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JP6172624B2 - ツールブロック、クランプ部材、および切削工具 - Google Patents

ツールブロック、クランプ部材、および切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、切削工具の板状部材を固定するためのツールブロックおよびクランプ部材、その板状部材を備える切削工具に関する。
従来の切削工具には、特許文献1に示すようなものがある。すなわち、特許文献1は、被加工物の端面に溝加工をするための端面溝入れ用切削工具であり、加工する溝幅の変化に対応するために、調整ブレードと呼ばれる部材を用いる構成を開示している。調整ブレードの一部分が湾曲した板形状とされる。その湾曲した板形状の部分に、溝入れインサートの形態の切削インサートが着脱自在に装着される。調整ブレードは、2本のボルトでシャンク側の部材に固定される。
実開昭63−140303号公報
しかし特許文献1の切削工具は、湾曲した板形状部分の突出し長さの調整機構を持たない。すなわち、湾曲した板形状部分の突出し長さが固定されているものである。
一般に、湾曲した板形状部分の突出し長さの長い切削工具は、被加工物との干渉が少なく、深い溝を加工でき、扱いやすいという利点がある。反面、突出し長さの長い切削工具は、加工条件によってびびり振動が発生しやすく、仕上げ面の品位が低下してしまう場合がある。したがって、深い溝を加工できるようにしたい、または仕上げ面の品位を向上させたいという、トレードオフの関係にある要望に応えるために、切削工具の刃先の突出し長さは、被加工物の形状や切削条件などに応じて、適正に調整でき、かつ切削工具を安定して保持することが望まれている。
本発明は、切削工具に板状部材を用い、その板状部材を安定して保持しながら、刃先の突出し長さを調整することができるようにすることを目的とする。
本発明のツールブロックは、切削工具(1)の板状部材(2)を保持するためのツールブロック(30)であって、板状部材(2)は、長辺および短辺を有する略長方形状の第1および第2の側面(7、8)と、長辺に沿った方向に延在する上面(3)および下面(4)と、短辺の方向に沿った2つの端面(5、6)と、を有し、2つの端面(5、6)の少なくとも一方の端面(5)の側に切れ刃が位置するようにされ、第1の側面(7)は、上面(3)と下面(4)との間で外方に膨らむ湾曲面であり、ツールブロック(30)は、板状部材(2)の下面(4)と接触する下面拘束面(32)と、板状部材(2)の第1の側面(7)と接触する側面拘束面(33)と、を有する。
さらに、本発明のツールブロック(30)の側面拘束面(33)は、第1の面(34)と、正面視において第1の面(34)に対して傾斜する第2の面(35)と、を有し、第1の面(34)及び第2の面(35)は、第1の側面(7)の周方向において互いに異なる位置で、第1の側面(7)と接触する。
本発明の切削工具は、板状部材(2)と、本発明のツールブロック(30)と、本発明のクランプ部材(40)とを備え、ツールブロック(30)は、板状部材(2)の断面形状に対応する下面拘束面(32)および側面拘束面(33)を有し、クランプ部材(40)は、板状部材(2)の断面形状に対応する上面拘束面(41)を有し、板状部材(2)の第1の側面(7)と下面(4)との交差稜線と平行な方向への板状部材(2)の突出し長さの調整ができるように、該板状部材(2)の断面形状は、所定の範囲で一定とされる切削工具(1)である。
本発明によれば、切削工具(1)の板状部材(2)の下面(4)を下面拘束面(32)に接触させ、外方に膨らむ湾曲面として形成した第1の側面(7)を側面拘束面(33)に接触させ、また、下面()に相対的に傾斜している上面(3)に上面拘束面(41)からクランプ力を加えて、板状部材(2)を固定することができる。これにより、板状部材を安定して保持しながら、刃先の突出し長さを調整することができる。このため、びびり振動を抑制して、仕上げ面の品位を向上できるとともに、被加工物の形状および切削条件に応じて、被加工物との干渉を避けながら、切削工具の刃先の突出し長さの調整が適切に行えるようになる。
また、本発明に係る、下面拘束面(32)および側面拘束面(33)を提供するツールブロックおよび上面拘束面(41)を介してクランプ力を作用するクランプ部材によれば、板状部材と協働して、突出し長さを適時調整しつつ、高い工具剛性を実現し、びびり振動の発生などを大幅に抑制できる切削工具を提供できる。
図1は第1の実施形態である切削工具の斜視図である。 図2は図1の切削工具の正面図である。 図3は図1の切削工具の板状部材の斜視図である。 図4は図3の板状部材の右側面図である。 図5は図3の板状部材の正面図である。 図6は図3の板状部材の平面図である。 図7は図3の板状部材の左側面図である。 図8は図4の板状部材のVIII−VIII断面図である。 図9は図1の切削工具の切削インサートの斜視図である。 図10は図1の切削工具のツールブロックの斜視図である。 図11は図10のツールブロックの正面図である。 図12は図10のツールブロックの平面図である。 図13は図10のツールブロックの左側面図である。 図14は図1の切削工具のクランプ部材の斜視図である。 図15は図14のクランプ部材の別方向からの斜視図である。 図16は図1の切削工具の板状部材による端面溝加工を説明する斜視図である。 図17は図16の端面溝加工を説明する背面図である。 図18は第2の実施形態である切削工具の斜視図である。 図19は第3の実施形態である切削工具の正面図である。
本発明を適用した切削工具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1から図15に示すように、第1の実施形態における切削工具1は、被加工物の端面に溝加工を行うための端面溝入れ用切削工具である。端面溝入れとは、図16および図17に概念図を示したような溝入れ加工である。被加工物60の端面に旋盤などの工作機械に取り付けた本実施形態の切削工具1を適用すると、円環状の溝61が加工される。なお、説明をわかりやすくするため、図16および図17には、切削工具1として、板状部材2のみを示した。実際には、板状部材2はツールブロック30へクランプ部材40と固定部材50によって固定されることで、切削工具1となる。図9に示すように、この切削工具1は、正面20fおよび左右の側面20l、20rと、上面(すくい面)20tとの交差稜線に切れ刃を有する切削インサート20を用いる。しかし切れ刃の形状や、切削インサート20の形状は、この実施形態に限定されない。既知の様々な形状の切削インサート20を適用できる。
この実施形態の切削工具1は、端面溝入れ加工に特に適する切削工具1である。前述のとおり、端面溝入れ加工は、加工される溝61の形状が円環状であるため、適用される切削工具1の切れ刃の周辺は、加工する円環状の溝61にならうように、湾曲した板状とされることが好ましい。切削工具1の切れ刃の周辺が湾曲した板状とされることで、図17の概念図に示すように、円環状の溝61の中に板状の部分を収めることができるので、切れ刃を支える剛性が維持される。
切削インサート20は、板状部材2のチップ座13へ、着取自在に装着される。端面溝入れ用切削工具1のときは、既知の様々な形状の溝入れ用切削インサート20が適用できる。この実施形態で、切削インサート20は、チップ座13周辺の弾性によって固定される。すなわち、切削インサート20を装着するときは、切削インサート20の基端側のシャンク22が、これに嵌り合う内面形状を有するチップ座13に押し込まれ、チップ座13の周辺を弾性変形させることで固定される。切削インサート20を取り外すと、チップ座13の周辺は、弾性変形から解放される。図4などに示した、板状部材2に設けられた穴2bは、切削インサート20を取り外すためのレンチなどの部材の挿入用の穴である。切削工具1を使用することにより切削インサート20が摩耗したときは、別の切削インサート20へ交換することができる。したがって、この切削工具1は繰り返し使用することができて、経済的である。このように切削インサート20が、チップ座13周辺の弾性によって固定されるようにすると、板状部材2から上方に突出する部分がなく、構造が簡素化される。このため、被加工物60と干渉することなく、特に端面溝入れ加工において、切りくずの排出性が高く、精度の高い加工を行う上でも効果的である。
しかし切削インサート20を板状部材2へ装着する固定方法は、この実施形態に限定されない。既知の様々な切削インサート20の固定方法が適用可能である。例えば、押え駒などのクランプ部材や、ねじ止めによって固定することも可能である。しかし深い溝の加工および切りくずの排出性を考慮すれば、クランプ部材やねじ頭部が板状部材2から突出しない構造とすることが強く望ましい。
また切削工具についても、この実施形態のように切削インサート20を用いるものに限定されない。板状部材に、切れ刃を有するチップがろう付けされた切削工具であっても構わない(図示しない)。また板状部材が超硬合金やセラミックなどの硬質材料で作製され、切れ刃を一体的に有する板状部材とされても構わない(図示しない)。
なお、この実施形態では、正面20fと上面20tとの交差稜線に形成される切れ刃の幅が約4mmの切削インサート20を用いた。すなわち、被加工物60に溝幅が約4mmの溝61を加工することに適した端面溝入れ加工用の切削工具1である。しかし切れ刃の幅も、この実施形態に限定されない。切れ刃の幅は、被加工物の溝の幅や切削条件に応じて、適宜選択されるとよい。
前述のとおり、板状部材2は、ツールブロック30へクランプ部材40と固定部材50によって固定される。ツールブロック30には、取り付け基準面31がある。取り付け基準面31の部分を旋盤などの工作機械へ装着する。ツールブロック30の構成の詳細は後述する。板状部材2は、上面3と、下面4と、2つの端面5、6と、第1の側面7と、第2の側面8とを有する。2つの端面5、6を、便宜的に前端面5および後端面6と呼ぶ。チップ座13は、前端面5側の上面3側に形成されるとよい。なお説明をわかりやすくするために、上面3や前端面5など、空間内の向きを表す用語を用いているが、これは便宜上のものであって、空間内の絶対的な向きや位置関係を規定することを企図したものではない。特にことわりがない限り、その他の空間内の向きや位置関係を表す用語も同様である。
図3および図5などにみられるように、板状部材2の第1の側面7は、外方に突出するように湾曲する湾曲面である。反対側の第2の側面8は、内方に凹むように湾曲する湾曲面である。第1および第2の側面7、8の形状は、被加工物の加工形状と干渉しないように、制約を受ける。すなわち図17の概念図で示したように、端面溝入れ加工の場合、円環状に加工された溝61の内部に板状部材2の一部が入り込むことができることで、深い溝を加工するために切れ刃を溝の奥まで送り込んでも、切削インサート20ひいては切れ刃を安定して保持することができる。逆に言えば、板状部材2は、被加工物の円環状に加工された溝61の中に干渉せずに入り込めるように、湾曲させられる。すなわち、第2の側面8の曲率半径は、被加工物に加工される円環状の溝の中心O側の壁面の加工径(直径)の半分(すなわち曲率半径r1)以上とされる。第1の側面7の曲率半径は、この加工径(直径)の半分に切れ刃の幅を足した曲率半径r2以下とされる。これらのように第1および第2の側面の曲率半径が設定されることで、板状部材2は、加工される溝形状との間に、両側で逃げが確保される。すなわち、板状部材2は、少なくとも切削インサート20の固定部分において、両側面7、8で逃げ角を有する。
図4の右側面図にみられるように、第1の側面7と対向する方向からみて、板状部材2の外郭形状は、それぞれ2つずつの長辺9、10と短辺11、12とを有する略長方形である。2つの長辺9、10は互いに略平行である。ここでは、第1の側面7と下面4との交差稜線を第1の長辺9とする。また第1の側面7と前端面5との交差稜線を第1の短辺11とする。このように板状部材2は、略長方形とされることで、長手方向へのツールブロック30からの刃先の突出し長さを調整できる。具体的には、板状部材2は、下面4と第1の側面7との交差稜線9と平行な方向への突出し長さの調整ができるように、その交差稜線と直交する断面の形状が所定の範囲で一定とされる。すなわち所定の範囲で断面形状が一定であるため、この交差稜線の方向の任意の位置で、クランプ可能とされる。
板状部材2の突出し長さの調整に必要な所定の範囲で、板状部材2とツールブロック30およびクランプ部材40との接触位置をずらすことができる。この交差稜線は、第1の長辺9である。この一定とされる断面形状を図8に示す。図8は図4のVIII−VIII断面線での断面として示したが、所定の範囲で断面形状は一定である。
なお板状部材2のチップ座13の周辺には、上面3の一部である傾斜面3aが形成されている。この傾斜面3aは、切りくず排出のための切りくずポケットとされる面である。ただし、この実施形態の切削工具1では、凹面状ではなく、平面状とされた傾斜面3aとされている。したがって、切りくずポケットとは呼ばず、切りくず誘導面と呼ばれてもよい。この切りくず誘導面は、被加工物の加工された溝の中から、切りくずが排出されるように誘導する面とされる。この実施形態の切削工具1では、図7に示したように、断面形状が一定とされる所定の範囲3bは、切りくず誘導面すなわち傾斜面以外の部分の全域とされた。すなわち後端面6から切りくず誘導面の始まる範囲までの断面形状が一定とされる。このような形状に断面形状が形成されると、板状部材2を研削加工などで高精度に製作しやすい。したがって、クランプ剛性も高められる。しかし、これに限定されない。断面形状が一定とされる範囲は、板状部材2の突出し長さの調整量に応じて確保されればよい。突出し長さの調整に影響のない部分は、どのような形状とされても構わない。
図8の断面図および図5の正面図にみられるように、板状部材2の下面4は、上面3に対して傾斜している。すなわち、一方の第1の側面7側での上面3と下面4との距離は、他方である第2の側面8側での上面3と下面4との距離よりも長い。別の表現をすると、図8に示した断面形状において、上面3を近似して延長する直線と、下面4を近似して延長する直線とは、第2の側面8側で交差する。上面3および下面4は、いずれも板状部材2をツールブロック30へ固定するときに接触面とされる面である。この実施形態の切削工具1において、板状部材2の上面3および下面4は、それぞれ平面とされた。しかし、これに限定されない。上面3および下面4は、ツールブロック30およびクランプ部材40と接触できる形状であれば、どのような形状でも構わない。下面4は、上面3に対して、傾斜する傾斜部分を少なくとも一部に有していればよい。つまり下面4の接触面は、上面3の接触面に対して傾斜する、下面4に形成した少なくとも一部の傾斜部分とされればよい。なお下面4が平面の場合には、下面4の傾斜部分とは、下面4の全体のことを指すことになる。
いずれにしても、下面4が上面3に対してこのように傾斜している、もしくは傾斜部分を有していると、板状部材2をツールブロック30へ固定するときに、板状部材2を第1の側面7側に向かって押さえる力が働く。このため板状部材2の第1の側面7を、ツールブロック30との接触面として利用できる。板状部材2は、少なくとも上面3、下面4の傾斜部分および第1の側面7の3つの面を接触面とすることで、強固にツールブロック30へ固定される。この結果、クランプ剛性が高まり、びびり振動の発生を抑制することができる。または仕上げ面の品位を向上することができる。下面4の傾斜部分の上面3に対する傾斜角度Aは、10°以上、なおかつ90°以下の範囲であることが好ましい。60°以上、なおかつ90°以下の範囲であることが、さらに好ましい。このような傾斜角度Aとされると、板状部材2をツールブロック30へ固定する安定性が高まる。この実施形態で、下面4の上面3に対する傾斜角度Aは、約80°とされる。
前述のとおり、図10および図11に示すように、この実施形態の切削工具1のツールブロック30は、取り付け基準面31を有する。取り付け基準面31には、長手方向が規定される。長手方向からみたツールブロック30の一方の端面を正面とする。ここでは板状部材2の正面方向と合わせて、図11の方向を正面とする。取り付け基準面31の周辺は、シャンク部と呼ぶこともできる。この取り付け基準面31が、旋盤などの工作機械の刃物台へ押し付けられて、ツールブロック30は工作機械へ装着される。つまりツールブロック30は、板状部材2を保持し、工作機械へ装着するための部材である。
この実施形態のツールブロック30は、下面側に形成される取り付け基準面31の近くに、垂直な壁面31aを有する。この垂直な壁面31aも、工作機械に装着されるときの、幅方向の基準面とされることができる。なお、ツールブロック30の取り付け基準面31および幅方向の基準面は、工作機械の刃物台やホルダ、アダプタなどに対応して、形状が適宜選択される。
ツールブロック30は、板状部材2の下面4と接触する下面拘束面32を有する。下面拘束面32は、板状部材2の下面4の傾斜部分と対応する形状とされる。すなわち下面拘束面32は、取り付け基準面31に対して、取り付け基準面31と平行な方向へ離れるにしたがい漸次隆起する方向に傾斜している。この実施形態で、板状部材2の下面4は平面とされたため、ツールブロック30の下面拘束面32も平面とされた。しかしこれに限定されない。下面拘束面32は、下面4の傾斜部分と接触できる形状であれば、どのような面とされても構わない。下面拘束面32の取り付け基準面31に対する図11の正面図に示す傾斜角度Bは、90°以上、なおかつ170°以下の範囲であることが好ましい。傾斜角度Bは、100°以上、なおかつ130°以下の範囲であることがさらに好ましい。このような傾斜角度Bとされると、板状部材2の下面4と接触するときに、第1の側面7側に向かう拘束力を発生させ、板状部材2をツールブロック30へ固定する安定性が高まる。この実施形態で、下面拘束面32の取り付け基準面31に対する傾斜角度Bは、約115°とされた。
ツールブロック30は、板状部材2の第1の側面7と接触する側面拘束面33を有する。この実施形態で、側面拘束面33は、2段構造とされた。すなわち側面拘束面33は、第1の接触部分34および第2の接触部分35を有する。板状部材2の第1の側面7は、湾曲面であるため、側面拘束面33の形状を第1の側面7の湾曲形状と完全に一致させると、様々な曲率半径の第1の側面7を有する板状部材2に対して、ツールブロック30を兼用させることができない。またツールブロック30の側面拘束面33の形状を、第1の側面7の湾曲形状と完全に一致させることは、製造上難しい場合がある。そこで、この実施形態では、側面拘束面33を2段構造とすることで、正面視した場合の接触点を積極的に2点とし、様々な曲率半径の第1の側面7を有する板状部材2に対して適用可能とする。または板状部材2をツールブロック30に安定して固定することができるようにする。すなわち側面拘束面33は、第1の接触部分34および第2の接触部分35を有することから、板状部材2の第1の側面7と2点で接触する。加えて、下面4と下面拘束面32とが接触することにより、3点での接触で板状部材2の姿勢が安定的に定まる。したがって、板状部材2の第1の側面7の曲率半径の多少の違いを吸収できる。また板状部材2の固定が非常に安定する。
ツールブロック30は、取り付け基準面31と対向する上面に、クランプ部材40と接触する誘導面36を有する。図14および図15にみられるように、クランプ部材40は、板状部材2の上面3と接触する上面拘束面41と、ツールブロック30の誘導面36と接触する被誘導面42とを有する。クランプ部材40は、締め付けボルトなどの固定部材50によって、ツールブロック30へ固定される。固定部材50を締め付けることで、クランプ部材40は、板状部材2をツールブロック30へ固定する。すなわち、ツールブロック30は、固定部材50に対応する固定手段を有する。つまり固定部材50が締め付けボルトのとき、ツールブロック30は、締め付けボルトのおねじに対応するめねじのねじ穴を有する。この実施形態の切削工具1では、前述のように、板状部材2は3点接触で姿勢が安定的に定まっている。したがって、板状部材2の上面3をクランプ部材40の上面拘束面41で押さえることにより、板状部材2は、ツールブロック30へ完全に固定される。なお、この実施形態で、固定部材50は4本の締め付けボルトとされた。しかしこれに限定されない。固定部材50は1本の締め付けボルトでも構わない。また2本、3本または5本以上の締め付けボルトを用いる構成でも構わない。もちろん、ボルト以外の締結方法とされても構わない。
ツールブロック30の誘導面36は、下面拘束面32の傾斜方向と同じ向きに傾斜している。そのため、誘導面36は、板状部材2の上面3とは、逆の向きに傾斜する。つまり誘導面36は、クランプ部材40を板状部材2の第1の側面7側に引き込む力を発生する。このためクランプ部材40の上面拘束面41は、板状部材2の上面3と接触するとき、板状部材2の第1の側面7を側面拘束面33に押し付ける力を発生させる。これらの構造の相乗効果で、板状部材2はツールブロック30に非常に強固に固定される。その結果、クランプ剛性が高まり、びびり振動の発生が大幅に抑制される。ひいては、被加工物の仕上げ面の品位が大幅に向上する。
図14および図15に示したように、この実施形態のクランプ部材40は、長手方向と交差する方向に2本のスリット43を有する。このスリット43は、クランプ部材40の弾性変形を助長するために設けられる。つまり、スリット43が設けられることで、クランプ部材40は、弾性変形しやすくなり、板状部材2およびツールブロック30と、より広範囲でぴったりと接触できるようになる。したがって、さらにクランプが安定する。しかし、これに限定されない。スリットは、1本であってもよいし、3本以上とされても構わない。または、クランプ部材40の材質等によっては、スリットは設けられなくても構わない。
(第2の実施形態)
図18に第2の実施形態の切削工具1を示す。なお第1の実施形態と同様の部材には、同じ参照符号をつけてその説明を省略する。この実施形態の切削工具1のツールブロック30は、複数の部材を組み合わせた組み合わせ構造体とされる。すなわちツールブロック30は、第1のツールブロック部材37と、第2のツールブロック部材38とからなる。第1および第2のツールブロック部材37、38を組み合わせた組み合わせ構造体の形状は、第1の実施形態のツールブロック30と同様とされる。第1のツールブロック部材37と、第2のツールブロック部材38とは、締め付けボルトなどで締結される。
第1のツールブロック部材37と、第2のツールブロック部材38とは、互いの位置関係の保持が安定するように、相補形状を有して互いに接触する接触面を複数有するとよい。その複数の接触面は、鋭角となる部分を有するように配置されるとよい。この実施形態のツールブロック30は、第1のツールブロック部材37に誘導面36および取りつけ基準面31が形成された。また第2のツールブロック部材38に下面拘束面32および側面拘束面33が形成された。つまり誘導面36が形成される部材は、下面拘束面32および側面拘束面33が形成される部材と異なる。このようにツールブロック30が組み合わせ構造体とされると、第1の側面7の湾曲形状ないしは曲率半径が異なる様々な板状部材2を交換して様々な直径の溝形状の加工に適用させるときに、第2のツールブロック部材38を交換するだけで適応できる。したがって、板状部材2の湾曲形状に対応する高精度なツールブロック30を提供できる。または、交換部材の製造コストが抑えられ、経済的である。あるいは交換部品の保管スペースが少なく済み、保管管理(在庫管理)が容易になる。
(第3の実施形態)
図19に第3の実施形態の切削工具1を示す。なお第1の実施形態と同様の部材には、同じ参照符号をつけてその説明を省略する。第3の実施形態の切削工具1の板状部材2は、上面3および下面4が曲面形状とされる。このように、上面3および下面4は、平面形状に限定されない。上面3の実質的な接触面に対して、下面4の実質的な接触面が傾斜していればよい。この実施形態の板状部材2は、上面3および下面4が、ともに円筒面形状とされる。すなわち正面側からみて、上面3および下面4の外郭形状は、ともに円弧形状とされる。別の表現で言うと、正面側からみた断面形状において、上面3および下面4の形状は、ともに円弧形状とされる。このように外郭形状が円弧形状とされたとき、上面3または下面4の傾斜方向は、その円弧の中点における接線の方向と定義されるとよい。この実施形態の板状部材2は、上面3の円弧の中点における接線の方向に対して、下面4の円弧の中点における接線の方向が傾斜している。上面3および下面4の曲面形状は、円筒面形状には限定されない。例えば、セレーションなどが形成されて、より複雑な曲面形状とされても構わない。
(その他)
この発明の切削工具の板状部材、ツールブロックおよびクランプ部材は、以上に説明した実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更及び追加が可能である。
例えば、板状部材2とツールブロック30とは、一方に凸部を設け、他方に相補形状の凹部を設けるなどの方法で結合させることもでき、これにより、板状部材2の突出し長さを段階的に調整できるようにしてもよい。さらに、板状部材2とツールブロック30との一方に目盛りなどの目印を設け、他方に指示マークを設けることで、突出し長さを視覚的に確認できるようにするとなおよい。その他、切削工具の突出し長さを調整するための、種々の従来技術を適用できる。
切削インサート20の切れ刃、あるいは、切れ刃を有するチップがろう付けされた板状部材または切れ刃を一体的に有する板状部材の当該切れ刃、および切れ刃の周辺の工具材料は、超硬合金、サーメット、セラミック、立方晶窒化硼素等の硬質材料またはこれら硬質材料の表面にPVDまたはCVDコーティング膜を被膜したもの、またはダイヤモンドの中から選択することが好ましい。
この切削工具の板状部材は、様々な切削工具に適用されて、その切削工具が工作機械に装着されることにより、鋼材などの切削加工に利用できる。特に、旋盤用のバイトや回転切削工具などに適用されて、被加工物の端面に溝加工するときに有効である。実施形態には旋盤用の端面溝入れ用切削工具だけを記載したが、トレパニング工具と呼ばれるような回転切削工具などにも適用が可能である。トレパニング工具とは、溝入れ加工または穴あけ加工のための回転切削工具である。
さらに、以上に説明した実施形態では、側面視にて(例えば第1の側面7と対向する方向からみて)略長方形である板状部材2の1つの端面5の上面3側にチップ座13が設けられる構成とした。しかし他の端面6にチップ座を設けてもよい。例えば、板状部材の後端面6と上面3とがなす角部にもチップ座を設けたものとすることができる。この場合、そのチップ座に切削インサートを取り付けて使用する場合には、板状部材は図1とは反転した形状のクランプ部材40と固定部材50とによって固定されることで、切削工具1となる。また、この場合においても、第1の実施形態で説明したように、切れ刃を有するチップがろう付けされた板状部材や、切れ刃を一体的に有する板状部材であっても構わない。
加えて、以上に説明した実施形態では、第1および第2の側面7、8の双方を湾曲面とした。しかし、第1の側面7のみを上述した湾曲面としてもよい。すなわち、クランプ部材40の上面拘束面41と板状部材2の上面3との接触によって、板状部材2の第1の側面7を側面拘束面33に押し付ける力が有効に作用する限り、また、第2の側面8が、被加工物に加工される円環状の溝の中心O側の壁面と干渉しない限り、第2の側面については、上述したような湾曲面をなすものでなくてもよい。

Claims (7)

  1. 切削工具(1)の板状部材(2)を保持するためのツールブロック(30)であって、
    前記板状部材(2)は、
    長辺および短辺を有する略長方形状の第1および第2の側面(7、8)と、前記長辺に沿った方向に延在する上面(3)および下面(4)と、前記短辺の方向に沿った2つの端面(5、6)と、を有し、
    前記2つの端面(5、6)の少なくとも一方の端面(5)の側に切れ刃が位置するようにされ、
    前記第1の側面(7)は、前記上面(3)と前記下面(4)との間で外方に膨らむ湾曲面であり、
    前記下面(4)は前記上面(3)に対して傾斜している傾斜部分を有し、
    前記ツールブロック(30)は、
    前記板状部材(2)の前記下面(4)と接触する下面拘束面(32)と、
    前記板状部材(2)の前記第1の側面(7)と接触する側面拘束面(33)と、を有し、
    前記側面拘束面(33)は、
    第1の面(34)と、
    正面視において前記第1の面(34)に対して傾斜する第2の面(35)と、を有し、
    前記第1の面(34)及び前記第2の面(35)は、前記第1の側面(7)の周方向において互いに異なる位置で、前記第1の側面(7)と接触する、
    ツールブロック(30)。
  2. 正面視において、前記下面拘束面(32)は、前記ツールブロック(30)の取り付け基準面(31)に対して傾斜している請求項1に記載のツールブロック(30)。
  3. 正面視において、
    前記取り付け基準面(31)は、前記側面拘束面(33)よりも一方側に形成され、
    前記下面拘束面(32)は、前記側面拘束面(33)よりも他方側に形成され、
    前記下面拘束面(32)は、前記取り付け基準面(31)と平行且つ前記一方側から前記他方側に向かう方向に沿って前記取り付け基準面(31)から離れるにしたがい漸次隆起するように傾斜している請求項2に記載のツールブロック(30)。
  4. クランプ部材(40)と接触する誘導面(36)を有する請求項1から3のいずれかに記載のツールブロック(30)。
  5. 前記取り付け基準面(31)は、長手方向が規定され、前記長手方向に垂直な正面側からみて、前記誘導面(36)は、前記ツールブロック(30)の前記取り付け基準面(31)に対して傾斜し、
    前記誘導面(36)の傾斜方向は、下面拘束面(32)の傾斜方向と同じ向きである請求項4に記載のツールブロック(30)。
  6. 前記ツールブロック(30)は、複数の部材を組み合わせた組み合わせ構造体であり、前記誘導面(36)が形成される部材は、前記下面拘束面(32)および側面拘束面(33)が形成される部材と異なる請求項4または5に記載のツールブロック(30)。
  7. 前記板状部材(2)と、請求項1から6のいずれかに記載のツールブロック(30)と、前記板状部材(2)を前記ツールブロック(30)へ固定するためのクランプ部材(40)とを備え、
    前記ツールブロック(30)は、前記板状部材(2)の前記断面形状に対応する前記下面拘束面(32)および側面拘束面(33)を有し、
    前記クランプ部材(40)は、前記板状部材(2)の前記断面形状に対応する上面拘束面(41)を有し、
    前記板状部材(2)の前記第1の側面(7)と前記下面(4)との交差稜線と平行な方向への前記板状部材(2)の突出し長さの調整ができるように、該板状部材(2)の前記断面形状は、所定の範囲で一定とされる切削工具(1)。
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