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JP6003234B2 - 眼底撮影装置 - Google Patents

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Description

本発明は、患者眼の眼底を撮影する眼底撮影装置に関する。
眼底撮影装置を用いた眼底撮影では、眼底に照明光束を有効に入射させるため、患者眼と撮影部との相対的な位置合わせであるアライメントが行われる。例えば、光軸周囲に対照的に配置した複数の視標光源から照射された光束を対物レンズを介して患者眼の角膜面に投影し、角膜面で反射された指標像の受光結果から、指標像のピント状態が適正となるように撮影部を移動させ、患者眼と装置の作動距離を位置合わせする眼底撮影装置がある(例えば、特許文献1参照)。また眼底撮影装置として、眼底上の異なる局所領域に可視の検査視標を投影して患者の応答に基づく視機能検査をする眼底撮影装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2011−36273号公報 特開2003−235800号公報
しかし、患者眼と眼底カメラの作動距離が適正でないと患者眼に投影されるリングスリットの像の大きさが変わり、フレアが混入し易くなり画質が低下してしまう場合がある。また特許文献2に示されるような視野検査を行える眼底撮影装置では、患者眼と撮影部の作動距離が適切でないと眼底像の周囲に投影される検査視標(刺激光)の光束がけられてしまい、適正光量での視野検査を行える画角が狭くなる課題が生じる。その為、眼底撮影装置では作動距離に関してはより精度の高い調整が求められている。
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み患者眼と撮影部を適切な作動距離に維持できる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 患者眼の眼底を撮影する撮影部と、該撮影部を前記患者眼に対して相対移動させる駆動部とを備える眼底撮影装置において、前記撮影部は、前記眼底を照明する照明光学系と、対物レンズを介して前記患者眼の角膜にアライメント指標を投影するための光源を持つアライメント手段と、視度補正レンズを持ち前記眼底のフォーカスを合わせるフォーカス手段と、前記アライメント指標の反射像と前記照明光学系で照明された眼底の反射像とを前記対物レンズを介して撮像する撮像素子を備える撮影光学系と、前記アライメント指標の反射像から患者眼の角膜曲率を得る角膜形状取得部及び前記視度補正レンズによる視度補正に基づき球面度数を得る視度情報取得部の少なくとも一方を持つ眼情報取得部と、該眼情報取得部で得られた角膜曲率及び球面度数の少なくとも一方に基づき前記患者眼に対する前記撮影部の適正作動距離に対する補正値を得る作動距離取得手段と、を有し前記駆動部は、前記作動距離取得手段で取得された補正値に基づき前記患者眼に対して前記撮影部を移動させることを特徴とする。
(2) 眼底撮影装置は、患者眼の眼底を撮影する撮影部と、前記撮影部を前記患者眼に対して相対移動させる駆動部と、前記患者眼の角膜曲率に関する情報を得る角膜形状取得部及び前記患者眼の球面度数に関する情報を得る視度情報取得部の少なくとも一方と、前記角膜曲率に関する情報及び前記球面度数に関する情報の少なくとも一方を用いて、前記患者眼に対する前記撮影部の適正作動距離値に対する補正値を決定する決定手段と、を備え、前記駆動部は、前記決定手段で決定された補正値に基づき前記患者眼に対して前記撮影部を移動させる、ことを特徴とする。
本発明によれば、患者眼と撮影部を適正作動距離に維持できる。
図1において、眼底撮影装置1は、基台1aと、基台1aに対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能に設けられた移動台2、移動台2に設けられた駆動部6によって患者眼(眼)Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(X方向)に移動可能に設けられた撮影部(装置本体)3、患者の顔を支持するために基台1aに固設された顔支持ユニット5を備える。なお、撮影部3の内部には後述する光学系及び制御系が収納される。
撮影部3の検者側には、ジョイスティック4、コントロール部7a、モニタ8が設けられている。ジョイスティック4は眼Eに対して撮影部3を相対移動するために用いられる。ジョイスティック4が傾倒されると摺動機構によって移動台2が基台1a上をXZ方向にスライドする。ジョイスティック4の側面には回転ノブ4a、頂部にはスイッチ4bがあり、回転ノブ4aの回転操作で駆動部6が駆動して撮影部3がY方向に移動する。またスイッチ4bからの入力信号で眼底像の撮影動作などが行われる。
コントロール部7aは、各種撮影・検査条件等を設定する入力手段であり、マウス、キーボード、タッチパネル(モニタ8に取り付けられる)等が用いられる。
モニタ8には眼Eの観察・撮影画像の他、各種検査結果が表示される。例えば、眼底観察画面、前眼部観察画面、視野検査画面等がモニタ8に表示される。
撮影部3の患者側には、患者が装置内部を覗き込む撮影窓9、眼(網膜)の視機能検査時などに患者が応答信号を入力する応答ボタン7bが設けられている。
図2において、光学系は、照明光学系10、患者眼の眼底や前眼部等の観察・撮影をする観察・撮影光学系30、眼底にフォーカス指標(フォーカス指標)を投影するフォーカス指標投影光学系40、前眼部にアライメント用指標光束を投影するアライメント指標投影光学系、患者(眼E)の視線を誘導する視標呈示光学系70から構成される。
<照明光学系> 照明光学系10は、撮影照明光学系と観察照明光学系を有する。撮影照明光学系は、可視光束を照射する撮影光源14、コンデンサレンズ15、リング状の開口を有するリングスリット17、リレーレンズ18、ミラー19、中心部に黒点を有する黒点板20、リレーレンズ21、孔あきミラー(リングスリット)22、対物レンズ25を有する。
観察照明光学系は、近赤外光の光束を照射する照明光源11、近赤外光を透過する赤外フィルター12、コンデンサレンズ13、コンデンサレンズ13とリングスリット17との間に配置されたダイクロイックミラー16、リングスリット17から孔あきミラー22までの光学系と、対物レンズ25を有する。
<観察・撮影光学系> 観察・撮影光学系30は、眼底観察光学系、眼底撮影光学系、前眼部観察光学系を有する。眼底観察光学系は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口近傍に位置する撮影絞り31、光軸方向に移動可能な視度補正レンズ(フォーカシングレンズ)32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34を備える。跳ね上げミラー34の反射方向の光路には、赤外光反射・可視光透過の特性を有するダイクロイックミラー37、リレーレンズ36、赤外域に感度を有する観察用の二次元撮像素子38が配置され、赤外光源で照明された眼底像が撮影される。なお、跳ね上げミラー34は眼底の観察時に光路に挿入され、眼底の撮影時に挿脱機構39により光路から退避される。
眼底撮影光学系は、対物レンズ25,撮影絞り31から結像レンズ33までの光学系を眼底観察光学系と共用する。また眼底撮影光学系は、可視域に感度を有する撮影用の二次元撮像素子35を備え、可視光源14で照明された眼底像が撮影される。なお、撮影絞り31は対物レンズ25に関して眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置され、フォーカシングレンズ32は、モータを備える移動機構49で光軸方向に移動される。
以上の構成により眼底の観察時には、照明光源11を発した光束が対物レンズ25によって眼Eの瞳孔付近で一旦収束した後、拡散して眼底を照明する。眼底からの反射光は、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33、跳ね上げミラー34、ダイクロイックミラー37、リレーレンズ36を介して撮像素子38に結像する。眼底の撮影時には、撮影光源14で照明された眼底からの反射光が、対物レンズ25、孔あきミラー22の開口部、撮影絞り31、フォーカシングレンズ32、結像レンズ33を経て二次元撮像素子35に結像する。
前眼部観察光学系は、赤外光を発する光源35a、35b、対物レンズ25、前眼部観察補助レンズ26(以下、補助レンズと記す)を有し、穴あきミラー22から撮像素子38までの光学系を眼底観察光学系と共用する。赤外光源35a,35bは撮影光軸L1を挟んで対称的に配置された一対の矩形状のLEDであり、眼Eの角膜に向けて所定の投影角度で発散光束による有限遠の指標(患者眼に対して垂直方向に延びる矩形状の指標)を投影する。これにより、眼Eと撮影部3の三次元方向のアライメント状態が示されると共に前眼部全体が照明される。
なお、補助レンズ26は駆動手段26aの駆動で光路から挿脱され、補助レンズ20が光軸L1上に置かれたときに前眼部と撮像素子38が略共役関係になる。つまり前眼部の観察時には、補助レンズ26が光軸L1に置かれて撮像素子38で撮像された前眼部がモニタ8に表示される。一方、眼底観察時には、補助レンズ26が駆動手段26aの駆動で光路から退避され、撮像素子38と眼底が略共役関係となり、撮影された眼底像がモニタ8に表示される。
このように眼底に検査視標を投影して眼の視機能検査をする構成では、検査中のノイズ光の影響を抑えて検査精度を高めるために、前眼部観察光学系と眼底観察光学系とが切り換え使用される構成が好ましい。一方、本実施形態では前眼部観察光学系から眼底観察光学系に切り換えられたときに、前眼部観察光学系で使用される赤外光源35a、35bによるアライメントが行えなくなる。そこで、眼底観察光学系に切り換えられている時には、孔あきミラー22の開口付近であって、瞳共役位置に置かれた光源27によるアライメントが行われる。
例えば点光源27は光ファイバの出射端で形成され、光ファイバは図示なきハロゲンランプからの光を孔あきミラー22まで導光する。眼底観察時に点光源27が点灯されると、点光源27からの光束は対物レンズ25を介して患者眼の角膜面に投影され、その反射光は再び対物レンズ25を介して結像する。そして撮像素子38による点光源27の像の受光結果に基づき、点光源27像のピントが合うように撮影部3を作動距離方向へ移動させて、作動距離方向のアライメントを行う。なお、患者眼と対物レンズ25との作動距離が適正と判断される状態では、点光源27の像と眼底反射像とが共役面内に結像される。
ところでアライメントの適正作動距離は、模型眼など基準となる角膜曲率及び視度(球面度数)に合わせて設計されるため、固有の角膜曲率及び球面度数を持つ患者眼では、角膜曲率又は球面度数の違いによって、点光源27像の作動距離の結像位置が変わる。これにより患者眼に投影される孔あきミラー22の像の大きさが変わると、眼底像にフレアが混入し易くなる場合がある。また視野検査等の視機能検査では、作動距離の結像位置が変わることによって視野範囲が狭くなり(撮影される眼底像が小さくなり)、検査視標を適切に投影できる画角が小さくなる場合がある(眼底像の周辺に投影される検査視標の光量がケラレてしまう場合がある)。
そこで本発明では患者眼の角膜曲率及び球面度数を、予め眼底撮影(観察)又は視野検査前に取得して、取得された角膜曲率及び球面度数の少なくとも一方に基づきアライメントの適正作動距離に対する補正値を求める。より好ましくは角膜曲率及び球面曲率の両方に基づき補正値を求めるとする。そして患者眼毎に補正後の適切な作動距離で眼底撮影(観察)又は眼の検査が行われるようにする。なお適正作動距離の補正についての詳細な説明は後述する。
<フォーカス指標投影光学系> フォーカス指標投影光学系40は、赤外光源41、スリット指標板42、スリット指標板42に取り付けられた2つの偏角プリズム43、照明光学系10の光路に斜設されたレバー45、レバー45に取り付けられ眼底の共役位置に置かれるスポットミラー44、ロータリーソレノイド46、投影レンズ47とを備える。
レバー45は光軸上に置かれ、スポットミラー44は光軸上を避けた位置に置かれるようにレバー45の先端に取り付けられる。これにより眼底の観察時に、スポットミラー44からの反射光が眼底上の光軸L1上を避けた位置に投影されるようになる。
スリット指標板42の光束は、偏角プリズム43で分離された後、投影レンズ47を介してスポットミラー44で反射され、リレーレンズ21、孔あきミラー22、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25を経て眼底に投影される。眼底のフォーカスが合っていないとき、スリット指標板42の指標像(フォーカス指標S1,S2)は眼底と共役関係になっていないため眼底に分離して投影される。この場合、フォーカス視標S1,S2の分離状態の検出結果に基づき、駆動機構49の駆動によってフォーカシングレンズ32及びフォーカス視標投影光学系40が連動して光軸方向に移動される。一方、眼底のフォーカスが合った状態では、フォーカス指標S1,S2は眼底と共役位置にあり合致する。なお、フォーカスが合った状態で眼底撮影が行われるときには、ロータリーソレノイド46の軸の回転によってレバー45が光路から退避される。
<視標呈示光学系> 視標呈示光学系70は、観察・撮影光学系20の対物レンズ25から跳ね上げミラー34までを共用し、更に2次元スキャン方式のプロジェクター71、スクリーン72、レンズ73を備える。ここでの図示は省略するが、プロジェクター71は、所定の色のレーザ光(例えば、赤色、緑色、青色)を照射する複数のレーザ光源と、各レーザ光を平行光とするコリメータレンズと、コリメータレンズによって平行光とされた各レーザ光を同軸にするダイクロイックミラーと、同軸にされたレーザ光の照射径を変更するために光軸上で移動されるレンズと、レンズを通過したレーザ光をスクリーン72上で走査する走査部とを備え、後述する制御部80によって各光源の点灯状態の制御、走査部の駆動制御が行われる。
視標呈示光学系70にレーザ光源を用いることで、眼底に投影される視標の大きさ、形状等が任意に変えられる。またレーザ光源から照射されるレーザ光の組み合わせによって、モノクロだけでなくカラーの視標も呈示できるようになり、1台で様々な種類の視機能検査を行えるようになる。
なお、本実施形態では眼底と略共役位置に置かれたスクリーン72に投影された映像(視標)を途中の光学系を介して眼底に結像させているが、プロジェクター71から照射されるレーザ光を直接眼底に投影して各種視標を形成しても良い。また視標呈示光学系70として周知の液晶ディスプレイ等を使用し、画素の駆動によって視標が形成されても良い。
<制御系> 制御部80は、上述の光学系及び制御系に接続されて各種動作制御を行う。また制御部80には記憶部であるメモリ83が接続されており、各種プログラムなどが予め記憶されている。またメモリ83には取得された患者眼の視度及び角膜曲率の情報が記憶される。
例えば、制御部80は撮像素子38で撮像された前眼部画像からアライメント指標を検出する。また、撮像素子35で撮像された眼底画像をモニタ8に表示させると共に、フォーカス指標の分離状態に基づき眼底のフォーカスを合わせる。更に本実施形態では、フォーカス合わせ時に、フォーカシングレンズ32の位置から患者眼の視度(球面度数)を得る。また、撮像素子38で検出された点光源27像であるワーキングドットWの像間距離から患者眼の角膜曲率を得る。そして得られた球面度数及び角膜曲率の少なくとも一方に基づき、撮影部3(対物レンズ25)の適正作動距離に対する補正値を求める。そして補正値に基づき患者眼毎の適切な作動距離を決定することで、患者眼の角膜曲率及び球面度数の違いに関わらず、患者眼と撮影部3(対物レンズ25)の作動距離が適切に合わせられる。なお以下の説明では球面度数と角膜曲率の両方に基づいて補正値を得る例を説明する。
以上のような構成を備える眼底撮影装置の動作を説明する。ここでは、眼の視野検査を行った後、眼底を撮影する動作を説明する。
コントロール部7aの操作で視野検査モードが設定されるとモニタ8に視野検査画面が表示される。制御部80は駆動手段26aの駆動で光軸L2上に補助レンズ26を位置させ、光源35a、35bを点灯させる。この状態で患者が撮影窓9から装置内部を覗き込むと、前眼部が照明されて角膜に矩形状のアライメント指標が投影される。
一方、制御部80はプロジェクター71の駆動制御でスクリーン72に固視標を形成する。つまり走査部の走査角度に応じてレーザ光の出力を調整して低い輝度の背景に高い輝度の固視標を形成させる。具体的には、光軸L1に対応する固視標の呈示位置では各光源によるレーザ光の出力(輝度)を上げ、それ以外の背景部分ではレーザ光の出力(輝度)を低くする。これによりスクリーン72に、暗い背景(低い輝度)に明るい(高い輝度)の固視標が形成される。スクリーン72に形成された映像(固視標)は、レンズ73、跳ね上げミラー34、リレーレンズ33から対物レンズ25を経て、スクリーン72と略共役位置にある患者の眼底に投影される。
固視標で眼Eが誘導された状態で、前眼部像を用いた位置合わせ(アライメント)が行われる。図3にモニタ8に表示される前眼部像の例を示す。前眼部像F1上に矩形状のアライメント指標M1、M2が現れると、制御部80はアライメント指標M1、M2の受光結果に基づき撮影部3と眼Eの位置合わせ(アライメント)をする。
制御部80はアライメント指標M1、M2から求められる中間位置と、前眼部像から求められる瞳孔中心が一致するように撮影部3を上下左右(XY)方向に移動させる。またアライメント指標M1、M2の間隔が所定距離となるように、撮影部3を眼Eに対して前後(Z)方向に移動させて作動距離方向の位置合わせを行う。なお、アライメント動作の詳細な説明は国際公開2008/062527号公報を参照されたい。
制御部80に三次元方向のアライメントがアライメント許容範囲にあると判断されると、制御部80は光源35a,35bを消灯し、補助レンズ26を光路から退避させて光源11及びを点灯する。そしてモニタ8の表示を撮像素子38で撮像される眼底像に切り換えて、フォーカス指標投影光学系40を用いた眼底のフォーカス合わせを行う。
図4にモニタ8に表示される眼底像の例を示す。図4(a)に眼底のフォーカスが合っていない状態、図4(b)に眼底のフォーカスが合っている状態が示されている。制御部80は、撮像素子38の撮像範囲の輝度分布に基づき、フォーカス指標S1,S2の位置を特定する。そして検出されたフォーカス指標S1,S2間の距離(分離状態)を求め、検出結果に基づくフォーカス合わせを行う。
図4(a)に示されるようにフォーカスが合っていないとき、制御部80はフォーカス視標S1,S2が合致するように、フォーカシングレンズ32を光軸L1上で移動させる。そして制御部80によってフォーカスが適切であると判断されるとフォーカス調節が完了する。また制御部80は、フォーカスが合った状態で光軸L上のフォーカシングレンズ32の位置から患者眼の球面度数を求める。なお球面度数はフォーカシングレンズ32の位置(移動機構49の駆動量)と球面度数とを予め関連付けてメモリ83に記憶させておくことで求められる。
眼底のフォーカス合わせが完了すると、光源27が点灯されて患者眼EにワーキングドットWが投影される。制御部80は、撮像素子38で撮影された眼底画像を画像処理することでワーキングドットWの位置検出を行い、一対のワーキングドットWのピントが最も合うように作動距離のアライメントを行う。アライメントが完了すると、制御部80は光軸を介して対称に投影された一対のワーキングドットWの間隔(距離)から、ワーキングドットWの結像倍率を解析して、患者眼の角膜曲率を得る。なおワーキングドットWの輝点間距離は周知の重心解析等で求められる。
以上のように患者眼の球面度数と角膜曲率が得られたら、制御部80は患者眼と撮影部3(対物レンズ25)の適正作動距離に対する補正値を求める。なお補正値は以下のようにして求められる。
図5に適正作動距離の補正値算出についての説明図を示す。なお図5において、角膜表面CS(corneal surface)、対物レンズ25(表面)、点光源像27a、集光点FP(focal point)、角膜頂点p、角膜曲率半径r、作動距離WD、対物レンズ25から点光源像27aまでの距離C(定数)、点光源像27aから角膜頂点pまでの距離s、角膜頂点pから点光源27の反射像27bまでの距離s1とする。
患者眼の角膜曲率半径rである場合、点光源像27aが撮影光学系と共役となる作動距離WDは式(1)で示される。
Figure 0006003234
・・・式(1)
式(1)をテイラー展開すると作動距離WDについて、式(2)に示される線形な関数を得る。ここで基準となるディオプターD0、基準となる角膜曲率半径r0とする。
Figure 0006003234
・・・式(2)
一方、式(2)で決定される点光源像27aと撮像素子38が共役となる作動距離WDにおける像倍率βは、式(3)で示される。なおβは像倍率(点光源27に対する点光源像27aの撮像素子38上での倍率)、βiniは撮影光学系の倍率(点光源像27aが対物レンズ25を通過して一旦結像したときの倍率)、fcameraは撮影光学系の焦点距離である。
Figure 0006003234
・・・式(3)
つまり式(3)から像倍率βは角膜曲率半径rに依存した関数(単項式)であることが分かる。
次に、適切作動距離とする為の補正値を求める。式(2)から点光源像27aが撮像素子38と共役となる作動距離WDを決定できる。その為、補正値ΔWDは式(4)のように書ける。ここでWD0は基準眼(ディオプターD0、角膜曲率半径r0)の適正作動距離、WDは患者眼に対する適正作動距離である。
Figure 0006003234
・・・式(4)
ここで角膜曲率半径rは式(3)の結像倍率βから求められる。またディオプターDは視度補正検出で得られる。これらを用いて式(4)で求められた補正値ΔWDだけ、予め設定された輝点像27aの共役位置から作動距離を補正することで、眼底撮影及び視野検査に適切な作動距離となる。
以上の処理によって、患者眼と撮影部3(対物レンズ25)の補正後の作動距離が決定される。また視野検査中に患者眼が作動距離方向にずれた場合には、制御部80はワーキングドットWの検出結果に基づき、上述の補正値ΔWDを考慮した作動距離となるように駆動部6の制御で撮影部3を移動させる。これにより常に適切な作動距離を保った状態で視機能検査等を行えるようになる。
次に、眼球の移動又は回旋に追従して、視標呈示光学系70で呈示される検査視標の位置補正を行うトラッキングの動作原理を説明する。図6はトラッキングの動作原理の説明図であり、眼底像F2と固視標の呈示位置Tとが表示されている。
まず検者はモニタ8に表示された眼底像F2を確認しながら、コントロール部7aの操作で、眼底像F2上で乳頭部や血管等の特徴点(領域)を指定する。なお、特徴部分は画像処理で自動的に抽出されても良い。
そして制御部80はコントロール部7aからの入力信号に基づき、特徴点の座標と、特徴点を中心とした所定範囲を参照エリアSとしてメモリ83に記憶させ、モニタ8上に参照エリアSを示す枠を表示させる。そして、制御部80は参照エリアS内の画像処理によって、特徴部分の形状、輝度分布等の情報(画像処理により特徴部分を決定するための特徴情報)を得てメモリ83に記憶させる。
そして制御部80によってモニタ8上の特徴点(参照エリアS)の移動量が検出されると、眼Eの動き(移動)に追従して、眼底に投影される視標(検査視標)の呈示位置をモニタ8の選択位置に一致させる補正が行われる。これにより、検査中に生じる眼Eの回旋等による影響が抑えられて、眼底の所期の位置に正しく検査視標が投影され、視機能検査を精度良く行えるようになる。
以上のようなトラッキングが行われている状態で、制御部80はメモリ83に予め記憶されている視野計測プログラムに従い眼底の各測定点に所定の検査視標を呈示させる。
なお本実施形態では視野検査時に生じる作動距離の変化を補正するために、制御部80は所定の時間間隔でトラッキングの処理を一旦停止させて、ワーキングドットWを用いたアライメントの処理に切り換える。このようにすると時間を要する視機能検査において、適正作動距離を維持しつつ検査を継続できるようになる。
なおトラッキングとワーキングドットWによるアライメント(作動距離の補正)の切換は検査視標の呈示に連動して制御されても良い。例えば検査視標に対する患者の応答が入力される毎(又は所定回数応答が入力される毎)にトラッキングの処理を一旦停止させて、ワーキングドットWを用いたアライメントを実行しても良い。これ以外にも点光源27として、赤外光源11や視標呈示光学系70の波長と異なる帯域の波長(ただし撮像素子38で検出可能な波長帯域とする)を用いる場合には、トラッキングとアライメント処理を同時に行うこともできる。
制御部80はプロジェクター71の駆動制御で、検査視標の呈示位置をランダムに切り換えると共に、プロジェクター71の光源の出力を調節して視標の輝度を変化させる。また所定のタイミングで装置の作動距離の変化に対する補正を行う。
以上のようにして適切な作動距離が維持されている状態で、制御部80はメモリ83に予め記憶されている視野計測プログラムに従い眼底の各測定点に所定の検査視標を呈示させる。制御部80はプロジェクター71の駆動制御によって、検査視標の呈示位置をランダムに切り換えると共に、プロジェクター71の光源の出力を調節して視標の輝度を変化させる。
一方、患者は固視を維持しながら検査視標を認識できたら応答ボタン7bを押す。制御部80は入力信号に基づき、検査視標の輝度をその計測点で患者が認識可能な感度の応答情報としてメモリ83に記憶させる。なお、患者の応答が無い場合は、制御部80は検査視標の輝度を計測点で患者が認識できない感度の応答情報としてメモリ83に記憶させる。
全ての計測点での感度計測が終了すると、図7の眼の視機能感度の分布図の例に示されるように、制御部80は眼の視機能の検査結果をモニタ8に表示させる。制御部80は全計測点に対する感度の分布状態を模式図としてモニタ8に表示させる。なお、図7では、呈示視標の輝度の減衰値が感度分布の表示に用いられており、最も高い輝度との差分によって感度分布が表示されるようになっている。つまり、モニタ8に表示された数値が大きいほどその部位での感度が高いと判断される。
視野計側が完了すると、制御部80は、赤外光源11を消灯して可視光源14を点灯させる。そして挿脱機構39の駆動で跳ね上げミラー34を光路から退避させる。可視で照明された眼底からの反射光は上記の眼底撮影光学系を経て撮像素子35で受光される。
なお上記では、眼底(網膜)上の各測定点に検査視標を投影して、患者眼の応答に基づく眼の視機能検査をする眼底撮影装置に本発明の構成を適用する例を説明した。これ以外にも眼底カメラ等、患者の眼底観察又は撮影を行う周知の眼底撮影装置に本発明の構成を適用することで、眼底観察及び撮影をより好適に行えるようになる。
眼底撮影装置の外観概略図である。 光学系及び制御系の説明図である。 モニタに表示される前眼部像の例である。 モニタに表示される眼底像の例である。 適正作動距離の補正値算出についての説明図である。 トラッキングの動作原理の説明図である。 眼の視機能感度の検査結果の例である。
1 眼底撮影装置
8 モニタ
10 照明光学系
25 対物レンズ
27 光源
30 観察・撮影光学系
32 視度補正レンズ
35 撮像素子
40 フォーカス指標投影光学系
70 視標呈示光学系
80 制御部

Claims (3)

  1. 患者眼の眼底を撮影する撮影部と、該撮影部を前記患者眼に対して相対移動させる駆動部とを備える眼底撮影装置において、
    前記撮影部は、
    前記眼底を照明する照明光学系と、
    対物レンズを介して前記患者眼の角膜にアライメント指標を投影するための光源を持つアライメント手段と、
    視度補正レンズを持ち前記眼底のフォーカスを合わせるフォーカス手段と、
    前記アライメント指標の反射像と前記照明光学系で照明された眼底の反射像とを前記対物レンズを介して撮像する撮像素子を備える撮影光学系と、
    前記アライメント指標の反射像から患者眼の角膜曲率を得る角膜形状取得部及び前記視度補正レンズによる視度補正に基づき球面度数を得る視度情報取得部の少なくとも一方を持つ眼情報取得部と、
    該眼情報取得部で得られた角膜曲率及び球面度数の少なくとも一方に基づき前記患者眼に対する前記撮影部の適正作動距離に対する補正値を得る作動距離取得手段と、を有し
    前記駆動部は、前記作動距離取得手段で取得された補正値に基づき前記患者眼に対して前記撮影部を移動させることを特徴とする眼底撮影装置。
  2. 請求項1の眼底撮影装置において、
    前記アライメント手段は光軸に対して対称に配置された複数の光源を持ち、
    前記角膜形状取得部は、前記撮像素子で撮像された前記複数のアライメント指標の間隔から求めた前記アライメント指標の反射像の結像倍率に基づき、前記角膜曲率を得ることを特徴とする眼底撮影装置。
  3. 患者眼の眼底を撮影する撮影部と、
    前記撮影部を前記患者眼に対して相対移動させる駆動部と、
    前記患者眼の角膜曲率に関する情報を得る角膜形状取得部及び前記患者眼の球面度数に関する情報を得る視度情報取得部の少なくとも一方と、
    前記角膜曲率に関する情報及び前記球面度数に関する情報の少なくとも一方を用いて、前記患者眼に対する前記撮影部の適正作動距離値に対する補正値を決定する決定手段と、
    を備え、
    前記駆動部は、前記決定手段で決定された補正値に基づき前記患者眼に対して前記撮影部を移動させる、
    ことを特徴とする眼底撮影装置。
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