(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、本明細書における「第1実施形態」は、全て「参考例」に読み替える。
(全体構成)
図1には、第1実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(図示の矢印Y方向)の下側から上側へ向けて、記録媒体の一例としての記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録用紙Pに画像形成を行う画像形成部14と、を有している。さらに、画像形成装置10は、画像形成部14の左上側に一体的に設けられ画像形成された記録用紙Pを排出する排出部16と、排出部16の上に設けられ読取原稿Gを読み取る原稿読取部18と、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御手段の一例としての制御部20と、を有している。なお、以後の説明では、画像形成装置10の上下方向をY方向、水平方向をX方向と記載する。また、左、右と記載するときは、画像形成装置10を正面から見た場合の左、右を表している。
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙Pが収容される第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28がY方向に並んで設けられている。第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28には、収容された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路30に送り出す送り出しロール32が設けられており、搬送路30における送り出しロール32よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で、搬送ロール36よりも下流側であり且つ画像形成部14内には、記録用紙Pを一端停止させると共に決められたタイミングで二次転写部37(詳細は後述する)へ送り出す位置合せロール38が設けられている。
画像形成部14は、装置本体である筐体16Aを有している。筐体16Aは、画像形成装置10の正面視で画像形成部14の左上部が中央上部及び右上部よりも上側に突出されている。そして、排出部16の上端に原稿読取部18の左端部が結合されている。これにより、画像形成装置10には、画像形成部14の上面、原稿読取部18の下面、及び排出部16の右側面で囲まれた排出領域19が形成されている。排出領域19では、排出部16からの記録用紙Pの排出及び積載が行われる。
搬送路30を挟んで第4収容部28の搬送ロール36側とは反対側には、画像形成装置10の正面視で左側面に設けられた折り畳み式の手差給紙部39から搬送路30へ記録用紙Pが搬送される予備搬送路40が設けられている。予備搬送路40には、手差給紙部39の記録用紙Pを予備搬送路40に送り出す送り出しロール42と、送り出しロール42よりも下流側に設けられ記録用紙Pを一枚ずつ搬送する複数の搬送ロール44とが設けられており、予備搬送路40の下流側端部は搬送路30に接続されている。
また、画像形成部14で搬送路30における二次転写部37よりも下流側には、詳細を後述する定着装置100が設けられている。定着装置100は、記録用紙P上の現像剤(トナー)を加熱する定着ベルト102と、定着ベルト102に向けて記録用紙Pを加圧する加圧ロール104とを有しており、記録用紙Pが定着ベルト102と加圧ロール104との接触部であるニップ部N(図3(A)参照)を通過すると、トナーが溶融、凝固して記録用紙Pにトナー画像が定着されるようになっている。
図1及び図2に示すように、画像形成部14の中央には、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーを組合せて記録用紙Pにトナー画像(現像剤像)を形成する現像剤像形成手段の一例としての画像形成ユニット60が設けられている。画像形成ユニット60は、潜像を保持する潜像保持体としての感光体62K、62Y、62M、62Cが、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーに対応して設けられている。なお、以後の説明では、K、Y、M、Cを区別する必要がある場合は、数字の後にK、Y、M、Cのいずれかの英字を付して説明し、同様の構成でK、Y、M、Cを区別する必要がない場合は、K、Y、M、Cの記載を省略する。
図2に示すように、感光体62K、62Y、62M、62Cは、この順番で図示の右斜め上方に向けて並んでおり、それぞれ矢印b方向(図示の反時計回り方向)に回転すると共に光照射によって形成される静電潜像を外周面に保持するようになっている。また、各感光体62K、62Y、62M、62Cの周囲には、矢印b方向に沿って順に、帯電ロール66、LED(Light Emitting Diode)ヘッド68、現像器72、中間転写ベルト64(一次転写ロール74)、及びクリーニングロール76が設けられている。
帯電ロール66は、一例として、ステンレス鋼製の軸部の周囲に導電性弾性層、中間層、及び表面樹脂層を含む複数の層(いずれも図示省略)が形成された構成となっている。また、帯電ロール66は、外周面が感光体62の表面層と接触して従動するように軸部が回転可能に設けられており、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加されることにより生じる放電により、感光体62の外周面を帯電させるようになっている。
LEDヘッド68は、帯電ロール66により帯電した感光体62の外周面に各トナー色に対応した光を照射(露光)して静電潜像を形成するようになっている。なお、感光体62への露光手段として、K、Y、M、Cの4色共通でレーザ光をポリゴンミラーで走査する方式を用いてもよい。
現像器72は、感光体62に形成された潜像へ現像剤を供給して現像剤像(トナー画像)を形成する現像ロール71と、現像ロール71へ現像剤を循環搬送する搬送部材73A及び73Bとを有している。なお、現像剤としては、主にトナーとキャリアを含む二成分現像剤、トナーを主とする一成分現像剤のいずれを用いても良い。
中間転写ベルト64は、無端状に形成されており、二次転写部37に設けられたベルト搬送ロール82と、ベルト搬送ロール82の右下方に設けられたベルト搬送ロール84と、ベルト搬送ロール82の右斜め上方に設けられモータ(図示省略)で駆動される駆動ロール86とに巻き掛けられて矢印a方向(図示の時計回り方向)に周回移動可能に支持されている。中間転写ベルト64の外周面は、トナー画像が転写される転写面とされており、中間転写ベルト64の駆動ロール86からベルト搬送ロール84までの転写面に感光体62K、62Y、62M、62Cの外周面が接触している。
一方、中間転写ベルト64を挟んで感光体62K、62Y、62M、62Cの反対側には、一次転写ロール74(74K、74Y、74M、74C)が設けられている。一次転写ロール74は、中間転写ベルト64の内周面に接触しており、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加されることで、接地された感光体62との電位差により、感光体62のトナー画像を中間転写ベルト64の転写面へ一次転写させるようになっている。これにより、中間転写ベルト64が1周する間に中間転写ベルト64上に各トナー画像が重ねて転写される。
また、中間転写ベルト64を挟んでベルト搬送ロール84と反対側には、トナー濃度検出センサ88が設けられている。トナー濃度検出センサ88は、中間転写ベルト64の転写面に転写されたトナー画像の濃度を検出する機能を有している。さらに、中間転写ベルト64を挟んで駆動ロール86と反対側には、二次転写後の中間転写ベルト64の転写面に残留したトナー等を清掃する清掃部材92が設けられている。
二次転写部37は、中間転写ベルト64が巻き掛けられたベルト搬送ロール82と、中間転写ベルト64を挟んでベルト搬送ロール82側とは反対側に設けられた二次転写ロール89とで構成されている。ベルト搬送ロール82又は二次転写ロール89には、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加されるようになっており、ベルト搬送ロール82と二次転写ロール89との電位差により、中間転写ベルト64上のトナー画像が記録用紙P上に二次転写されるようになっている。
図1に示すように、画像形成部14の清掃部材92よりも右側には、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各トナーを収容するトナーカートリッジ77K、77Y、77M、77Cが交換可能に設けられている。また、画像形成部14の搬送路30よりも左側には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路94が設けられている。
両面搬送路94は、搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で定着装置100よりも下流側に設けられた搬送ロール95と、搬送ロール95よりも下流側に設けられ回転方向が切り換え可能とされた搬送ロール96との間に一端が接続されており、他端が位置合せロール38の上流側に接続されている。また、両面搬送路94には、搬送ロール96から送り込まれる記録用紙Pを位置合せロール38へ向けて搬送する複数の搬送ロール97が設けられている。これにより、両面画像形成時には、定着装置100で表面側にトナー画像が定着された記録用紙Pが、搬送ロール96の逆回転及び経路切り替え部材(図示省略)により両面搬送路94に進入し、再度、位置合せロール38に進入することで、記録用紙Pの表裏が反転されるようになっている。
また、排出部16における搬送ロール95よりも下流側で、搬送路30から排出領域19側へ分岐された搬送路31には、画像形成部14の上部に設けられた下置台52へ記録用紙Pを排出する下排出ロール54が設けられている。そして、下排出ロール54に隣接する位置には、下置台52上に積載された記録用紙Pの積載高さを検知する下検知部55が設けられている。また、排出部16における搬送ロール95よりも下流側の搬送路30には、下置台52の上方に設けられた上置台56へ記録用紙Pを排出する上排出ロール57が設けられている。そして、上排出ロール57に隣接する位置には、上置台56上に積載された記録用紙Pの積載高さを検知する上検知部58が設けられている。
一方、原稿読取部18は、読取原稿Gを1枚ずつ自動で搬送する原稿搬送装置45と、原稿搬送装置45の下側に配置され1枚の読取原稿Gが載せられるプラテンガラス47と、原稿搬送装置45によって搬送された読取原稿G又はプラテンガラス47に載せられた読取原稿Gを読み取る原稿読取装置49とが設けられている。原稿搬送装置45は、一対の搬送ロール46が複数配置された自動搬送路48を有しており、自動搬送路48の一部は、記録用紙Pがプラテンガラス47上を通るように配置されている。また、原稿読取装置49は、プラテンガラス47の左端部に静止した状態で原稿搬送装置45によって搬送された読取原稿Gを読み取り、又はX方向に移動しながらプラテンガラス47に載せられた読取原稿Gを読み取るようになっている。
次に、画像形成装置10における画像形成工程について説明する。
図1に示すように、画像形成装置10が作動すると、画像処理装置(図示省略)又は外部から、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の画像データがLEDヘッド68(図2参照)に出力される。続いて、LEDヘッド68から画像データに応じて出射された光は、帯電ロール66により帯電された感光体62の外周面(表面)を露光し、各感光体62の表面には各色の画像データに対応した静電潜像が形成される。さらに、各感光体62の表面に形成された静電潜像は、各現像器72によってトナー画像として現像される。そして、各感光体62の表面のトナー画像は、一次転写ロール74によって中間転写ベルト64に順次多重転写される。
一方、用紙収容部12から送り出され、搬送路30を搬送されてきた記録用紙Pは、位置合せロール38により、中間転写ベルト64への各トナー画像の多重転写とタイミングを合わせて二次転写部37に搬送される。そして、中間転写ベルト64上に多重転写されたトナー画像は、二次転写部37に搬送されてきた記録用紙P上に二次転写ロール89によって二次転写される。
続いて、トナー画像が転写された記録用紙Pは、定着装置100へ搬送される。そして、定着装置100では、トナー画像が定着ベルト102及び加圧ロール104によって加熱、加圧されることで記録用紙Pに定着される。さらに、トナー画像が定着された記録用紙Pは、排出部16から下置台52又は上置台56へ排出される。なお、記録用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置100で表面に画像定着を行った後、この記録用紙Pの下端を搬送ロール96から両面搬送路94に送り込むと共に位置合せロール38(搬送路30)へ送り出すことで、記録用紙Pの先端と後端を入れ替える。そして、記録用紙Pの裏面の画像形成及び定着を行う。
(要部構成)
次に、定着装置100について説明する。
図3(A)に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体101を備えている。筐体101の内部には、矢印D方向へ回転する定着回転体の一例としての無端状の定着ベルト102が設けられている。
定着ベルト102は、軸方向(Z方向)の両端部に円環状のキャップ部材138、139(図5参照)が取り付けられている。そして、定着ベルト102は、キャップ部材138、139が、筐体101に設けられたベアリング(図示省略)で回転可能に支持されることにより、回転可能となっている。
なお、定着ベルト102は、モータを含む駆動源(図示省略)に接続されており、後述する加圧ロール104がリトラクト機構部(図示省略)により定着ベルト102から離れたとき(リトラクト時)に、駆動源により回転するようになっている。そして、定着ベルト102が予め設定した温度となったときに、加圧ロール104が移動して、定着ベルト102と接触するようになっている。
また、定着ベルト102は、図3(B)に示すように、径方向の外側に向けて基層102A、発熱層102B、保護層102C、弾性層102D、及び離型層102Eが積層され一体化された構成となっている。
基層102Aは、定着ベルト102の強度を保持するベースとなるもので、一例として、ポリイミド(PI)で構成されている。なお、基層102Aの他の例として、非磁性ステンレスを用いてもよい。
発熱層102Bは、磁界H(図11(A)参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、一例として、銅を用いている。また、発熱層126は、磁界Hの磁束を貫通させるために、磁界Hが侵入可能な厚さである表皮深さよりも薄く構成される必要がある。ここで、表皮深さをδとし、発熱層126の固有抵抗をρn、比透磁率をμn、励磁コイル110における信号(電流)の周波数をfとすると、δは(1)式で表される。
保護層102Cは、合成樹脂で構成され、一例として、基層102Aと同じポリイミドで構成されている。
弾性層102Dは、弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施形態では一例として、シリコンゴムを用いている。また、離型層102Eは、記録用紙P上で溶融されたトナー画像Tとの接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。本実施形態では一例として、離型層102EをPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)で形成している。
定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った円弧状に形成されており、ボビン108の周方向中央部には、定着ベルト102側とは反対側に凸部108Aが設けられている。そして、ボビン108には、磁界発生手段の一例としての励磁コイル110が凸部108Aを中心として軸方向(図3(A)の奥行き方向であり、以後Z方向と記載する)に複数回巻き回されている。なお、図3(A)に示されている凸部108Aの形成位置は一例であり、凸部108Aを後述する感温磁性部材150の感温接触部152と感温非接触部153との境界部位(図9の点B参照)と対向する位置に形成してもよい。
また、励磁コイル110を間にしてボビン108側とは反対側には、ボビン108の円弧状に倣って円弧状に形成されたフェライト系の磁性体からなる磁性コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置で且つ励磁コイル110側とは反対側には、定着ベルト102及び記録用紙Pを後述する支持体122に向けて加圧するとともに、定着ベルト102の回転に伴い矢印E方向に従動回転する加圧ロール104が設けられている。この加圧ロール104と定着ベルト102との回転により、記録用紙Pが矢印C方向に進入、排出されるようになっている。
加圧ロール104は、一例として、アルミニウムからなる芯金106の周囲に、シリコンゴム及びPFAが被覆された構成となっている。また、加圧ロール104は、リトラクト機構部(図示省略)によって矢印A方向(定着ベルト102に近づく方向)又は矢印B方向(定着ベルト102から離れる方向)に移動可能となっており、矢印A方向に移動して定着ベルト102の外周面と接触して加圧し、又は矢印B方向に移動して定着ベルト102の外周面から離れるようになっている。
次に、定着ベルト102の内側の構成について説明する。
図3(A)に示すように、定着ベルト102の内側には、詳細を後述する感温磁性部材150と、感温磁性部材150を支持する支持体122と、定着ベルト102を加圧ロール104へ押し付ける押付部材124と、定着ベルト102の温度を検知するサーミスタ130と、定着ベルト102の過剰な昇温を抑制するサーモスタット137と、が主要部として設けられている。
支持体122は、Z方向を長手方向とする複数の鋼板材を組み合わせて形成されたものであり、Z方向の両端部がキャップ部材138、139(図5参照)を貫通すると共に筐体101に固定されている。そして、支持体122は、感温磁性部材150及び押付部材124を支持すると共に、加圧ロール104からの加圧力に対抗している。
押付部材124は、X方向の一端面が支持体122に固定されると共に他端面が定着ベルト102の加圧ロール104側の内周面と接触しており、一例として、加圧ロール104の押圧によって柔軟に変形するウレタンゴム製のパッドで構成されている。そして、押付部材124は、加圧ロール104との間に定着ベルト102を挟み込み、定着ベルト102と加圧ロール104とが周方向に沿って接触するニップ部Nを形成している。
図5、図7、及び図8に示すように、支持体122のZ方向の両端部におけるY方向の端部(図示の上端、下端)には、複数の板ばね127、128が取り付けられている。板ばね127、128は、2回折り曲げられたクランク状の自由端であり且つ定着ベルト102(図3(A)参照)の内周面に対して進退する方向(X方向)へ張り出した張出部127A、128Aを有している。そして、Y方向で対向する張出部127A、128Aは、結合部材129により結合されている。
結合部材129は、金属板を曲げ加工して形成されたものであり、Z方向を長手方向とする部材である。本実施形態では一例として、結合部材129に非磁性体であるアルミニウムを用いている。これにより、後述する磁界Hが感温磁性部材150(図3(A)参照)よりも内側へ漏れ出た場合、磁界Hが支持体122へ作用することが抑制されている。
また、結合部材129は、板ばね127、128の張出部127A、128Aと感温磁性部材150(図3(A)参照)とがY方向で重ね合わされる位置に、Y方向両側へ向けてそれぞれ凸部129A及び凸部129B(図7参照)が突出している。ここで、結合部材129は、凸部129A及び凸部129Bが板ばね127、128に形成された貫通孔(図示省略)及び感温磁性部材150に形成された貫通孔(図示省略)に挿入されることで、これらの部材を結合すると共に結合部材129自体も板ばね127、128に支持されている。そして、結合部材129は、X方向で支持体122とは非接触となっている。
一方、支持体122には、サーミスタ130とサーモスタット137がネジ142で取り付けられている。サーミスタ130は、支持体122のZ方向中央部に配置されたサーミスタ130Aと、Z方向端部(一端側)に配置されたサーミスタ130Bとで構成されている。また、サーモスタット137は、支持体122のZ方向中央部に配置されている。そして、結合部材129の一部には、サーモスタット137を露出させるための矩形状の切欠き部129Cが形成されている。
図6には、図5の板ばね127、128に感温磁性部材150を取り付けた状態が示されている。感温磁性部材150には、Z方向の中央部と端部(一端側)に矩形状の切欠き部150A、150Bが形成されている。切欠き部150A、150Bは、サーミスタ130A、130Bの設置位置に合わせて形成されており、切欠き部150A、150Bから接触部131が露出している。
図7に示すように、サーミスタ130A、130Bの接触部131は、感温磁性部材150の切欠き部150A、150Bを通って定着ベルト102の内周面に接触している。これにより、定着ベルト102の温度を直接、検知可能となっている。また、支持体122の下部には、付勢手段の一例としてのスプリング144の一端が固定されており、スプリング144の他端は、結合部材129の凸部129BをX方向側へ付勢している。これにより、板ばね127、128の張出部127A、128Aが定着ベルト102側へ撓むと共に、感温磁性部材150が定着ベルト102側へ付勢されている。
一方、図8に示すように、サーモスタット137は、結合部材129の切欠き部129Cを通って、感温磁性部材150の後述する感温接触部152の裏面に近い位置に検知部位が配置されている。このように、サーモスタット137は、感温磁性部材150を介して間接的に定着ベルト102の温度を検知するため、予め、定着ベルト102の温度と感温磁性部材150の温度との対応表が設定されており、この対応表に基づいて検知した感温磁性部材150の温度を定着ベルト102の温度に換算するようになっている。
次に、定着ベルト102の温度検知について説明する。
図3(A)に示すように、定着ベルト102の内側には、定着ベルト102の温度を検知する既述のサーミスタ130が設けられている。サーミスタ130は、定着ベルト102の内周面と接触する接触部131を有しており、定着ベルト102の内周面から与えられる熱量に応じて接触部131の抵抗値が変化することで、定着ベルト102の温度を計測する。また、Z方向におけるサーミスタ130の取り付け位置は、非通紙部の温度を測定できるように、定着ベルト102の軸方向(Z方向)で中央部と端部の2箇所となっている。
図4に示すように、サーミスタ130は、配線133Aを介して、前述の制御部20(図1参照)の内部に設けられた制御回路132に接続されている。また、制御回路132は、配線133Bを介して通電回路134に接続されており、通電回路134は、配線133C、133Dを介して前述の励磁コイル110に接続されている。
制御回路132は、サーミスタ130から送られた電気量に基づいて定着ベルト102の内周面の温度を検知(測定)し、この検知温度と、予め記憶させてある加熱設定温度とを比較する。そして、検知温度が加熱設定温度よりも低い場合は、通電回路134を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図11(A)参照)を発生させる。一方、検知温度が加熱設定温度よりも高い場合は、通電回路134による通電を停止するようになっている。なお、加熱設定温度とは、狙いとしている温度の中央値、下限値、上限値のいずれの設定であってもよい。
ここで、定着装置100では、制御回路132からの電気信号に基づいて通電回路134が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界H(図11(A)参照)が生成消滅を繰り返す。そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層102B(図11(A)参照)を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層102Bに渦電流(図示せず)が発生する。これにより、発熱層102Bは、発熱層102Bを流れる渦電流の大きさに比例して発熱する。このようにして、定着ベルト102は、電磁誘導作用により加熱されるようになっている。
次に、感温磁性部材150の詳細について説明する。
図9に示す感温磁性部材150は、定着ベルト102の加熱設定温度以上で且つ定着ベルト102の耐熱温度以下の温度領域にある透磁率変化開始温度以上になると、透磁率が連続的に低下し始める特性を有する感温磁性材料で構成される。具体的には、整磁鋼、非晶質合金等が用いられ、Fe、Ni、Si、B、Nb、Cu、Zr、Co、Cr、V、Mn、Moなどからなる金属合金材料で、例えば、Fe−Niの二元系整磁鋼やFe−Ni−Crの三元系整磁鋼を用いることが好ましい。本実施形態では一例として、Fe−Ni合金を用いている。
図10に示すように、透磁率変化開始温度とは、透磁率(JIS C2531で測定)が連続的に低下し始める温度であり、磁界の磁束の貫通量が変化し始める点をいう。また、透磁率変化開始温度は、キュリー点とは異なるものである。
また、図9に示すように、感温磁性部材150は、X−Y断面で見て、円弧状(ほぼ1/4円)の感温接触部152と、感温接触部152の一端から斜め下方に延びる直線状の感温非接触部153と、感温非接触部153の感温接触部152側とは反対側の端部からX方向とは逆方向に延びる直線状の取付部154とが一体化された形状となっている。なお、図9において、定着ベルト102の真円基準中心Oを通りY方向と平行な直線を直線L、直線Lと感温接触部152の一端との交点を点A、感温接触部152と感温非接触部153との境界点を点B、感温非接触部153と取付部154との境界点を点C、取付部154の点Cとは反対側の端点を点Dとする。
感温接触部152は、一例として、中心角AOB(角度θ1)が90°程度の円弧状に形成されており、定着ベルト102の内側に励磁コイル110(図3(A)参照)に沿って(励磁コイル110と対向する範囲で)、全体が接触して配置されている。感温接触部152の外周面には、定着ベルト102の摺動性を確保するための表面処理(一例として窒化処理)が施されている。なお、感温接触部152は、Z方向においてもほぼ全体が定着ベルト102の内側に接触している。また、図6に示すように、感温接触部152のZ方向の両端部には、X方向に沿った平坦部152Aが形成されている。そして、平坦部152Aは、一部にY方向に貫通した貫通孔(図示省略)が形成されており、板ばね127の張出部127A(図7参照)と共に結合部材129の凸部129Aに取り付けられている。
感温非接触部153は、一例として、線分OAを基準とする角度AOC(角度θ2)が150°程度となるように点Cが配置されており、線分BCで示す範囲は全て定着ベルト102と非接触状態となっている。即ち、感温非接触部153は、定着ベルト102の内側で励磁コイル110(図3(A)参照)と対向して配置されると共に、定着ベルト102と間隔をあけて配置されている。なお、定着ベルト102の周方向で感温非接触部153を設ける幅については、定着ベルト102の立ち上げ時間が許容範囲内(一例として3秒以内)となるように設定される。
取付部154は、線分CDがX方向に沿って配置されている。また、図7に示すように、取付部154は、一部にY方向に貫通した貫通孔(図示省略)が形成されており、板ばね128の張出部128Aと共に結合部材129の凸部129Bに取り付けられている。
このようにして、感温磁性部材150は、板ばね127、128を介して支持体122により支持されており、板ばね127、128の張出部127A、128Aの曲げ変形によりX方向の変位が可能となっている。そして、感温磁性部材150は、定着ベルト102に加圧ロール104(図3(A)参照)を接触させたとき、定着ベルト102のX方向の変位に対して弾性的に追従するようになっている。
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、前述の画像形成装置10の画像形成工程を経て、トナー画像が転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。続いて、図3(A)に示すように、定着装置100では、駆動モータ(図示省略)が駆動されて定着ベルト102が矢印D方向へ回転する。このとき、図4に示すように、制御回路132からの電気信号に基づいて通電回路134が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
続いて、図11(A)、(C)に示すように、励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。ここで、励磁コイル110から発生する磁界Hの磁路は、磁性コア112(図3(A)参照)と感温磁性部材150とで、回転する定着ベルト102と励磁コイル110を挟むようにして形成される閉磁路となる。そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層102Bを横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層102Bに渦電流が発生する。
発熱層102Bは、発熱層102Bの表皮抵抗及び発熱層102Bを流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト102が加熱される。定着ベルト102の温度は、サーミスタ130(図3(A)参照)で検知され、加熱設定温度(一例として170℃)に到達していない場合は、図4において、制御回路132が通電回路134を駆動制御して励磁コイル110に予め設定された周波数の交流電流を通電する。また、加熱設定温度に到達している場合は、制御回路132が通電回路134からの通電を停止する。
続いて、図3(A)に示すように、定着ベルト102が加熱設定温度以上に到達した段階で、リトラクト機構(図示省略)が作動し、加圧ロール104を定着ベルト102に接触させる。そして、加圧ロール104は、回転する定着ベルト102に従動して矢印E方向へ回転する。
続いて、定着装置100に送り込まれた記録用紙Pは、加熱設定温度となっている定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱及び加圧され、トナー画像が記録用紙P表面に定着される。そして、図1に示すように、定着装置100から排出された記録用紙Pは、下置台52又は上置台56に排出される。
次に、感温接触部152及び感温非接触部153の作用について説明する。
図11(A)に示すように、感温接触部152と定着ベルト102が接触する部位において、感温接触部152の温度が透磁率変化開始温度よりも低い場合は、感温接触部152が強磁性体であるため、定着ベルト102を貫通した磁界Hが感温接触部152に侵入して閉磁路を形成し、磁界Hを強める。これにより、定着ベルト102の発熱層102Bの発熱量が増加され、加熱設定温度まで昇温される。
また、図11(B)に示すように、感温接触部152と定着ベルト102が接触する部位において、感温接触部152の温度が透磁率変化開始温度以上の場合は、透磁率が低下するため、定着ベルト102を貫通した磁界Hが感温接触部152も貫通する。これにより、閉磁路を形成できなくなり、磁束密度が低下して磁界Hが弱まるため、発熱層102Bの発熱量が低減される。そして、定着ベルト102の昇温の度合いが低下する。
ここで、感温接触部152は、定着ベルト102と接触しているので、一部の熱が定着ベルト102に奪われる。このため、感温接触部152自体の温度が透磁率変化温度まで上昇することが抑制され、励磁コイル110との間で閉磁路を形成し続ける。これにより、記録用紙Pへのトナー画像の連続定着時の定着ベルト102の温度低下が抑制される。そして、連続して定着が行える記録用紙Pの枚数が増える。また、感温接触部152は、スプリング144により定着ベルト102側へ付勢されているので、感温接触部152と定着ベルト102との接触状態が維持される。
一方、図11(C)に示すように、感温非接触部153と定着ベルト102が非接触状態で対向する部位において、感温非接触部153の温度が透磁率変化開始温度よりも低い場合は、感温非接触部153が強磁性体であるため、定着ベルト102を貫通した磁界Hが感温非接触部153に侵入して閉磁路を形成し、磁界Hを強める。これにより、定着ベルト102の発熱層102Bの発熱量が増加される。なお、定着ベルト102の昇温については、感温非接触部153の発熱量よりも感温接触部152(図11(A)参照)の発熱量の方が大きい。
また、図11(D)に示すように、感温非接触部153と定着ベルト102が非接触状態で対向する部位において、感温非接触部153の温度が透磁率変化開始温度以上の場合は、透磁率が低下するため、定着ベルト102を貫通した磁界Hが感温非接触部153も貫通する。これにより、閉磁路を形成できなくなり、磁束密度が低下して磁界Hが弱まるため、発熱層102Bの発熱量が低減される。そして、定着ベルト102の昇温の度合いが低下する。
ここで、感温非接触部153は、透磁率変化開始温度となるまで、励磁コイル110との間で閉磁路を形成して定着ベルト102の温度を上昇させる。また、感温非接触部153は、定着ベルト102と非接触状態にあるので、定着ベルト102から熱を奪うことが抑制される。これにより、定着装置100(図3(A)参照)の立ち上げ時において、加熱設定温度までの装置の立ち上げ時間が短縮される。一例として、立ち上げ時間が3秒以内(許容範囲内)となる。
このように、感温磁性部材150は、感温非接触部153の作用により立ち上げ時間を許容範囲に抑えながら、感温接触部152の作用により連続定着時の定着ベルト102の温度低下を抑制する。
図12(A)は、定着装置100における各部の時間と温度の関係を模式的に示したグラフである。なお、以後のグラフの説明では、定着装置100の各部材について、図3(A)及び図9を参照するものとし、図番の記載を省略する。
図12(A)において、グラフGA(太い実線)は定着ベルト102の温度を示しており、グラフGB(太い破線)は感温接触部152の温度を示している。また、グラフGC(一点鎖線)は感温非接触部153の温度を示しており、グラフGD(細い実線)は感温磁性部材150の全体が感温非接触部153で構成されていると仮定した場合の感温非接触部153の温度を示している。さらに、温度T0は加熱設定温度であり、温度T1は強磁性体が常磁性体に変化するキュリー温度である。
グラフGAに示すように、定着ベルト102の温度は、立ち上げ時に励磁コイル110への通電によって発生した磁界Hの電磁誘導作用による発熱で一旦、加熱設定温度T0を超えた後、通電又は通電停止を繰り返すことによって加熱設定温度T0で維持される。
グラフGBに示すように、感温接触部152の温度は、感温接触部152と定着ベルト102とが接触しているため、定着ベルト102の温度上昇に伴って温度上昇し、やがて定着ベルト102の温度に近い温度となる。なお、感温接触部152は徐々に自己発熱するが、定着ベルト102に熱が奪われるため、自己発熱による温度上昇は抑制される。
グラフGCに示すように、感温非接触部153の温度は、定着ベルト102との隙間に存在する空気の断熱作用により定着ベルト102に熱が奪われにくいので、自己発熱により徐々に温度上昇し、感温接触部152よりも温度が高くなる。ここで、感温非接触部153は感温接触部152と一体化されているため、一部の熱量が感温接触部152へ移動する。これにより、感温非接触部153の温度は、なだらかな曲線状に変化することになり、短時間で透磁率変化開始温度(図12参照)及びキュリー温度T1へ到達することが抑制される。
なお、感温磁性部材150が全て感温非接触部153で構成された場合は、グラフGDに示すように、感温磁性部材150の温度が直線状に上昇し、短時間で透磁率変化開始温度(図12参照)及びキュリー温度T1へ到達することになる。
一方、図12(B)には、幅方向のサイズが小さい記録用紙Pにトナー画像を定着したときの定着ベルト102の非通紙部の温度と、搬送方向と直交する幅方向のサイズが大きい記録用紙Pにトナー画像を定着したときの感温接触部152の温度とを、感温接触部152の接触角度(図9に示す中心角θ1に相当)を変えて測定したグラフGE、GFが示されている。グラフGEは、定着ベルト102の非通紙部の温度を示しており、グラフGFは、感温接触部152の温度を示している。
グラフGEに示すように、感温接触部152と定着ベルト102との接触角度を大きくしていくと、小サイズ定着時の定着ベルト102の非通紙部の温度は、温度T2から低下する。ここで、温度T2からの温度低下ΔT1が5℃以上になると、定着ベルト102の非通紙部の過剰な温度上昇が抑制される(温度抑制効果がある)ことが分かっている。これにより、感温接触部152の接触角度は、60°以上であることが望ましいことになる。
グラフGFに示すように、感温接触部152と定着ベルト102との接触角度を大きくしていくと、大サイズ定着時の感温接触部152の温度は、温度T3から一旦増加して低下する。ここで、温度T3からの温度低下ΔT2が5℃以上になると、感温接触部152の過剰な温度上昇が抑制される(温度抑制効果がある)ことが分かっている。これにより、感温接触部152の接触角度は、130°以上であることが望ましいことになる。
このように、感温接触部152の定着ベルト102との接触角度は60°以上が望ましく、さらに、130°以上であることが望ましい。なお、一例として、感温接触部152と感温非接触部153が全体で角度180°の範囲で使用される場合、感温接触部152の接触角度をθxとして、感温非接触部153の角度(中心角度)は180°−θxで求められる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。また、本明細書における「第2実施形態」は、全て「実施形態」に読み替える。
図13(A)には、第2実施形態の定着装置160のうち、定着ベルト102及び感温磁性部材162が示されている。定着装置160は、既述の定着装置100(図3(A)参照)の感温磁性部材150に換えて、感温磁性部材170を設けたものであり、他の構成は定着装置100と同様である。
感温磁性部材170は、定着ベルト102の加熱設定温度以上で、定着ベルト102の耐熱温度以下の温度領域にある透磁率変化開始温度から、透磁率が連続的に低下し始める特性を有するもので構成され、一例として、Fe−Ni合金を用いている。
また、感温磁性部材170は、X−Y断面で見て、円弧状の第1感温接触部172と、直線状の第1感温非接触部174と、直線状の第2感温非接触部176と、円弧状の第2感温接触部178とが一体化された形状となっている。なお、図13(A)において、定着ベルト102の真円基準中心Oを通る既述の直線Lと第1感温接触部172の一端との交点を点A、第1感温接触部172と第1感温非接触部174との境界点を点E、第1感温非接触部174と第2感温非接触部176との境界点を点Fとする。さらに、第2感温非接触部176と第2感温接触部178との境界点を点Gとし、第2感温接触部178の点Gとは反対側の端点を点Hとする。
第1感温接触部172は、一例として、中心角AOE(角度θA)が鋭角の円弧状に形成されており、定着ベルト102の内側に励磁コイル110(図3(A)参照)に沿って、全体が接触して配置されている。第1感温接触部172の外周面には、表面処理(一例として窒化処理)が施されている。なお、第1感温接触部172は、Z方向においてもほぼ全体が定着ベルト102の内側に接触している。また、第2実施形態では一例として、θA=65°としている。
第1感温非接触部174は、第1感温接触部172の他端(点E)から下方側へ延びており、角度EOF(角度θB)は鋭角となっている。また、第2感温非接触部176は、第1感温非接触部174の他端(点F)から斜め下方側へ延びており、角度FOG(角度θC)は鋭角となっている。そして、第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176は、定着ベルト102とは間隔をあけて配置された非接触状態となっている。なお、定着ベルト102の周方向で第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176を設ける幅については、定着ベルト102の立ち上げ時間が許容範囲内(一例として3秒以内)となるように設定される。また、第2実施形態では一例として、θB+θC=87°としている。
第2感温接触部178は、一例として、中心角GOH(角度θD)が鋭角の円弧状に形成されており、定着ベルト102の内側に励磁コイル110(図3(A)参照)に沿って、全体が接触して配置されている。第2感温接触部178の外周面には、表面処理(一例として窒化処理)が施されている。なお、第2感温接触部178は、Z方向においてもほぼ全体が定着ベルト102の内側に接触している。また、第2実施形態では一例として、θD=28°としている。
このように、感温磁性部材170は、第1感温接触部172、第2感温接触部178が、定着ベルト102の周方向に沿って設けられている。また、第1感温接触部172、第2感温接触部178は、定着ベルト102の周方向で第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176の両側に接続されている。
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
第1感温接触部172及び第2感温接触部178は、定着ベルト102と接触しているので、一部の熱が定着ベルト102に奪われる。このため、第1感温接触部172及び第2感温接触部178自体の温度が透磁率変化温度まで上昇することが抑制され、励磁コイル110との間で閉磁路を形成し続ける。これにより、記録用紙Pへのトナー画像の連続定着時の定着ベルト102の温度低下が抑制される。そして、連続して定着が行える記録用紙Pの枚数が増える。また、第1感温接触部172及び第2感温接触部178は、スプリング144により定着ベルト102側へ付勢されているので、第1感温接触部172及び第2感温接触部178と定着ベルト102との接触状態が維持される。
第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176は、透磁率変化開始温度となるまで、励磁コイル110との間で閉磁路を形成して定着ベルト102の温度を上昇させる。また、第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176は、定着ベルト102と非接触状態にあるので、定着ベルト102から熱を奪うことが抑制される。これにより、定着装置100(図3(A)参照)の立ち上げ時において、加熱設定温度までの装置の立ち上げ時間が短縮される。一例として、立ち上げ時間が3秒以内(許容範囲内)となる。
また、感温磁性部材170は、定着ベルト102と接触する第1感温接触部172、第2感温接触部178が、定着ベルト102の周方向で間隔をあけて2箇所に配置されている。このため、定着ベルト102が回転したとき、定着ベルト102は、周方向の複数箇所(本実施形態では一例として2箇所)で内側から支持されることになるので、回転時の偏心が抑制される。
さらに、感温磁性部材170は、第1感温接触部172、第2感温接触部178が、定着ベルト102の周方向において、第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176の両側に接続されている。このため、第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176が発熱した場合、発生した熱は、両端に接続されている第1感温接触部172、第2感温接触部178に伝導され、定着ベルト102に伝導されて消費される。これにより、定着ベルト102と第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176との隙間に存在する空気の断熱作用があっても、第1感温非接触部174及び第2感温非接触部176の温度上昇が抑制される。
加えて、感温磁性部材170では、感温非接触部が第1感温非接触部174と第2感温非接触部176とに分割されている。このため、1つの感温非接触部を有する場合に比べて、定着ベルト102の周方向における感温非接触部と定着ベルト102との間隔の最大値と最小値との差を小さくすることが可能となり、定着ベルト102の周方向で温度差(温度むら)が生じることが抑制される。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
感温磁性部材150、170は、自己発熱による温度上昇を抑制するために、渦電流が流れる方向と交差する方向に切り込みを入れてもよい。
また、図13(B)に示すように、定着装置160において、感温磁性部材170に換えて、感温非接触部が1箇所のみの感温磁性部材180を設けてもよい。感温磁性部材180は、円弧状の第1感温接触部182と、感温接触部182の一端から斜め下方へ延びる直線状の感温非接触部184と、感温非接触部184の一端に接続された円弧状の第2感温接触部186とを有している。
ここで、定着ベルト102の真円基準中心Oを通る既述の直線Lと第1感温接触部182の一端との交点を点A、第1感温接触部182と感温非接触部184との境界点を点I、感温非接触部184と第2感温接触部186との境界点を点Jとする。さらに、第2感温接触部186の点Jとは反対側の端点を点Kとする。
第1感温接触部182は、一例として、中心角AOI(角度θE)が鈍角の円弧状に形成されており、定着ベルト102の内側に励磁コイル110(図3(A)参照)に沿って、全体が接触して配置されている。また、感温非接触部184は、角度IOJ(角度θF)が鋭角となっており、定着ベルト102とは間隔をあけて配置された非接触状態となっている。そして、第2感温接触部186は、一例として、中心角JOK(角度θG)が鋭角の円弧状に形成されており、定着ベルト102の内側に励磁コイル110(図3(A)参照)に沿って、全体が接触して配置されている。なお、一例として、θE=122°、θF=30°、θG=28°となっている。
このように、感温非接触部が1箇所で、その両側に感温接触部を設けた感温磁性部材を用いてもよい。また、感温接触部と感温非接触部の設置範囲を表す合計角度(中心角+角度)は、180°に限らず、180°よりも小さく又は大きくてもよい。さらに、感温接触部と感温非接触部を定着ベルト102の周方向でそれぞれ3箇所以上の複数箇所設けてもよい。
加えて、感温非接触部の自己発熱による温度上昇の影響が小さい場合は、感温接触部と感温非接触部が定着ベルト102の周方向で離れて(分割されて)配置されていてもよい。