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JP6029819B2 - 電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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JP6029819B2
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Description

本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、特に、磁気コアを有し、回路基板上への面実装が可能な小型化されたインダクタ等の電子部品及びその製造方法に関する。
従来、携帯型の電子機器における電源の昇降圧回路用コイルや高周波回路で用いられるチョークコイル等として磁気コアを有するインダクタが知られている。
このようなインダクタとしては、例えば特許文献1に記載されているように、フェライトコアにコイル導線を巻回し、該コイル導線の両端をフェライトコアの該表面に設けられた一対の端子電極に接続した構造のものが知られている。ここで、フェライトコアは、巻芯部と該巻芯部の上端及び下端に設けられた一対の鍔部とを有する、いわゆるドラム型の形状を有している。このような構造を有するインダクタは、一般に外形寸法(特に高さ寸法)の小型化が可能であることから、回路基板上への高密度実装や低背実装に適しているという特長を有している。
特開2011−009644号公報
近年、電子機器の小型薄型化や高機能化に伴って、インダクタ特性及び信頼性を向上させつつ、さらなる高密度実装や低背実装が可能なインダクタが求められている。
本発明は、所望の電気特性及び高い信頼性を有しつつ、回路基板上への良好な高密度実装や低背実装が可能なインダクタ等の電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明に係る電子部品は、
基体と、
前記基体の表面に設けられ、所定の電極材料を含む電極ペーストを焼付処理して形成される焼付電極を含む電極と、
を備え、
前記基体は、酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有し、前記電極ペーストに含まれるガラスフリットに起因するガラス成分が、前記電極が接する界面から前記基体の内部方向に、概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散していることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子部品において、
前記基体は、前記ガラス成分が前記基体の内部方向に、前記電極の膜厚に対して概ね30%以上の距離で拡散していることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子部品において、
前記ガラスフリットが前記基体の内部及び表面に存在することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品において、
前記電極は、複数の電極層が積層された構造を有し、少なくとも、前記基体に接する最下層の前記電極層は、前記ガラスフリットを含む前記電極ペーストを焼付処理して形成される前記焼付電極からなり、前記最下層の前記電極層の上層に設けられる、最上層の前記電極層は、前記ガラスフリットを含まない、前記電極材料のみからなることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の電子部品において、
前記電極は、前記複数の電極層が前記電極ペーストを焼付処理して形成される前記焼付電極からなり、少なくとも、前記最上層の前記電極層が、前記ガラスフリットを含まない前記電極材料から形成される前記焼付電極からなることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項4記載の電子部品において、
前記電極は、少なくとも、前記最上層の前記電極層が、前記最下層の前記電極層より緻密な結晶状態の金属薄膜からなることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の電子部品において、
前記基体は、吸水率が1.0%以上、又は、空孔率が10〜25%の金属粉の成形体であることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の電子部品において、
前記基体は、鉄、ケイ素、及び、鉄よりも酸化しやすい元素を含有する前記軟磁性合金の粒子群から構成され、前記各軟磁性合金粒子の表面には当該軟磁性合金粒子の前記酸化層があり、当該酸化層は当該軟磁性合金粒子に比較して前記鉄より酸化しやすい元素を多く含み、前記粒子同士は前記酸化層を介して結合されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の電子部品において、
前記鉄よりも酸化しやすい元素は、クロムであって、
前記軟磁性合金は、少なくとも、クロムが2〜15wt%含有することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の電子部品において、
前記電子部品は、
柱状の巻芯部及びその両端に設けられた一対の鍔部を有する前記基体と、前記基体の前記巻芯部に巻回された被覆導線と、前記基体の外表面に設けられ、前記被覆導線の両端部が接続された一対の前記電極と、前記被覆導線部の外周を被覆するように前記一対の鍔部間に設けられた外装樹脂部と、を備え、
前記一対の電極が接する前記基体の外表面から内部方向に、前記一対の電極を形成するための前記電極ペーストに含まれる前記ガラス成分が、概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散していることを特徴とする。
請求項11記載の発明に係る電子部品の製造方法は、
酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた電極ペーストを塗布する工程と、
前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記電極材料からなる電極を形成するとともに、前記電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の電子部品の製造方法において、
前記ガラス成分は、前記基体の内部方向に、前記電極の膜厚に対して概ね30%以上の距離で拡散していることを特徴とする。
請求項13記載の発明に係る電子部品の製造方法は、
酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた第1の電極ペーストを塗布する工程と、
前記第1の電極ペースト上に、前記電極材料のみからなる第2の電極ペーストを塗布する工程と、
前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記第1の電極ペーストからなる第1の電極層と前記第2の電極ペーストからなる第2の電極層とを形成するとともに、前記第1の電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする。
請求項14記載の発明に係る電子部品の製造方法は、
酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた電極ペーストを塗布する工程と、
前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記電極材料からなる第1の電極層を形成するとともに、前記電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
前記第1の電極層上に、前記電極材料をスパッタリング法や蒸着法等を用いて第2の電極層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
請求項15記載の発明は、請求項13又は14に記載の電子部品の製造方法において、
前記電子部品は、前記第1の電極層及び前記第2の電極層を含む複数の複数層が積層された電極を有し、少なくとも、前記第1の電極層は、前記基体に接する最下層の電極層であり、前記第2の電極層は、前記第1の電極層の上層に設けられる、最上層の電極層であることを特徴とする。
請求項16記載の発明は、請求項11乃至15のいずれかに記載の電子部品の製造方法において、
前記基体は、吸水率が1.0%以上、又は、空孔率が10〜25%の金属粉の成形体であることを特徴とする。
請求項17記載の発明は、請求項11乃至16のいずれかに記載の電子部品の製造方法において、
前記基体は、鉄、ケイ素、及び、鉄よりも酸化しやすい元素を含有する前記軟磁性合金の粒子群から構成され、前記各軟磁性合金粒子の表面には当該軟磁性合金粒子の前記酸化層があり、当該酸化層は当該軟磁性合金粒子に比較して前記鉄より酸化しやすい元素を多く含み、前記粒子同士は前記酸化層を介して結合されていることを特徴とする。
請求項18記載の発明は、請求項17記載の電子部品の製造方法において、
前記鉄よりも酸化しやすい元素は、クロムであって、
前記軟磁性合金は、少なくとも、クロムが2〜15wt%含有することを特徴とする。
本発明によれば、所望の電気特性及び高い信頼性を有しつつ、回路基板上への良好な高密度実装や低背実装が可能なインダクタ等の電子部品及びその製造方法を提供することができ、当該電子部品を搭載する電子機器の小型薄型化や高機能化に加え、信頼性の向上に寄与することができる。
本発明に係る電子部品として適用される巻線型インダクタの一構成例を示す概略斜視図である。 第1の実施形態に係る巻線型インダクタの内部構造を示す概略断面図である。 第1の実施形態に係る巻線型インダクタに適用されるコア部材を示す概略斜視図である。 第1の実施形態に係る巻線型インダクタを回路基板上に実装した状態を示す概略断面図である。 第1の実施形態に係る巻線型インダクタの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明に係る電子部品の基体に適用される軟磁性合金粒子の集合体(成形体)とフェライトとにおける、ガラス成分の拡散に関する特性を示す図である。 本発明に係る基体と、フェライトからなる基体とにおける表面近傍の断面を示す模式図である。 本発明に係る基体における表面近傍の断面を説明するための拡大模式図である。 第1の実施形態に係る巻線型インダクタにおいて、端子電極を形成した際のガラス成分の拡散状態を説明するための拡大模式図である。 本発明に係る電子部品の製造方法を適用した場合における、焼付処理条件と電極の固着強度との関係を示す実験結果である。 巻線型インダクタの剥離強度試験(固着強度試験)の方法を説明するための図である。 本発明に係る電子部品の製造方法を適用した場合における、電極ペーストの成分とガラスフリットの拡散距離との関係を示す実験結果である。 第2の実施形態に係る電子部品に適用される端子電極の構造例を示す要部断面図である。 第2の実施形態に係る端子電極の構造例におけるガラス成分の拡散状態を説明するための拡大模式図である。 本発明に係る電子部品として適用される積層型インダクタの構成例を示す概略構成図である。 本適用例に係る積層型インダクタの分解斜視図である。
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る電子部品及びその製造方法について、実施形態を示して詳しく説明する。ここでは、本発明に係る電子部品として、巻線型インダクタを適用した場合について説明する。なお、ここで示す実施形態は、本発明に係る電子部品として適用可能な一例を示すものであって、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
(巻線型インダクタ)
まず、本発明に係る電子部品として適用される巻線型インダクタの概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る電子部品として適用される巻線型インダクタの一構成例を示す概略斜視図である。ここで、図1(a)は、本実施形態に係る巻線型インダクタを上面側(上鍔部側)から見た概略斜視図であり、図1(b)は、本実施形態に係る巻線型インダクタを底面側(下鍔部側)から見た概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る巻線型インダクタの内部構造を示す概略断面図である。ここで、図2(a)は、図1(a)に示したA−A線に沿った巻線型インダクタの断面を示す図であり、図2(b)は、図2(a)に示したB部を拡大した要部断面の模式図である。図3は、本実施形態に係る巻線型インダクタに適用されるコア部材を示す概略斜視図である。図4は、本実施形態に係る巻線型インダクタを回路基板上に実装した状態を示す概略断面図である。
図1、図2(a)に示すように、第1の実施形態に係る巻線型インダクタ10は、概略、ドラム型のコア部材11と、該コア部材11に巻回されたコイル導線12と、コイル導線12の端部13A、13Bが接続される一対の端子電極16A、16Bと、上記巻回されたコイル導線12の外周を被覆する、磁性粉含有樹脂からなる外装樹脂部18と、を有している。
具体的には、コア部材11は、図1(a)、図2(a)、図3に示すように、コイル導線12が巻回される柱状の巻芯部11aと、該巻芯部11aの図面上端に設けられた上鍔部11bと、巻芯部11aの図面下端に設けられた下鍔部11cとを備え、その外観はドラム型の形状を有している。
ここで、図1〜図3に示すように、上記コア部材11の巻芯部11aは、所定の巻回数を得るために必要なコイル導線12の長さをより短くできるように、断面が略円形もしくは円形であることが好ましいが、これに限定されるものではない。コア部材11の下鍔部11cの外形は、高密度実装に対応して小型化を図るために、平面視形状が略四角形もしくは四角形であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、多角形や略円形等であってもよい。また、上記コア部材11の上鍔部11bの外形は、高密度実装に対応して小型化を図るために、下鍔部11cに対応して類似の形状であることが好ましく、さらに、下鍔部11cと同サイズもしくは下鍔部11cよりやや小さめのサイズであることが好ましい。
このように、巻芯部11aの上端及び下端に上鍔部11b及び下鍔部11cを設けることにより、巻芯部11aに対するコイル導線12の巻回位置を制御しやすくなり、インダクタの特性を安定させることができる。また、上鍔部11bの四隅に適宜面取り等を施すことにより、上鍔部11b及び下鍔部11c間に、後述する外装樹脂部18を構成する磁性粉含有樹脂を容易に充填することができる。なお、上鍔部11b及び下鍔部11cの厚さは、その下限値が上記コア部材11における巻芯部11aからの上鍔部11b及び下鍔部11cのそれぞれの張り出し寸法を考慮して、所定の強度を満足するように適宜設定される。
また、図1(b)、図2(a)、図3に示すように、コア部材11の下鍔部11cの底面(外表面)11Bには、巻芯部11aの中心軸CLの延長線を挟んで一対の端子電極16A、16Bが設けられている。ここで、底面11Bには、一対の端子電極16A、16Bが形成される領域(電極形成領域)に、例えば図1(b)、図2(a)、図3に示すように、溝15A、15Bが形成されているものであってもよい。
この溝15A、15Bは、例えば図2、図3に示すように、少なくとも底部と、該底部の幅方向の両側に、該底部に対し傾斜して設けられた緩斜面と、を備えた略凹状の断面形状を有している。
なお、上記溝15A、15Bの深さは、例えば図2(a)に示すように、溝15A、15Bの底部に端子電極16A、16Bが形成され、かつ、当該底部にコイル導線12の端部13A、13Bが位置する状態で、コイル導線12の端部13A、13B、もしくは、該端部13A、13Bと端子電極16A、16Bを接合する半田17A、17Bの一部が、底面11Bの平坦面の高さ位置を越えて溝15A、15Bから突出するように形成されることが好ましい。また、上記溝15A、15Bの長さ方向の両端は、図1(b)、図3に示すように、下鍔部11cの互いに対向する一対の外側面に達するように形成されていることが好ましい。なお、ここで示した溝15A、15Bの形状は、本実施形態に係る巻線型インダクタに適用可能な一例を示したものに過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、溝15A、15Bは、底部と緩斜面に加え、緩斜面と下鍔部11cの底面11Bが接する領域に、端子電極16A、16Bの幅方向を規制するための、緩斜面よりも急な傾斜を有する側壁が設けられているものであってもよい。また、下鍔部11cの底面11Bに溝を形成することなく、底面11Bの平坦面に直接端子電極16A、16Bが設けられているものであってもよい。
そして、本実施形態に係る巻線型インダクタ10においては、上記コア部材11の吸水率が1.0%以上、又は、空孔率が10〜25%である、多孔質の成形体が適用される。具体的には、本実施形態に係る巻線型インダクタ10は、コア部材11として、例えば、鉄(Fe)と、ケイ素(Si)と、鉄よりも酸化しやすい元素を含有する軟磁性合金の粒子群から構成され、各軟磁性合金粒子の表面には、当該軟磁性合金粒子が酸化した酸化層が形成され、当該酸化層は当該軟磁性合金粒子に比較して、上記鉄よりも酸化しやすい元素を多く含み、粒子同士が当該酸化層を介して結合されて構成された、多孔質の成形体を適用することができる。なお、本実施形態において、上記鉄よりも酸化しやすい元素としては、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等を適用することができる。特に、上記軟磁性合金粒子は、少なくともクロムが2〜15wt%含有されていることが好ましく、また、軟磁性合金粒子の平均粒径が概ね2〜30μm程度であることがより望ましい。
このように、コア部材11を構成する軟磁性合金粒子の組成やその含有率、当該軟磁性合金粒子の平均粒径を上記の範囲内で適宜設定することにより、高い飽和磁束密度Bs(1.2T以上)と高い透磁率μ(37以上)を実現することができるとともに、100kHz以上の周波数においても、粒子内で渦電流損失が生じることを抑制することができることが確認された。そして、この高い透磁率μ、及び、高い飽和磁束密度Bsを有することにより、本実施形態に係る巻線型インダクタ10は、優れたインダクタ特性(インダクタンス−直流重畳特性:L−Idc特性)を実現することができる。
端子電極16A、16Bは、例えば図1(b)、図2(a)、図3に示すように、上記溝15A、15B内に設けられる場合には、当該溝15A、15Bに沿って延在し、コイル導線12の各端部13A、13Bに接続されている。また、端子電極16A、16Bは、上記溝15A、15Bによりその幅方向が規制され、幅方向の一端側から他端側に亘るすべての領域が溝15A、15B内に設けられていることが好ましい。そのため、溝15A、15B内に端子電極16A、16Bが収まるように、溝15A、15Bの断面形状及び寸法、並びに、端子電極16A、16Bの厚み寸法が適宜設定されていることが好ましい。ここで、端子電極16A、16Bの厚み寸法(膜厚)は、概ね10〜50μm程度であることが好ましい。
また、端子電極16A、16Bは、種々の電極材料を用いることができ、例えば、銀(Ag)、銀(Ag)とパラジウム(Pd)の合金、銀(Ag)と白金(Pt)の合金、銅(Cu)、チタン(Ti)とニッケル(Ni)とスズ(Sn)の合金、チタン(Ti)と銅(Cu)の合金、クロム(Cr)とニッケル(Ni)とスズ(Sn)の合金、チタン(Ti)とニッケル(Ni)と銅(Cu)の合金、チタン(Ti)とニッケル(Ni)と銀(Ag)の合金、ニッケル(Ni)とスズ(Sn)の合金、ニッケル(Ni)と銅(Cu)の合金、ニッケル(Ni)と銀(Ag)の合金等を良好に適用することができる。これらの電極材料を用いた端子電極16A、16Bは、例えば銅(Cu)や、銅(Cu)を含む合金等にガラスフリットを所定の含有率で含む電極ペーストを、上記溝15A、15B内や下鍔部11cの底面11Bに塗布し、所定の温度で焼付処理する形成方法により得られる焼付電極(焼付導体膜)が適用される。なお、端子電極16A、16Bは、上述した焼付電極の表面に、電解メッキによりニッケル(Ni)やスズ(Sn)等の金属メッキ層がさらに形成されているものであってもよい。
また、コイル導線12は、図2(a)に示すように、銅(Cu)や銀(Ag)等からなる金属線13の外周に、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等からなる絶縁被覆14が形成された被覆導線が適用される。そして、コイル導線12は、上記コア部材11の柱状の巻芯部11aの周囲に巻回されるとともに、図1、図2(a)に示すように、一方及び他方の端部13A、13Bが、絶縁被覆14が除去された状態で、上記端子電極16A、16Bにそれぞれ半田17A、17Bにより導電接続されている。
ここで、コイル導線12は、例えば直径0.1〜0.2mmの被覆導線が、コア部材11の巻芯部11aの周囲に3.5〜15.5回巻回されている。コイル導線12に適用される金属線13は、単線に限定されるものではなく2本以上の線や、撚り線であってもよい。また、コイル導線12の金属線13は、円形の断面形状を有するものに限定されるものではなく、例えば長方形の断面形状を有する平角線や、正方形の断面形状を有する四角線等を用いることもできる。また、上記端子電極16A、16Bが溝15A、15Bの内部に設けられる場合には、コイル導線12の端部13A、13Bの直径が、溝15A、15Bの深さよりも大きくなるように設定されていることが好ましい。
なお、上述したコイル導線12の端部13A、13Bと端子電極16A、16Bとの半田17A、17Bによる導電接続とは、両者が半田17A、17Bを介して導電接続されている箇所を有しているものであればばよく、半田17A、17Bのみで導電接続されているものに限らない。例えば、端子電極16A、16Bと上記コイル導線12の端部13A、13Bとが熱圧着により金属間結合で接合された箇所を有するとともに、該接合箇所を覆うように半田17A、17Bで被覆された構造を有しているものであってもよい。
外装樹脂部18は、磁性粉含有樹脂が、図2(a)に示すように、コア部材11の対向する上鍔部11b及び下鍔部11c間の巻芯部11aに巻回されたコイル導線12の外周を被覆し、かつ、巻芯部11aと、上鍔部11b及び下鍔部11cに囲まれた領域に充填されるように設けられている。
磁性粉含有樹脂は、巻線型インダクタ10の使用温度範囲において所定の粘弾性を有していることが好ましい。より具体的には、硬化時の物性として温度に対する剛性率の変化において、ガラス状態からゴム状態に移行する過程におけるガラス転移温度が100〜150℃の磁性粉含有樹脂を良好に適用することができる。上記磁性粉含有樹脂に用いる樹脂材料としては、シリコン樹脂を良好に適用することができ、コア部材11の上鍔部11b、下鍔部11c間に磁性粉含有樹脂を装入する工程におけるリードタイムを短縮するためには、例えばエポキシ樹脂とカルボキシル基変性プロピレングリコールとの混合樹脂を適用することがより好ましい。
そして、本実施形態に係る巻線型インダクタ10においては、多孔質のコア部材11の下鍔部11cの底面11Bであって、上述した端子電極16A、16Bが形成される電極形成領域において、図2(b)の模式図に示すように、上記端子電極16A、16Bを形成する際に用いられる電極ペーストに含まれるガラスフリットに起因するガラス成分が、コア部材11に端子電極16A、16Bが接する界面(すなわち、コア部材11の表面)からコア部材11の内部方向(図面上方向)に所定の深さで拡散した部分11dを有している。ここで、ガラス成分がコア部材11の内部方向に拡散している深さ(拡散距離)は、概ね10μm以上であることが好ましい。より具体的には、コア部材11の表面に形成される端子電極16A、16Bの膜厚(概ね10〜50μm)に対して、上記拡散距離は、概ね30%以上であることが好ましく、端子電極16A、16Bの膜厚よりも大きい場合(100%以上)であってもよい。
このガラス成分がコア部材11に拡散した部分11dは、端子電極16A、16Bを形成するための電極ペーストに含まれるガラスフリットとコア部材11の一部が化学反応を起こし、互いに交じり合って存在する層であり、主として軟磁性合金粒子とガラスフリットとで構成されている。これにより、電極形成領域におけるコア部材11と端子電極16A、16Bとの界面における結合が強固になって、両者の密着性(接着強度)を向上させることができる。なお、詳しくは、後述する作用効果の検証の欄で説明する。
なお、上述したような構成を有する巻線型インダクタ10は、図4に示すように、例えばガラス−エポキシ樹脂基板21上に銅箔からなる実装ランド22が形成された回路基板20上に実装される。ここで、実装ランド22への巻線型インダクタ10の実装方法は、回路基板20上にクリーム半田を印刷した後、実装ランド22上に巻線型インダクタ10の電極部分、すなわち、端子電極16A、16Bにコイル導線12の一方及び他方の端部13A、13Bが半田17A、17Bにより導電接続された部分を搭載し、例えば245℃に加熱してリフロー半田付け処理を施す。これにより、実装ランド22に巻線型インダクタ10の電極部分が半田19により接合されて、回路基板20上に巻線型インダクタ10が実装される。
(巻線型インダクタの製造方法)
次に、本実施形態に係る巻線型インダクタの製造方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る巻線型インダクタの製造方法の一例を示すフローチャートである。
上述した巻線型インダクタは、図5に示すように、概略、コア部材製造工程S101と、端子電極形成工程S102と、コイル導線巻回工程S103と、外装工程S104と、コイル導線接合工程S105と、を経て製造される。
(a)コア部材製造工程S101
コア部材製造工程S101においては、まず、鉄(Fe)と、ケイ素(Si)と、鉄よりも酸化しやすい元素とを、所定の比率で含有する軟磁性合金の粒子群を原料粒子として、所定の結合剤を混合して所定の形状の成形体を形成する。具体的には、鉄よりも酸化しやすい元素として例えばクロム(Cr)を用い、クロム2〜15wt%、ケイ素0.5〜7wt%、残部に鉄を含有する原料粒子に、例えば熱可塑性樹脂などの結合剤(バインダ)を添加し、攪拌混合させて造粒物を得る。次いで、この造粒物を粉末成形プレスを用いて圧縮成形して成形体を形成し、例えば研削ディスクを用いてセンターレス研摩により上鍔部11b及び下鍔部11c間に、柱状の巻芯部11aが形成されるように凹部を形成してドラム形の成形体を得る。
次いで、得られた成形体を焼成する。具体的には、上記成形体を大気中で400〜900℃で熱処理する。このように、大気中で熱処理を行うことで、混合した熱可塑性樹脂を脱脂(脱バインダ処理)するとともに、もともと粒子中に存在し熱処理により表面に移動してきたクロムと、粒子の主成分である鉄を酸素と結合させながら、金属酸化物からなる酸化層を粒子表面に生成させ、かつ、隣接する粒子の表面の酸化層同士を結合させる。生成された酸化層(金属酸化物層)は、主に鉄とクロムからなる酸化物であり、粒子間の絶縁を確保しつつ、軟磁性合金粒子の集合体からなるコア部材11を提供することができる。
ここで、上記原料粒子の例としては、水アトマイズ法で製造した粒子を適用することができ、原料粒子の形状の例として、球状、扁平状があげられる。また、上記熱処理において、酸素雰囲気下での熱処理温度を上昇させると、結合剤が分解し、軟磁性合金の粒子が酸化される。このため、成形体の熱処理条件として、大気中、400〜900℃で、1分以上保持することが好ましい。この温度範囲内で熱処理を行うことにより、優れた酸化層を形成することができる。より好ましくは、600〜800℃である。大気中以外の条件、例えば、酸素分圧が大気と同程度の雰囲気中で熱処理してもよい。還元雰囲気又は非酸化雰囲気では、熱処理により金属酸化物からなる酸化層の生成が行われないため、粒子同士が焼結し体積抵抗率が著しく低下する。また、雰囲気中の酸素濃度、水蒸気量については特に限定されないが、生産面から考慮すると、大気あるいは乾燥空気であることが望ましい。
上記熱処理において、400℃を越える温度に設定することにより、優れた強度と優れた体積抵抗率を得ることができる。一方、熱処理温度が900℃を超えると、強度は増加するものの、体積抵抗率の低下が発生する。また、上記熱処理温度での保持時間は、1分以上とすることにより鉄とクロムを含む金属酸化物からなる酸化層が生成されやすい。ここで、酸化層厚は一定値で飽和するため保持時間の上限はあえて設定しないが、生産性を考慮し2時間以下とすることが妥当である。
このように、熱処理温度、熱処理時間、熱処理雰囲気中の酸素量等により、酸化層の形成を制御することができるので、熱処理条件を上記範囲とすることにより、優れた強度と優れた体積抵抗率を同時に満たし、酸化層を有する軟磁性合金粒子の集合体からなるコア部材11を製造することができる。
なお、上記ドラム形の成形体は、原料粒子を含む造粒物により形成された成形体の周側面に、センターレス研摩により凹部を形成して得る方法に限定するものではなく、例えば、上記の造粒物を粉末成形プレスを用いて乾式一体成形することによりドラム形の成形体を得ることもできる。また、コア部材11のさらに他の製造方法としては、上述したように、予めドラム形の成形体を準備して焼成する方法に限定するものではなく、例えば、上記の造粒物により形成された成形体(周側面に凹部が形成されていない成形体)を準備した後、脱バインダ処理を行い、所定の温度で焼成した後に、当該焼結体の周側面にダイヤモンドホイール等を用いて凹部を切削加工により形成するものであってもよい。
また、コア部材11の底面11Bに溝15A、15Bを形成する場合には、上記コア部材11の製造工程において、原料粒子を含む造粒物により成形体を形成する際に、押型の表面に予め一対の突条を設けておき、該成形体の成形と同時に形成する方法のほか、例えば、得られた成形体の表面に切削加工を施して一対の溝を形成するものであってもよい。
(b)端子電極形成工程S102
次いで、端子電極形成工程S102においては、上記コア部材11の下鍔部11cの溝15A、15B内、又は、底面11Bに、上述した電極材料を含む電極ペーストを塗布し、所定の温度で焼付処理して端子電極16A、16Bを形成する。この電極形成方法は、製造コストが安価で、生産性が高いという特長を有している。
端子電極形成工程は、まず、電極材料(例えば銀や銅、あるいは、これらを含む複数種類の金属材料)の粉末と、所定の含有率のガラスフリットを含む電極ペーストを、上記溝15A、15B内、又は、下鍔部11cの底面11Bに塗布した後、コア部材11を所定の温度及び時間で熱処理することにより、端子電極16A、16Bを形成する。
ここで、電極ペーストの塗布方法としては、例えばローラー転写法やパッド転写法等の転写法、スクリーン印刷法や孔版印刷法等の印刷法のほか、スプレー法やインクジェット法等を適用することができる。なお、端子電極16A、16Bが、上記溝15A、15B内に良好に収納されて、安定した幅寸法を有するためには、転写法を用いる方がより好ましい。
また、電極ペーストにおける電極材料やガラスフリットは、用いる電極材料の種類や組成等に応じて適宜設定される。電極材料として、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、銀(Ag)とパラジウム(Pd)の合金、あるいは、銀(Ag)と白金(Pt)の合金等を適用した場合には、ガラスフリットの含有率は、概ね10wt%以上、好ましくは、10〜30wt%に設定される。なお、電極ペーストに含まれるガラスフリットは、例えばケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)等からなるガラス及び金属酸化物を含む組成を有している。また、下鍔部11cの底面11Bに電極ペーストを塗布した後のコア部材11の熱処理(電極焼付処理)は、例えば、大気雰囲気中や酸素濃度10ppm以下のNガス雰囲気中で、600〜1050℃の温度条件で実行される。より好ましくは、750〜900℃である。
このような端子電極形成方法により、上記の電極材料からなる端子電極16A、16Bが形成されるとともに、電極ペーストに含まれるガラスフリットが溶融し、多孔質のコア部材11の表面から拡散して、図2(b)に示したように、端子電極16A、16Bとコア部材11の界面、及び、コア部材11の表層の内部にガラス成分が拡散した部分11dが形成される。このとき、端子電極16A、16Bの膜厚は、概ね10〜50μmであり、ガラス成分が拡散した部分11dの深さ(拡散距離)は、概ね10μm以上であった。ここで、上記拡散距離は、端子電極16A、16Bの膜厚に対して概ね30%以上であった。これにより、電極形成領域におけるコア部材11と端子電極16A、16Bとの界面における結合が強固になって、両者が強固に接着される。
(c)コイル導線巻回工程S103
次いで、コイル導線巻回工程S103においては、上記コア部材11の巻芯部11aに、被覆導線を所定回数巻回する。具体的には、上記コア部材11の巻芯部11aが露出するように、コア部材11の上鍔部11bを巻線装置のチャックに固定する。次いで、例えば直径0.1〜0.2mmの被覆導線を下鍔部11cの底面11Bに形成された端子電極16A、16B(又は、溝15A、15B)のいずれか一方側に仮固定した状態で切断してコイル導線12の一端側とする。その後、上記チャックを回転させて被覆導線を巻芯部11aに、例えば3.5〜15.5回巻回する。次いで、被覆導線を上記端子電極16A、16B(又は、溝15A、15B)の他方側に仮固定した状態で切断してコイル導線12の他端側とすることにより、巻芯部11aにコイル導線12が巻回されたコア部材11が形成される。コイル導線12の一端側及び他端側は、上述した端部13A、13Bに対応する。
(d)外装工程S104
次いで、外装工程S104においては、上記コア部材11の上鍔部11bと下鍔部11cとの間であって、巻芯部11aの周囲に巻回されたコイル導線12の外周に、所定の透磁率を有する磁性粉含有樹脂からなる外装樹脂部18が被覆形成される。具体的には、例えばコア部材11を構成する軟磁性合金粒子と同一の組成及び構造を有する磁性粉が含有された磁性粉含有樹脂のペーストをディスペンサーにより、コア部材11の上鍔部11b及び下鍔部11c間の領域に吐出して、コイル導線12の外周を被覆するように充填する。次いで、例えば150℃で1時間加熱して、磁性粉含有樹脂のペーストを硬化させることにより、コイル導線12の外周を被覆する外装樹脂部18が形成される。
(e)コイル導線接合工程S105
次いで、コイル導線接合工程S105においては、まず、コア部材11に巻回されたコイル導線12の両端部13A、13Bの絶縁被覆14を剥離、除去する。具体的には、コア部材11に巻回されたコイル導線12の両端部13A、13Bに、被覆剥離溶剤を塗布することにより、あるいは、所定のエネルギーのレーザー光を照射することにより、コイル導線12の両端部13A、13B近傍の絶縁被覆14を形成する樹脂材料を溶解又は蒸発させて、完全に剥離、除去する。
次いで、絶縁被覆14が剥離されたコイル導線12の両端部13A、13Bを、各端子電極16A、16Bに半田接合して、導電接続する。具体的には、絶縁被覆14が剥離されたコイル導線12の両端部13A、13Bを含む各端子電極16A、16B上に、フラックスを含有する半田ペーストを、例えば孔版印刷法により塗布した後、240℃に加熱されたホットプレートにより加熱押圧して、半田を溶融、固着させることにより、コイル導線12の両端部13A、13Bが各端子電極16A、16Bに半田17A、17Bにより接合される。端子電極16A、16Bへのコイル導線12の半田接合後、フラックス残渣を除去する洗浄処理が行われる。
<作用効果の検証>
次に、本発明に係る電子部品及びその製造方法における作用効果について説明する。
ここでは、本実施形態に係る電子部品及びその電極形成方法における作用効果を検証するために、比較対象として、電子部品の基体が周知のフェライトからなる場合を示す。なお、フェライトからなる基体を有する電子部品は、例えば、上述したインダクタ等をはじめとして、既に一般に市販されて種々の電子機器に搭載されているものであって、固着強度をはじめ、様々な信頼性試験において、市場の高い評価を受けているものである。
図6は、本発明に係る電子部品の基体に適用される軟磁性合金粒子の集合体(成形体)とフェライトとにおける、ガラス成分の拡散に関する特性を示す図である。ここで、図6(a)は、本発明に係る基体と、フェライトからなる基体とにおける吸水率、密度(見かけ密度、真密度)、空孔率の違いを示す表であり、図6(b)は、本発明に係る基体と、フェライトからなる基体とにおける吸水率の違いを示す図である。また、図7は、本発明に係る基体と、フェライトからなる基体とにおける表面近傍の断面を示す模式図である。図7(a)は、本発明に係る基体における表面近傍の断面を示す模式図であり、図7(b)は、フェライトからなる基体における表面近傍の断面を示す模式図である。図8は、本発明に係る基体における表面近傍の断面を説明するための拡大模式図である。図8(a)は、本発明に係る基体におけるガラス成分の拡散前の状態を示す拡大模式図であり、図8(b)は、本発明に係る基体におけるガラス成分の拡散後の状態を示す拡大模式図である。図9は、上述した実施形態に係る巻線型インダクタにおいて、端子電極を形成した際のガラス成分の拡散状態を説明するための拡大模式図である。ここで、図9においては、図示の都合上、コア部材11の上面側に端子電極16A、16B(以下、便宜的に、「端子電極16」と総称する)が形成されている場合の断面構造を示す。
上述したように、本発明に係る電子部品の基体に適用される軟磁性合金粒子の集合体(成形体)は多孔質であるため、図6(a)、(b)に示すように、緻密な結晶構造を有する周知のフェライトと比較して、吸水率や空孔率が高い。具体的には、本発明に係る基体においては、真密度が7.6g/cmの基体が見かけ密度6.2g/cmのとき、吸水率が2%、空孔率が18.4%と高い値を示す。これに対して、フェライトからなる基体においては、真密度が5.35g/cmの基体が見かけ密度5.34g/cmのとき、吸水率が0.2%、空孔率が0.2%と、本実施形態に係る基体に比較して概ね1/10以下の低い値を示す。この状態を図7、図8に示す。
すなわち、図7(a)、図8(a)に示すように、本発明に係る基体においては、軟磁性合金粒子の表面に酸化層が形成され、該酸化層を介して軟磁性合金粒子同士が結合した構造を有しているため、基体表面から内部にかけて略同様に、軟磁性合金粒子間に比較的大きな空孔部分が存在する。これに対して、図7(b)に示すように、周知のフェライトからなる基体においては、緻密な結晶構造を有しているため、基体内部には空孔部分が略皆無の状態になっている。
上述した実施形態においては、このような多孔質の基体に対して、ガラスフリットの含有率が概ね10wt%以上含まれた電極ペーストを塗布、乾燥し、所定の条件で焼付処理を施すことにより、図8(a)、(b)に示すように、基体内部の軟磁性合金粒子間の空孔部分に、ガラス成分が拡散して充填され、少なくとも基体の表面又は表層における多孔質性が改善される。
具体的には、上述した実施形態に示した巻線型インダクタ10において、例えば粒度6〜23μmの金属粉を成形(例えば6.0〜6.6g/cm→理論空孔率22〜13%)、研削、焼成してドラム型のコア部材11を製造する。次いで、当該コア部材11の下鍔部11cの電極形成領域に、ガラスフリットを10〜30wt%の含有率で含む銅(Cu)からなる電極ペーストを塗布、乾燥し、600〜1050℃の温度で焼付処理して端子電極16を形成する。次いで、巻芯部11aに被覆導線からなるコイル導線12を巻回した後、磁性粉含有樹脂からなる外装樹脂部18を被覆形成し、次いで、端子電極16とコイル導線12を半田接続することにより、巻線型インダクタ10を製造した。
ここで、端子電極形成工程において、上述したように、ガラスフリットを所定の含有率で含む電極ペーストを塗布し、所定の条件で焼付処理を行うことにより、図9に示すように、ガラス成分16gが液相の状態でコア部材11を構成する金属粉(軟磁性合金粒子)11p間に拡散して充填される。このときのガラス成分16gが拡散した部分11dの拡散距離Dは、コア部材11の表面(端子電極16との界面)から概ね10μm以上であった。また、このときの端子電極16の膜厚は、概ね10〜50μmであり、上記拡散距離Dは、端子電極16の膜厚に対して概ね30%以上であった。
次に、上述した具体例に示した巻線型インダクタにおいて、端子電極の固着強度について詳しく検証する。
(検証例1)
図10は、本発明に係る電子部品の製造方法を適用した場合における、焼付処理条件と電極の固着強度との関係を示す実験結果である。図10(a)は、焼付温度に対する電極の半田接合性の評価結果を示す表であり、図10(b)は、焼付温度及びガラスフリット添加量に対する電極の固着強度との関係を示す実験結果である。図11は、巻線型インダクタの剥離強度試験(固着強度試験)の方法を説明するための図である。
まず、端子電極形成工程において実行される焼付処理の、焼付温度と端子電極の半田接合性について検証する。上述した製造方法に示した端子電極形成工程において、コア部材11の表面に所定の電極ペーストを塗布した後に実行される焼付処理の温度(焼成温度)と、当該焼付処理により形成される端子電極16表面の半田接合性との関係は、図10(a)に示される。ここで、図10(a)に示した半田接合性の評価結果は、電極材料として銅(Cu)を用い、焼付温度を650〜900℃の範囲で50℃ごとに異ならせて形成した各端子電極において、電極表面における半田の接着強度が所定の基準値を満たしているか否かを評価したものである。
図10(a)に示すように、この評価結果によれば、焼付温度を650℃に設定した場合には、端子電極を形成する銅の結晶化が不十分で緻密性に欠け、半田接合時に半田ペーストが端子電極の銅粒子間に浸み込んでしまい電極表面に均一に濡れ広がらず、一定の外観基準を満たさない。この結果は、銅電極の緻密性によるものであり、ガラスフリット添加量には依存しないことが確認されている。一方、焼付温度を700℃以上に設定した場合には、端子電極を形成する銅の結晶化が十分進行して、上述したようなはんだ濡れの異常は生じないことが確認された。このことから、上述した具体例に示したように、電極材料として銅を適用した場合、焼付処理における焼付温度を概ね700℃以上に設定することにより、半田ペーストが端子電極の表面に均一に濡れ広がり、半田接合時の外観基準を満たし、良好な半田接合性が得られることが判明した。
次いで、上述した端子電極の半田接合性の評価結果に基づいて、概ね700℃以上の温度で焼付処理を行った場合の、端子電極の固着強度について検証する。端子電極形成工程における焼付処理の温度と、ペースト中へのガラスフリット添加量、及び、端子電極の固着強度との関係は、図10(b)に示される。
ここで、端子電極16の固着強度は、概ね、以下のような方法により測定した。まず、上述した製造方法により製造された巻線型インダクタ10、もしくは、端子電極16が形成されたコア部材11を、図4に示したように、回路基板20上の実装ランド22に端子電極16を半田接合することにより実装する。そして、コア部材11が実装された回路基板20に対して、図11に示すように、コア部材11の側面(図面左方)から回路基板20の上面と平行に矢印方向に剥離強度試験装置の治具で加圧して、その剥離強度を測定し、これを電極の固着強度として評価を行った。ここでは、一般的な電子機器において、回路基板上に実装される種々の電子部品の剥離強度(固着強度)として規定されている10kgfを基準(下限値)として、この10kgf以上の強度で良好な実装が実現されるものと規定した。
図10(b)に示すように、この実験結果によれば、上述した具体例に示したように、電極材料として銅を用い、10wt%以上の含有率(図中では添加量と表記)でガラスフリットを含む電極ペーストを適用した場合、焼付処理における焼付温度を700℃以上に設定することにより、良好な固着強度(10kgf以上)が得られることが判明した。また、図10(b)に示した実験結果によれば、焼付処理の温度が700〜900℃の範囲においては、当該焼付温度を高くするほど、固着強度が向上する傾向が得られ、また、焼付温度900℃においては、5wt%のガラスフリット含有率でも良好な固着強度(18kgf)が得られることが確認された。なお、図中では、当該範囲の固着強度データを明示するために、便宜的にハッチングを施して示した。
(検証例2)
上述した検証例1においては、電極材料として銅を用い、焼付温度に対するガラスフリット添加量及び固着強度の関係について説明した。次に、ガラスフリットの含有率と、焼付温度及び拡散距離との関係について検証する。
図12は、本発明に係る電子部品の製造方法を適用した場合における、電極ペーストの成分とガラスフリットの拡散距離との関係を示す実験結果である。図12(a)は、電極ペーストに含まれるガラスフリットの含有率(添加量)と各焼付温度における電極中のガラスフリットの拡散距離との関係を示す実験結果である。ここで、図12(a)に示した実験結果は、電極材料として銅(Cu)を用い、ガラスフリットの含有率を3〜30wt%の範囲で任意に異ならせた電極ペーストを焼付処理して端子電極を形成した場合の、端子電極からの、ガラスフリットの拡散距離に関する実測データである。なお、図中では、図10(b)に示した、良好な固着強度が得られる範囲に対応する拡散距離データについて、便宜的にハッチングを施して示した。
ここで、コア部材11内部へのガラスフリット(ガラス成分)の拡散距離は、概ね、以下のような方法により測定した。まず、図9に示したように、ガラス成分が拡散した部分(図2(b)の11dに相当する)の基体について、倍率1000〜5000倍で写真を10枚撮影する。次いで、撮影された各写真について、基体表面(コア部材と端子電極との界面)からガラス成分の拡散した最大及び最小の距離を測定し、その中点となる距離を算出する。次いで、撮影された10枚の写真について、算出された上記各中点の距離を平均して、当該平均値を拡散距離Dと規定した。
上述した検証例1において、図10(b)に示したように、ガラスフリットの含有率を3wt%、5wt%に設定した場合には、ペーストから供給される当該ガラスフリットの大半が多孔質のコア部材11の内部に拡散してしまい、端子電極との界面(コア部材11の表面)にほとんど残留しないため、十分な固着強度が得られないことが確認された。但し、5wt%とした場合において、焼付温度が高い場合(図では900℃)には、ペーストからのガラスフリットの供給が促進され、十分な固着強度が得られることが確認された。
一方、ガラスフリットの含有率を10wt%以上に設定した場合には、ガラスフリットが多孔質のコア部材11の内部に拡散するとともに、コア部材11の表面(端子電極との界面)にも十分な量のガラスフリットが残留するため、10kgf以上の十分な固着強度が得られることが確認された。このことから、上述した具体例に示したように、電極材料として銅を適用した場合、焼付温度を高く設定した条件下ではガラスフリットの含有率を概ね5wt%以上とすることもできるが、好ましくは、10wt%以上に設定することにより、図10(b)に示すように、フェライトを基体とした場合の固着強度(概ね22〜28kgf)に近似する程度の、良好な固着強度が得られることが判明した。
そして、このような固着強度特性を有する巻線型インダクタにおいて、電極ペーストに含まれるガラスフリットの含有率(添加量)と電極中のガラスフリットの拡散距離との関係について検証した実験結果によれば、図12(a)に示すように、ガラスフリットの拡散距離Dは、ガラスフリットの含有率が10wt%の場合には15μm以上、また、ガラスフリットの含有率が15wt%以上の場合には20μm以上であることが確認された。また、図12(a)に示した実験結果によれば、電極ペーストに含まれるガラスフリットの含有率を高くするほど、ガラスフリットの拡散距離Dが概ね大きくなる傾向が得られた。また、ガラスフリットの含有率が3wt%、5wt%の場合には、ガラスフリットの拡散距離Dが10μm未満(概ね数μm程度)となることが確認された。但し、ガラスフリットの含有率が5wt%の場合でも焼付温度900℃においては、ガラスフリットの拡散距離Dが10μm以上となることが確認された。このような実験結果により、電極中のガラスフリットの拡散距離が概ね10μm以上のときに、良好な固着強度(10kgf以上)が得られることが判明した。ここで、ガラスフリットの拡散距離は、コア部材の電気特性等に影響を与えない範囲であれば、特に上限値を限定するものではない。なお、本実験結果において、検出限界以下のデータについては、図中に「ND」と表記した。また、比較対象となるフェライトを基体とした場合においては、緻密な結晶構造を有しているため、基体内部にガラスフリットが拡散されず、拡散距離Dは検出限界以下であった。
また、図12(b)は、電極ペーストに含まれるガラスフリットの含有率と電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合との関係を示す計算結果である。ここで、図12(b)に示した計算結果は、上述した場合と同様に、電極材料として銅(Cu)を用い、ガラスフリットの含有率を3〜30wt%の範囲で任意に異ならせた電極ペーストを焼付処理して、電極膜厚38±2μmの端子電極を形成した場合の、当該電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離(図12(a)に示した実測データ)の割合を示す計算データである。なお、図中では、図10(b)に示した、良好な固着強度が得られる範囲に対応する計算データについて、便宜的にハッチングを施して示した。
図12(b)に示すように、この計算結果によれば、電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合は、ガラスフリットの含有率が10wt%以上の場合には38%以上であることが確認された。また、図12(b)に示した計算結果によれば、電極ペーストに含まれるガラスフリットの含有率を高くするほど、電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合が概ね大きくなる傾向が得られた。また、ガラスフリットの含有率が3wt%、5wt%の場合には、電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合が概ね20%以下となることが確認された。但し、ガラスフリットの含有率が5wt%の場合でも焼付温度900℃においては、電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合が30%となることが確認された。このような計算結果により、電極膜厚に対するガラスフリットの拡散距離の割合が概ね30%以上のときに、良好な固着強度(10kgf以上)が得られることが判明した。
このように、上述した実施形態に係る電子部品及びその製造方法によれば、所定量のガラスフリットを含む電極ペーストを所定の条件で焼付処理して端子電極16を形成することにより、ガラス成分が多孔質のコア部材11の表面から所定の深さまで拡散するとともに、コア部材11の表面にも十分な量のガラスフリットが残留するため、基体であるコア部材11と端子電極16とが強固に結合して、十分な固着強度が得られる。これにより、多孔質の基体に電極を形成する場合であっても、基体と電極の接合性や密着性が低下することを抑制することができるので、概ねフェライトを基体に適用した場合と同程度の固着強度を実現することができ、このような電子部品を搭載した電子機器における信頼性の向上に寄与することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る電子部品及びその製造方法の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、所定量のガラスフリットを含む電極ペーストを焼付処理して、基体であるコア部材の内部にガラス成分を拡散させるとともに、コア部材表面に電極材料からなる端子電極を形成する場合について説明した。第2の実施形態においては、端子電極が2層以上の電極層により形成された構成を有している。
図13は、第2の実施形態に係る電子部品に適用される端子電極の構造例を示す要部断面の模式図である。また、図14は、本実施形態に係る端子電極の構造例におけるガラス成分の拡散状態を説明するための拡大模式図である。ここで、図13、図14においては、図示の都合上、コア部材11の上面側に端子電極16が形成されている場合の断面構造を示す。
第2の実施形態に係る電子部品においては、例えば図13の模式図に示すように、多孔質のコア部材11の電極形成領域に、第1の電極層16xと第2の電極層16yとからなる積層構造を有する端子電極16が設けられている。下層側の第1の電極層16xは、上述した第1の実施形態と同様に、所定量のガラスフリットを含む第1の電極ペーストを焼付処理することにより形成される焼付電極であり、内部にガラスフリットの残留物や空孔部分が存在して、比較的不均一な焼結状態を有している。この第1の電極層16xがコア部材11に接する界面(すなわち、コア部材11の表面)からコア部材11の内部方向(図面下方向)には、第1の電極層16xを形成する際に用いられる第1の電極ペーストに含まれるガラスフリットに起因するガラス成分が、所定の深さで拡散した部分11dが形成されている。ここで、ガラス成分がコア部材11の内部方向に拡散している深さ(拡散距離)は、上述した第1の実施形態と同様に概ね10μm以上であることが好ましい。また、上層側の第2の電極層16yは、電極材料のみからなりガラスフリットが含まれていない第2の電極ペーストを焼付処理することにより形成される焼付電極であり、結晶化が十分進行して、上述した第1の電極層16xに比較して緻密な結晶状態を有している。なお、第2の電極層16yは、ガラスフリットが含まれていない電極ペーストを焼付処理して形成されるものであることが好ましいが、極微量のガラスフリットを含む電極ペーストを焼付処理したものであってもよい。
このような構造を有する端子電極は、上述した第1の実施形態に示した端子電極形成工程において、概ね以下のような手順で形成される。
すなわち、上述した端子電極形成工程S102において、まず、コア部材11の電極形成領域に、銅(Cu)等の電極材料に、概ね10wt%以上の含有率のガラスフリットが含まれた第1の電極ペーストを塗布する。次いで、第1の電極ペーストの乾燥後、当該第1の電極ペースト上に、ガラスフリットを含まない第2の電極ペーストを塗布する。次いで、第2の電極ペーストの乾燥後、コア部材11を700℃以上の温度で焼付処理をして、電極層16xと電極層16yが積層された2層構造からなる端子電極16を形成する。
このような端子電極形成方法により、上記の電極材料からなる端子電極16がコア部材の上面に形成されるとともに、第1の電極ペーストに含まれるガラスフリットが多孔質のコア部材11の表面から拡散して、図14に示すように、端子電極16(第1の電極層16x)とコア部材11の界面、及び、コア部材11の表層の内部にガラス成分16gが拡散した部分11dが形成される。このとき、ガラス成分16gの拡散距離D(ガラス成分16gが拡散した部分11dの深さ)は、上述した第1の実施形態と同様に、概ね10μm以上であった。これにより、電極形成領域におけるコア部材11と端子電極16との界面における結合が強固になって、両者が強固に接着される。
また、第1の電極層16xとなる第1の電極ペーストと、第2の電極層16yとなる第2の電極ペーストを重ねて塗布した後、一括して焼付処理(一括焼成)することにより、端子電極16を形成しているので、第1の電極層16xと第2の電極層16yとの間の結晶化が進行して両者が強固に結合され、略一体の電極層からなる端子電極16が形成される。このとき、図14の模式図に示すように、第1の電極層16xの内部には、ガラスフリットの残留物や空孔部分が存在して、比較的不均一な焼結状態を有している。これに対して、第2の電極層16yは、電極材料のみからなる第2の電極ペーストを焼付処理することにより形成されるので、端子電極16(第2の電極層16y)を形成する銅等の結晶化が十分進行して、第1の電極層16xよりも緻密な結晶状態を有している。これにより、コア部材11の表面に形成される第1の電極層16xの結晶状態が比較的不均一で、半田接合時に半田ペーストが端子電極の銅粒子間に浸み込んでしまい電極表面に均一に濡れ広がらず、一定の外観基準を満たさない場合であっても、上層の第2の電極層16yの結晶状態が緻密であるため、外観基準を満たすことができる。
なお、本実施形態に示した端子電極形成工程においては、第1の電極層16x及び第2の電極層16yを、各々、第1の電極ペースト及び第2の電極ペーストを焼付処理した焼付電極により構成した場合について説明した。すなわち、第1の電極層16xを形成するための、所定量のガラスフリットを含む第1の電極ペーストを塗布、乾燥した後、第2の電極層16yを形成するための、ガラスフリットを含まない第2の電極ペーストを塗布、乾燥し、その後、これらの電極ペーストを一括焼成して、電極層16xと電極層16yが積層された2層構造からなる端子電極16を形成する製造方法を示した。
本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第2の電極層16yとして、銅等の電極材料をスパッタリング法や蒸着法等を用いて第1の電極層16x上に形成された金属薄膜を適用するものであってもよい。すなわち、第1の電極層16xを形成するための、所定量のガラスフリットを含む電極ペーストを塗布した後、焼付処理を行って、第1の電極層16xを形成するとともに、コア部材11の内部にガラス成分16gが拡散した部分11dが形成される。次いで、銅等の電極材料をスパッタリング法や蒸着法等を用いて第1の電極層16x上に金属薄膜からなる第2の電極層16yを形成する。これにより、第1の電極層16xと第2の電極層16yが積層された2層構造からなる端子電極16が形成される。
このような端子電極16の構造及び形成方法によれば、焼付電極よりも表面の緻密性が良好な金属薄膜を確実に形成することができ、この金属薄膜を第2の電極層16yとして用いることができるので、半田接合時の外観基準を満たし、良好な半田接合性を実現することができる。
なお、本実施形態においては、端子電極16が、第1の電極層16x及び第2の電極層16yからなる2層構造を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、端子電極16が2層以上の複数層からなる積層構造を有するものであってもよい。要するに、本発明に係る電子部品に適用される端子電極は、少なくとも、多孔質のコア部材11の表面に直接形成される(最下層の)電極層が、所定量のガラスフリットを含む電極ペーストを焼付処理して形成される焼付電極からなり、かつ、半田接合される最上層の電極層が、略電極材料のみからなる緻密な結晶状態を有するものであれば、これらの間に適当な導電層を1又は複数層介在させた構造を有するものであってもよい。
(他の適用例)
上述した各実施形態においては、電子部品の一例として、巻線型のインダクタを示して詳しく説明したが、本発明は、面実装型の電子部品であれば、積層型インダクタ等の他の構成を有するものであってもよい。以下、積層型インダクタの適用例について簡単に説明する。なお、ここで示す積層型インダクタの構成は、本発明が適用可能な一例を示すものであって、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
図15は、本発明に係る電子部品として適用される積層型インダクタの構成例を示す概略構成図である。ここで、図15(a)は、本適用例に係る積層型インダクタの概略斜視図であり、図15(b)は、図15(a)に示したB−B線に沿った積層型インダクタの断面を示す図である。図16は、本適用例に係る積層型インダクタの分解斜視図である。
図15、図16に示すように、本適用例に係る積層型インダクタ30は、直方体形状の部品本体31と、該部品本体31の長さ方向の両端部に設けられた一対の端子電極34、35と、を有している。
部品本体31は、図15(a)、(b)に示すように、直方体形状の磁性体部32と、該磁性体部32によって被覆された螺旋状のコイル部33と、を有しており、該コイル部33の一端は端子電極34に接続され、他端は端子電極35に接続されている。
磁性体部32は、図16に示すように、例えば計20層の磁性体層ML1〜ML6を積層して一体化した構造を有している。ここで、磁性体部32は、上述した各実施形態に示した基体(コア部材11)と同様に、例えば鉄(Fe)と、ケイ素(Si)と、クロム(Cr)を含有する軟磁性合金の粒子群から構成される多孔質の成形体が適用される。
また、コイル部33は、例えば銀(Ag)粒子群を主体として構成され、図16に示すように、複数のコイルセグメントCS1〜CS5と、該コイルセグメントCS1〜CS5を接続する中継セグメントIS1〜IS4とが、螺旋状に一体化してコイル構造を有している。
各コイルセグメントCS1〜CS4は帯状を有し、図16に示すように、それぞれ所定の平面パターンを有している。また、各中継セグメントIS1〜IS4は磁性体層ML1〜ML4を貫通する柱状を有している。そして、図15(b)、図16に示すように、最上層のコイルセグメントCS1は、連続的に形成された引出部分LS1を介して端子電極34に接続され、また、最下層のコイルセグメントCS5は、連続的に形成された引出部分LS2を介して端子電極35に接続されている。
一対の端子電極34、35は、コイル部33と同様に、例えば銀(Ag)粒子群を主体として構成され、図15(a)、(b)に示すように、部品本体31の長さ方向の各端面と該端面近傍の4側面に形成されている。ここで、端子電極34、35は、上述した各実施形態に示した端子電極16と同様に、基体である多孔質の磁性体部32(部品本体31)の長さ方向の両端部に、上述した各実施形態に示した製造方法(端子電極形成工程)に示した方法を用いて形成される。すなわち、端子電極34、35の形成工程において、所定量のガラスフリットを含む電極ペーストを所定の温度で焼付処理して端子電極34、35を形成することにより、ガラス成分が多孔質の磁性体部32の表面から所定の深さまで拡散するとともに、磁性体部32の表面にも十分な量のガラスフリットが残留するため、基体である磁性体部32と端子電極34、35とが強固に結合して、十分な固着強度が得られる。
以上のように、本適用例によれば、回路基板上への面実装が可能な積層型のインダクタにおいて、磁性体部32と端子電極34、35との接合性や密着性が低下することを抑制することができるので、このような電子部品を搭載した電子機器における信頼性の向上に寄与することができる。
なお、上述した各実施形態及び適用例においては、インダクタの端子電極に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、多孔質の基体を有する電子部品において、電極を形成するものであれば、他の電子部品であっても良好に適用することができる。
本発明は、回路基板上への面実装が可能な小型化されたインダクタ等の電子部品に適用して好適である。特に、多孔質の基体を有する電子部品において、当該基体に良好に電極を形成することができ極めて有効である。
10 巻線型インダクタ
11 コア部材
11a 巻芯部
11b 上鍔部
11c 下鍔部
11d ガラス成分が拡散した部分
12 コイル導線
16、16A、16B 端子電極
16x 第1の電極層
16y 第2の電極層
20 回路基板
22 実装ランド
30 積層型インダクタ
31 部品本体
32 磁性体部
33 コイル部
34、35 端子電極
S101 コア部材製造工程
S102 端子電極形成工程
S103 コイル導線巻回工程
S104 外装工程
S105 コイル導線接合工程

Claims (18)

  1. 基体と、
    前記基体の表面に設けられ、所定の電極材料を含む電極ペーストを焼付処理して形成される焼付電極を含む電極と、
    を備え、
    前記基体は、酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有し、前記電極ペーストに含まれるガラスフリットに起因するガラス成分が、前記電極が接する界面から前記基体の内部方向に、概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散していることを特徴とする電子部品。
  2. 前記基体は、前記ガラス成分が前記基体の内部方向に、前記電極の膜厚に対して概ね30%以上の距離で拡散していることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
  3. 前記ガラスフリットが前記基体の内部及び表面に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
  4. 前記電極は、複数の電極層が積層された構造を有し、少なくとも、前記基体に接する最下層の前記電極層は、前記ガラスフリットを含む前記電極ペーストを焼付処理して形成される前記焼付電極からなり、前記最下層の前記電極層の上層に設けられる、最上層の前記電極層は、前記ガラスフリットを含まない、前記電極材料のみからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品。
  5. 前記電極は、前記複数の電極層が前記電極ペーストを焼付処理して形成される前記焼付電極からなり、少なくとも、前記最上層の前記電極層が、前記ガラスフリットを含まない前記電極材料から形成される前記焼付電極からなることを特徴とする請求項4記載の電子部品。
  6. 前記電極は、少なくとも、前記最上層の前記電極層が、前記最下層の前記電極層より緻密な結晶状態の金属薄膜からなることを特徴とする請求項4記載の電子部品。
  7. 前記基体は、吸水率が1.0%以上、又は、空孔率が10〜25%の金属粉の成形体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子部品。
  8. 前記基体は、鉄、ケイ素、及び、鉄よりも酸化しやすい元素を含有する前記軟磁性合金の粒子群から構成され、前記各軟磁性合金粒子の表面には当該軟磁性合金粒子の前記酸化層があり、当該酸化層は当該軟磁性合金粒子に比較して前記鉄より酸化しやすい元素を多く含み、前記粒子同士は前記酸化層を介して結合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子部品。
  9. 前記鉄よりも酸化しやすい元素は、クロムであって、
    前記軟磁性合金は、少なくとも、クロムが2〜15wt%含有することを特徴とする請求項8記載の電子部品。
  10. 前記電子部品は、
    柱状の巻芯部及びその両端に設けられた一対の鍔部を有する前記基体と、前記基体の前記巻芯部に巻回された被覆導線と、前記基体の外表面に設けられ、前記被覆導線の両端部が接続された一対の前記電極と、前記被覆導線部の外周を被覆するように前記一対の鍔部間に設けられた外装樹脂部と、を備え、
    前記一対の電極が接する前記基体の外表面から内部方向に、前記一対の電極を形成するための前記電極ペーストに含まれる前記ガラス成分が、概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電子部品。
  11. 酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた電極ペーストを塗布する工程と、
    前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記電極材料からなる電極を形成するとともに、前記電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
    を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  12. 前記ガラス成分は、前記基体の内部方向に、前記電極の膜厚に対して概ね30%以上の距離で拡散していることを特徴とする請求項11記載の電子部品の製造方法。
  13. 酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた第1の電極ペーストを塗布する工程と、
    前記第1の電極ペースト上に、前記電極材料のみからなる第2の電極ペーストを塗布する工程と、
    前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記第1の電極ペーストからなる第1の電極層と前記第2の電極ペーストからなる第2の電極層とを形成するとともに、前記第1の電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
    を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  14. 酸化層を介して結合する軟磁性合金粒子で形成され、前記軟磁性合金粒子間に空孔を有する基体の表面に、所定の電極材料にガラスフリットが概ね10wt%以上の含有率で含まれた電極ペーストを塗布する工程と、
    前記基体を700℃以上の温度で焼付処理して、前記電極材料からなる第1の電極層を形成するとともに、前記電極ペーストに含まれる前記ガラスフリットに起因するガラス成分を、前記基体の表面から内部方向に概ね10μm以上の深さの前記空孔部分に拡散させる工程と、
    前記第1の電極層上に、前記電極材料をスパッタリング法や蒸着法等を用いて第2の電極層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  15. 前記電子部品は、前記第1の電極層及び前記第2の電極層を含む複数の複数層が積層された電極を有し、少なくとも、前記第1の電極層は、前記基体に接する最下層の電極層であり、前記第2の電極層は、前記第1の電極層の上層に設けられる、最上層の電極層であることを特徴とする請求項13又は14に記載の電子部品の製造方法。
  16. 前記基体は、吸水率が1.0%以上、又は、空孔率が10〜25%の金属粉の成形体であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の電子部品。
  17. 前記基体は、鉄、ケイ素、及び、鉄よりも酸化しやすい元素を含有する前記軟磁性合金の粒子群から構成され、前記各軟磁性合金粒子の表面には当該軟磁性合金粒子の前記酸化層があり、当該酸化層は当該軟磁性合金粒子に比較して前記鉄より酸化しやすい元素を多く含み、前記粒子同士は前記酸化層を介して結合されていることを特徴とする請求項11乃至16のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
  18. 前記鉄よりも酸化しやすい元素は、クロムであって、
    前記軟磁性合金は、少なくとも、クロムが2〜15wt%含有することを特徴とする請求項17記載の電子部品の製造方法。
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