に独立して配置されている、または前記被覆核酸鎖上に互いに部分的若しくは全体に亘り重なり合って配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記標識物質が、電気化学的に活性な物質または光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記標識物質が、前記核酸プローブの当該核酸鎖に結合しており、アントラキノン、フェロセンおよびメチレンブルーからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であるか、またはAlexa flour、BODIPY、Cy3、Cy5、FAM、Fluorescein、HEX、JOE、Marina Blue(商標)、Oregon Green、Pacific Blue(商標)、Rhodamine、Rhodol Green、ROX、TEMRA、TETおよびTexas Red(登録商標)からなる群より選択される光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
  10. 前記標識物質は、前記反応液中に分散しており、フェリシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、鉄錯イオン、ルテニウム錯イオン、およびコバルト錯イオンからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
  11. 前記プライマーセットが、前記反応場の形成の以前に前記核酸プローブが固定されている当該基体の当該面に遊離可能に固定されており、前記反応場への前記プライマーセットの持ち込みが、前記反応液への前記基体からの遊離によって達成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記試料についての前記(A)および前記(B)を行うことと並行して、
    (D)コントロールプローブと、
    検出可能な信号を生ずる標識物質と、
    が存在している反応場を前記(A)に記載の等温増幅反応条件と同様な条件下に置くこと、および
    (E)前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブからの当該信号をモニタリングする、または2つ以上の時点で検出すること、
    を行い、更に
    (F)前記(B)で得られた前記試料についての当該信号と、前記(E)で得られた当該コントロールプローブからの当該信号とを比較することにより、前記標的核酸についての検出結果を得ること
    を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記標的核酸の検出が、定量的な検出であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 標的核酸を検出するためのアッセイキットであって、
    前記アッセイキットは、
    当該標的核酸を増幅するためのプライマーセットと、
    そこにおいて等温増幅反応を行い、それにより生じた増幅産物を検出するためのプローブ固定基体と、
    検出可能な電気化学的信号を生ずる標識物質と、
    任意に反応試薬と
    を含み、
    前記標的核酸は、第1の配列および/またはその相補配列を含み、
    前記プライマーセットは、前記第1の配列および/またはその相補配列を増幅するためのプライマーを含み、
    前記プローブ固定基体は、
    前記等温増幅反応を行うための反応場を支持する基体;
    前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に配置されたプローブ固定領域;
    前記プローブ固定領域に固定された第2の配列を含む核酸鎖を含む核酸プローブ;および
    前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域と、前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域とを含み、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列とのハイブリダイズによって前記核酸プローブに結合している被覆核酸鎖;
    を備え、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、
    (a)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記被覆核酸鎖に対する前記増幅産物と前記核酸プローブとの競合、それによる前記核酸プローブからの前記被覆核酸鎖の脱離、および前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合が得られる配列であるか、または
    (b)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が維持された状態で、前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合、および前記増幅産物を鋳型とした前記被覆核酸鎖の伸長が得られる配列であり、
    前記標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、前記核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されおり、
    前記標識物質は、前記プローブ固定基体と別体であるか、または前記少なくとも1つの面における前記核酸プローブに対応する位置に、間接的若しくは遊離可能に直接に、固定されている
    ことを特徴とするアッセイキット。
  15. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(a)の配列であり、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場に前記標的核酸が存在しない場合には維持され、当該反応場に前記標的核酸が存在する場合には、当該標的核酸と前記核酸プローブとが前記被覆核酸鎖に対して競合することにより解消するような範囲にあることを特徴とする請求項14に記載のアッセイキット。
  16. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(b)の配列であり、
    前記標識物質は、前記反応液中に分散しており、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場において前記標的核酸が存在する場合および不在の場合共に維持されるような範囲にあることを特徴とする請求項14に記載のアッセイキット。
  17. 前記標識物質が、電気化学的に活性な物質または光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のアッセイキット。
  18. 前記標識物質が、前記核酸プローブの当該核酸鎖に結合しており、アントラキノン、フェロセンおよびメチレンブルーからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であるか、またはAlexa flour、BODIPY、Cy3、Cy5、FAM、Fluorescein、HEX、JOE、Marina Blue(商標)、Oregon Green、Pacific Blue(商標)、Rhodamine、Rhodol Green、ROX、TEMRA、TETおよびTexas Red(登録商標)からなる群より選択される光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項14〜16の何れか1項に記載のアッセイキット。
  19. 前記標識物質は、前記反応液中に分散しており、フェリシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、鉄錯イオン、ルテニウム錯イオン、およびコバルト錯イオンからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であることを特徴とする請求項14〜16の何れか1項に記載のアッセイキット。
  20. 当該プライマーセットが、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に配置されたプライマー固定領域に遊離可能に固定されていることを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載のアッセイキット。
  21. 更に、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に独立して配置された少なくとも1つのコントロールプローブ固定領域、および前記コントロールプローブ固定領域に固定されたポジティブコントロールプローブおよび/またはネガティブコントロールプローブを含むことを特徴とする請求項14〜20のいずれか1項に記載のアッセイキット。
  22. 請求項14〜21の何れか1項に記載のアッセイキットであって、
    前記標的核酸は、第1〜第nの標的核酸であり、前記第1〜第nの標的核酸は、第1〜第1の配列および/またはその相補配列である第1〜第nの相補配列をそれぞれ含み、
    前記プライマーセットは、前記第1〜第1の配列をそれぞれ増幅するためのプライマーをそれぞれ含む複数のプライマー群を含み、
    前記プローブ固定基体において、
    前記基体は、第1〜第nのプライマーセットを用いる等温増幅反応が、当該第1〜第nの標的核酸をそれぞれ鋳型として、互いに異なる配列の前記第1〜第1の配列をそれぞれ含む第1〜第nの増幅産物を生成する反応場を支持するものであり、
    前記プローブ固定領域として、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に独立して配置された第1〜第nのプローブ固定領域を含み、
    前記核酸プローブとして、前記第1〜第nのプローブ固定領域のそれぞれにそれぞれ固定された第2〜第2の配列をそれぞれ含む第1〜第nの核酸鎖をそれぞれ含む核酸プローブ群を含み、
    前記被覆核酸鎖として、前記第1〜第1の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第1〜第1の配列結合領域と、前記第2〜第2の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第2〜第2の配列結合領域とをそれぞれ含み、前記第2〜2の配列結合領域それぞれでの前記第2〜2の配列それぞれとのハイブリダイズによって前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれに対して結合している第1〜第nの被覆核酸鎖を含み、
    前記第1〜第nの核酸プローブおよび前記第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、
    (a)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれに対応する前記第1〜第nの増幅産物と前記1〜第nの核酸プローブ配列とのそれぞれの競合、それらによる前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれからの前記第1〜第nの被覆核酸鎖の脱離、および前記第1〜第nの被覆核酸鎖の前記第1〜1の配列結合領域と前記第1〜第nの増幅産物の前記第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合が得られる配列であるか、または
    (b)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれの前記第1〜1の配列結合領域と前記第1〜第nの増幅産物の前記第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合、および前記第1〜第nの増幅産物のそれぞれを鋳型とした前記第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの伸長が得られる配列である
    ことを特徴とするアッセイキット。
  23. 標的核酸を検出するためのプローブ固定基体であって、
    前記標的核酸は、第1の配列および/またはその相補配列を含み、
    前記プローブ固定基体は、
    プライマーセットを用いて、前記第1の配列および/またはその相補配列を増幅し、増幅産物を得るための等温増幅反応を行う反応場を支持する基体;
    前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に配置されたプローブ固定領域;
    前記プローブ固定領域に固定された第2の配列を含む核酸鎖を含む核酸プローブ;
    前記第1の配列に相補的な第1の配列結合領域と、前記第2の配列に相補的な第2の配列結合領域とを有し、前記第2の配列結合領域での前記第2の配列とのハイブリダイズによって前記核酸プローブに結合している被覆核酸鎖;および
    前記少なくとも1つの面における前記核酸プローブに対応する位置に、間接的または遊離可能に直接に、固定されている検出可能な信号を生ずる標識物質;
    を備え、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、
    (a)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記被覆核酸鎖に対する前記増幅産物と前記核酸プローブとの競合、それによる前記核酸プローブからの前記被覆核酸鎖の脱離、および前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合が得られる配列であるか、または
    (b)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が維持された状態で、前記被覆核酸鎖の前記第1の配列結合領域と前記増幅産物の前記第1の配列とのハイブリダイズを介した結合、および前記増幅産物を鋳型とした前記被覆核酸鎖の伸長が得られる配列であり、
    前記標識物質が生ずる検出可能な信号の検出は、前記核酸プローブに結合している核酸の存在または存在量の増加により阻害されている
    ことを特徴とするプローブ固定基体。
  24. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(a)の配列であり、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    形成された前記反応場における前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場に前記標的核酸が存在しない場合には維持され、当該反応場に前記標的核酸が存在する場合には、当該標的核酸と前記核酸プローブとが前記被覆核酸鎖に対して競合することにより解消するような範囲にあることを特徴とする請求項23に記載のプローブ固定基体。
  25. 前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列が上記(b)の配列であり、
    前記核酸プローブおよび前記被覆核酸鎖の塩基配列の長さおよびTm値は、
    形成された前記反応場における前記等温増幅反応条件下で、当該ハイブリダイズによる前記核酸プローブと前記被覆核酸鎖との結合が、当該反応場において前記標的核酸が存在する場合および不在の場合共に維持されるような範囲にあることを特徴とする請求項23に記載のプローブ固定基体。
  26. 前記標識物質が、電気化学的に活性な物質または光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1項に記載のプローブ固定基体。
  27. 前記標識物質が、前記核酸プローブの当該核酸鎖に結合しており、アントラキノン、フェロセンおよびメチレンブルーからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であるか、またはAlexa flour、BODIPY、Cy3、Cy5、FAM、Fluorescein、HEX、JOE、Marina Blue(商標)、Oregon Green、Pacific Blue(商標)、Rhodamine、Rhodol Green、ROX、TEMRA、TETおよびTexas Red(登録商標)からなる群より選択される光学的に活性な物質であることを特徴とする請求項23〜25の何れか1項に記載のプローブ固定基体。
  28. 前記標識物質は、前記反応液中に分散しており、フェリシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、鉄錯イオン、ルテニウム錯イオン、およびコバルト錯イオンからなる群より選択される電気化学的に活性な物質であることを特徴とする請求項23〜25の何れか1項に記載のプローブ固定基体。
  29. 当該プライマーセットが、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に配置されたプライマー固定領域に遊離可能に固定されていることを特徴とする請求項23〜28のいずれか1項に記載のプローブ固定基体。
  30. 更に、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に独立して配置された少なくとも1つのコントロールプローブ固定領域、および前記コントロールプローブ固定領域に固定されたポジティブコントロールプローブおよび/またはネガティブコントロールプローブを含むことを特徴とする請求項23〜29のいずれか1項に記載のプローブ固定基体。
  31. 請求項23〜29の何れか1項に記載のプローブ固定基体であって、
    前記標的核酸は、第1〜第nの標的核酸であり、前記第1〜第nの標的核酸は、第1〜第1の配列および/またはその相補配列である第1〜第nの相補配列をそれぞれ含み、
    前記プライマーセットは、前記第1〜第1の配列をそれぞれ増幅するためのプライマーをそれぞれ含む複数のプライマー群を含み、
    前記プローブ固定基体において、
    前記基体は、第1〜第nのプライマーセットを用いる等温増幅反応が、当該第1〜第nの標的核酸をそれぞれ鋳型として、互いに異なる配列の前記第1〜第1の配列をそれぞれ含む第1〜第nの増幅産物を生成する反応場を支持するものであり、
    前記プローブ固定領域として、前記反応場が形成された際に当該反応場に接する前記基体の少なくとも1つの面に独立して配置された第1〜第nのプローブ固定領域を含み、
    前記核酸プローブとして、前記第1〜第nのプローブ固定領域のそれぞれにそれぞれ固定された第2〜第2の配列をそれぞれ含む第1〜第nの核酸鎖をそれぞれ含む核酸プローブ群を含み、
    前記被覆核酸鎖として、前記第1〜第1の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第1〜第1の配列結合領域と、前記第2〜第2の配列のそれぞれにそれぞれ相補的な第2〜第2の配列結合領域とをそれぞれ含み、前記第2〜2の配列結合領域それぞれでの前記第2〜2の配列それぞれとのハイブリダイズによって前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれに対して結合している第1〜第nの被覆核酸鎖を含み、
    前記第1〜第nの核酸プローブおよび前記第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの塩基配列は、
    (a)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれに対応する前記第1〜第nの増幅産物と前記1〜第nの核酸プローブ配列とのそれぞれの競合、それらによる前記第1〜第nの核酸プローブそれぞれからの前記第1〜第nの被覆核酸鎖の脱離、および前記第1〜第nの被覆核酸鎖の前記第1〜1の配列結合領域と前記第1〜第nの増幅産物の前記第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合が得られる配列であるか、または
    (b)形成された前記反応場での前記等温増幅反応条件下で、前記第1〜第nの被覆核酸鎖それぞれの前記第1〜1の配列結合領域と前記第1〜第nの増幅産物の前記第1〜第1の配列とのそれぞれのハイブリダイズを介したそれぞれの結合、および前記第1〜第nの増幅産物のそれぞれを鋳型とした前記第1〜第nの被覆核酸鎖のそれぞれの伸長が得られる配列である
    ことを特徴とするプローブ固定基体。
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