JP5823698B2 - ポリマーセメント組成物 - Google Patents
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Description
そこで、このような問題点を解決したポリマーセメント組成物の開発が望まれていた。
セメント、水、骨材、ポリマー、およびカルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂を含む集束剤によって集束された繊維を含有してなるポリマーセメント組成物であって、下記要件を満足することを特徴とするポリマーセメント組成物。
a)セメント100質量部に対し、ポリマー1〜20質量部配合されていること。
b)集束された繊維を構成する繊維の単糸の繊度が0.5〜100dtexであること。
c)集束された繊維が無撚もしくは撚り係数が0より大きく3以下の範囲内で撚り掛けされていること。
d)集束された繊維の直径が0.05〜1.0mm、かつ長さが1〜50mmであること。
e)集束剤に含まれるカルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂の付着量が集束された繊維全重量に対して、固形分比で3〜30重量%付与されていること。
好ましくは、集束された繊維を構成する繊維の引張強度が2500MPa以上、引張弾性率が50GPa以上、破断伸度が3〜8%範囲内、かつ繊維の密度が1.0g/cm3以上であるポリマーセメント組成物、また集束された繊維を構成する繊維がポリパラフェニレン・テレフタラアミド繊維、またはコポリパラフェニレン・3.4’オキシジフェニレン・テレフタラアミド繊維であるポリマーセメント組成物、
が提供される。
一般的にポリマーセメントとは、結合材にセメントとポリマーを用いたセメント系複合材料をいい、組成物がセメント、水、およびポリマーであるときはポリマーセメントペーストと称し、セメント、水、ポリマー、および細骨材であるときはポリマーセメントモルタルと称し、セメント、水、ポリマー、細骨材、および粗骨材であるときはポリマーセメントコンクリートと称し、ポリマーセメント組成物に水が含まれないものをプレミクスポリマーセメントと称するものである。
上記集束繊維を構成する繊維は、高強力、高弾性率、且つ破断伸度と密度が適度な大きさであることが必要であり、具体的には、該繊維の引張強度が2500MPa以上、引張弾性率が50GPa以上、該繊維の破断伸度が3〜8%範囲内であり、且つ密度が1g/cm3以上であることが好ましい。
Vf=(V1/V2)×100 式(1)
[式中、V1は繊維を含有するセメント成形体の単位体積(1,000リットル=1m3)中に混入された繊維の容積(リットル)を示し、V2はセメント成形体の単位容積(1,000リットル=1m3)を示す]
また、該集束剤には、強度や靱性を向上させたり、耐熱性や耐薬品性を付与することを目的として、メラミン樹脂やフェノール樹脂、ブロックドイソシアネートなどの公知の硬化剤を添加することができる。その配合割合は特に限定されず、適宜設計することができるが、固形分量でカルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂が50%未満にならないことが好ましい。
使用する水は、セメント等の硬化に悪影響を及ぼす成分を含有していなければ、水道水や地下水、河川水等の水を用いることができ、例えば、「JIS A 5308 付属書9 レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水」に適合するものが好ましい。
なお、実施例における各種の評価は、次のようにして測定した。
JIS−L−1015に準拠して測定した。
ASTM D885に準拠して測定した。
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)、骨材(5号珪砂)水道水、ポリアクリル酸エステル系ポリマーディスパージョン(ライオン株式会社製、タフエース)、及び集束剤で集束された繊維を、モルタルミキサー(株マルイ製、MIC−362型、容量:5L)を用いて140rpmの撹拌速度で約3分間混練し、ポリマーセメントモルタルを得た。次いで、得られたポリマーセメントモルタルを少量すくい取り、水洗して抜き取った集束剤で集束された繊維を目視で観察して、このときの繊維が集束剤で覆われており、単糸のバラケがないときは集束性良好とし、繊維の端部や中央部で集束剤が脱落してばらけていたり、単糸間にセメントが付着していれば、集束性不良と判断した。
直径:集束された繊維の切断断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、切断面の外周線に囲まれた面積(断面内に空隙がある場合にはその外周線に囲まれる面積)を測定し、その断面形状を円形と仮定してその直径を算出する。20ケ測定し平均値を用いた。
長さ:走査型電子顕微鏡で撮影し長さを測定した。
次いで、水平に配置した50cm角のアルミ板にスランプコーン(高さ15cm、下面内径10cm、上面内径5cmの内側がくり貫かれた円錐柱)に(3)で得られたポリマーセメントモルタルを摺り切りで注ぎ入れ、スランプコーンをゆっくり垂直に引き上げる。このときポリマーセメントモルタルはアルミ板上に円形に広がるが、このときの広がった円形の直径、または円形が歪んでいる場合は最短径と最長径の相加平均をフロー値する。このフロー値が200mm以上であれば、ポリマーセメントモルタルは流動性が高く、施工性が良好とし、200mm未満であれば流動性が低く、施工性が不良と判断する。ただし、最長径は最短径の1〜2倍の範囲内とし、2倍を超えると測定不能、施工性は不良と判断する。
幅40mm×高さ40mm×長さ160mmの型枠に、得られたポリマーセメントモルタルを打設し、20℃、90%RHで材齢28日まで養生して、供試体を製造した。上記供試体を、「JIS−R−5201」に準じて3点曲げ測定した。すなわち、10トン用引張圧縮試験機(TOYO BALDWIN社製、UNIVERSAL TESTING INSTRUMENT MODEL UTM 10t)を用い、支点間距離10cmの中心を2mm/分の速度で圧縮し、応力の最高点より曲げ強度を求めた。また、曲げ応力−歪みの関係から供試体の破壊に必要な破壊エネルギーを算出し、曲げ強度12N/mm2以上で且つ破壊エネルギー10kN/mm以上を良好とし、曲げ強度12N/mm2または破壊エネルギー10kN/mm以下を不良とした。
補強用材料となる繊維として、アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製「テクノーラ」、密度1.39g/cm3、単糸繊度1.7dtex、引張強力3410MPa、引張弾性率74GPa、破断伸度4.5%、267フィラメント)を用い、公知の撚糸機を用いて該繊維に撚り係数が1となるように撚りをかけ、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂(DIC株製 ディックファインEN)を含む固形分重量20%の集束剤溶液中に浸漬した後、温度200℃で乾燥させ、繊維に対する樹脂付着重量が10%、集束繊維の直径が0.25mmとなるように剤処理し、該集束繊維を15mmに切断し補強用材料とした。
表1に示す繊維配合割合となるようにポリマーセメントモルタル成形体を調整し、補強材繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、ポリマーセメント組成物の配合割合、繊維の容積混入率、繊維種類、密度、単糸繊度、繊維の撚り係数、集束剤の付着量、集束された繊維の直径(補強材直径)、および長さ(補強材長さ)を表1及び表2に示す通り変更してポリマーセメントモルタルを調整し、補強材繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、集束剤で集束された繊維を、アラミド繊維(帝人アラミド株式会社製「トワロン」)に変更する以外は同様にして、ポリマーセメントモルタルを調整し、繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
表2に示すように繊維を配合しないでポリマーセメントモルタル成形体を調整し、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、繊維を集束剤で集束させないで、表2に示すようにポリマーセメントモルタル成形体を調整し、繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、繊維を集束させるための集束剤をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株製 JER)に変更して、表2のように集束された繊維を作製し、ポリマーセメントモルタル成形体を調整し、繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、繊維を集束させるための集束剤をウレタン変性エポキシ樹脂(アデカ株製 アデカレジンEPU)に変更して、表2のように補強用繊維を作製し、ポリマーセメントモルタル成形体を調整し、繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、繊維を集束させるための集束剤をメラミン樹脂(DIC株製 ベッカミン)に変更して、表2のように補強用繊維を作製し、ポリマーセメントモルタル成形体を調整し、補強材繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
実施例1において、繊維を集束させるための集束剤をPVA樹脂(日本合成化学株製 エコマティ)に変更して、表2のように補強用繊維を作製し、ポリマーセメントモルタル成形体を調整し、補強材繊維の集束性、ポリマーセメントモルタルの流動性、ポリマーセメントモルタル成形物の曲げ強度、および曲げ破壊エネルギーを評価し、結果を表3に示す。
Claims (3)
- セメント、水、骨材、ポリマー、およびカルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂を含む集束剤によって集束された繊維を含有してなるポリマーセメント組成物であって、下記要件を満足することを特徴とするポリマーセメント組成物。
a)セメント100質量部に対し、ポリマー1〜20質量部配合されていること。
b)集束された繊維を構成する繊維の単糸の繊度が0.5〜100dtexであること。
c)集束された繊維の撚り係数が0より大きく3以下の範囲内で撚り掛けされていること。
d)集束された繊維の直径が0.05〜1.0mm、かつ長さが1〜50mmであること。
e)集束剤に含まれるカルボキシル基を含有するアクリル変性エポキシ樹脂の付着量が集束された繊維全重量に対して、固形分比で3〜30重量%付与されていること。 - 集束された繊維を構成する繊維の引張強度が2500MPa以上、引張弾性率が50GPa以上、破断伸度が3〜8%範囲内、かつ繊維の密度が1.0g/cm3以上である請求項1記載のポリマーセメント組成物。
- 集束された繊維を構成する繊維がポリパラフェニレン・テレフタラアミド繊維、またはコポリパラフェニレン・3.4’オキシジフェニレン・テレフタラアミド繊維である請求項1〜2いずれかに記載のポリマーセメント組成物。
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