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JP5870276B2 - 発電システムおよび発電ユニット - Google Patents

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Description

本発明は、共振磁界の結合を利用して無線でエネルギ供給を行う発電システムおよび発電ユニットに関する。
天然資源の枯渇や地球温暖化対策の観点から、二酸化炭素を排出しない太陽光発電に対する関心がますます高まりつつある。近年、多数の太陽光発電素子(太陽電池:以下、簡単に「セル」と称する場合がある)を大面積のエリアに敷設し、大電力を発生させる工場も現実になりつつある。家庭用の太陽光発電装置も、これまでは、建物の屋根などへ敷設することが主であったが、建物の壁面に配置することも検討されるようになってきた。
一般の太陽光発電システムでは、多数のセルを金属枠内に配列し、セル間を相互接続した「太陽電池モジュール」が使用される。太陽電池モジュール(以下、簡単に「モジュール」と称する場合がある)の前面にはガラス板が設けられ、各セルは大気からシールされた状態で動作する。このような太陽電池モジュールを敷設することにより、太陽光発電システムを構築することができる。
このような太陽光発電システムを導入する上で、セルおよびモジュールの製造コストが高いということが障壁になっている。また、セルやモジュールを敷設してシステムを構成するコストが高いということも導入障壁として無視できない。敷設作業が高所になるほど、危険かつ高コストとなるため、太陽光発電システムの更なる普及に対して深刻な課題となっている。また、既設の建物に太陽光発電システムを導入する場合は、屋外に敷設した太陽光発電部と建物内部の電子機器とを接続するための配線工事を施すことが困難であり、このことも普及に対する大きな課題となっている。
後述するように、個々のセルの出力電圧が低いため、従来の太陽光発電システムでは、電子機器の動作に必要な電圧を得るためには、多数の太陽電池セルを直列接続する必要がある。そのため、多数の接続箇所における信頼性の低下がシステム全体の長期信頼性を低下させる大きな要因ともなっている。また、長期動作中に劣化したモジュールや接続配線を交換する場合も、高所での作業を要するため、維持コストが高いという問題もある。
従来の太陽光発電装置の一例として、屋外から壁材を介して屋内へ無線でエネルギを供給する電力供給システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電力供給システムでは、壁を介したRF(高周波)エネルギの伝送を電磁誘導方式によって実現している。
一方、固体高分子形などの燃料電池を利用した発電システムも普及が広がりつつある。このような発電システムにおいても、個々のセルの出力電圧は比較的低く、高電圧を得るためには多数のセルを直列接続する必要がある。このため、太陽光発電デバイスと同様、多数の接続箇所における信頼性の低下がシステム全体の長期信頼性を低下させる要因となる。
また、特許文献2は、2つの共振器の間で無線でエネルギを伝送する新しい無線エネルギ伝送装置を開示している。この無線エネルギ伝送装置では、共振器の周辺の空間に生じる共振周波数の振動エネルギのしみ出し(エバネッセント・テール)を介して2つの共振器を結合することにより、振動エネルギを無線(非接触)で伝送する。共振器として磁界分布を利用するエネルギ伝送方式のことを以下、磁気共振方式と呼ぶ。
磁気共振方式による無線電力伝送は、従来の電磁誘導方式と比較して、伝送距離の飛躍的な拡大を可能とする。すなわち、共振器間の結合係数kが各共振器の減衰定数Γ1、Γ2の積の1/2乗と比較して大きい場合、良好なエネルギ伝送が可能であるとしている。
特開2006−136045号公報(第5の実施形態、図16) 米国特許出願公開第2008/0278264号明細書(図5、図10)
特許文献1に記載されている電力伝送システムでは、個々のセルから出力される電圧が低いという太陽光発電デバイスに固有の課題を解決することができない。太陽光発電分野において、現在、エネルギ変換効率が高いことから広く使用されている結晶シリコン系の1個の太陽電池(セル)の出力電圧Vcは0.5V程度であり、極めて低い。例えば、太陽光発電部からの直流出力を交流に変換する場合、一般の変換回路(パワーコンディショナ)の動作効率は、300Vdc程度の入力電圧に対して最大化される。このため、高効率での変換を実行するには、数百個ものセルを直列に接続することにより、太陽光発電部の出力電圧を300V程度に高めることが必要になる。また、家庭内配電である単相3線(100Vまたは200V)の系統に連系する場合、太陽光発電部の出力電圧をパワーコンディショナによって200倍以上に昇圧する必要がある。しかしながら、昇圧時における電力効率の低下を考慮すると、やはり多数のセルを直列に接続して太陽光発電部の出力電圧をできるだけ高めることが求められる。
なお、太陽光発電システム内で直流から交流への変換を行わない場合でも、同様の問題が生じ得る。昨今注目を集めている直流給電システムなどで使用が検討されている電圧は、48Vdc、あるいは300〜400Vdc程度である。このため、直流給電システムでも、やはり数十から数百個のセルを直列に接続する必要がある。
直列に接続されるセルやモジュールの個数が増大するほど、敷設領域の一部が日陰になった場合(パーシャルシェイディング)や、敷設されるセルやモジュールの一部で特性が劣化した場合に、システム全体の性能低下を招き易くなる。このような問題を回避するため、モジュール内にバイパスダイオードを導入することが一般的に行われる。しかし、モジュール内にバイパスダイオードを導入することは、発熱やコスト増などの問題を招くため、好ましくない。一方、昇圧機能を有する一般的なDC/DCコンバータを用いて昇圧を行う場合、直列に接続されたセルの個数を大幅に低減できるほどの高い昇圧比を高効率に実現することは困難である。
一方、燃料電池を利用した発電システムにおいても、太陽光発電デバイスと同様、個々のセルや発電スタックの一部で特性が劣化した場合に、システム全体の性能低下を招くという問題がある。
本発明は、磁気共振方式による無線電力伝送を利用して上記の課題を解決する。本発明の主たる目的は、複数の発電ユニットからのRF出力を合成することによって一部の発電ユニットの特性が劣化しても高い出力電力を維持でき、かつ、合成時に効率が低下しない発電システムを提供することにある。
本発明による発電システムは、各発電ユニットが、それぞれ、直流エネルギを出力する発電デバイスと、前記発電デバイスから出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器と、前記発振器から出力された前記RFエネルギを送出する送電アンテナと、前記送電アンテナによって送出された前記RFエネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナとを有し、前記送電アンテナの共振周波数および前記受電アンテナの共振周波数は周波数f0に等しく設定され、前記受電アンテナが受け取った前記RFエネルギを出力する、第1および第2の発電ユニットと、前記各発電ユニットから出力された前記RFエネルギを受け、前記RFエネルギを合成して出力する合成部と、前記第1の発電ユニットから出力された第1のRFエネルギおよび前記第2の発電ユニットから出力された第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1のRFエネルギの位相および前記第2のRFエネルギの位相を一致させるように、前記第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギと前記第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギとの間の位相差を調整する発振位相制御部とを備えている。
本発明による他の発電システムは、各発電ユニットが、それぞれ、直流エネルギを出力する発電デバイスと、前記発電デバイスから出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器と、前記発振器から出力された前記RFエネルギを送出する送電アンテナと、前記送電アンテナによって送出された前記RFエネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナとを有し、前記送電アンテナの共振周波数および前記受電アンテナの共振周波数は周波数f0に等しく設定され、前記受電アンテナが受け取った前記RFエネルギを出力する、第1および第2の発電ユニットと、前記各発電ユニットから出力された前記RFエネルギを受け、前記RFエネルギを合成して出力する合成部と、前記第1の発電ユニットおよび前記第2の発電ユニットの少なくとも一方において、前記発振器と前記送電アンテナとの間、または前記受電アンテナと前記合成部との間の伝送線路上に挿入されたリアクタンス調整回路であって、インダクタおよび容量素子の少なくとも一方を含み、前記第1の発電ユニットから出力された第1のRFエネルギおよび前記第2の発電ユニットから出力された第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1のRFエネルギの位相および前記第2のRFエネルギの位相を一致させる値にリアクタンス値が設定されたリアクタンス調整回路とを備えている。
本発明による発電ユニットは、直流エネルギを出力する発電デバイスと、前記発電デバイスから出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器と、前記発振器から出力される前記RFエネルギの位相を規定するパルスを生成し、前記発振器に入力するパルス生成器であって、外部から入力される制御信号を受け取る入力部を有し、前記制御信号の入力に応答して前記パルスを生成するパルス生成器と、前記発振器から出力された前記RFエネルギを送出する送電アンテナと、前記送電アンテナによって送出された前記RFエネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナと、を有し、前記送電アンテナの共振周波数および前記受電アンテナの共振周波数は周波数f0に等しく設定され、前記受電アンテナが受け取った前記RFエネルギを出力する。
本発明の発電システムによれば、無線で電力の伝送を行うため、発電デバイスの敷設コストを低減することや、発電デバイスの一部が劣化したときの交換作業を簡便に行うことができる。さらに、複数の発電ユニットから出力されるRFエネルギを合成する際に、異なる発電ユニットから出力されるRFエネルギ間の位相差を低減できるため、高い出力電力を得ることができる。また、本発明の好ましい実施形態によれば、発電デバイスを直列に接続することなく、各発電ユニットに含まれる発電デバイスからの出力電圧を昇圧できるため、高効率かつ安定した発電システムを構築することが可能となる。
本発明による発電システムの一例を示すブロック図である。 本発明による発電システムの他の例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態における発電システムの構成図である。 本発明の第1の実施形態における発振器の構成図である。 本発明の第1の実施形態における合成部の構成図である。 本発明の第1の実施形態における無線伝送部の等価回路図である。 本発明の第1の実施形態におけるパルス制御部による位相制御を示す図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態における位相補正を行わなかった場合の出力電力を示す図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態における位相補正を行った場合の出力電力を示す図である。 本発明の第1の実施形態における発電システムの他の構成を示す図である。 本発明の第2の実施形態における発電システムの構成図である。 本発明の第2の実施形態におけるインピーダンス制御部の構成を示す図である。 本発明の第2の実施形態におけるインピーダンス変換の手順を示すフロー図である。 (a)は、本発明による第2の実施形態における送電アンテナの第1の構成例を示す図であり、(b)は、本発明による第2の実施形態における送電アンテナの第2の構成例を示す図であり、(c)は、本発明による第2の実施形態における送電アンテナの第3の構成例を示す図であり、(d)は、本発明による第2の実施形態における送電アンテナの第4の構成例を示す図である。
本発明の好ましい実施形態を説明する前に、まず図1、2を参照しながら本発明の基本原理を簡単に説明する。
図1は、本発明による発電システムの概略構成の一例を示すブロック図である。本発電システムは、第1の発電ユニット110−1および第2の発電ユニット110−2と、合成部111とを備えている。合成部111は、第1の発電ユニット110−1および第2の発電ユニット110−2の出力を合成する。なお、本明細書では、第1の発電ユニット110−1に関する構成要素には参照符号の後ろに「−1」を付し、第2の発電ユニット110−2に関する構成要素には参照符号の後ろに「−2」を付すこととする。また、発電ユニット110を区別せずに各構成要素を示すときには参照符号の後ろの「−1」および「−2」を省略する。
各発電ユニット110は、直流エネルギを出力する発電デバイス101と、発電デバイス101から出力された直流エネルギを周波数f0の高周波(RF)エネルギに変換して出力する発振器102と、発振器102から出力されたRFエネルギを無線で伝送する無線伝送部103とを有している。無線伝送部103は、送電アンテナ107と受電アンテナ108とを含んでおり、後述する磁気共振方式による無線電力伝送を行う。これにより、発振器102から出力されたRFエネルギは送電アンテナ107から受電アンテナ108へと無線で伝送される。受電アンテナ108は、送電アンテナ107から伝送されたRFエネルギを合成部111へと送出する。合成部111は、各発電ユニット110から送出されたRFエネルギ(以下、「RF出力」と呼ぶことがある。)を受け、それらのRFエネルギを合成し、外部の負荷や系統などに出力する。
図1に示す発電システムは、さらに、2つの発電ユニット110−1、110−2のRF出力が合成される際に位相差がほぼ0になるように、2つの発振器102−1、102−2に対して位相制御を行う発振位相制御部120を備えている。発振位相制御部120は、上記2つのRF出力が合成される際に位相差が生じないように、上記2つの発振器102−1、102−2から出力されるRFエネルギの位相差を調整する。発振位相制御部120が行うこの位相制御により、高い出力を得ることができる。
本発明では、2つに限らず3つ以上の発電ユニットを並列に接続し、各発電ユニットからの出力を合成することによってさらに高い出力を得るように構成することができる。この場合、発振位相制御部120による上記の位相制御は、第1および第2の発電ユニット110−1、110−2のみならず、他の発電ユニットに含まれる発振器に対して行ってもよい。合成部111からの出力を最大にするためには、全ての発電ユニットのRF出力について、合成時に位相が一致するように、各発電ユニット110の発振器102に対して上記の位相制御が行われることが好ましい。
以上の位相制御により、例えば、発電ユニット110によって合成部111までの伝送線路の長さ(伝送線路長)が異なる場合においても高い出力を維持することができる。同様にまた、発電デバイス101における発電環境(温度、放射照度など)が異なる場合においても高い出力を維持することができる。
上記の発電システムでは、発振位相制御部120が各発振器102に対して位相の調整を行うが、他の方法によって位相の調整を行ってもよい。本発明においては、少なくとも2つの発電ユニット110−1、110−2から出力されるRFエネルギが合成される際に位相が一致するように構成されていればよい。
図2は、本発明による他の発電システムの概略構成を示すブロック図である。図2に示す発電システムは、上記の発振位相制御部120の代わりに、インダクタおよび容量素子の少なくとも一方を含むリアクタンス調整回路130を備えている。図2に示す発電システムでは、リアクタンス調整回路130は、第1の発電ユニット110−1に含まれる受電アンテナ108−1と合成部111との間の伝送線路上に挿入されている。なお、リアクタンス調整回路130の位置はこの例に限られず、発振器102−1と送電アンテナ107−1との間に挿入されていてもよい。
リアクタンス調整回路130は、典型的にはLC回路であり、インダクタおよび容量素子の少なくとも一方を含んでいる。リアクタンス調整回路130のリアクタンス値は、第1の発電ユニット110−1からのRF出力および第2の発電ユニット110−2からのRF出力が合成部111で合成される際に位相が一致する値に設定される。このようなリアクタンス調整回路130を伝送線路上に挿入することにより、合成時におけるRF出力の位相のずれを低減し、高い出力を得ることができる。
図2に示される例では、リアクタンス調整回路130による位相調整の効果は第1の発電ユニット110−1に対してのみ発揮されるが、第2の発電ユニット110−2についてもリアクタンス調整回路130による位相の調整を行ってもよい。また、3以上の発電ユニットが並列に接続された構成の場合、全ての発電ユニットからのRF出力の位相が合成時に一致するように、全発電ユニットに対してリアクタンス調整回路130を設けることが好ましい。
以上のように、本発明の発電システムによれば、複数の発電ユニットから出力されるRFエネルギを合成する際に発生し得る位相のずれを低減させることができるため、高効率の発電を実現することが可能となる。以下、本発明の有効性を説明する。
太陽光発電システムにおいて、太陽電池モジュールから合成点までの伝送線路の長さは、一般に太陽電池モジュールごとに異なるため、合成時の各RF出力の位相は、多くの場合一致しない。このため、これらの出力を合成しても高い出力を得ることができない場合がある。一般に、家庭用太陽光発電システムは、約1m角の太陽電池モジュールを10〜20枚程度組み合わせて用いられる。このため、各モジュールからの出力を一箇所でまとめる場合、モジュールによって伝送線路長に最大で約10mの差が生じることになる。伝送線路長がモジュールによって異なることに起因するRF出力の位相差は、周波数が高いほど大きくなる。位相が大きく異なる複数のRF出力を合成すると、総電力量が低下するため、全体の伝送効率が低下するという問題が発生する。
また、各発電ユニット110において、受電アンテナ108の出力端子が負荷に接続された状態において、発電デバイス101の出力インピーダンスと発振器102の入力インピーダンスとをほぼ等しくすることが好ましい。ここで、発電デバイス101の出力インピーダンスは、出力電力が最大となるインピーダンスであることが好ましい。同様に、発振器102から出力されるRFエネルギの出力インピ−ダンスZoutと、送電アンテナ107の入力インピーダンスZinとをほぼ等しくすることが好ましい。また、発振器102を送電アンテナ107に接続した状態において、受電アンテナ108の出力インピーダンスZoutと、受電アンテナ108に接続される負荷の抵抗値Rとをほぼ等しくすることが好ましい。これらの条件は、回路ブロック間でのRFエネルギの多重反射を抑制し、総合発電効率を高めるために有効な条件である。しかし、この条件を満たすために各回路ブロックの入出力インピーダンスを変換する際にも、多くの場合、位相変化が生じる。
本発明は、以上の問題点を解決するものであり、各発電ユニット110からのRF出力を合成する際に効率が低下しない発電システムおよび発電ユニットを実現できる。また、無線で電力が伝送されるため、敷設作業や一部のセルやモジュールの取り替え作業を簡便にすることができる。
本発明は、太陽光発電システムのみならず、固体高分子形などの燃料電池を用いた発電システムなどにも応用することができる。本発明によれば、発電スタックにおけるセル毎に低い出力電圧を昇圧できるとともに、入力する水素ガスの圧力や環境温度などの変動に対して安定したエネルギ出力を維持することができる。また、燃料電池を用いた発電システムにおいても、一部のセルが故障した場合にセルの取り替え作業を簡便に行うことができる。
以下、図3から図12を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。以下の説明において、同一または対応する構成要素には同一の符号を付している。
(実施形態1)
まず、図3から図8を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。図3は、本実施形態による発電システムの全体構成を示す図である。本実施形態の発電システムは、太陽光エネルギをRFエネルギに変換して伝送する複数の発電ユニット110−1、・・・110−nと、各発電ユニットから伝送されたRFエネルギを合成して出力する合成部111と、合成部111によって合成されたRFエネルギを直流エネルギまたはRFエネルギよりも低周波の交流エネルギに変換して出力する電力変換部112とを備えている。電力変換部112から出力された直流または交流エネルギは、負荷(電子機器など)や系統に送出されて利用される。
各発電ユニット110は、太陽光エネルギを直流エネルギに変換する発電デバイス101と、発電デバイス101から出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器102と、発振器102から出力されたRFエネルギを無線で伝送する無線伝送部103とを有している。無線伝送部103は、直列共振回路である送電アンテナ107と、並列共振回路である受電アンテナ108とを有し、後述する磁気共振方式によるエネルギ伝送を行う。各発電ユニット110において、受電アンテナ108は、送電アンテナ107から無線で伝送されたRFエネルギを受け取り、合成部111に出力する。
本実施形態において、発電ユニットの個数は2個以上であれば何個でもよい。本実施形態では、発電ユニットの個数はn個(nは2以上の整数)であるものとする。発電ユニットの個数nは、発電デバイス101を敷設する場所の面積や必要とする電力に応じて任意に設定することができる。なお、図3では、第nの発電ユニット110nに含まれる構成要素を示す参照符号の後ろには「−n」を付している。本実施形態において、発電ユニットを区別せずに各構成要素を示す場合には参照符号の後ろの「−1」、・・・「−n」を省略する。
本実施形態の発電システムは、n個の発電ユニット110−1、・・・、110−nに1対1に対応して配置されたn個のパルス生成器113−1、・・・113−nと、各パルス生成器にパルスの生成タイミングを指示するパルス制御部114とをさらに備えている。各パルス生成器113は、各発電ユニット110内において発振器102に近接して配置されている。本実施形態では、パルス制御部114およびn個のパルス生成器113−1、・・・113−nが本発明における発振位相制御部120に相当する。各パルス生成器113は、対応する発電ユニット110に含まれる発振器102から出力されるRFエネルギの位相を規定するパルスを生成し、当該発振器102に入力する。また、各パルス生成器113は、パルス制御部114から伝送される制御信号を受ける入力部113aを有しており、受けた制御信号に応答してパルスを生成する。パルス制御部114は、合成時に発生し得るRF出力の位相のずれを低減するように各パルスの生成タイミングを決定し、各パルス生成器113の入力部113aにパルスの生成を指示する制御信号を有線または無線で送出する。パルス制御部114およびパルス生成器113による位相制御の詳細は後述する。
本実施形態において、パルス生成器113から発振器102までの伝送距離、および発振器102から送電アンテナ107までの伝送距離は全ての発電ユニット110−1、・・・110−nについて同一であるものとする。ただし、これらが全ての発電ユニットについて同一ではない場合であっても、各々の伝送距離の差を考慮して後述する位相制御を行うことによって本実施形態の効果を得ることは可能である。なお、本実施形態では、パルス生成器113と発振器102とは別々の回路に分かれているが、パルス生成器113は、発振器102と一体化されていてもよい。
以下、本発電システムの各構成要素を具体的に説明する。
本実施形態における発電デバイス101は、直列または並列に接続された複数の太陽電池(セル)を有している。発電効率向上の観点から、結晶シリコン系の太陽光発電素子を用いることが好ましい。しかし、本発明に使用可能な太陽電池は、ガリウム砒素、CIS系などの化合物半導体材料を用いた各種の太陽光発電素子であってもよいし、有機材料を用いた各種の太陽光発電素子であってもよい。また、使用する半導体の結晶構造は、単結晶、多結晶、アモルファスのいずれであってもよい。各種半導体材料を積層したタンデム型の太陽光発電素子を利用してもよい。
発振器102には、D級、E級、F級などの、高効率且つ低歪な特性を実現できる増幅器を用いることができる。図4Aは、本実施形態における発振器102の具体的な構成例を示す図である。本構成は、一般にE級発振回路と呼ばれる構成である。発振器102は、MOSFET等のスイッチング素子21、インダクタ22、23、コンデンサ24、25を含んでいる。スイッチング素子21へのゲート駆動パルスとしてパルス生成器113から出力される周波数f0のパルスが入力される。インダクタ22、23のインダクタンスおよびコンデンサ24、25の容量は、発振器102から出力されるRFエネルギの周波数がf0になるように調整されている。ここで、発振器102から出力されるRFエネルギの位相は、パルス生成器113から出力されるパルスによるスイッチング素子21のスイッチングタイミングによって決定される。発振器102から出力されるRFエネルギは、無線伝送部103へ入力される。周波数f0は、例えば50Hz〜300GHz、より好ましくは100kHz〜10GHz、さらに好ましくは500kHz〜20MHzの範囲内に設定される。
無線伝送部103は、送電アンテナ107と受電アンテナ108とを有している。送電アンテナ107は、インダクタおよび容量素子を含む直列共振回路である。また、受電アンテナ108は、インダクタおよび容量素子を含む並列共振回路である。送電アンテナの共振周波数fTおよび受電アンテナの共振周波数fRは、発振器102によって生成されるRFエネルギの周波数f0に等しくなるように設定されている。共振周波数fT、fRが周波数f0に等しく設定されることにより、発振器102への入力直流インピーダンスZidcと比較して、受電アンテナの出力インピーダンスZoutを高い値に設定することが可能となる。
各インダクタは、良好な導電率を有する銅や銀などの導電体から好適に形成され得る。RFエネルギの高周波電流は、導電体の表面を集中して流れるため、発電効率を高めるために導電体の表面を高導電率材料で被覆してもよい。導電体の断面中央に空洞を有する構成からインダクタを形成すると、軽量化を実現することができる。更に、リッツ線などの並列配線構造を採用してインダクタを形成すれば、単位長さ辺りの導体損失を低減できるため、直列共振回路、および並列共振回路のQ値を向上させることができ、より高い効率で電力伝送が可能になる。
製造コストを抑制するために、インク印刷技術を用いて、配線を一括して形成することも可能である。各インダクタの周辺に磁性体を配置してもよいが、送電アンテナ107におけるインダクタと受電アンテナ108におけるインダクタとの間の結合係数を極端に高い値に設定することは好ましくない。このため、両インダクタ間の結合係数を適度な値に設定できる空芯スパイラル構造を有するインダクタを用いることがより好ましい。
各インダクタは、一般的にはコイル形状を有している。しかし、そのような形状に限定されない。高周波では、ある程度の線長をもつ導体は、インダクタンスをもつため、インダクタとして機能する。また、他の例として、ビーズ状のフェライトに導線を通しただけのものでもインダクタとして機能する。
伝送効率の観点から、送電アンテナ107におけるインダクタと受電アンテナ108におけるインダクタとは、対向するように配置されることが好ましい。ただし、両インダクタの配置は、対向配置に限定されず、両者が直交しないように配置されていればよい。
容量素子には、例えばチップ形状、リード形状を有する、あらゆるタイプのキャパシタを利用できる。空気を介した2配線間の容量を容量素子として機能させることも可能である。容量素子をMIMキャパシタから構成する場合は、公知の半導体プロセスまたは多層基板プロセスを用いて低損失の容量回路を形成できる。
合成部111は、図4Bに示すように、各発電ユニット110のプラス側の出力端子同士およびマイナス側の出力端子同士が接続された構成を有し、各発電ユニット110から出力されるRFエネルギを合成する。合成部111は、好ましくは、接続点間における逆電流を防ぐための複数のダイオードを含んでいる。合成されたRFエネルギは、電力変換部112に出力される。なお、合成部111は、図4Bに示す構成に限らず、複数の発電ユニットから出力されるRFエネルギを合成できればどのような構成であってもよい。
電力変換部112は、合成部111によって合成されたRFエネルギを直流エネルギまたは商用で用いられる交流エネルギに変換する。RFエネルギを直流エネルギに変換する場合、電力変換部112として公知の整流回路を用いることができる。例えば、両波整流やブリッジ整流回路を利用できる。また、半波倍電圧整流回路や両波倍電圧整流回路を用いることができるし、3倍以上の昇圧比を実現できる高倍圧整流回路方式を用いてもよい。
また、RFエネルギを商用で用いられる交流エネルギに変換する場合、公知の周波数変換回路を用いることができる。周波数変換回路には様々な方式の回路があるが、マトリックスコンバータ方式のように直接周波数変換を行う構成や、間接周波数変換を行う回路が採用できる。また、出力構成として、単相や三相などの出力に対応した周波数変換回路技術は、いずれも、本発明に適用可能である。
以下、本実施形態における磁気共振方式による無線電力伝送を説明する。
本実施形態における「アンテナ」は、電磁波の送信または受信を行うための通常のアンテナではなく、共振器の電磁界の近接成分(エバネッセント・テール)を利用した結合を利用して2つの物体間でエネルギ伝送を行うための要素である。共振電磁界を利用した無線電力伝送によれば、電磁波を遠方に伝播させるときに生じるエネルギ損失が生じないため、極めて高い効率で電力を伝送することが可能になる。このような共振電磁界(近接場)の結合を利用したエネルギ伝送では、ファラデーの電磁誘導の法則を利用した公知の非接触電力伝送に比べて損失が少ないだけではなく、例えば数メートルも離れた2つの共振器(アンテナ)間で高効率にエネルギを伝送することが可能になる。
このような原理に基づく無線電力伝送を行うには、2つの共振アンテナ間で結合を生じさせる必要がある。上述のように、本実施形態における共振周波数fTおよび共振周波数fRは、いずれも、発振器102の周波数f0に等しく設定されるが、fTおよび/またはfRは、周波数f0と完全に一致する必要はない。共振器間の結合に基づき高効率なエネルギ伝送を実現するためには、fT=fRが理想的であるが、fTとfRとの差異が充分に小さければよい。本明細書において、「周波数fTが周波数fRに等しい」とは、以下の式1が満足される場合であると定義する。
(式1) |fT−fR|≦fT/QT+fR/QR

ここで、QTは送電アンテナの共振器としてのQ値、QRは受電アンテナ108の共振器としてのQ値である。一般に、共振周波数をX、共振器のQ値をQxとした場合、この共振器の共振が生じる帯域はX/Qxに相当する。上記の式1の関係が設立すれば、2つの共振器間で磁気共振によるエネルギ伝送が実現する。
次に、図5を参照する。図5は、送電アンテナ107および受電アンテナ108の等価回路を示す図である。本実施形態における送電アンテナ107は、第1インダクタ107aおよび第1容量素子107bが直列に接続された直列共振回路である。また、受電アンテナ108は、第2インダクタ108aおよび第2容量素子108bが並列に接続された並列共振回路である。送電アンテナ107は寄生抵抗成分R1を有し、受電アンテナ108の並列共振回路は寄生抵抗成分R2を有している。なお、後述する昇圧効果を利用しない場合、送電アンテナ107は直列共振回路である必要はなく、並列共振回路であってもよい。また、受電アンテナ108は並列共振回路に限らず直列共振回路であってもよい。
以上の構成により、送電アンテナ107と受電アンテナ108との間の伝送距離を長く設定した場合であっても高効率な電力伝送が可能となる。本実施形態の発電システムによれば、送電アンテナ107と受電アンテナ108との間で配線による接続を行うことなく電力を伝送できるだけでなく、後述するように、低電圧のエネルギ(電力)を伝送時に効率的に昇圧することができる。その結果、発電デバイス(太陽光発電デバイス)101が生成する低電圧のエネルギを受電アンテナ108側で高電圧のRFエネルギとして取り出すことが可能となる。
なお、送電アンテナ107と受電アンテナ108との間には壁や屋根などの障害物が存在していてもよい。また、送電アンテナ107および受電アンテナ108の両方が屋内に配置されていてもよいし、屋外に配置されていてもよい。いずれの場合でも、2つのアンテナ間で無線電力伝送を行う際に昇圧を行うことができる。送電アンテナ107および受電アンテナ108の両方が屋内に設置されている場合、屋外の発電デバイス101と送電アンテナ107との接続は、例えば建物の壁に設けた開口部を介した有線によって実現され得る。また、送電アンテナ107および受電アンテナ108の両方が屋外に設置されている場合、屋内の電子機器と受電アンテナ108との接続も、例えば建物の壁に設けた開口部を介した有線によって実現され得る。屋内外の有線接続を省略するためには、送電アンテナ107を屋外に設置し、受電アンテナ108を屋内に設置することが好ましい。
本実施形態における無線電力伝送の効率は、送電アンテナ107と受電アンテナ108との間隔(アンテナ間隔)や、送電アンテナ107および受電アンテナ109を構成する回路素子の損失の大きさに依存する。なお、「アンテナ間隔」とは、実質的に2つのインダクタ107a、108aの間隔である。アンテナ間隔は、アンテナの配置エリアの大きさを基準に評価することができる。
本実施形態において、インダクタ107a、108aは、いずれも、平面状に広がり、両者は互いに平行に対向するように配置される。ここで、アンテナの配置エリアの大きさとは、サイズが相対的に小さなアンテナの配置エリアの大きさを意味し、アンテナを構成するインダクタの外形が円形の場合はインダクタの直径、正方形の場合はインダクタの一辺の長さ、長方形の場合はインダクタの短辺の長さとする。本実施形態によれば、アンテナ間隔が、アンテナの配置エリアの大きさの1.5倍程度であっても、90%以上の無線伝送効率でエネルギを伝送することが可能である。
次に、図5を参照しながら、本実施形態における無線伝送部103で発現する昇圧効果を説明する。ここでは、送電側の共振器107と受電側の共振器108とが、結合係数kで結合しているものとする。結合係数は、同一周波数f0で共振する2つの共振器を近接させた際に分離する2つの共振周波数fLとfHを計測することにより、以下の式から導かれる。
(式2) k=(fH2−fL2)/(fH2+fL2
また、インダクタンスL1の第1インダクタ107aとインダクタンスL2の第2インダクタ108aとの間に生じる相互インダクタンスMと結合係数kとの間には、以下の関係が成立する。
(式3) M=k×(L1×L2)0.5
このように、結合係数kは、インダクタ間または共振器間の結合強度の指標として従来から用いられている公知の結合係数と同一の指標である。結合係数kは、0<k<1の関係を満たす数値である。従来の電磁誘導によるエネルギ伝送では、結合係数kを可能な限り大きく、ほぼ1に等しくなるように、共振器の構成および配置関係が設計される。一方、後述するように、本発明では、結合係数kを1に近い値に設定する必要はなく、例えば0.5以下の値に設定することも可能である。
受電アンテナ108の並列型共振回路において、第2インダクタ108aを流れる高周波電流をIL2、第2容量素子108bを流れる高周波電流をIC2とすると、図5に示す向きに流れる出力高周波電流I2は、以下の式によって表される。
(式4) I2=−IL2−IC2
また、第1インダクタ107aを流れる高周波電流をIL1とすると、第2インダクタ108aを流れる高周波電流IL2、第2容量素子108bを流れる高周波電流IC2、第2インダクタ108aのインダクタンスL2、第2インダクタ108aの寄生抵抗R2、第1インダクタ107aのインダクタンスL1、第2容量素子108bのキャパシタンスC2を用いて、以下の式が導かれる。
(式5) (R2+jωL2)×IL2+jωM×IL1=IC2/(jωC2)
受電アンテナ108では共振条件が成立しているため、以下の(式6)が成立している。
(式6) ωL2=1/(ωC2)
上記の(式4)〜(式6)から、以下の式が成立する。
(式7) R2×IL2+jωM×IL1=jωL2×I2
(式7)を変形して以下の式を得る。
(式8) I2=k×(L1/L2)0.5×IL1−j(R2/ωL2)×IL2
一方、送電アンテナ107の共振器の低損失性を評価する指標Q値は、次の(式9)によって表される。
(式9) Q2=ωL2/R2
ここで、共振器のQ値が非常に大きい場合、(式8)の右辺第2項を無視する近似が成り立つ。よって、最終的に、以下の(式10)により、受電アンテナ108で生じる高周波電流(出力電流)I2の大きさが導出される。
(式10) I2=k×(L1/L2)0.5×IL1
ここで、高周波電流I2は、送電側の共振器(送電アンテナ107)に入力される高周波電流I1(=第1インダクタ107aを流れる高周波電流IL1)、共振器(アンテナ)間の結合係数k、第1および第2インダクタンスL1、L2に依存する。
上記の(式10)から、本実施形態における各発電ユニット110の昇流比Irは、次の(式11)によって表される。
(式11) Ir=|I2/I1|/Voc=k/Voc×(L1/L2)0.5
また、昇圧比Vrおよびインピーダンス変換比Zrは、それぞれ、次の(式12)および(式13)によって表される。
(式12) Vr=(Voc/k)×(L2/L1)0.5
(式13) Zr=(Voc/k)2×(L2/L1)
(式12)からわかるように、(L2/L1)>(k/Voc)2の条件が成立するとき、昇圧比Vrは1よりも大きくなる。このことから、結合係数kが小さくなると、昇圧比Vrが上昇することがわかる。従来の電磁誘導によるエネルギ伝送では、結合係数kを低下させることは、伝送効率の大幅な低下につながる。しかし、本発明で用いられる磁気共振方式では、結合係数kを低下させても伝送効率の大幅な低下には至らない。特に、送電アンテナ107および受電アンテナ108の各々を構成する共振器のQ値を高い値に設定すれば、昇圧比Vrを増大させながら、伝送効率の低下を抑制することが可能である。
太陽光発電システムにおけるパーシャルシェイディングの影響を回避するためには、多数の太陽光発電デバイスを直列に接続する構成よりも、複数の太陽光発電デバイスを並列に接続する構成を採用することが好ましい。2つの太陽光発電デバイスを直列に接続する場合と同等の電圧特性を、2つの太陽光発電デバイスを並列に接続することによって得るためには、各太陽光発電デバイスの出力電圧を2倍に昇圧する必要がある。
(式12)から、昇圧比Vrが2に等しくなるのは、(L2/L1)=4×(k/Voc)2の関係が満足されるときである。したがって、本実施形態では、(L2/L1)≧4×(k/Voc)2の関係が満足されることが好ましい。また、(L2/L1)≧100×(k/Voc)2の関係が成立すると、10倍以上の昇圧比Vrを実現することができる。さらに、(L2/L1)≧10000×(k/Voc)2の関係が成立すると、100倍以上の昇圧比Vrを実現することができる。
本実施形態における無線伝送部103によれば、このように高い昇圧比Vrを実現することが可能となる。このようにして、発電ユニット110ごとに昇圧されたRFエネルギは、合成部111に入力される。
以下、本実施形態における位相制御を説明する。
本実施形態の発電システムにおいては、受電アンテナ108から合成部111までの伝送線路の長さが発電ユニット110によって異なっている。このため、各発電ユニット110から出力されるRFエネルギが合成される際に発生し得る位相のずれを低減させる位相制御が行われる。具体的には、各発電ユニット110における受電アンテナ108から合成部111までの伝送線路の長さ(伝送線路長)を示す情報が予め使用者や設計者などによって設定され、パルス制御部114に記録されている。パルス制御部114は、設定された伝送線路長を示す情報に従って、各パルス生成器113に対してスイッチングタイミングを示す制御信号(パルス発生トリガ)を送出する。
図6は、パルス制御部114が実行する制御動作の一例を示す図である。図示される例は、2つの発電ユニット110−1、110−2に対して位相制御を行ったときの制御動作を示している。ここで、伝送線は1.46mmの絶縁被覆を持つ直径1.1mmの銅線であり、f0は1.8MHz、インピーダンスはZ=35Ω、単位長さあたりの位相変化は3.13deg/mであると仮定している。また、第1の発電ユニット110−1の伝送線路長および第2の発電ユニット110−2の伝送線路長がそれぞれLen1(m)、Len2(m)(Len1<Len2)であるとする。このとき、合成部111によって合成される際の第1の発電ユニット110−1から出力されるRFエネルギと第2の発電ユニット110−2から出力されるRFエネルギとの間の位相差は、3.13×(Len2−Len1)degとなる。パルス制御部114は、第1の発電ユニット110−1に対応する第1のパルス生成器102−1から出力されるパルスよりも第2の発電ユニット110−2に対応する第2のパルス生成器102−2から出力されるパルスの方がΔP=3.13×(Len2−Len1)degだけ位相が進むようにパルス発生トリガを第2のパルス生成器102−2に与える。これにより、第1の発電ユニット110−1から出力されるRFエネルギおよび第2の発電ユニット110−2から出力されるRFエネルギは、位相が互いに一致した状態で合成部111へ入力される。合成部111は、各発電ユニットから入力される同位相のRFエネルギを合成し、電力変換部112に出力する。
なお、上記の説明では、パルス制御部114によるスイッチングタイミングの制御において第1のパルス生成器102−1のパルス生成タイミングを基準として第2のパルス生成器102−2のパルス生成タイミングを変更することとしたが、基準とする発電ユニット110はどれを選択してもよい。並列に接続された各発電ユニット110から出力されるRFエネルギの位相が合成時に一致するように制御されればよい。
また、各発電ユニットから出力されたRFエネルギの位相は、合成部111に入力される時点において多少ずれていてもよい。これらの位相が完全に一致することが理想であるが、合成時における各RF出力の位相差が低減するように各パルス生成器のパルス生成のタイミングが調整されていれば本実施形態の効果は得られる。本明細書において、2つの位相が一致するとは、位相差の絶対値が3deg以下であるものと定義する。
図7は、シミュレーションによって得られた、本実施形態の発電システムによる効果を示す図である。図7は、合成部111によって合成される際の2つの発電ユニット110−1、110−2から出力された各RF出力の波形、および両者を合成した波形を示している。図7(a)は上記の位相制御を行わなかった場合における結果を示し、図7(b)は上記の位相補正を行った場合における結果を示している。図7において、P1outは第1の発電ユニット110−1のRF出力の電力波形、P2outは第2の発電ユニット110−2のRF出力の電力波形、Psumは合成部111の出力電力波形を示している。
本シミュレーションにおいて、伝送線路条件は、上記と同様、第1の発電ユニット110−1および第2の発電ユニット110−2の伝送線路長をそれぞれ1m、11mとした。伝送線として1.46mmの絶縁被覆を持つ直径1.1mmの銅線を用い、f0を1.8MHzとした。また、2つの発振器102−1、102−2から出力されるピーク電力を61.4W(25.6V、2.4A)とした。無線伝送部103の通過特性として入力インピーダンスを10Ω、出力インピーダンスを35Ω、伝送効率を94.5%とした。この時、伝送線路長の差に基づく位相補正を行わない場合の合成部111の出力は102.3W、位相補正を行った場合の合成部111の出力は110.3Wとなった。したがって、伝送線路長差が10mの場合、位相補正により、伝送電力量のピーク値を約8%向上させることができることがわかった。
電力変換部112は、以上の構成によって合成されたRFエネルギを負荷の仕様に合わせて直流またはRFエネルギよりも低周波(例えば、60Hz以下)の交流電力に変換し、負荷や系統に出力する。また、電力変換部112を用いず、合成部111から出力される合成されたRFエネルギをそのまま利用することも可能である。例えば、合成部111からのRF出力を、同じ共振周波数f0をもつ別の磁気共振方式の無線電力伝送システム(電気自動車などの充給電を行うシステムなど)の送電アンテナへ入力してもよい。
以上のように、本実施形態の発電システムによれば、非接触エネルギ伝送において、伝送線路長が発電ユニット110ごとに異なる場合であっても、発電デバイス101から最大電力を取り出すことができる。さらに、系統や負荷へ出力する際に必要な電圧にまで昇圧することが可能となる。その結果、敷設コストを低減し、発電モジュールが劣化した際の取り替え作業を簡便にでき、余分な昇圧デバイスが不要な発電システムを実現することができる。
本実施形態の発電装置によれば、電力変換部112の出力電圧を、例えば、200V〜300Vの範囲にまで高めることができる。さらに、一般の変換回路(パワーコンディショナ)や直流給電システムなどで要求される300V〜400V程度にまで高めることや、それ以上の昇圧も可能である。
なお、本実施形態では、各発電ユニット110はパルス生成器113を含むように構成されているが、パルス生成器113は発電ユニット110とは離れた位置に配置されていてもよい。図8は、そのような構成例を示す図である。図示される構成では、n個のパルス生成器113−1、・・・、113−nが1つの筐体内に搭載され、各発電ユニット110から離れた場所に設置されている。このような構成であっても、各パルス生成器113から対応する発振器102までの伝送距離の差を考慮して適切なタイミングでパルスを発生させれば、発振器102から出力されるRFエネルギの位相を適切に調整することができる。
本実施形態では、パルス制御部114および複数のパルス生成器113−1、・・・、113−nを用いて位相の調整を行うが、他の方法で位相制御を行ってもよい。例えば、パルス制御部114およびパルス生成器113を用いず、図2に示すリアクタンス調整回路130を伝送線路上に挿入してもよい。リアクタンス調整回路130は、例えばインダクタおよび容量素子を含むLC回路であり、発振器102から送電アンテナ107までの間、または受電アンテナ108から合成部111までの間に接続される。インダクタンス成分および/または容量成分が適切に設定されたリアクタンス調整回路130を用いることにより、伝送されるRFエネルギを所望の位相にすることができる。それにより、合成時の各RFエネルギの位相差を低減させることが可能である。
(実施形態2)
次に、図9を参照しながら本発明の第2の実施形態を説明する。
本実施形態の発電システムは、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて各回路ブロックのインピーダンスを整合させることができる点が実施形態1の発電システムとは異なっている。以下、実施形態1の発電システムと異なる点を中心に説明し、重複する事項についての説明は省略する。
発電デバイス101が太陽電池セルである場合、照射する太陽光の強度やセルの温度などの環境条件によって発電デバイス101の出力インピーダンスが変化することがある。このため、固定の負荷を太陽電池によって駆動するとき、照射する太陽光の強度やセルの温度変化によってセルの出力インピーダンスと伝送路のインピーダンスとの間に不整合が生じる。その結果、伝送路における電力の伝達効率が低下するという課題がある。
また、発電デバイス101が燃料電池である場合も、発電デバイス101の環境条件によって出力インピーダンスが変動するという課題がある。例えば、注入する水素ガスの圧力やセルの温度の変動によって発電デバイス101の出力インピーダンスが変動することがある。このため、伝送路の入出力インピーダンスを変換することで、伝送路のインピーダンスを整合させる必要がある。
しかしながら、インピーダンス変換を行った場合、一般に、変換された回路ブロックにおけるリアクタンス値が変化するため、伝送されるRFエネルギの位相がずれる。その結果、各発電ユニット101から出力されるRFエネルギの合成点における位相は、インピーダンス変換を行う前に比べて変化する。本実施形態の発電システムによれば、このインピーダンス変換に伴う各発電ユニット110のRF出力の位相を適切に補正することができる。
図9は、本実施形態の発電システムの構成を示す図である。本実施形態における発電システムは、実施形態1における構成要素に加え、発電デバイス101から出力される電流および電圧を計測する計測部51と、伝送路の各回路ブロックにおける入出力インピーダンスを制御するインピーダンス制御部52とを備えている。発電システムはまた、インピーダンス変換に伴うRF出力の位相のずれの量の推定値を示す情報が格納された位相ずれデータメモリ53を備えている。
インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの値に基づいてインピーダンス変換を実行する。本実施形態における位相ずれデータメモリ53は、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動と、それに伴うインピーダンス変換の結果として生じるRFエネルギの位相のずれの大きさとの対応関係を示すデータが格納される。
以下、本実施形態の発電システムにおけるインピーダンス整合の動作を説明する。
まず、各発電ユニット110において、発電デバイス101により生成された直流エネルギは発振器102に送られる。計測部51は、発電デバイス101から出力される電流と電圧を測定し、インピーダンス制御部52に測定結果を送る。インピーダンス制御部52は、入力された電流、電圧値から発電デバイス101の出力インピーダンスを算出し、算出した出力インピーダンスの値に応じて最も伝送効率が高くなるように伝送線路上の各回路ブロックにおけるインピーダンスを予め設定された値に変換する。具体的には、インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて、各発電ユニット110における発振器102の入力インピーダンス、送電アンテナ107の入力インピーダンス、受電アンテナ108の出力インピーダンスを最適な値に設定する。
図10は、インピーダンス制御部52の構成例を示す図である。インピーダンス制御部52は、出力先における入力インピーダンスを変化させるスイッチング制御部52aと、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて出力先の入力インピーダンスを変化させるために参照するデータが記録されたインピーダンス対応テーブル52bとを備えている。ここで、出力先とは、発振部102、送電アンテナ107、および受電アンテナ108を指す。インピーダンス対応テーブル52bは、例えば不図示のメモリに格納されている。本実施形態における発振器102、送電アンテナ107、および受電アンテナ108は、インピーダンス制御のための複数のスイッチを有している。各機能部における複数のスイッチのON、OFFの組み合わせを変えることにより、各機能部におけるインピーダンスを変化させることができる。インピーダンス対応テーブル52bには、発電デバイス101の出力インピーダンスの範囲と、出力先における各スイッチのON、OFFの組み合わせとの対応付けが記録されており、予め設計時に設定されている。インピーダンス対応テーブル52bは、例えば以下の表1に示されるようなテーブルである。表1では、発振器102におけるスイッチQ1〜Q3に関する列のみが記載されているが、実際のテーブルには、送電アンテナ107および受電アンテナ108のスイッチに関する列も含まれる。以下の表1は、発電デバイス101の出力インピーダンスZの値の範囲に応じて発振器が切り替えられる事を示している。
Figure 0005870276
図11は、本実施形態におけるインピーダンス整合の処理の流れを示すフロー図である。まず、インピーダンス制御部52は、計測部51によって計測された電流(I)および電圧(V)から、発電デバイス101の出力インピーダンス(Z=V/I)を測定する。測定されたZの値に基づいて、インピーダンス対応テーブル52bから、出力先ごとの対応するスイッチの組み合わせを決定する。決定した組み合わせに対応するインピーダンスが、現時点で設定されているインピーダンスと異なる場合、上記スイッチの組み合わせに従って出力先のスイッチのON、OFFが切り替えられる。決定した組み合わせに対応するインピーダンスが、現時点で設定されているインピーダンスと同じである場合、スイッチの切り替えは行われない。
図11に示されるインピーダンス制御部52における処理の開始タイミングは、一定時間ごとであってもよいし、発電デバイス101の出力インピーダンスの値の変動が予め定めた値以上になったときに行うものとしてもよい。このような制御により、発電デバイス101の後段の発振部102、送電アンテナ107、および受電アンテナ108のインピーダンスを、発電デバイス101の出力インピーダンスに整合させることができる。このように、環境条件によって変動する発電デバイス101の出力インピーダンスに各機能部の入力インピーダンスを整合させることによって発電デバイス101から常に最大の出力電力を取り出すことができる。
なお、本明細書において、2つのインピーダンスが「整合する」とは、インピーダンスが厳密に一致する場合に限られず、2つのインピーダンスの差異が、大きい方のインピーダンスの25%以下である場合を含むものと定義する。
インピーダンス変換の具体的な方法としては、以下のような方式がある。まず、発振器102の場合、異なる入力インピーダンスを持つ複数の発振回路の中から、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて接続される発振回路を上記スイッチング制御部52aによって切り替えるという方式がある。
送電アンテナ107および受電アンテナ108については、例えば以下に示す4通りの方式がある。なお、送電アンテナ107および受電アンテナ108については同様の方式を用いることができるため、以下、送電アンテナ107におけるインピーダンス変換についてのみ説明する。
図12(a)は、送電アンテナ107におけるインピーダンス可変方式の第1の例を示している。この例では、送電アンテナ107は、直列接続された複数のインダクタと、それらに直列に接続された複数の容量素子とを有している。この回路には複数のスイッチが設けられており、インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの値に基づいて、これらのスイッチを切り替える。これにより、インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて送電アンテナ107の入力インピーダンスを変化させることが可能となる。
図12(b)は、送電アンテナ107におけるインピーダンス可変方式の第2の例を示している。送電アンテナ107は、互いに異なるインダクタンスをもつ並列接続された複数のインダクタ107aaと、これらのインダクタに近接して配置されたインダクタ107abとを有している。これは、複数のインダクタ107aaのうちの1つからインダクタ107abに電磁誘導の原理によって電力を伝送する受動回路を有する構成である。この方式では、電流が流れるインダクタ107aaを切り替えることによってインダクタ107aaと107abとで形成されるインダクタンス成分、およびインダクタ107aaと107abとの間の容量成分が変化し、インピーダンスを変化させることができる。インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの値に基づいて、複数のインダクタ107aaのうちの1つを選択し、選択したインダクタ107aaに電流が流れるようにスイッチを切り替える。これにより、インピーダンス制御部52は、送電アンテナの入力インピーダンスを変化させることができる。
図12(c)は、送電アンテナ107におけるインピーダンス可変方式の第3の例を示している。この例では、送電アンテナ107は、インダクタと、インダクタに直列に接続された複数の容量素子と、金属体または磁性体を有する可動部115とを有している。このような構成により、金属体を近づけることによって容量成分を変化させ、磁性体を近づけることによってインダクタンス成分を変化させることができる。これにより、送電アンテナ107の入出力インピーダンスを変化させる。また、複数の容量素子に接続されたスイッチを開閉することによっても送電アンテナ107の入出力インピーダンスを変化させることができる。インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの値に基づいて、インダクタと可動部との距離を変化させるともに、複数の容量素子のうちの少なくとも1つに電流が流れるようにスイッチの開閉制御を行う。これによって発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて送電アンテナ107の入力インピーダンスを変化させることができる。
図12(d)は、送電アンテナ107におけるインピーダンス可変方式の第4の例を示している。この例では、送電アンテナ107は、異なる入力インピーダンスを持つ複数の共振器を有する。これらの共振器は並列に接続され、発電デバイス101の出力インピーダンスの変動に応じて使用する共振器が切り替えられる。インピーダンス制御部52は、発電デバイス101の出力インピーダンスの値に基づいて、複数の共振器から1つを選択し、選択した共振器に電流が流れるようにすることによって送電アンテナ107の入力インピーダンスを変化させる。この際、使用しない共振器に電力が伝送されることを防ぐため、使用しない共振器は接地されない。
インピーダンス制御部52におけるスイッチング制御部52aは、例えば上記の4つの方式のうち、少なくとも1つの方式を用いて送電アンテナ107のインピーダンスを変化させる。これにより、発電デバイス101の出力インピーダンスに送電アンテナ107の入力インピーダンスを整合させることができる。
なお、インピーダンス制御部52は、発振器102、送電アンテナ107、および受電アンテナ108の全てに対してインピーダンス変換を行うことが好ましいが、これらの少なくとも1つに対してのみインピーダンス変換を行うように構成されていてもよい。
上記のインピーダンス変換によって、一般に、発振器102、無線伝送部103が持つインダクタンス成分および容量成分の少なくとも一方が変化するため、入出力の間で位相のずれが発生する。図9に示す位相ずれデータメモリ53には、前述のように、インピーダンス変換に伴う位相のずれの大きさを示す情報が記録されている。インピーダンス制御部52は、インピーダンス変換を行う際に、パルス制御部114に対して、インピーダンス対応テーブル52bに規定された、出力先ごとの変換後のインピーダンス値を示す情報を出力する。パルス制御部114は、インピーダンス制御部52から出力される情報を受け取るとともに、インピーダンス変換に伴う各発電ユニット110のRF出力の位相のずれを示す情報を位相ずれデータメモリ53から読み出す。パルス制御部114は、位相ずれデータメモリ53から読みだした情報と各発電ユニット110の伝送線路長の情報とに基づいて、発電ユニット全体の位相のずれの量を求める。その後、発電ユニット全体の位相のずれを補正するように各発電ユニット110に対応するパルス生成器113に対してスイッチングタイミングを指示する。このようにして、実施形態1と同様、各発電ユニット110のRF出力の位相を調整し、合成部111から出力される電力の低下を抑えることが可能となる。
以上のように、本実施形態の発電システムによれば、磁気共振方式による非接触エネルギ伝送において、動作環境状態に応じて伝送路の各回路ブロックにおけるインピーダンスを整合させることによって発電デバイスから最大電力を取り出すことができる。さらに、系統や負荷へ電力を出力する際に必要な電圧にまで昇圧することが可能となり、敷設コストが安く、デバイス劣化時のモジュール取り替え作業の簡便で、余分な昇圧デバイスが不要な発電システムを実現することができる。
また、本実施形態の発電装置によれば、電力変換部112の出力電圧を、例えば、200V〜300Vの範囲にまで高めることができる。さらに、一般の変換回路(パワーコンディショナ)や直流給電システムなどで要求される300V〜400V程度にまで高めることや、それ以上の昇圧も可能である。電力変換部112の出力電圧が上記のような高い値になるように、各発電ユニット110における各回路ブロックの入出力インピーダンス、および各発電ユニット110の昇圧比が設定されていることが好ましい。
なお、本実施形態では、全ての発電ユニット110−1、・・・110−nに対して位相のずれを補正するが、少なくとも2つの発電ユニット110−1、110−2について合成時のRFエネルギの位相差が低減するように構成されていればよい。例えば、位相ずれデータメモリ53は、少なくとも2つの発電ユニット110−1、110−2にそれぞれ含まれる発電デバイス101−1、110−2の出力インピーダンスの変動と、2つの発電ユニット110−1、110−2の各RF出力が合成される時点での位相のずれの大きさとの関係を示す情報が格納されていればよい。この場合、発振位相制御部120(本実施形態ではパルス制御部114およびパルス生成器113−1、・・・、113−n)は、位相ずれデータメモリ53の情報に基づいて、上記2つの発電ユニット110−1、110−2にそれぞれ含まれる発振器102−1、102−2からそれぞれ出力されるRFエネルギの位相差を調整するように構成されていればよい。
また、インピーダンス整合および位相制御は、上記の方法に限られず、様々な方法が可能である。例えば、インピーダンス整合に関しては、上記の計測部51を用いず、発電デバイス101の近傍に温度計や照度計などを設置し、それらの計測データから発電デバイス101の出力インピーダンスを推定してもよい。また、位相制御に関しては、例えば上記の位相ずれデータメモリ53を用いず、パルス制御部114に予め組み込まれたプログラムに従って、各発電デバイス101の出力インピーダンス値の変動量に対応する位相の補正量を計算してもよい。
本実施形態の発電システムでは、発振位相制御部120としてパルス制御部114およびパルス生成器113を用いて位相の調整が行われるが、他の方法で位相の調整を行ってもよい。例えば、インピーダンス制御部52が上記のインピーダンス変換を行う際に、各出力先のリアクタンス値を、伝送されるRFエネルギの位相が極力ずれない(約360度ずれる)値に設定することによって位相の調整を行ってもよい。
また、本実施形態の発電システムにおいても、パルス制御部114およびパルス生成器113を用いず、図2に示すリアクタンス調整回路130を伝送線路上に挿入することによって各RF出力の位相を調整してもよい。インダクタンス成分および/または容量成分が適切に設定された回路を選択することによって合成時の各RFエネルギの位相差を低減させることが可能である。
(従来技術との比較)
以下、本実施形態の発電システムの効果を従来技術と比較しながら説明する。
特許文献2に開示されている装置では、2つの磁気共振器の間でエネルギが伝送されるが、その装置は、2つの共振器で同一の共振方式を採用しているため、伝送に際して昇圧効果が発現しない。本実施形態の発電システムによって得られる出力電圧の上昇効果は、送電アンテナの側に直列磁気共振構造を採用するとともに、受電アンテナ108の側に並列磁気共振構造を採用し、これらの異なる共振構造の間でエネルギの伝送が行われたときに生じる新規な効果である。
なお、直列共振回路や並列共振回路は、RFタグに代表される従来の無線通信システムでも使用され得る。しかし、無線通信システムの高周波ブロックの特性試験に用いる測定器の測定端子の終端インピーダンスや高周波ケーブルの特性インピーダンスは、基本的に50Ωに設定されている。よって、無線通信システムのアンテナとの接続点では、送信機器内でも受信機器内でも、インピーダンスを50Ωにあわせて回路ブロック間を接続するのが一般的である。
一方、本実施形態における無線伝送部での入出力インピーダンス変換比Zrは、100を超えたり、条件によっては20000を超えていたり、と極めて高い値を示すように設定される。このような高い入出力インピーダンス変換比Zrは、従来の通信システムでは考慮の対象外である。
また、本実施形態では、2つの共振器(アンテナ)間の距離を大きく設定し、結合係数kを低く設定するほど、より高い昇圧比Vrを得ることができるが、このことは、公知の通信システムに用いられてきた無線伝送部の構造および機能からは容易に想到し得ない効果である。
なお、電源回路などに利用されるトランスでは、2つのインダクタが近接しており、一種の無線電力伝送装置として機能している。しかし、これらのインダクタ間では、磁気共振型の結合は生じていない。なお、トランスでは、第1インダクタの巻数N1に対する第2インダクタの巻数N2の比率を大きくすることにより、昇圧効果を実現することも可能である。しかし、トランス昇圧回路によって例えば10以上の昇圧比を実現しようとすると、巻数N2を巻数N1の10倍以上に増加させる必要がある。巻数N2の大幅な増加は、第2インダクタにおける寄生抵抗成分R2を比例的に上昇させるため、伝送効率の低下を招いてしまう。本実施形態では、巻数N1と巻数N2とが同じ値に設定されていても、高いZrを得ることができる。
本発明の発電システムによれば、敷設コストを削減することができるため、ビルの壁や高所に敷設される太陽光発電システムや燃料電池発電システムへの適用が可能である。
101、101−1、101−2、101−n 発電デバイス
102、102−1、102−2、102−n 発振器
103、103−1、103−2、103−n 無線伝送部
107、107−1、107−2、107−n 送電アンテナ
107a 送電アンテナにおけるインダクタ
107b 送電アンテナにおける容量素子
108a 受電アンテナにおけるインダクタ
108b 受電アンテナにおける容量素子
108、108−1、108−2、108−n 受電アンテナ
110、110−1、110−2、110−n 発電ユニット
111 合成部
112 電力変換部
113、113−1、113−2、113−n パルス生成器
113a パルス生成器の入力部
114 パルス制御部
115 可動部
120 発振位相制御部
130 リアクタンス調整回路
51 計測部
52 インピーダンス制御部
52a スイッチング制御部
52b インピーダンス対応テーブル
53 位相ずれデータメモリ

Claims (14)

  1. 各発電ユニットが、それぞれ、直流エネルギを出力する発電デバイスと、前記発電デバイスから出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器と、前記発振器から出力された前記RFエネルギを送出する送電アンテナと、前記送電アンテナによって送出された前記RFエネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナとを有し、前記送電アンテナの共振周波数および前記受電アンテナの共振周波数は周波数f0に等しく設定され、前記受電アンテナが受け取った前記RFエネルギを出力する、第1の発電ユニットおよび第2の発電ユニットと、
    前記各発電ユニットから出力された前記RFエネルギを受け、前記RFエネルギを合成して出力する合成部と、
    前記第1の発電ユニットから出力された第1のRFエネルギおよび前記第2の発電ユニットから出力された第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1のRFエネルギの位相および前記第2のRFエネルギの位相を一致させるように、前記第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギと前記第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギとの間の位相差を調整する発振位相制御部と、
    を備える発電システム。
  2. 前記各発電ユニットにおいて、前記送電アンテナは直列共振回路であり、前記受電アンテナは並列共振回路である請求項1に記載の発電システム。
  3. 前記発振位相制御部は、
    第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギの位相を規定するパルスを生成し、前記パルスを前記発振器に入力する第1のパルス生成器と、
    第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギの位相を規定するパルスを生成し、前記パルスを前記発振器に入力する第2のパルス生成器と、
    前記第1および第2のパルス生成器にパルスの生成タイミングを指示するパルス制御部と、
    を有している、請求項1または2のいずれかに記載の発電システム。
  4. 前記第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギと前記第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力される前記RFエネルギとの間の位相差は、前記第1の発電ユニットにおける前記受電アンテナから前記合成部までの伝送線路の長さと前記第2の発電ユニットにおける前記受電アンテナから前記合成部までの伝送線路の長さとの差に応じて設定されている、請求項1から3のいずれかに記載の発電システム。
  5. 前記各発電ユニットにおいて、前記発電デバイスの出力インピーダンスの変動に応じて前記発振器の入力インピーダンス、前記送電アンテナの入力インピーダンス、および前記受電アンテナの出力インピーダンスの少なくとも1つを変化させるインピーダンス制御部を備え、
    前記発振位相制御部は、前記インピーダンス制御部が前記発振器の入力インピーダンス、前記送電アンテナの入力インピーダンス、および前記受電アンテナの出力インピーダンスの少なくとも1つを変化させた場合に、前記第1のRFエネルギおよび前記第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1のRFエネルギの位相と前記第2のRFエネルギの位相とを一致させるように、前記第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力されるRFエネルギと前記第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力されるRFエネルギとの間の位相差を調整する、
    請求項1から4のいずれかに記載の発電システム。
  6. 各発電ユニットにおいて、前記発電デバイスの出力電流および出力電圧を計測する計測部を備え、
    前記インピーダンス制御部は、前記計測部によって計測された前記出力電流および前記出力電圧から前記発電デバイスの出力インピーダンスの値を検出する、請求項5に記載の発電システム。
  7. 各発電ユニットに含まれる前記発電デバイスの出力インピーダンスの変動と、前記第1および第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1および第2のRFエネルギの位相のずれの大きさとの関係を示す情報が格納された位相ずれデータメモリを備え、
    前記発振位相制御部は、前記位相ずれデータメモリに格納された情報に基づいて、前記第1の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力されるRFエネルギの位相および前記第2の発電ユニットに含まれる前記発振器から出力されるRFエネルギの位相を同期させる、
    請求項5または6に記載の発電システム。
  8. 前記合成部の出力を直流または60Hz以下の交流に変換して出力する電力変換部を備えている、請求項1から7のいずれかに記載の発電システム。
  9. 前記電力変換部の出力電圧が200〜300Vの範囲になるように、各発電ユニットに含まれる前記発振器の入力インピーダンス、前記送電アンテナの入力インピーダンス、前記受電アンテナの出力インピーダンス、および各発電ユニットの昇圧比が設定されている、前記請求項8に記載の発電システム。
  10. 各発電ユニットに含まれる前記発電デバイスは、太陽光発電デバイスである、請求項1から9のいずれかに記載の発電システム。
  11. 前記太陽光発電デバイスは、結晶系シリコンを用いた太陽光発電デバイスである、請求項10に記載の発電システム。
  12. 各発電ユニットにおいて、前記発電デバイスおよび前記送電アンテナは建物の外側に設置され、前記受電アンテナは前記建物の内部に設置されている、請求項10または11に記載の発電システム。
  13. 各発電ユニットにおいて、前記発電デバイス、前記送電アンテナ、および前記受電アンテナは建物の外側に設置され、前記送電アンテナの少なくとも一部と前記受電アンテナの少なくとも一部とが対向するように配置されている、請求項10または11に記載の発電システム。
  14. 各発電ユニットが、それぞれ、直流エネルギを出力する発電デバイスと、前記発電デバイスから出力された直流エネルギを周波数f0のRFエネルギに変換して出力する発振器と、前記発振器から出力された前記RFエネルギを送出する送電アンテナと、前記送電アンテナによって送出された前記RFエネルギの少なくとも一部を受け取る受電アンテナとを有し、前記送電アンテナの共振周波数および前記受電アンテナの共振周波数は周波数f0に等しく設定され、前記受電アンテナが受け取った前記RFエネルギを出力する、第1の発電ユニットおよび第2の発電ユニットと、
    前記各発電ユニットから出力された前記RFエネルギを受け、前記RFエネルギを合成して出力する合成部と、
    前記第1の発電ユニットおよび前記第2の発電ユニットの少なくとも一方において、前記発振器と前記送電アンテナとの間、または前記受電アンテナと前記合成部との間の伝送線路上に挿入されたリアクタンス調整回路であって、インダクタおよび容量素子の少なくとも一方を含み、前記第1の発電ユニットから出力された第1のRFエネルギおよび前記第2の発電ユニットから出力された第2のRFエネルギが前記合成部によって合成されるときの前記第1のRFエネルギの位相および前記第2のRFエネルギの位相を一致させる値にリアクタンス値が設定されたリアクタンス調整回路と、
    を備える発電システム。
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