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JP6241133B2 - 紡績糸およびその紡績糸を含む編物 - Google Patents

紡績糸およびその紡績糸を含む編物 Download PDF

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Description

本発明は、単繊維繊度が0.8〜3.3dtexの範囲にある合成繊維と天然繊維とからなる混紡糸、さらに機能性を付与した前記混紡糸およびそれらの混紡糸を含む編物に関する。
従来から肌着用素材として、綿繊維のみを使用した紡績糸、アクリル繊維等の合成繊維と綿繊維を混紡した紡績糸、再生セルロース繊維とアクリル繊維等の合成繊維を混紡した紡績糸などがある。合成繊維と綿繊維との混紡品は綿繊維の比率が高くなると、編地を握ったときの感触が硬くなり易く、洗濯後の編地は、より感触も硬くなり、また形態が崩れやすい傾向がある。主な用途としては紳士用肌着が中心である。再生セルロース繊維と合成繊維の混紡品は洗濯後の形態安定性に欠けるが、吸湿発熱性に優れ、光沢があり、編地を握ったときの感触が柔らかい事から、婦人用肌着に好んで使用される傾向にある。
その中で機能面から再生セルロース繊維の吸湿発熱性に着目することで、合成繊維と吸湿発熱性繊維を混紡した吸湿発熱性および保温効果の高い布帛が開示されている(特許文献1)。
また架橋アクリル系繊維を含む紡績糸と弾性糸とを組み合わせることで、吸湿発熱性および保温効果が高く、着用時の身体へのフィット性の向上を特徴とする提案が開示されている(特許文献2)。
特開2003−227043号公報 特開2009−133036号公報
しかしながら、特許文献1に記載された吸湿発熱性繊維を使用した布帛や、特許文献2に記載された架橋アクリル系繊維を含む交編物の主たる目的は、吸湿発熱性および保温効果を上げる為の工夫であり、衣料用途において重視される編地を握ったときの感触は消費者に満足されるものではなかった。
本発明は、編地を握ったときの感触が柔らかく、機能性を付与しても編地の風合いがソフトになる編地用紡績糸を提供することを目的とする。
本発明の紡績糸は、単繊維繊度が0.8〜3.3dtexであるアクリル繊維と、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである綿繊維と、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである再生セルロース繊維とからなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)〜(3)を満足する紡績糸にある。
(1)アクリル繊維の混率が40〜60質量%
(2)綿繊維の混率が20〜30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度が0.8〜1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(4)〜(6)を満足することが好ましい。
(4)低収縮アクリル繊維(A)の混率が40〜60質量%
(5)綿繊維の混率が20〜30質量%
(6)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維単繊維繊度0.8〜1.3dtex、沸水収縮率が15%〜45%である高収縮アクリル繊維(B)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(7)〜(10)を満足することが好ましい。
(7)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30〜50質量%
(8)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)との合計の混率が40〜60質量%
(9)綿繊維の混率が20〜30質量%
(10)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7〜3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(11)〜(14)を満足することが好ましい。
(11)導電性アクリル繊維(C)の混率が3〜10質量%
(12)低収縮アクリル繊維(A)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40〜60質量%
(13)綿繊維の混率が20〜30質量%
(14)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0〜2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(15)〜(18)を満足することが好ましい。
(15)消臭性アクリル繊維(D)の混率が20〜40質量%
(16)低収縮アクリル繊維(A)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40〜60質量%
(17)綿繊維の混率が20〜30質量%
(18)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(19)〜(23)を満足することが好ましい。
(19)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30〜50質量%
(20)導電性アクリル繊維(C)の混率が3〜10質量%
(21)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40〜60質量%
(22)綿繊維の混率が20〜30質量%
(23)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(24)〜(28)を満足することが好ましい。
(24)高収縮アクリル繊維(B)の混率が25〜35質量%
(25)消臭性アクリル繊維(D)の混率が25〜35質量%
(26)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40〜60質量%
(27)綿繊維の混率が20〜30質量%
(28)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
本発明の編地は、これらの紡績糸を含む編物である
本発明の紡績糸を用いることにより、編地を握ったときの感触が柔らかい編地を得る事ができ、機能性を付与しても編地を握ったときの感触が柔らかい編地を得る事ができる。
編地の光発熱性能を測定する装置の概略図である。
以下に本発明の詳細を説明する。
(アクリロニトリル重合体)
本発明の紡績糸に用いるアクリル繊維の原料としては、通常のアクリル繊維の製造に用いるアクリロニトリル重合体であればよく、特に限定しない。前記重合体の構成は、50質量%以上のアクリロニトリル単位を含有していることが必要である。これによりアクリル繊維本来の特性を発現することができる。
アクリロニトリルと共重合する単量体は、共重合可能であれば特に限定されないが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、さらにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
また、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ塩を共重合することは、染色性の改良のために好ましい。
(アクリル繊維)
本発明の紡績糸に好適なアクリル繊維は、例えば次のようにして得ることができる。水系懸濁重合法によりアクリロニトリル93質量%、酢酸ビニル7質量%からなる共重合体を得る。続いて前記共重合体をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度20質量%の紡糸原液を得る。前記紡糸原液を丸型形状の吐出孔を具備したノズル口金を用い、溶剤30〜60質量%、水が70〜40質量%、温度30〜50℃の凝固浴中で湿式紡糸する。吐出孔数は特に規定しない。紡糸後に湿熱で延伸倍率3〜5倍の延伸処理を施し、続いて油剤を付着させ150℃の熱ローラーで乾燥緻密化後、更に乾熱で延伸倍率1.1〜2倍の延伸処理を施した後、必要に応じて加圧水蒸気下で熱収縮処理を行う。このようにして得られたアクリル繊維は、単繊維繊度が0.8〜1.3dtexの範囲にあるアクリル繊維が好ましい。単繊維繊度が0.8dtex以上であれば紡績工程でのトラブルが発生しにくくまた、単繊維繊度が1.3dtex以下であればことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる前記観点から、単繊維繊度は、0.9〜1.2dtexの範囲にあることがより好ましい。
(高収縮アクリル繊維)
本発明の紡績糸に使用する高収縮アクリル繊維は沸水収縮率が15%〜45%であり、単繊維繊度が0.8〜1.3dtexの範囲にあるアクリル繊維が好ましい。沸水収縮率が15%以上であれば編地に優れたまた、沸水収縮率が45%以下であれば、収縮後の編地風合いが硬くなりすぎず、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から沸水収縮率は18%〜40%の範囲にあることがより好ましい。
また、単繊維繊度は0.8dtex以上であれば紡績工程でのトラブルが発生しにくくまた、単繊維繊度が1.3dtex以下であれば収縮後のことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる前記観点から、単繊維繊度は、0.9〜1.2dtexの範囲にあることがより好ましい。
沸水収縮率が15%〜45%である高収縮アクリル繊維は、高収縮原綿、トウ紡績での牽切スライバーなど、公知の技術を適宜組み合わせて製造することが出来る。高収縮アクリル繊維と低収縮繊維とを組み合わせて、混紡糸とした後、染色工程での熱処理によりバルキー性を与えることで、膨らみのある軽量感に優れた編地が得られる。更には紡績糸を構成する繊維間の空隙を増大させるとともに、空気層による熱遮断性を高めることによる、保温性向上効果も得られる。
高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率は、25〜50質量%が好ましい。高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率が25質量%以上であれば、熱処理時における収縮斑が発生しにくいため、編地の品位を損なうことがない。また、高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率が50質量%以下であれば、収縮後のことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から、高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率は、30〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。
(導電性アクリル繊維)
アクリル繊維として、導電性アクリル繊維を含むと紡績糸に制電性能を付与できる。導電性アクリル繊維は、アクリル繊維に導電性物質を混合することにより得られる。アクリル繊維に混合する導電性物質としては特に限定するものではないが、Fe、Cu、Al、Pb、Sn、Au、Ag、Ni等に代表される金属類およびそれらの酸化物、硫化物、カルボニル塩、またはITO(インジウム・スズ酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物およびこれらの硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、アルミニウムの担体微粒子にコーティングした非金属系導電材、ファーネス、チャンネル、サーマル、アセチレンブラックに代表されるカーボンブラック系導電材、およびポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等に代表される導電性高分子化合物、テトラシアノパラキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)との錯体に代表される有機導電性化合物等が挙げられる。
これら導電性物質の混合手段としては、アクリル繊維製造時の紡糸原液に導電性物質を均一分散混合した練り込み繊維としても良いが、紡糸安定性、耐久性、導電性能を考慮すると、芯部に導電性物質を練りこんだ芯鞘型複合紡糸による方法が好ましい。
また、導電性アクリル繊維の別の機能として、光エネルギーを熱エネルギーに変換する(光吸収発熱性)機能を有する導電性アクリル繊維を使用すると、紡績糸に制電性能のみならず、発熱機能も付与することが可能であり、より好ましい。
導電性アクリル繊維の紡績糸における混率は、3〜10質量%が好ましい。導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が3質量%以上であれば、編地に制電性能を付与することが出来る。また、導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が10質量%以下であれば、導電性アクリル繊維に由来する着色による編地品位低下、染色性の低下を防ぐことが出来る。尚、光吸収発熱性を有する導電性アクリル繊維を用いる場合は、紡績糸における混率を5〜10質量%とすることが好ましい。光吸収発熱・導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が5%以上であれば、編地に光吸収発熱性能を付与することが可能であり、10質量%以下であれば、上述したような編地品位低下、染色性の低下を防ぐことが出来る。前記観点から、導電性アクリル繊維の紡績糸における混率は、5〜10質量%の範囲にあることがより好ましい。
また、導電性アクリル繊維の単繊維繊度は1.7〜3.3dtexの範囲にあることが好ましい。単繊維繊度が1.7dtex以上であれば、導電性アクリル繊維を紡糸する際の糸切れ、巻き付きといったトラブル発生が少なく、紡糸安定性を損なうことがなく工業生産上好ましい。また、単繊維繊度が3.3dtex以下であれば、に与える影響が少なく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。
(消臭性アクリル繊維)
アクリル繊維として、消臭性アクリル繊維を含むと、紡績糸に消臭性能を付与できる。消臭性アクリル繊維は、アクリル繊維に消臭剤を混合することにより得られる。アクリル繊維に混合する消臭剤としては特に限定するものではないが、Ti、Zn、AI、Sn、Si、Fe、Ca、Mg、Ba、Zr 等の金属酸化物、これら金属及び/または金属酸化物を含む無機化合物を主成分とする微粉末、及び水に難溶性の固体酸の微粒子などを用いることができる。
消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率は、20〜40質量%が好ましい。消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地に消臭性能を付与することが出来る。また、消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率が40質量%以下であれば、消臭性アクリル繊維に由来する染色性の低下、糸強力の低下を防ぐことが出来る。前記観点から、消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率は、25〜35質量%の範囲にあることがより好ましい。
また、消臭性アクリル繊維の単繊維繊度は1.0〜2.2dtexの範囲にあることが好ましい。単繊維繊度が1.0dtex以上であれば、紡績工程でのトラブルが発生しにくい。また、単繊維繊度が2.2dtex以下であれば、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から、単繊維繊度は、1.0〜1.7dtexの範囲にあることがより好ましい。
(綿繊維)
綿繊維を加える事により、紡績糸及びそれを用いた編地に吸湿発熱性と適度な張り腰感を付与することが出来る。綿繊維の紡績糸における混率は、20〜30質量%が好ましい。綿繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地を握ったときの感触に適度な張り腰感を付与することが出来る。また、綿繊維の紡績糸における混率が30質量%以下であれば、編地の風合い硬化を防ぐことが出来る。
(再生セルロース繊維)
再生セルロース繊維を加える事により、編地を握ったときの感触が柔らかく、衣料用途としての風合いが良い編地を得ることが出来る。また、編地の接触冷感性を加えることが出来、光沢感も付与できる。再生セルロース繊維としては、ビスコース法によって得られるビスコースレーヨン繊維、ポリノジック繊維、モダール繊維や銅アンモニア法により得られるキュプラ繊維、溶剤紡糸法により得られるテンセル繊維、リヨセル繊維などがあげられる。再生セルロース繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地を握ったときの感触が柔らかく、風合いの良い編地を得ることが出来る。また、冷感や光沢感を付与することが出来る。再生セルロース繊維の紡績糸における混率が30質量%以下であれば、編地の風合いが柔らかくなりすぎず、適度な張り腰感を維持することが出来る。
(紡績糸)
本発明の紡績糸は、単繊維繊度が0.8〜3.3dtexであるアクリル繊維と単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである綿繊維と単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである再生セルロース繊維とからなる紡績糸である事が必要である。各繊維の単繊維繊度が同等であることで、紡績工程で各繊維の単繊維がかたよりなく混ざりやすい。
また、紡績糸中の各繊維の混率は、以下の(1)〜(3)を満足する。
(1)アクリル繊維の混率が40〜60質量%
(2)綿繊維の混率が20〜30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
単繊維繊度が0.8〜3.3dtexであるアクリル繊維の混率が60〜40質量%の範囲内にあることで、編地を握ったときに柔らかい感触が得られ、また、編地に保温性を与える事ができる。さらに、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである綿繊維の混率が20〜30質量%の範囲内にあることで、紡績糸を使用した編地に吸湿発熱性と、適度な張り腰感を付与することが出来る。さらに、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%の範囲内にあることで、紡績糸の編地に冷感や光沢感のあるものとすることが出来る。
(紡績糸の製造方法)
本発明の紡績糸の製造には綿紡績で使用される設備を用いる。紡績糸の原材料比率になるように、各繊維を計量したのち、開綿機に投入し混ぜ合わせる。混合された原材料を打綿機に投入した後、ラップを形成する。次にラップをフラットカードに投入し、スライバーを作成する。この場合、使用するフラットカードのトップ数は70本以上、出来れば100本以上ある機台が望ましい。また、品位向上の為には固定フラットを装備した機台を使用することが望ましい。スライバー作成後、錬条工程を2回以上通したのち、粗紡工程を経て、粗糸を作成する。この場合の粗糸撚り数の設定は20回/インチとなるようにする。粗糸の撚り数が高すぎると、精紡での異常ドラフトの原因となり、紡績糸の斑が増加し品位の低下に繋がる。得られた粗糸をリング精紡機で紡績糸を作成する。紡績糸のメートル番手は64〜90の範囲内であることが好ましいワインダー工程において紡績糸中の欠点除去を行った後、コーンに巻き取る。
(紡績工程の撚り数設定方法)
編物用途に用いる紡績糸は、編地を握ったときの感触を柔らかくすること、および、毛羽を減らすために撚り数が重要であり、撚り係数(α)が105〜110の間で設定することが好ましい。撚り数は下記式により決定される。
撚り数(回/m)=撚り係数(α)×√紡績糸番手(メートル番手)
撚り係数が105以上であれば、編地を編み立てる際に必要な糸強度を保つことが出来る。また、撚り係数が110以下であれば、編地を握ったときの風合いが硬くなりすぎるのを防止できる。
また、紡績糸は、撚りトルクの発現を抑える為に、例えば温度60℃、時間15分又は、温度80℃、時間7分間のスチームセットが施される。
(編地作成方法)
編み立て工程は、公知の丸編機を用いて編み立てを実施する。編機の種類は特に限定せず、シングル編機、ダブル編機、パイル編機など、目的とする編地組織を得るために適宜選定すれば良い。編み立ての際、糸の走行テンションを10〜25gの範囲とする。この範囲を超えると紡績糸と編機の糸ガイドとの接触によるフライ発生量が増大し、糸切れ発生の増大及び風綿の飛び込みにより、穴開き等による編地品位の低下の要因となる。
(染色方法)
編地の染色には、液流染色機を用いるとよい。染色工程は、例えば、45℃の染色液を1℃/2分の温度上昇条件で液温を100℃とした後、その状態を20分間保持する工程とする。この時は液流がダウンブローとなるタイプを用いる事が品位向上に適している。液流がダウンブローとなる事で、編地に余分な張力が掛かる事がなく、編地を握ったときの感触を柔らかく仕上げることが出来る。
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。なお、各評価項目は、次の方法によって測定した。
(撚り数測定方法)
紡績糸の撚り数は、JIS L 1095:1999 “9.15.1 A法 より数“に規定される方法を用いて、試験回数30回測定した値の平均値とする。使用した検撚器は前田機械製の手動検撚機を用いて測定した。
(編地の風合い評価)
編地を握ったときの感触評価は官能試験とし、その評価は技術者5名の合議で決定した。評価方法は、実施例および比較例で作成した全ての編地を評価者全員が比較評価を行い、風合い良好と答えた人数により以下に分類した。
○:良好(評価者5名中、4〜5名が風合い良好と回答)
△:普通(評価者5名中、2〜3名が風合い良好と回答)
×:劣る(評価者5名中、0〜1名が風合い良好と回答)
(繊度測定方法)
各繊維の繊度は、JIS L 1015:2002 “8.5.1 正量繊度 A法”に規定される方法を用いて測定した。
(編地の保温性能)
編地の保温性能は、JIS L 1096 保温性A法(恒温法)により測定した。
(編地の制電性能)
編地の制電性能は、JIS L 1094 摩擦耐電圧測定法により測定した。
(編地の光発熱性能)
図1に示すように、2枚重ねの試料の間に熱電対を挿入し、下記条件でレフランプを20分間照射した時の、試験試料と比較試料との最大温度差を測定し、光発熱性能とした。
使用ランプ:岩崎電気(株)製アイランプ<スポット>PRS100V500W
照射距離 :50cm
照射面 :表側
照射時間 :20分間
試験室温度:20±2℃
(編地の消臭性能)
編地の消臭性能は、一般社団法人繊維評価技術協議会の消臭マーク認証基準で定める機器分析試験法により、アンモニアおよび酢酸は検知管法、イソ吉草酸およびノネナールはガスクロマトグラフ法により測定した。
(実施例1)
水系懸濁重合法によりアクリロニトリル93質量%、酢酸ビニル7質量%からなる共重合体を得たのち、続いて前記共重合体をジメチルアセトアミドに溶解し、共重合体濃度20質量%の紡糸原液を得た。前記紡糸原液を丸型形状の吐出孔を具備したノズルを用い、ジメチルアセトアミド濃度60質量%、温度40℃の水溶液である凝固浴中に吐出してした。なお、ノズルは、吐出孔径が0.008mm、吐出孔数が15000のノズルを使用した。引き続き、沸水中で溶剤を洗浄したのち沸水中で5倍に延伸した。続いて油剤を付着させ150℃の熱ローラーで乾燥し、繊維長38mmに切断して断面形状が空豆状のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%、三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルH616)を得た。
次に、繊度が1dtexである綿繊維20質量%と、繊度1dtexのモダール繊維20質量%と、前記のアクリル繊維60質量%とを混綿した。混綿した綿繊維、モダール繊維およびアクリル繊維を、紡績工程を通して紡績糸を作成した。混綿から紡績までの詳細は次のとおりである。
混綿方法は、設計比率になるように、各繊維を計量したのち混綿した。その後、打綿機に投入しラップを作成した。ラップをフラットカードに投入し、スライバーを作成した。このとき、使用するフラットカードのトップ数は106本とした。スライバーを作成後、練条工程を2回通したのち、粗紡工程を経て、粗糸を作成した。このときの粗糸撚り数の設定は20回/インチとした。次に、粗糸をリング精紡機に通しメートル番手68番手、撚数は870回/mの紡績糸を作成した。次いでワインダー工程で、紡績糸の欠点除去を行った後、コーンに巻き取った。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成した。その後に、編地を液流染色機にて染色した。染色後の編地を握ったときの風合い評価を前述のごとく行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例2)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%)を25質量%と、単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、沸水収縮率20%の高収縮アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルH129)を35質量%とした以外、実施例1と同様にしてメートル番手68番手の紡績糸を得た。得られた紡績糸を22ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例1と同様の染色を行った。染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例3)
メートル番手100番手、撚数1060回/mの紡績糸とし、14ゲージ丸編機で編地を作成した以外、実施例2と同様に実施し、編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例4)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%)を20質量%と、単繊維繊度1.3dtex、繊維長38mm、沸水収縮率40%の高収縮アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルV85)を40質量%とした以外、実施例2と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。得られた紡績糸を14ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例2と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例5)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%)を57質量%と、単繊維繊度2.2dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%の導電性アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:コアブリッド・エレキル)を3質量%とした以外、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例6)
アクリル繊維として単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%のアクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:H616)を50質量%と、単繊維繊度3.3dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%の導電性アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:コアブリッド・サーモキャッチ)を10質量%とした以外、実施例5と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例5と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性、光発熱性測定を実施した。尚、光発熱性試験の比較布は実施例1で得られた編地を用いた。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(実施例7)
アクリル繊維として単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%のアクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:H616)を30質量%と、単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0〜2%の消臭性繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:キュートリー)を30質量%として、再生セルロース繊維として、ビスコースレーヨン繊維(単繊維繊度1.2dtex、カット長38mm)とした以外、実施例5と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例5と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および消臭性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(比較例1)
繊度が1dtexである綿繊維40質量%と実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性、制電性、消臭性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(比較例2)
繊度が1.2dtexであるビスコースレーヨン繊維40質量%と実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を24ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(比較例3)
繊度が1dtexであるモダール繊維40質量%と繊度が1dtexの綿繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を24ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
(比較例4)
繊度が1dtexである綿繊維40質量%、繊度が1dtexであるビスコースレーヨン繊維40質量%および実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維20質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。

Claims (8)

  1. 単繊維繊度が0.8〜3.3dtexであるアクリル繊維と、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである綿繊維と、単繊維繊度が0.8〜1.2dtexである再生セルロース繊維からなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)〜(3)を満足し、メートル番手が64〜90である紡績糸。
    (1)アクリル繊維の混率が40〜60質量%
    (2)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (3)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  2. 請求項1に記載のアクリル繊維が、単繊維繊度が0.8〜1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(4)〜(6)を満足する請求項1に記載の紡績糸。
    (4)低収縮アクリル繊維(A)の混率が40〜60質量%
    (5)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (6)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  3. 請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度0.8〜1.3dtex、沸水収縮率15%〜45%である高収縮アクリル繊維(B)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(7)〜(10)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
    (7)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30〜50質量%
    (8)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)との合計の混率が40〜60質量%
    (9)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (10)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  4. 請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7〜3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(11)〜(14)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
    (11)導電性アクリル繊維(C)の混率が3〜10質量%
    (12)低収縮アクリル繊維(A)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40〜60質量%
    (13)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (14)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  5. 請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0〜2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(15)〜(18)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
    (15)消臭性アクリル繊維(D)の混率が20〜40質量%
    (16)低収縮アクリル繊維(A)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40〜60質量%
    (17)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (18)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  6. 請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(19)〜(23)を満足する請求項1乃至3に記載の紡績糸。
    (19)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30〜50質量%
    (20)導電性アクリル繊維(C)の混率が3〜10質量%
    (21)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40〜60質量%
    (22)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (23)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  7. 請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(24)〜(28)を満足する紡績糸。
    (24)高収縮アクリル繊維(B)の混率が25〜35質量%
    (25)消臭性アクリル繊維(D)の混率が25〜35質量%
    (26)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40〜60質量%
    (27)綿繊維の混率が20〜30質量%
    (28)再生セルロース繊維の混率が20〜30質量%
  8. 請求項1〜7いずれか一項に記載の紡績糸を含む編物。
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