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JP5830237B2 - 銀粒子含有組成物、分散液ならびにペーストの製造方法 - Google Patents

銀粒子含有組成物、分散液ならびにペーストの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、銀粒子含有組成物、分散液ならびにペーストおよびそれぞれの製造方法に関する。
昨今、プリント基板の微細配線の形成等においては、その粒径がミクロンオーダーである金属ミクロン粒子や、ナノオーダーである金属ナノ粒子が用いられる場合がある。このような用途に用いられる微小サイズの銅粒子や銀粒子等の金属粒子については、粒子同士の凝集等の防止や取扱性の向上を図るため、その表面を有機物によって被覆するのが一般的である。そして、このような銀粒子を溶媒、場合によっては樹脂と併用してペースト態となした上で、印刷法などにより配線を形成することがなされている。
ここで、銀粉末を熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性ペーストに関する技術が、特開2009−289745号公報(特許文献1)に開示されている。
特開2009−289745号公報
特許文献1によると、表面が高級脂肪酸または高級脂肪酸の誘導体で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸またはその誘導体を、該高級脂肪酸よりは低級の高・中級脂肪酸またはその誘導体により置換することとしている。具体的には、炭素原子数が17〜24である高級脂肪酸で被覆されている銀粒子に対し、炭素原子数が8〜16である高・中級脂肪酸に置換することとしている。こうすることにより、低温における焼結性の向上を図るとしている。
しかし、特許文献1に開示の技術においては、置換前後における銀粒子を被覆する脂肪酸の炭素原子数(以下、単に「炭素数」という場合がある)が比較的大きい。このとき、置換時に用いる溶媒により、銀粒子を溶媒中に分散することができない場合や、分散ができたとしても、分散が不均一になるおそれがあり、より低級の脂肪酸への置換が適切にできないこともある。また、用途によっては、疎水性の調整、あるいは別の特性を付加する目的で置換前の脂肪酸の炭素数に対して置換後の脂肪酸の炭素数を増加させることを必要とする場合もあるが、特許文献1に開示の技術であれば、対応することができない。
この発明の目的は、求められる要求に応じた銀粒子含有組成物を容易に得ることができる銀粒子含有組成物の製造方法とともに、該方法により得られる銀粒子含有組成物を提供することである。
この発明に係る銀粒子含有組成物の製造方法は、表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物の製造方法であって、表面を炭素原子数が3〜7である第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2〜20である第二の脂肪酸(b)、および第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備する工程と、溶媒中に第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および第二の脂肪酸(b)を添加する工程(添加工程)と、添加する工程の後に、銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を第二の脂肪酸(b)に置換する工程(置換工程)とを備える。
なお、置換に際しては、銀粒子を被覆する第一の脂肪酸(a)の全てを第二の脂肪酸(b)に置換するものではなく、その一部を置換するものであってもよい。そして、要求される特性に応じて、置換の割合を、第二の脂肪酸の添加量や、第一の脂肪酸に対する第二の脂肪酸の添加比率等によって調整してもよい。
また、ここでいう炭素数については、脂肪酸の直鎖状部分に含まれる炭素の数をいい、側鎖状部分に含まれる炭素の数は含まないものである。
また、この発明に係る銀粒子含有組成物は、表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物であって、表面を炭素原子数が3〜7である第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2〜20である第二の脂肪酸(b)、および第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備し、溶媒中に第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および第二の脂肪酸(b)を添加し、銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を第二の脂肪酸(b)に置換することによって製造される。
この発明に係る銀粒子含有組成物の製造方法によると、置換前後の銀粒子の表面を被覆する脂肪酸の炭素数を、比較的小さい炭素数の範囲内で任意に変更することができる。その結果、求められる要求に応じた銀粒子含有組成物を容易に得ることができる。
また、この発明に係る銀粒子含有組成物は、求められる要求に応じて、銀粒子の表面が比較的小さい炭素数の範囲内で任意に変更することができる。
この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法によって製造される銀粒子含有組成物の外観を模式的に示した図である。 この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。 ソルビン酸を被覆した置換前の銀粒子含有組成物の一部を拡大して示すSEM写真である。 ブタン酸を被覆した置換後の銀粒子含有組成物の一部を拡大して示すSEM写真である。 置換前後の銀粒子含有組成物のDTAを示すグラフである。 置換前後の銀粒子含有組成物のTGを示すグラフである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をブタン酸とした場合の置換前後の温度とTG減量との関係を示すグラフである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をブタン酸とした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をオクタン酸とした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をヘキサン酸とした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をマロン酸とした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をブタン酸とし、ブタン酸の添加量を5gとした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をマロン酸とし、銀粒子の平均粒子径を1μmとした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸を乳酸とした場合の置換前後の温度とTG減量との関係を示すグラフである。 大気下120℃焼成処理の前の乳酸で置換された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真である。 大気下120℃焼成処理の後の乳酸で置換された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真である。 大気下120℃焼成処理の前のソルビン酸で置換された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真である。 大気下120℃焼成処理の後のソルビン酸で置換された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真である。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をオクタン酸とし、添加量を0.25gとした場合のGC−MSのチャートである。 第一の脂肪酸をソルビン酸、第二の脂肪酸をコール酸とした場合のGC−MSのチャートである。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法によって製造される銀粒子含有組成物の外観を模式的に示した図である。まず、この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法によって製造される銀粒子含有組成物の構成について説明する。
この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法によって製造される銀粒子含有組成物1は、銀粒子、具体的には、一次粒子状態の銀粒子2の表面3に多数の脂肪酸4が結合し、銀粒子2の表面3が多数の脂肪酸4によって被覆されたものである。その被覆状態については、銀粒子2の表面3が一部に露出していてもよく、脂肪酸4が複数の層に亘って被覆するよう構成されていてもよい。本願発明においては、この多数の脂肪酸4によって被覆された銀粒子2の表面3を他の脂肪酸に置換し、他の脂肪酸で銀粒子2の表面3を被覆しようとするものである。
銀粒子含有組成物1の中核となる銀粒子2の形状については、略球形状である。銀粒子2の大きさは、微小なもの、例えば、マイクロメートルサイズ以下のものが好適に用いられ、さらには、ナノメートルサイズのものが好適に用いられる。具体的には、銀粒子2の粒径については、1〜100nm程度のものが好適に用いられる。なお、銀粒子2の粒径の測定については、マイクロメートルサイズのものに対しては、マイクロトラック粒度分布測定装置(9320HRA−X100(ハネウエル(Haneywell)−日機装社製))、数百ナノメートルのものに対しては、SEM写真による外観形状による測定、数ナノメートルのものに対しては、TEM写真による外観形状による測定で行っている。
この発明に係る後述の置換工程において好適に利用できる銀粒子2のBET法による比表面積値は、0.1〜40m/gの範囲とすればよい。好ましくは、0.5〜40m/gの範囲とすればよく、さらに好ましくは、1.0〜35m/gの範囲とすればよい。この範囲とすれば、溶媒に対して、いわゆるなじみがよくなり、置換工程における脂肪酸の置換を効率的に行うことができるので好適である。
置換前の脂肪酸、すなわち、銀粒子を予め被覆している第一の脂肪酸(a)については、炭素数が3〜7のものが用いられる。このような炭素数の脂肪酸は、溶媒、とりわけアルコール類やアセテート類といった極性を有する溶媒に対する分散性が良好なものが多い。具体的な第一の脂肪酸を列挙すると、例えば、炭素数が3のプロピオン酸、マロン酸、乳酸、炭素数が4のブタン酸、リンゴ酸、炭素数が6のソルビン酸、ヘキサン酸等が挙げられる。
第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子の製造方法について、簡単に説明する。まず、容器内に準備した所定量のアンモニア水を準備する。そして、所定量の第一の脂肪酸、例えば、具体的には、ソルビン酸を添加し、10分間攪拌して溶解させる。次に、還元剤、例えば、ヒドラジン水和物を所定量添加する。その後、水に溶解させた硝酸銀を添加し、還元反応を進行させる。このようにして、置換前の銀粒子含有組成物、具体的には、ソルビン酸によってその表面を被覆した銀粒子を製造する。
置換後の脂肪酸、すなわち最終的に銀粒子を被覆する第二の脂肪酸(b)については、炭素数が2〜20のものが用いられる。第二の脂肪酸については、用いる第一の脂肪酸や求められる要求に応じて、種々選択される。例えば、後にペースト状とする銀粒子含有組成物の低温における焼結性の向上が要求される場合には、第一の脂肪酸に対して炭素数の小さいものが第二の脂肪酸として選択される。また、例えば、銀粒子含有組成物の疎水性向上が要求される場合には、第一の脂肪酸に対して炭素数の大きいものが第二の脂肪酸として選択される。このようにして選択される第二の脂肪酸の例としては、具体的には、炭素数が2の酢酸、炭素数が3のプロピオン酸、マロン酸、乳酸、炭素数が4のブタン酸、リンゴ酸、炭素数が6のソルビン酸、ヘキサン酸、炭素数が8のオクタン酸、炭素数が9のアセチルサリチル酸、炭素数が10のデカン酸、炭素数が18のオレイン酸等が挙げられる。
この発明において、置換工程において用いられる溶媒については、第一および第二の脂肪酸で被覆された銀粒子を分散可能な任意のものを使用する。この場合、置換前後の脂肪酸の分散性が良好なものを選択することが好ましい。
具体的な溶媒の例としては、水、オクタンジオール等のジオール類、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、1−メチルピロリジノン、ピリジン、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、フェノキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、1−オクタノールおよび上記溶剤の混合溶剤等が挙げられる。
次に、この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法について説明する。図2は、この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。
まず、表面を炭素原子数が3〜7である第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子、すなわち、置換前の銀粒子含有組成物と、炭素原子数が2〜20である第二の脂肪酸(b)と、第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒とを準備する(図2(A))(準備工程)。
次に、溶媒中に、第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子、および第二の脂肪酸をそれぞれ添加する(図2(B))(添加工程)。その一例としては、先に第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子を添加し、その後第二の脂肪酸(b)を添加する。この場合の添加の順序や方法については、特に限定されるものではなく、もちろん先に第二の脂肪酸(b)を添加し、その後第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子を添加してもよいし、第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子および第二の脂肪酸(b)を同時に添加してもよい。また、第二の脂肪酸(b)が固形である場合には、予め上記した溶媒に第二の脂肪酸(b)を溶解させた後に添加することにしてもよい。
その後、銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を第二の脂肪酸(b)に置換する(図2(C))(置換工程)。具体的には、その一例として、第一の脂肪酸(a)で被覆された銀粒子、および第二の脂肪酸をそれぞれ添加した溶媒の攪拌を行ってから、超音波による超音波振動処理を行ってもよい。
その後、溶媒の除去、いわゆる銀粒子と溶媒の分離を行う(図2(D))(溶媒除去工程)。溶媒と得られる銀粒子の分離は、公知の濾過法を用い、行うことができる。この場合、デカンテーションにより、上澄みを取り除いた後、濾過を行うことにしてもよい。
次に、溶媒を除去した後、銀粒子含有組成物の洗浄を行う(図2(E))(洗浄工程)。洗浄は、例えば、洗浄液として置換操作時に使用したものと同種の溶媒を銀粒子含有組成物の上から添加して洗い流すことにより行うと、洗浄液由来の不純物の混入を防止できるので、好ましい。
その後、洗浄を行った銀粒子含有組成物の乾燥を行う(図2(F))(乾燥工程)。乾燥については、特段の制限はないが、銀粒子表面を被覆する有機物の脱離や分解する温度より低温で行う必要がある。この場合、減圧条件下で行うこともできる。
このようにして、この発明の一実施形態に係る銀粒子含有組成物の製造方法に係る銀粒子含有組成物を得る。このような銀粒子含有組成物の製造方法によると、求められる要求に応じた銀粒子含有組成物を容易に得ることができる。具体的には、炭素数が6程度の銀粒子含有組成物から炭素数が3程度の銀粒子含有組成物を容易に得ることができる。このような炭素数が3程度の比較的小さい銀粒子含有組成物は、低温での焼結性が優れているため、上記したプリント基板の配線形成の際に有用であり、このような銀粒子含有組成物を容易に得ることができる。また、炭素数が6程度の銀粒子含有組成物から炭素数が8程度の銀粒子含有組成物も容易に得ることができる。このような炭素数が8程度の銀粒子含有組成物について、長鎖の脂肪酸の官能基の一部を、要求する官能基に置換し、求められる特性に応じた銀粒子含有組成物を容易に得ることができる。
この場合、置換時における凝集の発生を抑制することができるので、より効率的に、求められる要求に応じた銀粒子含有組成物を得ることができる。また、比較的低温で置換反応を進行させることができるので、特に、炭素数が3や4といった炭素数の非常に小さい脂肪酸で被覆された銀粒子を得ようとする際に、置換反応時における焼結のおそれを大きく低減することができる。
また、この発明に係る銀粒子含有組成物は、表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物であって、表面を炭素原子数が3〜7である第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2〜20である第二の脂肪酸(b)、および第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備し、溶媒中に第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および第二の脂肪酸(b)を添加し、銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を第二の脂肪酸(b)に置換することによって製造される。
図3は、置換前のソルビン酸で被覆された銀粒子含有組成物の一部を拡大して示すSEM(電子顕微鏡)写真である。図4は、置換後のブタン酸で被覆された銀粒子含有組成物の一部を拡大して示すSEM写真である。図3および図4においては、30000倍に拡大した場合を示す。
これらの写真を見る限り、脂肪酸の置換操作前後において、その外観性状の顕著な変化は確認されない。すなわち、表面を被覆する有機酸の置換操作を行っても、その工程中に粒子の焼結が生じて粒子径が極端に増大するような事象が生じていないことがわかる。
次に、置換前後のTG−DTAについて検討してみると、以下の通りである。図5は、置換前後の銀粒子含有組成物のDTAを示すグラフである。図6は、置換前後の銀粒子含有組成物のTGを示すグラフである。図5において、縦軸はDTA(μV)を示し、横軸は、温度(℃)を示す。図6において、縦軸は、TG減少率(%)を示し、横軸は、温度(℃)を示す。図5中、置換前、すなわち、ソルビン酸で被覆された銀粒子含有組成物のグラフを点線10aで示し、置換後、すなわち、ブタン酸で被覆された銀粒子含有組成物のグラフを実線10bで示している。また、図6中、置換前、すなわち、ソルビン酸で被覆された銀粒子含有組成物のグラフを点線10cで示し、置換後、すなわち、ブタン酸で被覆された銀粒子含有組成物のグラフを実線10dで示している。
図5および図6に示したように、置換前については、DTAの値が200℃および300℃付近において、大きなピークを示している。これに対し、置換後については、DTAの値が250℃付近において大きなピークを示している。また、TGにおいては、250℃付近における挙動、具体的には、200℃から300℃にかけての挙動が、置換前後において異なっている。これは、置換前後において、銀粒子の表面を被覆している有機物、いわゆる脂肪酸が異なっていることを示していると解され、置換が十分に行われているものと考えることができる。
なお、脂肪酸が置換されたか否かを判断する指標については、本発明では、得られた銀粒子をGC−MSにかけて、表面を被覆する有機物成分の変化を確認することにより行った。本明細書においては、Agilent technologies株式会社製のGC−MS装置7890A GC Systemおよび5975C inert XL EI/CI MSDを用いて分析を行った。分析については、350℃に粒子を加熱し、捕集されるガスの成分を分析することにより、有機物成分がどのような構成かを確認することにより行った。
置換の定量的な取扱いについては、得られたGC−MSチャートの各種ピークに対して積分処理を行い、ピーク面積を算出し、各々のピーク面積を比較することにより行った。チャートの解析については、測定したGC−MSチャートの解析ソフトMSD Chem Station(Aglent technologies株式会社製)を用いて行った。上記解析ソフトを用い、各種有機物由来のピークを積分処理し、ピーク面積を算出した。本明細書に係る置換率については、以下の式により算出した。
置換率(%)=100×S/(S+S
ここで、置換前の第一の脂肪酸(a)のピーク面積をS、置換後の第二の脂肪酸(b)のピーク面積をSとした。
(表面性変化の評価)
溶媒に対する分散性が変化したことについては、次のような手法により評価した。初めにまず、テトラデカンと水とを準備する。なお、予備試験により、金属ナノ粒子は、テトラデカンに分散し易く、水には分散しないことを確認している。テトラデカンと水とをバイアル瓶にいれ、置換前後の銀粒子含有組成物を加え、5分程度振とう攪拌した。ここで、テトラデカン層または水層に対して、どちらの層に分散性を示すかにより、表面性が変化したか否かを確認した。置換前においては、上層に位置するテトラデカン層に、銀粒子含有組成物が分散しており、下層に位置する水層には、銀粒子含有組成物が分散していなかった。置換後においては、上層に位置するテトラデカン層に、銀粒子含有組成物が分散しておらず、下層に位置する水層に、銀粒子含有組成物が分散していた。このようにして、疎水性の銀粒子含有組成物や親水性の銀粒子含有組成物を、要求に応じて脂肪酸を置換して製造することができる。
そして、上述の方法により得られた粒子を該粒子に対して分散性を示す溶媒に添加すること(分散工程)により分散液を得、粒子と分散液と樹脂とを混在させて混練すること(混練工程)で、ペーストを得ることができる。また、ペーストについては、粒子と分散液と分散剤とを混在させて混練することによっても得られる。さらに、ペーストについては、粒子と分散液と樹脂と分散剤とを混在させて混練することによっても得られる。
本発明の方法により得られる粒子の特性が処理の前後で変化していることを確認するため、以下に記述する評価を行った。
(比抵抗評価)
ナノ銀粒子100部とミクロン銀粒子100部を希釈溶媒20部と分散剤2部と添加剤0.1部とを混合し、三本ロール(株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製EXAKT M−80S)にてペースト化処理を行い、銀粒子含有組成物ペーストとした。
幅25mm×長さ25mm×厚さ0.7mmのアルミナ基板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する厚み30μmのメタルマスクを用いて、銀粒子含有組成物ペーストを塗布し、120℃の強制循環式オーブン内で加熱した。得られた焼成膜の膜厚を触針式表面粗度計(東京精密株式会社製SURFCOM 1500DX)にて測定し、4探針プローブ抵抗計(三菱化学株式会社製Loresta−GP)で表面抵抗を測定した。膜厚および表面抵抗より、サンプルの体積抵抗値を算出した。
(短鎖脂肪酸置換による低温焼結性評価)
示差熱熱重量同時測定装置(SII株式会社製TG/DTA6300)を用い、大気中で置換前と置換後の銀粒子を昇温速度10℃/分にて、40℃から120℃まで昇温して、120℃で180分間保持してTG曲線を作成した。
種々の脂肪酸や銀粒子を用いた実施例1〜18、比較例1の評価結果の一部をまとめたものについて、表1に示す。
(実施例1)
1L(リットル)のビーカーにイソプロピルアルコール500gを入れた後、ソルビン酸(a)で被覆された銀粒子(ソルビン酸被覆量:0.5重量%)100gと、ブタン酸(b)50gを添加し、攪拌機を用いた25℃で5時間攪拌した。銀粒子については、SEMによる平均一次粒子径が100nm(ナノメートル)のものを用いた。攪拌した後のスラリーを、メンブレンフィルターを用いて濾過した。濾過した後の銀粒子を、イソプロピルアルコール0.5Lで洗浄した。洗浄後、25℃で2時間真空乾燥した。このようにして、実施例1に係る銀粒子を得た。
ここで、置換前後の温度とTG減量との関係を、図7に示す。図7において、左側の縦軸において、TG減量(%)を示し、右側の縦軸において、温度(℃)を示し、横軸において、測定時間(分)を示す。そして、温度を線12aで示し、置換前、すなわち、ソルビン酸で被覆された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物の場合を線12bで示し、置換後、すなわち、ブタン酸で被覆された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物の場合を線12cで示す。温度を示す線12aで表されるように、20分程度までで、40℃から120℃まで昇温し、その後は、120℃の温度を保持するようにしている。
この例からわかるように、置換前の銀粒子含有組成物のTG減量は、時間経過と共に緩やかに減少している。具体的には、150分経過時において、TG減量がおおよそ0.15%である。これに対し、置換後の銀粒子含有組成物のTG減量は、置換前の銀粒子含有組成物のTG減量よりも、その減少率が大きい。具体的には、150分経過時において、TG減量がおおよそ0.30%である。このTG減量の比較から、銀粒子の表面を被覆する有機物が、置換の前後において変化している可能性があることがわかる。
置換前後の銀粒子に対して、GC−MSの測定を行った。これらのGC−MSのチャートを、図8に示す。図8において、縦軸は、ピークの強度(a.u.)を示し、横軸は、保持時間(分)を示す。なお、この例を含めGC−MSのグラフにおいては、置換前のチャートを上に、置換後のチャートを下にそれぞれ示している。図8においては、上側に置換前のチャート11aを示し、下側に置換後のチャート11bとして示した。
これらを比較すると、銀粒子の表面を構成する有機物の成分が変化していることが確認される。具体的には、このチャート11a、11bを解析したところ、置換前のチャート11aの成分が、ソルビン酸由来のピークを示すものであり、置換後のチャート11bの成分が、ブタン酸由来のピークを示すものである。すなわち、これらのチャート11a、11bを比較することにより、銀粒子の表面を被覆する有機物について、ソルビン酸からブタン酸への置換が行われていることが把握できる。
(実施例2)
第二の脂肪酸(b)をオクタン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図9に示す。このチャート13a、13bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がオクタン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からオクタン酸に置換されていることが確認された。なお、置換前後の炭素数については、ソルビン酸の炭素数<オクタン酸の炭素数の関係を有する。したがって、長鎖酸についても、この方法によれば置換できることが把握できる。
(実施例3)
第二の脂肪酸(b)をヘキサン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図10に示す。このチャート14a、14bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がヘキサン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からヘキサン酸に置換されていることが確認された。なお、置換前後の炭素原子数については、ソルビン酸の炭素原子数=ヘキサン酸の炭素原子数の関係を有する。したがって、同一炭素原子数の脂肪酸についても、この方法によれば置換できることが把握できる。
(実施例4)
第二の脂肪酸(b)をマロン酸に変更し、マロン酸の添加量を20gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図11に示す。なお、GC−MS測定においては、試料を350℃に加熱し、発生した気体をMS装置で解析することとしている。ここで、マロン酸は、140℃で酢酸に分解する。このチャート15a、15bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がマロン酸の分解物と考えられる酢酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からマロン酸に置換されていることが確認された。
(実施例5)
第二の脂肪酸(b)としてのブタン酸の添加量を50gから5gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図12に示す。このチャート16a、16bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がブタン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からブタン酸に置換されていることが確認された。なお、ブタン酸について、図8におけるピークの強度と図12におけるピークの強度とが異なるのは、添加量の変更に起因した被覆状態の相違に基づくものと考えられる。
(実施例6)
第一の脂肪酸(a)をブタン酸(ブタン酸被覆量:0.5重量%)に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例6に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がブタン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がヘキサン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ブタン酸からヘキサン酸に置換されていることが確認された。
(実施例7)
第一の脂肪酸(a)をプロピオン酸(プロピオン酸被覆量:0.5重量%)に変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がプロピオン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がヘキサン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、プロピオン酸からヘキサン酸に置換されていることが確認された。
(実施例8)
銀粒子を、第一の脂肪酸(a)としてのソルビン酸で被覆され、マイクロトラックによる平均粒子径が1μmである銀粒子(ソルビン酸被覆量:0.1重量%)に変更し、マロン酸の添加量を4gに変更した以外は実施例4と同様にして、実施例8に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図13に示す。このチャート17a、17bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がマロン酸の分解物と考えられる酢酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からマロン酸に置換されていることが確認された。
(実施例9)
銀粒子を、第一の脂肪酸(a)としてのヘキサン酸で被覆され、TEMによる平均粒子径が20nmである銀粒子(ヘキサン酸被覆量:3.0重量%)に変更し、第二の脂肪酸(b)をソルビン酸に変更した以外は実施例3と同様にして、実施例9に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がヘキサン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がソルビン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ヘキサン酸からソルビン酸に置換されていることが確認された。
(実施例10)
第二の脂肪酸(b)をマロン酸に変更し、添加量を20gに変更した以外は実施例9と同様にして、実施例10に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がヘキサン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がマロン酸の分解物と考えられる酢酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からマロン酸に置換されていることが確認された。
(実施例11)
第二の脂肪酸(b)を乳酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例11に係る銀粒子を得た。置換前後の温度とTG減量の関係を図14に示す。図14は、図7に対応するものであり、温度を線18aで示し、置換前、すなわち、ソルビン酸で被覆された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物の場合を線18bで示し、置換後、すなわち、乳酸で被覆された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物の場合を線18cで示す。
図14を参照して、置換前の銀粒子含有組成物のTG減量は、時間経過と共に緩やかに下っている。具体的には、120℃に達した直後の30分経過時において、TG減量がおおよそ0.05%である。これに対し、置換後の銀粒子含有組成物のTG減量は、置換前の銀粒子含有組成物のTG減量よりも、その減少率が大きい。具体的には、30分経過時において、TG減量がおおよそ0.21%である。このTG減量の比較から、銀粒子の表面を被覆する有機物が、置換の前後において変化していることがわかる。
また、置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分が乳酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸から乳酸に置換されていることが確認された。
大気下120℃焼成処理の前後の乳酸で置換された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真を、図15、図16に示す。図15は焼成前の場合であり、図16は、焼成後の場合である。なお、参考までに、図17および図18に、大気下120℃焼成処理の前後のソルビン酸で被覆された銀粒子を含有する銀粒子含有組成物のSEM写真を示す。図17は、焼成前の場合であり、図18は、焼成後の場合である。図15〜図18を参照して、ソルビン酸が被覆された銀粒子では、焼成前後の外観にほとんど変化は見られないが、乳酸が被覆された銀粒子では、焼成における銀粒子の融着が観察される。このことから、低温焼結性が向上していることが把握できる。
また、120℃で1時間焼成したサンプルの体積抵抗値は、ソルビン酸が被覆された銀粒子を用いた場合では、767.9μΩ・cmであったのに対し、乳酸が被覆された銀粒子を用いた場合では、200.7μΩ・cmであった。このことより、短鎖の脂肪酸に置換することで、低温焼結が促進されていることが確認できる。
(実施例12)
第二の脂肪酸(b)を酢酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例12に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分が酢酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸から酢酸に置換されていることが確認された。
(実施例13)
第二の脂肪酸(b)をプロピオン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例13に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がプロピオン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からプロピオン酸に置換されていることが確認された。
(実施例14)
第二の脂肪酸(b)をデカン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例14に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がデカン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からデカン酸に置換されていることが確認された。
(実施例15)
第二の脂肪酸(b)をオレイン酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例15に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がオレイン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からオレイン酸に置換されていることが確認された。
(実施例16)
第二の脂肪酸(b)をリンゴ酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例16に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がリンゴ酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からリンゴ酸に置換されていることが確認された。
(実施例17)
第二の脂肪酸(b)をアセチルサリチル酸に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例17に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャートを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がアセチルサリチル酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分が、ソルビン酸からアセチルサリチル酸に置換されていることが確認された。
アセチルサリチル酸で被覆された銀粒子を用いて、表面性の評価を行った。ほとんどの粒子については、水層側に沈降し、一部がテトラデカン層に滞留した。ソルビン酸で被覆された銀粒子について同様に表面性の評価を行ったところ、テトラデカン層にほとんどの粒子が滞留した。これにより、有機物を置換することで、例えば、親水性の粒子を疎水性の粒子に制御することができることがわかった。
(実施例18)
第二の脂肪酸(b)をオクタン酸に変更し、その添加量を0.25gとした以外は実施例1と同様にして、実施例18に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図19に示す。このチャート19a、19bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がソルビン酸およびオクタン酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分について、ソルビン酸からオクタン酸への置換が完全には進行せず、一部はそのまま残存することがわかった。よって、所望の置換率を達成するためには、この添加量の比率を適度に調整することが重要であることがわかる。
(比較例1)
第二の脂肪酸(b)をコール酸に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る銀粒子を得た。置換前後のGC−MS測定におけるチャート図を、図20に示す。このチャート20a、20bを解析したところ、置換前のピークの成分がソルビン酸由来のものであり、置換後のピークの成分がソルビン酸およびコール酸由来のものであった。これより、銀粒子の表面を構成する有機物成分について、ソルビン酸からコール酸への置換が不十分であることが確認された。この比較例1や炭素数が18である実施例15等を考慮すると、第二の脂肪酸としては、炭素数が20程度までについて、置換が十分であることが考えられる。
なお、上記の実施の形態においては、第一の脂肪酸および第二の脂肪酸共に、カルボン酸とすることにしたが、これに限らず、少なくとも第一の脂肪酸が、カルボン酸を含むよう構成してもよい。
また、上記の実施の形態においては、溶媒除去工程において、濾過を行うこととしたが、このような濾過に限られず、例えば、遠心分離を用いて、溶媒と銀粒子含有組成物とを分離して、溶媒を除去するようにしてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、置換工程の後に、溶媒を除去する溶媒除去工程を備えることとしたが、これに限らず、溶媒を用いてそのまま次の処理を行うことができる場合は、溶媒除去工程を省略することとしてもよい。また、置換後の洗浄は不必要である場合には、洗浄工程についても、省略することとしてもよい。また、置換された銀粒子含有組成物をそのまま湿らせた状態で次の処理を行う場合には、乾燥工程についても、省略可能である。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係る銀粒子含有組成物、分散液ならびにペーストおよびそれぞれの製造方法は、特に、印刷CPU、印刷照明、印刷タグ、オール印刷ディスプレイ、センサ、プリント配線板、有機太陽電池、電子ブック、ナノインプリントLED、液晶・PDPパネル、印刷メモリといったいわゆる「プリンテッド・エレクトロニクス」に用いられる銀粒子を製造する際に、有効に利用される。
1 銀粒子含有組成物、2 銀粒子、3 銀粒子の表面、4 脂肪酸

Claims (9)

  1. 表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物の製造方法であって、
    表面を炭素原子数がである第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2または3である第二の脂肪酸(b)、および前記第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備する工程と、
    前記溶媒中に前記第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および前記第二の脂肪酸(b)を添加する工程と、
    前記添加する工程の後に、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)、および前記第二の脂肪酸(b)をそれぞれ添加した溶媒の撹拌を行うことにより、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を前記第二の脂肪酸(b)に置換する工程とを備える、銀粒子含有組成物の製造方法。
  2. 前記第一の脂肪酸(a)は、カルボン酸を含む、請求項1に記載の銀粒子含有組成物の製造方法。
  3. 前記溶媒がイソプロピルアルコールである、請求項1に記載の銀粒子含有組成物の製造方法。
  4. 表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物が分散された銀粒子含有組成物分散液の製造方法であって、
    表面を炭素原子数がである第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2または3である第二の脂肪酸(b)、および前記第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備する工程と、
    前記溶媒中に前記第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および前記第二の脂肪酸(b)を添加する工程と、
    前記添加する工程の後に、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)、および前記第二の脂肪酸(b)をそれぞれ添加した溶媒の撹拌を行うことにより、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を前記第二の脂肪酸(b)に置換する工程と、
    前記置換する工程の後に、前記第二の脂肪酸(b)に被覆された銀粒子を前記溶媒から分離し、前記第二の脂肪酸(b)に被覆された銀粒子を分散可能な分散液に分散させる工程とを備える、銀粒子含有組成物分散液の製造方法。
  5. 前記溶媒がイソプロピルアルコールである、請求項4に記載の銀粒子含有組成物分散液の製造方法。
  6. 表面を脂肪酸で被覆した銀粒子含有組成物を有する銀粒子含有組成物ペーストの製造方法であって、
    表面を炭素原子数がである第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子、炭素原子数が2または3である第二の脂肪酸(b)、および前記第一および第二の脂肪酸をそれぞれ分散可能な溶媒を準備する工程と、
    前記溶媒中に前記第一の脂肪酸(a)で被覆した銀粒子および前記第二の脂肪酸(b)を添加する工程と、
    前記添加する工程の後に、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)、および前記第二の脂肪酸(b)をそれぞれ添加した溶媒の撹拌を行うことにより、前記銀粒子の表面を被覆する第一の脂肪酸(a)を前記第二の脂肪酸(b)に置換する工程と、
    前記置換する工程の後に、前記第二の脂肪酸(b)に被覆された銀粒子を前記溶媒から分離し、前記第二の脂肪酸(b)に被覆された銀粒子を分散可能な分散液に分散させる工程と、
    前記分散させる工程の後に、前記分散液をペースト状となるよう混練する工程とを備える、銀粒子含有組成物ペーストの製造方法。
  7. 前記混練する工程は、前記分散液中に樹脂を添加する工程を含む、請求項6に記載の銀粒子含有組成物ペーストの製造方法。
  8. 前記混練する工程は、前記分散液中に分散剤を添加する工程を含む、請求項6または7に記載の銀粒子含有組成物ペーストの製造方法。
  9. 前記溶媒がイソプロピルアルコールである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の銀粒子含有組成物ペーストの製造方法。
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