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JP5942736B2 - ホログラム記録材料およびホログラム記録媒体 - Google Patents

ホログラム記録材料およびホログラム記録媒体 Download PDF

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JP5942736B2 JP2012209488A JP2012209488A JP5942736B2 JP 5942736 B2 JP5942736 B2 JP 5942736B2 JP 2012209488 A JP2012209488 A JP 2012209488A JP 2012209488 A JP2012209488 A JP 2012209488A JP 5942736 B2 JP5942736 B2 JP 5942736B2
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Description

本発明は、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料、及び前記ホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有するホログラム記録媒体に関する。
感光性樹脂を用いた体積型ホログラム記録材料が数多く提案され、それらの一部は実用化されている。感光性樹脂は一般にフォトポリマーと呼ばれ、フォトポリマーからなるホログラム記録材料は、従来のハロゲン化銀感光材料などと比較し、現像処理を必要としないことが大きな利点となっている。
ホログラム記録用の典型的なフォトポリマー材料は、例えば、光重合性モノマー(I)、高分子結合剤(II)、可塑剤(III)及び光重合開始剤(IV)からなる。層状に形成されたフォトポリマー材料からなるホログラム記録材料に、干渉パターンが重畳された記録光を照射することにより、該干渉パターンが記録材料中に屈折率差(屈折率変調度:Δn)として記録される。このときの記録材料における反応機構は以下のように考えられている。すなわち、露光により、干渉パターンの明部で光重合開始剤(IV)が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光重合性モノマー(I)が重合する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、暗部との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマー(I)の重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(I)(及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差が大きくなるように各成分を選んでおけば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調度(Δn)として記録される。
前記干渉パターンに、所定の被写体からの位相情報を含む反射光や、パソコンなどで作成し、空間光変調素子(SLM:Spatial Light Modulator)に出力された立体画像情報を重畳しておくことにより、立体画像情報が記録されたホログラムを得ることができる。さらに、2次元のデジタルデータを重畳することにより、大容量のデジタルデータを高速で記録再生することが可能なデータ記録媒体が提供される。その他、体積型ホログラム固有のブラッグ(Bragg)回折特性を利用した、各種のホログラフィック光学素子(HOE:Holographic Optical Element)が提案されている。屈折率変調度(Δn)は主として記録材料に固有の性能指標であり、Δnが高いほど、画像記録用ホログラムとして利用した場合のコントラストが向上するほか、データ記録媒体として利用した場合のデータ記録容量が増大するため望ましい。
特に、ホログラム記録材料を画像記録に用いる場合、屈折率変調度を高めることは重要である。これは、以下の理由による。
一般に、体積ホログラムの屈折率変調度と回折スペクトルとの関係は、Kogelnikの結合波理論(Coupled Wave Theory)によって与えられる[H.Kogelink,“Coupled wave theory for thick hologram gratings”,Bell Syst. Tech. J. , Vol. 48(9),pp.2909−2947,(1969)]。この理論によると、所定の記録条件(記録波長、干渉縞を形成する2つの平面波の入射角度、記録材料の厚み、記録材料の平均屈折率)のもとで、記録材料中に形成された屈折率格子の屈折率変調度と、回折効率及び回折スペクトルの半値全幅(FWHM)との関係を予測することができる。
画像記録に用いられる反射型ホログラムでは、回折効率(回折スペクトルのピーク値)は屈折率変調度(Δn)の上昇に伴って急速に100%に漸近する一方、半値全幅はΔnに対してほぼ線形的に増加する。すなわち、回折効率だけでなく半値全幅の拡大も図ろうとすると、より高いΔnが必要になる。
ホログラム記録材料に対して画像を記録した場合、該画像の明るさは、回折効率(反射率)のみならず、半値全幅にも大きく依存する。記録されたホログラム像は、一般に太陽光や白色LEDなどの白色光で照明され、これらの照明光のうち、前記回折スペクトルに応じた波長域の光が回折(反射)され、観察者に視認される。
さらに、ホログラム記録材料に対しては、画像記録を含む全ての用途において、該材料中に記録された干渉縞、すなわち屈折率格子の経時安定性も要求される。
ホログラム記録材料としては、高屈折率成分(又は低屈折率成分)としてラジカル重合活性を有するモノマーのみを用いる系、カチオン重合活性を有するモノマーのみを用いる系、アニオン重合活性を有するモノマーのみを用いる系が知られている。一般に、記録感度の高い記録材料を得ようとすると、カチオン重合やアニオン重合などのイオン重合よりも反応速度の速いラジカル重合が有利なため、公知のホログラム記録材料の多くは、高屈折率成分としてラジカル重合性モノマーを用いている。しかし、ラジカル重合における重合活性種(ラジカル)の寿命は数ナノ〜数ミリ秒程度と極めて短いため、主たるモノマー拡散は記録露光下でしか起こらない。そのため、高い屈折率変調度を得ることができない。
具体的なフォトポリマー材料として、例えば、特許第2873126号公報(特許文献1)には、常温で液状であるカチオン重合性化合物(a)、ラジカル重合性化合物(b)、特定波長のレーザー光またはコヒーレンス性の優れた光に感光して成分(b)を重合させる光ラジカル重合開始剤系(c)、及び、該特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光して成分(a)を重合させる光カチオン重合開始剤系の各成分を含む体積ホログラム記録用感光性組成物が開示されている。
同公報における成分(a)の平均屈折率は成分(b)の平均屈折率より低い。すなわち、成分(a)は前記可塑剤(III)に相当する。室温で液状の可塑剤にカチオン重合性を付与することにより、記録時には光重合性モノマー(I)の拡散を促す可塑剤として作用させる一方、記録後に例えば紫外光でカチオン重合させることにより硬化できる。このため、紫外光照射(ポストキュアと呼ぶ)後の記録膜に液状成分が残ることがなく、記録信号の安定性が高い。
また、特開2001−282082号公報(特許文献2)には、アリル系プレポリマー(A)とラジカル重合性化合物(B)と粘度低下剤(C)と光重合開始剤(D)とを含むホログラム記録材料組成物が開示されている。粘度低下剤(C)は、アリル系プレポリマー(A)及び/又はラジカル重合性化合物(B)とは非反応性の化合物(C1)であるか、又は分子内に(メタ)アリル基を有する化合物(C2)であることが開示されている(段落[0083])。同公報では、粘度低下剤(C)が前記可塑剤(III)に相当する。粘度低下剤(C)のうち、分子内に(メタ)アリル基を有する化合物(C2)は前記ラジカル重合性化合物(B)と同じラジカル重合活性を有する。しかし、その重合活性は前記成分(B)より低いため、記録時には成分(B)が優先的に反応する。このとき、前記成分(C2)は成分(B)の拡散を促す作用を有する。その後、前記成分(B)の重合に続いて前記成分(C)の重合が起こる。このため、露光後の記録膜には前記成分(C1)以外の液状成分が残らず、上記特許文献1の場合と同様に記録信号の安定性に優れるとしている。
さらに、特許第3370762号公報(特許文献3)には、前記可塑剤(III)を含まなくてもよい組成として、特定の高分子結合剤、エチレン不飽和モノマー、及び光重合開始剤からなるホログラム記録材料が開示されている。該公報に開示されている材料では、ホログラムの記録後に100〜150℃で0.5〜2時間の加熱処理を施すことにより屈折率変調度が向上するとしている(段落[0045])。その理由は明らかではないが、記録時に干渉縞明部に拡散しなかったエチレン不飽和モノマーの一部が、加熱条件下で何らかの化学ポテンシャル差を駆動力として、記録時に前記エチレン不飽和モノマーが局在化した領域へ優先的に拡散すると考えられる。
特許第2873126号公報 特開2001−282082号公報 特許第3370762号公報
上記特許文献1および2で開示されている材料は、いずれも上述した典型的なフォトポリマー材料の記録原理に基づいてホログラムが記録される。すなわち、記録露光時の干渉縞明部におけるモノマー濃度の低下と、それに伴って生じる濃度勾配を駆動力とするモノマー拡散によって屈折率変調が生じる。従って、記録露光時以外はほとんどモノマー拡散が起きないため、高い屈折率変調度を得ることが難しい。
特に、上記特許文献2で開示されている材料では、前記可塑剤(III)に相当する前記粘度低下剤(C)の一部が、前記ラジカル重合性化合物(B)と同じラジカル重合活性を有するため、記録時に前記粘度低下剤(C2)の一部も反応し、前記成分(B)の重合に追随する形で干渉縞明部に取り込まれることになる。すなわち、本来干渉縞暗部に局在化すべき前記成分(C2)の一部が干渉縞明部にも存在するようになるため、高い屈折率変調度を得ることは困難である。
一方、上記特許文献3で開示されている材料は、記録後に加熱処理を施すことにより、屈折率変調度の向上が図られる。これは、記録露光後であっても、所定の条件のもとではモノマー拡散が起こりうることを示唆している。しかしながら、前記加熱処理温度は最高で150℃程度と過酷であり、加熱処理時間も最大2時間程度と長い。このため、記録材料が形成される支持基材の材質が制限されるうえ、処理工程も煩雑であるという問題を抱えている。
本発明の目的は、高い屈折率変調度、すなわち高い回折効率と回折スペクトルの大きな半値全幅が達成され、且つ、記録信号の経時安定性にも優れるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討し、屈折率格子の形成に寄与する重合性モノマーとして、ラジカル重合活性を有するモノマーと、カチオン重合活性を有するモノマーとを併用することにより、著しく屈折率変調度が高められたホログラム記録材料が得られることを見いだした。
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1)(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性である重合性モノマー(B)、及び光重合開始剤系(C)を含み、重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)がともに、芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有するホログラム記録材料。
(2)前記重合性モノマー(A)の少なくとも一部と、前記重合性モノマー(B)の少なくとも一部とが、ともに9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するものである、上記(1)に記載のホログラム記録材料。
(3)前記重合性モノマー(A)と前記重合性モノマー(B)の総和に対する、前記重合性モノマー(A)の質量比が、10質量%以上90質量%以下である、上記(1)または(2)に記載のホログラム記録材料。
(4)前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のいずれの平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有し、且つ室温で液状である可塑剤(D)をさらに含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のホログラム記録材料。
(5)前記可塑剤(D)の少なくとも一部が、カチオン反応性可塑剤(Dc)である、上記(4)に記載のホログラム記録材料。
(6)前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のいずれの平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有する高分子結合剤(E)をさらに含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のホログラム記録材料。
(7)前記開始剤系(C)が、可視光の照射により前記重合性モノマー(A)を重合させる光ラジカル開始剤系である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のホログラム記録材料。
(8)前記開始剤系(C)がさらに、光照射によりブレンステッド酸又はルイス酸を発生するものである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のホログラム記録材料。
(9)加熱によりブレンステッド酸またはルイス酸を発生する熱カチオン開始剤(F)をさらに含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のホログラム記録材料。
(10)基材と、前記基材上に形成された上記(1)〜(9)のいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有するホログラム記録媒体。
本発明のホログラム記録材料は、屈折率格子の形成に寄与する重合性モノマーとして、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)と、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性である重合性モノマー(B)とを含み、前記重合性モノマー(A)と前記重合性モノマー(B)とが、ともに芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有する。従来知られているように、(メタ)アクリロイル基はラジカル重合活性を有し、カチオン重合に対しては実質的に不活性である。また、脂環エポキシ基はカチオン重合活性を有し、ラジカル重合に対しては実質的に不活性である。すなわち、異なる反応機構によって重合する2種類の重合性モノマーを用いるので、記録露光時には、当該記録光に対する重合活性を有する一方のモノマー(例えば前記重合性モノマー(A))のみが拡散し、重合する。他方のモノマー(例えば前記重合性モノマー(B))の少なくとも一部は、記録時に重合する重合性モノマー(A)に同伴される形で記録露光と同時に拡散するとみられるが、大半は記録後に徐々に(光を照射しなくても)拡散する。この暗所拡散の駆動力となるものは、前記重合性モノマー(A)の濃度分布である。前記重合性モノマー(A)および重合性モノマー(B)はともに芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有するため、化合物の極性、より定量的には溶解性パラメータ(SP値)が相対的に近く、前記重合性モノマー(B)は前記重合性モノマー(A)との親和性が高くなる。また、芳香環上のπ電子同士の相互作用によるπ−πスタッキングなども生じやすい。これらの要因により、前記重合性モノマー(B)は暗所において、重合性モノマー(A)が局在化した領域へ徐々に拡散する。その結果、記録露光時に形成された、重合性モノマー(A)に由来する屈折率変調度が増幅され、高い屈折率変調度が達成される。
このようにして、本発明によれば、高い屈折率変調度、すなわち高い回折効率と回折スペクトルの大きな半値全幅が得られるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体が提供される。さらに、本発明のホログラム記録媒体は記録信号の経時安定性にも優れる。ホログラム記録媒体は各種データの記録用のみならず、画像記録用として好適である。
実施例で用いられたホログラム記録光学系の概略を示す平面図である。
本発明のホログラム記録材料は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)と、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性である重合性モノマー(B)と、光重合開始剤系(C)とを含む組成物である。本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成された前記本発明のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している。本明細書において、ホログラム記録層をホログラム記録材料層、又は単に記録材料層ということもある。
前記重合性モノマー(A)と前記重合性モノマー(B)はともに、芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有する化合物である。分子中にこれらの部位を導入することにより屈折率が高くなる。以下では、これらの部位を高屈折率部位と呼ぶことにする。なお、本発明における前記芳香環は、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいても差し支えない。
さらに、前記重合性モノマー(A)は、ラジカル重合活性を有し、且つカチオン重合に対して実質的に不活性であるという要件を満足するため、分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリレートとは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を総称する意味である。また、前記重合性モノマー(B)は、カチオン重合活性を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性であるという要件を満足するため、分子中に少なくとも1つの脂環エポキシ基を有することが好ましい。ここで、脂環エポキシ基とは、3,4−エポキシシクロヘキシル基を意味する。
例えば、メルカプト基はラジカル重合活性とカチオン重合活性をともに有するため、ラジカル重合活性を有し、且つカチオン重合に対して実質的に不活性であるという、前記重合性モノマー(A)に対する要件を満足しない。同様に、カチオン重合活性を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性であるという、前記重合性モノマー(B)に対する要件を満足しない。従って、メルカプト基を有する化合物を本発明の前記重合性モノマー(A)又は前記重合性モノマー(B)に用いることはできない。ビニルオキシ基やアミノ基を有する化合物についても、メルカプト基を有する化合物と同じ理由で、本発明の前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)として用いることはできない。ただし、ここでいう重合活性には、連鎖移動反応やマイケル付加反応などに対する活性を有する場合も含む。
また、1,2−エポキシエチル基やオキセタニル基(1,3−エポキシプロパン−2−イル基)は、カチオン重合活性を有し、ラジカル重合に対して実質的に不活性であるという要件を満足するが、これら単独のカチオン重合活性は脂環エポキシ基に比べて低い。そのため、1,2−エポキシエチル基やオキセタニル基のみを含む化合物を、それら単独で本発明の前記重合性モノマー(B)として用いることはできない。但し、これらの官能基は、脂環エポキシ基を有する化合物が共存する系では十分高いカチオン重合活性を示す。従って、少なくとも1つの脂環エポキシ基を有していれば、前記重合性モノマー(B)がさらに1,2−エポキシエチル基やオキセタニル基を有していても差し支えない。また、前記重合性モノマー(B)として、脂環エポキシ基を有する化合物が所定量含まれていれば、1,2−エポキシエチル基及び/又はオキセタニル基のみを有する化合物を前記重合性モノマー(B)として併用しても差し支えない。以下では、前記重合性モノマー(B)のうち、脂環エポキシ基を有する化合物を重合性モノマー(B)、1,2−エポキシエチル基及び/又はオキセタニル基を有し、脂環エポキシ基を有しない化合物を重合性モノマー(B)と呼び区別する。
前記重合性モノマー(A)としては、分子中に前記高屈折率部位を有する単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選択するとよい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
前記重合性モノマー(A)の具体例としては、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラブロモプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(ECH)変性フェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p−クミルフェノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,4−ジヒドロキシナフタレン(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(6−ヒドロキシナフチル)フルオレンジ(メタ)アクリレート、及びこれらのEO変性、プロピレンオキシド(PO)変性又はECH変性化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが特に好ましい。
重合性モノマー(A)として、上記の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、重合性モノマー(A)とは別に、前記高屈折率部位を有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを併用してもよい。本発明において、前記重合性モノマー(A)を高屈折率とするために、上記重合性モノマー(A)の平均屈折率は、例えば1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましい。本発明において、前記平均屈折率は、重合性モノマー(A)として用いた複数の化合物のn20/D(Na D線での20℃における屈折率)の加重平均と定義する。
前記重合性モノマー(B1)としては、分子中に少なくとも前記高屈折率部位を有する、単官能又は多官能の脂環エポキシ基を含有するモノマーから選択するとよい。また、脂環エポキシ基含有モノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
前記重合性モノマー(B1)の具体例としては、1,4−ビス[(3,4−エポキシシクロヘキシル)メトキシメチル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3,4−エポキシシクロヘキシル)メトキシメチル]−1,1’−ビフェニル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジフェニルホスフィンオキシド、10−[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、及びこれらのEO変性、PO変性又はECH変性化合物等が挙げられる。また、特開2009−179568号公報に開示されている、芳香族骨格含有脂環式エポキシ化合物も好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有する3,4−エポキシシクロヘキシル基含有モノマーが特に好ましい。重合性モノマー(B1)として、上記の脂環エポキシ基を有するモノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記重合性モノマー(B)が所定量用いられていれば、前記重合性モノマー(B)を併用することができる。
前記重合性モノマー(B)のうち、1,2−エポキシエチル基(グリシジル基もその範囲に含まれる)を有する化合物の具体例としては、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、o−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、4,4’ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(グリシジルオキシ)−1,1’−ビフェニル、ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ビスフェノール ジグリシジルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノールジグリシジルエーテル、4,4’−オキシビスフェノール ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールA ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールF ジグリシジルエーテル、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(グリシジルオキシ)ナフチル]フルオレン、及びこれらのEO変性、PO変性又はECH変性化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有する1,2−エポキシエチル基含有モノマーが特に好ましい。
前記重合性モノマー(B)のうち、オキセタニル基を有する化合物の具体例としては、1,4−ビス{[3−(エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、4,4’−ビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−1,1’−ビフェニル、ビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ナフタレン、ビスフェノールAビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、ビスフェノールFビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ビスフェノールビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、テトラブロモビスフェノールAビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、テトラブロモビスフェノールFビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)テトラブロモビスフェノールビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール ビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、4,4’−オキシビスフェノールビス[3−(エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、9,9−ビス{4−[3−(エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]フェニル}フルオレン、及びこれらのEO変性、PO変性又はECH変性化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するオキセタニル基含有モノマーが特に好ましい。
さらに、前記重合性モノマー(B1)及び前記重合性モノマー(B)とは別に、前記高屈折率部位を有しない、カチオン重合性モノマーを併用してもよい(これは実質的に、後述するカチオン反応性可塑剤(Dc)とみなされる)。本発明において、前記重合性モノマー(B)(重合性モノマー(B)及び重合性モノマー(B))を高屈折率とするために、上記重合性モノマー(B)の平均屈折率は、例えば1.50以上であることが好ましく、1.55以上であることがより好ましい。
前記重合性モノマー(A)と前記重合性モノマー(B)は、両者の総和に占める重合性モノマー(A)の質量比が、10質量%以上90質量%以下となるように用いることが好ましく、20質量%以上80質量%以下となるように用いることがより好ましい。重合性モノマー(A)の比率が10質量%未満になると、重合性モノマー(B)の暗所拡散が生じにくくなる。一方、重合性モノマー(A)の比率が90質量%を超えると、重合性モノマー(B)の暗所拡散は起きるが、重合性モノマー(B)を加えたことによる屈折率変調度の向上効果が十分に得られない。
また、前記重合性モノマー(B)として、重合性モノマー(B)のほかに重合性モノマー(B)を併用する場合、前記重合性モノマー(B)全体に占める重合性モノマー(B)の質量比が、80質量%以下となるように用いることが好ましく、70質量%以下となるように用いることがより好ましい。重合性モノマー(B)の比率が80質量%を超えると、重合性モノマー(B)全体の重合が十分進行せず、記録信号の経時安定性が低下する。
なお、前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のほかに、架橋性モノマーを少量添加しても差し支えない。ここで、架橋性モノマーとは、重合性モノマー(A)と重合性モノマー(B)の双方と反応し、両者の架橋を促すモノマーを指す。具体的には、架橋性モノマーは、ラジカル重合活性を有し、且つカチオン重合に対して実質的に不活性である反応性基と、カチオン重合活性を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性である反応性基の双方を有するモノマーである。
該架橋性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。架橋性モノマーを併用することにより、重合性モノマー(A)と重合性モノマー(B)とが架橋し、より強固なネットワークが形成されるため好ましい。架橋性モノマーを併用する場合、その添加量は、前記重合性モノマー(A)、前記重合性モノマー(B)及び架橋性モノマーの総和に対し、1質量%以上10重量%以下とすることが好ましい。架橋性モノマーは、前記高屈折率部位を有していなくてもよい。
光重合開始剤系(C)としては、光照射により少なくとも前記重合性モノマー(A)又は重合性モノマー(B)のいずれかを重合させるもの、すなわち、少なくとも光照射によってラジカル又はカチオンのいずれかを発生するものを用いる。なお、前記光重合開始剤系(C)は、ホログラム記録に用いる波長の光を照射したときに、ラジカル又はカチオンの少なくともいずれかを発生するものでなければならない。該波長が400〜700nm程度の可視光領域である場合、1種の化合物のみでラジカル又はカチオンを発生させることは難しく、一般に、ラジカル/カチオン発生剤(C−1)と増感色素(C−2)とを組み合わせて用いる。所定波長の光の照射によって増感色素(C−2)が励起され、励起増感色素(C−2)からラジカル/カチオン発生剤(C−1)への電子移動又はエネルギー移動、若しくはラジカル/カチオン発生剤(C−1)から励起増感色素(C−2)への電子移動又はエネルギー移動が起こり、その結果、ラジカル/カチオン発生剤(C−1)がラジカル又はカチオンを発生する。本発明では、ラジカル/カチオン発生剤(C−1)と増感色素(C−2)との組み合わせを前記光重合開始剤系(C)と称する。ラジカル/カチオン発生剤(C−1)と増感色素(C−2)とがそれぞれ2種以上の化合物を併用するものであってもよい。例えば、ラジカル発生剤(C−1r)、カチオン発生剤(C−1c)、及び増感色素(C−2)とを組み合わせた光重合開始剤系(C)がある。
ラジカル発生剤(C−1r)として、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のカルボニル化合物;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド化合物;トリブチルベンジル錫等の有機錫化合物;
テトラブチルアンモニウム トリフェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウム トリス(tert−ブチルフェニル)ブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリナフチルブチルボレート等のアルキルアリールホウ酸塩;
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート等のジアリールヨードニウム塩類;
η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロホスフェート(1−)等の鉄アレーン錯体;トリス(トリクロロメチル)トリアジン等のトリアジン化合物;3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール等のビスイミダゾール誘導体;
等が挙げられる。
また、ラジカル発生剤(C−1r)として用いることができる市販のものとして、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア184、イルガキュア907(いずれも独BASF社製)、BT−2(チッソ(株)製)等を用いてもよい。
カチオン発生剤(C−1c)として、例えば、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩類;トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩類;のほか、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
一方、前記増感色素(C−2)としては、例えば、チオキサンテン系色素、メロシアニン類、クマリン類、ケトクマリン類、ポルフィリン類、シアニン類、メロシアニン類、チオピリリウム塩類、スクアリリウム類、チアジン類、アクリジン類等が挙げられる。用いるラジカル/カチオン発生剤(C−1)の種類及びホログラム記録に用いる光の波長によって、好適に用いられる増感色素は異なるため、適宜選択すればよい。増感色素(C−2)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル/カチオン発生剤(C−1)と前記増感色素(C−2)との質量比は、一般的に前記ラジカル/カチオン発生剤(C−1)の100重量部に対し、前記増感色素(C−2)が1〜100重量部となるように用いることが好ましい。前記ラジカル/カチオン発生剤(C−1)が、ラジカル発生剤(C−1r)とカチオン発生剤(C−1c)との混合物である場合、ラジカル発生剤(C−1r)又はカチオン発生剤(C−1c)のいずれか100重量部に対し、前記増感色素(C−2)が1〜100重量部となるように用いることが好ましい。
本発明のホログラム記録材料は、例えばコヒーレンス性を有する可視光の干渉露光によってホログラムを記録し、それに続いて、コヒーレンス性を有さず、且つホログラム記録に用いた光とは波長の異なる光を記録媒体全面に照射することにより該ホログラムが安定に定着される(光ポストキュアと呼ぶ)。光ポストキュアには、例えば紫外光を用いる。本発明のホログラム記録材料は、記録露光時に前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のいずれか一方が重合・拡散し、記録後に他方のモノマーが拡散することで屈折率変調度(Δn)の拡大が図られる。従って、前記光重合開始剤系(C)は、ホログラム記録に用いる光の波長によってラジカル又はカチオンの一方のみを発生し、光ポストキュア時に他方の化学種を生じるものであることがより好ましい。
これは、増感色素(C−2)を適切に選択することによって達成される。すなわち、前記光重合開始剤系(C)を、ラジカル発生剤(C−1r)とカチオン発生剤(C−1c)と増感色素(C−2)とを組み合わせた系とし、前記増感色素(C−2)は、ホログラム記録時に前記ラジカル発生剤(C−1r)及び前記カチオン発生剤(C−1c)のいずれかを選択的に分光増感するものを選べばよい。
一般に、ラジカル重合の反応速度はカチオン重合の反応速度に比べて速いため、記録感度に優れるホログラム記録材料を達成するためには、ホログラム記録に用いる光の波長においてラジカルを発生し、光ポストキュア時にカチオンを発生する開始剤系とすることが望ましい。従って、前記光重合開始剤系(C)は、ラジカル発生剤(C−1r)とカチオン発生剤(C−1c)と、ホログラム記録に用いる光の照射によって前記ラジカル発生剤(C−1r)を分光増感する増感色素(C−2)とを組み合わせた系とすることがより好ましい。
このとき、該ホログラム記録材料がさらに、加熱によってカチオン、すなわちブレンステッド酸又はルイス酸を発生する熱カチオン開始剤(F)を含んでいてもよい。このような態様とすることにより、ホログラム記録後の加熱処理(熱ポストキュアと呼ぶ)によって前記重合性モノマー(B)の重合を促進することができる。熱ポストキュアは、前記光ポストキュアの前に行ってもよいし、光ポストキュアの後に行ってもよい。適切な熱カチオン開始剤(F)を選ぶことにより、80〜120℃で10〜60分程度加熱する比較的穏やかな条件で、前記重合性モノマー(B)を重合することができる。ホログラム記録材料が熱カチオン開始剤(F)を含む場合、カチオン発生剤(C−1c)は含まれていなくてもよい。
熱カチオン開始剤(F)としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩類、1−(2−ブテニル)テトラヒドロチオフェニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(3−メチル−2−ブテニル)テトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアルキルスルホニウム塩類等が挙げられる。これらのうち、トリアリールスルホニウム塩類は、カチオン発生剤(C−1c)としての機能を兼ねる。
本発明において、さらに、室温(25℃)で液状である可塑剤(D)を用いることができる。可塑剤(D)は、記録材料中で前記重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)と相補的な濃度分布を形成し、屈折率変調度Δnの向上に寄与する。従って、可塑剤(D)は、前記重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)よりも低屈折率であることが好ましい。好ましい実施態様において、可塑剤(D)は、前記重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)全体の平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有する。より好ましくは、0.05以上低い屈折率を有する。
前記可塑剤(D)の具体例としては、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジドデシル、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)、グルタル酸ジドデシル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジデシル、スベリン酸ジドデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フマル酸ビス(2−エチルヘキシル)、シトラコン酸ジドデシル、メサコン酸ジドデシル等の二塩基酸エステル類;ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)等のポリエーテルグリコール類およびそのアルキルエーテル類;ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ヘキサエチルジシロキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等のオルガノシロキサン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、前記可塑剤(D)として、室温で液状であって、且つカチオン反応性基を有するカチオン反応性可塑剤(Dc)を用いてもよい。カチオン反応性基を有する化合物を用いることにより、前記ポストキュア時に重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)のみならず、可塑剤(D)も反応して非流動化し、記録されたホログラムの経時安定性が向上するため好ましい。可塑剤がカチオン反応性基を有する場合、該カチオン反応性基は、前記重合性モノマー(B)と同じ反応性基、すなわち脂環エポキシ基であってもよいし、それ以外のカチオン反応性基であってもよく、連鎖重合に寄与しないカチオン反応性基であってもよい。ここで、連鎖重合に寄与しないカチオン反応性基とは、例えば連鎖移動剤である。このようなカチオン反応性基として、具体的にはヒドロキシ基が挙げられる。カチオン反応性可塑剤(Dc)は、前記可塑剤(D)と同様、前記重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)全体の平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有することが好ましい。さらに、0.05以上低い屈折率を有することがより好ましい。
カチオン反応性可塑剤(Dc)として、具体的には、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジグリシジル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の、1,2−エポキシエチル基を有するカチオン反応性可塑剤;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)スベレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)セバケート、ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン等の、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物;3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリ(エチレングリコール)ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリ(プロピレングリコール)ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の、オキセタニル基を有する化合物;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリ(カプロラクトン)ジオール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、1,3−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の、ヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
非反応性の可塑剤(D)と、カチオン反応性可塑剤(Dc)とを任意の割合で併用しても差し支えない。
本発明のホログラム記録材料は、さらに高分子結合剤(E)を含んでいることが好ましい。高分子結合剤(E)は、ホログラム記録材料において、その流動性を抑えることにより所定の記録膜厚を保持し、ホログラム記録媒体の未記録時における取扱い性を向上させる効果を有する。
高分子結合剤(E)としては、前記重合性モノマー(A)、前記重合性モノマー(B)、前記光重合開始剤系(C)及び前記可塑剤(D)のいずれとも相溶性がよく、有機溶剤に可溶なポリマーを用いる。ここでのポリマーとは、オリゴマー(低重合度で分子量の低い高分子)をも含む概念である。
前記高分子結合剤(E)としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、又は該モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、ジオールとジカルボン酸との縮合重合体、ヒドロキシカルボン酸の重合体、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のエステル、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等、種々のものが挙げられる。高分子結合剤(E)として1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記高分子結合剤(E)の屈折率は、前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)全体の平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有するものであることが好ましい。さらに、0.05以上低い屈折率を有するものであることがより好ましい。
本発明のホログラム記録材料における各成分の配合重量の好ましい範囲については、
前記重合性モノマー(A) 10〜40重量部、
前記重合性モノマー(B) 10〜40重量部、
前記光重合開始剤系(C) 0.1〜10重量部、
前記可塑剤(D) 5〜50重量部、
前記高分子結合剤(E) 5〜50重量部、
とすることが好ましく、
前記重合性モノマー(A) 10〜30重量部、
前記重合性モノマー(B) 10〜30重量部、
前記光重合開始剤系(C) 0.5〜5重量部、
前記可塑剤(D) 10〜40重量部、
前記高分子結合剤(E) 10〜40重量部、
とすることがより好ましい。
ただし、高分子結合剤(E)を用いない場合には、
前記重合性モノマー(A) 10〜40重量部、
前記重合性モノマー(B) 10〜40重量部、
前記光重合開始剤系(C) 0.1〜10重量部、
前記可塑剤(D) 20〜80重量部
とすることが好ましく、
前記重合性モノマー(A) 10〜30重量部、
前記重合性モノマー(B) 10〜30重量部、
前記光重合開始剤系(C) 0.5〜5重量部、
前記可塑剤(D) 35〜60重量部、
とすることがより好ましい。
また、上記の各成分以外に、界面活性剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、ラジカル重合反応及び/又はカチオン重合反応を促進するための助触媒、紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。
本発明のホログラム記録材料は、各成分を混合して、均一な組成物として製造することができる。混合方法は、公知の各種方法によればよい。混合の際には、各成分の均一化を促し、塗布に適した粘度とするための希釈溶媒を加えることが好ましい。希釈溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の、沸点が50℃以上200℃以下の各種有機溶剤又はその混合物を用いることができる。
得られたホログラム記録材料組成物溶液を、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)、ポリイミド等の樹脂製透明基材上に塗布し、前記希釈溶媒を乾燥して、フィルム状のホログラム記録材料層が得られる。このようにして、前記の各成分が均一に分散または溶解されたホログラム記録材料層が作製される。
本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成されたホログラム記録材料層とを有している。ホログラム記録材料層の上に、さらに基材を被覆して3層構成とすることもできる。また、ホログラム記録材料層の厚さは、特に限定されるものではなく、本記録媒体が用いられる記録装置の要求仕様等から適宜決定すればよく、例えば5〜500μm程度とするとよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[合成例1]
(CyEp−1の合成)
重合性モノマー(B)として、下記式(1)で表される化合物(CyEp−1)を以下の手順で合成した。
Figure 0005942736

p−トルエンスルホン酸一水和物63mgを40mLのトルエンに加え、ディーンスターク装置で30分間還流した。次に、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸5.0g(40mmol)と9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン7.2g(17mmol)を加えて8時間加熱し、脱水エステル化した。次いで、50mLの5%冷NaOH水溶液で有機層を2回抽出した。分離後の水層に氷を加え、30mLの酢酸エチルで2回抽出した。この酢酸エチル層に先の有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を留去し、粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムによって精製し、下記式(2)のシクロヘキセン環含有フルオレンを得た(収量:10.6g、収率98%)。
Figure 0005942736

上記で合成したシクロヘキセン環含有フルオレン5.0g(7.6mmol)を、50mLの塩化メチレンに溶解し、氷冷した。次に、50mLの塩化メチレンに溶解した3.5g(15.2mmol)のm−クロロ過安息香酸(純度75%)を滴下した。氷冷したまま1時間撹拌し、さらに室温で4時間撹拌した。次いで50mLの5%冷NaOH水溶液で洗浄し、続いて過剰のm−クロロ過安息香酸を分解するため、50mLの5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。洗浄後の塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去してオイル状の粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムによって精製し、式(1)の化合物CyEp−1を得た(収量:4.3g、収率:82%)。化合物CyEp−1の構造は、元素分析及びH−NMRにより同定した。
[合成例2]
(CyEp−2の合成)
重合性モノマー(B1)として、下記式(3)で表される化合物(CyEp−2)を、合成例1と同様の手順で合成した。
Figure 0005942736
[実施例1]
(ホログラム記録媒体サンプルの作製)
以下の手順に従って、表1に示す配合組成の記録材料組成物溶液を調製した。
重合性モノマー(A)として9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業(株)製NKエステルA−BPEF、n20/D=1.62)2.0g、及び重合性モノマー(B)として、合成例1で得られたモノマーCyEp−1を2.0g、可塑剤(D)としてセバシン酸ジエチル(東京化成工業(株)製、n20/D=1.44)0.5g、カチオン反応性可塑剤(Dc)としてネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(シグマ・アルドリッチ社製、n20/D=1.46)1.0g、及び高分子結合剤(E)として酢酸ビニルポリマー(シグマ・アルドリッチ社製、重量平均分子量Mw=100,000、n20/D=1.47)2.0gを混合し、次いで光ラジカル発生剤(C−1r)として3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンほか位置異性体混合物(チッソ(株)製BT−2、40%アニソール溶液)0.25g、光カチオン発生剤(C−1c)として、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(三新化学工業(株)製サンエイドSI−100L)0.1g、及び20mgの増感色素(C−2)(Dye−1: 3−ブチル−2−[3−(3−ブチル−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−2(3H)−イリデン)プロパ−1−エン−1−イル]−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−1−イウム=ヘキサフルオロ−λ5−ホスファヌイド)を溶解させた10.37gのアセトン溶液(アセトンとして10.0g)を添加し、撹拌して溶解させた。なお、前記増感色素は、光ラジカル発生剤(C−1r)を分光増感する作用を有する。このようにして記録材料組成物を得た。
得られた記録材料組成物溶液を、バーコーターを用いて100μm厚のPETフィルム上に塗布し、室温で1晩減圧乾燥させた。乾燥後の記録材料層の膜厚は約20μmであった。これを、1.0mm厚のスライドガラスに、記録材料層がガラス面に密着するように貼り付け、ホログラム記録媒体サンプルとした。
(特性評価)
実施例1のホログラム記録媒体サンプルについて、図1に示すようなホログラム記録光学系を用いて、特性評価を行った。図1の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
図1において、ホログラム記録媒体サンプル(1)は、記録材料層が水平方向と垂直になるようにセットされている。
図1のホログラム記録光学系において、記録用の光源(11)としてNd:YAGレーザ(波長532nm)を用い、この光源(11)から発振した光を、電磁シャッター(12)、凸レンズ(13)、ピンホール(14)、及び凸レンズ(15)によって空間的にフィルタ処理及びコリメートし、ミラー(16)及び1/2波長板(17)を介してビームスプリッタ(18)で2つの光束に分割し、分割された各光束それぞれが、ミラー(19、20)及びアパーチャ(21、22)を介して、ホログラム記録媒体サンプル(1)の記録材料層に対して垂直に入射するように調整した。
この光学系を用いて、ホログラム記録媒体サンプル(1)に対して反射型ホログラムを記録した。記録条件は、光強度30mW/cmで露光時間0.5〜2秒(露光エネルギー:15〜60mJ/cm)とした。その後、記録媒体サンプル(1)の全面に、50mW/cmのUV光を60秒間照射した(露光エネルギー:3000mJ/cm)。UV光の照射(光ポストキュア)により、カチオン発生剤(C−1c)を反応させ、前記重合性モノマー(B)の重合を進行させるとともに、増感色素に由来する着色を完全に消失させた。
次いで、ポストキュア後の記録媒体サンプルを、分光光度計(日本分光(株)製V−660)にセットし、透過スペクトルを測定した。測定された透過スペクトルから、反射型ホログラムの初期における回折効率および回折波長を求めた。さらに反射型ホログラムの半値全幅(FWHM)を求めた。
回折効率ηは、分光光度計により求めた回折波長およびその回折波長における透過率T(%)、及びベースライン透過率T(%)から、以下の式により算出した。結果を表3に示す。
回折効率η(%)=[(T−T)/T]×100
実施例1のホログラム記録媒体サンプルの回折効率は96%、回折波長531nmにおける半値全幅は28nmであり、良好であった。
次いで、このホログラム記録媒体サンプルを80℃の熱風循環オーブンに投入し、100時間加熱した。その後、上記と同様に、反射型ホログラムの加熱後における回折効率、回折波長および半値全幅(FWHM)を測定した。結果をあわせて表3に示す。
また、以下の方法で露光後の記録膜のガラス転移温度(T)を測定した。反射型ホログラムを記録したものとは別のホログラム記録媒体サンプルの全面に、50mW/cmのUV光を60秒間照射(積算光量:3000mJ/cm)し、さらに80℃で2時間加熱して記録膜全体を硬化させた。次いで、硬化後のホログラム記録媒体サンプルをスライドガラスから剥離した。露出したホログラム記録材料層をPETフィルムからスパチュラで掻き取り、測定用試料とした。
は、温度変調DSC(DSC:示差走査熱量測定)によって測定した。約10mgの前記試料をアルミニウム製パンに採取し、測定装置(米ティー・エイ・インスツルメント社製Q2000MDSC)にセットした。窒素雰囲気(窒素流量:50mL/分)で試料を−85〜200℃に3℃/分の速度で昇温し、熱流(Heat Flow)を測定した。昇温の際、温度変調成分として±1℃/分の正弦波を重畳した。測定された熱流(Heat Flow)を、可逆成分と不可逆成分とに分離し、可逆成分の熱流プロファイルから、ガラス転移温度Tを読み取った。結果をあわせて表3に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜3]
各構成成分を、表1〜2に示すような化合物及び配合組成とした以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録媒体サンプルをそれぞれ作製し、その特性評価を行った。ただし、実施例5の記録媒体サンプルについてのみ、実施例1と同様の手順に従って反射型ホログラムの記録及び光ポストキュアを行った後、さらに80℃で1時間の熱ポストキュアを行った。結果を表3に示す。さらに、実施例1と同様の手順によって、80℃で100時間加熱した後の回折特性と、硬化膜のガラス転移温度(T)を測定した。結果をあわせて表3に示す。また、光重合開始剤系(C)及び希釈溶媒を除く各成分の屈折率(n20/D)を併せて表1〜2に付記した。ただし、CyEp−2については、室温で固体であることからその屈折率を示していない。また、E−4cの屈折率は、そのエタノール溶液の屈折率から、外挿によって求めた値である。
[用いた成分の説明]
重合性モノマー(A)
・A−BPEF: 9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン (新中村化学工業(株)製)
・2−フェノキシエチルアクリレート (シグマ・アルドリッチ社製)
重合性モノマー(B
・CyEP−1: 合成例1で合成された重合性モノマー
・CyEP−2: 合成例2で合成された重合性モノマー
・E−4c: 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジフェニルホスフィンオキシド (片山化学工業(株)製、下記式(4)の化合物)
Figure 0005942736
重合性モノマー(B
・EG−250: 1,2−エポキシ基を有し、且つ9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するフルオレンモノマー (大阪ガスケミカル(株)製、エポキシ当量:393g/eq)
・ベンジルグリシジルエーテル (シグマ・アルドリッチ社製)
可塑剤(D)
・セバシン酸ジエチル (東京化成工業(株)製)
・ジ(エチレングリコール)ジベンゾエート (シグマ・アルドリッチ社製)
カチオン反応性可塑剤(Dc)
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル (シグマ・アルドリッチ社製)
・OXT−212: 2−エチルヘキシルオキセタン (東亞合成(株)製)
・2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート (シグマ・アルドリッチ社製、Mw=395、淡黄色粘稠液体、下記式(5)の化合物)
Figure 0005942736

・ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート (シグマ・アルドリッチ社製)
高分子結合剤(E)
・酢酸ビニルポリマー (シグマ・アルドリッチ社製、Mw=100,000)
・ポリ(メタクリル酸メチル) (シグマ・アルドリッチ社製、Mw=23,800)
ラジカル発生剤(C−1r)
・BT−2: 3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンほか位置異性体混合物 (チッソ(株)製、40%アニソール溶液)
カチオン発生剤(C−1c)
・SI−100L: トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート (三新化学工業(株)製)
・DAI−B: 4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート (東京化成工業(株)製)
増感色素(C−2)
・Dye−1: 3−ブチル−2−[3−(3−ブチル−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−2(3H)−イリデン)プロパ−1−エン−1−イル]−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−1−イウム=ヘキサフルオロ−λ5−ホスファヌイド (下記式(6)の化合物)
Figure 0005942736


・Dye−2: 2,5−ビス(4−ジブチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン (下記式(7)の化合物)
Figure 0005942736
熱カチオン開始剤(F)
・CP−77: 1−(3−メチル−2−ブテニル)テトラヒドロチオフェニウム ヘキサフルオロアンチモネート ((株)ADEKA製、66%プロピレンカーボネート溶液、下記式(8)の化合物)
Figure 0005942736
なお、表1〜2において、各成分の配合量(g)は、不揮発分としての量を示している。例えば、実施例1において用いられたBT−2(40%アニソール溶液)の(不揮発分としての)量0.25gは、アニソールを含む実際の添加量の0.625gに相当する。
Figure 0005942736
Figure 0005942736
Figure 0005942736
実施例1〜7のホログラム記録媒体サンプルでは、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)に加え、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有するカチオン重合性モノマー(B)を用い、且つ、それらが、芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有している。このため、ホログラム記録時に形成された重合性モノマー(A)に由来する濃度分布に従って、記録後に重合性モノマー(B)が拡散することにより、屈折率変調度Δnが増幅される。その結果、回折効率が高く、且つ、20〜35nmという広い半値全幅が得られた。さらに、実施例1〜7のホログラム記録媒体サンプルでは、硬化後のガラス転移温度(Tg)が高く、80℃で100時間加熱した後の記録信号の劣化が抑えられている。
一方、比較例1〜3では、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)と、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有する重合性モノマー(B)のいずれか一方しか用いていない。若しくは、カチオン重合性モノマー(B)が脂環エポキシ基を有していない。その結果、記録信号の耐久性が劣っているか、若しくは初期の記録特性が実施例1〜7に比べて大きく劣っていた。
(1):ホログラム記録媒体サンプル
(11):光源
(12):シャッター
(13)、(15):凸レンズ
(14):ピンホール
(16)、(19)、(20):ミラー
(17):1/2波長板
(18):ビームスプリッタ
(21)、(22):アパーチャ

Claims (9)

  1. (メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(A)、その少なくとも一部が脂環エポキシ基を有し、且つラジカル重合に対して実質的に不活性である重合性モノマー(B)、及び光重合開始剤系(C)を含み、重合性モノマー(A)及び重合性モノマー(B)がともに、芳香環、フッ素以外のハロゲン原子、及び、環状スルフィド及びメルカプト基以外に由来する硫黄原子、からなる群から選ばれる部位を有し、前記重合性モノマー(A)の少なくとも一部と、前記重合性モノマー(B)の少なくとも一部とが、ともに9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するものであるホログラム記録材料。
  2. 前記重合性モノマー(A)と前記重合性モノマー(B)の総和に対する、前記重合性モノマー(A)の質量比が、10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載のホログラム記録材料。
  3. 前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のいずれの平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有し、且つ室温で液状である可塑剤(D)をさらに含む、請求項1または2に記載のホログラム記録材料。
  4. 前記可塑剤(D)の少なくとも一部が、カチオン反応性可塑剤(Dc)である、請求項に記載のホログラム記録材料。
  5. 前記重合性モノマー(A)及び前記重合性モノマー(B)のいずれの平均屈折率よりも0.03以上低い屈折率を有する高分子結合剤(E)をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
  6. 前記光重合開始剤系(C)が、可視光の照射により前記重合性モノマー(A)を重合させる光ラジカル開始剤である、請求項1〜のいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
  7. 前記光重合開始剤系(C)がさらに、光照射によりブレンステッド酸又はルイス酸を発生するものである、請求項1〜のいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
  8. 加熱によりブレンステッド酸またはルイス酸を発生する熱カチオン開始剤(F)をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
  9. 基材と、前記基材上に形成された請求項1〜のいずれか1項に記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有するホログラム記録媒体。
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