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JP6191887B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、熱プラズマを基材に照射して基材を処理する熱プラズマ処理や、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を処理する低温プラズマ処理などの、プラズマ処理装置に関するものである。
従来、多結晶シリコン(poly−Si)等の半導体薄膜は薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)や太陽電池に広く利用されている。とりわけ、poly−SiTFTは、キャリア移動度が高いうえ、ガラス基板のような透明の絶縁基板上に作製できるという特徴を活かして、例えば、液晶表示装置、液晶プロジェクタや有機EL表示装置などの画素回路を構成するスイッチング素子として、或いは液晶駆動用ドライバの回路素子として広く用いられている。
ガラス基板上に高性能なTFTを作製する方法としては、一般に「高温プロセス」と呼ばれる製造方法がある。TFTの製造プロセスの中でも、工程中の最高温度が1000℃程度の高温を用いるプロセスを一般的に「高温プロセス」と呼んでいる。高温プロセスの特徴は、シリコンの固相成長により比較的良質の多結晶シリコンを成膜することができる点、シリコンの熱酸化により良質のゲート絶縁層を得ることができる点、及び清浄な多結晶シリコンとゲート絶縁層との界面を形成できる点である。高温プロセスではこれらの特徴により、高移動度でしかも信頼性の高い高性能TFTを安定的に製造することができる。
他方、高温プロセスは固相成長によりシリコン膜の結晶化を行うプロセスであるために、600℃程度の温度で48時間程度の長時間の熱処理を必要とする。これは大変長時間の工程であり、工程のスループットを高めるためには必然的に熱処理炉を多数必要とし、低コスト化が難しいという点が課題である。加えて、耐熱性の高い絶縁性基板として石英ガラスを使わざるを得ないため基板のコストが高く、大面積化には向かないとされている。
一方、工程中の最高温度を下げ、安価な大面積のガラス基板上にpoly−SiTFTを作製するための技術が「低温プロセス」と呼ばれる技術である。TFTの製造プロセスの中でも、最高温度が概ね600℃以下の温度環境下において比較的安価な耐熱性のガラス基板上にpoly−SiTFTを製造するプロセスは、一般に「低温プロセス」と呼ばれている。低温プロセスでは、発振時間が極短時間のパルスレーザーを用いてシリコン膜の結晶化を行うレーザー結晶化技術が広く使われている。レーザー結晶化とは、基板上のシリコン薄膜に高出力のパルスレーザー光を照射することによって瞬時に溶融させ、これが凝固する過程で結晶化する性質を利用する技術である。
しかしながら、このレーザー結晶化技術には幾つかの大きな課題がある。一つは、レーザー結晶化技術によって形成したポリシリコン膜の内部に局在する多量の捕獲準位である。この捕獲準位の存在により、電圧の印加によって本来能動層を移動するはずのキャリアが捕獲され、電気伝導に寄与できず、TFTの移動度の低下、閾値電圧の増大といった悪影響を及ぼす。更に、レーザー出力の制限によって、ガラス基板のサイズが制限されるといった課題もある。レーザー結晶化工程のスループットを向上させるためには、一回で結晶化できる面積を増やす必要がある。しかしながら、現状のレーザー出力には制限があるため、第7世代(1800mm×2100mm)といった大型基板にこの結晶化技術を採用する場合には、基板一枚を結晶化するために長時間を要する。
また、レーザー結晶化技術は一般的にライン状に成形されたレーザーが用いられ、これを走査させることによって結晶化を行なう。このラインビームは、レーザー出力に制限があるため基板の幅よりも短く、基板全面を結晶化するためには、レーザーを数回に分けて走査する必要がある。これによって基板内にはラインビームの継ぎ目の領域が発生し、二回走査されてしまう領域ができる。この領域は一回の走査で結晶化した領域とは結晶性が大きく異なる。そのため両者の素子特性は大きく異なり、デバイスのバラツキの大きな要因となる。最後に、レーザー結晶化装置は装置構成が複雑であり且つ、消耗部品のコストが高いため、装置コストおよびランニングコストが高いという課題がある。これによって、レーザー結晶化装置によって結晶化したポリシリコン膜を使用したTFTは製造コストが高い素子になってしまう。
このような基板サイズの制限、装置コストが高いといった課題を克服するため、「熱プラズマジェット結晶化法」と呼ばれる結晶化技術が研究されている(例えば、非特許文献1を参照)。本技術を以下に簡単に説明する。タングステン(W)陰極と水冷した銅(Cu)陽極を対向させ、DC電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この電極間に大気圧下でアルゴンガスを流すことによって、銅陽極に空いた噴出孔から熱プラズマが噴出する。熱プラズマとは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。このことから、熱プラズマは被熱物体を容易に高温に加熱することが可能であり、a−Si膜を堆積した基板が超高温の熱プラズマ前面を高速走査することによってa−Si膜を結晶化することができる。
このように装置構成が極めて単純であり、且つ大気圧下での結晶化プロセスであるため、装置を密閉チャンバ等の高価な部材で覆う必要が無く、装置コストが極めて安くなることが期待できる。また結晶化に必要なユーティリティは、アルゴンガスと電力と冷却水であるため、ランニングコストも安い結晶化技術である。
図16は、この熱プラズマを用いた半導体膜の結晶化方法を説明するための模式図である。
同図において、熱プラズマ発生装置31は、陰極32と、この陰極32と所定距離だけ離間して対向配置される陽極33とを備え構成される。陰極32は、例えばタングステン等の導電体からなる。陽極33は、例えば銅などの導電体からなる。また、陽極33は、中空に形成され、この中空部分に水を通して冷却可能に構成されている。
また、陽極33には噴出孔(ノズル)34が設けられている。陰極32と陽極33の間に直流(DC)電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この状態において、陰極32と陽極33の間に大気圧下でアルゴンガス等のガスを流すことによって、上記の噴出孔34から熱プラズマ35を噴出させることができる。ここで「熱プラズマ」とは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。
このような熱プラズマを半導体膜の結晶化のための熱処理に利用することができる。具体的には、基板36上に半導体膜37(例えば、アモルファスシリコン膜)を形成しておき、当該半導体膜37に熱プラズマ(熱プラズマジェット)35を当てる。このとき、熱プラズマ35は、半導体膜37の表面と平行な第1軸(図示の例では左右方向)に沿って相対的に移動させながら半導体膜37に当てられる。すなわち、熱プラズマ35は第1軸方向に走査しながら半導体膜37に当てられる。ここで「相対的に移動させる」とは、半導体膜37(及びこれを支持する基板36)と熱プラズマ35とを相対的に移動させることを言い、一方のみを移動させる場合と両者をともに移動させる場合のいずれも含まれる。このような熱プラズマ35の走査により、半導体膜37が熱プラズマ35の有する高温によって加熱され、結晶化された半導体膜38(本例ではポリシリコン膜)が得られる(例えば、特許文献1を参照)。
図17は、最表面からの深さと温度の関係を示す概念図である。同図に示すように、熱プラズマ35を高速で移動させることにより、表面近傍のみを高温で処理することができる。熱プラズマ35が通り過ぎた後、加熱された領域は速やかに冷却されるので、表面近傍はごく短時間だけ高温になる。
このような熱プラズマは、点状領域に発生させるのが一般的である。熱プラズマは、陰極32からの熱電子放出によって維持されており、プラズマ密度の高い位置では熱電子放出がより盛んになるため、正のフィードバックがかかり、ますますプラズマ密度が高くなる。つまり、アーク放電は陰極の1点に集中して生じることとなり、熱プラズマは点状領域に発生する。
半導体膜の結晶化など、平板状の基材を一様に処理したい場合には、点状の熱プラズマを基材全体に渡って走査する必要があるが、走査回数を減らしてより短時間で処理できるプロセスを構築するには、熱プラズマの照射領域を広くすることが有効である。このため、古くから熱プラズマを大面積に発生させる技術が検討されている。
例えば、プラズマトーチの外ノズルより噴射するプラズマジェットに、外ノズルの中心軸線と交差する方向でプラズマジェットを広幅化させるための広幅化ガスを2ケ所から同時に噴出し、プラズマジェットを広幅化させる方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。あるいは、ノズル通路の口部が、当該ノズル通路の軸芯に対して所定角度で傾斜していることを特徴とするプラズマノズルを設け、ノズル通路を構成するケーシング、またはそのケーシングの一部を、その長手軸芯回りに高速で回転させ、プラズマノズルをワークピースに沿って通過移動させる方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。また、少なくとも一つの偏芯して配置されたプラズマノズルを持つ回転ヘッドを設けたものが開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
なお、大面積を短時間で処理することを目的としたものではないが、熱プラズマを用いた溶接方法として、帯状電極を用い、その幅方向が溶接線方向となるように配置して溶接することを特徴とする高速ガスシールドアーク溶接方法が開示されている(例えば、特許文献5を参照)。
また、扁平な直方体状の絶縁体材料を用いた、線状の細長い形状をなす誘導結合型プラズマトーチが開示されている(例えば、特許文献6を参照)。
なお、長尺の電極を用いた細長い線状のプラズマを生成する方法が開示されている(例えば、特許文献7を参照)。熱プラズマを発生させるものと記載されているが、これは低温プラズマを発生させるものであり、熱処理に適した構成ではない。仮に熱プラズマを発生させたとすると、電極を用いた容量結合型であるため、アーク放電が一箇所に集中し、長尺方向に均一な熱プラズマを発生させることは困難と推察される。一方、低温プラズマ処理装置としては、エッチングガスやCVD(Chemical Vapor Deposition)用のガスをプラズマ化することにより、エッチングや成膜などのプラズマ処理が可能な装置である。
また、マイクロストリップラインを用いて長尺プラズマを生成する方法が開示されている(例えば、特許文献8を参照)。この構成では、プラズマに接触するチャンバ壁面が完全には冷却できない(水冷流路によって囲まれていない)ので、熱プラズマ源としては動作できないものと考えられる。
また、複数の放電電極をライン状に並べることにより、線状の長尺プラズマトーチを形成するものが開示されている(例えば、特許文献9を参照)。
特開2008−53634号公報 特開平08−118027号公報 特開2001−68298号公報 特表2002−500818号公報 特開平04−284974号公報 特表2009−545165号公報 特開2007−287454号公報 特表2010−539336号公報 特開2009−158251号公報
S.Higashi, H.Kaku,T.Okada,H.Murakami and S.Miyazaki,Jpn.J.Appl.Phys.45,5B(2006)pp.4313−4320
しかしながら、半導体の結晶化など、ごく短時間だけ基材の表面近傍を高温処理する用途に対して、従来の熱プラズマを大面積に発生させる技術は有効ではなかった。
従来例に示した特許文献2に記載の、熱プラズマを大面積に発生させる技術においては、広幅化はされるものの、広幅化された領域における温度分布は100℃以上となっており、均一な熱処理の実現は不可能である。
また、従来例に示した特許文献3、4に記載の、熱プラズマを大面積に発生させる技術においては、本質的には熱プラズマを揺動させるものであるから、実質的に熱処理されている時間は、回転させずに走査した場合と比べて短くなるので、大面積を処理する時間が特段短くなるものではない。また、均一処理のためには回転速度を走査速度に比べて十分に大きくする必要があり、ノズルの構成が複雑化することは避けられない。
また、従来例に示した特許文献5に記載の技術は溶接技術であり、大面積を均一に処理するための構成ではない。仮にこれを大面積処理用途に適用しようとしても、この構成においては点状のアークが帯状電極に沿って振動するので、時間平均すると均一にプラズマが発生するものの、瞬間的には不均一なプラズマが生じている。したがって、大面積の均一処理には適用できない。
また、従来例に示した特許文献6に記載の技術は、非特許文献1や特許文献1に開示されているDCアーク放電を用いたものと異なり、誘導結合型の高周波プラズマトーチであることが特徴である。無電極放電であることから、熱プラズマの安定性に優れ(時間変化が小さい)、電極材料の基材への混入(コンタミネーション)が少ないという利点がある。
さて、誘導結合型プラズマトーチにおいては、高温プラズマから絶縁体材料を保護するために、絶縁体材料を二重管構成としてその間に冷媒を流す方法が一般的に採用されている。しかしながら、従来例に示した特許文献6に記載の技術においては、絶縁体材料が扁平な直方体状をなしていることから、これを単純に二重管構成としただけでは、十分な流量の冷媒を流すことができない。なぜなら、絶縁体材料は一般に金属に比べて機械的強度に劣るため、絶縁体材料を長尺方向に余りに長くすると、二重管の内圧を高くできなくなるからである。このため、大面積を均一に処理するのに限界がある。
なお、点状の熱プラズマであっても、その直径が大きければ大面積処理の際の走査回数を減らせるため、用途によっては短時間で処理できる。しかし、熱プラズマの直径が大きいと、走査時に熱プラズマが基材上を通過する時間が実質的に長くなるため、ごく短時間だけ基材の表面近傍のみを高温処理することはできず、基材のかなり深い領域までが高温になり、例えばガラス基板の割れや膜剥がれなどの不具合を生じることがある。
また、従来例に示した特許文献9に記載の技術では、先に述べた誘導結合型の高周波プラズマトーチと比較して、熱プラズマの安定性に劣り(時間変化が大きい)、電極材料の基材への混入(コンタミネーション)が多いという欠点がある。
また、従来例に示した特許文献6に記載の技術に見られるような誘導結合型の高周波プラズマトーチにおいては、円筒型のものが分析用あるいは溶射用に実用化されているが、プラズマの発生効率が悪く、ガス流量を増すと放電が不安定化するという欠点があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができるプラズマ処理装置を提供することを目的としている。
本願発明のプラズマ処理装置は、以下の構成要件をすることを特徴とする。
〔1〕線状の開口部を備えた誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において一続きに閉じた形状を有する環状チャンバ。
〔2〕環状チャンバの内部にガスを導入するガス供給配管。
〔3〕環状チャンバの近傍に設けられたコイル。
上記〔1〕〜〔3〕を有する誘導結合型プラズマトーチユニットと、を備え、
〔4〕コイルに接続される高周波電源。
〔5〕開口部に対向して配置され、かつ、基材を載置する基材載置台。
を有する。
このような構成により、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができる。
本発明によれば、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができる。
本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示す斜視図 本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態4におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態5におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態6におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態7におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態8におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態9におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態10におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態11におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態11におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態12におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 本発明の実施の形態13におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 従来例におけるプラズマ処理装置の構成を示す断面図 従来例における最表面からの深さと温度の関係を示す概念図
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図である。図1(b)、(c)及び(d)は、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図である。図1(a)は、図1(b)の破線A−A’で切った断面図である。図1(b)は、図1(a)の破線B−B’で切った断面図、図1(c)は、図1(a)の破線C−C’で切った断面図、図1(d)は、図1(a)の破線D−D’で切った断面図、また、図2は、図1に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図1及び図2において、基材載置台1上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、導体製のソレノイドコイル3が第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の近傍に配置される。誘電体製の長尺チャンバは、第一石英ブロック4、第二石英ブロック5及び基材2の表面によって囲まれた空間(長尺チャンバ内部の空間7)により画定される。長尺チャンバのソレノイドコイル3に近い側の内壁面は、ソレノイドコイル3と平行な曲面である。このような構成では、ソレノイドコイル3の任意の部位において、ソレノイドコイル3から長尺チャンバまでの距離が等しくなるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。
誘導結合型プラズマトーチユニットTは、全体が接地された導体製のシールド部材(図示しない)で囲われ、高周波の漏洩(ノイズ)が効果的に防止できるとともに、好ましくない異常放電などを効果的に防止できる。
長尺チャンバ内部の空間7は、内部誘電体ブロックとしての第二石英ブロック5の外壁面と、これが挿入された外部誘電体ブロックとしての第一石英ブロック4の内壁面に囲まれている。つまり、長尺チャンバは、開口部8以外が誘電体で囲まれている構成である。また、長尺チャンバ内部の空間7は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味し、円形に限定されるものではない。
本実施の形態においては、レーストラック形(2つの長辺をなす直線部と、その両端に2つの短辺をなす円、楕円、または直線が連結されてなる、一続きの閉じたヒモ状の形状)の長尺チャンバを例示している。長尺チャンバ内部の空間7に発生したプラズマPは、長尺チャンバにおける長尺で線状の開口部8において、基材2に接触する。また、長尺チャンバの長手方向と開口部8の長手方向とは平行に配置されている。また、開口部8の開口幅は、環状チャンバの太さ(環状チャンバを構成する、一続きの閉じたヒモの太さ、図1(a)の寸法d)に等しい。
第二石英ブロック5の内部にプラズマガスマニホールド9が設けられている。プラズマガス供給配管10よりプラズマガスマニホールド9に供給されたガスは、第二石英ブロック5に設けられたガス導入部としてのプラズマガス供給穴11(貫通穴)を介して、長尺チャンバ内部の空間7に導入される。このような構成により、長手方向に均一なガス流れを簡単に実現できる。プラズマガス供給配管10へ導入するガスの流量は、その上流にマスフローコントローラなどの流量制御装置を備えることにより制御される。
プラズマガス供給穴11は、丸い穴状のものを長手方向に複数設けたものであるが、長尺のスリットであってもよい。
ソレノイドコイル3は中空の銅管からなり、内部が冷媒流路となっている。すなわち、水などの冷媒を流すことで、冷却が可能である。また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5には、開口部8の長手方向に対して平行に冷媒流路15が設けられている。また、第一石英ブロック4には、開口部8の長手方向に対して垂直な向きにも冷媒流路15が設けられ、開口部8の長手方向に対して平行な冷媒流路15と立体的に交差し、外部との間で冷媒の給排水が行われる。
また、第二石英ブロック5内においては、図1(c)に示すように、冷媒流路が合流して束ねられ、外部との冷媒の給排水が行われる。これらの冷媒流路は、その断面が円であるから、大量の冷媒を流した際もその内圧によって構成部材の変形が起きにくい。つまり、本実施の形態においては、従来例に示した特許文献6に記載の技術において二重管構成として水冷した場合に比べて、はるかに大量の冷媒を流すことができ、効果的な冷却が可能である。
長方形の線状の開口部8が設けられ、基材載置台1(或いは、基材載置台1上の基材2)は、開口部8と対向して配置されている。この状態で、長尺チャンバ内にガスを供給しつつ、開口部8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源よりソレノイドコイル3に高周波電力を供給することにより、長尺チャンバ内部の空間7にプラズマPを発生させ、開口部8付近のプラズマを基材2に曝露することにより、基材2上の薄膜22をプラズマ処理することができる。開口部8の長手方向に対して垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。つまり、図1(a)の左右方向へ、図1(b)(c)(d)の紙面に垂直な方向へ、誘導結合型プラズマトーチユニットTまたは基材載置台1を動かす。
長尺チャンバ内に供給するガスとして種々のものが使用可能だが、プラズマの安定性、着火性、プラズマに暴露される部材の寿命などを考えると、不活性ガス主体であることが望ましい。なかでも、Arガスが典型的に用いられる。Arのみでプラズマを生成させた場合、プラズマは相当高温となる(10,000K以上)。
このようなプラズマ処理装置において、長尺チャンバ内にプラズマガス供給穴11よりArまたはAr+H2ガスを供給しつつ、開口部8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源より13.56MHzの高周波電力を、ソレノイドコイル3に供給することにより、長尺チャンバ内部の空間7に高周波電磁界を発生させることでプラズマPを発生させ、開口部8付近のプラズマを基材2に曝露するとともに走査することで、半導体膜の結晶化などの熱処理を行うことができる。
プラズマ発生の条件としては、走査速度=50〜3000mm/s、プラズマガス総流量=1〜100SLM、Ar+H2ガス中のH2濃度=0〜10%、高周波電力=0.5〜10kW程度の値が適切である。ただし、これらの諸量のうち、ガス流量及び電力は、開口部8の長さ100mm当たりの値である。ガス流量や電力などのパラメータは、開口部8の長さに比例した量を投入することが適切と考えられるためである。
このように、開口部8の長手方向と、基材載置台1とが平行に配置されたまま、開口部8の長手方向とは垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動するので、生成すべきプラズマの長さと、基材2の処理長さがほぼ等しくなるように構成することが可能となる。
また、本実施の形態においては、長尺チャンバ内部の空間7は環状である。そして、開口部8を構成する第一石英ブロック4の最下面と基材2の表面との距離(図1(a)の寸法g)を0.5mmとしている。このような長尺チャンバの構造がもたらす効果について、以下で説明する。
従来例に示した特許文献6には、プラズマトーチ内部の構造は詳細に開示されていないが、一般的な円筒型の誘導結合型プラズマトーチと同様、一塊の直方体形状の空間であるものと推察される。このような空間に大気圧誘導結合型プラズマを発生させると、円環状の(ドーナツ形状の)プラズマがチャンバ内に発生しやすい。すなわち、直方体形状のチャンバ内に円環状のプラズマが発生するので、チャンバ内はその一部のみが非常に高密度のプラズマとなり、長尺方向に均一な処理を行うことが困難である。
一方、本実施の形態においては、長尺の環状チャンバを構成しているため、その形状に沿ってレーストラック形の細長い長尺のプラズマPが発生する。したがって、従来例に比べて、格段に長尺方向に均一な処理を行うことができる。また、チャンバの体積が従来例に比べて小さくなることから、単位体積当たりに作用する高周波電力が増すので、プラズマ発生効率がよくなるという利点もある。
また、従来の一般的な誘導結合型プラズマトーチにおいては、ガス流量を増すと放電が不安定になることが指摘されている(例えば、Hironobu Yabuta et al., “Design and evaluation of dual inlet ICP torch for low gas consumption”, Journal of Analytical Atomic Spectrometry, 17(2002)1090−1095頁を参照)。これは、チャンバ内で環状プラズマが揺動した際に、ガス流れの下流域において環状プラズマとコイルとの距離が離れすぎて誘導結合を維持できなくなり、プラズマが失火してしまうためと考えられる。
一方、本実施の形態においては、開口部8を構成する第一石英ブロック4の最下面と基材2の表面との距離gを0.5mmと極めて狭く構成しているため、環状のプラズマPが誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材2との間の隙間に侵入することができず、環状チャンバ内(隙間よりも上流の領域)にとどまる。したがって、ガス流量を増しても環状のプラズマPの揺動が起きず、極めて安定した長尺の環状のプラズマPが維持される。したがって、従来例に比べて、格段に安定したプラズマ発生が可能となる。
また、プラズマPにおいて電子密度や活性粒子密度の高い部分を基材2の表面に曝露させるので、高速な処理、あるいは、高温処理が可能となる。
なお、開口部8を構成する第一石英ブロック4の最下面と基材2の表面との距離gについて詳細に調べたところ、gが1mm以下である場合に環状のプラズマPの揺動を抑制できることがわかった。gがあまりに小さいと、長尺方向の部品加工や組立精度の影響が増し、また、通路を通過して基材2に到達するプラズマ流が弱まるため、0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上に構成することが望ましい。
また、環状チャンバの太さ(環状チャンバを構成する、一続きの閉じたヒモの太さ)dは、図1(a)においては、環状チャンバにおける、第一石英ブロック4の内壁面と、第二石英ブロック5の外壁面との間の距離dとして表される。また、環状チャンバの外径(環状チャンバの全体としての大きさ)をeとすると、図1(a)においては、互いに向かい合った、第一石英ブロック4の内壁面の距離eとして表される。環状チャンバは長尺であるので、長辺部と短辺部とでは、環状チャンバの外径eは異なり、長辺部における環状チャンバの外径eの方が小さい。
これらの寸法d(環状チャンバの太さ)、e(環状チャンバの外径)について実験的に詳細に調べたところ、dが1mm未満であると、環状チャンバ内には高密度の熱プラズマが極めて発生しにくくなることが判明した。また、eが10mm未満の場合も、環状チャンバ内には高密度の熱プラズマが極めて発生しにくくなることが判明した。こうした実験から、環状チャンバの太さは、1mm以上であることが好ましく、環状チャンバの外径は、10mm以上であることが好ましいことがわかった。
また、dが太すぎるとプラズマ発生効率が低下するので、環状チャンバの太さdは10mm以下であることが望ましい。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図3を参照して説明する。
図3は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態2においては、長尺で線状の開口部8を、長尺チャンバの長辺に対応する位置に2箇所配置する構成としている。
このような構成では、基材2の表面の任意の場所が、一度の走査(誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材載置台1とを相対的に移動すること)で二度プラズマに曝露されることになる。したがって、より高速または高温のプラズマ処理が可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図4を参照して説明する。
図4は本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態3においては、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の高さを小さく構成している。
このような構成により、トーチユニットが非常に小さくなる。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図5を参照して説明する。
図5は本発明の実施の形態4におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態4においては、実施の形態3と同様、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の高さを小さく構成している。さらに、ソレノイドコイル3の代わりに、平面状のスパイラルコイル21を、第二石英ブロック5の上方に設けている。
このような構成により、トーチユニットが非常に小さくなる。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図6を参照して説明する。
図6は本発明の実施の形態5におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態5においては、第二石英ブロック5の下方を、基材載置台1に平行な面で切った断面が同じ形状になるよう構成するとともに、第一石英ブロック4の中間部に外側に向けて溝を形成する(図の左側の長辺)とともに、第一石英ブロック4の下部に外側に向けて凹部を形成する(図の右側の長辺)することで、これら溝及び凹部と第二石英ブロック5の外壁面との間に長尺チャンバ内部の空間7を構成している。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図7を参照して説明する。
図7は本発明の実施の形態6におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図7において、内部が冷媒流路を構成する銅管12が、第二石英ブロック5の内側に設けられた凹部内に、接着剤14により接合されている。銅管12は接地され、プラズマの着火性向上に寄与している。第一石英ブロック4に対しては、その外壁面に誘電体管としての石英管13が接着剤14により接合される。また、ソレノイドコイル3が第一石英ブロック4の外壁面に接着剤14により接合されており、ソレノイドコイル3自身と第一石英ブロック4の両方を冷却することができる構造である。
また、第二石英ブロック5の凹部においては、銅管12内に冷媒を流すことで、凹部を効果的に冷却するとともに、プラズマPに接する第二石英ブロック5の外壁面(長尺チャンバの内壁面)を効果的に冷却することができる。
また、第二石英ブロック5に上方から凹部を形成しているため、プラズマガスマニホールド9及びプラズマガス供給配管10を、トーチユニットの長尺方向に対して平行に2箇所ずつ設ける構成としている。このような構成では、2つのガス供給系(プラズマガスマニホールド9及びプラズマガス供給配管10)のガス流量バランスを制御できるという利点もある。
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、図8を参照して説明する。
図8は本発明の実施の形態7におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図8において、第一石英ブロック4の最下部に張り出し部4aが設けられ、ソレノイドコイル3と基材2の間にプラズマガスが主成分となる空間ができないように構成されている。
このような構成により、プラズマPとソレノイドコイル3との間でアーク放電が起きることを効果的に抑制できる。
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について、図9を参照して説明する。
図9は本発明の実施の形態8におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図9において、第二石英ブロック5の内側に設けられた凹部内に、ソレノイドコイル3が挿入されている。ソレノイドコイル3の中心軸は、図の紙面上、上下方向である。
このような構成により、誘導結合型プラズマトーチユニットTが小型化できる。また、環状チャンバ内の放電や開口部8直下の基材2表面の視認性が高まるので、発光モニタリング、温度モニタリングなどの種々のモニタリングが容易に行える。また、プラズマPとソレノイドコイル3が空間的に分離されるので、プラズマPとソレノイドコイル3との間でアーク放電が起きることを効果的に抑制できる。
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について、図10を参照して説明する。
図10は本発明の実施の形態9におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図10において、第二石英ブロック5の内側に設けられた凹部内に、ソレノイドコイル3が挿入されている。ソレノイドコイル3の中心軸は、図の紙面上、左右方向である。また、実施の形態1〜8においては、ソレノイドコイル3の中心軸が基材2に垂直で、かつ、環状チャンバがなす面が基材2に概ね平行であったのに対して、本実施の形態においては、ソレノイドコイル3の中心軸が基材2に平行で、かつ、環状チャンバがなす面が基材2に垂直となる構成としている。
このような構成により、誘導結合型プラズマトーチユニットTが小型化できる。また、環状チャンバ内の放電や開口部8直下の基材2表面の視認性が高まるので、発光モニタリング、温度モニタリングなどの種々のモニタリングが容易に行える。また、プラズマPとソレノイドコイル3が空間的に分離されるので、プラズマPとソレノイドコイル3との間でアーク放電が起きることを効果的に抑制できる。
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について、図11を参照して説明する。
図11は本発明の実施の形態10におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図ある。図11(a)は誘導結合型プラズマトーチユニットTの着火シーケンス・加速を実施する準備段階を示し、図11(b)はプラズマ処理中の段階を示し、図11(c)はプラズマ処理が完了した後に減速・失火を実施する段階を示す。
図11において、基材載置台1の両隣に、平板状のカバー16が設けられている。カバー16は、基材2が配置された際に基材2の縁部を囲うように、基材載置台1の周囲に設けられる。また、カバー16の表面と、基材2の表面が、同一平面上に位置するよう構成される。カバー16の内部には、カバー16を冷却するための冷媒流路17が設けられている。カバー16は、装置をプラズマから保護する機能と、プラズマの着火・失火をスムーズに行えるよう、環状チャンバの形状を一定に保つ機能がある。基材2を基材載置台1上に載置した際に、カバー16と基材2との間に生ずる隙間wはできるだけ小さい方が好ましい。
なお、カバー16の少なくとも表面は、絶縁材料から構成されていることが好ましい。このような構成により、プラズマとカバー16との間でアーク放電が起きることを効果的に抑制できる。カバー16の少なくとも表面を絶縁材料から構成するに際して、カバー16全体を石英、セラミックスなどの絶縁体で構成してもよいし、ステンレス、アルミニウムなどの金属(導体)に、溶射、CVD、塗工などにより絶縁皮膜を形成したものを用いてもよい。
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は本発明の実施の形態11におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図ある。図12は、誘導結合型プラズマトーチユニットTの着火シーケンス・加速を実施する準備段階を示している。また、図13は、本発明の実施の形態11におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図であり、図1(d)に相当する。
実施の形態10においては、基材2を基材載置台1上に載置した際に、カバー16と基材2との間に隙間wが生じる場合を例示したが、本実施の形態においては、図12に示すように、この隙間ができないように構成している。実施の形態10においては、誘導結合型プラズマトーチユニットTが隙間wの近傍を通り過ぎる時に、プラズマが揺らいだり失火したりすることがあり得るが、本実施の形態ではこれを効果的に抑制できる。このような構成を実現するには、カバー16を可動にしておき、基材2を基材載置台1上に載置した後、モータ駆動機構、エア駆動機構、バネ駆動機構などを適宜用いてカバー16を基材2に向けてゆっくりと近づけ、押し当てる方法が考えられる。
また、図13において、開口部8の長さが基材2の幅以上となっているので、一度の走査(誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材載置台1とを相対的に移動すること)で基材2の表面近傍の薄膜22の全体を処理することができる。基材載置台1の両隣に、平板状のカバー16が設けられている。カバー16は、装置をプラズマから保護する機能と、プラズマ不安定化・失火を抑制できるよう、環状チャンバの形状を一定に保つ機能がある。
なお、図13においては、カバー16の内部に冷媒流路を設けていないが、これは、誘導結合型プラズマトーチユニットTがカバー16上を短時間で通り過ぎるため、誘導結合型プラズマトーチユニットTからカバー16への熱エネルギー流入が比較的小さいためである。処理の性質によっては、冷媒流路を設けて水冷することが好ましい場合もありうる。
(実施の形態12)
以下、本発明の実施の形態12について、図14を参照して説明する。
図14は本発明の実施の形態12におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図14において、長尺で線状の開口部8を構成する線状の隙間を隔てて、第三石英ブロック18及び第四石英ブロック19が誘導結合型プラズマトーチユニットTの最下部に設けられ、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5との間に、環状チャンバ内部の空間を構成している。第三石英ブロック18及び第四石英ブロック19は、少なくとも一方が図の左右方向にスライド可能なように構成され、開口部8の開口幅が可変となっている。
このような構成により、基材2へのプラズマ曝露の強度や、プラズマに曝露される時間などの処理パラメータを制御することができる。
(実施の形態13)
以下、本発明の実施の形態13について、図15を参照して説明する。
図15は本発明の実施の形態13におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図あり、図1(a)に相当する。
図15において、ソレノイドコイル3の中心軸は、図の紙面上、左右方向である。また、実施の形態9と同様、ソレノイドコイル3の中心軸が基材2に平行で、かつ、環状チャンバがなす面が基材2に垂直となる構成としている。ソレノイドコイル3は、中心軸に対して少し傾斜して配置されているが、環状チャンバに十分近接しているので、環状チャンバ内部の空間に高密度プラズマを生成することができる。ソレノイドコイル3と基材2との間には誘電体ブロック20が設けられ、プラズマから供給された荷電粒子がソレノイドコイル3に到達しないような構造となっている。
このような構成により、誘導結合型プラズマトーチユニットTが小型化できる。また、環状チャンバ内の放電や開口部8直下の基材2表面の視認性が高まるので、発光モニタリング、温度モニタリングなどの種々のモニタリングが容易に行える。また、プラズマPとソレノイドコイル3が空間的に分離されるので、プラズマPとソレノイドコイル3との間でアーク放電が起きることを効果的に抑制できる。
以上述べたプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、固定された基材載置台1に対して走査してもよいが、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材載置台1を走査してもよい。
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。加えて、従来例で詳しく述べたTFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、さまざまな表面処理に適用できる。また、太陽電池の製造方法としては、シリコンインゴットを粉砕して得られる粉末を基材上に塗布し、これにプラズマを照射して溶融させ多結晶シリコン膜を得る方法にも適用可能である。
また、プラズマの着火を容易にするために、着火源を用いることも可能である。着火源としては、ガス給湯器などに用いられる点火用スパーク装置などを利用できる。
また、長尺の環状チャンバを構成するのではなく、円筒状の石英ブロック、円筒状に成形された導体製のソレノイドコイル3などを用いて、円筒状のトーチユニットを用いることも考えられる。
なお、絶縁体の基材2を用いる場合は、本発明の適用は比較的容易であるが、基材2が導体や半導体である場合、あるいは、薄膜22が導体や半導体である場合は、基材2の表面でアーク放電が発生しやすい。これを防ぐため、基材2の表面に絶縁膜を形成した後に、基材2の表面を処理する方法を用いることができる。
また、説明においては簡単のため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。
また、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理する場合について詳しく例示したが、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理する場合においても、本発明は適用できる。プラズマガスに反応ガスを混ぜることにより、反応ガスによるプラズマを基材へ照射し、エッチングやCVDが実現できる。
あるいは、プラズマガスとしては希ガスまたは希ガスに少量のH2ガスを加えたガスを用いつつ、シールドガスとして反応ガスを含むガスを供給することによって、プラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射し、エッチング、CVD、ドーピングなどのプラズマ処理を実現することもできる。プラズマガスとしてアルゴンを主成分とするガスを用いると、実施例で詳しく例示したように、熱プラズマが発生する。
一方、プラズマガスとしてヘリウムを主成分とするガスを用いると、比較的低温のプラズマを発生させることができる。このような方法で、基材をあまり加熱することなく、エッチングや成膜などの処理が可能となる。エッチングに用いる反応ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えば、Cxy(x、yは自然数)、SF6などがあり、シリコンやシリコン化合物などをエッチングすることができる。
反応ガスとしてO2を用いれば、有機物の除去、レジストアッシングなどが可能となる。CVDに用いる反応ガスとしては、モノシラン、ジシランなどがあり、シリコンやシリコン化合物の成膜が可能となる。あるいは、TEOS(Tetraethoxysilane)に代表されるシリコンを含有した有機ガスとO2の混合ガスを用いれば、シリコン酸化膜を成膜することができる。
その他、撥水性・親水性を改質する表面処理など、種々の低温プラズマ処理が可能である。従来技術(例えば、特許文献7に記載のもの)に比較すると、誘導結合型であるため、単位体積あたり高いパワー密度を投入してもアーク放電に移行しにくいため、より高密度なプラズマが発生可能であり、その結果、速い反応速度が得られ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することが可能となる。
以上のように本発明は、TFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能である。勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、さまざまな表面処理において、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。
また、種々の電子デバイスなどの製造における、エッチング・成膜・ドーピング・表面改質などの低温プラズマ処理において、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。
1 基材載置台
2 基材
T 誘導結合型プラズマトーチユニット
3 ソレノイドコイル
4 第一石英ブロック
5 第二石英ブロック
7 長尺チャンバ内部の空間
8 開口部
9 プラズマガスマニホールド
10 プラズマガス供給配管
11 プラズマガス供給穴
15,17 冷媒流路
P プラズマ
22 薄膜

Claims (1)

  1. 線状の開口部を備えた誘電体ブロックと、
    前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において一続きに閉じた形状を有する環状チャンバと、
    前記環状チャンバの内部にガスを導入するガス供給配管と、
    前記環状チャンバの近傍に設けられたコイルと、を有する誘導結合型プラズマトーチユニット、を備え、
    前記コイルに接続される高周波電源と、
    前記開口部に対向して配置され、かつ、基材を載置する基材載置台と、を有する、
    プラズマ処理装置。
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