JP6044217B2 - インクジェット記録用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法およびインク記録物 - Google Patents
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Description
インクジェット記録方式は、熱により発生する泡や、ピエゾや静電等を利用して発生させた圧力で少量のインクを飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させて素早く乾燥させること、あるいは記録媒体に浸透させることにより画像を形成する方式であり、パーソナルおよび産業用のプリンタや印刷まで用途が拡大してきている。
また、OA用プリンタの高画質化技術の向上に伴って、顔料インクにおいても記録媒体として普通紙でも染料インクと同等の画像濃度が要求されている。しかし、顔料インクは、記録媒体として普通紙を使用する場合、紙中へ浸透することにより紙表面の顔料濃度が低くなり、画像濃度が低くなるという問題が生じている。
このインクの乾燥性を高めるために、印字前後よりヒータにて紙面を加熱してインクの乾燥を速める装置を有する印字装置も提案されているが、加熱を行う部位を付与するため、装置の大型化や複雑化を招いたり、また加熱のためにエネルギーを浪費してしまったりするのでインクジェット記録方式の利点が失われてしまう。
この提案のインクによると、普通紙上にインクが着弾して水分が蒸発すると急激に増粘するため高速で印字しても顔料の紙中への浸透が抑制され、高い画像濃度を示すとされている。しかし、この提案のインクは水分が蒸発すると急激に増粘するため、インクジェット記録装置内、特にノズル中で水分の蒸発が起こると増粘によってインクの吐出安定性が低下したり、ノズル周辺にインクが固着したりする問題があった。
例えば特許文献1には、カーボンブラックの特性を規定することにより画像濃度を向上させ、樹脂分散剤として、種々のモノマーからなる共重合体が提案されている。しかしながら、特許文献1における実施例として用いられているものはスチレン−アクリル樹脂のみであり、インクの保存安定性、高い画像濃度、吐出安定性のいずれをも充分に満たすことはできないという問題があった。
また、特許文献2には、ポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料を含有するインクに係る発明が開示されており、ポリマー分散剤として、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシル基を含む高分子化合物が好ましいとして、スチレン−マレイン酸共重合体が提案されている。しかしながら、特許文献2に係る提案をもってしても普通紙に画像形成した場合、顔料が紙表面にそれほど留まらず、充分な画像濃度は得られないという問題があった。
すなわち、本発明は、インクの保存安定性が良好で、普通紙で高い画像濃度が得られ、記録ヘッドからのインクの吐出安定性が良好でノズル周辺にインク固着がないインクジェット記録用インク、並びに該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法およびインク記録物を提供することを目的とする。
しかして、上記課題を解決するための本発明に係るインクジェット記録用インクは、水と、湿潤剤と、着色剤と、共重合体と、を含有し、普通紙に対して吐出されるインクジェット記録用インクであって、前記インクジェット記録用インクのpHは9から11であり、前記共重合体が、少なくとも下記式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位との共重合体から成ることを特徴とする。
なお、前記共重合体にその他の重合体成分を追加しても良い。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
本実施形態のインクジェット記録用インク(以下、「インク」と称することがある。)は、水と、湿潤剤と、着色剤と、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有して成る。
本発明に係るインクジェット記録用インクは、前記共重合体が普通紙などの記録媒体上に着弾した際に水不溶化による凝集増粘を起こし、インクの紙中への浸透が抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
なお、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とは前述のとおり、前記式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位との共重合体である。
以下、本発明のインクジェット記録用インクを構成する組成分について更に詳しく説明する。
本発明で使用される共重合体は、インクジェット記録用インクが普通紙などの記録媒体上に着弾した際にpHの変化(酸性側へ変化)に応答して水不溶化による凝集増粘する特性を有するものである。この機能により、インクが紙中に浸透するのが抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
本発明では特に前記共重合体を分散剤として使用することで高画像濃度及びノズルからの吐出安定性が良好なインクを提供することができる。
例えば、水を媒体にして下記式(4)で表されるモノマーと、下記一般式(5)で表されるモノマーとを、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤を加え、常温乃至100℃にて重合させ前記式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位との共重合体を得るが、本発明は特にこれに限定されない。
本発明に係るインクジェット記録用インクは、インクのpHが8.5以下になるとポリマーの疎水性が高くなり、水に溶けにくくなるため樹脂が析出し、凝集増粘するという特徴を有する。これは従来のインクにはない本発明の特徴である。
したがって、本発明に係るインクジェット記録用インクは、pHの低下に伴う高い粘度変化率を有する。ここで下記の方法によって測定される粘度変化率は、30%以上あることが好ましく、更に好ましくは50%以上である。粘度変化率が小さすぎるとインクが紙中に浸透してしまい充分な画像濃度が得られない。
粘度変化率は初期インク粘度に対し、HCl水溶液等でインクのpHを8.5に調整した時の粘度変化率として下記式より求める。
粘度計:東機産業株式会社製 粘度計MODEL RC−500
また、上記効果を損なわない範囲で、後に記載する分散剤を共重合体と併用してもよい。
本発明で使用される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。
水の含有量は、インク総量に対して20〜60重量%が好ましい。
本発明で使用される湿潤剤は、インク組成物において、保湿効果の付与による吐出安定化の向上に必要である。含有量は、インク総量に対して10〜50重量%が好ましい。前記含有量が10重量%未満であると、インクが水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘インク詰まり等が生じることがある。前記含有量が50重量%より多いと、インクジェット記録装置内では増粘インク詰まりは発生しにくくなるが、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要なことがあり、その場合記録物の画像濃度が低下することがある。
これらの湿潤剤は、単独または2種類以上混合して使用することができる。 上記の中でも、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリエチレングリコールおよび/またはグリセリンを含むことが水分蒸発による吐出不良を防止する上で優れた効果が得られる。
本発明で用いられる着色剤としての顔料の前記記録用インクにおける含有量は、0.1重量%以上、20.0重量%以下が好ましい。顔料の体積平均粒子径(D50)は、150nm以下が好ましい。
ここで、前記顔料の体積平均粒子径(D50)は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したものである。
これらの顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、および有機顔料のいずれであってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15nm〜40nm、BET法による比表面積が、50m2/g〜300m2/g 、DBP吸油量が40ml/100g〜150ml/100g、揮発分が0.5%〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
前記カーボンブラックとして市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学株式会社製);Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(いずれも、コロンビア社製);Regal400R、同330R、同660R、Mogul L、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(いずれも、デグッサ社製)などが挙げられる。
なお、イエロー顔料として、ピグメントイエロー74、マゼンタ顔料として、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレッド19、シアン顔料として、ピグメントブルー15:3を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
更に本発明で使用される顔料は、分散剤等の界面活性剤や樹脂で被覆したグラフト処理やカプセル化処理した物を使用することも可能であるが、本発明の化合物を分散剤に使用した方がより好ましい。
また効果を損なわない範囲で上述した顔料を併用してもよい。
本発明のインクジェット記録用インクの組成分に用いられるその他の成分としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができる。その他の成分としては、例えば、分散剤、浸透剤、pH調整剤、水分散性樹脂、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
前記分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤;
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系界面活性剤等が例示される。
前記浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物および炭素数8〜11のグリコールエーテル化合物のいずれかを含有することが好ましい。
前記浸透剤は、前記湿潤剤とは別なものであり、前記湿潤剤よりも湿潤性が比較的少ないので、「非湿潤剤性である媒質」ということができる。これら非湿潤剤性である浸透剤は、25℃の水中において0.2〜5.0重量%の間の溶解度を有するものが好ましい。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2重量%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0重量%(25℃)]が特に好ましい。
その他のポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずにpHを8.5〜11、好ましくはpHを9〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが8.5未満および11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。8.5未満の時には、インク保管中にインクpHが低下して高分子微粒子が粒子径の増大により凝集することがある。
前記pHは、例えば、pHメータHM−30R(TOA−DKK社製)により測定することができる。
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。
前記水分散性樹脂の具体例としては、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子およびフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
ここで、前記水分散性樹脂の体積平均粒子径(D50)は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したものである。
また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。 前記水分散性樹脂の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で1〜15重量%が好ましく、2〜7重量%がより好ましい。
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
本実施形態のインクジェット用インクは、水、湿潤剤、着色剤、及びpHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体、更に必要に応じて他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。
なお、pHの低下に伴って凝集増粘が起こる共重合体とは前述のとおり、前記式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(2)で表されるモノマーとの共重合体である。
前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
前記インクジェット用インクの25℃での粘度は3mPa・s〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が3mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。
前記粘度は、例えば、粘度計(RL−550、東機産業株式会社製)を使用して、25℃で測定することができる。
前記インクジェット用インクの表面張力としては、25℃で、40mN/m以下が好ましい。前記表面張力が、40mN/mを超えると、記録用メディア上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクジェット記録用インクを容器中に収容するものであり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を構成することもできる。
前記容器としては、その形状、構造、大きさ、材質に特に制限無く、目的に応じて適宜選択できる。例として、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルムなどで形成されたインク袋を少なくとも有するものなどが好適に挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば刺激発生手段、制御手段等を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば刺激発生工程、制御工程等を含む。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
前記インク飛翔手段は、前記本発明のインクジェット用インクに、刺激を印加し、該インクジェット用インクを飛翔させて画像を形成する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
図3は、本発明のシリアル型インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、装置本体101の前面112の一端部側には、前面112から前方側に突き出し、上カバー111よりも低くなったインクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しないインク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ200から前記インクが供給されて補充される。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられる。
なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
なお、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
本発明のインクジェット記録方法により記録されたインク記録物は、本発明のインク記録物である。すなわち、本発明のインク記録物は、本発明のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体(記録メディア)上に有してなる。
前記記録メディアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、普通紙、印刷用塗工紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通紙および印刷用塗工紙の少なくともいずれかが好ましい。前記普通紙は安価である点で有利である。また、前記印刷用塗工紙は光沢紙に比べ比較的安価でしかも平滑な光沢ある画像を与える点で有利である。しかし、乾燥性が悪く一般にインクジェット用には使用困難であったが、本発明のインクにより乾燥性が向上し使用可能となった。
本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
(化合物Aの作成)
四口フラスコに温度計、攪拌機、還流冷却機を設置し、水500g及び過硫酸アンモニウム15gを仕込み、80〜90℃の加熱条件下で、スチレン100g、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)100gを、それぞれ攪拌しながらゆっくり滴下した。スチレン、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(%)は、50:50である。
続いて4時間反応させた後、冷却し、NaOHを用いて中和し、さらに蒸留水を加えて固形分を20%に調整して、スチレン−マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)共重合体Na塩(化合物A)の水溶液を得た。
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(重量%)を、67:33に変えた点以外は化合物Aの作成と同様にして化合物Bを得た。
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比(重量%)を、75:25に変えた点以外は化合物Aの作成と同様にして化合物Cを得た。
化合物Cの作成におけるマレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をマレイン酸(N、N−ジブチルプロピレンジアミンモノアミド)に変えた点以外は化合物Cの作成と同様にして化合物Dを得た。
化合物Cの作成におけるNaOHをKOHに変えた点以外は、化合物Cの作成と同様にして化合物Eを得た。
化合物Cの作成におけるNaOHをトリエタノールアミンに変えた点以外は、化合物Cの作成と同様にして化合物Fを得た。
化合物Dの作成におけるNaOHをトリエタノールアミンに変えた点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Gを得た。
化合物Bの作成における中和剤の量を変えて中和率を85%にした他は、化合物Bの作成と同様にして化合物Hを得た。
(調整例1):顔料分散液A
下記処方(1)にて、下記カーボンブラック顔料、共重合体および純水の混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)で周速10m/sで10分間循環分散してブラック顔料分散液を得た。
・カーボンブラック顔料 NIPEX150 20重量部
(degussa社製:ガスブラック)
・化合物Aの水溶液(固形分 12.5重量%) 64重量部
・純水 16重量部
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物B〜Hの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液B〜Hを得た。
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変えた点以外は調整例1と同様にしてシアン顔料分散液を得た。
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変えた点以外は調整例1と同様にしてマゼンタ顔料分散液を得た。
調整例1のカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変えた点以外は調整例1と同様にしてイエロー顔料分散液を得た。
(化合物Iの作成)
化合物Aの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をスチレン、アクリル酸に変え、スチレン、アクリル酸の重量比率を43:57とした点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Iを得た。
化合物Cの作成におけるスチレン、マレイン酸(N,N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)をスチレン、マレイン酸に変え、スチレン、マレイン酸の重量比率を43:57とした点以外は、化合物Dの作成と同様にして化合物Iを得た。
(比較調整例1):顔料分散液I
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物Iの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液Iを得た。
調整例1の化合物Aの水溶液を化合物Jの水溶液に変えた点以外は調整例1と同様にして顔料分散液Jを得た。
調整例1の化合物Aの水溶液をナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の水溶液に変えた以外は調整例1と同様にして顔料分散液Kを得た。
<インクジェット用インクの製造方法>
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクを作成した。
・調整例1の顔料分散液A(顔料濃度20%) 40.0重量部
・グリセリン 5.5重量部
・1,3−ブタンジオール 16.5重量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5重量部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0重量部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、平均粒子径150nm、
MFT30℃以下)
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液 1.5重量部
(固形分40%)
・純水 26.0重量部
実施例1において、顔料分散液Aを顔料分散液B〜Hに変えた点以外は同様にして実施例2〜8のインクを得た。
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、シアン顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例9のインクを得た。
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、マゼンタ顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例10のインクを得た。
実施例3において、顔料分散液Aをシアン顔料分散液変え、イエロー顔料分散液を33.0重量部とし、純水を33.0重量部とした点以外は同様にして実施例11のインクを得た。
実施例1のインクAの顔料分散液Aを顔料分散液I〜Kに変えた点以外は同様にして比較例1〜3のインクを得た。
23℃50%RH環境下で、インクジェットプリンター(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、Microsoft Word2000(Microsoft社製)にて作成した64point文字「■」の記載のあるチャートをMyPaper(株式会社リコー製)に打ち出し、印字面の「■」部をX−Rite938にて測色し、下記評価基準により判定した。
印字モードはプリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
◎:ブラック:1.2以上、マゼンタ:0.95以上、
シアン:0.95以上、イエロー:0.8以上、
○:ブラック:1.15以上、マゼンタ:0.9以上、
シアン:0.9以上、イエロー:0.75以上、
△:ブラック:1.1以上、マゼンタ:0.85以上、
シアン:0.85 以上、イエロー:0.7以上、
×:ブラック:1.1未満、マゼンタ:0.85未満、
シアン:0.85 未満、イエロー:0.7未満、
各インクをインクカートリッジに充填して60℃で2週間保存し、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変化を下記基準により評価した。
◎:粘度の変化が±5%未満
○:粘度の変化が±5%以上±10%未満
△:粘度の変化が±10%以上±30%未満
×:粘度の変化が30%以上
吐出安定性については、印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを50℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって、下記評価基準に従い評価した。
△:1〜5回の動作により回復した。
×:6回以上の動作によっても回復がみられなかった。
実施例1〜3は、本発明のスチレン、マレイン酸(N、N−ジメチルプロピレンジアミンモノアミド)の比率を変えたもので塩はNaを使用し、カーボンブラック顔料を用いたもの。
実施例4は、マレイン酸アミド化合物のアルキル基をブチルに変えたもの。
実施例5〜7は、塩をKまたはトリエタノールアミンに変更したもの。
実施例8は、実施例2の中和率を100%から85%に変えたもの。
実施例9、10、11は、それぞれシアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、イエロー顔料分散液を使用したもの。
例えば、実施例1〜8と比較例1〜3との比較で、本発明のインクは、画像濃度が高く保存安定性、吐出安定性が同等以上であることが分かる。
また、実施例3と4との比較、及び実施例6と7との比較から、アルキルとしてメチル基が保存安定性で優れていることが分かる。
実施例5〜7より塩の種類を変えても同等の効果があることが分かる。
更に、実施例9〜11より、本発明の共重合体をカラー顔料に使用してもカーボンブラックと同様の効果があることが分かる。
本発明のインクでは、pH低下により水不溶化による凝集増粘の効果により、各色インクで、画像濃度が明らかに優れ、インク保存安定性及びインク吐出安定性について同等以上であることが分かる。
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 再度カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 先端加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 デンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装
Claims (11)
- 前記着色剤1重量部に対し、前記共重合体を0.005〜5重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水が20〜60重量%、前記湿潤剤が10〜50重量%、前記着色剤が0.1〜20重量%含有されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
- 前記普通紙の紙面のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
- 前記インクジェット記録用インクは、下記測定方法により算出される粘度変化率が30%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
測定方法:前記インクジェット記録用インクの液温を25℃に調整し、初期粘度を測定した後、HCL水溶液(20重量%)を滴下しpH8.5にしたときの粘度を測定し、下記式により粘度変化率を算出する。
式:粘度変化率(%)=[(pH調整後粘度−初期粘度)/初期粘度]×100 - 前記共重合体における前記式(1)で表される構造単位と前記一般式(2)で表される構造単位との重量の比率が40:60〜80:20であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクにインク飛翔手段を介して刺激を印加し、記録ヘッドから該インクジェット記録用インクを飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを記録ヘッドから飛翔させて記録媒体に画像を記録するインク飛翔手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体上に有してなることを特徴とするインク記録物。
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