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JP6144555B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、口溶けがよく、ジューシー感を有するベーカリー製品、とくに層状ベーカリー製品を製造するための可塑性油脂組成物に関する。
ベーカリー製品、とくに油脂分の多いベーカリー製品の食感にとって、油脂の選択は重要な要因となる。該油脂分の多いベーカリー製品としては、例えば層状ベーカリー製品を挙げることができる。デニッシュ・ペーストリー、クロワッサン、パイ等の層状ベーカリー製品は、フレーキーな独特の食感を有することから、広く消費者に好まれ、いまや製パン市場における定番となっているものである。
このような層状ベーカリー製品の製造では、生地に油脂をロールインし、生地中に薄い油脂層を多数形成させることが必要である。層状ベーカリー製品の製造法には折りパイ方式と練パイ方式があるが、折りパイ方式を例としてあげると、まず、シート状の可塑性油脂を生地の間に挟み込み、折り畳み、圧延を繰り返すことで生地中に薄い油脂層を多数形成させる。この油脂層は、小麦粉生地層の相互の付着を防止する役割を果たし、続く焼成において、生地から発生する水蒸気や炭酸ガスの発散を遮り、この結果として製品を層状に膨張させ、製品にフレーキーなテクスチャーを付与する。焼成中、層状に折り込まれた油脂は、最終的に溶けて生地に吸収され、その生地は、生地中の澱粉が糊化し、蛋白質が熱変性することによって凝固し、独特の層状構造が形成される。
層状ベーカリー製品で使用される可塑性油脂は、とくに良好な可塑性と伸展性が求められることから比較的高融点の油脂が多く使われる。その結果、得られる層状ベーカリー製品は口どけの劣ったものになってしまうという問題があった。
一方、バターをロールイン用途で使用する場合、可塑性範囲が狭いため層状ベーカリー製品の製造には熟練が必要であるという製造上の問題があるものの、得られる層状ベーカリー製品は濃厚なバター風味とともに、噛んだときに口中に広がるジューシー感を得ることができる。
ここでいうジューシー感とは、ベーカリー製品を口に入れた瞬間に油性感は無いが、歯で噛むことにより、ベーカリー製品より油脂がにじみ出てくる食感を指す(以下、単に「ジューシー感」ということもある)。近年、このジューシー感が油脂本来のおいしさとして注目されてきている。
そこで、可塑性や伸展性に影響することなく、良好なジューシー感を有するベーカリー製品を得ることができる可塑性油脂が各種検討されている。
ベーカリー製品のジューシー感に関する先行技術としては、特定の油脂を用いてジューシー感を得る方法や、乳化剤を用いてジューシー感を得る方法があげられる。
上記の特定の油脂を用いてジューシー感を得る方法を記載した先行技術文献としては特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
特許文献1には、乳由来の脂肪、20℃で液状の油脂及びパーム硬化油をそれぞれ特定量含有するロールイン用油中水型乳化組成物が記載されている。しかし特許文献1のロールイン用油中水型乳化組成物では20℃で液状の油脂を多く配合する必要があるため、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
特許文献2には、ラウリン系ハードバター、パーム油起源の非選択的エステル交換油脂及び乳脂肪をそれぞれ特定量含有し、SFCが特定値であるロールイン用可塑性油中水型乳化物が記載されている。特許文献2のロールイン用可塑性油中水型乳化物もSFCを特定の範囲とするために液状油を多く配合する必要があり、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
上記の乳化剤を用いてジューシー感を得る方法を記載した先行技術文献としては、特許文献3をあげることができる。
特許文献3には、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた1種以上の結晶調整剤を用いたロールイン用油中水型乳化組成物によりジューシー感を有するペストリー食品を提供できることが記載されている。しかし、特許文献3のロールイン用油中水型乳化組成物は乳化剤を用いるため、ペストリー食品の風味が悪くなるという欠点があった。また特許文献3のロールイン用油中水型乳化組成物は、特定の範囲のSFCとするために液状油を多く配合する必要があり、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
このように今までの層状ベーカリー製品用途の可塑性油脂組成物は、ジューシー感を得るために液状油を多く配合しており、そのためベーカリー製品は口に入れる前からべとついた状態にあり、これを食してもべとついた食感となってしまい、油脂本来のおいしさであるジューシー感(ベーカリー製品を口に入れた瞬間に油性感は無いが、歯で噛むことにより、ベーカリー製品より油脂がにじみ出てくる食感)を得ることができなかった。
一方、スーパーやコンビニ向けなどの、いわゆるホールセールのベーカリー製品は、オーブンフレッシュベーカリーで販売されるベーカリー製品と異なり、一般にフィルム包装されて流通・販売されるため、湿気がこもりやすく、フレーキーな食感やサクサクした食感は特に失われやすく、べとついた食感へと変化しやすい。特に、フレーキーな食感を特徴とする層状ベーカリー製品では、その影響が大きいという課題も存在する。
WO2006/011331号公報 特開2008−193974号公報 WO2007/026466号公報
よって本発明の目的は、べとつきがなく、口に入れた瞬間に油性感はないが、歯で噛むことにより、油脂がにじみ出てくる食感であるジューシー感を有し、さらに経日的な食感の変化が少ないベーカリー製品、特に層状ベーカリー製品を得るのに適した可塑性油脂組成物を提供することにある。
本出願人らはこれまでに、良好なジューシー感を得ることのできるロールイン用油脂組成物について発明した。しかし、この発明では、経日的にしなっとした食感やべたつきが感じられるようになってしまうという課題があり、この課題を更に改良する必要があった。
本発明者等は、特定のトリグリセリド組成の油脂にアミロース含量の高い澱粉を含有させた可塑性油脂組成物を使用した場合、良好なジューシー感を経日的に低下させることなく持続させることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、全油脂中のトリグリセリド組成が、下記条件1)〜4)を全て満たし、さらにアミロース含量が30質量%以上の澱粉を含有することを特徴とする可塑性油脂組成物を提供するものである。
1)S3の含有量が0.1〜8質量%
2)s2Uの含有量が28質量%以上
3)s2Uを構成するPとStの質量比率であるP/Stが2より大きいこと
4)sD2の含有量とU3の含有量の合計量が20〜40質量%
ただし、
S3:Sが3分子結合しているトリグリセリド
s2U:sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
sD2:sが1分子、Dが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド

また、上記条件1)〜4)中のS、s、U、P、St及びDは、それぞれ以下の脂肪酸残基を示す。
S :飽和脂肪酸残基
s :炭素数16〜18の飽和脂肪酸残基
U :炭素数16〜18の不飽和脂肪酸残基
P :パルミチン酸残基
St:ステアリン酸残基
D :炭素数16〜18の多価不飽和脂肪酸残基
本発明によれば、べとつきがなく、口に入れた瞬間に油性感はないが、歯で噛むことにより、油脂がにじみ出てくる食感であるジューシー感を有し、さらに経日的な食感の変化が少ないベーカリー製品を得ることができる。
以下、本発明の可塑性油脂組成物について詳細に説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、全油脂中のトリグリセリド組成が上記の条件1)〜4)を全て満たすことが必要である。
本発明における条件1)について述べる。
本発明の可塑性油脂組成物は、S3の含有量が0.1〜8質量%、好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは2〜6質量%、最も好ましくは3〜5質量%である。上記のS3はSが3分子結合しているトリグリセリド(=トリアシルグリセロール、以下同じ)を表す。上記のSは飽和脂肪酸残基を示し、具体的には飽和脂肪酸残基の炭素数は8〜22であり、具体的にはカプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、アラキジン酸残基及びベヘン酸残基の中から選ばれた1種又は2種以上である。
上記のS3の含有量が0.1質量%よりも少ないと層状ベーカリーの内層不良となり、8質量%よりも多いと口溶けが悪く、ジューシー感を有するベーカリー製品、特に層状ベーカリー製品が得られない。
本発明における条件2)について述べる。
本発明の可塑性油脂組成物は、s2Uの含有量が28質量%以上、好ましくは31質量%以上、さらに好ましくは34質量%以上、最も好ましくは37〜60質量%である。
上記のs2Uの含有量が28質量%よりも少ないとジューシー感を有するベーカリー製品、特に層状ベーカリー製品が得られない。上記のs2Uは、sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリドを表す。上記のsは炭素数が16〜18の飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはパルミチン酸残基(P)及び/又はステアリン酸残基(St)である。上記のUは炭素数16〜18の不飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはオレイン酸残基、リノール酸残基及びリノレン酸残基の中から選ばれた1種又は2種以上である。
本発明における条件3)について述べる。
本発明の可塑性油脂組成物は、s2Uを構成するPとStの質量比率であるP/Stが2より大きく、好ましくは2超6以下、さらに好ましくは2超5以下、最も好ましくは2超4以下である。
上記のs2Uを構成するPとStの質量比率であるP/St(質量基準)が2以下であるとs2Uの融点が高くなりやすいため、口溶けが悪く、ジューシー感を有するベーカリー製品が得られない。
本発明における条件4)について述べる。
本発明の可塑性油脂組成物は、sD2の含有量とU3の含有量の合計量が20〜40質量%、好ましくは20〜35質量%、さらに好ましくは20〜30質量%、最も好ましくは20〜25質量%である。上記のsD2の含有量とU3の含有量の合計量が20質量%よりも少ないと可塑性油脂組成物の伸展性が損なわれ、40質量%よりも多いと口溶けは良いものの、ベとついた食感を有するベーカリー食品となる。上記のsD2はsが1分子、Dが2分子結合しているトリグリセリドを表す。上記のU3はUが3分子結合しているトリグリセリドを表す。上記のDは、炭素数16〜18の多価不飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはリノール酸残基及び/又はリノレン酸残基である。
本発明の可塑性油脂組成物を用いたベーカリー製品においてジューシー感が得られる理由としては、以下のような理由であると推定される。
本発明の全油脂中のトリグリセリド組成が特定範囲である可塑性油脂組成物が焼成により一度溶解し、焼成後、冷却されることにより、可塑性油脂組成物は液状成分である油脂のまわりを固体脂で取り囲んだ状態でベーカリー製品中に存在する。この状態のベーカリー製品を食すると、口に入れた瞬間は油性感がないが、口中の温度と歯で噛むことにより、固体脂部分から液状成分である油脂がにじみ出てくるために、ジューシー感が得られると考えられる。
本発明の可塑性油脂組成物は、全油脂中の脂肪酸組成が以下の条件5)を満たすことにより、より一層ジューシー感を有するベーカリー製品を得ることができる。
条件5)としては、ラウリン酸の含有量を、好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、一層好ましくは6質量%以下、最も好ましくは5質量%以下とする。
上記のラウリン酸の含有量が8質量%よりも多いと口溶けは良好なものの、ジューシー感を有するベーカリー製品が得られにくい。上記のラウリン酸の含有量は、少なければ少ないほど、好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中のトリグリセリド組成が上記の条件1)〜4)の全てを満たす具体的な配合油脂としては、以下の油脂Aと油脂Bと油脂Cとを用いて、これらの油脂を、上記条件1)〜4)を全て満たすように配合することにより得られる。
上記の油脂Aは豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂であり、具体的には豚脂、牛脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Aとして特に豚脂を用いることが好ましい。
上記の油脂Bはパーム系油脂であり、具体的にはパーム油並びにこれに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Bとして、特にパーム中融点画分を用いることが好ましい。
上記の油脂Cは融点が50℃以上の油脂であり、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂の極度硬化油やパームステアリンを挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Cとして、口溶けへの影響の点でキャノーラ極度硬化油、ハイオレイックキャノーラ極度硬化油、大豆極度硬化油、パーム極度硬化油及びパームステアリンの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。
上記油脂Aの含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、好ましくは20〜90質量%、さらに好ましくは30〜85質量%、一層好ましくは40〜80質量%、最も好ましくは45〜75質量%である。本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、上記油脂Aの含有量が20質量%よりも少ないとsD2の含有量とU3の含有量の合計量が不足し伸展性不足となりやすく、90質量%よりも多いとs2Uを構成するStが増えすぎ、口溶けが悪くなりやすく、シューシーな食感が得られにくい。
上記油脂Bの含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、一層好ましくは12.5〜47.5質量%、最も好ましくは15〜45質量%である。
本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、上記油脂Bの含有量が5質量%よりも少ないとs2Uの含有量が少なくなるためジューシー感を有するベーカリー製品を得難い場合が有り、55質量%よりも多いとsD2の含有量とU3の含有量の合計量が不足し、可塑性油脂組成物が伸展性不足となりやすい。
上記油脂Cの含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは1〜7質量%、一層好ましくは2〜6質量%、最も好ましくは3〜5質量%である。本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、上記油脂Cの含有量が0.1質量%よりも少ないとベーカリー製品、特に層状ベーカリー製品の内層が不良となりやすく、8質量%よりも多いと口溶けが悪く、ジューシー感を有するベーカリー製品を得られにくい。
本発明の可塑性油脂組成物は、更に油脂Dとして液状油脂を用いて、油脂A〜Dを上記条件1)〜4)を全て満たすように配合してもよい。油脂Dを用いることにより可塑性を有する温度範囲を調整することができる。
上記の液状油脂とは常温(30℃)で液状の油脂を指し、好ましくは融点20℃未満である油脂、最も好ましくは融点10℃未満である油脂である。
上記の油脂Dとして、例えば大豆油、菜種油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、ゴマ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油等の常温で液状の油脂や、常温で固形である油脂、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の分別軟部油であってもよく、本発明ではこれらの液状油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を用いることができる。特に本発明では、菜種油、米油、ゴマ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油及びハイオレイックひまわり油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を用いることが好ましい。
上記油脂Dの含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、一層好ましくは15質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、上記油脂Dの含有量が40質量%よりも多いと口溶けは良いものの、べとついた食感を有するベーカリー製品となるので好ましくない。本発明の可塑性油脂組成物において、ベーカリー製品にジューシー感を付与するためには油脂Dの含有量は少なければ少ないほど好ましく、用いないことが最も好ましい。
なお本発明の可塑性油脂組成物において、上記の油脂A、油脂B、油脂C及び油脂D以外のその他の油脂を、全油脂中のトリグリセリド組成が上記の1)〜4)の条件を全て満たす範囲内にて用いても良い。
上記のその他の油脂としては、パーム核油、ヤシ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の油脂の含有量は、本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、最も好ましくは19質量%以下である。
本発明の可塑性油脂組成物は、硬化油を含有しないことが好ましい。
硬化油には通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれているためであり、トランス酸に起因する健康阻害回避のため本発明では含有しないことが好ましい。
ただし、極度硬化油脂は完全に水素添加されており、トランス酸を含まないため、本発明では極度硬化油を含有することは構わない。
本発明の可塑性油脂組成物の全油脂中の脂肪酸組成において、トランス酸の含有量は好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。
本発明の可塑性油脂組成物中の全油脂の含有量は、好ましくは50〜99.9質量%、さらに好ましくは60〜90質量%、最も好ましくは70〜87質量%である。本発明の可塑性油脂組成物において、全油脂の含有量が、50質量%よりも少ないと本発明の可塑性油脂組成物が乳化油脂組成物である場合、その乳化が不安定となりやすく、99.9質量%よりも多いと経日的な食感の変化が抑えられない場合があるため好ましくない。なお、上記の全油脂として、本発明の可塑性油脂組成物で含有させる以下のその他の成分に由来する油分も含めるものとする。
本発明の可塑性油脂組成物は、アミロース含量が30質量%以上の澱粉を含有する。
澱粉は、ブドウ糖を構成単位として直鎖状に結合した構造のアミロースと、分岐の多い構造のアミロペクチンから構成される。アミロースとアミロペクチンの比率は澱粉の種類によって大きく異なっており、例えばコーンスターチではアミロース含量が25%程度、米澱粉では15〜20%程度、もち米では0%に近いことが知られている。
本発明で使用するのは、アミロース含量が30質量%以上の澱粉であり、好ましくはアミロース含量が50質量%以上、より好ましくは60質量%以上のハイアミロース澱粉を使用する。アミロース含量が30質量%に満たない澱粉では経日的な食感の変化を抑えることができない。
上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉としては特に制限されず、アミロース含量が30質量%以上であれば、一般的な穀物由来の澱粉、例えば米、小麦、大麦、トウモロコシなどの澱粉や、地下茎由来の澱粉、例えば馬鈴薯、甘薯、タピオカなどの澱粉等が利用可能であるが、より好ましくはコーンスターチである。
また、特に好ましくは湿熱処理されたハイアミロース澱粉を使用し、最も好ましくは湿熱処理されたハイアミロースコーンスターチを使用する。湿熱処理されたハイアミロース澱粉、特に湿熱処理されたハイアミロースコーンスターチを使用することで、ジューシー感をより長い期間維持することができる。
また、本発明の可塑性油脂組成物中、上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉は好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜7質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%含有する。上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉が0.1質量%よりも少ないと経日的な食感の変化を抑えることができない場合があり、10質量%よりも多いと、良好なジューシー感が得られない場合があるため好ましくない。
本発明の効果は、上記特定の澱粉を上記条件1)〜4)を満たす油脂と併用した場合にはじめて十分な効果が発揮される。上記特定の澱粉と上記の条件1)〜4)を満たさない油脂からなる可塑性油脂組成物とした場合や、上記特定の澱粉を可塑性油脂組成物としてではなく、ベーカリー生地に使用する澱粉類として配合した場合には十分な効果が見られない。このことは、上記特定の澱粉と上記条件1)〜4)を満たす油脂が独立した状態で存在しても効果を発揮できないことを示唆している。なお、上記特定の澱粉をベーカリー生地に使用する澱粉類として添加する場合、添加量が増えるにつれて食感そのものが大きく変化してしまうため、この点でも好ましくない。
そのため、後述するように、最終的に得られるベーカリー製品中で、上記特定の澱粉と特定の油脂が密に接触した状態で存在させることができる点で、本発明の可塑性油脂組成物は、ロールイン用可塑性油脂組成物とすることが最も好ましい。
なお、上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉は、α化していないことが好ましい。上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉としてα化澱粉を使用すると、製造工程において目詰まりが生じやすく、また、分散性が悪く安定した製品を得られない場合があるため好ましくない。
本発明の可塑性油脂組成物は、上記油脂類、アミロース含量が30質量%以上の澱粉以外に、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、水、乳化剤、乳製品、糖類・甘味料、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、アミロース含量が30質量%未満の澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等を添加してもよい。
上記の水としては水道水や天然水等の水や、本発明の可塑性油脂組成物で含有させる、その他の成分に由来する水分も含めたものとする。本発明の可塑性油脂組成物において、上記の水の含有量は好ましくは0〜49.9質量%、さらに好ましくは9.7〜39.7質量%、最も好ましくは12.5〜29.7質量%である。
上記の乳化剤として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。上記の可塑性油脂組成物では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記の乳化剤の含有量は好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン及び乳清ミネラル等が挙げられる。本発明ではこれらの乳製品の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記の乳製品の含有量は固形物換算で好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等があげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の可塑性油脂組成物において、上記の糖類の含有量及び上記の甘味料の含有量の合計は、固形物換算で好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
上述の記載から明らかなように、本発明の可塑性油脂組成物の好ましい組成は、上記油脂Aを20〜90質量%、上記油脂Bを5〜55質量%及び上記油脂Cを0.1〜8質量%それぞれ含有する油相からなっており、該油相中のトリグリセリド組成が、上記条件1)〜4)を全て満たすものである。更に好ましくは、本発明の可塑性油脂組成物は、上記油相と、水相とを乳化混合してなる油中水型乳化油脂組成物である。
本発明の可塑性油脂組成物の好ましい製造方法について以下に説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、上記条件1)〜4)を満たす油相を溶解し、さらに上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉を油相へ分散させた後、冷却し、可塑化することにより得ることができる。
具体的には、まず上記条件1)〜4)を全て満たす油脂を50〜80℃加温し、均一になるよう攪拌・混合する。続いて、油溶性の成分を添加し、混合し、さらに上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉を油相中に分散させる。本発明においては、水相は必須ではないが、必要に応じて水、その他水溶性の成分を混合した水相を油相と混合乳化することができる。なお、本発明においては水相が存在する場合であっても上記アミロース含量が30質量%以上の澱粉は油相へ添加し分散させることが好ましい。
上記の水相を用いる場合、油相と水相との質量比率(前者:後者)は、好ましくは50〜95:5〜50、さらに好ましくは60〜95:5〜40、最も好ましくは70〜88:12〜30である。本発明において油相が50質量%よりも少なく水相が50質量%よりも多いと乳化が不安定となりやすい。また、油相が95質量%よりも多く、水相が5質量%よりも少ないと、良好な可塑性が得られにくい。
そして次に殺菌処理をすることが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、最も好ましくは80〜90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40〜60℃、更に好ましくは40〜55℃、最も好ましくは40〜50℃とする。
次に急冷可塑化を行なう。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行うことができ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせを用いて行ってもよい。この急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物となる。
急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
上記の可塑性油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
また、本発明の可塑性油脂組成物の用途としては、ベーカリー食品用として好適に用いられ、とくに層状ベーカリー製品用として好適に用いられる。また、本発明の可塑性油脂組成物は練り込み用としても、ロールイン用としても使用できるが、これらの中でも、本発明の可塑性油脂組成物は広い温度域で可塑性が良好(伸展性が良好)であり、またジューシーな食感と相性が良いことから、ロールイン用油脂組成物として特に好適に使用することができる。
本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物として使用する場合、シート状、ブロック状、円柱状等の形状として使用することができる。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横:50〜1000mm、厚さ:1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mmである。
以下に、本発明のベーカリー製品について説明する。
本発明のベーカリー製品は、上述した本発明の可塑性油脂組成物を使用して得られるものであるが、特にデニッシュ、クロワッサン、パイ等の、層状ベーカリー製品が挙げられる。
本発明のベーカリー製品における上記可塑性油脂組成物の使用量は、特に限定されるものではないが、層状ベーカリー製品の場合には、ロールイン前のベーカリー生地100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは20〜100質量部の割合で用いる。
また、本発明のベーカリー製品が層状ベーカリー製品であるときの層数は、目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、好ましくは9〜144層、より好ましくは16〜64層である。
本発明のベーカリー製品は、比較的多湿条件下で保存された場合であっても食感の変化を抑えることができる。そのため、一般にフィルム包装されて流通・販売されるため、湿気がこもりやすく、フレーキーな食感やサクサクした食感が特に失われやすく、べとついた食感へと変化しやすいとされる包装ベーカリー製品として特に好適に用いることができる。
以下に実施例、比較例等を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(配合油の製造例)
油脂Aとして豚脂(S3:3.7質量%、s2U:30.9質量%、s2U中のP/St:1.8、sD2+U3:26.6質量%)、油脂Bとしてパーム分別中部油(S3:1.5質量%、s2U:64.5質量%、s2U中のP/St:11.1、sD2+U3:10.4質量%)、油脂Cとしてパーム極度硬化油(S3:100質量%)、油脂Dとして菜種油(S3:0質量%、s2U:0.8質量%、s2U中のP/St:3.7、sD2+U3:83質量%)を選定し、これらのうち、油脂Aと油脂Bと油脂Cとを用い、必要により油脂Dを用いて、表1に示す組成の配合油A〜Cを調製した。
また、油脂A〜Dから1種又は2種以上の油脂を用いて、表1に示す組成の配合油Dを調製した。
Figure 0006144555
[実施例1]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)2質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Aを得た。
[実施例2]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)1質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水16質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Bを得た。
[実施例3]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)4質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水13質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Cを得た。
[実施例4]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)0.1質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水16.9質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Dを得た。
[実施例5]
配合油B82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)2質量部を分散させ、油相を調製した調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Eを得た。
[実施例6]
配合油C82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)2質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Fを得た。
[実施例7]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、ハイアミロースコーンスターチ(アミロース含量約70%)2質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である本発明の可塑性油脂組成物Gを得た。
[比較例1]
配合油D82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、湿熱処理したハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB−450」、アミロース含量約70%)2質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である比較例の可塑性油脂組成物Hを得た。
[参考例1]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である比較例の可塑性油脂組成物Iを得た。
[参考例2]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、コーンスターチ(アミロース含量約25%)10質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水7質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である比較例の可塑性油脂組成物Jを得た。
[参考例3]
配合油C82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、コーンスターチ(アミロース含量約25%)2質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水15質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である比較例の可塑性油脂組成物Kを得た。
[参考例4]
配合油A82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合したのち、米澱粉(アミロース含量約20%)3質量部を分散させ、油相を調製した。調製した油相に水相として水14質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、5℃で2週間保管し、ロールイン用である比較例の可塑性油脂組成物Lを得た。
<評価>
実施例1〜7、比較例1及び参考例1〜4で得られたロールイン用である可塑性油脂組成物A〜Lを用いて、下記配合と製法により使用例1〜7及び比較使用例1〜5のデニッシュをそれぞれ製造した。また、比較使用例6では、ロールイン用油脂として可塑性油脂組成物Iを用い、下記配合と製法により比較使用例6のデニッシュを製造した。
<デニッシュの配合(使用例1〜7及び比較使用例1〜5)>
強力粉 100質量部
イースト 4質量部
イーストフード 0.2質量部
上白糖 10質量部
全卵 10質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 50質量部
ロールイン用油脂組成物 50質量部
<デニッシュの配合(比較使用例6)>
強力粉 100質量部
ハイアミロースコーンスターチ(三和澱粉工業社製、製品名「アミロジェルHB-450」) 0.9質量部
イースト 4質量部
イーストフード 0.2質量部
上白糖 10質量部
全卵 10質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 50質量部
ロールイン用油脂組成物 50質量部
<デニッシュの製法(使用例1〜7及び比較使用例1〜6)>
練り込み用マーガリンとロールイン用油脂組成物以外の原料をミキサーボールに入れ、フックを用い、縦型ミキサーにてL3、M3にてミキシングを行い、練り込み用マーガリンを入れ、さらにL3、M3にてミキシングを行い、生地を調製する。この生地をフロアタイム20分、−5℃の冷凍庫で24時間リタードさせた。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、常法により、ロールイン(3つ折り3回)し、成型(縦10センチ、横10センチ、厚さ3ミリ)した。そしてホイロ(32℃ 50分)をとり、200℃15分にて焼成した。
得られたデニッシュをビニール袋に入れ、室温で2時間置いた後、ヒートシールにて封をし、25℃で3日間保持した。その際、ビニール袋中の湿度は約80%であった。
焼成2時間後、並びに封をしてから1日後及び3日後の状態を下記基準で評価した。結果を[表2]に示す。下記の基準のうち、総合評価では、デニッシュの食感について総合的に評価した。
<ジューシー感の評価基準>
◎:ジューシー感を十分に感じ、極めて良好である
○ :ジューシー感を感じ、良好である
△:ややジューシー感を感じるものの、十分ではない
×:全くジューシー感が感じられない
<べとつきの評価基準>
◎:まったくべとつきが感じられず、極めて良好である
○ :ほとんどベとつきがなく、良好である
△:口に入れた際に、唇に油脂が付着しベとつく
×:デニッシュを持った時点で、手がベとつく
<総合評価の評価基準>
◎:非常に良好である
○ :良好である
△:やや不良である
×:不良である
Figure 0006144555

Claims (6)

  1. 油脂の含有量が70〜90質量%であり、全油脂中のトリグリセリド組成が、下記条件1)〜4)を全て満たし、さらにアミロース含量が50質量%以上である澱粉を0.1〜5質量%含有する、油中水型乳化物であることを特徴とする可塑性油脂組成物。
    1)S3の含有量が0.1〜8質量%
    2)s2Uの含有量が28質量%以上
    3)s2Uを構成するPとStの質量比率であるP/Stが2より大きいこと
    4)sD2の含有量とU3の含有量の合計量が20〜40質量%
    ただし、
    S3 :Sが3分子結合しているトリグリセリド
    s2U:sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
    sD2:sが1分子、Dが2分子結合しているトリグリセリド
    U3 :Uが3分子結合しているトリグリセリド
    また、上記条件1)〜4)中のS、s、U、P、St及びDは、それぞれ以下の脂肪酸残基を示す。
    S :飽和脂肪酸残基
    s :炭素数16〜18の飽和脂肪酸残基
    U :炭素数16〜18の不飽和脂肪酸残基
    P :パルミチン酸残基
    St:ステアリン酸残基
    D :炭素数16〜18の多価不飽和脂肪酸残基
  2. さらに全油脂中の脂肪酸組成が、下記条件5)を満たす請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
    5)ラウリン酸の含有量が8質量%以下
  3. 上記アミロース含量が50質量%以上の澱粉がコーンスターチである、請求項1又は2に記載の可塑性油脂組成物。
  4. 層状ベーカリー製品用である、請求項1〜のいずれか一項に記載の可塑性油脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の可塑性油脂組成物を用いたベーカリー製品。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の可塑性油脂組成物を用いた包装ベーカリー製品。
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