本発明は、太陽光発電など、出力が必ずしも安定しない、いわゆる再生可能エネルギーの発電設備を効果的に利用するために、蓄電池と組み合わせてピークシフトを実現するようなシステム(例えば、蓄電池とPCSとこれらを接続する双方向DC/DCコンバータとを備えるシステム)において、起動時に逆方向電流を発生させることなく、効率の高い電圧条件において昇降圧または充放電といった動作の切り替えを高速に行う制御が可能な双方向コンバータを提供する。また、本発明は、上記の制御をより簡易な方式で実現するので、より安価なコントローラを双方向コンバータに使用できるようにすると共に、双方向コンバータの設計コストや制御プログラムの作成工数の削減にも貢献する。
本発明による双方向コンバータは、4つのスイッチ素子を備え、定常時には、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子が相補的に動作し、第3のスイッチ素子と第4のスイッチ素子が相補的に動作する。起動時から定常時に達するまでの一定期間は、定常時にオンである第1のスイッチ素子から第4のスイッチ素子のうち少なくとも1つがオフになり、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子の組みと、第3のスイッチ素子と第4のスイッチ素子の組のうち、少なくとも一方の組みは相補的に動作をしない。
本発明によれば、昇降圧または充放電という電圧条件または電流方向の変化に際して切替制御を行う双方向コンバータにおいて、起動時の逆方向電流を抑制することができる。このため、本発明による双方向コンバータは、昇降圧または充放電という動作条件の変化に対して高速に応答することができる。また、高負荷時に同様の制御を適用することにより、双方向コンバータの消費電力を抑制し、効率を向上することができる。
以下、本発明の実施例による双方向コンバータを、図面を用いて説明する。本発明の実施例による双方向コンバータは、双方向に電圧及び電力を変換して出力するDC/DCコンバータである。
本発明の実施例1による双方向コンバータを、図1〜図11を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1による双方向コンバータのブロック図である。図1では、一例として、非絶縁型の双方向DC/DCコンバータを示している。図1に示すように、双方向コンバータ1は、電力を変換する主回路部10と、主回路部10を制御するスイッチング制御部20とで構成され、第1の入出力端子T1と第2の入出力端子T2とを備える。第1の入出力端子T1は、第1の外部装置と接続され、第2の入出力端子T2は、第2の外部装置と接続される。
主回路部10の構成について説明する。第1の入出力端子T1には、カスケード接続された第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2とが接続されており、さらにこれらのスイッチ素子Q1、Q2と並列に第1の容量C1が接続されている。第1のスイッチ素子Q1は、第1の入出力端子T1の正極側に接続され、第2のスイッチ素子Q2は、第1の入出力端子T1の負極側に接続される。第2の入出力端子T2には、カスケード接続された第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4とが接続されており、さらにこれらのスイッチ素子Q3、Q4と並列に第2の容量C2が接続されている。第3のスイッチ素子Q3は、第2の入出力端子T2の正極側に接続され、第4のスイッチ素子Q4は、第2の入出力端子T2の負極側に接続される。
第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2との接続部と、第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4との接続部には、磁性部品であるコイルLが接続される。また、双方向コンバータ1は非絶縁型であるので、第1の入出力端子T1と第2の入出力端子T2の負極側は、共に共通の基準電位に接続されている。図1の双方向コンバータ1は、その形状から、Hブリッジ型の回路と呼ばれることもある。
本実施例では、第1の入出力端子T1には、第1の外部装置として電圧源Aが接続され、第2の入出力端子T2には、第2の外部装置として電圧源Bが接続されるものとする。ここで、以後の説明のため、電圧源Aには蓄電池が、電圧源Bには系統(例えばPCS)側の直流バス配線が接続されているものとする。このため、双方向コンバータ1に流れる電流iが、電圧源Aから電圧源Bに向かって流れると放電となり、逆に電圧源Bから電圧源Aに向かって流れると充電となる。すなわち、第2の入出力端子T2から電圧源Bへ出力する場合が放電であり、第1の入出力端子T1から電圧源Aへ出力する場合が充電である。このとき、双方向コンバータ1に流れる電流iの向きは、放電の場合を「正」とし、充電の場合を「負」とする。なお、蓄電池の電圧をVbatで表し、系統側の直流バスの電圧をVrailで表す。電圧Vbatは、第1の入出力端子T1の電圧であり、電圧Vrailは、第2の入出力端子T2の電圧である。
第1から第4のスイッチ素子Q1〜Q4のそれぞれは、並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオード13a〜13dとで構成される。スイッチ素子Q1のコレクタ端子は、第1の入出力端子T1の正極側に接続される。スイッチ素子Q1のエミッタ端子とスイッチ素子Q2のコレクタ端子は、コイルLの一端に接続される。スイッチ素子Q2のエミッタ端子は、第1の入出力端子T1の負極側に接続される。スイッチ素子Q3のコレクタ端子は、第2の入出力端子T2の正極側に接続される。スイッチ素子Q3のエミッタ端子とスイッチ素子Q4のコレクタ端子は、コイルLの他端に接続される。スイッチ素子Q4のエミッタ端子は、第2の入出力端子T2の負極側に接続される。
スイッチ素子Q1のコレクタ端子には、第1の容量C1の正極側が接続され、スイッチ素子Q2のエミッタ端子には、第1の容量C1の負極側が接続される。スイッチ素子Q3のコレクタ端子には、第2の容量C2の正極側が接続され、スイッチ素子Q4のエミッタ端子には、第2の容量C2の負極側が接続される。また、第1から第4までのスイッチ素子Q1〜Q4のそれぞれのコレクタとエミッタとの間には、逆電流防止のためのダイオード13a〜13dがそれぞれ接続される。ダイオード13a〜13dは、アノードがスイッチ素子Q1〜Q4のエミッタ側に、カソードがスイッチ素子Q1〜Q4のコレクタ側に接続される。
主回路部10は、電圧Vbat、電圧Vrail、及びコイルLに流れる電流i(インダクタ電流i)を検出することができる。電圧Vbatと電圧Vrailは、それぞれ、第1の容量C1と第2の容量C2の電圧を検出することにより、求めることができる。インダクタ電流iは、シャント抵抗などを利用して検出することができるが、本実施例ではインダクタ電流iの流れる向きも検出する必要があるので、HCT(Hole Current Transducer)のように電流の向きを判定可能な素子を用いて検出する。電圧Vbat、電圧Vrail、及びインダクタ電流iの検出回路は、図1では図示を省略している。
スイッチング制御部20は、制御部21、PWM信号生成部22、逆電流側出力オフ部23、及びAND回路A1〜A4を備え、各スイッチ素子Q1〜Q4の駆動信号を生成する。
制御部21は、主回路部10で検出された電圧源Aの電圧Vbat、電圧源Bの電圧Vrail、及びコイルLに流れる電流i(インダクタ電流i)を受け取る。これらの値は、デジタル値に変換されて、制御部21に入力される。デジタル値への変換は、専用のADC(Analog Digital Converter、ADコンバータ)のIC(集積回路)を用いて行ってもよく、制御部21がADC機能を内蔵する場合には制御部21が行ってもよい。そして、制御部21は、動作条件によって、入力した検出値によりインダクタ電流iを制御するために、各スイッチ素子Q1〜Q4のデューティを決定するための制御信号を、PWM信号生成部22に出力する。本実施例の双方向コンバータの場合には、インダクタ電流iの方向と、2つの電圧源A、Bの電圧の大小関係とによって、4つのスイッチ素子Q1〜Q4の動作条件が異なる。このため、スイッチ素子Q1〜Q4の制御信号は、0〜200%に相当する値をとるものとする。
PWM信号生成部22は、受信した制御信号に応じて、0〜200%の値を各スイッチ素子Q1〜Q4に割り当てる。
デューティを決定するための制御値は、一般的なPI制御によって求められる。例えば、電圧源Bの電圧Vrailを一定とするような定電圧制御であれば、入力電圧Vrailと目標電圧との差分をフィードバックしてPI制御を行うことにより、目標となる電流指令値を演算し、さらに検出電流iとの差分をフィードバックしてPI制御を行うことで、デューティ決定に必要な制御値を演算する。電流iが正負の値をカバーするため、充放電電流を制御し、双方向コンバータの動作が実現可能となる。一方、蓄電池に充電してその充電状態を制御することが目的であれば、目標電圧の制御対象を電圧源Aの電圧VbatとしてPI演算により電流指令値を導出し、さらに電流指令値の動作範囲を制御することで、目的にあったコンバータの動作が可能である。
なお、制御方式としてPI制御を例に挙げたが、要求される精度や応答速度など必要に応じて、PID制御などを用いることも可能である。
ここで、Hブリッジ型の回路構成を持つ双方向コンバータの最も単純なスイッチ制御として、以下の制御を考える。
降圧放電、すなわち電圧Vbat>電圧Vrailで電圧源Aから電圧源Bへ電流を流す制御を行うときは、スイッチ素子Q2、Q3、Q4をオフ状態にし、スイッチ素子Q1をPWM信号により駆動してデューティ制御をする。スイッチ素子Q1がオンの期間に、電圧源Aから、スイッチ素子Q1、コイルL、及びスイッチ素子Q3と並列接続されたダイオード13cを介して、電圧源Bへ電流を流す。スイッチ素子Q1がオフの期間には、コイルLに蓄えられたエネルギーによって、スイッチ素子Q2に並列のダイオード13b、コイルL、及びスイッチ素子Q3に並列のダイオード13cを介して、電圧源Bへ環流する。
昇圧放電、すなわち電圧Vbat<電圧Vrailで電圧源Aから電圧源Bへ電流を流す制御を行うときは、スイッチ素子Q1をオン状態にし、スイッチ素子Q2、Q3をオフ状態にし、スイッチ素子Q4をPWM信号により駆動してデューティ制御をする。スイッチ素子Q4がオンの期間に、スイッチ素子Q1、コイルL、及びスイッチ素子Q4を介して、電圧源Aに戻る電流が発生する。スイッチ素子Q4がオフの期間には、コイルLに蓄えられたエネルギーによって、電流は、スイッチ素子Q4からスイッチ素子Q3に並列のダイオード13cへと転流し、電圧源Bへと供給される。
降圧充電、すなわち電圧Vbat<電圧Vrailで電圧源Bから電圧源Aへ電流を流す制御を行うときは、スイッチ素子Q1、Q2、Q4をオフ状態にし、スイッチ素子Q3をPWM信号により駆動してデューティ制御をする。スイッチ素子Q3がオンの期間に、電圧源Bから、スイッチ素子Q3、コイルL、及びスイッチ素子Q1と並列接続されたダイオード13aを介して、電圧源Aへ電流が流れる。スイッチ素子Q3がオフの期間には、コイルLに蓄えられたエネルギーによって、スイッチ素子Q4に並列のダイオード13d、コイルL、及びスイッチ素子Q1に並列のダイオード13aを介して、電圧源Aへ環流する。
昇圧充電、すなわち電圧Vbat>電圧Vrailで電圧源Bから電圧源Aへ電流を流す制御を行うときは、スイッチ素子Q3をオン状態にし、スイッチ素子Q1、Q4をオフ状態にし、スイッチ素子Q2をPWM信号によりデューティ制御をする。スイッチ素子Q2がオンの期間に、スイッチ素子Q3、コイルL、及びスイッチ素子Q2を介して電圧源Bに戻る電流が発生する。スイッチ素子Q2がオフの期間には、コイルLに蓄えられたエネルギーによって、電流は、スイッチ素子Q2からスイッチ素子Q1に並列のダイオード13aへと転流し、電圧源Aへ供給される。
図2Aは、以上の4つの動作におけるスイッチ素子Q1〜Q4の動作パターンを表にまとめたものである。図2Aにおいて、「PWM」はデューティ制御を行うことを表しており、PWM信号で駆動されてオンとオフが切り替わる動作波形となる動作パターンを示す。「ON」は動作波形がオンで一定(H)となる動作パターンを示し、「OFF」は動作波形がオフで一定(L)となる動作パターンを示す。各動作モードでデューティ制御が必要なのは1つのスイッチ素子のみであり、その他のスイッチ素子はオンまたはオフに固定されている。また、各動作モードで異なるスイッチ素子がデューティ制御を行う。
放電について改めて確認すると、電圧Vbat>電圧Vrailでスイッチ素子Q1を任意のデューティでPWM制御している状態から、電圧Vbatが低下して電圧Vbatと電圧Vrailとの電位差が接近すると、Q1のデューティを拡大する方向となる。さらに、電位が逆転して電圧Vbat<電圧Vrailとなると、Q1はオン、すなわちデューティ100%で、Q4のデューティを0%から拡大してゆく制御となる。Q1をデューティ制御している間のQ4は、オフ状態、すなわち0%デューティである。従って、0〜200%の間で変動する制御値に対して、Q1には制御値の0〜100%をデューティとして適用し、それ以上はデューティ100%で固定し、Q4には制御値の100〜200%を0〜100%にシフトしてデューティとして適用し、それ以下はデューティ0%で固定とする。このようにすれば、単一の制御値で昇降圧放電に必要なQ1とQ4のデューティを、オン、オフ状態も含めて決定することができる。
充電についても同様に考えることができ、Q2とQ3に対して0〜200%の間で変動する制御値を用いることで、昇降圧充電に必要なQ2とQ3のデューティを決定することができる。
ここで図2Aの表に注目し、放電時について考える。放電時の制御に必要なスイッチはQ1とQ4であり、Q2とQ3はオフ状態である。上下アーム(Q1とQ2の組み、またはQ3とQ4の組み)のスイッチは、2つが同時にオンになると電圧源を短絡するので危険であるが、片方のみのオン動作であれば必ずしも問題とはならない。そこで、定常時のQ2とQ3の動作に対し、組みになるアームとオン/オフが反転した信号を入力する場合について想定し、予想される動作を検討する。
降圧放電の場合は、Q1が「PWM」でQ4が「OFF」のため、Q2をQ1の相補的なPWM制御にしてQ3を「ON」にすると、Q2のオフ期間は従来通りであり、オン期間は並列のダイオード13bを流れる期間でオンとなっていても問題ない。また、Q3がオンになる点も、常に並列のダイオード13cを電流が流れる形となっているため、問題とはならない。なお、Q2をQ1の相補的なPWM制御にするとは、Q2の動作を、Q1に対してオンとオフが逆であるPWM制御にすることである。
昇圧放電の場合は、Q1が「ON」でQ4が「PWM」のため、Q2は「OFF」で変わらず、Q3がQ4の相補的なPWM制御となる。Q3のオフ期間は従来通りであり、オン期間はQ4がオフとなってQ3に並列のダイオード13cに転流する期間のため、こちらも定常的には問題とならない。なお、Q3がQ4の相補的なPWM制御になるとは、Q3の動作が、Q4に対してオンとオフが逆であるPWM制御になることである。
降圧充電と昇圧充電の場合にも、降圧放電と昇圧放電の場合と同様のことがいえる。
図2Bは、これらの動作を表にしたものであり、オン/オフが反転した信号を入力する場合の、スイッチ素子Q1〜Q4の動作パターンを表にまとめたものである。図2Bから、降圧放電と昇圧充電は、Q1とQ2のPWMが反転状態、すなわちQ1とQ2が相補動作をすることがわかる。このことを考慮すると、各スイッチ素子Q1〜Q4の動作は一致している。同様に、昇圧放電と降圧充電は、Q3とQ4の動作が相補的であることを考慮すれば、各スイッチ素子Q1〜Q4の動作は一致している。動作条件としては、前者が電圧Vbat>電圧Vrailであり、後者が電圧Vbat<電圧Vrailで、それぞれ電圧条件は一致している。このことから、図2Bの制御は、充放電の判定処理が不要であることを意味する。
図2Cは、このように、0〜200%の変動幅を持つ制御値と相補動作を組み合わせて得られた図2Bの表を、まとめた表である。図2Cに示すスイッチ制御により、昇降圧と充放電のそれぞれの判定をすることなく、双方向コンバータの制御を行うことができる。
以上のように、PWM信号生成部22では、制御部21より入力された0〜200%の信号に応じて、0〜100%の値に対応するデューティ信号PD1と、100〜200%の値に対応するデューティ信号PD2とを出力する。信号PD1は、それぞれQ1とQ2の駆動信号を出力するAND回路A1とA2に一方(図1ではA2側)が反転されて入力され、信号PD2は、それぞれQ3とQ4の駆動信号を出力するAND回路A3とA4に一方(図1ではA4側)が反転されて入力される。
上記では、上下アーム(Q1とQ2の組み、及びQ3とQ4の組み)の信号を反転させた相補信号で駆動することで、定常的には動作モードの判定が不要となることを述べた。しかしながら、いくつかの動作条件においては、相補駆動が問題となる場合が発生する。
例えば、降圧放電の起動時において、相補駆動とするとQ3がオンの状態で、PWM制御のQ1がオフとなってQ2がオンに切り替わる場合には、Q1のデューティが小さくコイルLに十分なエネルギーが蓄えられていないと、ダイオード13b、コイルL、及びダイオード13cの経路で流れる放電電流が0になった後は、逆にQ3、コイルL、及びQ2の経路で電圧源Bの電圧Vrailを印加電圧とする電流が流れる。このため、コイルLには逆向きの電流が発生する。初期デューティによっては、安定状態に移行する前に逆方向に過電流が発生してシステムを破壊しかねない。このため、起動時は、逆方向電流を抑制するために、逆方向電流を流すスイッチ素子をオフにすることが必要である。
このため、制御部21は、インダクタ電流iの向きと逆方向電流の抑制期間との判定を行い、逆方向電流を流すスイッチ素子をオフにするための信号を、逆電流側出力オフ部23に出力する。
逆電流側出力オフ部23は、受信内容に応じて、放電電流または充電電流の制御スイッチを停止するための2つの出力(通常はオン(H)出力)を有し、停止する側の信号をオフ(L)にする。2つの出力は、放電制御側がQ1とQ4を出力するAND回路A1とA4に入力され、充電制御側がQ2とQ3を出力するAND回路A2とA3に入力される。
従って、上記で説明したように、降圧放電モードの起動時には、充電電流を抑制するための信号が逆電流側出力オフ部23から出力されてQ2とQ3を停止し、充電方向の過電流の発生を抑制しつつ、双方向コンバータ1を起動する。なお、逆方向の電流を抑制するための信号は、一定期間または電流が一定値に到達した後に解除することで、本実施例の特徴である充放電や昇降圧の判定を必要としない双方向コンバータ1の制御を行うことができる。
なお、図1では、AND回路A1〜A4の出力は、そのまま主回路部10のスイッチ素子Q1〜Q4を駆動するように描かれているが、実際には、スイッチ素子Q1〜Q4のゲート端子を駆動するために必要な電流を供給するバッファまたは外付けのゲートドライバ回路を間に接続する。しかし、このことは、双方向コンバータ1の制御動作の本質から外れるため、図1では省略している。同様に、上下アームの信号間でデッドタイムを設定する必要があるが、これも説明を省略している。
図2Bは、上述したように、オン/オフが反転した信号を入力する場合の、スイッチ素子Q1〜Q4の動作パターンを表にまとめたものである。本実施例における双方向コンバータのスイッチ素子Q1〜Q4は、定常時には、図2Bの表に従って、4つの動作における動作パターンを行う。定常時の4つの動作は、降圧放電、昇圧放電、降圧充電、及び昇圧充電である。上述したように、図2Bにおいて、「PWM」はPWM信号で駆動されてオンとオフが切り替わる動作波形となる動作パターンを示し、「ON」は動作波形が一定のオン(H)となる動作パターンを示し、「OFF」は動作波形が一定のオフ(L)となる動作パターンを示す。上線が付いている「PWM」は、上線が付いていない「PWM」の相補的な動作パターン、すなわち、上線が付いていない「PWM」に対してオンとオフが逆である動作パターンを示す。
図2Bの表から、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2は互いに相補動作(オンとオフが逆の動作)を行い、スイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4は互いに相補動作を行うことがわかる。さらに、図2Bの表から、「PWM」の動作パターンが相補的であること以外は、降圧放電と昇圧充電の制御が一致し、昇圧放電と降圧充電の制御が一致することがわかる。
図2Bの表において、背景が灰色に塗ってある部分の動作パターンは、後述するように、起動時から定常時に達するまでの一定期間は、オンであるスイッチ素子をオフにして、このスイッチ素子が相補動作を行わないようにする動作パターンである。
図14は、本実施例による双方向コンバータの制御フローの概要を説明する図である。
双方向コンバータ1のスイッチング制御部20は、双方向コンバータ1の起動信号を受信後、双方向コンバータ1を起動させ(S10)、動作モードの選択など必要な処理を行ってから制御を開始し(S20)、入力値から電流指令値を演算する。
起動から数サイクルは、応答時間のために、演算のみの制御周期となる場合がある。この結果、電流指令値が初期の0から有意の値に変化すると、電流指令値の正負(電流の向き)によって充電か放電かが決まるため、主回路部10は、電流方向を検出する(S30)。
スイッチング制御部20は、抑制すべき逆方向電流の向きを判定し、抑制する向きの電流を流すスイッチ素子をオフにする信号を逆電流側出力オフ部23から出力し、逆方向電流を抑制する制御を続ける(S40)。
その後、スイッチング制御部20は、逆方向電流を抑制する制御を終了するか否かを判定する(S50)。
スイッチング制御部20は、定常時に達するまでの一定期間が起動時から経過した場合(すなわち、逆方向電流が発生する恐れがなくなるとみなす期間が経過した場合、または電流が予め定めた基準値に到達した場合)に、逆方向電流を抑制する制御を終了する(S60)。
逆方向電流を抑制する制御を終了した後、スイッチング制御部20は、スイッチ素子Q1〜Q4に、図2Bまたは図2Cに示したような相補動作を実行させ、定常制御に移行する(S70)。
図14からわかるように、本実施例による双方向コンバータの制御フローは、起動後の電流の向きを検出して逆方向電流を抑制するだけのシンプルなものであり、充放電及びそれぞれの昇降圧に対応している。
図3を用いて、昇圧放電の場合を例に挙げて、起動時の逆方向電流(放電電流とは逆方向の電流)の発生の様子と、その回避方法について説明する。
図3は、本実施例の双方向コンバータの、昇圧放電による起動時の電流波形を、各スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形と共に示す図である。双方向コンバータの電流波形は、コイルL(インダクタL)に流れる電流i(インダクタ電流)の波形を示している。双方向コンバータは、起動すると、時刻tc0で定常状態になるものとする。なお、図3の下段のスイッチ素子Q3の点線で示した動作波形は、起動時に定常時の動作をさせた場合の波形を示し、上段のグラフの点線は、この場合の電流波形を示す。昇圧放電であるので、第1の入出力端子T1に接続された蓄電池(電圧源A)の電圧Vbatよりも、第2の入出力端子T2に接続された系統側の直流バス(電圧源B)の電圧Vrailの方が高くなっている。
図2Bに示したように、定常時の昇圧放電での駆動波形は、PWM制御されたスイッチ素子Q3とスイッチ素子Q4によるこれらの相補動作である。そこで、起動時に、図2Bの動作パターンに従い、図3に示すように、スイッチ素子Q4のデューティが小さい状態から、点線で示したスイッチ素子Q3の相補波形が入力されると、インダクタLの電流波形は図3の上段のグラフの点線のようになる。すなわち、起動時に、図2Bの定常時の動作パターンに従ってスイッチ素子Q1〜Q4を動作させると、Q3の長いPWM動作のオン期間の間に、Q3、インダクタL、及びダイオード13aの経路に電流が流れ、放電電流とは逆方向の充電電流(逆方向電流)が流れてしまい、放電の制御ができない。
すなわち、起動時に、インダクタ電流iが不連続に流れる電流不連続モード(図3の上段の電流波形において時刻t<tc0の場合のように、電流が流れていない期間がある制御方式)のまま、Q3を相補動作させると、Q3がオンの期間に逆方向電流を発生させてしまう。そこで、起動時にスイッチ素子Q3をオフにすると、充電電流の発生が抑制されるため、放電電流の量を制御することができる。ただし、時刻t=tc0に、インダクタ電流iが立ち上がって連続して流れる電流連続モード(電流が流れていない期間がない定常動作のモード)に移行後は、Q3がオンになっても急に逆方向電流が増加しないため、起動時のQ3をオフにする制御は、電流連続モードに移行した後に解除することが可能である。
インダクタ電流iが電流不連続モードから電流連続モードに移行したか否かは、スイッチング制御部20の制御部21が判定することができる。制御部21は、インダクタ電流iを監視し、インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1+を超えた場合には、インダクタ電流iが電流不連続モードから電流連続モードに移行したと判定する。基準値ith1+は、事前に行う試験などに基づいて、任意に定めることができる。一般的には、時間Δtにおける電流の変位Δiは2つの電圧源A、Bの電位差ΔV=|Vrail−Vbat|によりΔi=ΔV・Δt/Lで求められるので、電位差と周期から電流変動が最大となるケースにマージンを見込んで設定することになる。
また、実際の動作時には、双方向コンバータ1は様々な条件下で動くことが考えられ、場合によっては低負荷の条件下で動作し、なかなか電流が連続モードに移行しない場合も想定される。このため、インダクタ電流iが立ち上がるのに十分とみなすことのできる時間tsoを予め設定しておき、この時間tsoが経過したら定常動作に移行したとみなして、逆方向電流の発生を抑制するためにスイッチ素子をオフにする制御を解除してもよい。時間tsoは、事前に行う試験などに基づいて、任意に定めることができる。
このように、逆方向電流の発生を抑制するためにスイッチ素子をオフにする制御は、電流連続モードへの移行後または予め設定した時間tsoの経過後に、双方向コンバータの動作が定常に達したとみなして解除するのが、より実用的である。
以上、昇圧放電の場合を例に挙げて、逆方向電流の発生の様子と、その抑制方法について説明した。本実施例の双方向コンバータ1は、既に述べたように4つの動作を行うので、以下、それぞれの動作を行う制御について、図4から図11を用いて説明する。これらの説明では、スイッチ素子Q1〜Q4の相補駆動が動作の切り替わり時に機能する様子についても述べる。
図4から図11は、図1に示した双方向コンバータ1の動作の一例を示す図である。図4から図11において、上段には、2つの入出力端子T1、T2の電圧を、それぞれに接続される蓄電池の電圧Vbatと系統電圧Vrailとで示す。
図4から図11の中段には、インダクタL(コイルL)に流れる電流(インダクタ電流i)を示す。インダクタ電流iの符号は、インダクタ電流iの向きに対応し、放電方向、すなわち蓄電池(電圧源A)から系統(電圧源B)への方向を正とし、逆方向である充電方向を負とする。中段のグラフには、あわせてスイッチング制御部20の制御部21が演算した制御電流(指令値Iref)の波形を示している。指令値Irefは、インダクタ電流iの目標値であり、概ね、インダクタ電流iが指令値Irefに一致するようにスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形を制御することで、双方向コンバータ1の変換電力を制御する。なお、時刻ts1は、双方向コンバータ1の制御が時刻t=0で開始された後、スイッチ素子Q1〜Q4が実際に駆動する時刻である。
図4から図11の下段には、起動時をはじめとする3つの時間帯について、スイッチ素子Q1〜Q4の数周期分の動作波形を部分的に示す。
以下、図4から図11のそれぞれについて、双方向コンバータ1の制御と波形を説明する。
図4は、双方向コンバータ1が、降圧放電で時刻t=0に起動し、その後、昇圧放電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより高く、その後、放電により蓄電池の電圧が低下することで、時刻t=tcvにおいて電圧の大小関係が逆転する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの降圧放電では、Q1が「PWM」、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ2とQ3をオフにし、Q2はQ1との相補動作を行わず、Q3はQ4との相補動作を行わない。従って、図4の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q2からQ4がオフであり、Q1には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1+を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1+に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図4の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ2とQ3のオフを解除し、図2Bの降圧放電に示すように、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」の動作を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、時刻t=tcvでVbatとVrailの電圧の大小が逆転すると、双方向コンバータ1は、昇圧放電に移行し、図2Bの昇圧放電に示したように、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)、Q4が「PWM」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行い、放電状態を継続する。
図4の中段のグラフに示すように、これらの制御を実行している間は、インダクタ電流iの向きは、常に正であり、変わらない。
図5は、双方向コンバータ1が、降圧放電で時刻t=0に起動し、その後、昇圧充電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより高く、電圧の大小関係はそのまま推移する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの降圧放電では、Q1が「PWM」、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ2とQ3をオフにし、Q2はQ1との相補動作を行わず、Q3はQ4との相補動作を行わない。従って、図5の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q2からQ4がオフであり、Q1には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1+を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1+に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図5の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ2とQ3のオフを解除し、図2Bの降圧放電に示すように、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」の動作を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、双方向コンバータ1の動作が降圧放電から昇圧充電へ移行するという条件に従って、時刻t=tciで電流の向きが切り替わる場合にも、Q2はQ1の相補動作を行ったままで、Q3はQ4の相補動作を行ったままで、自動的に充電状態へ移行する。すなわち、図2Bの昇圧充電に示したように、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)、Q2が「PWM」、Q3が「ON」、Q4が「OFF」の動作を行う。
図5の中段のグラフに示すように、立ち上がった放電電流は徐々に減少し、時刻t=tciで電流の向きが逆転し、充電電流へ切り替わる。
図6は、双方向コンバータ1が、昇圧放電で時刻t=0に起動し、その後、降圧放電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより低く、その後、放電により蓄電池の電圧Vbatが低下し、さらに急速に系統電圧Vrailが低下することで、時刻t=tcvにおいて電圧の大小関係が逆転する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの昇圧放電では、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)、Q4が「PWM」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ3をオフにし、Q3はQ4との相補動作を行わない。従って、図6の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1がオン、Q2とQ3がオフであり、Q4には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1+を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1+に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図6の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ3のオフを解除し、図2Bの昇圧放電に示すように、Q2が「OFF」の動作のままであり、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)の動作を行う。すなわち、Q3はQ4の相補動作を行う。
その後、時刻t=tcvでVbatとVrailの電圧の大小が逆転すると、双方向コンバータ1は、降圧放電に移行し、図2Bの降圧放電に示したように、Q1が「PWM」、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行い、放電状態を継続する。
図6の中段のグラフに示すように、これらの制御を実行している間は、インダクタ電流iの向きは、常に正であり、変わらない。
図7は、双方向コンバータ1が、昇圧放電で時刻t=0に起動し、その後、降圧充電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより低く、電圧の大小関係はそのまま推移する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの昇圧放電では、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)、Q4が「PWM」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ3をオフにし、Q3はQ4との相補動作を行わない。従って、図7の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1がオンであり、Q2とQ3がオフであり、Q4には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1+を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1+に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図7の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ3のオフを解除し、図2Bの昇圧放電に示すように、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)の動作を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、双方向コンバータ1の動作が昇圧放電から降圧充電へ移行するという条件に従って、時刻t=tciで電流の向きが切り替わる場合にも、Q2はQ1の相補動作を行ったままで、Q3はQ4の相補動作を行ったままで、自動的に充電状態へ移行する。すなわち、図2Bの降圧充電に示したように、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)の動作を行う。
図7の中段のグラフに示すように、立ち上がった放電電流は徐々に減少し、時刻t=tciで電流の向きが逆転し、充電電流へ切り替わる。
図8は、双方向コンバータ1が、昇圧充電で時刻t=0に起動し、その後、降圧充電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより高く、その後、充電により蓄電池の電圧が増加し、さらに急速に系統電圧Vrailが増加することで、時刻t=tcvにおいて電圧の大小関係が逆転する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの昇圧充電では、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)、Q2が「PWM」、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ1をオフにし、Q1はQ2との相補動作を行わない。従って、図8の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1とQ4がオフであり、Q3がオンであり、Q2には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1−を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1−に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図8の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ1のオフを解除し、図2Bの昇圧充電に示すように、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)の動作を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。基準値ith1−は、基準値ith1+と絶対値が同じで符号が反対の(負の)値である。
その後、時刻t=tcvでVbatとVrailの電圧の大小が逆転すると、双方向コンバータ1は、降圧充電に移行し、図2Bの降圧充電に示したように、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行い、充電状態を継続する。
図8の中段のグラフに示すように、これらの制御を実行している間は、インダクタ電流iの向きは、常に負であり、変わらない。
図9は、双方向コンバータ1が、昇圧充電で時刻t=0に起動し、その後、降圧放電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより高く、電圧の大小関係はそのまま推移する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの昇圧充電では、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)、Q2が「PWM」、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ1をオフにし、Q1はQ2との相補動作を行わない。従って、図9の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1とQ4がオフであり、Q3がオンであり、Q2には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1−を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1−に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図9の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ1のオフを解除し、図2Bの昇圧充電に示すように、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、双方向コンバータ1の動作が昇圧充電から降圧放電へ移行するという条件に従って、時刻t=tciで電流の向きが切り替わる場合にも、Q1はQ2の相補動作を行ったままで、Q3はQ4の相補動作を行ったままで、自動的に放電状態へ移行する。すなわち、図2Bの降圧放電に示したように、Q1が「PWM」、Q2が「PWM」(Q1の相補動作)、Q3が「ON」、Q4が「OFF」の動作を行う。
図9の中段のグラフに示すように、立ち上がった充電電流は徐々に減少し、時刻t=tciで電流の向きが逆転し、放電電流へ切り替わる。
図10は、双方向コンバータ1が、降圧充電で時刻t=0に起動し、その後、昇圧充電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより低く、その後、充電により蓄電池の電圧が増加することで、時刻t=tcvにおいて電圧の大小関係が逆転する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの降圧充電では、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ1とQ4をオフにし、Q1はQ2との相補動作を行わず、Q4はQ3との相補動作を行わない。従って、図10の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1とQ2とQ4がオフであり、Q3には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1−を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1−に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図10の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ1とQ4のオフを解除し、図2Bの降圧充電に示すように、Q1が「ON」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)の動作を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、時刻t=tcvでVbatとVrailの電圧の大小が逆転すると、双方向コンバータ1は、昇圧充電に移行し、図2Bの降圧充電に示したように、Q1が「PWM」(Q2の相補動作)、Q2が「PWM」、Q3が「ON」、Q4が「OFF」であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行い、充電状態を継続する。
図10の中段のグラフに示すように、これらの制御を実行している間は、インダクタ電流iの向きは、常に負であり、変わらない。
図11は、双方向コンバータ1が、降圧充電で時刻t=0に起動し、その後、昇圧放電へ移行するまでの波形の概略の一例を示す図である。
上段の電圧グラフに示すように、起動時は、蓄電池の電圧Vbatが系統電圧Vrailより低く、電圧の大小関係はそのまま推移する。
スイッチ素子Q1〜Q4の動作波形は、図2Bの降圧充電では、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)であり、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。本制御では、起動時には、逆方向電流を抑制するために、図2BではオンであるQ1とQ4をオフにし、Q1はQ2との相補動作を行わず、Q4はQ3との相補動作を行わない。従って、図11の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、起動時には、Q1とQ2とQ4がオフであり、Q3には小さいデューティが次第に大きくなるPWM信号が印加され、インダクタ電流iが指令値Irefに等しくなるような制御が行われる。
インダクタ電流iが予め定めた基準値ith1−を超えて電流連続モードに移行するか、基準値ith1−に到達しない場合でも予め定めた時間tsoを経過したら、図11の下段のスイッチ素子Q1〜Q4の動作波形に示すように、時刻t=ts2でQ1とQ4のオフを解除し、図2Bの降圧充電に示すように、Q1が「ON」、Q4が「PWM」(Q3の相補動作)を行う。すなわち、Q1とQ2は互いに相補動作を行い、Q3とQ4は互いに相補動作を行う。
その後、双方向コンバータ1の動作が降圧充電から昇圧放電へ移行するという条件に従って、時刻t=tciで電流の向きが切り替わる場合にも、Q1はQ2の相補動作を行ったままで、Q3はQ4の相補動作を行ったままで、自動的に放電状態へ移行する。すなわち、図2Bの昇圧放電に示したように、Q1が「ON」、Q2が「OFF」、Q3が「PWM」(Q4の相補動作)、Q4が「PWM」の動作を行う。
図11の中段のグラフに示すように、立ち上がった充電電流は徐々に減少し、時刻t=tciで電流の向きが逆転し、放電電流へ切り替わる。
以上、図4から図11を用いて、本実施例の双方向DC/DCコンバータが行う4つの動作において、起動時の逆方向電流を抑制するための具体的な制御方法と、起動後に動作が切り替わる場合の例について説明した。本実施例に示した制御方法では、起動時の制御は複雑となるが、定常時には、Q1とQ2が互いに相補動作を行い、Q3とQ4が互いに相補動作を行う制御方法によって、各動作の切り替えを意識することなく、しかも連続的に高速応答することが可能である。
なお、現在では、IGBTとダイオードを組み合わせたIGBTモジュールが広く普及しているため、図1に示した回路であれば、Q1とQ2、及びQ3とQ4にそれぞれ逆接続されたダイオード13a〜13dの部分に、2素子構成のIGBTモジュールを利用してもよい。
本実施例では、スイッチ素子Q1〜Q4としてIGBTを用いると説明した。その他の半導体素子であるパワーMOSFET(Metal-Oxcide Silicon Field-Effect Transistor)や、近年開発が進み、低損失に注目が集まっているSiC(Silicon Carbide)やGaN(Gallium Nitride)によるスイッチ素子をスイッチ素子Q1〜Q4に用いても、本実施例と同様の効果が得られることは明らかである。