(1)エンジンの全体構成
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかるターボ過給機付多気筒エンジンを示している。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルの火花点火式多気筒エンジンである。具体的に、当実施形態のエンジンは、列状に並ぶ4つの気筒2A〜2Dを有する直列4気筒型のエンジン本体1と、エンジン本体1に空気を導入するための吸気マニホールド10と、エンジン本体1で生成された排気ガスを排出するための排気マニホールド30とを備えている。
エンジン本体1の各気筒2A〜2Dには、それぞれピストン(図示省略)が往復摺動可能に挿入されており、各ピストンの上方に燃焼室3が区画形成されている。燃焼室3では、後述するインジェクタ9から噴射される燃料と空気との混合気が燃焼し、その燃焼によって生成された排気ガスは、各気筒2A〜2Dの排気行程において、燃焼室3から排気マニホールド30へと排出される。
エンジン本体1の上部(シリンダヘッド)には、吸気マニホールド10から供給される空気を各気筒2A〜2Dの燃焼室に導入するための吸気ポート4と、吸気ポート4を開閉する吸気弁6と、各気筒2A〜2Dの燃焼室で生成された排気ガスを排気マニホールド30に導出するための排気ポート5と、排気ポート5を開閉する排気弁7とが設けられている。
吸気弁6および排気弁7は、それぞれ、カムシャフトやカム等を含む動弁機構(図示省略)により、エンジン本体1のクランク軸の回転に連動して開閉駆動される。吸気弁6および排気弁7用の各動弁機構には、それぞれVVT16が組み込まれている。VVT16は、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)の略称であり、吸気弁6および排気弁7の開閉タイミングを可変的に設定するためのバルブ可変機構である。
エンジン本体1の上部(シリンダヘッド)には、燃焼室3に向けて燃料(ガソリンを含有する燃料)を噴射するインジェクタ9と、インジェクタ9から噴射された燃料と空気との混合気に火花放電による着火エネルギーを供給する点火プラグ8とが、各気筒2A〜2Dにつきそれぞれ1組ずつ設けられている。
点火プラグ8は、図外の点火回路からの給電に応じて各気筒2A〜2Dの混合気に対し順に着火エネルギーを供給する。当実施形態のような直列4気筒エンジンでは、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に、180°CAずつずれたタイミングで点火が行われて、この順に排気行程等が実施される(後述する図9も参照)。なお、「°CA」とは、エンジンの出力軸であるクランク軸の回転角(クランク角)を表す。
吸気マニホールド10は、各気筒2A〜2Dの吸気ポート4と連通する4つの独立吸気通路11と、各独立吸気通路11の上流側(吸入空気の流れ方向の上流側)に共通に設けられたサージタンク12とを有している。サージタンク12のさらに上流側には、単一の上流側吸気通路13が設けられており、この上流側吸気通路13には、吸入空気量を調節するための開閉可能なスロットル弁14と、後述するターボ過給機20により圧縮された空気を冷却するためのインタークーラ15とが設けられている。なお、吸気マニホールド10(独立吸気通路11およびサージタンク12)と上流側吸気通路13とは、それぞれ、本発明にかかる吸気通路を構成する要素である。
排気マニホールド30は、図1〜図4に示すように、各気筒2A〜2Dの排気ポート5と連通する複数の独立排気通路31,32,33と、各独立排気通路31,32,33の下流端部(排気ガスの流れ方向下流側の端部)が集合した排気集合部34とを有している。排気集合部34のさらに下流側には、単一の下流側排気通路35が設けられており、この下流側排気通路35には、三元触媒等の触媒が内蔵された触媒コンバータ36やサイレンサー(図示省略)等が設けられる。なお、排気マニホールド30(独立排気通路31,32,33および排気集合部34)と下流側排気通路35とは、それぞれ、本発明にかかる排気通路を構成する要素である。
上記のように、当実施形態では4つの気筒2A,2B,2C,2Dに対し3つの独立排気通路31,32,33が用意されている。これは、中央の独立排気通路32が、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに対し共通に使用可能なようにY字状に分岐した形状とされているからである。すなわち、独立排気通路32は、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cの各排気ポート5から延びる2つの分岐通路部32a,32bと、各分岐通路部32a,32bが合流することで形成された単一の共通通路部32cとを有している。一方、1番気筒2Aおよび4番気筒2Dの各排気ポート5に接続される独立排気通路31,33については、分岐のない単管状に形成されている。以下では、単管状の独立排気通路31,33を、それぞれ「第1独立排気通路31」および「第3独立排気通路33」といい、二股状に分岐した独立排気通路32を「第2独立排気通路32」ということがある。
ここで、当実施形態のような4サイクル4気筒エンジンでは、1番気筒2A→3番気筒2C→4番気筒2D→2番気筒2Bの順に点火が行われるので、二股状に形成された第2独立排気通路32の上流端部が接続される2番気筒2Bおよび3番気筒2Cは、排気順序(排気行程が実施される順序)が連続しない関係にある。このため、上記のように2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに共通の独立排気通路32を接続した場合でも、これら両気筒2B,2Cからの排気ガスが同時に第2独立排気通路32に流れることはない。
単管状に形成された第1、第3独立排気通路31,33は、その間に位置する第2独立排気通路32の共通通路部32cに徐々に近接するように、気筒列方向の中央側を指向して延びている。そして、第1、第3独立排気通路31,33の各下流端部と第2独立排気通路32の下流端部(共通通路部32cの下流端部)とが、所定の角度(比較的浅い角度が望ましい)をもって合流することにより、各独立排気通路31〜33の下流側に上記排気集合部34が形成されている。
単管状の第1独立排気通路31および第3独立排気通路33は、2番気筒2Bと3番気筒2Cとの間を通る中心線を挟んで対称の形状を有している。このため、第1独立排気通路31および第3独立排気通路33は、互いに同一の通路長および容積を有している。一方、二股状の第2独立排気通路32は、その分岐通路部32a,32bおよび共通通路部32cの各通路長の合計が、第1、第2独立排気通路31,32のそれぞれの通路長と同一となるように形成されており、第1、第2独立排気通路31,32と同一の容積を有している。
図2および図4に示すように、第1、第3独立排気通路31,33の各下流部と、第2独立排気通路32の下流部(共通通路部32c)とは、排気ガスの流れ方向に沿って延びる隔壁37によってそれぞれ2分されている。すなわち、第1、第3独立排気通路31,33の下流部、および第2独立排気通路32の共通通路部32cは、それぞれ、隔壁37によって区画された2つの流路38,39を有している。
第1〜第3独立排気通路31,32,33内の各隔壁37は、独立排気通路31,32,33の途中部から下流端部(排気集合部34との接続部)までの範囲に亘って設けられている。言い換えると、各独立排気通路31,32,33は、流路38,39に2分された状態のまま(途中でその分割状態が解消されることなく)、排気集合部34に接続されている。
排気マニホールド30には、その第1〜第3独立排気通路31,32,33内を通る排気ガスの流通面積を変更するための排気絞り弁40が設けられている。この排気絞り弁40は、第1〜第3独立排気通路31,32,33の各下流部に備わる上記流路38,39のうちの一方(当実施形態では図4の下側に位置する流路39)を開閉可能に遮断することにより、各独立排気通路31,32,33内の流通面積を変更する。なお、以下では、排気絞り弁40により開閉される流路39を「可変流路39」といい、もう一方の流路38を「常用流路38」という。
排気絞り弁40は、その詳細な図示は省略するが、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39を遮断するように設けられた3つの弁体と、各弁体どうしを連結するシャフトと、シャフトを回転駆動する駆動源(電気モータ等)を有している。このような構造の排気絞り弁40は、上記駆動源によるシャフトおよび弁体の回転駆動に伴って、各独立排気通路31,32,33内の可変流路39を同時に開閉することが可能である。
当実施形態のエンジンには、ターボ過給機20および電動過給機26が装備されている。
ターボ過給機20は、エンジン本体1から排出される排気ガスのエネルギーにより駆動される過給機であり、排気マニホールド30の排気集合部34の直下流(排気集合部34と下流側排気通路35との間)に設けられたタービンハウジング21と、タービンハウジング21内に配設されたタービン22と、上流側吸気通路13内に配設されたコンプレッサ23と、これらタービン22およびコンプレッサ23を互いに連結する連結軸24とを有している。エンジンの運転中、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dから排気ガスが排出されると、その排気ガスが排気マニホールド30を通じてターボ過給機20のタービンハウジング21内に流入することにより、タービン22が排気ガスのエネルギーを受けて高速で回転する。また、タービン22と連結軸24を介して連結されたコンプレッサ23がタービン22と同じ回転速度で駆動されることにより、上流側吸気通路13を通過する吸入空気が加圧されて、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dへと圧送される。
電動過給機26は、上記ターボ過給機20と異なり、電気モータ27によって直接駆動されるコンプレッサ(図示省略)を有しており、電気モータ27の駆動力によって(排気エネルギーによらずに)上流側吸気通路13内の吸入空気を加圧するものである。
下流側排気通路35には、ターボ過給機20のタービン22をバイパスするためのバイパス通路42が、タービンハウジング21と下流側排気通路35とを互いに連結するように設けられており、このバイパス通路42の途中部には、ウェストゲート弁43が開閉可能に設けられている。ウェストゲート弁43が開弁されると、排気マニホールド30から排出された排気ガスの少なくとも一部がバイパス通路42を通過するので、タービン22に流入する排気ガスの量が減り、タービン22の駆動力が抑制される。
排気マニホールド30の排気集合部34と吸気マニホールド10のサージタンク12とは、EGR通路45を介して互いに連結されている。このEGR通路45は、エンジン本体1から排出された排気ガスの一部を吸気系に戻す、いわゆる排気還流(Exhaust Gas Recirculation)を行うための通路である。EGR通路45には、EGRガス(吸気系に戻される排気ガス)を冷却するためのEGRクーラ46と、EGR通路45を通るEGRガスの流量を制御するための開閉可能なEGR弁47とが設けられている。
(2)ターボ過給機の特性
当実施形態では、ターボ過給機20として、比較的大型のタービン22とコンプレッサ23とを組み合わせたものが用いられる。それは、次のような理由による。
従来、特に低速域からの加速時にトルクの応答性を高める観点から、コンプレッサに対してタービンのサイズを小型化し、排気ガスの流量が少ない低速域でも高い圧力比が得られるようにすることが多かった。タービンは、ある程度の量の排気ガスがないと高速で回転できないが、小型のタービンであれば、排気ガスの流量が少なくても高速で回転できるので、低速域でのコンプレッサの圧力比を高める(つまり低速域での過給能力を高める)ことができる。
図5は、コンプレッサの特性を示す性能曲線のグラフであり、その縦軸はコンプレッサの圧力比、横軸はコンプレッサの吐出流量である。この図5のグラフにおいて、各ラインSL、RL、CLは、それぞれ、サージライン、回転限界ライン、チョークラインを表しており、これらのラインで囲まれた領域がコンプレッサの運転可能領域である。また、この運転可能領域内に図示された等高線のような曲線群は、コンプレッサの効率が等しい運転ポイントを結んだ等効率線であり、領域の中央側に位置する曲線ほど効率が高くなることを表している。
従来から多用されてきたように、タービンとして比較的小型のものを用いた場合には、エンジンの低速域からの加速時に、すぐにタービンの回転速度が上昇し、これに伴いコンプレッサの圧力比も比較的鋭く上昇する。このように、少ない流量でも高い圧力比が得られるので、加速時のコンプレッサの特性としては、図5の曲線L2のような、傾きの大きい曲線が得られる。これにより、エンジンの低速域でも比較的高い過給圧が得られるので、低速域のエンジンのトルクが上昇し、低速域からの加速レスポンスが向上する。なお、曲線L2では、その途中から圧力比が頭打ちになっている(横向きの直線に移行している)が、これは、エンジンや過給機を保護する観点から設けられた上限値に過給圧が達したためにウェストゲート弁が開かれたことを示している。
上記のように、タービンを小型化することは、エンジンの低速域でのトルクを補強する上では有利であるが、その反面、エンジンの高速域では、タービンを通過するときの排気ガスの流通抵抗が高くなり易く、ポンピングロスが増大するという欠点がある。また、コンプレッサのサージラインSLの近傍が多用されることとなるため、コンプレッサ単体でみると、決して効率の良い使い方とはいえない。
これに対し、当実施形態では、タービン22として比較的大型のものを用いている。このため、エンジンの低速域からの加速時には、図5の曲線L1に示すように、コンプレッサ23の効率の高いところ(等高線の尾根の近傍)が多用されるようになり、コンプレッサ単独の使用条件としては好ましいといえる。
ただし、加速初期のような排気ガスの流量が少ない状況では、タービン22の回転速度がなかなか上昇せず、コンプレッサ23の圧力比は緩やかにしか上昇しない。このことは、エンジン低速域でのトルクが充分に増大せず、低速域からの加速レスポンスが悪くなることを意味する。
一方、エンジン回転速度がある程度上昇して以降は、タービン22の回転上昇に応じて大きな圧力比が得られ、充分なトルクを確保することができる。しかも、排気ガスの流量が多いときの流通抵抗(排気ガスがタービン22を通過するときの抵抗)はタービンが小型であるときよりも小さいので、エンジン高速域におけるポンピングロスを低減して燃費を向上させることができる。
以上のとおり、タービン22を大型化した当実施形態の構成は、高速域でのトルクの確保や燃費の面で有利である一方、低速域でのトルクが充分に出せないという問題がある。そこで、このような問題に対処すべく、当実施形態では、排気絞り弁40を閉弁して可変流路39を遮断する独立排気絞り制御を低速域で実行することにより、低速域でのトルク不足を補うようにしている(その詳細は後述する)。
(3)制御系
次に、図6を用いて、エンジンの制御系について説明する。当実施形態のエンジンは、その各部がECU(エンジン制御ユニット)50によって統括的に制御される。ECU50は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明にかかる制御手段に相当するものである。
ECU50には、各種センサからの情報が入力される。例えば、エンジンもしくは車両には、エンジンの回転速度、つまりエンジン本体1のクランク軸の回転速度を検出するためのエンジン速度センサSN1と、エンジンの冷却水の温度を検出するためのエンジン水温センサSN2と、上流側吸気通路13を通過する吸入空気の流量を検出するためのエアフローセンサSN3と、ドライバーにより操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するためのアクセル開度センサSN4とが設けられており、これらの各センサで検出された情報が電気信号としてECU50に逐次入力されるようになっている。
ECU50は、上記各センサ(SN1〜SN4等)からの入力信号に基づいて種々の演算等を実行しつつ、エンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、点火プラグ8、インジェクタ9、吸排気弁用のVVT16,16、スロットル弁14、排気絞り弁40、ウェストゲート弁43、EGR弁47、および電動過給機26用の電気モータ27と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいて、これらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
(4)運転領域に応じた制御
次に、ECU50が行うエンジン制御の具体例について、図7の制御マップを参照しつつ説明する。
図7において、WOTは、エンジンの全負荷ライン(アクセル全開のときのエンジントルク)を表している。当実施形態では、ターボ過給機20および電動過給機26がエンジンに備わっているので、エンジンの全負荷ラインWOTは、自然吸気のとき(過給なしのとき)のエンジントルクの上限である自然吸気ラインNAよりも高く設定されている。
全負荷ラインWOT上に存在するポイントICは、いわゆるインターセプトポイントである。このインターセプトポイントICでは、ターボ過給機20のコンプレッサ23による過給圧が予め定められた上限値に達するので、過給圧がそれ以上に上昇するのを防止するために、ウェストゲート弁43を開いて排気ガスの一部をバイパス通路42に流す(タービン22をバイパスさせる)制御が実行される。なお、以下では、インターセプトポイントICに対応するエンジン回転速度Niを、「インターセプト回転速度Ni」と称する。
インターセプトポイントICよりも高速側の全負荷ラインWOT上に存在するポイントXは、エンジンの出力が最大になる最高出力点である。なお、以下では、最高出力点Xに対応するエンジン回転速度Nxを、「定格回転速度Nx」という。定格回転速度Nxは、比較的高速側の値をとるが、エンジンの最高許容回転速度(いわゆるレッドゾーンに入る速度)とは必ずしも一致しない。
上述したように、当実施形態では、比較的大型のタービン22が用いられているので、エンジン回転速度がある程度上昇しないと、コンプレッサ23による過給圧は上限値に達しない。このため、インターセプトポイントICに対応するエンジン回転速度、つまりインターセプト回転速度Niは、エンジンの定格回転速度Nxの1/3以上の値となる。言い換えると、当実施形態のターボ過給機20の諸元は、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上になるように設定されている。
図7のマップによると、インターセプト回転速度Niよりも低回転側の速度域における高負荷側(トルクの高い側)に、第3領域R3が設定されているとともに、この第3領域R3よりもさらに高負荷側に、第4領域R4が設定されている。一方、インターセプト回転速度Niよりも高回転側の速度域における高負荷側には、第2領域R2が設定されている。また、これら第2、第3、第4領域R2,R3,R4を除いた残余の領域、つまりインターセプトポイントICを頂点とした下拡がり状の領域および自然吸気ラインNAよりも低負荷側の領域には、第1領域R1が設定されている。なお、第2領域R2は、本発明にかかる高速・高負荷運転領域に相当し、第3領域R3および第4領域R4は、本発明にかかる低速・高負荷運転領域に相当し、この中でも特に低速かつ高負荷の第4領域R4は、本発明にかかる特定の運転領域に相当する。
エンジンの運転中、ECU50は、エンジン速度センサSN1、エアフローセンサSN3、およびアクセル開度センサSN4等から得られる情報に基づいて、エンジンが図7の制御マップにおけるどの領域で運転されているかを逐次判断し、その判断結果に応じてそれぞれ次のような制御を実行する。
(i)第1領域R1
まず、第1領域R1でエンジンが運転されているときの制御について説明する。第1領域R1での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を開く(独立排気絞り制御の非実行)。
・ウェストゲート弁43を閉じる。
・電動過給機26を停止させる。
すなわち、第1領域R1では、排気絞り弁40が開かれて、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39が開放される。これにより、各独立排気通路31,32,33内では、常用流路38および可変流路39の双方を排気ガスが流通し得るようになり、排気ガスの流通抵抗が低減される。このため、特に第1領域R1内の高速域のように、各気筒2A〜2Dから単位時間あたりに排出される排気ガスの量が多くなる運転条件であっても、排気ガスがスムーズに排出され、ポンピングロスが低減される。
また、第1領域R1では、各独立排気通路31,32,33を通じて排出された排気ガスが全てターボ過給機20のタービン22に流入するように、ウェストゲート弁43が閉じられる。これにより、排気ガスのエネルギーを受けてタービン22が回転するとともに、このタービン22によってコンプレッサ23が駆動され、コンプレッサ23による過給が行われる。
また、第1領域R1では、電動過給機26の電気モータ27が停止され、電動過給機26による過給は行われない。
なお、EGR弁47については、少なくとも第1領域R1内の低負荷側で開かれる。これにより、EGR通路45を通じた排気ガスの還流操作が行われ、低負荷域でのポンピングロスの低減が図られる。
(ii)第2領域R2
第2領域R2での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を開く(独立排気絞り制御の非実行)。
・ウェストゲート弁43を開く。
・電動過給機26を停止させる。
第2領域R2は、インターセプト回転速度Niよりも高速側の全負荷ラインWOTを含む領域であり、ウェストゲート弁43を開かないとターボ過給機20のコンプレッサ23による過給圧が過大になる領域である。そこで、第2領域R2では、エンジン本体1およびターボ過給機20を保護するために、過給圧が上限値を超えないような開度までウェストゲート弁43が開かれる。
なお、ウェストゲート弁43が開かれる点を除けば、第2領域R2での制御は、上述した第1領域R1での制御と基本的に同じである。
ところで、過給圧の上昇は、EGR弁47を開くことによっても抑制することができる。このため、第2領域R2の一部において、ウェストゲート弁43の開弁に代えて、あるいはウェストゲート弁43の開弁と同時に、EGR弁47を開く制御を実行してもよい。
(iii)第3領域R3
第3領域R3での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を閉じる(独立排気絞り制御の実行)。
・吸排気弁6,7のバルブオーバーラップ期間を拡大する。
・ウェストゲート弁43を閉じる。
・電動過給機26を停止させる。
すなわち、第3領域R3では、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御が実行されることにより、第1〜第3独立排気通路31,32,33内のそれぞれの可変流路39が遮断される。このことは、各独立排気通路31,32,33内の流通面積が実質的に減少したことを意味する。すると、エンジン本体1の各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスは、各独立排気通路31,32,33内の常用流路38のみを通って、高い流速を保ったまま排気集合部34およびタービン22へと流入する。
また、第3領域R3では、ウェストゲート弁43が閉じられる。これにより、各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスは、全てターボ過給機20のタービン22に流入し、コンプレッサ23による過給が最大限行われる。
さらに、第3領域R3では、吸気弁6および排気弁7用の各VVT16が駆動されることにより、吸気弁6および排気弁7の双方が開くバルブオーバーラップ期間が、第1領域R1および第2領域R2のときよりも長くなるように設定される。すなわち、図8および図9に示すように、各気筒2A〜2Dの排気行程の後半から吸気行程の前半にかけた比較的長い期間OLに亘って、吸気弁6および排気弁7の双方が開かれるように、吸排気弁6,7の開閉タイミングが設定される。
なお、上記のような制御は、第3領域R3での定常運転時はもちろんのこと、エンジンの運転ポイントが低負荷域から第3領域R3に移行しようとする過渡期にも実行される。すなわち、エンジンの低速域での運転中に負荷(アクセル開度に基づく要求トルク)が増大し、これに伴ってエンジンの運転ポイントが第3領域R3に向かって図7の上方に移動しているときには、第3領域R3への実際の移行に先立って、排気絞り弁40を閉じるとともにバルブオーバーラップ期間を拡大させる制御が実行される。
(iii)第4領域R4
第4領域R4での運転時、ECU50は次のような制御を実行する。
・排気絞り弁40を閉じる(独立排気絞り制御の実行)。
・吸排気弁6,7のバルブオーバーラップ期間を拡大する。
・ウェストゲート弁43を閉じる。
・電動過給機26を作動させる。
第4領域R4は、最も低回転かつ高負荷の条件であるため、ターボ過給機20に加えて電動過給機26による過給を行い、低回転であるにもかかわらず充分なトルクが得られるようにする。すなわち、第4領域R4では、ウェストゲート弁43が閉じられるとともに、電動過給機26用の電気モータ27が駆動される。
なお、電動過給機26による過給(電気モータ27の駆動)は、第4領域R4での定常運転時だけでなく、エンジンの運転ポイントが低負荷域から第4領域R4に移行しようとする過渡期にも実行される。すなわち、エンジンの低速域での運転中に負荷(アクセル開度に基づく要求トルク)が増大し、これに伴ってエンジンの運転ポイントが第4領域R4に向かって図7の上方に移動しているときには、第4領域R4への実際の移行に先立って、電動過給機26用の電気モータ27が駆動される。
上記のような電動過給機26による過給が追加される点を除けば、第4領域R4での制御は、上述した第3領域R3での制御と基本的に同じである。
(5)作用等
以上説明したように、当実施形態のターボ過給機付多気筒エンジンでは、1つの気筒(2Aまたは2D)の排気ポート5に上流端部が接続された第1、第3独立排気通路31,33と、排気順序が連続しない複数の気筒(2Bおよび2C)の各排気ポート5に上流端部が接続された第2独立排気通路32と、これら各独立排気通路31,32,33の下流端部どうしが1つに集合した排気集合部34と、独立排気通路31,32,33内を通る排気ガスの流通面積を可変的に設定する排気絞り弁40とを備えたものが、排気マニホールド30として用いられる。ターボ過給機20は、排気集合部34の下流側に設けられたタービン22と、上流側吸気通路13に設けられ且つタービン22により駆動されるコンプレッサ23とを有しており、このターボ過給機20のインターセプト回転速度Niは、エンジンの定格回転速度Nxの1/3以上に設定されている。エンジンには、排気絞り弁40を含む各部を制御するECU50が備えられ、このECU50は、インターセプト回転速度Niよりも低速側に設定された所定の運転領域(図7の領域R3,R4)で、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御を実行するとともに、吸気弁6および排気弁7の双方が開くバルブオーバーラップ期間を拡大させる制御を実行する。このような構成によれば、エンジンの低速域から高速域までをカバーする幅広い運転領域でトルクを高めることができ、しかも燃費性能を向上させることができる。
すなわち、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niよりも回転速度の低い低速かつ高負荷の運転領域(第3領域R3および第4領域R4)で、排気絞り弁40を閉じることにより各独立排気通路31,32,33内の流通面積を縮小させる独立排気絞り制御が実行されるので、排気ガスのブローダウンを利用したいわゆる動圧過給効果により、ターボ過給機20の過給能力をより高めることができる。
図8は、ある特定の気筒のクランク角を横軸にとり、各気筒2A〜2Dから排出された排気ガスの圧力(排気集合部34での測定値)を縦軸にとったグラフである。このグラフにおいて、横軸のBDC,TDCは、それぞれ上記特定気筒の下死点および上死点を示しており、BDCからTDCまでの間隔はクランク角にして180°CAである。また、図示の特性線Aは、上記独立排気絞り制御を実行した場合の排気ガスの圧力を示しており、特性線Bは、上記独立排気絞り制御を実行しなかった場合の排気ガスの圧力を示している。
当実施形態のエンジンは4気筒エンジンであり、気筒2A〜2D間の点火間隔が180°CAであるため、これに合わせて、排気弁7を開いた直後に発生する排気ガスのブローダウン(高圧・高速の排気流れ)も180°CAごとに発生する。図8のグラフによれば、ブローダウンによる排気圧力のピーク値は、独立排気絞り制御を伴う特性線Aの方が、独立排気絞り制御を伴わない特性線Bよりも高くなっている。これは、独立排気絞り制御を実行することで、各独立排気通通路31,32,33内の可変流路39が遮断されて排気ガスの流通面積が縮小し、排気ガスが短期間に集中的に流れるようになったからである。
ここで、1回の排気行程当たりの有効な排気時間(ブローダウン期間)は、排気弁7の開弁直後に現れる排気圧力のピーク値(ブローダウンピーク)が高いほど、短くなる。一方で、動圧過給による効果は、ブローダウンピークに対して二次曲線的な特性を有することが知られている。そのため、特性線Aに示したように、独立排気絞り制御によってブローダウンピークを高めた場合には、ブローダウンピークが低い特性線Bの場合(独立排気絞り制御を実行しなかった場合)と比べて、ブローダウン期間の短縮による目減り分を差引いても、タービン22が排気ガスから受け取る平均的な駆動力(駆動力の時間平均値)が増大することになる。
また、独立排気絞り制御を伴う特性線Aのように、ブローダウン期間が短縮されると、ブローダウンピーク後に発生する排気圧力のボトム値がより低い値(吸気側の圧力である過給圧を大きく下回る値)まで低下する。したがって、独立排気絞り制御を実行した場合には、排気圧力のピーク値からボトム値までの落差(図8にΔHpとして示す)がより大きくなる。このことは、排気ガスがよりスムーズに排出されて気筒2A〜2D内の残留ガスが減少すること(掃気の促進)につながり、ひいてはエンジントルクの向上につながる。
加えて、上記実施形態では、独立排気絞り制御を実行する第3領域R3および第4領域R4での運転時に、図8にOLで示すバルブオーバーラップ期間が拡大され、排気上死点(排気行程と吸気行程との間の上死点;図8のTDC)の前後にかけた比較的長い期間に亘って吸気弁6および排気弁7の双方が開かれるので、いわゆるエゼクタ効果を効果的に発揮させて掃気をより促進することができる。エゼクタ効果とは、高速の噴流の周囲に発生する負圧を利用して被駆動流体を吸引する作用のことである。
すなわち、ある気筒が排気上死点(TDC)の近傍にあるとき(以下、この気筒のことを先行気筒という)、当該先行気筒の次に排気行程を迎える後続気筒からは、ブローダウンによって高速の排気ガスが噴出される(図2の矢印We0参照)。このブローダウンガスは、排気集合部34に流入したときにその周囲に強い負圧を発生させるが、この強い負圧は、排気マニホールド30を遡って上記先行気筒の排気ポート5に作用し、当該先行気筒から排気ガスを吸い出そうとする(エゼクタ効果)。しかもこのとき、先行気筒では、図9に示すように、バルブオーバーラップ期間(OL)が形成されており、吸気弁6および排気弁7の双方が開いているので、吸気ポート4から気筒内に吸入された空気がそのまま排気ポート5へと吹き抜けるような流れが生じ(図2の矢印Wi,We参照)、この吸入空気の吹き抜けによってより一層掃気が促進される。
また、エゼクタ効果によって上記のような吹き抜け流(吸気ポート4から排気ポート5へと吹き抜ける吸入空気の流れ)が生じると、その吹き抜け流が既燃ガス(混合気の燃焼により生成されたガス)に付加されることにより、各気筒2A〜2Dからの排気ガスの流量が増大する。タービン22の駆動力は、排気ガスの流量に比例するので、エゼクタ効果によって排気ガスの流量が増大すると、これに比例してタービン22の駆動力が増大し、ターボ過給機20の過給能力が向上する。
さらに、エゼクタ効果が存在すると、各気筒2A〜2Dから独立排気通路31,32,33のいずれかを通って排気集合部34に流入したブローダウンガスが他の独立排気通路に回り込む(逆流する)現象が防止されるので、動圧過給効果がより促進されるという利点もある。すなわち、ブローダウンガスの回り込みが生じると、排気マニホールド30の見かけ上の容積が増大したのと同じことになるので、ブローダウンによる排気圧力のピーク値(ブローダウンピーク)が低下し、タービン22の駆動力が減少してしまう。これに対し、上記実施形態のように、独立排気絞り制御を実行しつつバルブオーバーラップ期間を拡大することにより、エゼクタ効果を充分に発揮させるようにした場合には、先行気筒からの排気ガスの吸い出しが行われる結果、上記のようなブローダウンピークの低下が防止されるので、タービン22の駆動力を充分に得ることができ、動圧過給効果をより促進することができる。
ここで、上記実施形態では、ターボ過給機20のタービン22として比較的大型のタービンを用いることにより、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上となるように設定している。このため、排気ガス流量の少ない低速側の領域R3で、仮に、上記のような独立排気絞り制御(排気絞り弁40を閉じて流路39を遮断する制御)を実行しなかった場合には、タービン22を高速で回転させるための駆動力が充分に得られず、第1領域R1と第3領域R3との境界である図7のラインPのようなトルクしか得ることができない。これに対し、上記実施形態のように、独立排気絞り制御を実行しつつバルブオーバーラップ期間を拡大することにより、動圧過給効果およびエゼクタ効果を発揮させるようにした場合には、タービン22に作用する平均的な駆動力が増大するので、大型のタービン22であってもこれを充分に高速で回転させることができる。これにより、ターボ過給機20による低速域での過給能力を充分に高めることができるので、上記ラインPよりもトルクの高い上記領域R3を実現させることが可能となる。
上記のような過給能力の向上は、コンプレッサ23の性能曲線を用いて、次のような理論で説明することもできる。図10は、コンプレッサ23の性能曲線を模式化したグラフの上に、アクセル全開時におけるコンプレッサの運転ポイントの変化(特性線C)を重ねて示したものである。本図の特性線Cのうち相対的に低流量側に位置する右上がりの立上り部に示すように、コンプレッサ23の圧力比は、本来、ある程度流量が増大しないと(つまりエンジン回転速度が上昇しないと)高くならない。特に、上記実施形態のように、タービン22として比較的大型のものを用いた場合には、この傾向は顕著になる。
しかしながら、上記実施形態では、動圧過給効果およびエゼクタ効果によって掃気を促進し、吸気ポート4から排気ポート5へと吹き抜ける吸入空気の流れをつくり出しているので、この吸入空気の吹き抜け分(言い換えれば気筒外に捨てる分)を差し引くと、コンプレッサ23の運転ポイントは、より流量の低い図10の左側に移動することになる。例えば、特性線Cの立上り部に設定したポイントC1を始点にすると、このポイントC1は、上記吸入空気の吹き抜け分を差し引くことで、相対的に左側のポイントC2に移動する。このポイントC2への移動は、流量が少なくても大きい圧力比を稼げることを意味するから、あたかもタービン22およびコンプレッサ23を小型化したのと同じ効果を生む。しかも、ポイントC1からC2への移動分の流量、つまり吸気ポート4から排気ポート5へと吹き抜けさせた吸入空気の流量は、タービン22の駆動力を増大させるので、コンプレッサ23は無駄な仕事をしているわけではない。このように、動圧過給効果およびエゼクタ効果を利用した上記実施形態の構成によれば、大型のタービン22を用いているにもかかわらず、低速域でのコンプレッサ23の運転ポイントを図10の左側に移動させることができ、低速域での圧力比(過給圧)を効果的に向上させることができる。
以上のように、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niよりも回転速度の低い低速・高負荷運転領域(第3領域R3および第4領域R4)で、排気絞り弁40を閉じる独立排気絞り制御とバルブオーバーラップ期間の拡大制御とが合わせて実行されるため、動圧過給効果およびエゼクタ効果を発揮させてターボ過給機20の過給能力を充分に高めることができ、低速域でのエンジントルクを効果的に向上させることができる。
一方、インターセプト回転速度Niよりも高速側では、排気ガスの流量が多くなるので、上記のような独立排気絞り制御等を実行しなくても、タービン22には大きな駆動力を作用させることができ、ターボ過給機20の過給能力を充分に高めることができる。しかも、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niがエンジンの定格回転速度Nxの1/3以上に設定されている(つまりタービン22が大型である)ので、エンジンの高速域での過給能力が本来的に高く、過給圧のピーク値を充分に高い値に設定することができる。このことは、高速域での頭打ち感(加速の伸びが鈍ること)のない商品性に優れたエンジンが実現されることを意味する。
さらに、タービン22が大型であれば、排気ガス流量の多いエンジンの高速域において、排気ガスの流通抵抗がそもそも増大しにくい。その上で、上記実施形態では、インターセプト回転速度Niよりも高速側の高速・高負荷運転領域(第2領域R2)で、上記独立排気絞り制御の停止によって独立排気通路31,32,33内の流通面積が拡大されるので、ポンピングロスを大幅に低減させることができ、上記高速・高負荷運転領域での燃費性能を効果的に向上させることができる。
以上のように、上記実施形態のエンジンによれば、比較的大型のタービン22を用いてエンジン高速域でのトルクおよび燃費を改善しながら、エンジンの低速域においては独立排気絞り制御等を実行することにより、動圧過給効果およびエゼクタ効果よるトルクの向上を図ることができる。これにより、エンジンの低速域から高速域までをカバーする幅広い運転領域で高いトルクを発生させることができ、しかも燃費性能を向上させることができる。
また、上記実施形態では、排気順序が連続しない2つの気筒(2番気筒2Bおよび3番気筒2C)の排気ポート5に、上流側が二股状に分岐した第2独立排気通路32を接続し、他の気筒(1番気筒2Aまたは4番気筒2D)の排気ポート5に単管状の第1、第3独立排気通路31,33を接続することにより、4つの気筒2A〜2Dに対し3つの独立排気通路31,32,33を用意するとともに、これら各独立排気通路31,32,33の容積を互いに同一に設定した。このような独立排気通路31,32,33を含む排気マニホールド30のレイアウトによれば、上述した動圧過給効果およびエゼクタ効果が気筒間でばらつくのを効果的に防止でき、各気筒2A〜2Dでのトルクの向上代を均等に揃えることができる。
もちろん、独立排気通路の容積を揃えることは、上記のようなレイアウトでなくても実現可能である。例えば、各気筒2A〜2Dの排気ポート5にそれぞれ単管状の(合計4本の)独立排気通路を接続し、その容積を全て同一にすることも当然に考えられる。しかしながら、このようにした場合には、気筒列方向中央側の2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに接続される独立排気通路(その外側の気筒2A,2D用の独立排気通路よりも小容積になり易い)を不自然に迂回させる等のレイアウトが必要となる。このことは、排気抵抗の増大を招く上に、排気マニホールドのコンパクト化を阻害するので、好ましくない。
これに対し、上記実施形態に示したような排気マニホールド30のレイアウトを採用した場合(つまり2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに対し共用の独立排気通路32を設けた場合)には、上述したような問題が生じないので、排気マニホールド30を効果的にコンパクト化しつつ、各独立排気通路31,32,33の容積を容易に揃えることができる。
また、上記実施形態では、各独立排気通路31,32,33の下流部が、排気ガスの流れ方向に沿って延びる隔壁37によって常用流路38と可変流路39とに区分されており、排気絞り弁40は、上記2つの流路38,39のうちの一方(可変流路39)を開閉可能に遮断するように設けられている。このような構成によれば、隔壁37で区画された2つの流路38,39のうちの一方を排気絞り弁40によって遮断または開放するという簡単な構成で、独立排気通路31,32,33内の流通面積を変化させることができ、上記独立排気絞り制御の実行と停止とを迅速かつ確実に切り替えることができる。
また、上記実施形態では、最も低速かつ高負荷側の領域に設定された特定の運転領域、つまり図7に示した第4領域R4で、電気モータ27を作動させて電動過給機26による過給を行うようにしたため、ターボ過給機20の過給能力が発揮されにくい極低速域でのトルクを確実に高めることができる。
ところで、上記実施形態では、独立排気絞り制御等の実行によって低速域でのトルクが補強されるので、電動過給機26によるトルクの向上代はそれほど大きくなくてもよい。このため、電動過給機26として高性能の過給機を使用する必要がなく、電動過給機26の追加によるコストアップや重量の増加を最小限に抑えることができる。
なお、上記実施形態では、第1〜第3独立排気通路31,32,33とタービンハウジング21との間に別体の排気集合部34を設けたが、別体の排気集合部34を省略して、各独立排気通路31,32,33の下流端部をタービンハウジング21に直接接続するようにしてもよい。この場合は、タービンハウジング21の上流部(タービン22よりも上流側に位置する部分)が、排気集合部として機能することになる。
また、上記実施形態では、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに二股状に分岐した第2独立排気通路32を接続し、1番気筒2Aまたは4番気筒2Dに単管状の第1、第3独立排気通路31,33を接続したが、既に述べたとおり、全ての気筒2A〜2Dに対し、第1、第3独立排気通路31,33と同様の単管状の通路を接続してもよい。
また、上記実施形態では、吸気弁6および排気弁7用の各動弁機構に、バルブ開閉タイミングを変更するためのVVT16(バルブ可変機構)をそれぞれ設けたが、バルブオーバーラップ期間を運転条件に応じて変更できればよく、吸気弁6および排気弁7のいずれか一方の動弁機構にのみVVT16を設けてもよい。