JP6249468B2 - ロータおよび自動車 - Google Patents
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Description
例えば特許文献2に記載の技術は、永久磁石を収容するための収容孔に連通して設けられたスリットに、樹脂を充填するというものである。なお、当該スリットは、ステータに伝わる磁束量を増やすために、永久磁石を収容するための収容孔の周方向に関する両端部分に形成されるものであると記載されている。
特許文献3に記載の技術は、永久磁石に直接コーティングされた接着剤により、永久磁石とロータコアとの接着を行うものである。特許文献4に記載の技術は、接着剤を入れたロータコアのスロット内に永久磁石を挿入した後、上下を逆転させた状態において接着剤の熱硬化を行うものである。特許文献5に記載の技術は、マグネットおよび接着剤を挿入するスロットの内壁またはマグネットの表面に形成された凹条部または凸条部に、硬化した接着剤を係合させるものである。
なお、樹脂に関する技術としては、例えば特許文献7に記載のものがある。特許文献7に記載の技術は、顆粒状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関し、その粒度分布を制御するものである。
未充填部分の発生は、例えば孔部と磁石との間隙の幅を大きくすることにより抑制される。しかしながら、孔部と磁石との間隙の幅を大きくした場合、磁石の放熱性が低下してしまうおそれがある。従って、放熱性を維持しつつ、未充填部分の発生を抑制することは困難であった。
前記孔部内に挿入された磁石と、
前記孔部と前記磁石との離間部に設けられた固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂、硬化剤および無機充填材を含有する固定用樹脂組成物からなり、
前記無機充填材の含有量は、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対し50質量%以上93質量%以下であり、
前記無機充填材の最大粒径をd1とし、前記孔部と前記磁石との離間部の幅をWとした場合において、W/d1は1.2以上10以下であり、
Wは、20μm以上500μm以下である、ロータが提供される。
ロータ100は、ロータコア110と、磁石120と、固定部材130と、を備える。ロータコア110には、孔部150が設けられている。磁石120は、孔部150内に挿入されている。固定部材130は、孔部150と磁石120との離間部140に設けられている。
以下、本実施形態に係るロータ100の構成について、詳細に説明する。
図2に示すように、ロータ100は回転シャフト170に取り付けられている。ロータ100により発生した回転は、回転シャフト170を介して外部に伝達されることとなる。
図2に示すように、ロータコア110は、薄板状の磁性体である電磁鋼板112を複数積層してなる。電磁鋼板112は、例えば鉄または鉄合金等により構成される。
また、図2に示すように、ロータコア110の軸方向における両端には、エンドプレート118aおよびエンドプレート118bが設けられている。すなわち、積層された電磁鋼板112上には、エンドプレート118aが設けられている。また、積層された電磁鋼板112下にはエンドプレート118bが設けられている。エンドプレート118aおよびエンドプレート118bは、例えば溶接等により回転シャフト170に固定される。
また、エンドプレート118aには、例えば電磁鋼板112から突出したカシメ部160や、電磁鋼板112上に突出した固定部材130との干渉を避けるための溝部116が設けられている。なお、電磁鋼板112上に突出した固定部材130とは、固定用樹脂組成物を離間部140へ注入する際に電磁鋼板112上に残存した固定用樹脂組成物が硬化することにより形成される部分である。
図1に示すように、本実施形態のロータ100では、例えば隣接する二つの孔部150からなる複数の孔部群が、回転シャフト170の周縁部に沿って配置されている。複数の孔部群は、例えば互いに離間するように設けられている。一の孔部群を構成する二つの孔部150は、例えば平面視でVの字状に配置される。この場合、一の孔部群を構成する二つの孔部150は、例えば互いに対向するそれぞれの端部が回転シャフト170側に位置するように設けられる。また、一の孔部群を構成する二つの孔部150は、例えば互いに離間するように設けられている。
図6は、図1に示すロータ100を構成するロータコア110の第3変形例を示す平面図である。図6に示すように、平面視でロータコア110の径方向に対して垂直な長方形の形状を有する複数の孔部150が、回転シャフト170の周縁部に沿って配置されていてもよい。
なお、孔部150の配置レイアウトは上述したものに限定されない。
図7に示すように、孔部150は、例えば平面視で矩形である。孔部150は、ロータコア110の外周縁側に位置する側壁151と、ロータコア110の内周縁側に位置する側壁153と、ロータコア110の周方向において互いに対向する側壁155および側壁157と、を有する。側壁151と側壁153は、ロータコア110の径方向において互いに対向している。本実施形態において、一の孔部群を構成し、かつ互いに隣接する二つの孔部150は、それぞれの側壁155が互いに対向するように配置される。
なお、孔部150の形状は、磁石120の形状に対応していれば特に限定されず、例えば楕円形等であってもよい。
固定部材130は、少なくともロータコア110の径方向における孔部150と磁石120との離間部140に設けられている。すなわち、固定部材130は、少なくとも側壁121と側壁151の間または側壁123と側壁153の間のいずれか一方に設けられることとなる。
また、固定部材130は、例えば平面視で矩形である磁石120の少なくとも3辺を覆うように設けられている。すなわち、側壁121、側壁123、側壁125、および側壁127のうちの少なくとも3つが、固定部材130により覆われることとなる。
本実施形態では、側壁121と側壁151との間隙、および側壁123と側壁153との間隙に、固定部材130が形成される。このため、ロータコア110の径方向において、磁石120の位置が固定されることとなる。これにより、モータの高速回転時に働く遠心力によって磁石120の位置がずれてしまうことを抑制することができる。
図8に示すように、磁石120は、例えば側壁121が側壁151に当接するように固定されてもよい。この場合、離間部140は、側壁123と側壁153との間、側壁125と側壁155との間、および側壁127と側壁157との間に形成されることとなる。従って、磁石120のうち、側壁123、側壁125および側壁127が、固定部材130により覆われることとなる。この場合においても、ロータコア110の径方向において、磁石120の位置を固定することができる。
孔部150の両端にスリット152を設けることで、磁石120から発生される磁束の磁路を狭くすることができる。すなわち、磁石120の両端部からロータコア110の周方向へ生じる磁束がロータコア110内において短絡することを抑制することができる。これにより、ロータコア110内における短絡を減少させ、ステータに伝わる磁束量を増大させることが可能となる。
スリット152を形成する場合、側壁155および側壁157と、スリット152と、の境界部には、角部が形成される。この場合、モータを駆動する際に磁石120にかかる応力は、当該角部と当接する部分に集中してしまう。
本変形例によれば、スリット152内にスリット充填用樹脂部材132を形成することで、モータを駆動する際に磁石120にかかる応力の集中を緩和することができる。このため、モータ駆動時に磁石120に対して大きな応力が働くことを抑制できる。従って、磁石120の破損等が発生することを防止することが可能となる。
本実施形態に係る固定用樹脂組成物は、例えば粉末状、顆粒状、またはタブレット状等である。このため、後述するように、例えば溶融させた固定用樹脂組成物を離間部140内に注入することにより、離間部140内に固定用樹脂組成物が充填される。
本実施形態に係る固定用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填材(C)と、を含む。以下、各成分について説明する。
熱硬化性樹脂(A)は、特に制限されるものではないが、例えばエポキシ樹脂(A1)、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、またはマレイミド樹脂等が用いられる。中でも、硬化性、保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、および耐薬品性に優れるエポキシ樹脂(A1)が好適に用いられる。
エポキシ樹脂(A1)としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂;アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、またはビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂;下記式(13A)で表されるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
硬化剤(B)は、熱硬化性樹脂(A)に好ましい態様として含まれるエポキシ樹脂(A1)を三次元架橋させるために用いられるものである。硬化剤(B)としては、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂等を用いることができる。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;下記式(12A)で表されるフェノール樹脂等が挙げられる。
無機充填剤(C)としては、固定用樹脂組成物の技術分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。
無機充填材(C)としては、例えば溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカが好ましく、溶融球状シリカがより好ましい。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤(C)としては、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
無機充填材(C)は、所定のサイズのメッシュを用いてふるいにかけて得られる。このとき用いられるメッシュのサイズを、無機充填材(C)の最大粒径Dmaxと規定する。
W/d1を上記下限値以上とすることで、無機充填材(C)を含有する固定用樹脂組成物を離間部140へ充填する際に離間部140に無機充填材(C)が詰まってしまうことを抑制できる。また、固定用樹脂組成物の流動性を向上させることもできる。このため、無機充填材(C)を含有する固定用樹脂組成物を離間部140へ充填する際に未充填部分が生じることが抑制される。また、未充填部分が生じることに起因して磁石120の放熱性が低下してしまうことを抑制することもできる。また、W/d1を上記上限値以下とすることで、磁石120の放熱性を良好なものとすることができる。さらに、固定用樹脂組成物の流動性を維持し、離間部140への固定用樹脂組成物の充填性を確保することもできる。
すなわち、W/d1を上記範囲とすることで、ロータの放熱性および固定用樹脂組成物の充填性について、これらの効果をバランスよく実現するために好適なロータを実現することが可能となる。また、磁石120の放熱性を向上させることで、耐久性に優れたロータを実現することが可能となる。
無機充填材(C)の平均粒径D50は、レーザー回折型測定装置RODOS SR型(SYMPATEC HEROS&RODOS)での体積換算平均粒径とした。
W/d2を上記下限値以上とすることで、良好な流動性をもって無機充填材(C)を含有する固定用樹脂組成物を離間部140へ充填することが可能となる。また、W/d2を上記上限値以下とすることで、磁石120の放熱性や固定部材130の強度を向上させることができる。さらに、固定用樹脂組成物の流動性を維持し、離間部140への固定用樹脂組成物の充填性を確保することもできる。すなわち、W/d2を上記範囲とすることで、ロータの放熱性および固定用樹脂組成物の充填性について、これらの効果をさらにバランスよく実現するために好適なロータを実現することが可能となる。
無機充填材(C)の表面処理に用いられる第1カップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1級アミノシランを用いることができる。このような無機充填材(C)の表面処理に使用する第1カップリング剤の種類を適宜選択し、またはカップリング剤の配合量を適宜調整することにより、固定用樹脂組成物の流動性および固定部材の強度等を制御することができる。第1カップリング剤は、例えば水等の溶媒に溶解させず、原液のまま用いられる。
このような条件下において第1カップリング剤による表面処理を行うことで、無機充填材の表面にカップリング剤を均一に結合させることができる。また、このような表面処理を行った無機充填材(C)を使用することにより、無機充填材(C)と樹脂成分との界面接着強度の向上や、固定部材中のマイクロクラックの発生の抑制を図ることができる。
本実施形態に係る固定用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含んでもよい。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤(B)の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に使用される硬化促進剤(D)を用いることができる。
これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する硬化促進剤がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。また、コスト面を考えると、有機ホスフィン、窒素原子含有化合物も好適に用いられる。
一般式(1)で表される化合物において、合成時の収得率と硬化促進効果のバランスに優れるという観点では、リン原子に結合するR1、R2、R3及びR4がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール化合物であり、かつAは該フェノール化合物のアニオンであるのが好ましい。なお、フェノール化合物とは、単環のフェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシンや縮合多環式のナフトール、ジヒドロキシナフタレン、複数の芳香環を備える(多環式の)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、フェニルフェノール、フェノールノボラック等を概念に含むものであり、中でも水酸基を2個有するフェノール化合物が好ましく用いられる。
プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2'−ビフェノール、1,1'−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さと硬化促進効果のバランスという観点では、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
第2カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えばエポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、カップリング剤(F)は、前述の化合物(E)と併用することで、固定用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
本実施形態に係る無機難燃剤(G)の含有量は、本発明に係る固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
本実施形態に係るイオン性不純物としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等、より具体的にはナトリウムイオン、塩素イオン等が挙げられる。ナトリウムイオンの濃度は、本実施形態に係る固定用樹脂組成物に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは70ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。また、塩素イオンの濃度は、本実施形態に係る固定用樹脂組成物に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは30ppm以下である。上記の範囲とすることにより、電磁鋼板や磁石の腐食を抑制することができる。
本実施形態においては、例えば純度の高いエポキシ樹脂を使用することにより、イオン性不純物を低減することができる。以上により、耐久性に優れたロータが得られる。
イオン捕捉剤としてのハイドロタルサイトや密着付与剤としてのトリアゾールは、磁石120および電磁鋼板112に対し防錆効果を有する。このため、ハイドロタルサイトやトリアゾールを用いることで、磁石の放熱性を長期的に維持することができる。また、高温高湿度下においても電磁鋼板および磁石と固定部材との界面の密着力を長期間に亘って維持することも可能となる。
また、低応力剤を添加することにより、得られる固定部材の応力緩和能を向上させることができる。このため、電磁鋼板と磁石との熱膨張率の差に起因する剥がれやクラックの発生を抑制することが可能となる。
本実施形態に係る固定用樹脂組成物の粉末又は顆粒の粒度は、例えば5mm以下が好ましい。5mm以下とすることにより、打錠時に充填不良をおこし、タブレットの質量のバラツキが大きくなることを抑制することができる。
本実施形態に係るロータ100の製造方法は、例えば次のように行われる。まず、回転シャフト170が貫通する貫通孔の周縁部に沿って配置されている複数の孔部150が設けられたロータコア110を準備する。次いで、孔部150に磁石120を挿入する。次いで、孔部150と磁石120との離間部140に固定用樹脂組成物を充填する。次いで、固定用樹脂組成物を硬化して、固定部材130を得る。次いで、ロータコア110が有する貫通孔に回転シャフト170を挿入するとともに、ロータコア110に回転シャフト170を固設する。これにより、本実施形態に係るロータ100が得られる。
本実施形態では、離間部140に固定用樹脂組成物を充填する手法として、インサート成形を用いることが好ましい。以下、詳述する。
固定部材130の形成方法の一例としては、タブレット状の固定用樹脂組成物を用い、インサート成形を行う方法を用いることができる。このインサート成形には、インサート成形装置を用いる。この成形装置は、タブレット状の固定用樹脂組成物が供給されるポット210および溶融状態の固定用樹脂組成物を移動させる流路220を有する上型200と、下型(図示せず)と、これらの上型200及び下型を加熱する加熱手段と、溶融状態の固定用樹脂組成物を押し出す押出機構と、を備える。インサート成形装置は、例えば、ロータコア等を搬送する搬送機能を備えてもよい。
また、図11に示すように、ポット210は、二つの別々の流路220を有してもよい。この場合、一のポット210に接続する二つの流路220は、Y字状に配置される。これにより、一つのポット210から、二つの孔部150に、本実施形態に係る固定用樹脂組成物を充填できる。なお、一つのポット210は、一つの孔部150に固定用樹脂組成物を充填する一つの流路のみを有してもよく、三つ以上の孔部150に固定用樹脂組成物を充填する三つ以上の流路を有してもよい。一つのポット210が複数の流路220を有する場合、複数の流路220は互いに独立してもよく、互いに連続していてもよい。
まず、ロータコア110をオーブン又は熱盤上などで予熱後、不図示の成形装置の下型に固定する。続いて、ロータコア110の孔部150中に、磁石120を挿入する。続いて、下型を上昇させ、ロータコア110の上面に上型200を押しつける。これにより、上型200と下型とで、ローターコア110の上面および下面を挟み込む。このとき、上型200中の流路220の先端部が、孔部150と磁石120との離間部140上に配置される。また、ロータコア110は、成形装置の下型と上型200からの熱伝導により加熱されることとなる。成形装置の下型および上型200は、ロータコア110が固定用樹脂組成物の成形、硬化に適した温度となるよう、例えば150℃〜200℃程度に温調されている。この状態でタブレット状の固定用樹脂組成物を上型200のポット210内に供給する。上型200のポット210内に供給されたタブレット状の固定用樹脂組成物は、ポット210内で加熱され溶融状態となる。
このとき、固定用樹脂組成物を硬化する際の温度条件は、例えば150℃〜200℃とすることができる。また、硬化時間は、例えば30秒〜180秒とすることができる。これにより、孔部150の内部に挿入された磁石120が固定部材130により固定される。この後、ロータコア110の上面から上型200を離間する。次いで、ロータコア110の貫通孔に回転シャフト170を挿入するとともに、ロータコア110に回転シャフト170を固設する。
以上により、本実施形態に係るロータ100が得られる。
インサート成形方法では、ロータコア110の上面と上型200とが密着された状態で、上型200の流路220を通って、ロータコア110の孔部150に固定用樹脂組成物が充填される。このため、ロータコア110の上面と上型200との間に樹脂が充填されず、上型200と上面との着脱が容易となる。
一方、トランスファー成形方法では、半導体チップと金型との間のキャビティに樹脂が充填されるので、成形品から金型をうまく脱型する必要がある。このため、半導体チップを封止する樹脂には、金型と成形品との離型性が特に要求されることになる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.孔部が設けられたロータコアと、
前記孔部内に挿入された磁石と、
前記孔部と前記磁石との離間部に設けられた固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂、硬化剤および無機充填材を含有する固定用樹脂組成物からなり、
前記無機充填材の最大粒径をd1とし、前記孔部と前記磁石との離間部の幅をWとした場合において、W/d1は1.2以上10以下であるロータ。
2.1.に記載のロータにおいて、
d1は、10μm以上300μm以下であるロータ。
3.1.または2.に記載のロータにおいて、
前記無機充填材の平均粒径は、1μm以上100μm以下であるロータ。
4.1.ないし3.いずれか1つに記載のロータにおいて、
前記無機充填材の含有量は、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対し50質量%以上であるロータ。
5.1.ないし4.いずれか1つに記載のロータにおいて、
前記無機充填材は、第1カップリング剤による表面処理が施されているロータ。
6.5.に記載のロータにおいて、
前記第1カップリング剤は、1級アミノシランを含むロータ。
7.1.ないし6.いずれか1つに記載のロータにおいて、
前記固定用樹脂組成物は、2級アミノシランまたはメルカプトシランを含む第2カップリング剤を含むロータ。
8.1.ないし7.いずれか1つに記載のロータにおいて、
Wは、20μm以上500μm以下であるロータ。
9.1.ないし8.いずれか1つに記載のロータを備える自動車。
(熱硬化性樹脂(A))
エポキシ樹脂1:後述の方法により合成した
エポキシ樹脂2:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−1020−65)
エポキシ樹脂3:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−1020−55)
フェノール樹脂系硬化剤1:後述の方法により合成した
フェノール樹脂系硬化剤2:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−51714)
フェノール樹脂系硬化剤3:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−HF−3)
球状シリカ1(電気化学工業(株)製、FB−950、平均粒径D5023μm)
球状シリカ2(電気化学工業(株)製、FB−35、平均粒径D5010μm)
アルミナ((株)マイクロン製、AW40−74、平均粒径D5039μm)
トリフェニルホスフィン(ケイ・アイ化成(株)製、PP−360)
カップリング剤1:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)
カップリング剤2:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083)
カップリング剤3:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ(株)製、GPS-M)
カップリング剤4:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
離型剤:カルナバワックス(日興ファイン(株)製、ニッコウカルナバ)
イオン捕捉剤:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、商品名DHT−4H)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA600)
難燃剤:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL−303)
トリアゾール:3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−チオール
低応力剤:シリコーンレジン(信越化学工業(株)製、KMP−594)
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、1,3−ジヒドロキシベンゼン(東京化成工業(株)製、「レゾルシノール」、融点111℃、分子量110、純度99.4%)360質量部、フェノール(関東化学(株)製特級試薬、「フェノール」、融点41℃、分子量94、純度99.3%)235質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4'−ビスクロロメチルビフェニル(和光純薬工業(株)製、「4,4'−ビスクロロメチルビフェニル」、融点126℃、純度95%、分子量251)251質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。その後、系内温度を110〜130℃の範囲に維持しながら3時間反応させた後、加熱し、140〜160℃の範囲に維持しながら3時間反応させた。なお、上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。
反応終了後、150℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分を留去した。次いで、トルエン400質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分等の揮発成分を留去し、下記式(12A)で表されるフェノール樹脂系硬化剤1(重合体)を得た。
また、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD−MS)により測定・分析された相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られた、一価ヒドロキシフェニレン構造単位の繰り返し数kの平均値k0、二価ヒドロキシフェニレン構造単位の繰り返し数mの平均値m0、およびそれらの比k0/m0は、それぞれ、1.20、1.27、48.6/51.4であった。
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、前述のフェノール樹脂硬化剤1を100質量部、エピクロルヒドリン(東京化成工業社製)400質量部を秤量し、100℃に加熱して溶解させた後、水酸化ナトリウム(固形細粒状、純度99%試薬)60質量部を4時間かけて徐々に添加し、さらに3時間反応させた。次にトルエン200質量部を加えて溶解させた後、蒸留水150質量部を加えて振とうし、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃2mmHgの減圧条件でエピクロルヒドリンを留去した。得られた固形物にメチルイソブチルケトン300質量部を加えて溶解し、70℃に加熱し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液13質量部を1時間かけて添加し、さらに1時間反応した後、静置し、水層を棄却した。油層に蒸留水150質量部を加えて水洗操作を行い、洗浄水が中性になるまで同様の水洗操作を繰り返し行った後、加熱減圧によってメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(13A)で表される化合物を含むエポキシ樹脂1(エポキシ当量190g/eq)を得た。
まず、球状シリカ1および球状シリカ2を105℃で12時間それぞれ乾燥した。次いで、球状シリカ1と、球状シリカ2と、をミキサーに投入し、10分間攪拌した。次いで、球状シリカ1と球状シリカ2の混合物にカップリング剤1を噴霧しながら、当該混合物を20分間攪拌した。この際、カップリング剤1を噴霧した時間は、10分間程度であった。また、ミキサー内の湿度は50%以下であった。その後、60分間攪拌を続けることで、シリカとカップリング剤1とを混合した。次いで、ミキサーから取り出し、20±5℃の条件下で7日間エージングを行った。次いで、200meshのふるいにかけ、粗大粒子を除去した。これにより、シランカップリング処理が施された無機充填材(C)が得られた。なお。ミキサーには、リボンブレンダーを用いた。また、リボンブレンダーの回転数は、30rpmであった。
なお、処理シリカは、実施例および比較例ごとに、表1に示す配合量に従ってそれぞれ配合された。
なお、未処理シリカは、実施例および比較例ごとに、表1に示す配合量に従ってそれぞれ配合された。
得られた固定用樹脂組成物について、充填特性および放熱性に関する測定および評価を行った。評価結果を表1に示す。
固定用樹脂組成物の放熱性は、繰り返し使用に伴うロータコアの耐久性を表す指標となる。放熱性が大きい固定部材を用いた場合、良好な耐久性を有するロータコアを得ることができる。
表1からも分かるように、実施例1〜3の固定用樹脂組成物は、いずれも良好な放熱性を示していた。実際に、実施例1〜3の硬化物を固定部材に用いたロータコアは比較例1および2の硬化物を用いた場合に比べて、長期信頼性に優れていた。
110 ロータコア
112 電磁鋼板
116 溝部
118a エンドプレート
118b エンドプレート
120 磁石
121 側壁
123 側壁
125 側壁
127 側壁
130 固定部材
132 スリット充填部材
140 離間部
150 孔部
151 側壁
152 スリット
153 側壁
154a 孔部
154b 孔部
155 側壁
156 孔部
157 側壁
160 カシメ部
170 回転シャフト
200 上型
210 ポット
220 流路
Claims (10)
- 孔部が設けられたロータコアと、
前記孔部内に挿入された磁石と、
前記孔部と前記磁石との離間部に設けられた固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂、硬化剤および無機充填材を含有する固定用樹脂組成物からなり、
前記無機充填材の含有量は、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対し50質量%以上93質量%以下であり、
前記無機充填材の最大粒径をd1とし、前記孔部と前記磁石との離間部の幅をWとした場合において、W/d1は1.2以上10以下であり、
Wは、20μm以上500μm以下である、ロータ。 - 請求項1に記載のロータにおいて、
d1は、10μm以上300μm以下であるロータ。 - 請求項1または2に記載のロータにおいて、
前記固定部材は、前記磁石の側壁のうちの少なくとも前記ロータコアの内周縁側に位置する側壁上に設けられて前記磁石を固定する、ロータ。 - 請求項1ないし3いずれか1項に記載のロータにおいて、
前記無機充填材の平均粒径は、1μm以上100μm以下であるロータ。 - 請求項1ないし4いずれか1項に記載のロータにおいて、
前記無機充填材は、第1カップリング剤による表面処理が施されているロータ。 - 請求項5に記載のロータにおいて、
前記第1カップリング剤は、1級アミノシランを含むロータ。 - 請求項1ないし6いずれか1項に記載のロータにおいて、
前記固定用樹脂組成物は、2級アミノシランまたはメルカプトシランを含む第2カップリング剤を含むロータ。 - 請求項1ないし7いずれか1項に記載のロータにおいて、
前記固定用樹脂組成物は、低応力剤を含むロータ。 - 請求項8に記載のロータにおいて、
前記低応力剤の含有量が、前記固定用樹脂組成物の合計値100質量%に対して、0.01質量%以上3質量%以下であるロータ。 - 請求項1ないし9いずれか1項に記載のロータを備えるモータを搭載した自動車。
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