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JP6008884B2 - 内燃機関のポンプ損失算出装置 - Google Patents

内燃機関のポンプ損失算出装置 Download PDF

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Description

本発明は、排気弁の開弁タイミングを変更可能な可変動弁機構を有する内燃機関のポンプ損失を算出する内燃機関のポンプ損失算出装置に関する。
内燃機関のポンプ損失を制御する従来の制御装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この制御装置では、排気弁の開弁特性を変更する可変動弁機構と、吸気通路に設けられたスロットル弁とを制御することによって、内燃機関のポンプ損失が制御される。例えば、フューエルカット中、減速要求ありと判定された場合には、排気弁の開弁タイミング(EVO)を膨張行程の中間付近よりも若干前に進角させるEVO進角制御と、スロットル弁を絞るスロットリング制御が、同時に実行される。
このEVO進角制御により、膨張行程の途中で排気弁が開弁し、筒内圧が大気圧まで急激に低下することによって、正の仕事量が大幅に減少し、ポンプ損失が相対的に増大する。また、スロットリング制御により、吸入行程における負圧が増大することによって、ポンプ損失が増大する。さらに、この制御装置では、EVOの進角によるポンプ損失とスロットリングによるポンプ損失との和が算出され、この和が目標値に達するまで、EVO進角制御とスロットリング制御が継続される。これにより、必要なポンプ損失が得られ、減速要求に応じたエンジンブレーキ力が確保される。
特許第4609279号公報
内燃機関のポンプ損失は、気筒内のガスの圧縮・膨張によってなされた正の仕事量に対する損失として作用するため、ガスの圧縮・膨張によって発生する燃焼トルクが同じであっても、内燃機関から出力される正味のトルクは、ポンプ損失に応じて変化する。このため、内燃機関の出力トルクを用いた協調制御、例えば内燃機関から各車輪への駆動力の配分による車両のトラクションコントロールやスタビリティコントロールを行う際には、内燃機関のポンプ損失を高い精度で求めることが不可欠になる。
これに対し、上述した従来の制御装置では、EVOを進角側に制御することによって、内燃機関のポンプ損失を制御するにすぎない。また、EVOの進角によるポンプ損失を算出するものの、その具体的な算出方法についてはまったく示されておらず、内燃機関のポンプ損失を高い精度で求めることはできない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、特に排気弁の開弁タイミングが変更された場合において、それに伴って変化するポンプ損失を反映させながら、内燃機関のポンプ損失を精度良く算出することができる内燃機関のポンプ損失算出装置を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、排気弁7の開弁タイミングEVOを変更可能な可変動弁機構(実施形態における(以下、本項において同じ)排気側可変動弁機構60)を有する内燃機関3のポンプ損失(ポンプ損失トルクTRQPMPLSS)を算出する内燃機関のポンプ損失算出装置であって、吸気圧PIN及び排気圧PEXを取得する吸排気圧取得手段(吸気圧センサ33、排気圧センサ35)と、気筒3a内に存在するガスの量を筒内ガス量GAIRCYLとして推定する筒内ガス量推定手段(ECU2、図6のステップ12)と、排気弁7の開弁タイミングEVOを表す排気開弁タイミングパラメータ(排気位相CAEX)を検出する排気開弁タイミングパラメータ検出手段(排気位相センサ31)と、内燃機関3の回転数NEを検出する回転数検出手段(クランク角センサ36)と、取得された吸気圧PIN及び排気圧PEXに基づいて、内燃機関3のポンプ損失の基本量(ポンプ損失トルクの基本量TRQLSSB)を算出する基本量算出手段(ECU2、図6のステップ11)と、を備え、基本量算出手段は、検出された内燃機関3の回転数NEにさらに基づき、回転数NEが高いほど、ポンプ損失の基本量をより大きな値に算出し(図6のステップ11)、推定された筒内ガス量GAIRCYL、及び検出された排気開弁タイミングパラメータに基づき、内燃機関3のポンプ損失のうち、排気弁7の開弁タイミングEVOの変更に伴って変化するポンプ損失を、排気押出し損失(排気押出し損失トルクTRQLSSC)として算出する排気押出し損失算出手段(ECU2、図6のステップ13)をさらに備え、排気押出し損失算出手段は、内燃機関3の回転数NEに応じた排気側の脈動の影響を反映するようにあらかじめ設定された内燃機関3の回転数NEと排気押出し損失との関係に基づき、基本量算出手段による基本量の算出の場合とは異なる関係で、内燃機関3の回転数NEに応じて排気押出し損失を算出し(図6のステップ13)、算出された基本量及び押出し損失に基づいて、内燃機関3のポンプ損失を算出するポンプ損失算出手段(ECU2、図6のステップ14)をさらに備えることを特徴とする。
この内燃機関では、可変動弁機構によって排気弁の開弁タイミングが変更される。また、本発明のポンプ損失算出装置によれば、吸気圧及び排気圧を取得するとともに、取得された吸気圧及び排気圧に基づいて、内燃機関のポンプ損失の基本量が算出される。この基本量は、排気圧と吸気圧との圧力差に起因し、排気行程から吸入行程にわたる間に気筒内のガスがピストンに対してなす負の仕事量、すなわち、内燃機関のポンプ損失のうちの基本部分に相当するものであり、図9のPV線図中の排気行程に対応するラインと吸入行程に対応するラインで囲まれた領域Aの面積でほぼ表される。したがって、ポンプ損失の基本量を、取得された実際の吸気圧及び排気圧に基づき、精度良く算出することができる。
さらに、本発明によれば、ポンプ損失の基本量とは別個に、排気押出し損失が算出される。以下に述べるように、この排気押出し損失は、内燃機関のポンプ損失のうちの、排気弁の開弁タイミングの変更に伴って変化する、燃焼ガスを気筒から押し出すためのポンプ損失に相当する。すなわち、排気弁が膨張行程中の比較的早いタイミングで開弁する場合には、気筒からの燃焼ガスの排出がより早くから開始されるため、図9に実線で示すように、排気下死点(BDC)において筒内圧は十分に低下しており、その状態で排気行程に移行するため、このときのポンプ損失は小さい。
これに対し、可変動弁機構による開弁タイミングの変更によって、排気弁が膨張行程中のより遅いタイミングで開弁する場合には、燃焼ガスの排出が遅れて開始されるため、排気BDCにおいて、気筒内により多量の燃焼ガスが残留する。このため、図9に破線で示すように、排気BDCにおいて、気筒内に多量の燃焼ガスによる比較的高い圧力が残留する。その結果、排気行程の初期においては、気筒内の高い圧力に抗して燃焼ガスを押し出すことが必要になり、その分、ポンプ損失が増大する。排気押出し損失は、このような排気弁の開弁タイミングの変更に伴って変化するポンプ損失に相当するものであり、図9のPV線図中の排気行程の初期における、排気弁の異なる開弁タイミングに対応する2つのラインで囲まれた三角形状の領域Bの面積でほぼ表される。
上述した発生要因から、排気押出し損失は、排気弁の開弁タイミングに依存する。また、燃焼後に気筒内に存在するガス量が多いほど、排気BDCにおいて気筒内に残留するガス量及び圧力も大きくなるため、排気押出し損失は、筒内ガス量に依存する。このことは、無過給状態を示す図9(a)と過給状態を示す図9(b)との比較からも明らかである。
以上の観点から、本発明によれば、気筒内に存在するガスの量を筒内ガス量として推定し、排気弁の開弁タイミングを表す排気開弁タイミングパラメータを検出するとともに、取得又は検出された2つのパラメータに基づいて、排気押出し損失を算出する。したがって、排気押出し損失に影響を及ぼす要因に適切に応じて、排気押出し損失を精度良く算出することができる。
そして、以上のように算出されたポンプ損失の基本量と排気押出し損失に基づいて、内燃機関のポンプ損失を最終的に算出するので、排気弁の開弁タイミングの変更に伴って変化する排気押出し損失を反映させながら、内燃機関のポンプ損失を精度良く算出することができる。
なお、内燃機関のポンプ損失を算出する場合、例えば、ポンプ損失に影響を及ぼす様々な要因(パラメータ)をすべて摘出し、摘出された多数のパラメータを用いた1つの多次元マップや1つのモデル式によって、ポンプ損失の全体量を一括して算出することが考えられる。しかし、前述したように、ポンプ損失のうちの基本に関わる部分と排気押出し損失とでは、その発生の原因、メカニズム及びタイミングが異なる。このため、ポンプ損失の全体量を一括して算出する手法では、多次元マップやモデル式を詳細に設定しても、その適合性に限界があり、ポンプ損失を精度良く算出することは困難である。
これに対し、本発明によれば、ポンプ損失をその基本部分と排気押出し損失に切り分け、それらに影響を及ぼす適切なパラメータをそれぞれ用いて、ポンプ損失の基本量と排気押出し損失を別個に算出した後、両者に基づいてポンプ損失を最終的に算出するので、内燃機関のポンプ損失の全体量を1つの多次元のマップやモデル式で一括して算出する場合と異なり、ポンプ損失を精度良く算出することができる。
また、一般に、内燃機関の回転数が高いほど、吸入行程の時間が短いことで、吸入行程における負圧が大きくなるため、ポンプ損失の基本量はより大きくなる。この構成によれば、内燃機関の回転数が高いほど、ポンプ損失の基本量をより大きな値に算出するので、基本量の算出精度をさらに高めることができる。
また、内燃機関の回転数によっては、排気側に脈動が発生し、気筒内に残留する燃焼ガスの量や圧力に影響を及ぼすため、内燃機関の回転数は、排気押出し損失に影響を及ぼす。このため、本構成によれば、排気押出し損失を内燃機関の回転数にさらに基づいて算出する。この場合、内燃機関の回転数に応じた排気側の脈動の影響を反映するようにあらかじめ設定された内燃機関の回転数と排気押出し損失との関係に基づき、上述した基本量の算出の場合とは異なる関係で、内燃機関の回転数に応じて排気押出し損失算出される。
以上のように、内燃機関のポンプ損失の全体量を1つの多次元のマップやモデル式で一括して算出する場合と異なり、内燃機関の回転数という同じパラメータを用いつつ、その影響の仕方の相違を反映させながら、ポンプ損失の基本量及び排気押出し損失をそれぞれ別個に適切に算出でき、両者に基づき、ポンプ損失の全体量を適切に算出することができる。
請求項に係る発明は、請求項に記載の内燃機関のポンプ損失算出装置において、内燃機関3は、吸気を過給する過給機10を有するとともに、吸気弁6及び排気弁7が同時に開弁するバルブオーバーラップ期間を有するように構成され、吸気弁6の開弁タイミングIVOを表す吸気開弁タイミングパラメータ(吸気位相CAIN)を検出する吸気開弁タイミングパラメータ検出手段(吸気位相センサ30)と、排気弁7の閉弁タイミングEVCを表す排気閉弁タイミングパラメータ(排気位相CAEX)を検出する排気閉弁タイミングパラメータ検出手段(排気位相センサ31)と、をさらに備え、筒内ガス量推定手段は、吸気圧PIN、検出された吸気開弁タイミングパラメータ、及び検出された排気閉弁タイミングパラメータに基づいて、筒内ガス量GAIRCYLを推定すること(図9のステップ12)を特徴とする。
この構成では、内燃機関は、吸気を過給する過給機を有するとともに、吸気弁及び排気弁が同時に開弁するバルブオーバーラップ期間を有するように構成されている。また、吸気弁の開弁タイミングを表す吸気開弁タイミングパラメータと、排気弁の閉弁タイミングを表す排気閉弁タイミングパラメータを検出するとともに、ポンプ損失の補正量の算出に用いられる筒内ガス量を、検出された吸気圧、吸気開弁タイミングパラメータ及び排気閉弁タイミングパラメータに基づいて、推定する。
上記のように構成された内燃機関では、過給機による過給により、吸気圧が排気圧を上回っている状態で、バルブオーバーラップが生じることがあり、その場合には、ガスが吸気通路から気筒を介して排気通路側へ通過する掃気が発生する。このような掃気が発生すると、気筒内に存在する筒内ガス量は、吸気通路を流れるガス量とは一致しない。このため、吸気通路を流れるガス量を、例えば、エアフローセンサによる検出や、吸気通路に設けられたスロットル弁の上下流間に適用したノズル式による推定によって求めても、それらの検出値や推定値は、筒内ガス量を正しく表さない。
これに対し、この構成によれば、筒内ガス量の推定を、検出された吸気圧、吸気開弁タイミングパラメータ及び排気閉弁タイミングパラメータに基づいて行うので、掃気の有無や掃気量を適切に反映させながら、筒内ガス量を精度良く推定でき、それにより、排気押出し損失及び内燃機関のポンプ損失の算出精度をさらに高めることができる。
また、内燃機関が過給機を有する場合には、それによる過給によって気筒への吸気量が大きくなるのに伴い、気筒内に存在する燃焼ガス量が増大するとともに、過給機のタービンの上流側の排気圧も大きくなるため、排気押出し損失が大きく増大する傾向にある。このように排気押出し損失が大きく増大する場合にも、上記3つのパラメータに基づいて排気押出し損失を推定することで、高い推定精度を確保できるので、請求項1による効果を顕著に得ることができる。
本発明を適用した内燃機関を概略的に示す図である。 ポンプ損失算出装置を含む制御装置を示すブロック図である。 吸気側及び排気側可変動弁機構によって得られる吸気弁及び排気弁のバルブリフト曲線を示す図である。 内燃機関の燃焼トルク、ポンプ損失トルク及び軸トルクなどの関係を示す図である。 内燃機関の軸トルクの推定処理のメインフローを示すフローチャートである。 ポンプ損失トルクの算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 図6の算出処理においてポンプ損失トルクの基本量の算出に用いられるマップである。 図6の算出処理において排気押出し損失の算出に用いられるマップである。 ポンプ損失の基本量及び排気押出し損失を説明するための、(a)無過給状態及び(b)過給状態における気筒容積と筒内圧との関係を示すPV線図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明を適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3を示す。このエンジン3は、車両(図示せず)に搭載されたガソリンエンジンである。エンジン3のクランクシャフト3eには、エアコンディショナのコンプレッサやパワーステアリングなどの補機ACCや、変速機TMが連結されており(図4参照)、エンジン3の動力は、補機ACCの駆動に用いられた後、変速機TMに入力され、さらに駆動輪(図示せず)に伝達される。
エンジン3は、例えば4つの気筒3a(1つのみ図示)を有している。各気筒3aのピストン3bとシリンダヘッド3cとの間には、燃焼室3dが形成されている。各気筒3aの燃焼室3dには、吸気コレクタ部4aを有する吸気マニホルド4bを介して、吸気通路4が接続されるとともに、排気コレクタ部5aを有する排気マニホルド5bを介して、排気通路5が接続されている。
吸気マニホルド4bには燃料噴射弁41(図2参照)が、シリンダヘッド3cには点火プラグ42(図2参照)が、それぞれ気筒3aごとに設けられている。燃料噴射弁41からの燃料噴射量及び点火プラグ42の点火時期は、後述するECU2によって制御される。
また、吸気通路4及び排気通路5にそれぞれ連通する吸気ポート及びの排気ポートには、吸気弁6及び排気弁7がそれぞれ設けられている。吸気弁6は吸気側可変動弁機構50によって駆動され、排気弁7は排気側可変動弁機構60によって駆動される。
吸気側可変動弁機構50は、クランクシャフト3eに対する吸気弁6の相対的な位相(以下「吸気位相」という)CAINを無段階に変更することによって、吸気弁6の開弁タイミングIVO及び閉弁タイミングIVCを、開角期間が一定の状態で無段階に変更するものであり、位相制御モータ51(図2参照)などを備えている。位相制御モータ51は、ECU2からの制御信号に応じて、クランクシャフト3eに対して吸気カムシャフト(図示せず)を相対的に回転させることにより、吸気位相CAINを所定の範囲で無段階に変更する。
排気側可変動弁機構60は、吸気側可変動弁機構50と同様に構成され、クランクシャフト3eに対する排気弁7の相対的な位相(以下「排気位相」という)CAEXを無段階に変更することによって、排気弁7の開弁タイミングEVO及び閉弁タイミングEVCを、開角期間が一定の状態で無段階に変更するものであり、位相制御モータ61(図2参照)などを備えている。位相制御モータ61は、ECU2からの制御信号に応じて、クランクシャフト3eに対して排気カムシャフト(図示せず)を相対的に回転させることにより、排気位相CAEXを所定の範囲で無段階に変更する。
図3は、吸気側及び排気側可変動弁機構50、60によって設定される吸気弁6及び排気弁7のバルブタイミングを示す。なお、本実施形態では、吸気弁6及び排気弁7の開閉のタイミングは、それらのリフト量が0に近い微小な所定量L0(例えば1mm)に達したタイミングと定義されている。
同図に示すように、吸気弁6は、実線で示す最遅角タイミングと一点鎖線で示す最進角タイミングを含む、両タイミング間の任意のタイミングで開閉し、排気弁7は、実線で示す最進角タイミングと一点鎖線で示す最遅角タイミングを含む、両タイミング間の任意のタイミングで開閉する。また、吸気位相CAINが進角側に制御されるとともに、排気位相CAEXが遅角側に制御されたときには、吸入行程の開始時の吸気TDC付近において、吸気弁6及び排気弁7が同時に開弁するバルブオーバーラップが生成され、このバルブオーバーラップによって内部EGRが得られる。
また、吸気側及び排気側可変動弁機構50、60の位相制御モータ51、61には、吸気位相センサ30及び排気位相センサ31がそれぞれ設けられている(図2参照)。両位相センサ30、31は、位相制御モータ51、61の回転角度を介して、吸気位相CAIN、排気位相CAEXをそれぞれ検出し、その検出信号をECU2に出力する。
前述したように、吸気弁6及び排気弁7の開角期間は一定であるので、検出された吸気位相CAINから、そのときの吸気弁6の開弁タイミングIVO及び閉弁タイミングIVCが一義的に定まり、検出された排気位相CAEXから、そのときの排気弁7の開弁タイミングEVO及び閉弁タイミングEVCが一義的に定まる。すなわち、吸気位相CAINは、吸気弁6の開弁及び閉弁タイミングIVO、IVCのいずれをも表すパラメータであり、排気位相CAEXは、排気弁7の開弁及び閉弁タイミングEVO、EVCのいずれをも表すパラメータである。
図1に戻り、吸気通路4の吸気コレクタ部4aよりも上流側には、スロットル弁8が設けられている。スロットル弁8は、DCモータなどで構成されたTHアクチュエータ9に連結されている。スロットル弁8の開度は、THアクチュエータ9に供給される電流をECU2で制御することによって制御され、それにより、燃焼室3dに吸入される吸気量が調整される。
また、エンジン3には、吸気を過給するためのターボチャージャ式の過給機10が設けられている。この過給機10は、吸気通路4のスロットル弁8よりも上流側に設けられたコンプレッサ11と、排気通路5のコレクタ部5aよりも下流側に設けられたタービン12と、コンプレッサ11及びタービン12を一体に連結するシャフト13を有している。過給機10は、タービン12が排ガスで回転駆動されるのに伴い、それと一体のコンプレッサ11が回転し、吸気通路6内の吸気を加圧することによって、過給動作を行う。吸気通路4のコンプレッサ11よりも下流側には、加圧された吸気を冷却するためのインタークーラ15が設けられている。
また、排気通路5には、タービン12を迂回するバイパス通路16が設けられ、このバイパス通路16には、ウェイストゲートバルブ17(以下「WGV17」という)が設けられている。WGV17は、DCモータなどで構成されたWGVアクチュエータ18に、連結部材19を介して連結されている。WGV17の開度は、WGVアクチュエータ18に供給される電流をECU2で制御することによって制御され、それにより、バイパス通路16を流れる排ガスの量を調整し、タービン12の駆動力を調整することによって、過給機10による過給圧が制御される。
さらに、エンジン3には、排気通路5に排出された排ガスの一部を吸気通路4に還流させるためのEGR装置20が設けられている。EGR装置20は、EGR通路21と、EGR通路21に設けられたEGR制御弁22及びEGRクーラ23などで構成されている。EGR通路21は、排気通路5の排気コレクタ部5aと吸気通路4の吸気コレクタ部4aに接続されている。
EGR制御弁22は、DCモータなどで構成されたEGRアクチュエータ24に連結されている。EGR制御弁22の開度は、EGRアクチュエータ24に供給される電流をECU2で制御することによって制御され、それにより、排気通路5から吸気通路4に還流する排ガスの量(EGR量)が制御される。EGRクーラ23は、エンジン3の冷却水を利用し、EGR通路21を流れる高温の排ガスを冷却する。
また、吸気通路4のスロットル8よりも上流側にはエアフローセンサ32が、吸気コレクタ部4aには、吸気圧センサ33及び吸気温センサ34が、排気コレクタ部5aには排気圧センサ35が、それぞれ設けられている。エアフローセンサ32は吸気量GAIRを検出し、吸気圧センサ33はスロットル弁8の下流側における吸気圧PINを検出し、吸気温センサ34は吸気温TAを検出し、排気圧センサ35は排気圧PEXを検出する。それらの検出信号はECU2に入力される。
クランクシャフト3eには、クランク角センサ36が設けられている。クランク角センサ36は、クランクシャフト3eの回転に伴い、所定のクランク角(例えば30°)ごとに、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
また、ECU2には、水温センサ37から、エンジン3の冷却水の温度(以下「エンジン水温」という)TWを表す検出信号が、油温センサ38から、エンジン3を潤滑する潤滑油の温度(以下「油温」という)TOILを表す検出信号が、アクセル開度センサ39から、車両のアクセルペダルの開度APを表す検出信号が、それぞれ入力される。
ECU2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、入力された各種のセンサ30〜39からの検出信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別する。また、その判別結果に応じて、図2の右側に示される各種のデバイスに駆動信号を出力することによって、エンジン3の動作を制御するための各種の制御処理を実行する。本実施形態では、ECU2が、筒内ガス量推定手段、基本量算出手段、排気押出し損失算出手段、及びポンプ損失算出手段に相当する。
次に、図4〜図8を参照しながら、ECU2で実行される、エンジン3の軸トルクTRQCRKENGを推定する軸トルク推定処理について説明する。この軸トルクTRQCRKENGは、エンジン3から変速機TM側に出力される正味のトルクであり、車両のトラクションコントロールやスタビリティコントロールなどの協調制御に用いられる。図4に示すように、軸トルクTRQCRKENGは、エンジン3での燃焼によって発生する燃焼トルクTRQBRNENGから、ポンプ損失トルクTRQPMPLSS、エンジンフリクショントルクTRQFRENG、及び補機フリクショントルクTRQFRACCを減算することによって、算出される。
ここで、ポンプ損失トルクTRQPMPLSSは、燃焼サイクル中のポンプ損失によって失われるトルク、エンジンフリクショントルクTRQFRENGは、エンジン3においてピストン3bと気筒3aの内壁面との間のフリクションなどによって失われるトルク、補機フリクショントルクTRQFRACCは、補機ACCを駆動するのに消費され、失われるトルクである。
図5は、軸トルク推定処理のメインフローであり、所定時間ごとに繰り返し実行される。本処理は、上述した図4の流れに沿うものであり、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、燃焼トルクTRQBRNENGを算出する。その算出は、例えば、後述する筒内ガス量GAIRCYLや、バルブオーバーラップによって得られる内部EGR率、MBTからの点火時期のリタード量などに基づいて行われる。
次に、ポンプ損失トルクTRQPMPLSSを算出する(ステップ2)。その算出処理の詳細については、後述する。
次に、エンジンフリクショントルクTRQFRENGを算出する(ステップ3)。その算出は、例えば、検出されたエンジン回転数NE、エンジン水温TW及び油温TOILなどに応じて行われる。次に、補機フリクショントルクTRQFRACCを算出する(ステップ4)。その算出は、例えば、補機ACCの作動の有無及び負荷に基づくとともに、エンジン回転数NEや吸気温TAなどに応じて行われる。
最後に、ステップ1で算出された燃焼トルクTRQBRNENGから、ステップ2〜4で算出された3つのトルクTRQPMPLSS、TRQFRENG及びTRQFRACCを減算した値を、エンジン3の軸トルクTRQCRKENGとして推定し(ステップ5)、本処理を終了する。
図6は、上記ステップ2で実行されるポンプ損失トルクTRQPMPLSSの算出処理のサブルーチンである。本処理では、まずステップ11において、検出された排気圧PEX、吸気圧PIN及びエンジン回転数NEに基づき、図7に示すようなマップを検索することによって、ポンプ損失トルクTRQPMPLSSの基本量TRQLSSBを算出する(ステップ11)。
この基本量TRQLSSBは、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSのうち、排気圧PEXと吸気圧PINとの圧力差に起因し、排気行程から吸気行程にわたる間に発生するポンプ損失(図9の領域A)に相当する。このため、図7のマップでは、基本量TRQLSSBは、排気圧PEXと吸気圧PINとの圧力差ΔPが大きいほど、より大きな値に設定されている。
なお、図7は、エンジン回転数NE=所定回転数NExのときのマップを例示したものであり、図示しないが、実際には、複数の所定回転数NE1〜NEnにそれぞれ対応する複数のマップが用意されている。これらのいずれのマップにおいても、基本量TRQLSSBは、圧力差ΔPに対し、図7と同様の傾向で設定されている。また、基本量TRQLSSBは、複数のマップの間では、エンジン回転数NEが高いほど、吸入行程の時間が短いことで、吸入行程における負圧が大きくなるため、より大きな値に設定されている。
次に、ステップ12において、検出された吸気圧PIN、吸気位相CAIN、排気位相CAEX及びエンジン回転数NEに基づき、図示しないマップを検索することによって、筒内ガス量GAIRCYLを算出する。
この筒内ガス量GAIRCYLは、後述する排気押出し損失トルクTRQLSSCの算出に用いられるため、気筒3aに吸気されるガス量ではなく、気筒3a内に実際に存在するガスの量として把握されるべきものである。また、吸気圧PINは、過給機10によって過給された吸気の圧力を表し、エンジン回転数NEは吸気の速度を表し、また、前述したように、吸気位相CAIN及び排気位相CAEXは、吸気弁6の開弁タイミングIVO及び排気弁7の閉弁タイミングEVCを表す。
したがって、上記の4つのパラメータに基づき、筒内ガス量GAIRCYLを算出することによって、過給機10による過給により吸気圧PINが排気圧PEXを上回っている状態で、吸気弁6と排気弁7とのバルブオーバーラップが生じている場合においても、吸気通路4から気筒3aを介して排気通路5側へ通過する掃気量を反映させながら、筒内ガス量GAIRCYLを精度良く算出することができる。
次に、ステップ13において、上記のように算出された筒内ガス量GAIRCYLと、排気位相CAEX及びエンジン回転数NEに基づき、図8に示すようなマップを検索することによって、排気押出し損失トルクTRQLSSCを算出する。この排気押出し損失トルクTRQLSSCは、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSのうち、排気弁7の開弁タイミングEVOの変更に伴って変化し、排気行程の初期に発生するポンプ損失(図9の領域B)に相当する。
図8のマップでは、排気押出し損失トルクTRQLSSCは、筒内ガス量GAIRCYLが大きいほど、また排気位相CAEXが遅角側にあるほど、排気BDCにおいて気筒3a内に残留するガスの量が多くなるため、より大きな値に設定されている。
なお、図8は、エンジン回転数NE=所定回転数NExのときのマップを例示したものであり、図示しないが、実際には、複数の所定回転数NE1〜NEnにそれぞれ対応する複数のマップが用意されている。これらのいずれのマップにおいても、排気押出し損失トルクTRQLSSCは、筒内ガス量GAIRCYL及び排気位相CAEXに対し、図8と同様の傾向で設定されている。
また、排気押出し損失トルクTRQLSSCは、複数のマップの間では、実験結果などに基づいてあらかじめ求められた、エンジン回転数NEに応じた排気側の脈動の影響を反映するように設定されている。
次に、ステップ14において、ステップ11で算出された基本量TRQLSSBに、ステップ13で算出された排気押出し損失トルクTRQLSSCを加算することによって、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSを算出し、本処理を終了する。
以上のように、本実施形態によれば、検出された吸気圧PIN及び排気圧PEXに基づき、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSのうち、排気圧PEXと吸気圧PINとの圧力差に起因し、排気行程から吸入行程にわたる間に発生するポンプ損失の基本部分に相当する基本量TRQLSSBを算出する。また、この基本量TRQLSSBとは別個に、筒内ガス量GAIRCYL、排気位相CAEX及びエンジン回転数NEに基づき、ポンプ損失トルクTRQPMPLSSのうち、排気弁7の開弁タイミングEVOの変更に伴って変化し、排気行程の初期に発生する排気押出し損失トルクTRQLSSCを算出する。
そして、算出された基本量TRQLSSBと排気押出し損失トルクTRQLSSCを加算することによって、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSを最終的に算出する。
以上のように、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSを、その基本量TRQLSSBと排気押出し損失トルクTRQLSSCに切り分け、両者をそれらに影響を及ぼす適切なパラメータをそれぞれ用いて算出する。したがって、エンジン3のポンプ損失トルクの全体量を1つの多次元のマップやモデル式で一括して算出する場合と異なり、排気弁7の開弁タイミングEVCの変更に伴って変化する排気押出し損失を反映させながら、ポンプ損失トルクTRQPMPLSSを精度良く算出することができる。
また、基本量TRQLSSB及び排気押出し損失トルクTRQLSSCをそれぞれエンジン回転数NEにさらに基づいて算出するとともに、前者を算出する際には、エンジン回転数NEが高いほど、基本量TRQLSSBをより大きな値に設定するのに対し、後者を算出する際には、エンジン回転数NEに応じた排気側の脈動の影響を反映するように、排気押出し損失トルクTRQLSSCを設定する。
したがって、エンジン3のポンプ損失トルクの全体量を1つの多次元のマップやモデル式で一括して算出する場合と異なり、エンジン回転数NEという同じパラメータを用いつつ、その影響の仕方の相違を反映させながら、基本量TRQLSSB及び排気押出し損失トルクTRQLSSCをそれぞれ別個に適切に算出でき、両者に基づき、エンジン3のポンプ損失トルクTRQPMPLSSの全体量を適切に算出することができる。
さらに、筒内ガス量GAIRCYLを、吸気圧PIN、吸気位相CAIN、排気位相CAEX及びエンジン回転数NEに基づいて算出する。したがって、過給機10による過給により吸気圧PINが排気圧PEXを上回っている状態で、バルブオーバーラップにより吸気通路4から排気通路5側への掃気が発生している場合でも、掃気量を反映させながら、筒内ガス量GAIRCYLを精度良く算出でき、ひいては排気押出し損失トルクTRQLSSC及びポンプ損失トルクTRQPMPLSSを精度良くすることができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、排気圧PEXを、排気圧センサ35による検出によって取得しているが、他の適当な取得手段、例えば、排気の温度、過給機10のタービン12の下流側の圧力やWGV17の開度などからの推定によって取得してもよい。
さらに、実施形態は、本発明を車両用のガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランクシャフトを鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
2 ECU(筒内ガス量推定手段、基本量算出手段、排気押出し損失算出手段、ポンプ 損失算出手段)
3 エンジン(内燃機関)
3a 気筒
6 吸気弁
7 排気弁
10 過給機
30 吸気位相センサ(吸気開弁タイミングパラメータ検出手段)
31 排気位相センサ(排気開弁タイミングパラメータ検出手段、排気閉弁タイミング パラメータ検出手段)
33 吸気圧センサ(吸排気圧取得手段)
35 排気圧センサ(吸排気圧取得手段)
36 クランク角センサ(回転数検出手段)
60 排気側可変動弁機構(可変動弁機構)
NE エンジン回転数(内燃機関の回転数)
EVO 排気弁の開弁タイミング
EVC 排気弁の閉弁タイミング
IVO 吸気弁の開弁タイミング
CAEX 排気位相(排気開弁タイミングパラメータ、排気閉弁タイミングパ ラメータ)
CAIN 吸気位相(吸気開弁タイミングパラメータ)
PEX 排気圧
PIN 吸気圧
GAIRCYL 筒内ガス量
TRQPMPLSS ポンプ損失トルク(ポンプ損失)
TRQLSSB ポンプ損失トルクの基本量(ポンプ損失の基本量)
TRQLSSC 排気押出し損失トルク(排気押出し損失)

Claims (2)

  1. 排気弁の開弁タイミングを変更可能な可変動弁機構を有する内燃機関のポンプ損失を算出する内燃機関のポンプ損失算出装置であって、
    吸気圧及び排気圧を取得する吸排気圧取得手段と、
    気筒内に存在するガスの量を筒内ガス量として推定する筒内ガス量推定手段と、
    前記排気弁の開弁タイミングを表す排気開弁タイミングパラメータを検出する排気開弁タイミングパラメータ検出手段と、
    記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
    前記取得された吸気圧及び排気圧に基づいて、前記内燃機関のポンプ損失の基本量を算出する基本量算出手段と、を備え、
    前記基本量算出手段は、前記検出された内燃機関の回転数にさらに基づき、当該回転数が高いほど、前記ポンプ損失の基本量をより大きな値に算出し、
    前記推定された筒内ガス量、及び前記検出された排気開弁タイミングパラメータに基づき、前記内燃機関のポンプ損失のうち、前記排気弁の開弁タイミングの変更に伴って変化するポンプ損失を、排気押出し損失として算出する排気押出し損失算出手段をさらに備え、
    当該排気押出し損失算出手段は、前記内燃機関の回転数に応じた排気側の脈動の影響を反映するようにあらかじめ設定された前記内燃機関の回転数と前記排気押出し損失との関係に基づき、前記基本量算出手段による前記基本量の算出の場合とは異なる関係で、前記内燃機関の回転数に応じて前記排気押出し損失を算出し、
    前記算出された基本量及び排気押出し損失に基づいて、前記内燃機関のポンプ損失を算出するポンプ損失算出手段をさらに備えることを特徴とする内燃機関のポンプ損失算出装置。
  2. 前記内燃機関は、吸気を過給する過給機を有するとともに、吸気弁及び前記排気弁が同時に開弁するバルブオーバーラップ期間を有するように構成され、
    前記吸気弁の開弁タイミングを表す吸気開弁タイミングパラメータを検出する吸気開弁タイミングパラメータ検出手段と、
    前記排気弁の閉弁タイミングを表す排気閉弁タイミングパラメータを検出する排気閉弁タイミングパラメータ検出手段と、をさらに備え、
    前記筒内ガス量推定手段は、前記吸気圧、前記検出された吸気開弁タイミングパラメータ、及び前記検出された排気閉弁タイミングパラメータに基づいて、前記筒内ガス量を推定することを特徴とする、請求項に記載の内燃機関のポンプ損失算出装置。
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