JP5833866B2 - 誘導加熱コイル - Google Patents
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Description
ただし、渦巻き状の誘導加熱コイルでは、中心部の加熱が難しく、均一加熱が困難であった。
このため、本出願人は、矩形平面を均一に加熱するため、矩形平面において同じ方向に電流が流れる複数の導体部を並行に配置した誘導加熱コイルを開発した(特許文献1参照)。
例えば、第1設定角度が45度の場合、中心導体部は、同心円の最内周の円に対して中心角が45度の扇形領域を加熱するように設けられる。また、円弧導体部は、中心角が第1設定角度の円弧形状の領域、具体的には、半径の異なる2つの同心円の円周間で中心角が45度の範囲に区画された円弧領域を加熱するように設けられる。
このため、誘導加熱コイルに対向配置された平面状の被加熱面を有する被加熱物を、前記同心円の中心を回転軸として誘導加熱コイルに対して相対的に回転しながら、誘導加熱コイルに高周波電流を流して被加熱物を誘導加熱すれば、被加熱面の同心円内の領域を均等に加熱することができる。また、中心導体部および円弧導体部からなる導体部は、被加熱面の加熱領域内のみに設ければよいため、誘導加熱コイルの大きさを加熱領域とほぼ同じサイズまで小型化できる。
さらに、本発明では、誘導加熱コイルを設計・製造する際に、各同心円で区画される領域に対して、同じ中心角で前記中心導体部および円弧導体部を設計するだけで良いため、簡単に設計、製造することができる。さらに、前記加熱領域の大きさを変更する場合は、例えば、中心導体部や円弧導体部の幅寸法を大きくして加熱領域を拡大することもできるし、同心円の数を増やしてつまり円弧導体部の数を増やして加熱領域を拡大することもできる。このため、加熱領域の大きさに応じた誘導加熱コイルを容易に設計・製造することができる。
また、中心導体部に連続する第1リード導体の第1立上部は、中心導体部の延長方向に対して直交する方向、つまり被加熱面に対して直交し、被加熱面から離れる方向に延長されているので、延長部も被加熱面から第1立上部の立上り寸法分だけ離れて配置される。このため、延長部を含む第1リード導体が、被加熱面の加熱に影響することを防止でき、誘導加熱コイルを設計する際に、リード導体の影響を考慮する必要がないため、容易に設計できる。
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態における誘導加熱コイル1は、図1,2に示すように、円柱状の被加熱物Wの端面(被加熱面W1)を加熱するものである。
誘導加熱コイル1は、銅製の角パイプを折り曲げて構成される。そして、誘導加熱コイル1は、前記被加熱面W1に対向する導体部2と、導体部2から被加熱面W1に対して離れる方向に延長された第1リード部3、第2リード部4を備えている。
中心導体部20は、被加熱面W1を4つの同心円11〜14の円周で仮想的に区画した際に、最内周の同心円11の領域を4等分した領域、つまり中心角が90度(第1設定角度)の扇形領域11Aに対応して設けられている。なお、同心円11は、半径が誘導加熱コイル1の幅寸法と同じ寸法に設定されている。他の同心円11〜14は、半径が同心円11の2〜4倍とされている。このため、各同心円11〜14の円周間のリング状(円環状)の領域の幅寸法も誘導加熱コイル1の幅寸法と同じ寸法に設定されている。
中心導体部20の他端側は、被加熱面W1の同心円11および同心円12の各円周間に区画される領域まで延長されている。そして、中心導体部20の他端側からは略直角に折れ曲がって第1円弧導体部21が延長されている。
第1円弧導体部21の他端側は、略直角に折れ曲がって被加熱面W1の同心円12および同心円13の各円周間に区画されるリング状の領域に延長され、さらに略直角に折れ曲がって第2円弧導体部22が延長されている。
従って、第2円弧導体部22は、前記円弧領域13Aと平面的に重なっており、被加熱面W1におけるこの円弧領域13Aを加熱できるように構成されている。実際には、図3に示すように、第2円弧導体部22の両端は、それぞれ円弧領域13Aから突出し、第2円弧導体部22は、同心円12、13の各円周間に区画されるリング状の領域の1/4の面積よりも多少広い面積を加熱する。
第2円弧導体部22の他端側は、略直角に折れ曲がって被加熱面W1の同心円13および同心円14の各円周間に区画されるリング状の領域に延長され、さらに略直角に折れ曲がって第3円弧導体部23が円弧状に延長されている。
従って、第3円弧導体部23は、前記円弧領域14Aと平面的に重なっており、被加熱面W1におけるこの円弧領域14Aを加熱できるように構成されている。実際には、図3に示すように、第3円弧導体部23の両端は、それぞれ円弧領域14Aから突出し、第3円弧導体部23は、同心円13、14の各円周間に区画されるリング状の領域の1/4の面積よりも多少広い面積を加熱する。
第3円弧導体部23の他端側は、被加熱面W1に交差する方向に略直角に折れ曲がって第2リード部4が延長されている。
第2リード部4は、第3円弧導体部23の一端側から、被加熱面W1に交差する方向に略直角に折れ曲がって延長されている。
そして、第1リード部3および第2リード部4には、図示略の端子板が接合される。高周波電源からの高周波電流は、前記端子板および各リード部3,4を介して導体部2に流れる。
また、図2において、導体部2の上面から延長部32の下面までの寸法は10mmである。さらに、図3において、リード部3,4間の隙間寸法は2mmである。
すなわち、被加熱物Wを、被加熱面W1に直交し、前記同心円11〜14の中心を通る軸を回転軸として回転させながら、誘導加熱コイル1に高周波電流を流して誘導加熱を行う。なお、電流の周波数や加熱時間は、主に被加熱面W1の熱処理深さ寸法に基づいて行われる。例えば、被加熱物Wの表面を高周波焼入で処理する場合、高周波焼入深さが1.6mmなどと浅い場合は、例えば200kHzと高い周波数に設定し、加熱時間は1.6秒などと短めに設定する。同様に、高周波焼入深さが2.6mmの場合、周波数200kHzで加熱時間4.5秒等に設定する。さらに、高周波焼入深さが3.6mmの場合、周波数10kHzで加熱時間6.0秒等に設定する。
このような条件設定で焼入処理を行えばよい。なお、高周波焼入の具体的な方法は公知の方法と変わらないので説明を省略する。
本実施形態によれば、導体部2の中心導体部20、第1円弧導体部21、第2円弧導体部22、第3円弧導体部23を、被加熱面W1を同心円11〜14の円周で区画した領域において、中心角が第1設定角度の領域に対応して設けている。このため、各区画領域の面積に対する導体部2による加熱面積の割合が、各中心導体部20、円弧導体部21〜23でほぼ同じである。従って、誘導加熱コイル1の導体部2に対して被加熱物Wを回転させながら加熱処理すれば、被加熱面W1の同心円11〜14の円周で区画した各領域を均一に加熱することができる。
特に、被加熱物Wにおいて、高周波焼入れの深さ寸法が大きい場合は、加熱時間も長くなるため、加熱位置によって多少のムラがあっても熱が高い部分から低い部分に熱が伝わるため、被加熱物Wにおいて均一に加熱することは比較的容易である。
一方、被加熱物Wにおいて、高周波焼入れの深さ寸法が小さい場合は、加熱時間も短いため、熱が伝わることで均一に加熱することができない。これに対し、本実施形態では、導体部2の中心導体部20、円弧導体部21〜23で各同心円11〜14の円周で区画される領域を均一に加熱できるため、高周波焼入れの深さ寸法が小さい場合でも平坦な被加熱面W1を均一に加熱できる。
従って、従来のように、テストを繰り返して試行錯誤しながら誘導加熱コイル1を設計・製造する必要が無く、被加熱面W1の加熱領域(面積)に応じて誘導加熱コイル1の設計を定量的に行うことができる。
特に、被加熱面W1の面積が多少増減した場合には、誘導加熱コイル1のコイル幅を変えるだけで、その面積用の誘導加熱コイル1を容易に設計できる。
さらに、本実施形態の誘導加熱コイル1は、製造する際に角パイプの折曲回数もそれほど多くなく、かつ、比較的広い面積を加熱することができ、誘導加熱コイル1の製造コストと、加熱性能とのバランスを良好なものにできる。
前記第1実施形態の誘導加熱コイル1は、4個の同心円11〜14の円周で区画された4個の領域を加熱するものであった。これに対し、図4に示すように、第2実施形態の誘導加熱コイル1Aは、6個の同心円11〜16の円周で区画された6個の領域を加熱するものである。
誘導加熱コイル1Aの導体部2Aは、中心導体部20A、第1円弧導体部21A、第2円弧導体部22A、第3円弧導体部23A、第4円弧導体部24A、第5円弧導体部25Aの6個の導体部を備えており、それぞれが各リング領域において中心角(第1設定角度)が60度に設定された領域に対応して設けられている。
また、前記誘導加熱コイル1に比べて導体部が2つ多いため、銅パイプの幅寸法が同じであれば、前記誘導加熱コイル1よりも大きな面積の被加熱面W1を加熱できる。
なお、円弧導体部の数は前述の例に限定されず、銅パイプの幅寸法と、被加熱面W1の面積に応じて設定すればよい。
第3実施形態の誘導加熱コイルは、図5に示すように、8個の同心円11〜18の円周で区画された8個の領域を加熱する誘導加熱コイル1Bである。この誘導加熱コイル1Bは、円弧導体部が渦巻き状に2周以上にわたって配置される構成としている。
すなわち、図5に示す誘導加熱コイル1Bの導体部2Bは、中心導体部20B、第1円弧導体部21B、第2円弧導体部22B、第3円弧導体部23B、第4円弧導体部24B、第5円弧導体部25B、第6円弧導体部26B、第7円弧導体部27Bの8個の導体部を備えている。
中心導体部20B、第1円弧導体部21B、第2円弧導体部22B、第3円弧導体部23Bは、第1実施形態の誘導加熱コイル1と同じく、同心円14の内側の各領域において中心角が90度(第1設定角度)の領域に対応して設けられている。
一方、第4円弧導体部24B、第5円弧導体部25B、第6円弧導体部26B、第7円弧導体部27Bは、同心円14の外側の各リング状の領域において中心角が90度(第1設定角度)の領域に対応して設けられている。
このため、銅パイプの幅寸法が同じであれば、前記誘導加熱コイル1よりも大きな面積の被加熱面W1を加熱できる。一方で、被加熱面W1の大きさが第1実施形態と同じ場合、銅パイプの幅寸法を小さくすることができる。
なお、本発明は前記実施形態の構成に限らない。
例えば、誘導加熱コイルにおける円弧導体部の数は前述の例に限定されず、銅パイプの幅寸法と、被加熱面W1の面積に応じて設定すればよい。
また、第1リード部3、第2リード部4の構成も前記実施形態のものに限らない。例えば、第1リード部3としては第1立上部31をそのまま延長して構成してもよい。
Claims (2)
- 被加熱物の被加熱面である平面部分に対向する導体部を備え、前記被加熱面を高周波誘導加熱する誘導加熱コイルであって、
前記導体部は、
前記被加熱面を複数の同心円の円周で区画した際に、最内周の同心円内の領域において中心角が第1設定角度の扇形領域に対応して設けられた中心導体部と、
前記被加熱面を複数の同心円の円周で区画した際に、各同心円の円周で区画される領域において中心角が前記第1設定角度の円弧領域に対応して設けられた円弧導体部と、を備え、
前記中心導体部および円弧導体部は、前記同心円の中心側から外周側に順次連続して設けられ、
前記中心導体部には第1リード導体が接続され、最外周の円弧導体部には第2リード導体が接続され、
前記第2リード導体は、前記最外周の円弧導体部の端部に連続し、かつ、円弧導体部の延長方向に対して直交する方向に延長された立上部を備えて構成され、
前記第1リード導体は、前記中心導体部に連続し、かつ、中心導体部の延長方向に対して直交する方向に延長された第1立上部と、前記第1立上部の端部から前記第2リード導体の立上部に隣接する位置まで延長された延長部と、前記延長部の端部から前記第2リード導体の立上部に沿って延長された第2立上部とを備えて構成されている
ことを特徴とする誘導加熱コイル。 - 請求項1に記載の誘導加熱コイルにおいて、
前記第1設定角度は90度に設定され、
前記導体部は、
最内周の同心円において、中心角が90度の扇形領域を加熱する中心導体部と、
この中心導体部の他端側から略直角に折れ曲がって延長され、最内周の同心円と内側か
ら2番目の同心円の各円周間に区画された中心角が90度の円弧領域を加熱する第1円弧
導体部と、
前記第1円弧導体部の他端側から略直角に折れ曲がりさらに略直角に折れ曲がって延長
され、内側から2番目および3番目の同心円の各円周間に区画された中心角が90度の円
弧領域を加熱する第2円弧導体部と、
前記第2円弧導体部の他端側から略直角に折れ曲がりさらに略直角に折れ曲がって延長
され、内側から3番目および4番目の同心円の各円周間に区画された中心角が90度の円
弧領域を加熱する第3円弧導体部と、を備える
ことを特徴とする誘導加熱コイル。
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