JP6259709B2 - すべり軸受用銅合金およびすべり軸受 - Google Patents
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Description
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、給油量が少ない状態でも良好な耐摩耗性と耐焼付性とを実現できる技術を提供することを目的とする。
(1)スラスト軸受の構成:
(1−1)耐摩耗性:
(1−2)耐焼付性:
(2)スラスト軸受の製造方法:
(3)実験例:
(4)他の実施形態:
図1は、本発明の一実施形態にかかるすべり軸受用銅合金によって形成されたすべり軸受としてのスラスト軸受1の斜視図である。スラスト軸受1は、例えば内燃機関用のターボ式過給機において、タービン翼とコンプレッサ翼とが軸方向の両端に備えられた相手軸2(一点鎖線)に作用する荷重をスラスト方向(軸方向)に支持する。スラスト軸受1は円筒状となるように形成されており、当該スラスト軸受1の内側を相手軸2が貫通する。相手軸2には、径方向外側に突出したカラー部2aが設けられており、当該カラー部2aとスラスト軸受1とがスラスト方向に接触し、相手軸2のカラー部2aからスラスト軸受1に荷重が伝達される。例えば、スラスト軸受1の内径は5〜15mmであってもよいし、外径は20〜40mmであってもよいし、スラスト軸受1の厚みは2〜10mmであってもよい。スラスト軸受1と相手軸2のカラー部2aとの間に潤滑油としてのエンジンオイルの油膜が形成される。相手軸2が回転することにより、スラスト軸受1のスラスト方向の表面である摺動面1a上において相手軸2のカラー部2aが摺動する。なお、図示しないが相手軸2に作用する荷重をラジアル方向に支持するラジアル軸受もスラスト軸受1と同一の銅合金によって形成してもよい。
スラスト軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の耐摩耗性を評価するために摩耗試験を行った。図3Aは、摩耗試験に使用した円筒平板型摩擦摩耗試験機を説明する模式図である。摩耗試験は、潤滑油としてのエンジンオイル(流動パラフィン)Fに一部が浸漬した状態で円柱状の相手材Aを回転させるとともに、相手材Aに所定の静荷重が作用するように試験片Tを相手材Aに接触させることにより行った。試験片Tは、スラスト軸受1を構成するすべり軸受用銅合金と同一条件で形成し、平面板状とした。相手材Aは、スラスト軸受1が軸受けする相手軸2と同等の材料で形成し、具体的に焼き入れ処理を行ったSCM415(クロムモリブデン鋼)で形成した。相手材Aの回転軸方向における試験片Tの長さaを10mmとし、相手材Aの底面の半径rを20mmとした。摺動部における相手材Aの試験片Tに対する相対移動速度bが200mm/secとなるように、相手材Aの回転速度を制御した。また、静荷重を139Nとし、潤滑油の温度を室温とし、試験時間cを3600sec(1時間)とした。以上の条件で摩耗試験を行った後に、表面粗さ計(小坂研究所製 SE3400)よって試験片Tにおける相手材Aとの摺動部の深さのプロフィールを計測した。そして、深さのプロフィールにおける平坦部(非摩耗部)と最深部との深さの差を摩耗深さdとして計測した。
摺動距離Lは、相対移動速度bに試験時間cを乗算した値(b×c)である。Vは、摩耗試験において摩耗した試験片Tの体積(摩耗体積)である。(1)式に示すように、比摩耗量Kとは、試験片Tに単位荷重(1N)を作用させた場合に、単位摺動距離(1mm)あたりに摩耗した試験片Tの体積を意味する。比摩耗量Kが小さいほど、耐摩耗性が高いことを意味する。
スラスト軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の耐焼付性を評価するために焼付試験を行った。図4は、焼付試験に使用したピンオンディスク試験機を説明する模式図である。焼付試験は、回転する円盤状の相手材Aを厚み方向に挟み込むように一対の試験片Tを配置し、油圧シリンダーWによって試験片T間に静荷重を作用させることにより行った。相手材Aと試験片Tとの接触部における両者の相対速度が15m/secとなるように相手材Aの回転速度を調整した。また、相手材Aに対して潤滑油(SAE30 CD級)を保持する給油パッドPを接触させることにより、相手材Aと試験片Tとの接触部に給油を行った。相手材Aは、焼き入れ処理を行ったSCM415で形成した。一対の試験片Tは相手材Aと平行な面内にて回転可能に保持された梁部Eの先端に取り付けられ、当該梁部Eの水平回転を妨げるようにロードセルYを配置した。梁部Eのうち試験片Tが備えられない端部には、バランスウェイトBを取り付け、油圧シリンダーWによって梁部Eに生じる鉛直方向のモーメントを相殺させた。
以上のようにして、本実施形態のスラスト軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の焼付面圧を計測したところ、24Mpaと良好であった。なお、焼付面圧が大きいほど、耐焼付性が良好であることを意味する。
本実施形態においてスラスト軸受1は、a.圧粉体の形成、b.焼結、c.機械加工の各工程を順に行うことにより製造される。以下、各工程について説明する。
まず、スラスト軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の材料の粉末を用意した。すなわち、27.5wt%のZnを含有し、4wt%のBiを含有し、12vol%の硬質粒子を含有し、残部がCuと不可避不純物とからなるすべり軸受用銅合金が形成できるように、黄銅(Cu−Zn)粉末と、Bi粉末と、市販の硬質粒子の粉末と、の重量比および体積比を調整した。なお、FeとPとで構成される溶融金属(P:20wt%)を凝固させることにより硬質粒子用のインゴットを形成し、当該硬質粒子用のインゴットを塊状に粉砕し、ふるいによって粒径を揃えることにより粉末状の硬質粒子が用意されてもよい。粉末状の硬質粒子には、Fe2PとFe3Pとが含まれている。なお、マイクロビッカース硬さ計(明石製作所製 MVK−EII)によって、50gの荷重で硬質粒子用のインゴット上に形成した圧痕の大きさ(2個の対角線の長さの平均値)を、硬質粒子のビッカース硬さとして計測した。
次に、焼結材としての圧粉体を750〜900℃で焼結した。圧粉体を焼結した後に、スラスト軸受1における硬質粒子の平均粒径を以下のようにして計測した。焼結後の圧粉体の任意の断面をバフ研磨した。次に、焼結後の圧粉体の任意の断面を電子顕微鏡(日本電子製 JXA−8100)によって200倍の倍率で撮影することにより、観察画像(組成像)の画像データを得た。そして、観察画像を画像解析装置(ニレコ社製 LUZEX AP)によって解析することにより、複数の硬質粒子の粒径を計測し、当該硬質粒子の粒径の算術平均値を平均粒径として計測した。なお、硬質粒子の粒径は、投影面積円相当径(HEYWOOD)である。なお、機械加工において硬質粒子の形状が変化しないと見なせるため、焼結後の圧粉体における硬質粒子の平均粒径と、焼結後の圧粉体に機械加工を施したスラスト軸受1における硬質粒子の平均粒径とを同視できる。
c.機械加工
最後に、切削等の機械加工によって寸法や表面状態の仕上げを行うことにより、スラスト軸受1を完成させた。
表1は、前記実施形態のすべり軸受用銅合金から、硬質粒子の含有量だけを変更(Znの含有量は25〜30wt%の範囲内で調整)した試料1〜4について、比摩耗量Kを計測した結果を示す。また、上述した製造方法と同様の方法によって各試料1〜4を作成した。
前記実施形態においては、本発明のすべり軸受用銅合金によってスラスト軸受1を形成した例を示したが、本発明のすべり軸受用銅合金によって他の摺動部材を形成してもよい。例えば、本発明の銅合金によってトランスミッション用のギヤブシュやピストンピンブシュ・ボスブシュ等を形成してもよい。また、本発明のすべり軸受用銅合金は、必ずしも焼結によって製造されなくてもよく、例えば鋳造や連続鋳造によって製造されてもよい。また、硬質粒子は、必ずしもFe3PやFe2Pでなくてもよく、FePとSiO2とAl2O3とSiCとAlNとSi3N4とBNとFeBとFe2BとNiBとのうちのいずれか1種類以上によって構成されてもよい。
Claims (4)
- 10wt%以上かつ40wt%以下のZnと、
1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、
0.5vol%以上かつ15vol%以下の硬質粒子と、を含有し、
残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸受用銅合金であって、
前記硬質粒子の平均粒径が1μm以上かつ30μm以下であり、
前記硬質粒子のビッカース硬さが700以上であることを特徴とするすべり軸受用銅合金。 - 前記硬質粒子の平均粒径は20μm以上であるとともに、
前記硬質粒子を混合した焼結材を焼結することにより形成される、
請求項1に記載のすべり軸受用銅合金。 - 前記硬質粒子は、Fe3PとFe2PとFePとSiO2とAl2O3とSiCとAlNとSi3N4とBNとFeBとFe2BとNiBのうち少なくとも1種類以上から構成される、
請求項1または請求項2のいずれかに記載のすべり軸受用銅合金。 - 10wt%以上かつ40wt%以下のZnと、
1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、
0.5vol%以上かつ15vol%以下の硬質粒子と、を含有し、
残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸受であって、
前記硬質粒子の平均粒径が1μm以上かつ30μm以下であり、
前記硬質粒子のビッカース硬さが700以上であることを特徴とするすべり軸受。
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