JP5892583B2 - 抗菌用銀イオン生成液、その液から生成された銀イオン抗菌液及びその抗菌液を生成する生成方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、細菌や、かびに対して抗菌効果が長期間持続する抗菌剤として、亜鉛、銀、銅などの重金属のイオンを含むゼオライト系抗菌剤が一般的に使用されているが、重金属イオンの種類としては、銀イオンが、安全性の点で特に優れていることから、近年広く使用されているが、銀イオンは、処理直後の殺菌力および消臭力に関しては、塩素系殺菌剤などの酸化剤に比べると不十分であることが示されている。その問題を解決するために、ゼオライト系抗菌剤に代えて銀クロロ錯塩と酸化剤を含む抗菌剤が提案されている。殺菌の即効性を有する酸化剤と徐効性のある銀クロロ錯塩とを組み合わせることにより、広い種類の細菌やかび類に対して殺菌の即効性および徐効性を有し、瞬間消臭を発揮できることが開示されている(特許文献1参照)。
上記非特許文献1及び特許文献1が指摘するように、銀を担持するゼオライトである銀ゼオライトは、抗菌剤として安全性に優れていることから一般的に広く使用されているが、その銀イオンの殺菌作用に即効性のないことが今日まで解決できない問題として残されている。
例えば、イオン交換可能なイオンの一部又は全部をアンモニウムイオン及び銀の金属イオンで置換した抗菌性ゼオライトと、シリコーンを含有した防臭化粧料が提案されており、該防臭化粧料の抗菌性ゼオライト((株)シナネンゼオミック製 ゼオミックAJ10N、平均粒径約2.5μm)(銀ゼオライトの銀担持量;2.2重量%)をエアゾールタイプとして用いることが記載されている(特許文献2参照)。
これらの提案された発明の銀ゼオライトは、塗布してから長時間経った後に抗菌作用を発揮して持続するが、塗布後の短時間に抗菌作用を発揮しないために殺菌の即効性に劣っている。
それに対して、非特許文献3及び4は、硝酸銀ではあるが、銀イオン濃度が高ければこの銀イオンは、細菌の細胞壁を損傷させ即死状態で短時間に殺菌できることが報告されており、この銀イオンが所定の銀イオン濃度であれば細菌を即死状態で短時間に殺菌できることを示唆している。
しかしながら、銀イオンは、感光性があり普通の塩の状態ではすぐに還元されて黒い銀の単体粒子が析出してしまうか、他成分と化合して安定な状態の化合物を形成して沈殿し、銀イオンの状態で長期に保存できないことが良く知られている。
以上述べたように、製品の安全性の確保は、製造、販売会社が最重要視すべき事項であるから、抗菌剤として安全性で優れている銀ゼオライトを用いて、長期間にわたる製品の品質保証と抗菌作用の即効性という両立の難しい問題を解決して、銀ゼオライトを用いた品質保証と殺菌の即効性を兼ね備えた銀イオンを生成できる抗菌用銀イオン生成液、そして、その生成液から生成された銀イオン抗菌液の製品化が希求されている。
請求項1に係る発明の2剤型抗菌用銀イオン生成液は、分離状態にある第1液と第2液からなる細菌を抗菌するために使用時に混合する2剤型抗菌用銀イオン生成液であって、前記第1液が分散助剤を含む水溶液にA型又はX型銀ゼオライトを分散した分散液であり、前記第2液がクエン酸、リンゴ酸又は酒石酸のカルボン酸を含有した水溶液であり、上記銀ゼオライトに対して上記クエン酸の配合比率が1.2以上であり、上記リンゴ酸の配合比率が1.4以上であり、上記酒石酸の配合比率が1.6以上であり、上記銀ゼオライトと上記カルボン酸が同量の水溶液中に含有されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明の2剤型抗菌用銀イオン生成液は、前記分散液中における前記銀ゼオライトの配合量が0.1〜5.0重量%の範囲にあることを特徴とする。
請求項3に係る発明の2剤型抗菌用銀イオン生成液は、前記銀ゼオライトの銀担持量が0.16〜5.0重量%の範囲にあることを特徴とする。
請求項4に係る発明の2剤型抗菌用銀イオン生成液は、前記分散助剤が親水性高分子又はジェル状剤であることを特徴とする。
請求項5に係る発明の2剤型抗菌用銀イオン生成液は、前記第1液及び第2液の使用形態が液状、ジェル状又はフォーム状であることを特徴とする。
また、本発明の抗菌用銀イオン生成液は、銀イオンを生成するのに、第1液の銀ゼオライトの配合量を0.1〜5.0重量%の範囲から決定すれば、カルボン酸の配合量を容易に決めることができる。
本発明の銀イオン抗菌液は、第2液のカルボン酸が第1液の銀ゼオライトの結晶構造を崩壊する量を含有することで、銀ゼオライトの結晶構造の銀イオンを溶解させて、ppm単位の濃度の銀イオンを溶出できるので、その銀イオンは、従来の銀ゼオライトのイオン交換作用では不可能であった、細菌を短時間に殺菌する即効性を発揮する。
また、本発明の銀イオン抗菌液は、銀ゼオライトの銀担持量とその配合量の両者を任意に選定することで、その銀イオン濃度を0.8〜110.0ppmの範囲で任意に増減することができるので、使用する用途に応じて細菌の殺菌時間を任意に決めることができる。
更に、本発明の抗菌用銀イオン生成液及び銀イオン抗菌液は、液状、ジェル状又はフォーム状の形態で、使用する用途に応じて選択できるので、利便性に優れている。
本発明の銀イオン抗菌液の生成方法によれば、第1液の銀ゼオライトを含む水溶液に対して各カルボン酸毎の配合比率の量を配合した第2液と、第1液の分散液を混合すれば銀イオンが溶出できるので、銀イオン抗菌液の生成が簡便に、低コストで生成することができる。
人間の皮膚表面(角質層表面)のpHは4.5〜6.5の弱酸性であり、それは皮脂腺から出た皮脂が皮膚上の常在菌の酵素リパーゼで分解され、脂肪酸が発生するので皮膚表面は弱酸性である(男性のpHは4.5〜6.0、女性のpHは5.0〜6.5)。体臭の臭気であれば、皮膚のアポクリン汗腺から分泌された汗や脂腺から分泌された脂質が、皮膚常在菌の酵素リパーゼにより分解されて腋臭などの臭気を発生するので、例えば銀ゼオライトを含有する上記エアゾールタイプの防臭化粧料を臭気の発生する部位に噴射すれば、細菌は数時間経って殺菌され臭気が消臭される。
そして、上記防臭化粧料中の銀ゼオライトは、平均粒径2.5μmで0.1重量%を含有しており(銀ゼオライトの単価は高く、この配合量が一般的である)、そして、銀ゼオライトの銀担持量は2.2重量%のものが使われている。このように、上記防臭化粧料の殺菌のメカニズムは、銀ゼオライトとナトリウムイオンの接触、銀イオンとナトリウムイオンのイオン交換、イオン交換された銀イオンの代謝阻害殺菌作用を経て殺菌が行われるために、噴霧してから短時間に殺菌して消臭することはできない。
このように、従来の防臭化粧料は、殺菌の徐効性に優れているが、殺菌の即効性には難点がある。
本発明に用いる銀ゼオライトは、A型又はX型銀ゼオライトである(以下、これらの銀ゼオライトを単に「銀ゼオライト」という。)。X型銀ゼオライトは高価なのでA型銀ゼオライトを用いることが好ましい。このA型又はX型銀ゼオライトは酸により溶解されるので、本発明がこの両ゼオライトを用いる理由である。Y型銀ゼオライトやモルデナイト型銀ゼオライトは酸に溶解しないので使用できない。
次に、2液を混合することで生成される生成物を説明する。
第1液の銀ゼオライト((αNa2 βAg2)O・Al2O3‐2SiO2nH2O(α+β=1 n=5:110℃乾燥品))と第2液のカルボン酸(化学式R−COOH)を撹拌し混合した混合液は、両者の化学式からみて、カルボン酸銀錯体、カルボン酸アルミニウム錯体、ナトリウムイオン(Na+)、シリカ水和物を含んでいる。
銀ゼオライトとカルボン酸の混合により、最初に、カルボン酸のプロトン(H+)が銀ゼオライトのSi-O-Al-O-Siの構造中のAl-O部分をアタックして切断し、その結果ゼオライト骨格を崩壊し、イオン交換吸着サイトが失われるので銀イオンが混合液中に溶出する。
その銀イオンはカルボン酸と反応して多くの銀イオンがカルボン酸銀錯体を生成し、同時にごく僅かな銀イオンを生成する。一方、アルミニウムはカルボン酸と反応してカルボン酸アルミニウム錯体を生成し、その他には、シリカ水和物及びナトリウムイオンを生成すると推測される。
上記カルボン酸錯体の一例であるクエン酸銀錯体の構造式を以下に示す。
yは1及び/又は2であり、yが3であると難溶性で水に溶けなくなる。銀イオンとクエン酸の反応で生成されるクエン酸銀錯体は、殆どがクエン酸1銀のものであるから、yが1でxが2の錯体である。
詳細には、第1液は、銀ゼオライトの一例としてA型銀ゼオライトを対象にして説明する。A型銀ゼオライトであるゼオミックAJ10N(銀担持量2.2重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%又は0.5重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。この分散液は白濁している。
第2液は、カルボン酸の一例としてクエン酸を対象にして説明する。第2液のクエン酸の配合量は、銀ゼオライトの配合量(重量%)に対して、配合比率が0.9〜1.7の配合量を含有する100gの水溶液を調製した。ここで使用するクエン酸は市販品のクエン酸1水和物である。
第1液と第2液を同量の100gずつ混合して200gの混合液とし、pHメーターによりその混合液のpHを測定した。銀ゼオライトの溶解性は目視により判定した。
なお、表1の混合液の透明状態の判断の右側に記載の数字は、混合液のpHの値を示している。
表1に示すNo.1〜12の値は、試料数をN=3としてその算術平均で求めた。
なお、以下の表に示す値は、表1に示す試料数と同様に試料数をN=3としてその算術平均で求めたものである。
表1に示すNo.1〜12のpHの値は、試料数をN=3としてその算術平均で求めた。また、以下の表に示す値は、表1に示す試料数と同様に試料数をN=3としてその算術平均で求めたものである。
リンゴ酸又は酒石酸の配合量は、銀ゼオライトに対して配合比率が1.4以上又は1.6以上であれば、第1液と第2液を混合した1分後に、上記リンゴ酸又は酒石酸が銀イオンを生成することを示した。リンゴ酸又は酒石酸もクエン酸と同様に上記第1液と第2液を混合した1分後に、銀ゼオライトが含有していた全ての銀イオンを溶出させることができることが判明した。
従って、リンゴ酸又は酒石酸は、クエン酸と同様に銀ゼオライトの1.4倍以上又は1.6倍以上の量を配合することで銀イオンを生成する。
続いて、第2の実験について説明する。
第2の実験は、銀担持量の異なる4種類の銀ゼオライトを用いて、そして、上記銀ゼオライトを完全に崩壊する配合量のカルボン酸を用いて、溶出する銀イオン濃度が、どの程度の濃度を示すのかを調べるために行った実験である。
第2の実験の第1液及び第2液は、第1の実験と同様に、銀ゼオライトの一例としてA型銀ゼオライトを、カルボン酸の一例としてクエン酸を対象にして説明する。
第1液と第2液の各100gを混合してから10分後に、その200gの混合液からゼオライトを分離するために濾過して、得られた液中の銀イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(ICP S−8100、島津製作所(株)製)により測定した。
そして、実験例のNo.20〜29は、銀イオン濃度が0.8〜250.0ppmの範囲の値を示しており、その濃度はppm単位である。それに対して、比較例のNo.36は、銀イオン濃度が400ppbの値を示している。
そして、表1に示すNo.3、4及びNo.9、10の混合液、そして、No.2、8の混合液を試験管に保存して窓側に置いて、両混合液の色の変化を観察した。No.2、8の混合液は3日間で茶色に変色したが、No.3、4及びNo.9、10の混合液は、1ヶ月経っても透明の状態であった。
上述したように、上記防臭化粧料と同じ条件の比較例のNo.36は、そのイオン交換銀イオンの殺菌のメカニズムが銀ゼオライトとナトリウムイオンの接触、銀イオンとナトリウムイオンのイオン交換、イオン交換された銀イオンの代謝阻害殺菌作用を経て殺菌を行うために、短時間に殺菌することはできない。それに対して、特許文献6には、該結晶構造中の全銀イオンが溶出してその銀イオンの濃度を高くできる可能性を示しており、また、非特許文献4及び5には、硝酸銀の銀イオン濃度が高ければ細菌を即死状態で短時間に殺菌できること(以下、この細菌を短時間に殺菌できる作用を「短時間殺菌作用」という。)が示唆されていると述べた。そこで、表2の比較例のNo.36の銀ゼオライトの配合量が0.1重量%で、400ppbの濃度を有するイオン交換銀イオンが殺菌に要する時間と、表2のNo.25〜27の銀ゼオライトの配合量が0.1重量%で、0.8、1.5及び10.9ppmの濃度を有する崩壊銀イオンが殺菌に要する時間を測定した。具体的な細菌として大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌の3種類を対象にして、以下に述べる抗菌性試験方法で生残菌数を測定して殺菌時間の計算を行い、その得られた殺菌時間に基づいて、イオン交換銀イオンが奏する代謝阻害殺菌作用と、崩壊銀イオンが奏する短時間殺菌作用による殺菌時間から、殺菌の即効性の検討を行った。
以下に銀イオン濃度と殺菌の即効性について詳説する。
JIS Z 2801(ISO 22196:2007)で定められている抗菌性試験方法では、無加工品の24時間培養後の菌数を抗菌加工品の24時間培養後の菌数で除した数の対数値を、抗菌活性値と呼び、2.0以上(99%以上の死滅率)で効果があると定義されている。換言すれば、生残菌数が105(CFU/ml)から103(CFU/ml)に減少することを意味している。
ところで、抗菌剤の抗菌力による培地中の生残菌数の時間変化と細菌の減少数は、次式で表すことができる。
dN/dt=−KN・・・・・(3)
ここで、Nは細菌数を、tは培養時間を、Kは死滅係数を表している。
(3)式からLogN=LogN0−(1/D)tを導くことが出来る。Dは1/Kを意味している。
上記抗菌試験を始める前に、崩壊銀イオンの濃度が1.5ppmの銀イオン抗菌液を用いて抗菌活性値の測定を試みたが、10分以内に全ての細菌が殺菌され測定することが不可能なことが分かった。この不可能な理由は、1/500NB濃度では栄養分が少ないこと、そして、上記銀イオン抗菌液の殺菌能力が従来の抗菌剤と比べて遥に強いためと推測される。
上記抗菌試験を始める前に、上記抗菌性試験方法で述べたように、1.5ppm濃度の銀イオン抗菌液を用いて抗菌活性値の測定を試みたが、1時間以内に全ての細菌が殺菌され測定することが不可能なことが分かった。従来の抗菌性試験方法は、主にイオン交換銀イオンのような抗菌剤の徐効性を測定するのに向いているが、細菌を短時間の内に殺菌する目的で生成された崩壊銀イオンは、従来の抗菌性試験方法では測定が困難なので、1/20NB培地で細菌を生育させ、初発菌数5.0×105((CFU/ml)Log値5.7)が培養時間の経過により減少する生残菌数を計測して、その計測値をグラフにプロットして得られた点に基づいて近似直線を描き、初発菌数(5.7)が抗菌活性値2(99%の菌数減少の意味)の値である3.7に要する時間(以下、「TD2」という)を求めて殺菌の即効性を示すことができるかを試みたところ、TD2の値により殺菌の即効性を示せることが分かった。上記TD2を計測する手順(以下、「TD2計測手順」という)は後に具体的に詳説する。
(実施例)
第1液は、実施例1−1として、ゼオミックAJ10N(銀担持量2.2重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。また、実施例1−2として、A型銀ゼオライトであるゼオミックAV10N(銀担持量0.3重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。そして、実施例1−3として、銀担持量0.16のA型銀ゼオライト0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。A型ゼオライト(東ソー(株)製)100gを純水500mlに少しずつ投入して懸濁液として、これに硝酸溶液(1/20N)を滴下してpH9〜10に調節して、この懸濁液に硝酸銀0.26gを純水100mlに溶解した液を滴下して、室温で8時間撹拌して反応させた後に懸濁液を濾過し、その濾過により得られたゼオライトケーキを純水で洗浄して110℃で15時間乾燥して銀担持量0.16重量%の銀ゼオライトを調製した。
第2液は、配合比率1.2の配合量のクエン酸を含有する100gの水溶液を調製した。
(比較例)
比較例1−1として、第1液は、ゼオミックAJ10N(銀担持量2.2重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。また、第2液は、生理食塩液(塩化ナトリウム0.9%)100gを調製した。 比較例1−2として、第1液は、ゼオミックAJ10N(銀担持量2.2重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。また、第2液は、水道水100gとした。
比較例1−3として、ゼオミックAV10N(銀担持量0.3重量%)((株)シナネンゼオミック製)0.1重量%を、キサンタンガム0.2重量%を含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。また、第2液は、水道水100gとした。
図1のグラフの横軸は培養時間を、縦軸は生残菌数を表し、表3−1のデータから3点をプロットして得られた点に基づいて近似直線を描いて、その近似直線の一次方程式を求め、その一次方程式がy = -0.57x + 5.9167である。グラフにプロットして得られたy軸の初期の生残菌数(5.7)が抗菌活性値2である値3.7を上記一次方程式のyに代入してxを求めると4(小数点以下を四捨五入)であった。この4がTD2の値を示している。図2のグラフも図1と同様にして得られたもので、一次方程式がy = -0.0679x + 5.6429であり、yに3.7を代入してxを求めると29(小数点以下を四捨五入)であった。
以上述べたことは、本発明の抗菌用銀イオン生成液から生成された銀イオン抗菌液の銀イオン濃度が、イオン交換作用で得られる銀イオン濃度の約4倍であれば殺菌時間TD2が1/8に、約30倍であれば1/20に短縮できることを示している。
TD2が60分付近の比較例1−1の銀イオン濃度は、400ppbであってx軸の値が減少しても増加する傾向がみられないのに対して、TD2が30分付近の実施例1−3の銀イオン濃度は、800ppbの付近からx軸の値が減少すると急激に増加する傾向がみられる。
一方、実施例1−3は、800ppbの濃度が細菌を約30分で殺菌でき、殺菌時間を上記イオン交換銀イオンのそれより短縮することができ、更に、銀ゼオライトの崩壊銀イオンは能動的な銀イオンであるから、銀ゼオライトの銀担持量とその配合量の両者を、例えば、表2のNo.20〜24の0.16、0.3、2.2又は5.0重量%の銀担持量、即ち銀担持量が0.16〜5.0重量%の範囲の量を任意に選定し、そして、0.1〜1.0重量%の範囲の銀ゼオライトの配合量を任意に選定することで、その銀イオン濃度を0.8〜250.0ppmの範囲で任意に増減することができ、その濃度の増減に伴って上記崩壊銀イオンの殺菌時間を任意に短縮させることができる。
その理由は、上記銀ゼオライトの配合量が0.1重量%未満であると、銀ゼオライトの分散量が少ないために、得たい配合量の濃度を一定にすることができなくなり、そして、その配合量が5.0重量%を超えると銀ゼオライトが凝集する虞があり、また、銀ゼオライトのキロ当たりの単価が高価なので増やすことは好ましくない。従って、銀ゼオライトの配合量は、0.1〜5.0重量%の範囲にあるものを選択することが好ましい。
しかしながら、市販されている銀ゼオライトの汎用品である、2.2重量%銀担持量のゼオライトは、量産化されて単価が安く、汎用品でない5.0重量%銀担持量のものは、単価が高いこと、そして、配合量に比例して経費が増加することを考慮すると、銀ゼオライトは、2.2重量%銀担持量を配合量が1.0重量%のものを用いて、銀イオン濃度が110.0ppmとして利用することが好ましい。
換言すれば、銀イオン濃度は、銀ゼオライトの配合量とその銀担持量を使用目的に応じて任意に調整することが容易にでき、そして、細菌の殺菌は、その調整により0秒〜30分の範囲以内の時間で行うことができる。
上述したように、銀イオン抗菌液は、従来の殺菌時間と比べて細菌を短時間の内に殺菌できることが明らかであるから、殺菌の即効性を有している。
ここで、本発明の崩壊銀イオンを従来のイオン交換銀イオンと対比して、崩壊銀イオンの優れた特徴点を以下に説明する。具体的な事例で説明することがその特徴点を理解し易くできるので、イオン交換銀イオンの事例として、上記比較例のNo.36を取り上げ、崩壊銀イオンの事例として、表2の実験No.21及び実施例1−2を取り上げて説明する。この両者は、銀担持量が2.2重量%の銀ゼオライトを0.1重量%配合して同じ条件を備えていることが、具体的な事例として取り上げる理由である。
そして、液中の銀ゼオライトが臭気発生の部位に付着して、汗のナトリウムイオンが銀ゼオライトに接触すると、その結晶構造中の銀イオンが汗のナトリウムイオンとイオン交換されて汗にイオン交換銀イオンが溶出されるもので、銀イオンとイオン交換するナトリウムイオンが存在することで溶出するものである。それ故に、イオン交換銀イオンは、例えば、ナトリウムイオンの存在により溶出するものなので受動的な銀イオンである。また、この比較例のNo.36の殺菌のメカニズムは、銀ゼオライトとナトリウムイオンの接触、銀イオンとナトリウムイオンのイオン交換、イオン交換された銀イオンの代謝阻害殺菌作用を経て殺菌が行われるために、噴霧してから銀イオンが溶出するまでの時間が長く、また、殺菌までの時間が長い。
(1)デオドラント(噴霧)
(処方)
本発明の第1液と第2液を液状のデオドラントとした実施例を示す。第1液と第2液は下記の処方により噴霧用の液状に調製した。市販の2連式容器で吐出口2個の吐出器の各容器に、第1液と第2液を封入して2液を同時に噴霧する。
第2液は、クエン酸0.12重量%、キサンタンガム0.1重量%、ヒアルロン酸0.5重量%、精製水99.28重量%を配合して調製した。
(効果)
本デオドラントの銀イオン濃度は11ppm 、黄色ブドウ球菌のTD2は5分。体臭の防止に便利であり、加齢臭の防止にも有効である。
養護老人ホームにおいて、加齢臭の明確な老人8名に腋の下と首筋に第1液及び第2液のデオドラントを混合し噴霧して塗布した。1時間後と6時間後に官能試験による判定の結果、いずれも8名全員に加齢具が感じられなかった。
(処方)
本発明の第1液と第2液を噴射用の液状とした抗菌液の実施例を示す。第1液と第2液は下記の処方により液状に調製した。2連式容器で吐出口1個の市販の噴射器の各容器に、第1液と第2液を封入して2液を同量吐出させて塗布する。
第1液は、ゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)3.0重量%、キサンタンガム0.1重量%、精製水96.9重量%を配合して調製した。
第2液は、クエン酸3.6重量%、キサンタンガム0.1重量%、チアベンダゾール0.6重量%、精製水95.7重量%を配合して調製した。
本抗菌防臭液の銀イオン濃度は110ppm 、黄色ブドウ球菌のTD2は3分。
銀イオン抗菌液を噴霧又は噴射して、病室、厨房、浴室、トイレ、養鶏場、養豚場の細菌に即効性の除菌効果を得ることができる。
[排水口・トイレの抗菌洗浄効果]
本処方の2液を排水口やトイレに噴射することにより、取れ難い水棲菌のヌルミと汚れが容易に除去されて清潔になった。
[洗濯物の防臭効果]
洗濯機による衣類洗濯の洗浄仕上げ時に、本処方の2液の混合液を噴射して3分間疸抑して脱水し室内乾燥をした。このような短時間の銀イオン処理により、室内干しの臭いが防止されて、更に、衣類に銀イオンが吸着することにより着用時における汗臭の発生が防止された。
[靴の除菌・防臭効果]
皮靴、ブーツ、スニーカーに本処方の2液を噴射して臭いを防止することができる。
(処方)
本発明の第1液と第2液の混合液を辱瘡用のパックシートとした実施例を示す。第1液と第2液は下記の処方により噴霧する液状に調製した。2連式容器で吐出口2個の市販の吐出器の各容器に、第1液と第2液を封入して2液を同量吐出させて、厚さ2cmのポリウレタンスポンジの表面に吐出し混合して塗布する。
第1液は、ゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)0.5重量%、カルボキシメチルセルロース(CMC)0.5重量%、精製水99.0重量%を配合して調製した。
第2液は、クエン酸0.55重量%、CMC0.5重量%、精製水98.95重量%を配合して調製した。
本パックシートの銀イオン濃度は55 ppm 、緑膿菌のTD2は7分。
銀イオン液を塗布した厚さ2cmのポリウレタンスポンジである。辱瘡部を保護しながら緑膿菌を抗菌する辱疫ケアシートであり、スキンケア剤を任意に配合することが好ましい。抗菌液の性状としてはジェル状が使用感に好ましいが、粘度を上げることは銀イオンの拡散性が低下して即効抗菌性が低下するので好ましくない。
(1)デオドラントジェル(塗布)
(処方)
本発明の第1液及び第2液を、肌に塗布する粘度2300mPs・Sのジェル状のデオドラント(防臭化粧品)とした実施例を示す。第1液及び第2液は下記処方により粘度2300mPs・Sのジェルに調製した。第1液と第2液のジェルを2連式容器で吐出口2個の市販の吐出器の各容器に封入して同時に同量を吐出してこれを手のひらに受けて、指先で混合して塗布する。
第1液は、ゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)1.0重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC ジェル化剤)1.5重量%、プロビレングリコール5.0重量%、精製水92.5重量%を配合して調製した。
第2液は、クエン酸1.2重量%、HPMC0.1重量%、精製水98.7重量%を配合して調製した。
本ジェルの銀イオン濃度は110ppm、黄色ブドウ球菌のTD2は12分。
銀イオンジェルを身体に塗布する防臭化粧品で即効性に特徴がある。ジェルタイプは液状より銀イオンの拡散に時間を要するので液状より殺菌に時間を要するが、ジェルは瑞々しくさわやかな使用感があり好まれる。
サッカー選手7名に本抗菌ジェルを塗布し、7名に従来品のデオドラントジェルを噴霧し、8名には無処理で試合を行った。試合終了後に汗を拭き取ったタオルをそれぞれポリエチレン(PE)袋に密封して18時間にわたり1時間毎に臭気を評価した。本抗菌ジェルを用いた選手の使用タオルは18時間にわたり臭気を全く感じなかった。デオドラントジェルを用いた選手及び無処理選手の使用タオルは時間の経過と共に汗臭が強くなった。
本発明の第1液と第2液をジェル状にしてにきび用のパックシートにした実施例を示
す。
(処方)
第1液と第2液を粘度1000mPs・Sのジェルに調製し該ジェルを2連式吐出2口の容器に収納した。プッシュヘッドを押して2液を同量吐出させた混合ジェルを吐出して、銀イオンの生成をシートの面で行ってパックシートとした。
第1液は、ゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)0.2重量%、アデカノールGT-700 1.0重量%、精製水98.8重量%を配合して調製した。
第2液は、クエン酸0.24重量%、アデカノールGT-700 1.0重量%、サルチル酸1.5重量%、精製水97.26重量%を配合して調製した。
(効果)
本ジェル状の第1液及び第2液の銀イオン濃度は22ppm 、皮膚常在菌のTD2は11分。
本ジェル状液を不織布に塗布したパックシートは、にきび面にパックしてニキビケアパックとして優れる。アクネ菌に対して即効性を有し、従来のにきびケア剤は硫黄臭があり肌に刺激があったが、本パックは無臭で刺激がなく安全性が高い。
(1)デオドラントフォーム(エアゾール)
(処方)
本発明の第1液と第2液をフォーム状(泡状)のデオドラントとした実施例を示す。第1液と第2液は下記の処方により液状に調製した。2連式容器で吐出口1個の市販のエアゾール式塗布具の金属加圧容器の各容器に第1液と第2液を収納して液化石油ガス(LPG)圧により同量の2液を泡状に吐出させて塗布する。
第2液は、クエン酸0.24重量%、CMC0.5重量%、ステアリン酸10.0重量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1.0重量%、POE(20)ソルビタンモノステアリン酸2.0重量%、精製水86.26重量%を配合して調製した。
(効果)
本フォームの銀イオン濃度は22ppm 、黄色ブドウ球菌のTD2は8分。
頭髪用のデオドラントフォームとしてブラッシング時に用いて効果が得られる。特に薬液による濡れを嫌う犬や猫等のペットには、銀イオンムースによるブラッシングは犬猫回虫の抗菌として期待される。
Claims (5)
- 分離状態にある第1液と第2液からなる細菌を抗菌するために使用時に混合する2剤型抗菌用銀イオン生成液であって、
前記第1液が分散助剤を含む水溶液にA型又はX型銀ゼオライトを分散した分散液であり、前記第2液がクエン酸、リンゴ酸又は酒石酸のカルボン酸を含有した水溶液であり、上記銀ゼオライトに対して上記クエン酸の配合比率が1.2以上であり、上記リンゴ酸の配合比率が1.4以上であり、上記酒石酸の配合比率が1.6以上であり、上記銀ゼオライトと上記カルボン酸が同量の水溶液中に含有されていることを特徴とする2剤型抗菌用銀イオン生成液。 - 前記分散液中における前記銀ゼオライトの配合量が0.1〜5.0重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の2剤型抗菌用銀イオン生成液。
- 前記銀ゼオライトの銀担持量が0.16〜5.0重量%の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の2剤型抗菌用銀イオン生成液。
- 前記分散助剤が親水性高分子又はジェル状剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2剤型抗菌用銀イオン生成液。
- 前記第1液及び第2液の使用形態が液状、ジェル状又はフォーム状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の2剤型抗菌用銀イオン生成液。
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