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JP5896612B2 - 細胞足場材 - Google Patents

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Description

本発明は細胞足場材に関する。より詳しくは、本発明は特定の不織布を含む細胞足場材に関する。
近年、再生医療に関する様々な研究が行われている。細胞を増殖することにより、身体組織を再生させる研究も、再生医療研究の一分野として、研究が活発に行われている。細胞を増殖し、身体組織を再生させ、医療に応用するためには、効率よく細胞を増殖させ、所望の形状及び/又は機能を有する組織を製造することが求められる。このような所望の組織を製造するため、細胞が増殖する際に足場となる材料(細胞足場材)が用いられることが多い。例えば、皮膚の再生においては、特に生体適合性材料を細胞足場材として用い、損傷した皮膚の代わりに細胞を増殖させて製造した皮膚を移植するといった医療が行われている。
このような細胞足場材としては、例えば、特許文献1において、約1.2〜4.0μmの平均直径を有するグリコリド含有繊維を含む足場が記載されている。
WO2007/132186
本発明は、従来品に比べ、さらに効率のよい細胞増殖を可能とする、細胞足場材を提供することを目的とする。
本発明者らは、驚くべき事に、不織布を含む細胞足場材であって、該不織布の平均ポアサイズが約6〜50μmであり、該不織布を構成する繊維が生体適合性繊維であり、該繊維の平均繊維径が約0.1〜3μmである、細胞足場材であれば、非常に効率よく細胞を増殖させることが可能であることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の細胞足場材及び骨再生用材料を包含する。
項1.
不織布を含む細胞足場材であって、
該不織布の平均ポアサイズが6〜50μmであり、
該不織布を構成する繊維が生体適合性繊維であり、
該繊維の平均繊維径が0.1〜3μmである、
細胞足場材。
項2.
生体適合性繊維が、生体適合性ポリマーを含んでなる繊維である、項1に記載の細胞足場材。
項3.
生体適合性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、キチン、コラーゲン、ポリリジン、ポリアルギニン、ヒアルロン酸、セリシン、セルロース、デキストラン、及びプルランからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載の細胞足場材。
項4.
生体適合性繊維がポリ乳酸からなる繊維である、項1〜3のいずれかに記載の細胞足場材。
項5.
骨芽細胞増殖用である、項1〜4のいずれかに記載の細胞足場材。
項6.
項1〜5のいずれかに記載の細胞足場材を含む骨再生用材料。
本発明の細胞足場材は、非常に細胞(特に骨芽細胞)の増殖効率が高い(細胞増殖能が高い)ため、組織再生のために好ましく用いることができる。特に、骨再生用材料として好適に用いることができる。具体的には、外的要因(例えば事故)により骨が損傷した場合や、内的要因(例えば骨粗鬆症、歯周病)により骨が少なく又は無くなった場合に、本発明の不織布を含む細胞足場材を適用することで、(具体的には、患部に埋めたり貼付したり等することで)早期の骨の再生を達成することができる。また、人工皮膚や人工骨等の人工組織製造の際に足場として用いることもできる。
エレクトロスピニング法による不織布の製造方法の簡単な概要を示す。 各不織布を用いた際の細胞増殖性評価(DNA量比較)の結果を示す。具体的には、培養5時間後、3日目、8日目での評価サンプル中に存在する細胞を溶解させ、得られたDNA量を蛍光強度で比較した結果を示す。(n=3) 各不織布を通過した細胞(シャーレ底面の細胞)の数を、細胞溶解液中のDNA量を蛍光強度で比較した結果を示す。(n=2) 不織布Aを用いて細胞を培養した後、ギムザ染色を行った結果を示す。 不織布Bを用いて細胞を培養した後、ギムザ染色を行った結果を示す。 不織布Cを用いて細胞を培養した後、ギムザ染色を行った結果を示す。 不織布Dを用いて細胞を培養した後、ギムザ染色を行った結果を示す。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。なお、「質量」は「重量」と読み替えてもよい。
本発明は、不織布を含む細胞足場材に係る。該不織布の平均ポアサイズは約6〜50μmであり、該不織布を構成する繊維は生体適合性繊維であり、該繊維の平均繊維径は約0.1〜3μmである。
本発明の細胞足場材は、種々の細胞を増殖させるために用いることができる。本発明の効果が発揮される限度において、細胞の種類は特に制限されないが、動物(特に哺乳動物)由来の細胞が好ましく、また、結合組織由来の細胞が好ましい。具体的には、骨芽細胞、繊維芽細胞、幹細胞等が例示され、より具体的には、骨芽細胞、歯根膜繊維芽細胞、歯肉繊維芽細胞、セメント芽細胞、間葉系幹細胞等が例示される。
該不織布を構成する繊維は、生体適合性繊維である。生体適合性繊維とは、生体適合性ポリマーを含んでなる繊維をいう。生体適合性ポリマーの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100%であることが(即ち、生体適合性ポリマーからなる生体適合性繊維が)さらに好ましい。
生体適合性ポリマーとは、生体に接着させた場合又は埋め込んだ場合に、異物反応が無い若しくは小さい(長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も与えず、本来の機能を果たしながら生体と平和共存できる)ポリマーをいう。生体吸収性ポリマーや生体分解性ポリマーが例示できる。
より具体的には、生体適合性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチルイソシアネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルノルマルプロピルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N−ビニルカルバゾル)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルメチルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシクロペンテンオキシド、ポリスチレンサルホン、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(超高分子量ポリエチレン含む)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンジフルオライド)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン並びにこれらの共重合体等の合成ポリマー、再生セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース、フィブロイン、天然ゴム等の生体高分子とその誘導体が例示される。また、キチン、ゼラチン、コラーゲン、ポリアミノ酸(ポリリジン、ポリアルギニン)、ヒアルロン酸、セリシン、デキストラン、プルラン等も例示される。
これらのうち、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート及びポリシアノアクリレート、並びにこれらの共重合体などの脂肪族ポリエステル、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートを好ましい例として挙げることができ、更に好ましくはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンが挙げられる。なかでもポリ乳酸が特に好ましい。生体適合性ポリマーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリマーや化合物を併用(例えばポリマー共重合体、ポリマーブレンド、リン脂質、その他化合物等、及びこれらの混合物)してもよい。
該不織布を構成する繊維の平均繊維径は、約0.1〜3μmであり、好ましくは約0.3〜2.9μm、より好ましくは約0.5〜2.8μm、さらに好ましくは約1〜2.5μmである。なお、ここでの繊維径は繊維の直径をいう。また、当該平均繊維径は、該不織布の電子顕微鏡撮影映像から各繊維の直径を測定し、ランダムに選択した50本の繊維径から算出した平均値をいう。
また、該不織布の平均ポアサイズ(細孔径)は、約6〜50μmであり、好ましくは約6.5〜40μmであり、より好ましくは約7〜30μmであり、さらに好ましくは約7〜20μmであり、よりさらに好ましくは約7.5〜10μmである。なお、ここでの不織布の平均ポアサイズは、プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ素(商品名「Galwick」)を用いたハーフドライ法(ASTM E1294−89)により測定して求められる値をいう。当該測定にはcapillary flow porometer(Porous Materials Inc、CFP-1200-AEL)を用いることができる。
該不織布の空隙率は、約94〜97%であることが好ましい。当該空隙率は、次の式により求めることができる。なお、原料として用いる生体適合性ポリマーの密度は、気体置換法(JIS R1620;アルゴンガスを用いた測定方法)により求めた値を用いる。
空隙率(%)=〔1−{見かけ密度(g/cm)/原料の密度(g/cm)}〕×100
ここで、見かけ密度(g/cm)は、次の式により求めた値である。
見かけ密度(g/cm)={サンプル重量(g)/サンプル体積(cm)}
サンプルとは、該不織布の一部である。具体的には、該不織布を長方形に切断(約4cm程度)したものである。なお、該サンプルの重量がサンプル重量であり、該サンプルの縦、横、及び厚みを測定し、縦、横、厚みの長さを乗じて求めた体積がサンプル体積である。該サンプルの厚みは、切断面を撮影した電子顕微鏡画像から測定した値である。電子顕微鏡として、例えば株式会社日立ハイテクノロジー、S−3200N,S−3000Nを用い得る。また、原料の密度とは、不織布の原料の密度をいう。例えば、不織布を構成する繊維が、ポリ乳酸からなる繊維である場合は、ポリ乳酸の密度をいう。
本発明の細胞足場材に含まれる不織布は、エレクトロスピニング法により製造することができる。エレクトロスピニング法は、不織布を製造する手法の一つとして周知の方法である。具体的には、ポリマー(及び、必要に応じて分散補助剤)を揮発性溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、又はこれらの混合溶液等)に溶解した溶液を、電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極(アース電極)に向けて曵糸することにより、繊維状物質を製造する方法である。エレクトロスピニング法のごく簡単な概要を図1に示す。なお、図1は例示である。公知のエレクトロスピニング法であり、本発明の不織布を製造できる方法であれば、本発明に用いることができる。図1を簡単に説明する。高電圧を、シリンジ(先端にノズル装着)中のポリマー溶解溶液に付加すると、ポリマー溶液のドロップが鋭い円錐となる。そして、さらに電圧が増すと、溶液はアース電極(例えば銅、アルミ等)に向かって飛ぶ(噴霧される)ことになり、アース電極上で薄い繊維の膜(即ち不織布)を形成する。つまり、図1では、アース電極がコレクターを兼ねる。
本発明において、エレクトロスピニング法に使用する生体適合性ポリマー溶解溶液中の生体適合性ポリマーの濃度は、適宜設定できるが、通常1〜30質量%程度、好ましくは2〜25質量%程度、より好ましくは3〜20質量%程度である。
また、電極間の距離(図1ではシリンジとアース電極間の距離)は、帯電量、ノズル寸法、紡糸液流量、紡糸液濃度等に依存しており、適宜設定することができるが、例えば印加電圧が10kV程度のときには5〜50cm程度が好ましく、10〜30cm程度がより好ましい。また、印加される静電気電位は、通常3〜100kV程度、好ましくは5〜50kV程度、さらに好ましくは5〜30kV程度である。
本発明の不織布を含む細胞足場材は、上述した特定の平均ポアサイズ、並びに特定の繊維及び平均繊維径を有する不織布を含むことにより、非常に良好な細胞増殖効率を達成することができる。
本発明の細胞足場材は、特に、骨再生用材料として用いるのに適している。よって、本発明は、上記の細胞足場材を含む骨再生材料も包含する。外的要因(例えば事故)により骨が損傷した場合や、内的要因(例えば骨粗鬆症、歯周病)により骨が少なく又は無くなった場合に、本発明の細胞足場材を適用することで、(具体的には、患部に埋めたり貼付したりすることで)骨の早期再生を達成することができる。
制限はされないが、本発明の細胞足場材は、特にインプラント治療における歯槽骨の再生のために好ましく用いることができる。例えばGBR法(骨再生誘導法:guided bone regeneration)において、歯槽骨が不足している部分(患部)に詰めて骨再生を促進させるために用いることができるし、GBR膜の代わりに用いることもできる。
またさらに、本発明の細胞足場材は、骨再生用材料として用い得ることから、例えば以下に記載する治療、術式又は用途に用いることができる。
<歯周組織再生、口腔外科領域>
骨縁下欠損、クラスII根分岐部病変、退縮型欠損、裂開型欠損における組織再生誘導法;顎堤の骨造成術、歯槽提増大術、インプラント周囲の骨造成術における骨再生誘導法;顎堤形成術;上顎洞底挙上術におけるサイナスリフト法;抜歯窩の保存におけるソケットプリザベーション法;鼻腔底挙上術;骨延長手術、骨壊死部分の掻爬後の骨充填、骨組織のがん病巣掻爬後の骨充填、外傷による骨折の治療のための骨充填における骨再建術;ブリッジ下の歯肉増大、歯肉退縮への根面被服、歯間乳頭再建、その他歯肉増大など審美目的での施術、等
<整形外科領域>
骨延長手術;骨壊死部分の掻爬後、骨組織のがん病巣掻爬後、外傷による骨折の治療、脊椎圧迫骨折、偽関節治療における骨再建術;骨延長手術:骨粗鬆症の治療における薬効成分のキャリアー材としての使用、等
<皮膚再生用途>
やけど、挫傷、褥瘡、切り傷等の治療、人工皮膚の製造など
<口腔粘膜再生用途>
口腔炎、口腔内の傷、白板症等の治療など
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、実験に際して当該技術分野の教科書等(例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (3 Vol. Set) ;Cold Spring Harbor Laboratory Press)を適宜参照してもよい。
不織布の製造
ポリ乳酸(フナコシ、Poly (L−Lactic Acid) 重量平均分子量300,000)を、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP):ジクロロメタン(DM)=8:2の混合溶液に溶解し、表1に示す各ポリ乳酸溶液を10gずつ調製した。調製したポリ乳酸溶液をシリンジ(Henke SASS WOLF、5mL)に充填し、針(テルモ、ノンベベル針21G1.1/2)をシリンジに装着して、エレクトロスピニング装置にセットした。シリンジからターゲットとなるアースとの距離を10cmとし、印加電圧10kVにて、アースに向けポリ乳酸を噴霧し(噴霧量0.6μL/sec、噴霧時間3時間)、各不織布を作成した。表1の通り、ポリ乳酸溶液濃度を変えて各不織布(不織布A〜D)を作成した。
Figure 0005896612
不織布の物性評価
以下の手順により、上記4種の不織布(不織布A〜D)の厚み、見かけ密度、空隙率(%)、ポアサイズ及び各不織布を構成する繊維の繊維径を測定した。
<厚み、見かけ密度、空隙率>
各不織布をそれぞれ長方形に切断(約4cm程度)し、測定サンプルとした。当該測定サンプルの重量を測定した。さらに当該測定サンプルの縦及び横の長さをノギスで測定した。また、当該測定サンプルの厚みを、当該サンプルの切断面の電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジー、S−3200N,S−3000N)画像から求めた。そして、縦、横、厚みの長さを乗じて体積(cm)を求めた。なお、厚みは、20箇所の測定値の平均値を用いた。
サンプル重量と体積から、かさ密度を次の式により求めた。
見かけ密度(g/cm)=サンプル重量(g)/サンプル体積(cm
さらに、求めた見かけ密度値から、次の式により空隙率を求めた。なお、次式の“原料密度”は、用いたポリ乳酸の密度(JIS R1620で測定)であり、具体的には1.26g/cmである。
空隙率(%)={1−(見かけ密度/原料密度)}×100
<平均ポアサイズ>
各不織布を直径2.5cmにカットし、プロピレン,1,1,2,3,3,3酸化ヘキサフッ素(商品名「Galwick」)に浸した。そして、ポアサイズをcapillary flow porometer(Porous Materials Inc、CFP-1200-AEL)を用いてハーフドライ法(ASTM E1294−89)により測定した。
<平均繊維径>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジー、S−3400N)を用いて各不織布断面を撮影し、500倍の電顕撮影映像からImage J(ver.1.43u)(NIH開発の画像処理ソフトフェア)により繊維径を測定した。繊維50本の繊維径の平均値を、各不織布の平均繊維径とした。
以上の物性評価の結果を表2に示す。
Figure 0005896612
不織布の細胞増殖性評価
<細胞培養>
各評価サンプル(上記不織布A〜D)を、48穴シャーレ(住友ベークライト(株)、SUMILON、MS−80480)の底面と同じ大きさにカットし、48穴シャーレの底に設置した。評価サンプルをペニシリンカップ(ステンレス管)で押さえ、10%FBS/MEM培地(抗生物質とグルタミン酸を加えた10%FBS/MEM培地、以下10%FBS/MEM培地)を500μL加え湿らせた。プレート遠心機にて5min遠心した(2500rpm、室温)。減圧脱気し、5min遠心(2500rpm、室温)した。さらに200μLの10%FBS/MEM培地を加え、37℃、5%COインキュベーター内で、1hr以上インキュベートした。培地を500μL吸い取り廃棄した。事前に培養したMG−63(由来:ヒト骨肉腫、ヒューマンサイエンス研究資源バンク、Lot.05262004)を1.6×10cells/mLとなるように10%FBS/MEM培地に懸濁し、100μLずつ各wellに播種した(1.6×10cells/well)。5時間放置した後、200μLの10%FBS/MEM培地を加え、培養を開始した。培養5時間後、3日後、8日後のサンプルを細胞増殖性評価に使用した。細胞浸潤性評価には、5時間後のサンプルを取り出したシャーレを用いた。
<細胞増殖性評価>
既定の日数培養した細胞が付着した各評価サンプルを取り出し、それぞれPBS(リン酸緩衝生理食塩水)の入ったシャーレに加えた。PBSを含んだ状態の重量を測定し、乾燥重量とPBSを含んだ状態の評価サンプル重量から吸水量(PBSを含んだ状態の評価サンプル重量から、評価サンプルの実験に供される前の乾燥重量(シャーレ底面と同じ大きさにカットした時点で測定)を減じた量)を求めた。
サンプルの吸水量とTE緩衝液(Tris/Tris-HCl 10 mM、 EDTA 1mM)を合わせた溶液量が700μLとなるようにTE緩衝液を各シャーレに加えた。2回凍結融解(−80℃で凍結させ、室温で融解させる操作を2回繰り返した)を行い、その後超音波処理を30分行って、細胞を破砕した。TE緩衝液中にDNAを溶出させた100μLの細胞溶解液(凍結融解及び超音波処理を行って得た細胞破砕液)を96穴蛍光測定用プレート(Nunc black microwell、cat.137101)に加え測定サンプルとした。
ピコグリーン(インビトロジェン)をTE緩衝液で希釈(100μLを20mLに希釈)し、測定サンプルに100μL加え、5分間、室温でインキュベートした。蛍光プレートリーダー(Molecular devices spectra Max gemin XPS)を用い、励起光480nm・測定波長520nmで、蛍光強度を測定した。ピコグリーンは、2本鎖DNA特異的染色剤であるため、得られた蛍光強度はDNA量(ひいては細胞数)を反映する。そして、DNA量は細胞増殖量を反映する。従って、得られた蛍光強度は、細胞増殖量を反映する。結果を図2に示す。
<細胞浸潤性(通過性)評価>
細胞の浸潤性の評価として、培養5時間後の不織布を取り出した後のシャーレに付着する細胞数をDNAの蛍光強度として定量した。具体的には、次のようにして行った。すなわち、不織布を取り出した後のシャーレを500μLのPBSにて洗浄した。50μLの0.25%EDTA−トリプシン液(0.25%トリプシン、1mM EDTA)を加え、細胞をシャーレより剥がした。得られた細胞にPBS150μLとTE緩衝液を500μLとを加え細胞回収液とした。2回凍結融解(−80℃で凍結させ、室温で融解させる操作を2回繰り返した)を行い、その後超音波処理を30分行って、細胞を破砕した。TE緩衝液中にDNAを溶出させた100μLの細胞溶解液(凍結融解及び超音波処理を行って得た細胞破砕液)を96穴蛍光測定用プレート(Nunc black microwell、cat.137101)に加え、5分間室温でインキュベートして測定サンプルとした。
ピコグリーン(インビトロジェン)をTE緩衝液で希釈(100μLを20mLに希釈)し、測定サンプルに100μL加え、5分間、室温でインキュベートした。蛍光プレートリーダー(Molecular devices spectra Max gemin XPS)を用い、励起光480nm・測定波長520nmで、蛍光強度を測定した。結果を図3に示す。
また、さらに、以下のようにしてギムザ染色を行うことによっても、細胞の浸潤性を検討した。
各評価サンプル(不織布A〜D)を48穴シャーレ(住友ベークライト(株)、SUMILON、MS−80480)の底面と同じ大きさにカットし、48穴シャーレの底に置いた。評価サンプルの上にペニシリンカップ(ステンレス管)を置き、10%FBS/Osteoblast Medium(抗生物質とアスコルビン酸を加えた10%FBS/Osteoblast Medium、以下10%FBS/Osteoblast Medium)を600μL加えた。プレート遠心機にて5min遠心した(2500rpm、室温)。減圧脱気し、さらに5min遠心(2500rpm、室温)した。37℃、5%COインキュベーター内で、1hr以上インキュベートした。培地を200μL吸い取り廃棄した。事前に培養した正常ヒト骨芽細胞(LONZA社、Lot.6F4360)を1.1×10cells/mLとなるように10%FBS/Osteoblast Mediumに懸濁し、150μLずつ各wellに播種した(1.65×10cells/well)。播種翌日のサンプルに対し、ギムザ染色を行った。
ギムザ染色は、具体的には次のように行った。培養後、培養上清を捨て、600μLのPBSにて洗浄した(2回)。10%中性ホルムアミド600mLを用いた30分固定した。固定したサンプルをPBSで洗浄した(3回)。4%ギムザ染色液/PBS(pH6.4)を600μL加え、30分間染色した。ギムザ液を廃棄し、蒸留水800μLで洗浄した(3回)。サンプルを乾燥しデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−500F)にて観察した。結果を図4に示す。
以上の結果から、細胞の湿潤性は平均ポアサイズが大きい程向上することがわかった(図3及び図4)。しかし、細胞の増殖性については、ポアサイズが大きいほど良好な訳ではなく、平均ポアサイズが6〜50μm程度、平均繊維径が0.1〜3μm程度の特定の不織布が好ましいことがわかった(図2)。

Claims (3)

  1. 不織布を含む細胞足場材であって、
    該不織布の平均ポアサイズが7.5〜10μmであり、
    該不織布を構成する繊維がポリ乳酸及び/又はポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体からなる繊維であり、
    該繊維の平均繊維径が1〜3μmである、
    細胞足場材。
  2. 骨芽細胞増殖用である、請求項に記載の細胞足場材。
  3. 請求項1又は2に記載の細胞足場材を含む骨再生用材料。
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