JP6249929B2 - 鋼線材の連続表面処理方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、線材に鉄・亜鉛粒によるブラストを行い、線材の表面に鉄・亜鉛合金層を形成させ、その後にリン酸塩被膜を形成させることで、鋼線材の通線速度を向上させることを可能とする技術が開示されている。
また、特許文献2に記載された表面調整剤を用いたデスケーリングも、リン酸塩被膜の結晶微細化には大きな効果を有するものの、反応速度自体は速いものではなく、生産性を十分に満足できるものではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、鋼線材の表面に対する加工変質を抑えつつ、鋼線材に対してリン酸塩被膜を短時間で低コストかつ生産性良く形成することができる鋼線材の連続表面処理方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の鋼線材の連続表面処理方法は、冷間加工に先立って鋼線材に連続してリン酸塩被膜を形成するに際しては、前記被膜の前処理として、前記鋼線材に対してグリット状の研磨粒子を含むスラリーを噴射するデスケーリング工程を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る鋼線材の連続表面処理方法の最も好ましい形態は、冷間加工に先立って鋼線材に連続してリン酸塩被膜を形成するに際しては、前記被膜処理の前処理として、前記鋼線材に対してグリット状の研磨粒子を含むスラリーをウェットブラストにより噴射するデスケーリング工程を行うことを特徴とする。
図1に示すように、本発明の連続表面処理方法は、鋼線材(条鋼線材)に対して伸線などの冷間加工を行う製造ライン1(伸線ラインや圧造ライン)で行われるものである。具体的には、本実施形態の連続表面処理方法では、伸線加工の際にダイスと鋼線材との間に潤滑を確保できるように潤滑剤の下地としてリン酸塩被膜が形成され、潤滑性を高めるために上記リン酸塩被膜の上に金属石けんなどを含む潤滑剤が被覆される。
つまり、(1)に示す「巻出し」で、サプライスタンド2のコイルから鋼線材が巻き出される。次に(2)に示す「矯正」で、巻き出された鋼線材が矯正機3により直線状に矯正される。また、(3)に示す「デスケーリング」で、鋼線材の表面に付着するスケールが除去される。さらに、(5)に示す「被膜処理」で、予熱後の鋼線材に対して被覆液槽でリン酸塩被膜が形成され、(6)に示す「潤滑処理」で、被膜処理後の鋼線材に対して金属石けんなどの潤滑剤が被覆される。このようにして鋼線材の表面に被覆された潤滑剤により、(8)に示す「伸線」において潤滑状態で冷間加工が行われる。伸線などの冷間加工後の鋼線材は(9)に示す「巻取り」で巻き取られる。
次に、連続表面処理方法で表面処理される鋼線材、及びこの連続表面処理方法を構成する各工程の内容について説明する。
上下方向または水平方向を向くように支持する設備であり、「巻出し」では鋼線材をコイルの上方または製造ラインの下流側に向かって引き抜くように巻き解くか、コイル自体を水平面内に回転させながら、鋼線材を巻き出せるようになっている。
リン酸塩被膜は、化学反応により形成され、処理温度が高いほど反応が促進され、被膜処理液も線材予熱と同程度である60℃〜80℃に上昇しておくと被膜反応が促進されるので好ましい。全酸度を高くすることでエッチング反応が促進されるため、被膜反応も促進されると考えられる。よって全酸度を高くすることは被膜処理時間短縮化の手段として有効である。
このようなスケーリング工程や予熱工程を行えば、鋼線材の表面に対する加工変質を抑えつつ、鋼線材に対して短時間で生産性良くリン酸塩被膜を形成することができるようになる。次に、本発明の特徴である「デスケーリング工程」及び「予熱工程」について、詳しく説明する。
具体的には、ウェットブラストは、水と硬質粒子とを混合した混合物(以降では、この混合物をスラリーという)を、高圧のエアで対象物に向けて複数のノズルから噴射するものであり、複数のノズルから噴射されたスラリーが鋼線材の表面に衝突することでスケールを削りとることが可能となっている。
全周に亘ってカバーできるようになっている。また、これらのノズルは、鋼線材の搬送方向に沿って、複数設けられており、それぞれのノズルからの噴射が干渉し合わないように配備されている。具体的には、これら複数のノズルは、金属線材の搬送方向(軸心方向)に沿って千鳥状(鋼線材の軸心に対して垂直となる方向に沿った断面を見た際に、周方向に沿って、左右交互にノズルが配備されている状況)または螺旋状に配置されている。
つまり、液体を用いない乾式のショットブラストや、水は用いていても噴射圧が大きなウォータージェットでは、鋼線材の表面に生成される加工変質層は厚くなる傾向があり、鋼線材の割れやダイスの焼付きなどの加工不良を冷間加工時に招く可能性がある。ところが、水と硬質粒子とのスラリーを用いるウェットブラストをデスケーリングに使用する場合には、ショットブラストやウォータージェットと比較して鋼線材の表面に生成する加工変質層を薄くすることができ、研磨材の衝突により硬化する鋼線材表面の加工硬化量や加工硬化深さなどを小さくすることができる。そのため、後述するリン酸塩被膜の処理の後の冷間加工をしても、鋼線材の割れやダイスの焼付きなどの加工不良を起こす心配がない。
なお、グリット状の研磨粒子に用いる金属の種類は問わないが、デスケーリングの加工効率の観点からは、処理される鋼線材の硬度よりも硬度の高い粒子を用いることが好ましい。具体的には、グリット状の研磨粒子には、鋼線材表面への刺込み残留を防止する観点などから、靭性に優れる鋼またはステンレス鋼が好ましくは用いられる。
例えば、予熱において鋼線材を加熱する温度を60℃未満とすれば、予熱の効果が小さくなって、リン酸塩被膜の形成が不十分となる。また、鋼線材を80℃を超える温度まで加熱して予熱を行うと、リン酸塩被覆液の液温が上昇し、加水分解が起こったり、被膜処理液が変質したりするため、生産性やコストの面から逆に好ましくない。
また、上述した連続表面処理方法では、ウェットブラストにグリット状の研磨粒子が用いられているため、グリット状の研磨粒子の角部による微細な表面切削により鋼線材の表面に新生面が得られるため、後に続くリン酸塩被膜処理において化成反応が促進され、短時間でリン酸塩被膜を得ることができる。
実施例及び比較例は、鋼(SUJ2)製の鋼線材(φ11.0mm)に対して、球状化焼鈍を施したのち、連続表面処理、伸線、圧造を順に行ったものである。なお、連続表面処理は、ウェットブラストに引き続いて、予熱、リン酸塩被膜処理、石灰石けんを用いた潤滑、乾燥などを行っている。
・スケール:化学組成(Fe3O4(60%)、Fe2O3(40%))、厚み:2μm
・ウェットブラスト:マコー(株)製 汎用ウェットブラスト装置
研磨材:VULKAN INOX GmbH.製 GRITTAL GH10、
平均砥粒半径:0.113μm
エア圧力:0.4Mpa、線材とノズル角度:90℃付近、
線材とノズルの距離:100mm、スラリー中の砥粒濃度:15%
・予熱:温水、温度:40〜80℃、処理時間:60s
・リン酸塩被膜 : 日本パーカライジングPB-3670X、全酸度:90pt、
被膜液温度:40〜80℃、処理時間10s
※全酸度に用いる「pt」は、リン酸塩被膜処理液の濃度単位で、
リン酸塩被膜処理液10mlを中和するのに要する0.1NのNaOH のml数のことである。
・伸線 : 減面率12%(φ11 →φ10.3)
・圧造 : 前方押し出し加工、減面率50%
上述した実験の結果を表1に示す。
なお、「伸線結果」や 「圧造結果」において、「×」はすぐに焼き付きや割れが発生したものであり、「○」は焼き付きや割れがなく冷間加工が可能であったものを示している。また、「△」は焼き付きが生じないまでもダイスの寿命が若干短くなったり、焼き付きの兆候が見られたりしたものである。この実験では、「伸線結果」及び「圧造結果」のいずれにも×がない場合に、十分な性能を有することを本願発明者らは確認しており、本発明では好ましい実験例(判断が「good」の評価、実施例)として取り扱っている。
2 サプライスタンド
3 矯正機
4 矯正ロール
5 伸線機
Claims (2)
- 冷間加工に先立って鋼線材に連続してリン酸塩被膜を形成するに際しては、
前記被膜処理の前処理として、前記鋼線材に対してグリット状の研磨粒子を含むスラリーをウェットブラストにより噴射するデスケーリング工程を行う
ことを特徴とする鋼線材の連続表面処理方法。 - 前記被膜処理工程の前に、前記鋼線材を予熱する予熱工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の鋼線材の連続表面処理方法。
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