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JP6167797B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いたポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用い、低熱収縮性、高ラミネート強度を有し、厚みムラの小さいポリエステルフィルムに関する。
従来、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることにより、オリゴマー含有量の少ないポリエステルから、かつ生産性、品位を損なうことなく静電気によるトラブルが少ない胴巻ラベル用ポリエステルフィルムにするという技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は極限粘度の高い原料レジン(IV=0.70)を使用し、低い押出温度で押出(280℃)し、極限粘度の低いフィルム(IV=0.62)を作製するため、フィルム内部の組成にバラツキがあり、ラミネート面のバラツキの発生や厚みムラの不良になる。また、高いラミネート強度を得るために、二軸延伸後のフィルムを高温で熱処理しているが、室温への冷却が急激なため、フィルムの緩和が面内でバラツキがあり、厚みムラが不良となる、という問題点があった。
また、フィルムの配向を制御することにより、蒸着膜とポリエステルフィルムとの接着性やボイル、レトルト処理に好適な透明蒸着用ポリエステルフィルムとするという技術が知られていた(例えば特許文献2参照)。しかし、かかる従来技術は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を使用しないポリエチレンテレフタレートの例であるが、同リサイクル樹脂からなる極限粘度が0.63の樹脂を使用してフィルムを作成した場合にはフィルム内部の組成にバラツキがあるため、ラミネート面のバラツキの発生や厚みムラの不良になる。また、高いラミネート強度を得るために、二軸延伸後のフィルムを高温で熱処理しているが、室温への冷却が急激なため、フィルムの緩和が面内でバラツキがあり、厚みムラが不良となる、という問題点があった。
さらに、フィルム中の粒子および製膜条件を制御するにより、磁気記録媒体用において、スリット性とカレンダー工程での削れ性を良好にするという技術が知られていた(例えば特許文献3参照)。しかし、かかる従来技術は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を使用しないポリエチレンテレフタレートの例であるが、同リサイクル樹脂からなる極限粘度が0.62の樹脂を使用してフィルムを作成した場合には、フィルム内部の組成にバラツキがあるため、ラミネート面のバラツキの発生や厚みムラの不良になる。また、高いラミネート強度を得るために、二軸延伸後のフィルムを高温で熱処理しているが、室温への冷却が急激なため、フィルムの緩和が面内でバラツキがあり、厚みムラが不良となる、という問題点があった。
また、フィルムの縦、横の延伸条件と熱処理条件の最適化で、熱収縮特性を最適化する離形シート用におけるセラミックシート作製時の加熱寸法安定性を良好にする技術が知られていた(例えば特許文献4参照)。しかし、かかる従来技術は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を使用しないポリエチレンテレフタレートの例であるが、同リサイクル樹脂からなる極限粘度が0.62の樹脂を使用してフィルムを作成した場合にはフィルム内部の組成にバラツキがあるため、ラミネート面のバラツキの発生や厚みムラの不良になる。また、高いラミネート強度を得るために、二軸延伸後のフィルムを高温で熱処理しており、かつ任意として熱処理後の冷却の技術思想が開示されている。しかし、イソフタル酸を0.5モル%以上5モル%以下含有するフィルムとしては本技術をそのまま転用しても、フィルムの緩和が面内でバラツキがあり、厚みムラが不良となる。また、厚み方向の屈折率(Nz)を制御することでフィルムの平面性を維持することが開示されているが、本文献は原料としてポリエチレンテレフタレートが100%の場合に、かつNzが1.493
以下の場合が想定されている。イソフタル酸を0.5モル%以上5モル%以下含有したフィルムは0モル%のポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、ラミネート強度が出やすい
という利点があるが、ラミネート強度と厚みムラを共に良好にするにはNzが高すぎるため、この技術をそのまま転用することはできない、という問題点があった。
また、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムは通常、ポリエチレンテレフタレートを口金より溶融押出し、押出したフィルム状溶融物を回転冷却ドラム表面で急冷して未延伸フィルムとし、続いて該未延伸フィルムを縦、横方向に延伸して製造される。この場合、フィルムの表面欠点を無くし厚みの均一性を高める為には、押出口金から溶融押出したシート状物を回転冷却ドラム面で急冷する際に、該シート状物とドラム表面との密着性を高めることが重要である。このシート状物とドラム表面の密着性を高める方法として、押出口金と回転冷却ドラムの間にワイヤー状の電極を設けて高電圧を印加し、未固化のシート状物面に静電気を析出させて、該シートを冷却体表面に密着させながら急冷する方法(静電密着キャスト法)が有効である。
静電密着キャスト法を効果的に行うには、とりもなおさず、シート状物とドラム表面との静電密着性を高めることが必要であり、そのためには、シート状物表面にいかに多くの電荷量を存在させるかが重要である。電荷量を多くするためには、ポリエステルを改質してその比抵抗を低くすることが有効であり、多大の努力が払われている。
例えば、ポリエチレンテレフタレート製造時に、マグネシウム原子とリン原子の原子数比が特定範囲の値となるようにマグネシウム化合物とリン化合物とを加えることで比抵抗を低くすることが知られている(例えば、特許文献5参照)。前記の方法によれば、マグネシウム化合物、ナトリウム化合物及びリン化合物の添加時期を特定することで、触媒に起因する異物を減少させ、フィルムの品質が向上することも知られている。
一方、リサイクルされたペットボトルからリサイクルされたポリエステルは、元来フィルム用途に再利用されることだけが意図されているわけではなく、比抵抗値が高く、フィルムの生産性の面から静電密着性を向上させるための工夫が不可欠である。
特開2012−91862号公報 特開2001−342267号公報 特開平7−114721号公報 特開2010−260315号公報 特開昭59−64628号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、すなわち、本発明の目的は、以下のようなポリエステルフィルムを提供することである。
1.イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有し、溶融粘度が高く、固相重合を施し、高結晶化核剤などを添加することの多いペットボトルをリサイクルすることで得たリサイクル樹脂を用いても、押出の温度を最適化することで樹脂の押出が安定させ、またフィルム中の樹脂、添加剤および粒子などが均一化することにより、フィルムの厚みムラを小さくし、ラミネートのバラツキをなくしラミネート強度を向上させること。
2.高温で高倍率の縦延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、フィルムの厚みムラを小さくすること。
3.高温での横延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、フィルムの厚みムラを小さくすること。
4.高温の熱処理を行うことで、フィルムの縦横の熱収縮率を低くすること。
5.高温、高倍率の延伸と高温の熱処理でフィルムの厚み方向の屈折率を適切にし、高いラミネート強度を実現すること。
6.熱処理後の冷却を徐冷とすることで、酸成分として、イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有するフィルムの厚みムラを小さくすること。
7.フィルムの溶融比抵抗値を小さくすることで生産性や厚みムラを良好にすること。
また、ラミネート強度がフィルム内部でばらつくことも無くなるペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
1. ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムであって、以下の要件を満足することを特徴とするポリエステルフィルム。
(1)ポリエステルフィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が0.5モル%以上5.0モル%以下
(2)ポリエステルフィルムを構成している樹脂の極限粘度が0.64以上0.80未満、(3)縦方向及び横方向の150℃熱収縮率が0.1%以上1.5%以下
(4)ポリエステルフィルムの厚み方向の屈折率が1.4930以上1.4995以下
(5)縦方向および横方向のフィルム1m長を各々5mm毎に測定した各厚みTn(n=1〜200)(単位:μm) 200点を測定し、この時の最大厚みをTmax,最小厚みをTmin,平均厚みをTave とするときの下記の式で求める厚みムラが、縦方向および横方向の各々で16%以下
厚みムラ={(Tmax−Tmin)/Tave}×100 (%)
(6)ポリエステルフィルムの温度285℃における溶融比抵抗値が1.0×10Ω・cm以下
2. ポリエステルフィルム中に無機粒子が、0.01重量%以上1重量%以下含有されていることを特徴とする上記1.に記載のポリエステルフィルム。
本発明によるペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いたポリエステルフィルムは以下の効果を奏する。
1.イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有し、溶融粘度が高く、固相重合を施し、高結晶化核剤を添加することの多いペットボトルをリサイクルすることで得たリサイクル樹脂を用いても、押出の温度を最適化することで樹脂の押出が安定し、またフィルム中の樹脂、添加剤および粒子などが均一化するために、フィルムの厚みムラが小さくなり、ラミネートのバラツキがなくなりラミネート強度が向上する。
2.高温で高倍率の縦延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、フィルムの厚みムラが小さくなる。
3.高温での横延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、フィルムの厚みムラが小さくなる。
4.高温の熱処理を行うことで、フィルムの縦横の熱収縮率を低くできる。
5.高温、高倍率の延伸と高温の熱処理でフィルムの厚み方向の屈折率が適切になり、高いラミネート強度が実現する。
6.熱処理後の冷却を徐冷とすることで、酸成分として、イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有するフィルムの厚みムラが小さくなる。
7.フィルムの溶融比抵抗値を小さくすることで生産性や厚みムラを良好にできる。
また、ラミネート強度がフィルム内部でばらつくことも無くなる。
本発明における製膜設備の押出機内部の一態様を示す模式図である。
二軸延伸方法としては特に限定されるものではなく、チューブラー法や同時二軸延伸法などが採用できる。逐次二軸延伸方式が好ましい。
フィルムを測定して得られるフィルムを構成している樹脂の極限粘度の下限は0.64dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.65dl/gである。0.64dl/g未満であると、ペットボトルからなるリサイクル樹脂は極限粘度が0.70を超えるものが多く、それを用いてフィルムを作製する際に粘度を低下させると厚みムラ不良となることがあるので好ましくない。また、フィルムが着色する場合があるため好ましくない。上限は0.80dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.70dl/gである。0.80dl/gを超えると押出機からの樹脂が吐出しにくくなり生産性が低下することがあるので好ましくない。
厚みの下限は好ましくは8μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは12μmである。8μm未満であるとフィルムとしての強度が不足となることがあるので好ましくない。上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは30μmである。200μmを超えると厚くなりすぎて加工が困難となることがある。
縦方向(MDと記載することがある)及び横方向(TDと記載することがある)の熱収縮率の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.3%である。0.1%未満であると改善の効果が飽和するほか、力学的に脆くなってしまうことがあるので好ましくない。上限は好ましくは1.5%であり、より好ましくは1.2%である。1.5%を超えると印刷などの加工時の寸法変化により、ピッチズレなどが起こることがあるので好ましくない。また、1.5%を超えると印刷などの加工時の寸法変化により、幅方向での縮みなどが起こることがあるため好ましくない。
厚み方向の屈折率の下限は好ましくは1.493 であり、より好ましくは1.494である。1.493未満であると配向が高すぎるため、ラミネート強度が得られない場合がある。上限は好ましくは1.4995 であり、より好ましくは1.498である。1.4995を超えるとフィルムの分子配向が十分でなく、力学的特性が不足することがあるので好ましくない。
縦および横方向のフィルム1m長を5mm毎に測定した各厚みTn(n=1〜200)(単位:μm)まで200点測定し、この時の最大厚みをTmax,最小厚みをTmin,平均厚みをTave とする
ときの下記の式で求める厚みムラが、縦および横方向の各々で16%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。16%を超えると、フィルムロールとしたときに巻きズレが生じたり、ラミネートした部分をはく離したときにはく離面の外観不良が発生し、商品価値が下がることがあるので、あまり好ましくない。
厚みムラ={(Tmax−Tmin)/Tave}×100 (%)
ラミネート強度の下限は好ましくは4.0N/15mmであり、より好ましくは4.5N/15mmであり、さらに好ましくは5N/15mmである。4.0N/15mm未満であると袋とした場合に、ラミネート部がはく離しやすくなることがあるので好ましくない。上限は好ましくは20N/15mmであり、より好ましくは15N/15mmであり、さらに好ましくは10N/15mmである。20N/15mmを超えると実質的にはく離時にフィルムが破壊される場合があり、あまり好ましくない。
ラミネート後の外観評価は、ラミネートはく離後のサンプルを目視で行う。評価は、以下のとおりである。○レベルとは、はく離後の面の接着剤の微小な抜けが無いこと、△レベルとは、微小な抜けが全はく離面積の10%以下であること、×レベルとは、微小な抜けが全はく離面積の10%を超えることである。好ましくは△であり、より好ましくは○である。×では、ラミネート部のはく離後の外観不良で商品価値が下がるため好ましくない。なお、ラミネート強度が4N/15mm未満の場合は、本発明における基本特性を満たさないため、例え○レベルであったとしても、好ましくないフィルムである。
原料としては酸成分としてイソフタル酸成分を含有するペットボトルからなるリサイクルポリエステル樹脂を使用することが好ましい。ペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル外観を良好にするため、結晶性の制御が行われており、その結果、10モル%以下のイソフタル酸成分を含むポリエステルが用いられていることがある。リサイクル樹脂を活用するためには、イソフタル酸成分を含む材料を使用することになる場合がある。
フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるテレフタル酸成分の量の下限は好ましくは95モル%であり、より好ましくは96モル%であり、さらに好ましくは96.5モル%であり、特に好ましくは97モル%である。95モル%未満であると結晶性が低下するため、熱収縮率が高くなることがあり、あまり好ましくない。また、フィルム中に含まれるポリエステル樹脂のテレフタル酸成分の量の上限は好ましくは99.5モル%であり、より好ましくは99モル%である。ペットボトルからなるリサイクルポリエステル樹脂は、イソフタル酸に代表されるテレフタル酸以外のジカルボン酸成分を有するものが多いため、フィルム中のポリエステル樹脂を構成するテレフタル酸成分が99.5モル%を超えることは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。
フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の下限は好ましくは0.5モル%であり、より好ましくは0.7モル%であり、さらに好ましくは0.9モル%であり、特に好ましくは1モル%である。ペットボトルからなるリサイクルポリエステル樹脂は、イソフタル酸成分を多く含むものがあるため、フィルム中のポリエステル樹脂を構成するイソフタル酸成分が0.5モル%未満であることは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の上限は好ましくは5モル%であり、より好ましくは4モル%であり、さらに好ましくは3.5モル%であり、特に好ましくは3モル%である。5モル%を超えると結晶性が低下するため、熱収縮率が高くなることがあり、あまり好ましくない。また、イソフタル酸成分の含有率を上記範囲とすることでラミネート強度、収縮率、厚みムラに優れたフィルムの作成が容易となり好ましい。
ペットボトルからなるリサイクル樹脂の極限粘度の上限は好ましくは0.9dl/gであり、より好ましくは0.8dl/gでり、さらに好ましくは0.77dl/gであり、特に好ましくは0.75dl/gである。る。0.9dl/gを超えると押出機からの樹脂が吐出しにくくなって生産性が低下することがあり、あまり好ましくない。
ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは65重量%であり、さらに好ましくは75重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%である。95重量%を超えるとフィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を十分に添加することができない場合があり、あまり好ましくない。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることもできる。
滑剤種としてはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑材のほか、有機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましい。これらにより透明性と滑り性を発現することができる。
フィルム中の滑剤含有率の下限は好ましくは0.01重量%であり、より好ましくは0.015重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%である。0.01重量%未満であると滑り性が低下することがある。上限は好ましくは1重量%であり、より好ましくは0.2重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%である。1重量%を超えると透明性が低下することがあり、あまり好ましくない。
本発明において、ポリエステルフィルムの温度285℃における溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であることが好ましい。そのために使用されるポリエステル系樹脂組成物は、後記測定法による285℃での溶融比抵抗値が1.0×10Ω・cm以下、好ましくは0.5×10Ω・cm、さらに好ましくは0.25×10Ω・cmになるよう調整することが好ましい。285℃での溶融比抵抗値が1.0×10Ω・cmを超えるポリエステル系樹脂だけを用いて前述した異常放電を避ける生産条件で、冷却ドラムへ密着性させようとした場合、溶融樹脂シートと冷却ドラムの間で局所的に空気が噛み込んだ状態で冷却されるため、シート表面にピンナーバブルを生じ、好ましくない。また、ピンナーバブルの発生を抑制するためには、吐出された溶融樹脂が冷却ドラムで十分密着できる程度まで生産速度を低下させる必要が生じるので、生産コストが増大してしまう。下限値は特に既定されないが色目などを考慮すると、0.01×10Ω・cm以上が好ましい。
本発明において使用されるポリエステル系樹脂において、溶融比抵抗値を上述の範囲に制御するには、該樹脂中にアルカリ土類金属化合物とリン化合物を含有させればよい。含有させる方法としてはペットボトルから再生されたポリエステルに対し、アルカリ土類金属化合物とリン化合物を含有させたポリエステル系樹脂を混合するなどで構わない。アルカリ土類金属化合物中のアルカリ土類金属原子(M2)は、樹脂の溶融比抵抗値を低下させる作用を有する。アルカリ土類金属化合物は、通常、多価カルボン酸類と多価アルコール類からエステルを生成する際の触媒として使用されるが、触媒としての必要量以上に積極添加することで、溶融比抵抗値低下作用を発揮させることができる。具体的には、アルカリ土類金属化合物の含有量を、M2基準で好ましくは20ppm(質量基準、以下同じ)以上、さらに好ましくは22ppm以上、特に好ましくは24ppm以上とすることが推奨される。他方、アルカリ土類金属化合物の含有量は、M2基準で400ppm以下、好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下とすることが推奨され、これを超えて使用しても、その量に見合っただけの効果は得られず、むしろ、この化合物に起因する異物の生成や着色などの弊害が大きくなるのであまり好ましくない。
好ましいアルカリ土類金属化合物の具体例としては、アルカリ土類金属の水酸化物、脂肪族ジカルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩など、好ましくは酢酸塩)、芳香族次カルボン酸塩、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩など)などが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。より具体的には、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムなどが挙げられ、中でも、酢酸マグネシウムが好ましく使用される。上記アルカリ土類金属化合物は、単独でまたは2種以上組合せて使用できる。昨今ではマグネシウムをアルカリ土類金属に含めない定義もあるようではあるが、本発明においては、旧来のマグネシウムを含む定義のアルカリ土類金属を意図している。言い換えれば、周期表IIa族の元素を意図している。
リン化合物は、それ自体フィルムの溶融比抵抗値を低下させる作用は有しないが、アルカリ土類金属化合物、および後述するアルカリ金属化合物と組み合わせることにより、溶融比抵抗値の低下に寄与し得る。その理由は明らかではないが、リン化合物を含有させることにより、異物の生成を抑制し、電荷担体の量を増大させることができるのではないかと考えられる。リン化合物の含有量は、リン原子(P)基準で好ましくは10ppm(質量基準、以下同じ)以上、さらに好ましくは11ppm以上、特に好ましくは12ppm以上とすることが推奨される。リン化合物の含有量が上記範囲を下回ると、溶融比抵抗値の低下効果が十分でなく、さらに、異物生成量が増加する傾向にあるので、あまり好ましくない。
他方、リン化合物の含有量は、P基準で好ましくは600ppm以下、さらに好ましくは550ppm以下、特に好ましくは500ppm以下とすることが推奨され、これを超えて使用しても、その量に見合うだけの効果は得られず、溶融比抵抗値の低下効果が飽和する。さらに、ジエチレングリコールの生成を促進し、フィルムの物性低下を引き起こすので、あまり好ましくない。
上記のリン化合物としては、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、およびそのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸及びそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)が挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステルなど;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステルなどのリン酸モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステルなどのリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステルなどのリン酸トリC1-6アルキルエステルなど)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸のモノ、ジ、またはトリC6-9アリールエステルなど)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステルなど;例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸のモノ、ジ、またはトリC1-6アルキルエステルなど)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などのC1-6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチルなどのC1-6アルキルホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステルなど)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニルなどのC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC6-9アリールエステルなど)などが例示できる。特に好ましいリン化合物には、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチルなど)が含まれる。これらリン化合物は単独で、または2種以上組合せて使用できる。
さらに、アルカリ土類金属化合物とリン化合物は、アルカリ土類金属原子(M2)とリン原子(P)の質量比(M2/P)で1.2以上5.0以下でフィルム中に含有させることが好ましい。M2/P値が1.2以下では、溶融比抵抗値の低下効果が著しく減少する。より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上である。他方、M2/P値が5.0を超えると、溶融比抵抗値の低下効果よりも、異物生成が促進されたり、フィルムが着色するなどの弊害が大きくなり、好ましくない。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
このようなポリエステル系樹脂を押出機内で溶融状態にし、異物を除去する為、フィルターでろ過した後、口金から溶融樹脂をシート状に押し出し、静電密着法で冷却ドラムに密着、冷却固化することで、ポリエステル系未延伸樹脂シートを成形する。その後、縦方向及び横方向に延伸する。横方向に延伸する時、クリップでポリエステル系樹脂シートの両端部を把持し、横延伸させる為、ポリエステル系未延伸シートの両端部をクリップで把持できる程の厚みにすることが好ましい。また、端部の一部に薄い部分が存在する場合、該部分に延伸時の応力が集中し、横延伸時破れが生じる場合があり、それを防止するようなポリエステル系未延伸シートの横方向の厚み分布にすることが好ましい。この横厚み分布調整方法は、口金のリップ口の間隔を調整することで可能である。但し、口金から溶融樹脂シートが押出され、静電密着法で冷却ドラム上に密着され、冷却固化されて、ポリエステル系未延伸シートに成形されるまでに、ポリエステル系樹脂シートの幅縮みが発生し、両端部の厚みが大きくなることを考慮しての調整を行うことが好ましい。好ましいポリエステル系未延伸樹脂シートの端部の横厚み分布は、横延伸する時に延伸されない部分(延伸残)の厚みを、該シートの端部方向程、大きくすることである。
本発明において使用される静電密着方法は、ワイヤー状電極、もしくはバンド状電極による静電荷付与方法によるものが好ましい。針状電極は、電極表面から溶融ポリエステル系樹脂に向かって、発生する電気の指向性が強く、異常放電が発生し易く、そのことによるシートの破れ、冷却ドラムの傷の発生を防止する製造条件に制御することが困難であるので、好ましくない。
本発明において使用されるワイヤー状電極の直径Φは、0.05〜1.0mmが好ましく、特に0.08〜0.5mmが好ましい。ワイヤー状電極の直径Φが0.05mmよりも小さいと、共振や機械振動による電極ブレを防止する為にワイヤー状電極に掛けている張力に耐えられずワイヤーが切れ、好ましくない。また、直径Φが1.0mmが大きいと、静電荷を溶融樹脂シートに効率良く、均一に加えるには、過大な電圧電流が必要となり、異常放電が極めて発生し易くなる為、好ましくない。
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下のような製造方法が推奨される。押出機内の樹脂を溶融、押出するための温度設定が重要になる。基本的な考え方は、(1)ペットボトルに使用されるポリエステル樹脂はイソフタル酸成分を含有することから、できるだけ低い温度で押出することで劣化を抑えながら、(2)極限粘度や微細な高結晶性部分を十分かつ均一に溶融するために、高温や高圧力などで溶融する部分を有することにある。イソフタル酸成分の含有は、ポリエステルの立体規則性の低下となり、融点の低下につながる。そのため、高い温度での押出しでは、熱による溶融粘度の大幅な低下や劣化となり、機械的強度低下や劣化異物の増大となる。また、押出し温度を下げるだけでは、十分な溶融混練ができず、厚みムラの増大やフィッシュアイなどの異物が問題となる場合がある。以上のとこから、推奨する製造方法としては、例えば、押出機を2台タンデムで使用することやフィルタ部での圧力を上げる方法、スクリュー構成の一部に剪断力の強いスクリューを用いる方法などが挙げられる。以下に、一台の押出機を使用し、温度制御する例を挙げる。
図1は本発明における製膜設備の押出機内部の一態様を示している。バレル3の間にフライト2をもつスクリュー1において、スクリュー根元から先端までに供給部4、圧縮部5、計量部6がある。圧縮部5はスクリュー1とバレル3の間が狭くなっていく領域であり、本発明では、供給部4と計量部6の設定温度はできるだけ低くし、圧縮部5の設定温度を高くすることで、せん断の高い圧縮部5で十分に溶融混練し、供給部4と計量部6では熱劣化を防ぐ工夫をすることが好ましい。
押出機内の樹脂溶融部の設定温度(押出機内のスクリューの圧縮部の最高の設定温度を除く)の下限は好ましくは270℃であり、上限は好ましくは290℃である。270℃未満では押出が困難であり、290℃を超えると樹脂の劣化が起こることがあり、あまり好ましくない。
押出機内のスクリューの圧縮部の最高の設定温度の下限は好ましくは295℃である。ペットボトルに使用されるポリエステル樹脂は、透明性の点から高融点の結晶(260℃〜290℃)が存在していることが多い。また、添加剤や結晶化核剤などが添加されており、樹脂材料内の微細な溶融挙動にバラツキがみられる。295℃未満であるとそれらを十分に溶融させることが困難となり、あまり好ましくない。押出機内のスクリューの圧縮部の最高の設定温度の上限は好ましくは310℃である。310℃を超えると樹脂の劣化が起こる場合があり、あまり好ましくない。
押出機内のスクリューの圧縮部の最高の設定温度の領域を樹脂が通過する時間の下限は好ましくは10秒であり、より好ましくは15秒である。10秒未満であるとペットボトルに使用されるポリエステル樹脂を十分に溶融させることができず、あまり好ましくない。上限は好ましくは60秒、より好ましくは50秒である。60秒を超えると樹脂の劣化が起こり易くなり、あまり好ましくない。押出機の設定をこのような範囲にすることで、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を多く用いながら、厚みムラやフィッシュアイなどの異物、着色の少ないフィルムを得ることができる。
このようにして溶融された樹脂は、冷却ロール上にシート状に押し出された後、二軸延伸される。延伸方法としては同時二軸延伸方式でも構わないが、特に逐次二軸延伸方式が好ましい。これらにより生産性と本発明に求める品質とを満たすことが容易になる。
本発明においてフィルムの延伸方法は特に限定されないが、以下のような点が重要となる。極限粘度が0.64dl/g以上でイソフタル酸成分を含有する樹脂を延伸するには、縦方向(MD)延伸と横方向(TD)延伸の倍率と温度が重要である。MD延伸倍率や温度が適切でないと、均一に延伸の力がかからず、分子の配向が不十分となり、厚みムラの増大や力学特性が不十分となる場合がある。また、次のTD延伸工程でフィルムの破断が発生したり、極端な厚みムラの増大が発生したりする場合がある。TD延伸倍率や温度が適切でないと、均一に延伸されず、縦横の配向バランスが悪く、力学特性が不十分となる場合がある。また、厚みムラが大きい状態や分子鎖の配向性が不十分な状態で次の熱固定の工程に進んだ場合、均一に緩和ができず、厚みムラの更なる増大や力学特性が不十分となる問題が起こる。そのため、基本的には、MD延伸では以下に述べる温度調節を行って段階的に延伸を行い、TD延伸では配向バランスが極端に悪くならないように適切な温度で延伸することが推奨される。以下の態様に限定されるものではないが、一例を挙げて説明する。
縦方向(MD)延伸方法としてはロール延伸方式、IR加熱方式が好ましい。
MD延伸温度の下限は好ましくは100℃であり、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは120℃である。100℃未満であると極限粘度が0.64dl/g以上のポリエステル樹脂を延伸し、縦方向に分子配向させても、次の横延伸工程でフィルムの破断が発生したり、極端な厚み不良が発生したりして好ましくない。上限は好ましくは140℃であり、より好ましくは135℃であり、さらに好ましくは130℃である。140℃を超えると分子鎖の配向性が不十分となり、力学特性が不十分となる場合があるので、あまり好ましくない。
MD延伸倍率の下限は好ましくは2.5倍であり、より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは4倍である。2.5倍未満であると極限粘度が0.64dl/g以上のポリエステル樹脂を延伸し、縦方向に分子配向させても、次の横延伸工程でフィルムの破断が発生したり、極端な厚み不良が発生する場合があり、あまり好ましくない。上限は好ましくは5倍であり、より好ましくは4.8倍であり、さらに好ましくは4.5倍である。5倍を超えると力学強度や厚みムラ改善の効果が飽和することがあり、あまりその意義がない。
MD延伸方法としては上記の一段延伸でも構わないが、延伸を二段以上に分けることがより好ましい。二段以上に分けることで、極限粘度が高く、イソフタル酸を含有するリサイクル樹脂からなるポリエステル樹脂を良好に延伸することが可能となり、厚みムラやラミネート強度、力学的特性などが良好となる。
好ましい一段目のMD延伸温度の下限は110℃であり、より好ましくは115℃である。110℃未満であると熱不足となり、十分に縦延伸できず、平面性が乏しくなって好ましくない。好ましい一段目のMD延伸温度の上限は125℃であり、より好ましくは120℃である。125℃を超えると分子鎖の配向性が不十分となり、力学特性が低下する場合があるのであまり好ましくない。
好ましい一段目のMD延伸倍率の下限は1.1倍であり、より好ましくは1.3倍である。1.1倍以上であると一段目の弱延伸とすることで、最終的に極限粘度が0.64dl/g以上のポリエステル樹脂を十分に縦延伸し、生産性を上げることができる。好ましい一段目のMD延伸倍率の上限は2倍であり、より好ましくは1.6倍である。2倍を超えると縦方向の分子鎖の配向性が高くなりすぎるため、二段目以降の延伸がしづらくなることや厚みムラが不良のフィルムとなることがあり、あまり好ましくない。
好ましい二段目(または最終段)のMD延伸温度の下限は好ましくは110℃であり、より好ましくは115℃である。110℃以上であると極限粘度が0.64以上のポリエステル樹脂を十分に縦延伸し、次工程での横延伸が可能となり、縦横方向の厚みムラが良好となる。となることがある。上限は好ましくは130℃であり、より好ましくは125℃である。130℃を超えると結晶化が促進され、横延伸が困難になったり、厚みムラが大きくなることがあり、あまり好ましくない。
好ましい二段目(または最終段)のMD延伸倍率の下限は好ましくは2.1倍であり、より好ましくは2.5倍である。2.1倍未満であると極限粘度が0.64以上のポリエステル樹脂を延伸し、縦方向に分子配向させても、次の横延伸工程でフィルムの破断が発生したり、極端な厚み不良が発生する場合があり、あまり好ましくない。上限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.1倍である。3.5倍を越えると縦配向が高くなりすぎるため、二段目以降の延伸ができなくなったり、厚みムラが大きいフィルムとなることがあり、あまり好ましくない。
TD延伸温度の下限は好ましくは110℃であり、より好ましくは120℃であり、さらに好ましくは125℃である。110℃未満であると横方向への延伸応力が高くなり、フィルムの破断が発生したり、厚みムラが極端に大きくなる場合があり、あまり好ましくない。上限は好ましくは150℃であり、より好ましくは145℃であり、さらに好ましくは140℃である。150℃を超えると分子鎖の配向性が高まらないため力学特性が低下することがあり、あまり好ましくない。
横方向(TD)延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.9倍である。3.5倍未満であると、分子配向が弱く、力学強度が不十分となる場合があり、あまり好ましくない。また、縦方向の分子鎖の配向性が大きく、縦横のバランスが悪くなることで、厚みムラが大きくなり、あまり好ましくない。上限は好ましくは5.5倍であり、より好ましくは4.5倍である。5.5倍を超えると破断することがあり、あまり好ましくない。
本発明のフィルムを得るためには、TD延伸終了後引き続きテンター内で行われる熱固定および、その後フィルムを室温まで低下するときの条件を適切に設定することが望ましい。イソフタル酸を含有するペットボトルからなるリサイクル樹脂を含むポリエステルフィルムは通常のイソフタル酸を含まないポリエチレンテレフタレートフィルムに比べると結晶性が低く、また極微小に溶融しやすくなっており、また力学的強度も低い。そのため延伸終了後に急激に緊張下で高温にさらされる場合やまた高温の熱固定終了後に急激に緊張下で冷却すると、避けがたいフィルムの幅方向での温度差により幅方向での張力バランスが乱れ、厚みムラや力学的特性が不良となる。一方、熱固定温度を下げてこの現象に対応しようとすると十分なラミネート強度が得られない場合がある。本発明においては、延伸終了後に、やや低温の熱固定1と十分高温な熱固定2(必要に応じて熱固定3)、その後に徐冷工程を設けて室温まで下げることが推奨される。ただし、この方法に限定されるものではなく、例えばテンター内での熱風の速度や各ゾーンの温度に合わせフィルム張力を制御する方法、延伸終了後に炉長が十分にある比較的温度が低い熱処理をする方法および熱固定終了後に加熱ロールで緩和させる方法なども挙げられる。
一例として、テンターの温度制御による方法を以下に示す。
熱固定1の温度の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは170℃である。160℃未満であると最終的に熱収縮率が大きくなり、加工時のズレや縮みが起こるとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは215℃であり、より好ましくは210℃である。215℃を超えると急激に高温がフィルムにかかることになり、厚みムラが大きくなったり、破断したりすることがあるので、あまり好ましくない。
熱固定1の時間の下限は好ましくは0.5秒であり、より好ましくは2秒である。0.5秒未満であるとフィルム温度上昇不足となることがある。上限は好ましくは10秒であり、より好ましくは8秒である。10秒を超えると生産性が低下する場合があり、あまり好ましくない。
熱固定2の温度の下限は好ましくは220℃であり、より好ましくは227℃である。220℃未満であると熱収縮率が大きくなり、加工時のズレや縮みとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは240℃であり、より好ましくは237℃である。240℃を超えるとフィルムが融けてしまう場合があるほか、融けない場合でも脆くなるとなることがあり、あまり好ましくない。
熱固定2の時間の下限は好ましくは0.5秒であり、より好ましくは3秒である。0.5秒未満であると熱固定時に破断が起こりやすくなるとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは10秒であり、より好ましくは8秒である。10秒を超えると、たるみなどが生じて厚みムラが発生することがあり、あまり好ましくない。
必要に応じて、熱固定3を設ける場合の温度の下限は好ましくは205℃であり、より好ましくは220℃である。205℃未満であると熱収縮率が大きくなり、加工時のズレや縮みとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは240℃であり、より好ましくは237℃である。240℃を超えるとフィルムが融けてしまうほか、融けない場合でも脆くなるとなることがあり、あまり好ましくない。
必要に応じて、熱固定3を設ける場合の時間の下限は好ましくは0.5秒であり、より好ましくは3秒である。0.5秒未満であると熱固定時に破断が起こりやすくなるとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは10秒であり、より好ましくは8秒である。10秒を超えるとたるみなどが生じて厚みムラが発生することがあり、あまり好ましくない。
TDリラックスは、熱固定の任意の箇所で実施できる。下限は好ましくは0.5%であり、より好ましくは3%である。0.5%未満であると特に横方向の熱収縮率が大きくなり、加工時のズレや縮みとなることがあり、あまり好ましくない。上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。10%を超えるとたるみなどが生じて厚みムラが発生することがあり、あまり好ましくない。
TD熱固定後の徐冷温度の下限は好ましくは90℃であり、より好ましくは100℃である。90℃未満であるとイソフタル酸を含有するフィルムであることから、急激な温度変化による収縮などにより厚みムラが大きくなったり、破断が発することがあり、あまり好ましくない。徐冷温度の上限は好ましくは150℃であり、より好ましくは140℃である。150℃を超えると十分な冷却効果が得られないことがあり、あまり好ましくない。
熱固定後の徐冷時間の下限は好ましくは2秒であり、より好ましくは4秒である。2秒未満であると十分な徐冷効果が得られないことがあるので、あまり好ましくない。上限は好ましくは20秒であり、より好ましくは15秒である。20秒を超えると生産性の点で不利になり易く、あまり好ましくない。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)溶融比抵抗値
温度285℃で溶融した試料(チップまたはフィルム)中に一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加する。その際の電流を測定し、下式に基づいて溶融比抵抗値Si(Ω・cm)を算出する。
Si=(A/I)×(V/io)
ここで、A:電極の面積(cm2)、I:電極間距離(cm)、V:電圧(V)、io:電流(A)である。
(2)原料ポリエステル及びフィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸成分の含有率
クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI−200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
(3)原料樹脂およびフィルムを構成している樹脂の極限粘度(IV)
試料を130℃で一昼夜真空乾燥後、粉砕又は切断し、その80mgを精秤して、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(体積比)の混合溶液に80℃で30分間、加熱溶解した。同じ混合溶液で20mlにした後、30℃で測定した(単位:dl/g)。
(4)厚み
PEACOCKダイアルゲージ(尾崎製作所製)で測定した。
(5)縦、横方向の熱収縮率
幅10mmにサンプリングして、200mmの間隔に標線をマークして、標線の間隔を測定(L 0)した後、そのフィルムを紙の間に挟み、150℃の温度に制御した熱風オーブンに入れ、30分処理した後、取り出した後、標線の間隔を測定(L)して、次式から熱収縮率を求めた。縦方向と横方向の双方向についてそれぞれ試料を採取して実施する。実施する。他は、JIS−C−2318に準拠して行った。

熱収縮率(%)={(L 0−L)/L 0}×100
(6)厚み方向の屈折率
JIS K7105に準拠して、アッベ屈折計NAR-1T(株式会社アタゴ製)を用いて、厚み方向の屈折率(Nz)を求めた。光源は、ナトリウムD線とし、屈折率1.74のテストピースを使用し、中間液としてヨウ化メチレンを使用した。
(7)ラミネート強度
製膜した二軸延伸ポリエステルフィルムと厚さ40μmのポリエチレンフィルム(東洋紡績株式会社製「L4102」)をウレタン系の
接着剤(東洋モートン社製、TM569、CAT10L、酢酸エチルを33.6:4.0:62.4(重量比))を用いてドライラミネート法により貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、ラミネート強度評価用積層体を得た。尚、貼り合わせ条件は、ライン速度20m/min、ドライヤー温度80℃、乾燥後の塗布量3g/m2となるように実施した。積層体を、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、東洋ボールドウイン社製の「テンシロンUMT−II−500型」を用いて、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、ポリエステルフィルムの未処理面とポリオレフィン樹脂層との接合面での剥離強度(N/15mm)を測定した。なお、引張速度は20cm/分、剥離角度は180度とした。
(8)ラミネートはく離後の外観評価
(7)の評価後のサンプルを目視する。○レベルとは、はく離後の面の接着剤の微小な抜けが無いこと、△レベルとは、微小な抜けが全はく離面積の10%以下であること、×レベルは10%を超えること、×レベルとは、微小な抜けが全はく離面積の10%を超えることである。
(8)厚みムラ
PEACOCKダイアルゲージ(尾崎製作所製)を用いて、縦および横方向のフィルム1m長を5mm毎に測定した厚みTn(n=1〜200)(μm)を200点測定し、この時の最大厚みをTmax,最小厚みをTmin,平均厚みをTave として、下記の式(1)より求めた。
厚みムラ={(Tmax−Tmin)/Tave}×100 (%)・・・ (1)
(10)ピンナーバブル評価
実施例、比較例で得られるフィルムを西田工業株式会社製偏光板を使用して、目視で観察し、フィルム表面に発生するピンナーバブルを下記基準に従って評価した。○のものを合格とした。
○:ピンナーバブルの発生なし。
×:ピンナーバブルの発生が認められる。
(実施例1)
(ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の調整)
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、ポリエステル再生原料を得た。得られた樹脂の構成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.70dl/gであった。これをポリエステルAとする。
(静電密着性を向上させたポリエステル樹脂の調整)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.025質量部]及びトリエチルアミン[0.16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩[0.34質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.042質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.036質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温した後、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターで濾過処理を行い、得られた重縮合反応生成物をペレット化した。これをポリエステルBとする。
(フィルムの作製)
ポリエステルCとしてテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂に平均粒子径1.5μmの不定形シリカを0.3%含有するマスターバッチとしたものを作製した。各原料は、33Paの減圧下、125℃で8時間乾燥した。それらをA/B/C=70/20/10(重量比)となるよう混合したものを、一軸押出機に投入した。押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から30秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。
T−ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き118℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.41倍延伸し(MD1)、さらに128℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.92倍延伸(MD2)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、121℃で予熱した後に、131℃で4.3倍横延伸した。引き続き熱固定として、180℃、リラックスなし(0%)で2.5秒行った(TS1)後に引き続き231℃、リラックス5%、3.0秒行った(TS2)後に引き続き222℃、リラックスなしで2.5秒行った(TS3)。引き続き、同じテンター内で、120℃で6秒間の冷却を行い、最終的にワインダーで巻き取ることで厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例2)
ポリエステル原料を A/B/C=80/10/10(重量比)となるよう混合したものとした以外は、実施例1と同様の方法にて厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
押出機のスクリューの圧縮部の開始点から45秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、最終的に厚さ12μmのフィルムとした以外は、実施例2と同様の方法において二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4、5)
(ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の調整)
実施例1とは異なる飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、ポリエステル再生原料を得た。得られた樹脂の構成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=95.0/5.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.70dl/gであった。これをポリエステルDとする。
(フィルムの作成)
ポリエステル原料をD/B/C=60/30/10(実施例4)、=80/10/10(実施例5)とした以外は、実施例1と同様の方法にて最終的に厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
横延伸終了後のフィルムを引き続き熱固定として、231℃、リラックス5%、3.0秒行った(TS2)後に引き続き222℃、リラックスなしで2.5秒行った(TS3)とし、TS1および冷却工程を設けなかった以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例2)
押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイの全ての領域において樹脂の温度が280℃となるように温度設定した以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例3)
通常の重合方法にて、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=90.0/10.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は 0.70dl/gを作成した。これをポリエステルEとする。ポリエステル原料として、E/B/C=55/35/10(重量比)した以外は、実施例2と同様の方法において厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4)
押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から90秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。フィルムの製膜条件として、ロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で4.1倍縦延伸した後に、130℃で4.2倍横延伸した。その後に熱固定として、229℃、リラックス6.0%で2.6秒間(TS2)および200℃、リラックスなしで2.5秒間処理し、TS1および冷却工程を設けなかった以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例5)
押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から90秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。T−ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き110℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.2倍延伸し(MD1)、さらに120℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.8倍延伸(MD2)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、100℃で予熱した後に、105℃で3.9倍横延伸した。その後に熱固定として、228℃、リラックスなしで3.0秒間(TS2)および228℃、リラックス5.0%で2.5秒間処理し、TS1および冷却工程を設けなかった以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例6)
通常の重合方法にて、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は 0.65dl/gを作成した。これをポリエステルFとする。ポリエステル原料として、F/B/C=80/10/10(重量比)し、押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイの全ての領域において樹脂の温度が310℃となるように温度設定した。T−ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き126℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.6倍延伸し(MD1)、さらに126℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.3倍延伸し(MD2)、さらに118℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.3倍延伸(MD3)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、110℃で予熱した後に、120℃で4.6倍横延伸した。その後に熱固定として、205℃、リラックスなしで5.0秒間(TS2)処理し、TS1、TS3および冷却工程を設けなかった以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例7)
押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から70秒間は樹脂の温度が300℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。T−ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き107℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に3.9倍延伸し(MD1)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、105℃および115℃で各2秒間予熱した後に、120℃、130℃、145℃および155℃の4つの延伸ゾーンで各2秒間で最終的に4.1倍横延伸した。引き続き熱固定として、220℃、リラックスなし(0%)で2.0秒行った(TS1)後に引き続き235℃、リラックスなし、2.0秒行った(TS2)後に引き続き195℃、リラックス2.0%、2.5秒行った(TS3)。冷却工程は設けずに、最終的にワインダーで巻き取ることでそれ以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(比較例8)
通常の重合方法にて、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.62dl/gを作成した。これをポリエステルGとする。ポリエステル原料をG/B/C=80/10/10(重量比)とし、 押出機から、メルトライン、フィルタおよびT−ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から30秒間は樹脂の温度が300℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。最終的に厚みは、31μmとした以外は、比較例7と同様の方法において、二軸延伸PETフィルムを得た。
(比較例9)
ポリエステル原料をG/C=90/10(重量比)とした以外は、実施例2と同様の方法において、厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
実施例1〜5で得られた二軸延伸PETフィルムは、フィルムの溶融比抵抗値が小さく、厚みムラが良好であり、ラミネート強度に優れ、ラミネート後の外観も良好であった。
一方、比較例1はTS1および冷却工程がないため、急激な温度変化による収縮などにより厚みムラが大きかった。比較例2は、スクリューの圧縮部の温度が低いため、十分な溶融ができず、厚みムラが大きかった。比較例3は、イソフタル酸成分の含有率が高く、結晶性が低いため、樹脂が柔らかく、延伸で十分な力がかからず厚みムラが大きかった。比較例4は特許文献1の内容を追試した実験であり、TS3温度が低いために厚み方向の屈折率が低く、ラミネート強度が不十分であった。比較例5は特許文献2の内容を追試した実験であり、TD延伸温度が低く、熱固定後の冷却工程がないため、急激な冷却により厚みムラが大きかった。比較例6は特許文献3の内容を追試した実験であり、MD延伸を3段で実施しているが、押出し温度が310℃と高く、フィルムの極限粘度が低くなり、熱固定での緩和が不十分で熱収縮率が高かった。比較例7は特許文献4の内容を追試した実験であり、熱固定後の冷却工程がないため、急激な冷却により厚みムラが悪かった。比較例8はペットボトルからなるリサイクル原料を用いていないため、TS3温度を低くすることで徐冷し、厚みムラは小さかったが、TS3の温度不足により厚み方向の屈折率が低く、ラミネート強度が不十分であった。また、比較例9においては、静電密着性を向上させた樹脂を用いない場合、ピンナーバブルの発生が見られ、外観が良いフィルムを得ることが出来なかった。
本発明によって、高品位なペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を含むポリエステルフィルムの提供が可能となり、更に詳しくは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を含む、低熱収縮性、高ラミネート強度および厚みムラの小さいポリエステルフィルムの提供を可能とした。また、生産性をも向上させることが可能となった。
1・・・スクリュー
2・・・フライト
3・・・バレル
4・・・供給部
5・・・圧縮部
6・・・計量部

Claims (2)

  1. ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムであって、以下の要件を満足することを特徴とするポリエステルフィルム。
    (1)ポリエステルフィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が0.5モル%以上5.0モル%以下
    (2)ポリエステルフィルムを構成している樹脂の極限粘度が0.64以上0.80未満、(3)縦方向及び横方向の150℃熱収縮率が0.1%以上1.5%以下
    (4)ポリエステルフィルムの厚み方向の屈折率が1.4930以上1.4995以下
    (5)縦方向および横方向のフィルム1m長を各々5mm毎に測定した各厚みTn(n=1〜200)(単位:μm) 200点を測定し、この時の最大厚みをTmax,最小厚みをTmin,平均厚みをTave とするときの下記の式で求める厚みムラが、縦方向および横方向の各々で16%以下
    厚みムラ={(Tmax−Tmin)/Tave}×100 (%)
    (6)ポリエステルフィルムの温度285℃における溶融比抵抗値が1.0×10Ω・cm以下
  2. ポリエステルフィルム中に無機粒子が、0.01重量%以上1重量%以下含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルム。
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