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JP5891463B2 - Ni基超合金の耐酸化特性評価方法 - Google Patents

Ni基超合金の耐酸化特性評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、ジェットエンジン、産業用ガスタービンなど高温機器に用いる耐熱合金であるNi基超合金の耐酸化特性評価方法に関するものであり、さらに詳しくは、高温における優れた耐熱性とともに、高温下における優れた耐酸化性ならびに耐食性を兼ね備えたNi(ニッケル)基超合金の耐酸化特性評価方法に関するものである。
Ni基超合金は、高温での組織安定性やクリープ特性が優れていることから高温機器の材料として幅広く利用されており、多くの特許出願もなされている。特にNi基単結晶超合金は、特許文献1から10に示すように、顕著な耐熱性を有していることから、近年、ジェットエンジン、産業用ガスタービンなど高温機器に適したNi基超合金として提案されており、それらの特許文献記載の一部のNi基超合金は幅広く使用されている。
さらに具体的には、Ni基単結晶超合金は、NiにAl(アルミニウム)とNi3Al型析出物を析出させて高温特性を強化し、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)などの高融点金属を混合して合金化・単結晶化させた超合金である。これら一連のNi基単結晶超合金には、Re(レニウム)を含有しない第1世代合金があり、例えば、既存合金としてPWA1480(キャノン・マスケゴン社製)、CMSX−3(キャノン・マスケゴン社製)が知られている。より高温において優れた耐熱性を有する合金として、3質量%前後のReを含む第2世代合金、5−6質量%のReを含む第3世代合金が開発されている。例えば、第2世代のNi基単結晶超合金にはCMSX−4(キャノン・マスケゴン社製)、第3世代のNi基単結晶超合金にはCMSX−10(キャノン・マスケゴン社製)などが知られている(特許文献1−10)。第2世代合金、第3世代合金とReの含有量を増加させることによって耐熱性は向上するが、Reのみをこれ以上増加させても母相(γ相)への固溶限界を超えて、いわゆるTCP相を析出してしまい、耐熱性のさらなる改善はできない。そこでReと共にRu(ルテニウム)も添加した第4世代合金および第5世代合金と称される新しい耐熱性超合金系が提案されている。
最近では、燃料の高騰あるいは二酸化炭素の排出量の抑制などの観点から、ジェットエンジン、産業用ガスタービンなどの機器において、エネルギー効率の向上を目的として耐熱性、高温における耐食性・耐酸化性に優れたNi基単結晶超合金の使用が注目され、Re等の高価な金属を含有する第2世代合金および第3世代Ni基単結晶超合金の実用化が進んでいる。また、更なる高温下において優れた耐熱性を有するRe+Ruを含有する第4世代合金および第5世代合金のNi基単結晶超合金も、一段高いレベルのエネルギー効率の改善のための好適な材料として実用化に向けた開発が推進されている。
しかしながら、その一方で、Re、Ruなどのレアメタルは、近年の急激な使用量の増加に伴って原料価格は高騰する傾向にあり、場合によっては、これらのレアメタル原料の入手も困難な事態も生ずるようになってきている。したがって、Reを含有するNi基単結晶超合金において、高温における機械的特性を損なうことなくRe使用量を大幅に削減しても現在使用しているNi基単結晶超合金と比較して遜色のない耐熱性を有するNi基単結晶超合金の開発が、ジェットエンジン、産業用ガスタービンなどの産業界において強く望まれている。
CoはAl、Ta等のガンマ母相に対する高温下での固溶限を大きくするとともに熱処理によって微細なガンマプライム相を分散析出して高温強度を向上するという優れた機能を有しているため高温で使用するNi基超合金には不可欠な成分と考えられてきた。しかしながら、Coはリチウムイオン電池材料、エレクトロニクス材料などの新しい用途において急速に世界における使用量が増加する傾向にある。CoはNiに比較して資源量の限定されているために、Niに比べて高価な金属であり、可能な限りCoを含有しないNi基超合金が望まれている。また、Coは半減期が長いためCoが含有されているNi基超合金が放射能汚染された場合にはメンテナンスが大変面倒になるので、Ni基超合金を原子力発電等の放射能汚染の可能性がある高温機器の部材として使用するに際し、半減期の長いCoを含有しなくてもCoを含有したものと同等あるいはそれ以上のクリープ強度特性を有するNi基超合金の実現が望まれている。
Mo(モリブデン)は、一般に合金素地中に固溶して高温強度を上昇させるとともに、析出硬化により高温強度に寄与する元素として知られているが、他方、あまり含有量が多くなると、高温において耐酸化特性、耐腐食特性を劣化させる傾向という欠点がある。したがって、Mo以外の高融点金属の適切な組み合わせによって同等あるいはそれ以上の高温強度を保持しうるNi基超合金の実現が望まれている。
Hf(ハフニウム)は、高温における耐食性・耐酸化性を向上させる効果があり、多くの耐熱性Ni基超合金においても広く使用されている。しかしながら、Hfは高価なレアメタル元素であって、Ni基超合金の原料価格を押し上げる一要因ともなるので、高温における耐食性・耐酸化性を向上させ得るより安価な元素への代替も望まれている。
本発明は、上述の実情に鑑み、高価なReの使用量をできる限り抑えながらも、高温下においても十分な耐熱強度と耐酸化性を兼備した、Co、MoおよびHfを含有しないNi基超合金の提供することを目的とする。
発明1のNi基超合金の耐酸化特性評価方法は、Co、MoおよびHfを含有しないNi基超合金であって、必須元素としてCr,W,Al,Nb,Ta,ReおよびSiを含有し、必須元素の組成範囲としてCr:7.0質量%以上11.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Nb:0.2質量%以上5.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.5%未満、Si:0.03質量%以上1.0質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成を有すると共に、 OP(Oxidation Parameter)=5.5x[Cr(mass%)]+15.0x(1+2.0[Si(mass%)])x[Al(mass%)]としたとき、OP値が130以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、ことを特徴とする。

発明2は、発明1のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、OP値が135以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、ことを特徴とする。
発明3は、発明1のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、OP値が140以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、ことを特徴とする。

発明4は、発明1乃至発明3のいずれかのNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、前記Ni基超合金の必須元素の組成範囲としてCr:8.0質量%以上11.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb:0.5質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下を含有することを特徴とする。
発明5は、発明1乃至発明3のいずれかのNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、前記Ni基超合金の必須元素の組成範囲としてCr:8.0質量%以上10.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上10.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有することを特徴とする。

発明6は、発明1乃至発明3のいずれかのNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、前記Ni基超合金の必須元素の組成範囲としてCr:8.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上9.0質量%未満であってNb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Ta:4.0質量%以上6.0質量%未満、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有することを特徴とする。

本発明は、上述の実情に鑑み、高価なReの含有量を最小限としながらも、高温下における耐熱強度が十分であり、かつHfを含有していなくとも高温下における耐酸化性および耐食性も優れたNi基超合金を提供することを目的として誠意検討し、Co、MoおよびHfを実質的に含有せず、必須元素としてCr,W,Al,Nb,Ta,ReおよびSiを含有するNi基超合金を見出すことができた。本発明のNi超合金は、高価なReの使用量を極力抑えつつ、Ni基超合金を特定の元素、最適な元素組成に制御することによって、優れた耐熱性と高温下における優れた耐酸化性、耐腐食性を兼ね備えたNi基超合金の耐酸化特性評価方法を提供するものである。
本発明は、上記のとおりの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について詳細に説明する。
本発明合金であるA3合金およびA6合金、比較合金であるR1合金、R2合金およびR4合金について、空気中、1時間サイクルで1100℃の高温下に試料を最大250サイクルの繰り返し、試験前の質量に対する暴露後の試料の質量の変化を示した図である。 本発明合金であるA3合金およびA6合金、比較合金であるR1およびR4合金のサイクル試験終了後の試料に関する切断面ミクロ組織のSEM写真である。 本発明合金であるA3合金およびA6合金、比較合金であるR2合金について、800℃−735MPa、900℃−392MPa、1000℃−245MPa、1100℃−137MPaのクリープ寿命試験条件におけるクリープ寿命を比較した図である。
CoはAl、Ta等のガンマ母相に対する高温下での固溶限を大きくするとともに熱処理によって微細なガンマプライム相を分散析出して高温強度を向上するという機能を有している。さらに、Moは合金素地中に固溶して高温強度を上昇させるとともに析出硬化により高温強度に寄与する。そのために、高温での組織安定性やクリープ特性が優れたNi基超合金にはどちらも不可欠な成分であると、従来は考えられていた。しかしながら、本願の発明では、これまで高強度Ni基超合金において不可欠であると考えられてきたCo、MoおよびHfを添加しなくても、必須元素であるCr,W,Al,Nb,Ta,ReおよびSiを特定の組成範囲で用いることにより、高いクリープ強度と高温下における優れた耐酸化性、耐腐食性を兼ね備えたNi基超合金を実現できることを見出した。Coの含有量が1.0質量%未満、Moの含有量が0.1質量%以下であれば、本発明合金の優れた耐酸化性、耐腐食性が損なわれることはない。

すなわち、Cr:7.0質量%以上11.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Nb:0.2質量%以上5.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.5%未満、Si:0.03質量%以上1.0質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成のNi基単結晶合金が優れた耐熱性と耐酸化性を有することを見出した。本発明合金は、市販合金として広く使用されるCo、MoおよびHfを含有する第1世代Ni基単結晶合金(例えば、キャノン・マスケゴン社製の既存合金として良く知られているPWA1480、CMSX−3など)に比べて非常に優れた耐熱性を有している。また、本発明合金は、第2世代Ni基単結晶合金の代表例とも言えるキャノン・マスケゴン社製の既存合金CMSX−4に比較しても、高価なRe含有量が半分以下であるにも拘わらず、遜色のない耐熱性と高温下においてより優れた耐酸化性を兼ね備えたNi基単結晶合金である。

また、本発明のNi基超合金では、微量元素であるCおよびBの量的な制御も重要な因子となることもあり、また、Y:0.2質量%以下、La:0.2質量%以下、Ce:0.2質量%以下の少なくとも1種以上の元素を添加することにより、様々な用途に応じた製品の物性をさらに向上させることが可能である。

本発明のNi基超合金は、高温での組織安定性やクリープ特性及び耐酸化・耐腐食性が優れており、特にタービンブレードまたはタービンベーン部品の製造に好適である。
本発明のNi基超合金の成分の最適な含有範囲について以下に説明する。
Cr(クロム)は、耐酸化性に優れた元素であり、Ni基超合金の高温耐食性を向上させる。Cr含有量があまり少ないとその効果は小さく、あまり多くなると他の耐熱強化元素とのバランスが悪くなって性能が低下するので、好ましくない。Crの含有量は7.0質量%以上11.0質量%以下の範囲が好ましく、さらにCr:8.0質量%以上11.0質量%以下がより好ましく、Cr:8.0質量%以上10.0質量%以下が最も好ましい。

W(タングステン)は、固溶強化と析出硬化の作用があり、Ni基超合金の高温強度を向上させる。W含有量があまり少ないと高温強度の改善効果は小さく、あまり多くなると有害相を析出するので好ましくない。また、W量が多くなると合金全体の比重が大きくなり、合金コストも高くなるので、好ましくない。Wの含有量は6.0質量%以上10.0質量%以下の範囲が好ましい。

Al(アルミニウム)は、Niと化合してガンマ母相中に析出するガンマプライム相を構成するNi3Alで表される金属間化合物を体積分率で50〜70%の割合で形成して高温強度を向上させる。Alの含有量が少なすぎるとガンマプライム相の析出強化の効果が充分に現れず、あまり多く添加し過ぎると合金の延性を低下させてしまうので、好ましくない。Alのもう一つの重要な役割は、高温下において耐酸化特性を保持するための強固かつ緻密な酸化被膜形成に寄与している点であり、この観点からも適切なAl含有量を決める必要がある。Alの含有量は4.5質量%以上6.5質量%以下の範囲が好ましく、さらに4.8質量%以上6.0質量%以下がより好ましい。

Ta(タンタル)およびNb(ニオブ)は、いずれもガンマプライム相を強化してクリープ強度を向上させることに有効な元素である。また、Nbはクリープ強度の改善に有効であるとともに、Ta等の一部合金元素を置換することによって合金の密度を下げることに有効である。Ta+Nbの組成が少ないとガンマプライム相の析出強化の効果が充分に現れず、あまり多く添加し過ぎると合金の延性を低下させてしまうので、好ましくない。Nb+Ta元素の含有量の総和が11質量%超になると有害相の生成が助長される傾向にあるので、Nb+Ta:11.0質量%以下として用いられる。
NbとTaの組成範囲は、Nb:0.2質量%以上5.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下が好ましい。NbとTaの組成範囲として、Nb:0.5質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下がより好ましく、NbとTaの組成範囲をNb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下にすることがさらに好ましい。また、Taは合金の密度を上げてしまうので、Ta:4.0質量%以上6.0質量%未満とし、Nb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上10.0質量%未満の範囲で使用することが最も好ましい。

Re(レニウム)は、ガンマ相に固溶して固溶強化により高温強度を向上させるだけでなく耐食性を向上させる効果もある。Reの含有量が極端に少ないと高温強度および耐食性の改善効果は顕著に認められず、一方、Reの含有量が多すぎると、高温時にTCP相が析出して高温強度を低下させるおそれもあり、また、高価なReを多量に使用することは合金コストを上昇させる要因ともなるので、好ましくない。したがって、Reの含有量としては、Re:0.1質量%以上2.5%未満で使用するのが好ましく、さらにRe:0.1質量%以上2.0%未満の範囲で使用するのがより好ましい。

Si(ケイ素)は、少量添加することによって、基材合金表面が高温酸化条件に曝された状態において、合金表面に安定した酸化被膜を生成させる。Si存在下において生成した酸化皮膜は緻密・均質であり、また、この酸化被膜は合金表面との接着性にも優れている。Siの添加量はAlの10分の1前後であるので、Siそのものが強固で緻密な酸化被膜を形成するというよりも、初期の酸化皮膜形成過程において、Siが触媒的な効果を示すことによって、高温下において強固で緻密な酸化被膜の形成に寄与しているものと考えられる。しかしながら、合金中に過剰量のSiが存在すると、合金中の他の元素の固溶限を低下させて、合金の高温における耐熱強度を低下させてしまうので好ましくない。したがって、高温下における耐熱特性と耐酸化特性のバランスを考慮しながらSi添加量を決定することが望ましい。Si:0.03質量%以上1.0質量%以下で使用するのが好ましく、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましく、Si:0.05質量%以上0.4質量%以下で使用するのが、最も好ましい。

高温下における耐酸化特性に顕著な影響を与える主な元素としては、Cr、Al、Hfが一般に知られており、これらの元素の寄与度を考慮したOP(Oxidation Parameter)パラメータで耐酸化特性の目安としている。本発明者らは高温下の耐酸化性に対して大きな影響を及ぼすSi含有量を含めた次式で示されるOPパラメータを考慮しながら合金設計を行うことが有効であることを見出した。OP(Oxidation Parameter)=5.5x[Cr(mass%)]+15.0x(1+2.0[Si(mass%)])x[Al(mass%)]としたとき、OP値を130以上とすることが望ましく、OP値を135以上とすることがより望ましく、OP値を140以上とすることが最も望ましい。

C(炭素)は、粒界強化に寄与する。しかしながら、過度の含有量は合金の延性を害することもあり、合金中のC含有量については慎重に制御することが望ましい。C:0.0001質量%以上0.01質量%以下が好ましく、C:0.0005質量%以上0.005質量%以下がさらに好ましい。

S(イオウ)は、Ni基超合金中にある程度以上含まれると高温強度を低下させるのみならず、高温下における耐酸化特性を著しく低下させるので、使用する合金原料の段階から混入には十分な配慮が必要である。合金中に含まれるS含有量としては、0.005質量%以下とすることが好ましく、0.002質量%以下とすることがさらに好ましい。

B(ホウ素)は、Cと同様に粒界強化に寄与する。しかしながら、過度の含有量は延性を害するため0.2質量%以下が好ましい。

Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)は、Ni基超合金を高温で使用中にアルミナ、クロミアなどを形成する保護酸化皮膜の密着性を向上させる。しかしながら、過度の含有量は他の元素の固溶限を低下させることになるため、Y:0.2質量%以下、La:0.2質量%%以下、Ce:0.2質量%以下の範囲で使用することが好ましい。

以上のような元素組成を有する本発明のNi基超合金は、鋳造することができる。そして、この鋳造に際しては、たとえば、普通鋳造法、一方向凝固法、あるいは単結晶凝固法によって多結晶合金、一方向凝固合金、あるいは単結晶合金としてNi基超合金を製造することができる。普通鋳造法は基本的に所望の組成に調合されたインゴットを用いて鋳造するが、鋳型温度を合金の凝固温度約1500℃以上に加熱しておき、超合金を鋳込んだ後に、例えば加熱炉から徐々に遠ざけて温度勾配を与え多数の結晶を一方向に成長させる方法である。単結晶凝固法は一方向凝固法とほぼ同様であるが所望の品物が凝固する手前でジグザクあるいは螺旋型のセレクター部を設け、一方向で凝固してきた多数の結晶をセレクター部で一つの結晶にし、所望の品物を製造する。
本発明のNi基超合金は鋳造後に熱処理を施すことにより高クリープ強度が得られる。標準的な熱処理は、1260〜1300℃で20分〜2時間の予備熱処理を施した後に、1300〜1350℃を1050〜1150℃の温度域で2〜8時間加熱、空冷を行う。この処理は耐熱・耐酸化を目的としたコーティング処理と兼ねることが可能である。空冷した後、引き続きガンマプライム相安定化を目的とした2次時効処理を800〜900℃で10〜24時間実施した後、空冷の処理を行う。それぞれの空冷を不活性ガスに置き換えてもよい。この製造方法により作成されたNi基超合金によりガスタービンのタービンブレートあるいはタービンベーン等の高温部品が実現される。
表1は本願発明合金の合金組成とOPパラメータの関係を示したものである。A1合金からA7合金は本願発明合金である。R1合金は、本発明合金においてSi元素を除いた比較合金である。また、R2合金からR4合金は、それぞれ既存合金であるPWA1480、CMSX−3およびCMSX−4を比較合金として示したものである。
[表1]


本発明合金A3およびA6などのNi基単結晶合金の耐酸化特性を評価するために、各サンプル試片を電気炉内で1100℃、1時間空気中で暴露し、その後、電気炉から取り出して1時間冷却する方法により、高温下における耐酸化サイクル試験を実施した。図1は、本発明合金のほか、表1の4個の合金のサイクル試験における重量変化の経緯を示したものである。本発明合金においてSiの添加を行わなかったR1合金ならびに代表的な市販合金であるPWA1480(R2合金)およびCMSX−4(R4合金)を比較例として同一の条件下で評価した。
本発明合金(A3およびA6合金)は、サイクル初期において表面酸化による若干の重量増加を伴うものの、250サイクル後も大幅な質量の減少は認められなかった。これに対して、市販合金であるR2合金およびR4合金では、すでに100サイクルに到達する前から、顕著な質量の減少傾向を示した。また、Siを添加しない比較合金R1では、20サイクル以降、急激な質量の減少が認められた。これらの試験結果から明らかなように、本発明合金は第1世代および第2世代合金の代表的な市販合金に比べて、優れた耐酸化特性を有していることが分かった。
本発明合金の優れた特性は、高温耐熱性に寄与する合金元素の組成とともに、高温下における耐酸化特性に寄与する合金元素の組成のバランスを最適化することによって、可能となった。特に、後者においては、OP(Oxidation Parameter)パラメータに寄与度の高いCr,AlおよびSiの各元素に着目した次式で示されるOPパラメータを使用することが合金設計にきわめて有効であることを見出した。
OP(Oxidation Parameter)=5.5x[Cr(mass%)]+15.0x(1+2.0[Si(mass%)])x[Al(mass%)]
表1の最右欄は、本発明合金および比較合金について上記の式を用いて算出したOP値を示したものである。この表からも明らかなように、OP値としては130以上とすることが望ましく、135以上とすることがより望ましく、140以上とすることが最も望ましい。なお、表1の比較合金R3およびR4に関してはHf元素を含んでおり、OPパラメータの算出にOP(Oxidation Parameter)=5.5x[Cr(mass%)]+15.0x(1+2.0[Si(mass%)])x[Al(mass%)]+9.5x[Hf(mass%)]を使用した。

図1で述べた条件で高温サイクル試験を行った試料について、試料表面に生成した酸化被膜の特性を調べたものである。図2は、本発明合金であるA3合金およびA6合金と比較合金であるR1合金の250サイクル後の試料、また比較合金であるR4合金については200サイクル試験終了後の試料に関する切断面ミクロ組織のSEM写真である。本発明合金であるA3合金およびA6合金のサイクル後の酸化層は少なくとも3層以上の緻密な層から構成されていること、また、それらの各層間の接着性は非常に良好であることが観測された。本発明合金は、高温サイクルの初期において、このような緻密かつ均質な酸化層を生成することによって、250サイクル後もほとんど酸化層の剥離を起こすことのない優れたサイクル特性を示すものと考えられる。一方、比較合金の表面酸化層は本発明合金に較べて生成した酸化層の均質性および接着性が良くない。R1合金では、A3およびA4合金に比較して合金基材と酸化層間に隙間が観測され、酸化層の密着性が不十分であるために、サイクル寿命が短かった。また、R4合金のSEM写真からも明らかなように、R4合金上に生成する酸化被膜層は緻密さの欠けた不均質なものであった。高温サイクル過程において酸化被膜の一部が剥離し、さらに不均質な酸化被膜層の生成が繰り返えされて凹凸の多い酸化被膜表面になったものと思われる。
図3は、本発明合金(A3およびA6合金)と市販合金(R2)合金のクリープ破断寿命を測定した結果を示したものである。クリープ試験は800℃−735MPa、900℃−392MPa、1000℃−245MPa 、1100℃−137MPaの条件で試料がクリープ破断するまでの時間を寿命とした。いずれのクリープ試験条件においても、本発明合金は、R2合金よりも優れた耐熱強度を有していた。すなわち、本発明合金はR2合金に比較して、高温下における酸化サイクルおよびクリープ破断の両特性において、バランスの良い優れた特性を有する合金であると結論される。
本発明合金であるA3合金と市販合金であるR4合金の耐熱強度を比較した。1100℃−137MPaの同一条件下において、1%クリープ強度およびクリープ破断寿命を測定した。A3合金では、それぞれ118時間および120時間であり、R4合金では、それぞれ118時間および155時間であった。耐熱性向上に効果のある高価なReの含有量がR4合金の半分以下であるにも拘わらず、A3合金は、R4合金とほぼ同等の耐熱特性を有するとともに、図1に示したように、R4合金よりも大幅に優れた高温サイクル特性をも兼ね備えた優れたNi基超合金であるといえる。
本発明合金A3およびA6の合金組成は表1に示したが、表1以外の微量元素を分析したところ、微量成分としてC(炭素)およびS(イオウ)が検出された。これらの微量元素の分析を複数回行ったところ、A3合金ではC:0.0016質量%以上0.0028質量%以下、S:0.0002質量%、A6合金ではC:0.0007質量%以上0.0036質量%以下、S:0.0001質量%以上0.0004質量%以下存在していることが分かった。これらの微量元素は高温における耐熱性、耐酸化性に対して影響することも多く、適切な範囲に不純物量を制御することも重要である。

以上の実施例から明らかなように、本発明の合金の耐酸化特性評価方法は、Co、MoおよびHfを含有せず、必須元素としてCr,W,Al,Nb,Ta,ReおよびSiを含有するNi基超合金であって、高価なReの含有量を最小限としながらも、高温下における優れた耐熱強度とサイクル特性を兼ね備えた非常に性能バランスの良いNi基超合金の耐酸化特性評価方法であるといえる。

本願発明によれば、耐熱性、高温における耐酸化性において、非常にバランスの取れた優れた合金の耐酸化特性評価方法を提供することが可能となる。また、高価なReなどの高価な金属の使用量を既存合金に比べて大幅に削減したより安価なNi基超合金を提供することも可能となる。したがって、本発明によれば、ジェットエンジンや発電用ガスタービンなどのタービンブレードやタービンベーンとして中温部から高温部までバランスのとれた好適な合金の耐酸化特性評価方法を提供することが可能である。
:米国特許第4,116,723号明細書 :米国特許第4,643,782号明細書 :米国特許第4,719,080号明細書 :米国特許第4,908,183号明細書 :米国特許第5,043,138号明細書 :米国特許第5,068,084号明細書 :米国特許第5,069,873号明細書 :米国特許第5,151,249号明細書 :米国特許第6,159.314号明細書 :米国特許第6,905,559号明細書

Claims (6)

  1. Co、MoおよびHfを含有せずに、必須元素としてCr,W,Al,Nb,Ta,ReおよびSiを含有するNi基超合金の耐酸化特性評価方法であって、
    前記Ni基超合金は、必須元素の組成範囲としてCr:7.0質量%以上11.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Nb:0.2質量%以上5.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.5%未満、Si:0.03質量%以上1.0質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成を有すると共に、
    OP(Oxidation Parameter)=5.5x[Cr(mass%)]+15.0x(1+2.0[Si(mass%)])x[Al(mass%)]としたとき、OP値が130以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、Ni基超合金の耐酸化特性評価方法。
  2. 請求項1に記載のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、OP値が135以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、Ni基超合金の耐酸化特性評価方法
  3. 請求項1に記載のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、OP値が140以上である場合に耐酸化性が優れると判定する、Ni基超合金の耐酸化特性評価方法
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、Cr:8.0質量%以上11.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb:0.5質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上11.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするNi基超合金の耐酸化特性評価方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、前記Ni基超合金の必須元素の組成範囲としてCr:8.0質量%以上10.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上10.0質量%以下、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするNi基超合金の耐酸化特性評価方法。
  6. 請求項1乃至3のいずれかに記載のNi基超合金の耐酸化特性評価方法において、前記Ni基超合金の必須元素の組成範囲としてCr:8.0質量%以上10.0質量%以下、W:6.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.8質量%以上6.0質量%以下、Nb+Ta:6.0質量%以上9.0質量%未満であってNb:1.0質量%以上4.0質量%以下、Ta:4.0質量%以上6.0質量%未満、Re:0.1質量%以上2.0%未満、Si:0.05質量%以上0.4質量%以下を含有し、残部がNiと不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするNi基超合金の耐酸化特性評価方法。
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