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JP6179982B2 - アニオン性水溶性重合体によるピッチ低減方法 - Google Patents

アニオン性水溶性重合体によるピッチ低減方法 Download PDF

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Description

本発明は、抄紙前の製紙工程において、水溶性高分子を使用したピッチ低減方法に関するものであり、詳しくは、特定の構造単位と分子量を有するアニオン性水溶性単量体を必須として、重合し得られたアニオン性水溶性重合体を特定の添加場所に添加するピッチ低減方法に関する。
本発明の課題は、抄紙系内のアニオントラッシュやマイクロピッチ、濁度成分が成長、粗大化する(ピッチとなる)前に処理する効果の優れた製紙用薬剤を提供し安定な操業を図ることである。紙の製造において、古紙配合率の増加や、中性抄造化、抄紙系用水のクローズド化により製紙原料中のアニオントラッシュ(アニオン性夾雑物)、マイクロピッチ、濁度成分が増加している。これらアニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分が微細な状態で製紙原料中に存在している限り製紙へ欠陥として発生することは少ないが、攪拌やエアレーション、pH変化、薬剤添加により集塊化され紙製品の汚れや欠陥発生原因となる。パルプ繊維に定着せず集塊化が進んだピッチ分は、微細繊維や填料を巻き込んで粗大粘着物になり、ファンポンプ、配管内、ワイヤー、フェルト、ロール等の抄造装置や用具に付着するだけでなく、これら付着物が剥離して湿紙に乗り製紙欠陥となることが推定される。通常、アニオントラッシュやマイクロピッチは表面がアニオン性に帯電しているため、これらが成長、粗大化する(ピッチとなる)前に凝結剤やピッチコントロール剤と言われるカチオン性あるいは両性重合体を添加し、電荷の中和によりアニオントラッシュやマイクロピッチを処理する方法や粘着性を低下させる方法が汎用されている(特許文献1〜4)。これら凝結剤やピッチコントロール剤は一般的に、製紙工程のマシンチェスト、ミキシングチェスト、種箱等、パルプ乾燥固形分濃度が2.0%質量以上の高濃度の製紙原料に添加されている。これは、アニオントラッシュやマイクロピッチが成長する前に凝結剤により処理し、成紙上に分散させた状態で抄紙系外に排出する技術思想であり、そのため比較的低分子量で高カチオン密度のものが使用されている。特許文献5では、粘度平均分子量が1500万以上のカチオン性ポリマーあるいはアニオン性ポリマーを製紙原料スラリーに添加することで濁度やピッチ量が低減することが記載されているが、ポリマーを添加する場所は濃厚パルプを希釈したパルプスラリーに添加する歩留向上剤として使用しており、濁度あるいはピッチ低減処方として最適化されているわけではない。これら従来法より更に効率的に抄紙系内のアニオントラッシュやマイクロピッチ、あるいは濁度成分を処理することが本発明の課題である。
特開2002−173893号公報 特開2002−212897号公報 特開2003−221798号公報 特開2011−026746号公報 特開2007−100254号公報
本発明の課題は、製紙工程において水溶性高分子を添加し、工程に発生する汚れや成紙に発生するピッチを低減し安定な操業を図る方法を開発することである。
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、以下に述べる発明に達した。即ち、特定の構造単位を有するアニオン性水溶性重合体を製紙工程の特定の添加場所に添加するピッチ低減方法である。
製紙工程における汚れや、ピッチ低減を図るために従来ではカチオン性あるいは両性の比較的低分子量の凝結剤、ピッチコントロール剤をパルプ乾燥固形分濃度2.0質量%以上の高濃度スラリーに添加しているが、本発明の水溶性高分子は、アニオン性で高分子量であり、従来の凝結剤やピッチコントロール剤よりも優れたピッチ低減効果が達成できる。
本発明のアニオン性水溶性重合体について説明する。本発明のアニオン性水溶性重合体は、下記一般式(1)で表される水溶性単量体10〜50モル%、非イオン性水溶性単量体50〜90モル%からなる水溶性単量体混合物を必須として含有する水溶液を重合して製造する。
一般式(1)
ここでRは水素、メチル基またはカルボキシメチル基、AはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
非イオン性水溶性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジン等が挙げられる。
本発明のアニオン性水溶性重合体を重合する際に使用する一般式(1)で表されるアニオン性単量体は、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸やイタコン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。これらのアニオン性単量体は1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。アニオン性単量体のモル数としては、10〜50モル%の範囲であり、好ましくは20〜40モル%の範囲である。10モル%より低いと本発明の効果が得られないため好ましくはない。又、50モル%を超えると高分子量のものが得られ難いため好ましくはない。本発明のアニオン性水溶性重合体は重量平均分子量が500万〜3000万の範囲であり、好ましくは800万から2000万であり、更に好ましくは1000万〜2000万である。500万より低いと本発明の効果が得られず、3000万を超えると凝集力が強すぎて添加場所より下流において白水で希釈された後でも過大なフロックが形成されたままであり成紙の地合いが不良となり好ましくはない。
本発明のアニオン性水溶性重合体のアニオン性基は、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質で中和してもよいが未中和の方が好ましい。
本発明のアニオン性水溶性重合体は、アニオン性の効果を阻害しない程度にカチオン性単量体が含まれていても良い。即ち、下記一般式(2)及び/又は(3)で表される水溶性単量体が水溶性重合体に対して10モル%以下である。例えば、一般式(1)で表される単量体20モル%、一般式(2)で表される単量体5モル%、非イオン性水溶性単量体75モル%等の組成が挙げられる。

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはヒドロキシアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7〜20のアルキル基あるいはアリール基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基を表わす、X は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(3)
は水素又はメチル基、R、R10は炭素数1〜3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基、X は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)で表されるカチオン性単量体としてジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジアリルアルキルアミンの3級塩、塩化メチル等のハロゲン化アルキル、あるいは塩化ベンジルなどのハロゲン化アリール化合物による4級化物等が挙げられ、これらのカチオン性ビニル系単量体は1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。一般式(3)で表されるカチオン性単量体は、ジアリルメチルアンモニウム塩化物、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物等がある。
本発明のアニオン性水溶性重合体を製造する際に架橋性単量体を共存させることができる。架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミドやエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの複数の重合性二重結合を有する単量体、あるいはN、N−ジメチルアクリルアミド単量体などの熱架橋性単量体がその一例である。添加率としては単量体混合物全質量に対し0.0005〜0.1%であり、好ましくは0.001〜0.05%であり、更に好ましくは0.001〜0.03%である。また、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1〜5質量%併用すると効果的である。
本発明のアニオン性水溶性重合体は、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、油中水型エマルジョン、塩水中分散液あるいは粉末等任意の製品形態にすることができ、特に限定はないが、特に好ましい形態は、塩水中分散液タイプである。塩水中分散液タイプは、無機塩類を含有する水溶液中に可溶な高分子分散剤を共存させ、攪拌下、分散重合して得られた重合体微粒子の分散液である。
塩水中分散重合による塩水中分散液は溶液粘性が低いため、地合い等紙質に与える影響が低く好ましい形態である。塩水中分散液からなるアニオン性水溶性重合体は、以下の操作によって製造することができる。すなわち塩水液中に分散した高分子微粒子分散液からなる水溶性重合体分散液は、特開昭62−15251号公報等によって製造することができる。この方法は、アニオン性単量体と非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体とカチオン性単量体及び非イオン性単量体を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤共存下で、攪拌しながら製造された粒径100μm以下の高分子微粒子の分散液からなるものである。イオン性高分子からなる分散剤は、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物の単独重合体や非イオン性単量体との共重合体を使用する。
塩水溶液を形成するに使用する無機塩類としては、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属イオンやアンモニウムイオンとハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなどとの塩であるが、多価アニオンとの塩がより好ましい。特に好ましいのは硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムなどニ価アニオン塩である。これら塩類の塩濃度としては、7質量%〜飽和濃度まで使用できる。
高分子分散剤として利用するアニオン性高分子の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸スチレンスルホン酸あるいはそれらの塩などのアニオン性単量体の(共)重合体である。さらに非イオン性の単量体であるアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのなどとの共重合体も使用可能である。その他、アニオン変性ポリビニルアルコール、スチレン/無水マレイン酸共重合物、ブテン/無水マレイン酸共重合物、あるいはそれらの部分アミド化物である。最も好ましいイオン性高分子は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸重合物である。
高分子分散剤として利用するカチオン性高分子としては、(メタ)アクリル系カチオン性単量体、たとえば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸や有機酸の塩、あるいは塩化メチルや塩化ベンジルによる四級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体である。例えばカチオン性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられ、これら単量体重合物あるいは共重合物、または非イオン性単量体との共重合体でも良い。またジメチルジアリルアンモニウム塩化物重合体などジアリルアミン系(共)重合体でも使用できる。
上記高分子分散剤として利用するイオン性高分子の分子量としては、5、000から300万、好ましくは5万から150万である。また、非イオン性高分子分の分子量としては、1,000〜100万であり、好ましくは1,000〜50万である。これら高分子分散剤の単量体に対する添加量は、1/100〜30/100質量%であり、好ましくは5/100〜20/100質量%である。
重合時の温度は5〜75℃であり、好ましくは15〜45℃である。75℃より高くすると重合の制御は難しく、急激な温度上昇や重合液の塊状化などが起きて、安定な分散液は生成しない。
重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。これら開始剤の中で最も好ましいのは、水溶性アゾ開始剤である2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物である。
本発明のアニオン性水溶性重合体を油中水型エマルジョン重合で製造する場合は、特開昭55−137147号公報や特開昭59−130397号公報等、公知の方法によって製造することができる。即ち、アニオン性単量体と非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体とカチオン性単量体及び非イオン性単量体、あるいは架橋性単量体を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させ重合することにより合成する。
又、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
単量体の重合濃度は20〜50質量%の範囲であり、好ましくは20〜40質量%の範囲であり、更に好ましくは20〜30質量%の範囲である。これは、単量体の濃度が高い程、水に希釈せずに原液のまま添加する場合、溶解性が低下する傾向にあるためである。単量体の組成、重合法、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテートなどが挙げられる。これら低HLBの界面活性剤により乳化、重合した場合は重合後に転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
高HLB界面活性剤を使用すると乳化させ油中水型エマルジョンを形成させ重合したエマルジョンは、このままで水となじむので転相剤を添加する必要がない場合もある。高HLB界面活性剤としては、HLB11〜20の界面活性剤があり、その具体例としては、カチオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系などである。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレート等である。高HLB界面活性剤を使用することによって重合後、希釈時、特に転相剤を添加しなくても水に溶解可能な油中水型エマルジョンを形成させることが可能である。これら界面活性剤の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。これら界面活性剤の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
重合は窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(アミジ
ノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。
本発明のアニオン性水溶性重合体の添加率としては、パルプ乾燥固形分に対し0.005〜0.1質量%、好ましくは0.01〜0.05質量%である。0.005質量%より低いと濁度やピッチ低減効果が得られ難く、1.0質量%を超えると過剰添加であり過大なフロックとなり成紙の地合いが不良となる場合がある。又、PAC、硫酸バンド等の無機系凝結剤やサイズ剤、紙力増強剤、歩留向上剤、濾水性向上剤等の他の製紙用薬剤と併用しても差し支えない。特に本発明のアニオン性水溶性重合体より下流で添加するカチオン性或いは両性の歩留向上剤や濾水性向上剤との併用効果が促進されピッチ低減効果のみならず、ワイヤーパートでの製紙原料の歩留向上効果や濾水性向上効果、プレスパートやドライヤーパートでの搾水性向上効果が得られる場合がある。
次に、ピッチトラブルの防止効果について説明する。古紙や塗工損紙、樹脂に由来するピッチ類あるいはアニオン性物質、濁度成分は、紙の汚れ、欠陥、断紙、抄紙機の汚れといった様々なピッチトラブルを引き起こす。このピッチトラブルを防止または抑制するために、本発明のアニオン性水溶性高分子をパルプ乾燥固形分濃度2.0質量%以上の抄紙前の製紙原料中に添加する。添加場所としては、種々のパルプが混合されるマシンチェスト、ミキシングチェスト、種箱などであり、脱墨古紙原料、コートブローク、雑誌古紙、段ボール古紙、ブロークパルプの個別の原料パルプであっても良い。又、各原料パルプチェストに直接添加するだけでなく、原料パルプチェストの配管入口や出口などであっても良い。
通常、パルプ繊維表面はアニオン性に帯電しており、カチオン性あるいは両性凝結剤あるいはピッチコントロール剤でパルプ繊維と共に濁度成分やピッチ成分を凝結作用により処理している。これらカチオン性あるいは両性凝結剤あるいはピッチコントロール剤は比較的低分子量で高カチオン密度のものが使用されている。これらの重量平均分子量は、通常、10万〜500万の範囲であり凝結作用により濁度成分やピッチ成分を凝結、細かいフロックとして成紙上に分散し抄紙系外に排出するという技術である。これに対して、本発明のアニオン性水溶性重合体は高い重量平均分子量を有し、製紙原料中に存在している填料や製紙用薬剤等のカチオン性に帯電している成分、あるいはパルプ繊維の一部が製紙用薬剤等によりカチオン性に修飾されている成分に対して、凝集作用が生じ凝結作用よりも大きなフロックが形成、その後、製紙工程の下流で製紙原料が白水や清水により希釈されパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以下になる過程を経て、凝集作用により生じた大きなフロックが徐々に破壊されフロックが適度に分散された状態でワイヤー上に乗り成紙となり抄紙系外に排出され、ピッチ低減効果が得られるものと考えられる。つまり、本発明のアニオン性水溶性重合体の添加場所としては、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の濃度の製紙原料に添加され、その後、白水あるいは清水、工業用水等で希釈され2.0質量%より低い製紙原料にされることが必須条件である。通常の製紙工程では抄紙機の直前にはパルプ乾燥固形分濃度0.5〜1.5質量%に希釈されており、本発明もその範囲内で適用される。抄造条件によっては、パルプ乾燥固形分濃度2.0質量%以上で抄紙機により近い種箱等の貯槽に添加すると有効な場合がある。これは、アニオン性水溶性高分子を添加、製紙原料中のカチオン成分と凝集、フロックを形成し、その後、白水あるいは清水、工業用水等で希釈され、下流工程でフロックが徐々に破壊されフロックが適度に分散された状態でワイヤー上に乗り最適化されるためである。種箱より上流の配合チェスト、マシンチェスト、ミキシングチェスト等では、抄紙機のワイヤーまでの距離が長くなり、フロックの崩壊が進行し効果が得られないためと推測される。
対象抄造製紙原料としては特に限定はなく、新聞用紙、上質紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、板紙等に適用できるが、製紙用薬剤や古紙の混入率が高く、カチオン性を帯電している物質、成分の割合が高い板紙原料において特に効果が顕著である。
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
本発明のアニオン性水溶性重合体試料1及び比較として試料2〜12を用意した。これらの製品形態、組成、重量平均分子量を表1に示す。尚、表1中試料4、5は特開2004−26859号公報、特開2009−24125号公報等、公知の方法によって製造したものであり、ポリエチレンイミン、ジエチレントリアミン−エピクロルヒドリン縮合物等の高分子分散媒中に単量体混合物を加えて分散重合して得たものである。
(表1)
製品形態A:塩水中分散重合体、B:油中水型エマルジョン、C:水溶液重合体
某製紙会社から入手したライナー板紙製造原料(裏層、pH6.7、カチオン要求量BTG社製PCD03型測定72μeq/L、乾燥固形分濃度3.83質量%)を対象に水溶性重合体を添加による濁度低減効果試験を実施した。即ち、前記表1に示す本発明の試料1、及び比較として試料2〜12を清水で0.1質量%に溶解した。次いで、板紙製造原料100mLをポリビーカーに採取し、溶解した試料1〜12を対製紙原料固形分200ppm添加し200rpmで30秒攪拌した(種箱添加想定)。その後、ワットマン濾紙No.41により濾過し、濾液の濁度をHACH社製2100P型により測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同製紙原料を対象に水溶性重合体を添加による濁度低減効果試験を実施した。即ち、前記表1に示す本発明の試料1、及び比較試料を清水で0.1質量%に溶解した。次いで、板紙製造原料100mLをポリビーカーに採取し、溶解した試料を対製紙原料固形分200ppm添加し200rpmで120秒攪拌した(マシンチェスト添加想定)。その後、ワットマン濾紙No.41により濾過し、濾液の濁度をHACH社製2100P型により測定した。結果を表2に示す。
(表2)
某製紙会社から入手したライナー板紙製造原料(表層、pH7.0、カチオン要求量BTG社製PCD03型測定110μeq/L、乾燥固形分濃度4.11質量%)を対象に水溶性重合体を添加によるピッチ低減効果試験を実施した。即ち、前記表1に示す本発明の試料1、及び比較として試料2、3、5、7を清水で0.1質量%に溶解した。次いで、板紙製造原料100mLをポリビーカーに採取し、溶解した試料を対製紙原料固形分100ppmあるいは200ppm添加し200rpmで30秒攪拌した(種箱添加想定)。その後、ワットマン濾紙No.41により濾過し、濾液を厚さ0.2mmのカウンティングチェンバー(ヘマサイトメーター)上に採取し、光学顕微鏡1200倍で観察した。ピントを垂直方向にずらしていきながら静止画を複数枚撮影した。カウンティングチェンバー上の異なる5箇所以上で同様の操作を繰り返した。画像処理ソフト(Media Cybernetics,inc. IMAGE−PRO PLUS Ver.5.0)を用い、顕微鏡画像の静止画を取込み、RGB値のレンジ設定をR値(0−190)、G値(0−130)、B値(0−156)に調整することにより、目的とする粒子を抽出した。その抽出した粒子について、解析ソフトを用いてピッチ個数及びピッチ粒子面積を測定した。結果を表3に示す。
(表3)
実施例1の濁度低減効果試験では、本発明のアニオン性水溶性重合体試料1を添加時、最も濁度の値が低かった。カチオン性高分子量タイプの試料6やノニオン性高分子量タイプ試料11の濁度の値は試料1に比べて高く効果は不良であった。又、種箱添加想定である撹拌時間30秒の方がマシンチェスト添加想定である撹拌時間120秒のときよりも濁度の値が小さくなる傾向にあり、抄紙機に近い方が形成したフロックの崩壊が少なく効果的であることが確認できた。実施例3のピッチ低減効果試験では、マイクロピッチ個数及びマイクロピッチ面積の値は、試料1を添加時が最も低く、従来のカチオン性の凝結作用を主体とした試料2、3、5、7に比べて試料1のピッチ低減効果が極めて優れることが分かった。これは、本発明のアニオン性水溶性高分子添加をパルプ乾燥固形分濃度が高い原料に添加して得られる凝集作用により優れたピッチ低減効果が得られたためと考えられる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表される水溶性単量体10〜50モル%、非イオン性水溶性単量体50〜90モル%からなる水溶性単量体混合物を必須として含有する水溶液を重合して得られた、重量平均分子量が500万〜3000万のアニオン性水溶性重合体を、抄紙前のパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料である種箱から下流工程に添加することを特徴とするピッチ低減方法。
    一般式(1)
    ここでR1は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、AはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、R2は水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
  2. 前記アニオン性水溶性重合体の重量平均分子量が800万〜3000万であることを特徴とする請求項1に記載のピッチ低減方法。
  3. 前記アニオン性水溶性重合体が、塩水溶液中に可溶な高分子分散剤を共存させ、攪拌下、分散重合して得られた重合体微粒子の分散液であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のピッチ低減方法。
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