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JP4940864B2 - スローアウェイ式回転工具及びこれに装着されるチップ - Google Patents

スローアウェイ式回転工具及びこれに装着されるチップ Download PDF

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Description

本発明は、フライス、エンドミル等のスローアウェイ式回転工具及びそれに装着するチップに関し、特に外周切刃の直径が小さくかつ外周切刃長が大きいものにおいて、外周切刃の切れ味と加工壁面精度の両立をはかったスローアウェイ式回転工具及びこれに装着されるチップに関するものである。
この種のスローアウェイ式回転工具に関する公知技術を図10〜図13に例示する。図10に示す切削インサートは平行6面体の基本形状をしていて、フライス盤で回転させるために、フライス本体に装着させるものである。図11に示すフライス本体は、平行6面体の切削インサートを受容するために、少なくとも一つのポケットを含んでなる。切削インサート10が、補側部13、14ならびに上面15と下面16と一体化する二つの実質的に平行な主側部11、12とを含む。上面15は、主側部11、12との交差線で主切れ刃17、18を形成する。主切れ刃は、各切れ刃が下面16に対して鋭角を形成するので、対向する方向に傾斜する。それによって、それらが切削インサートの対向する側部を与えられ、増加するが、軸角を対向する方向に向かわせる。それぞれの主切れ刃は、フライス本体の切削インサートポケットに装着されたときに、その工具の作用ポジ軸角を増加する。さらにその上に、上面15が、それぞれの補側部13、14の比較的小さな部分での交差線で補切れ刃またはワイパーは19、20を形成する。主切れ刃17、18と、それぞれと協働する補切れ刃19、20とが、フライス加工の際に別の対が作動していないときに、作動する一対の切れ刃を形成する。二つの接する切れ刃は、切削コーナの領域で交差する。切削コーナは、このコーナを二つの等しい角に分割する2等分線を規定する。2等分線は、コーナの半径の中心とは交差しない。一対の切れ刃が磨耗したときに、この切削インサートは別の一対の切れ刃が作用位置になるように割り出される。上面が切れ刃領域に切り屑面を構成し且つ主側部と補側部とともに刃先角を形成し、この角度は90度より小さくて、すなわちこの切削インサートはポジ型基本形状である。さらに、切り屑面15は、加工部材を容易に切削するために、好ましくは増加傾向でポジ型すくい角を形成する。下面16は、補側部と主側部の協働部分とともに鈍角の内角を形成する。中央に配置される孔21は、フライス本体に装着するときにネジのような締結手段を受容するために備えられる。フライスカッターは90度コーナの肩付きフライスに好ましく装着される(例えば、特許文献1参照)。
図13に示す回転切粉除去機械加工用のフライス工具は、切削ヘッド10、保持手段11及びシャンク12を含んでいて、前記切削ヘッド10はそれと一体の少なくとも1つの切れ刃27を備え、前記切削ヘッド及び前記保持手段は前記切削ヘッドを前記シャンクに取り付けるための部分的に重なり合う非対称手段15、19を含み、前記工具は回転軸を有している。そして、前記切削ヘッド10は1〜6個の主切れ刃27を含んでいて、各々の主切れ刃27は本質的に直線状の刃27A及び凸状に湾曲した好ましくは部分的な円形の刃27Bを含み、前記凸状の刃27Bは前記の本質的に直線状の刃27Aの半径方向外側に備わっていることを特徴とするものである(例えば、特許文献2参照)。
特表2002−524275号公報 特表2001−505137号公報
図11に示すフライス工具の主切れ刃は、作用ポジ軸角を増加するので、該フライス工具の中心軸線まわりの回転軌跡が直線とはならないため、加工壁面の真直度を悪化させる問題があった。また、主切れ刃の該主切れ刃方向の両端における逃げ面の逃げ角の変化が生じる。特に20mm程度以下の小径フライス工具では、前記逃げ角の変化が著しく大きくなり、最も逃げ角が小さくなる箇所で適正な逃げ角を設定すると、最も逃げ角が大きくなる箇所で著しく過大な逃げ角が設定されてしまい、主切れ刃の強度不足を招きチッピングや欠損を生じる問題があった。加工壁面の精度を高めるため、主切れ刃の作用ポジ軸角を増加させなくすると、すくい角が小さくなるため切削抵抗が大きくなり切れ味が悪化するという問題があった。
さらに、切削インサートの中央に配置される孔21に受容されるネジによってフライス本体に取り付ける形態のものであり、図12に模式的に示すように、ネジの中心付近を通り前記フライス本体の中心軸線に直交する平面で切断したときの断面形状は、外周切刃の直径を小さくした場合、2枚の切削インサートが接近するため前記フライス本体の中央部の肉厚(芯厚)が小さくなり、該フライス本体の剛性を確保できなくなる。一方、この問題を解消するために切削インサートを小型化した場合、孔21まわりの肉厚が薄くなり、切削インサートの剛性を確保できなくなる。あるいは、工具の作用ポジ軸角を増加させた場合には、フライス本体における切削インサートポケットのバックメタルの断面積が非常に小さくなるため、前記ネジのかかりが浅くなって緩むおそれがあるほか、切削抵抗(主に主分力)による塑性変形や破損が生じるおそれがあることから、加工壁面の精度が悪化するほか、同一工具径のソリッドエンドミルにくらべ切削条件をかなり落とさなければ使用することができないという問題があった。
図13に示すフライス工具は、上述した工具剛性に関する問題は深刻ではないものの、切削ヘッドの切れ刃27、30の形状がソリッドエンドミルやソリッドドリルの先端部の切刃形状の如く複雑化し、保持手段の形状についても複雑化するため、該切削ヘッドを製作するのが困難であるとともに製作に要するコストが非常に高くなる問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、外周切刃の切れ味を落とすことなく外周切刃の回転軌跡における真直度を高めるとともに、工具本体及びチップの剛性を高めて工具の撓みを抑えることにより、加工壁面の精度悪化を防止したスローアウェイ式回転工具及びこれに装着されるチップを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。請求項1に係る発明は、中心軸線まわりに回転させられる工具本体には、該工具本体の先端部外周面に少なくとも1つのチップ取付座を切欠き形成し、このチップ取付座に載置したチップを少なくとも1つの固定手段によって着脱自在に装着してなるスローアウェイ式回転工具であって、略多角形板状をなす前記チップは、工具回転方向を向く上面に形成されたすくい面と、前記上面に対向する下面に形成された着座面と、前記すくい面に交差し工具外周側を向く側面に形成された逃げ面と、すくい面と逃げ面の交差稜線部に形成され且つ工具本体の外周面から突出した外周切刃と、工具内周側を向く側面又は工具基端部側を向く側面の少なくとも一方に形成された被拘束面とを備え、少なくとも前記外周切刃に連なる外周切刃すくい面の表面形状を実質的にプレス焼成により形成し、かつ外周切刃すくい面に交差する外周切刃逃げ面の表面形状をプレス焼成後の研削加工により形成し、前記外周切刃の全長にわたって、アキシャルレーキを正とし、前記外周切刃すくい面を、外周すくい角を増加させる傾斜面で構成し、前記外周切刃逃げ面をねじれ面状に形成するとともに、前記外周切刃の各位置における前記中心軸線から前記外周切刃までの距離をほぼ一定としたことを特徴とするスローアウェイ式回転工具である。
請求項1に係る発明によれば、外周切刃の全長にわたって、アキシャルレーキが正とされ、かつ外周切刃すくい面が外周すくい角を増加させる傾斜面で構成され、さらに外周切刃逃げ面がねじれ面状に形成されたことにより、外周切刃の切削抵抗が小さく切れ味が良好であるとともに、工具本体の中心軸線から外周切刃までの距離がほぼ一定とされるため、前記外周切刃の前記中心軸線まわりの回転軌跡の真直度が悪化することがなく、加工壁面の精度悪化が防止される。
また、外周切刃すくい面の表面形状が実質的にプレス焼成により形成されるため、該外周切刃すくい面の表面形状を自由度の高い形状とすることが可能となる。例えば、外周切刃方向における各位置において切れ味と切刃強度を両立する、最適な外周すくい角が設定される。しかも、この外周切刃すくい面と交差する外周切刃逃げ面の表面形状がプレス焼成後の研磨加工により形成されたことから、これら外周切刃すくい面と外周切刃逃げ面との交差稜線部に形成された外周切刃の形状が高精度に成形され、外周切刃の回転軌跡の真直度の悪化が防止される。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記チップが前記工具本体に装着された状態で、前記中心軸線方向における前記外周切刃の全長にわたって、外周すくい角及び前記外周切刃逃げ面の逃げ角がほぼ一定とされていることを特徴とする。
請求項2に係る発明によれば、工具本体に装着されたチップの外周切刃全長にわたって、外周すくい角及び外周切刃逃げ面の逃げ角がほぼ一定とされるため、外周切刃の各位置における切削抵抗及び切刃強度が均一化され、切れ味の安定化や切刃の長寿命化が実現される。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記アキシャルレーキ及び前記外周すくい角を正としたことを特徴とする。
請求項3に係る発明によれば、アキシャルレーキ及び外周すくい角が正とされるため、切削抵抗が小さく抑えられ、外周切刃の切れ味が良好となる。よって、工具本体に加わる負荷が小さく撓みが生じにくくなるため、加工壁面の精度悪化が防止される。さらに、工具びびりの発生がおさえられるので、従来工具よりも高い切削条件による切削加工が可能となる。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る発明において、前記チップは、長尺状の略矩形板状をなし、工具回転方向を向く上面の長辺に沿って形成されたすくい面と、前記上面に対向する下面に形成された着座面と、前記すくい面に隣接し工具外周側を向く側面に形成された逃げ面と、これらすくい面と逃げ面の交差稜線部に形成された外周切刃と、工具内周側に位置する長辺に連なる側面及び工具基端部側に位置する短辺に連なる側面の少なくとも一方に形成された被拘束面と、を備え、前記取付溝に挿入されたチップは、その上面の前記すくい面に隣接する領域に前記中心軸線方向に互いに離間した、少なくとも2つの被押圧部を、前記チップの上面に面する前記取付溝の壁面側の前記被押圧部を臨む位置に設けられた雌ねじ孔にねじ込まれたねじ部材によって、該チップの着座面側に向かって押圧されて固定されていることを特徴とする。
請求項4に係る発明によれば、チップを工具本体に固定するねじ部材が該チップの上下面を貫通しないため、チップの小型化が可能となり、該チップを装着する工具本体の芯厚部及びチップ取付座周辺に充分な肉厚が確保される。また、チップが着座するチップ取付座底面側に雌ねじ孔を要しないので、前記底面側の領域の剛性がきわめて高くなる。以上のことから、切削抵抗による工具本体の撓みがおさえられるため、加工壁面の精度悪化が防止され、従来工具よりも高い切削条件の加工が可能となる。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のスローアウェイ式回転工具に装着されるチップにおいて、請求項1〜4のいずれか1項記載のスローアウェイ式回転工具に装着されるチップにおいて、長尺状の略矩形板状をなし、その上面の少なくとも1つのコーナに隣接する長辺には外周切刃を形成し、この外周切刃に連なる上面には外周切刃すくい面を形成し、この外周切刃すくい面に交差する側面には外周切刃逃げ面を形成し、前記外周切刃すくい面の表面形状を実質的にプレス焼成により形成し、かつ前記外周切刃逃げ面の表面形状をプレス焼成後の研削加工により形成し、前記外周切刃に直交する断面において、前記外周切刃すくい面のすくい角を、前記外周切刃の一端から他端へ向かうにしたがって漸次減少する一方で、前記外周切刃逃げ面の逃げ角を漸次増加させ、これら外周切刃すくい面と外周切刃逃げ面とのなす刃物角が前記外周切刃の全長にわたってほぼ一定とされていることを特徴とするチップである。
請求項5に係る発明によれば、外周切刃すくい面の表面形状が実質的にプレス焼成により形成されているため、該外周切刃すくい面の表面形状を自由度の高い形状とすることができるとともに、この外周切刃すくい面に隣接する外周切刃逃げ面の表面形状がプレス焼成後の研磨加工により形成されたことから、これら外周切刃すくい面と外周切刃逃げ面との交差稜線部に形成された外周切刃の形状を高精度に成形することができる。このようなチップをスローアウェイ式回転工具の工具本体に装着した際において、外周切刃方向における各位置において切れ味と切刃強度が両立する、最適な外周すくい角に設定することが可能であるとともに、外周切刃の回転軌跡の真直度の悪化が防止される。
本発明に係るスローアウェイ式回転工具及びこれに装着されるチップによれば、外周切刃の全長にわたって、アキシャルレーキが正とされ、かつ外周切刃すくい面が外周すくい角を増加させる傾斜面で構成され、さらに外周切刃逃げ面がねじれ面状に形成されたことにより、外周切刃の切削抵抗が小さく切れ味が良好であるとともに、外周切刃の各位置における工具本体の中心軸線から外周切刃までの距離がほぼ一定とされるため、前記外周切刃の前記中心軸線まわりの回転軌跡の真直度が悪化することがなく、加工壁面の精度悪化が防止される。
また、外周切刃すくい面の表面形状が実質的にプレス焼成により形成されるため、該外周切刃すくい面の表面形状を自由度の高い形状とすることが可能となる。例えば、外周切刃方向における各位置において切れ味と切刃強度を両立する、最適な外周すくい角が設定される。しかも、この外周切刃すくい面と交差する外周切刃逃げ面の表面形状がプレス焼成後の研磨加工により形成されたことから、これら外周切刃すくい面と外周切刃逃げ面との交差稜線部に形成された外周切刃の各位置における工具本体の中心軸線から外周切刃までの距離がより高精度に成形されるので、外周切刃の回転軌跡において真直度の悪化が防止される。
以下に、本発明に係るスローアウェイ式回転工具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスローアウェイ式エンドミルの斜視図である。図2は、図1に示すエンドミルの分解斜視図である。図3の(a)〜(c)は、それぞれ図1に示すエンドミルの平面図、正面図、先端視側面図である。図4は、図1に示すエンドミルの先端部拡大平面図である。図5〜図7は、それぞれ図4におけるS1−S1線断面図、S2−S2線断面図、S3−S3線断面図である。図8は、図1に示すエンドミルに装着されるチップの斜視図である。図9の(a)〜(d)はそれぞれ図8に示すチップの背面図、平面図、正面図、右側面図である。
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るスローアウェイ式エンドミル1は、略丸棒状をなす工具本体10の先端外周面に設けた2つの取付溝20に、切刃を備えた長尺状の略多角形板状をなすチップ30が、その長手方向が前記工具本体の中心軸線CL方向と略平行となるようにそれぞれ挿入され、固定手段となる2つのねじ部材40A、40Bを利用して着脱自在に固定されてなる。
工具本体10は、略丸棒状をなし、工具先端部側に形成された頭部10Aと、この頭部10Aに連なって工具基端部側に形成されたやや径大のシャンク部10Bとを備えている。さらに、前記頭部10Aの先端部外周面には、先端面10aから工具基端部側に延在する溝状をなす2つのチップ取付座20が工具本体10の中心軸線CLを基準としてほぼ対称的に形成されている。チップ取付座20の工具回転方向K後方側に位置する壁面には、チップ30を着座するための平坦な取付面21が形成され、この取付面21に隣接する底面及び工具基端部側の壁面には、平坦面からなる拘束面22、23がそれぞれ形成されている。
各チップ取付座20の工具回転方向K側に隣接した工具本体10の外周面には、切屑を排出するためのチップポケットが切欠き形成されている。このチップポケットは、主チップポケット11Aと副チップポケット11Bからなり、主チップポケット11Aは、工具本体の中心軸線CL方向で工具本体の先端面10aからチップ取付座20の工具基端部側の端部付近まで延在しており、前記中心軸線に直交する断面において工具本体10の内方に向かって凹んだ曲面状壁面を有している。副チップポケット11Bは、主チップポケット11Aの工具先端部側に隣接し、平面視で、工具本体の先端面10aの中心軸線CL付近から工具基端部側かつ工具外周側に向かうように前記中心軸線CLに対して傾斜して形成されている。
超硬合金、サーメット、セラミックス等の硬質材料からなるチップ30は、図8及び図9に示すように、長尺状の略多角形板状、好ましくは略矩形板状をなし、その上面30aの平面視円弧状をなすコーナ31Cを挟んで隣接する長辺及び短辺には、外周切刃31A及び副切刃31Bがそれぞれ形成されている。さらに、該チップの上面30aには、外周切刃31Aに連なる外周切刃すくい面32A及び副切刃31Bに連なる副切刃すくい面32Bが形成され、これら外周切刃すくい面32A及び副切刃すくい面32Bにそれぞれ隣接する該チップ30の側面には、外周切刃逃げ面33A及び副切刃逃げ面33Bがそれぞれ形成されている。少なくとも外周切刃すくい面32Aの表面形状は、プレス焼成により形成されるか、または、プレス焼成された後、外周切刃31Aの稜線に沿ってホーニングを付与するために遊離砥粒等を用いて研磨加工されるものの、プレス焼成により形成された表面形状をほぼ維持しているので、実質的にプレス焼成により形成されている。さらに、外周切刃31Aの全長にわたって、外周切刃すくい面32Aは、該外周切刃31Aから離れるにしたがって着座面34に漸次近づく傾斜面で形成されていて、正のすくい角を付与されている。さらに、外周切刃すくい面32Aのすくい角は、外周切刃31Aにおける副切刃側端部から他端部に向かうにつれ、漸次小さくなるように変化している。
外周切刃31A及び副切刃31Bに連なる該チップの各側面には、外周切刃逃げ面33A及び副切刃逃げ面33Bが形成されている。少なくとも外周切刃逃げ面33Aの表面形状は、研削砥石を用いた研削加工により形成され、しかも、外周切刃31Aにおけるコーナ31C側端部から他端部に向かうにつれ逃げ角が漸次大きくなるように形成されたねじれ面で形成されている。
チップ30の上面30aにおける、外周切刃31Aに対向する長辺側の領域には、工具本体10に取り付ける際に、固定手段であるねじ部材40A、40Bによって押圧される被押圧部35が設けられている。この被押圧部35は、前記上面30aの表面から該チップ30の厚み方向下面30b側へわずかに陥没し、平面視で、略半円形状をなす2つの凹部35A、35Bからなる。これら凹部35A、35Bは、前記長辺から延びる側面の一部を切欠くとともに、該チップ30の長手方向における全長の中間点を挟んで両側に間隔をあけて設けられている。各凹部35A、35Bの底面36A、36Bは、平坦面とされ、その垂線Pが着座面34に近づくにしたがって2つの被拘束面37、38に漸次近づくように、着座面34の垂線に対して傾斜しており、その傾斜角が5°〜20°の範囲となるように形成されている(図5参照)。
チップ30は、工具本体10に装着される際において、図3の(a)〜(c)に示すように上面30aを工具回転方向Kに向けて、その着座面34をチップ取付座の取付面21に着座し、その被拘束面37、38を対応するチップ取付座の拘束面22、23にそれぞれ当接するようにしてチップ取付座20に載置される。このとき、チップの外周切刃31A及び副切刃31Bは、工具本体10の外周面10b及び先端面10aからそれぞれ突出している。
チップ取付座20の工具回転方向K側に位置する壁面側には、チップ30の各凹部35A、35Bを臨む位置に、各凹部の底面36A、36Bの垂線Pと平行に延びる中心軸線CLsを有した雌ねじ孔13A、13Bがそれぞれ穿設されている。これら雌ねじ孔13A、13Bにねじ込まれたねじ部材40A、40Bがその先端面41A、41Bで前記底面36A、36Bをその垂線P方向に押圧することにより、各チップ30は、主に取付面21側に押圧されるとともに各拘束面22、23側にもそれぞれ押圧されて、チップ取付座20内にしっかりとクランプされる。
図3に図示するように本スローアウェイ式エンドミル1の正面視において、チップ30は、工具本体10の工具先端部側から工具基端部側に向かうにつれ工具回転方向K後方側に向かうように傾斜して正のアキシャルレーキγpに設定されるとともに、本スローアウェイ式エンドミル1の先端視において、チップ30は、該エンドミルの中心軸線CLに対して芯上がりとなり、負のラジアルレーキγf´に設定されている。このラジアルレーキγf´は、外周切刃31Aの最先端で最も負であるが、工具基端部側に向かうにつれ漸次増加している。既述したようにチップの外周切刃すくい面32Aは、外周切刃31Aの全長にわたって、正のすくい角を付与され、かつ、副切刃側端部から他端部に向かうにつれすくい角が漸次小さくなっていることから、本スローアウェイ式エンドミル1における外周すくい角γfは、チップの取付姿勢で決まるラジアルレーキγf´に、外周切刃すくい面32Aのすくい角が加わることによって増加し、かつ外周切刃31Aの全長にわたって略一定の値に設定されている。
また、上述したようにチップの外周切刃逃げ面33Aは、外周切刃31Aの最先端から後端側に向かうにつれ逃げ角が漸次大きくなるねじれ面で形成されていることから、本スローアウェイ式エンドミルにおける外周逃げ角αfは、外周切刃31Aの全長にわたって略一定の値となっている。
さらに、工具本体10に装着されたチップ30は、その外周切刃31Aが本スローアウェイ式エンドミル1の中心軸線CLまわりの円筒面を前記アキシャルレーキγp方向に平行な方向に傾けられた傾斜平面による切断面の輪郭形状に略等しく形成され、外周切刃31Aの各位置における前記中心軸線CLから外周切刃31Aまでの距離が略一定となるように形成されている。チップ30単体において、該チップ30を平面視したとき、外周切刃31Aは、その両端部から中間部へ向かうにしたがって外方に張り出した所定の曲線状に形成されている。
以上の構成を有するスローアウェイ式エンドミル1及びそれに装着するチップ30によれば、外周切刃31Aの全長にわたって、正のすくい角を付与された外周切刃すくい面32Aが該エンドミルの外周すくい角γfを増加させ、かつ外周切刃逃げ面33Aがねじれ面状に形成されたことから、切削抵抗が小さく切れ味が良好となる。また、外周切刃31A工具本体10の中心軸線CLから外周切刃31Aまでの距離が該外周切刃31Aの全長にわたってほぼ一定とされたことから、前記中心軸線CLを回転中心とした外周切刃31Aの回転軌跡の真直度が悪化せず、加工壁面の精度の悪化がおさえられる。
また、外周切刃すくい面32Aの表面形状が実質的にプレス焼成により形成されているため、自由度の高い形状が成形可能となり、外周切刃31A方向における各位置において切れ味と切刃強度を両立する、最適な外周すくい角γfが設定可能となる。しかも、この外周切刃すくい面32Aと交差する外周切刃逃げ面33Aの表面形状がプレス焼成後の研削加工により形成されていることから、これら外周切刃すくい面32Aと外周切刃逃げ面33Aとの交差稜線部に形成された外周切刃31Aの各位置における工具本体10の中心軸線CLから外周切刃31Aまでの距離が略一定となるように、高精度に成形されるため、回転軌跡の真直度の悪化がおさえられる。
チップ30が工具本体10に装着されたとき、工具本体10の中心軸線CL方向における外周切刃31Aの全長にわたって、外周すくい角γf及び外周切刃逃げ面の逃げ角αfがほぼ一定とされていることから、外周切刃31Aの各位置における切削抵抗及び切刃強度が均一化し、切れ味の安定化や外周切刃31Aの長寿命化が実現される。
外周切刃のアキシャルレーキγpが正、かつ外周すくい角γfがチップの外周切刃すくい面により増加させられるため、切削抵抗が小さくおさえられ切れ味が良好となる。よって、工具本体10に加わる負荷が小さく撓みが生じにくくなるため、加工壁面の精度悪化がおさえられる。さらに、工具びびりの発生がおさえられるので、従来工具よりも高い切削条件による加工が可能となる。
外周切刃31Aの切削抵抗を小さくし切れ味を高めることに配慮して、アキシャルレーキγpは10°〜20°の範囲に設定され、かつ外周すくい角γfは−5°〜15°の範囲に設定されるのが望ましい。これは、アキシャルレーキγpが10°未満では、切削抵抗の低減効果が不十分であり、20°を超えると取付溝20の後端部において取付溝20の取付面20側の肉厚を確保することが難しくなるからである。また、外周すくい角γfが−5°未満でも、切削抵抗の低減効果が不十分であり、15°を超える場合には、外周切刃31Aのすくい角が過大となり外周切刃31Aの強度不足を招くおそれがあり、あるいは、ラジアルレーキγf´が過大となり取付溝20の取付面21側の肉厚が充分確保されないおそれがあるからである。
チップ30を工具本体10に装着する方法に関して、本スローアウェイ式エンドミル1においては、ねじ部材40A、40Bがチップの上面30aからわずかに陥没する凹部の底面36A、36Bを押圧してチップ30をクランプするようにしたことから、図12に図示する従来工具1´のように、チップ30´の中央部を上下面に貫通するねじ部材40´を受容する孔35´が設けられたものにくらべて、チップ30の剛性が高くなるため、チップ30の上面及び下面のサイズや厚みを縮小でき、チップ30の小型化がはかられる。このチップ30の小型化にともない工具本体の頭部10Aは、2つのチップ30に挟まれた芯厚部及びチップ取付座20周辺の肉厚が充分確保され工具本体10の剛性が高くなる。したがって、切削抵抗による工具本体10の撓みが前記従来工具1´よりも大幅に抑制されるため、加工壁面の精度悪化が防止され、従来工具よりも高い切削条件の加工を可能にする。
また、本スローアウェイ式エンドミル1では、該エンドミル1の接線方向に作用する主分力を主に受け止めるチップ取付座20の取付面21側には、雌ねじ孔等の肉厚、強度を低下させるものが一切形成されないことから、前記従来工具1´にくらべチップ30を強固に支持することができるため、工具本体10の撓みやびびりがおさえられ、加工壁面の精度悪化が防止される。
さらに、チップの凹部の底面36A、36Bの垂線P及びねじ部材40A、40Bの中心軸線CLsを、着座面34に近づくにしたがって被拘束面37、38に漸次近づくように傾斜させ、ねじ部材40A、40Bが凹部35A、35Bの底面を前記着座面34側に向かって押圧するようにしたことから、チップ30は、その着座面34及び被拘束面37、38がチップ取付座の取付面24及び拘束面22、23にそれぞれ押し付けられて、前記チップ取付座20内にしっかりとクランプされる。特にチップの着座面34及び各被拘束面37、38、ならびに、チップ取付座の取付面24及び各拘束面22、23が互いに略90°で交差しているため、切削抵抗によるチップ30の動きが防止され、加工壁面の精度悪化が防止される。特に、前記凹部の底面36A、36Bの垂線P及びねじ部材40A、40Bの中心軸線CLsと、着座面34の垂線とのなす角度を5°〜20°の範囲内に設定することにより、チップ30のクランプ力をいっそう強力にするとともにクランプ精度を正確にすることができる。これは、前記角度を5°未満にするとチップ30を各拘束面22、23側に押し付ける力が不足し、前記角度が20°を超えるとチップ30が各拘束面22、23側に強く押し付けられ、チップ30が取付面24から浮き上がるおそれがあるため、切削加工中にチップ30が動いて加工壁面の精度悪化を引き起こすおそれがあるからである。
さらに、各ねじ部材40A、40Bがチップ30の長手方向の中間点を挟んで両側に間隔をあけて2箇所に設けられた、凹部の底面36A、36Bをそれぞれ押圧していることから、大きなクランプ力がチップ30に均等に作用する。そのため、外周切刃31A方向の切込みが小さく、外周切刃31Aの先端部側付近に局所的な切削抵抗が作用する場合にも、チップ30がチップ取付座20内で動くことがなく、チップ30の位置決め精度がきわめて良好となるため、加工壁面の精度悪化が防止される。
工具本体10の中心軸線CL方向における外周切刃31Aの長さLは、本スローアウェイ式エンドミル1の外周切刃31Aの直径Dの1倍以上且つ2倍以下の範囲内に設定される。そうすれば、前記中心軸線CL方向の切込みを大きくした高能率切削加工において、工具本体10の剛性を向上させる効果が充分発揮されるとともに、既述した加工壁面の精度の悪化をおさえるという効果が顕著となる。なお、前記長さLを前記外周切刃の直径Dの2倍以上にした場合、中心軸線CLに対して斜交するチップ取付座20の後端部において肉厚の低下が著しくなるため、工具本体10の剛性を高めるといった所期の効果が得られないおそれがある。
このスローアウェイ式エンドミル1は、以上に説明したように、チップ30を小型化するのに好適な構成を有し、これにより小径工具における工具本体10の剛性向上にきわめて有効であることから、外周切刃の直径Dが6mm〜20mmの範囲に設定されたスローアウェイ式エンドミルに適用した場合、特に加工壁面の精度悪化を防止する点で有効となる。
本発明のスローアウェイ式回転工具は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、スローアウェイ式正面フライスやスローアウェイ式サイドカッタ等にも適用可能である。
本発明の実施形態に係るスローアウェイ式エンドミルの斜視図である。 図1に示すスローアウェイ式エンドミルの分解斜視図である。 (a)〜(c)は、それぞれ図1に示すスローアウェイ式エンドミルの平面図、正面図、先端視側面図である。 図1に示すスローアウェイ式エンドミルの先端部拡大平面図である。 図4におけるS1−S1線断面図である。 図4におけるS2−S2線断面図である。 図4におけるS3−S3線断面図である。 図1に示すスローアウェイ式エンドミルに装着されるチップの斜視図である。 (a)〜(d)は、それぞれ図8に示すチップの背面図、平面図、正面図、右側面図である。 従来のフライスカッターに装着される切削インサートの斜視図である。 図10に示す切削インサートを装着するフライスカッターの正面図である。 図11に示すフライスカッターの軸直角断面の模式図である。 他の従来フライス工具の一部断面正面図である。
符号の説明
1 スローアウェイ式エンドミル(スローアウェイ式回転工具)
10 工具本体
10a 工具本体の先端面
10b 工具本体の外周面
13A、13B 雌ねじ孔
20 チップ取付座
21 取付面
22、23 拘束面
30 チップ
30a 上面
30b 下面
31A 外周切刃
31B 副切刃
32A 外周切刃すくい面
33A 外周切刃逃げ面
34 着座面
35 被押圧部
35A、35B 凹部
36A、36B 凹部の底面
37、38 被拘束面
40A、40B ねじ部材(固定手段)
CL 工具本体の中心軸線
D 外周切刃の直径
γp アキシャルレーキ
γf´ ラジアルレーキ
γf 外周すくい角

Claims (4)

  1. 中心軸線まわりに回転させられる工具本体には、該工具本体の先端部外周面に少なくとも1つのチップ取付を切欠き形成し、このチップ取付に載置したチップを少なくとも1つの固定手段によって着脱自在に装着してなるスローアウェイ式回転工具であって、
    略多角形板状をなす前記チップは、
    工具回転方向を向く上面に形成されたすくい面と、前記上面に対向する下面に形成された着座面と、前記すくい面に交差し工具外周側を向く側面に形成された逃げ面と、すくい面と逃げ面の交差稜線部に形成され且つ工具本体の外周面から突出した外周切刃と、工具内周側を向く側面又は工具基端部側を向く側面の少なくとも一方に形成された被拘束面とを備え、
    前記チップの上面には、前記中心軸線方向に互いに離間して設けられた少なくとも2つの被押圧部と、該上面に面する前記取付溝の壁面の開口端部に沿って該上面から上方へ隆起する段部とが設けられており、
    少なくとも前記外周切刃に連なる外周切刃すくい面の表面形状を実質的にプレス焼成により形成し、かつ外周切刃すくい面に交差する外周切刃逃げ面の表面形状をプレス焼成後の研削加工により形成し、
    前記外周切刃の全長にわたって、アキシャルレーキを正とし、
    前記外周切刃に直交する断面において、前記チップの前記外周切刃のすくい面のすくい角を、工具先端部側から工具基端部側へ向かうにしたがって漸次減少させる一方で、前記チップの前記外周切刃の逃げ面の逃げ角を、工具先端部側から工具基端部側へ向かうにしたがって漸次増加させるとともに、前記外周切刃の全長にわたって、前記工具本体に対して規定された前記チップのすくい角γf及び逃げ角αfを一定とし、及び、
    前記外周切刃の各位置における前記中心軸線から前記外周切刃までの距離を一定としたことを特徴とするスローアウェイ式回転工具。
  2. 前記工具本体に対して規定された前記チップのすくい角γfを正としたことを特徴とする請求項1記載のスローアウェイ式回転工具。
  3. 前記チップは、
    長尺状の略矩形板状をなし、工具回転方向を向く上面の長辺に沿って形成されたすくい面と、前記上面に対向する下面に形成された着座面と、前記すくい面に隣接し工具外周側を向く側面に形成された逃げ面と、これらすくい面と逃げ面の交差稜線部に形成された外周切刃と、工具内周側に位置する長辺に連なる側面及び工具基端部側に位置する短辺に連なる側面の少なくとも一方に形成された被拘束面と、を備え、
    前記着座面及び前記被拘束面を、対応する前記取付溝の壁面にそれぞれ当接するとともに、該チップの上面に設けられた被押圧部を、該上面に面する取付溝の壁面側に設けた雌ねじ孔に螺合する前記ねじ部材により該チップの着座面側に向かって押圧することによって、前記取付溝に固定されていることを特徴とする請求項1又は2項記載のスローアウェイ式回転工具。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載のスローアウェイ式回転工具に装着されるチップにおいて、長尺状の略矩形板状をなし、その上面の少なくとも1つのコーナに隣接する長辺には外周切刃を形成し、この外周切刃に連なる上面には外周切刃すくい面を形成し、この外周切刃すくい面に交差する側面には外周切刃逃げ面を形成し、前記外周切刃すくい面の表面形状を実質的にプレス焼成により形成し、かつ前記外周切刃逃げ面の表面形状をプレス焼成後の研削加工により形成し、前記外周切刃に直交する断面において、前記外周切刃すくい面のすくい角を、前記外周切刃の一端から他端へ向かうにしたがって漸次減少する一方で、前記外周切刃逃げ面の逃げ角を漸次増加させ、これら外周切刃すくい面と外周切刃逃げ面とのなす刃物角が前記外周切刃の全長にわたって一定とされていることを特徴とするチップ。
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