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JP5857943B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
非水電解質二次電池の正極集電体には、電解塩などの腐食に耐えるため、表面に安定な不動態膜を形成するAlなどの金属を使用するのが一般的である。例えばAlを集電体に用いた場合、その表面にAl、AlF等の不動態膜が形成される。Alの集電体は表面に上記不動態膜を形成することで腐食されることなく、集電機能を保つことができる。
近年、非水電解質二次電池は、高電圧使用環境下(本明細書では電圧4.3V以上の電圧で使用することを高電圧使用と定義する)でも使用できることが望まれている。また高電圧使用環境下においても非水電解質二次電池の高容量化要求が高まっている。上記Alの集電体は高電圧使用環境下では腐食がおこりやすく、Alの集電体を有する非水電解質二次電池はサイクル特性が低下しやすい。
高電圧使用環境下においてサイクル特性を上げるために集電体に保護膜を形成する検討が行われている。しかしながら一般的に集電体に保護膜を形成すると出力特性が下がりやすい。
例えば特許文献1には、ヨウ化Al、TiN、Ti、SnO、In、RuO等から選ばれる化合物を構成成分として含む保護膜が形成された集電体が記載されている。この保護膜は、高電圧下においても電気化学的に安定な化合物から構成されている。しかしながら、特許文献1には、50℃で2週間放置後の電池の容量維持率(%)と容量回復率(%)、50℃で300サイクル試験後の電池のサイクル特性(%)のみが記載されており、初期容量などの出力特性に関する記載はない。
また高電圧使用環境下において出力特性を改善するために、集電体に導電層を形成する検討も行われている。
特許文献2には、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の集電体の表面の不動態膜の厚みを3nm以下とし、さらにその不動態膜の上に金属または金属炭化物からなる導電層が形成されている正極集電体が記載されている。特許文献2の実施例において各放電レートによる電池容量が測定されており、50C以上のレートにおいて、導電層が形成されることにより電池容量が改善されることが記載されている。しかしながら、特許文献2においては、電池のサイクル特性は評価されていない。
特開2004−55247号公報 特開2011−96667号公報
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、高電圧使用環境下においても出力特性を低下させずにサイクル特性を向上できる非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者等が鋭意検討した結果、集電体本体の表面に、TiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる被膜を形成することにより、非水電解質二次電池は出力特性が低下せずにサイクル特性が向上することを見いだした。
すなわち、本発明の非水電解質二次電池は、集電体本体と、集電体本体の表面に形成された、TiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる被膜と、を有する非水電解質二次電池正極用集電体を有することを特徴とする。
被膜用バインダーは熱可塑性樹脂またはゴムであることが好ましい。
被膜の厚みは10nm以上1μm以下であることが好ましい。
TiとSiとを含む複合酸化物粒子は平均粒径が10nm以上1μm以下であることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、一般式: LiCoNiMn (Dはドープ成分であり、Al、Mg、Ti、Sn、Zn、W、Zr、Mo、Fe及びNaから選ばれる少なくとも1つであり、p+q+r+s=1、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s<1)で表される複合金属酸化物からなる正極活物質を有することが好ましい。ここで、上記p、q、rはそれぞれ0<p<1、0<q<1、0<r<1の範囲とすることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、集電体本体の表面にTiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる被膜を有することによって、高電圧使用環境下で用いても、出力特性を低下させずに、サイクル特性を向上できる。
本実施形態の非水電解質二次電池用正極を説明する模式図である。 複合酸化物粒子のEDX(エネルギー分散型X線分光法:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)スペクトルを示す図である。 実施例1、比較例1及び比較例3のサイクル数と容量維持率(%)の関係を示すグラフである。
<非水電解質二次電池>
(非水電解質二次電池正極用集電体)
本発明の非水電解質二次電池は、集電体本体と、集電体本体の表面に形成された、TiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる被膜と、を有する非水電解質二次電池正極用集電体を有する。
集電体本体は、非水電解質二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。本発明の非水電解質二次電池では、集電体本体の表面に被膜が形成されているため、集電体本体は電解塩等の腐食に耐えることができる。そのため、集電体本体に用いることのできる材料として、例えばステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂を挙げることができる。また集電体本体は、箔、シート、フィルムなどの形態をとることができる。そのため、集電体本体として、例えば銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。
集電体本体は、その膜厚が10μm〜100μmであることが好ましい。
アルミニウム箔を集電体本体として用いると、アルミニウム箔の表面には、通常大気中の酸素との自然反応によって形成されたAl、電解液中の電解塩との反応で形成されたAlF等の不動態膜が形成される。この不動態膜は絶縁体であり、その比抵抗(Ωcm)の桁数は10程度である。アルミニウム箔は不動態膜によって電解塩から保護されるが、不動態膜は高抵抗の膜であるため、不動態膜を表面に有する集電体を用いる電極は高抵抗となり、その電極を用いた電池は出力特性が低下するといわれている。
本発明の非水電解質二次電池では集電体本体の表面に被膜が形成されているため、上記不動態膜が形成されにくい。そのため、この被膜によって、高抵抗層が集電体本体の表面に形成されることを抑制でき、かつ集電体本体を電解塩などの腐食から守ることができる。
被膜の膜厚は10nm〜1μmであることが好ましく、20nm〜500nmであることがより好ましい。被膜の膜厚が10nm以上であれば、その被膜によって集電体本体の表面を保護することが出来、電解液による集電体本体の腐食を効果的に抑制することができる。被膜の膜厚が1μm以下であれば、非水電解質二次電池内の正極用集電体の占める体積を適正にすることができる。非水電解質二次電池内の正極用集電体の占める体積が大きくなりすぎると、正極活物質の量等を減らさなければならなくなり、電池容量の低下につながり好ましくない。
被膜はTiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる。TiとSiとを含む複合酸化物粒子の好ましい態様として、TiOとSiOとを複合して得られたものを挙げることができる。一般的にTiOは大気中の酸素、電解液及び電解塩に耐性があり、また高電圧においても耐えることができる。しかしながらTiOは、光触媒などに用いられるように有機物の分解を促進する物質である。またTiOは導電性がない。また一般的にSiOは絶縁性である。
TiOとSiOとを複合して得られたTiとSiとを含む複合酸化物粒子は、TiOの大気中の酸素、電解液及び電解塩に耐性があり、また高電圧においても耐えることができるという機能は有したままで、有機物の分解を促進する物質としての作用が弱められ、また少しは導電性が出てくると考えられる。またさらにTiOとSiOとを複合して得られたTiとSiとを含む複合酸化物粒子は、SiOが有する無機充填剤としての機能を有し、TiとSiとを含む複合酸化物粒子は無機充填剤が含まれていることによって粒子の構造が保持されていると考えられる。
ただし、TiOとSiOとを複合して得られたTiとSiとを含む複合酸化物粒子の導電性は高いものではなく、半導体から絶縁物領域程度の導電率を示すものである。
TiとSiとを含む複合酸化物粒子は、平均粒子径が10nm以上1μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10nmより小さいと、粒子の比表面積が大きくなりすぎて、反応面が増えてしまうため好ましくない。また平均粒子径が1μmより大きいと被膜の厚みが厚くなりすぎるため好ましくない。TiとSiとを含む複合酸化物粒子の平均粒子径は50nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径はD50(メジアン径)とする。
被膜用バインダーは、有機溶媒に溶解でき、有機溶媒が揮発したら固化するものが好ましく、例えばポリ酢酸ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂またはゴムなどが使用できる。被膜用バインダーは、TiとSiとを含む複合酸化物粒子を被膜内に保持する機能を有し、あわせてTiとSiとを含む複合酸化物粒子と集電体本体とを結着させる機能を有する。
TiとSiとを含む複合酸化物粒子は、被膜用バインダーに分散していることが好ましい。被膜中におけるTiとSiとを含む複合酸化物粒子は、集電体本体が電解液などと反応して腐食することを抑制する機能があり、集電体本体の表面全体に分散して存在していることが好ましい。また電解液によって集電体本体が腐食される反応は電気的に活性な部分でおこるので、特にTiとSiとを含む複合酸化物粒子が連続して集電体本体を覆う必要はない。
集電体本体へ被膜を形成する方法は、スプレー法を用いることが好ましい。具体的にはTiとSiとを含む複合酸化物粒子と被膜用バインダーとを有機溶媒に溶かして溶液を作成し、噴霧器を用いてその溶液を集電体本体の塗布面に噴霧し、有機溶媒を揮発、除去することによって集電体本体に被膜を形成する。
本発明の非水電解質二次電池は、上述した非水電解質二次電池正極用集電体を有する。上記非水電解質二次電池正極用集電体を有する非水電解質二次電池は、出力特性を低減することなくサイクル特性を向上することが出来る。
(非水電解質二次電池用正極)
本発明の非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池正極用集電体を有する正極を有する。
正極は、正極活物質が結着剤で結着されてなる正極活物質層が、上記非水電解質二次電池正極用集電体に付着してなる。図1に本実施形態の非水電解質二次電池用正極を説明する模式図を示す。図1に示すように、集電体本体1に被膜2が形成され、被膜2に正極活物質層3が形成される。本実施形態では被膜2が形成された集電体本体1を非水電解質二次電池正極用集電体4と称する。図1に示すように被膜2中でTiとSiとを含む複合酸化物粒子21が、被膜用バインダー22中に分散している。
上記正極活物質層3はさらに導電助剤を含んでもよい。正極は、正極活物質および結着剤、並びに必要に応じて導電助剤を含む正極活物質層形成用組成物を調製し、さらにこの組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、非水電解質二次電池正極用集電体の被膜の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
正極活物質層形成用組成物の塗布方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
粘度調整のための溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
正極活物質としては、高電圧で用いることが出来るリチウム含有化合物が適当である。例えばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのリチウム含有金属複合酸化物などを用いることができる。また正極活物質として他の金属化合物あるいは高分子材料を用いることもできる。他の金属化合物としては、例えば酸化チタン、酸化バナジウム若しくは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタン若しくは硫化モリブデンなどの二硫化物が挙げられる。高分子材料としては例えばポリアニリンまたはポリチオフェンなどの導電性高分子が挙げられる。
正極活物質は、特に一般式: LiCoNiMn (Dはドープ成分であり、Al、Mg、Ti、Sn、Zn、W、Zr、Mo、Fe及びNaから選ばれる少なくとも1つであり、p+q+r+s=1、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s<1)で表される複合金属酸化物からなることが好ましい。ここで、上記p、q、rはそれぞれ0<p<1、0<q<1、0<r<1の範囲とすることが好ましい。
上記複合金属酸化物は、熱安定性に優れ、低コストであるため、上記複合金属酸化物を含むことによって、熱安定性のよい、安価な非水電解質二次電池とすることができる。
上記複合金属酸化物として、例えばLiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiCoO、LiNi0.8Co0.2、LiCoMnOを用いることができる。中でもLiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3は、熱安定性の点で好ましい。
結着剤は、正極活物質及び導電助剤を正極用集電体に繋ぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびフッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリ酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリイミドおよびポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、並びにスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴムを用いることができる。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)(KB)、気相法炭素繊維(VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、正極に含有される活物質100質量部に対して、1質量部〜30質量部程度とすることができる。
(その他の構成要素)
本発明の非水電解質二次電池は、電池構成要素として、上記した非水電解質二次電池用正極に加えて、負極、セパレータ、電解液を有する。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。負極活物質層は、負極活物質、結着剤を含み、必要に応じて導電助剤を含む。集電体、結着剤、導電助剤は正極で説明した集電体本体、結着剤、導電助剤と同様である。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物、あるいは高分子材料などを用いることができる。
炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素は、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biの少なくとも1種であるとよい。中でも、リチウムと合金化可能な元素としては、珪素(Si)または錫(Sn)が好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物としては、例えば、ZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiOあるいはLiSnOが使用できる。リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物としては珪素化合物または錫化合物が好ましい。珪素化合物としては、SiO(0.5≦x≦1.5)が好ましい。錫化合物としては、例えば、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)が使用できる。
高分子材料としては、ポリアセチレン、ポリピロールなどが使用できる。
セパレータは正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、若しくはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミックス製の多孔質膜が使用できる。
電解液は非水電解質二次電池用に用いることのできる電解液が使用できる。電解液は、溶媒とこの溶媒に溶解された電解質とを含んでいる。
溶媒として、例えば、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンが使用できる。鎖状エステル類として、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルが使用できる。エーテル類として、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンが使用できる。
また上記電解液に溶解させる電解質として、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を使用することができる。
電解液として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
上記非水電解質二次電池は車両に搭載することができる。上記非水電解質二次電池は、大きな充放電容量を有し、かつ優れたサイクル性能を有するため、その非水電解質二次電池を搭載した車両は、寿命、航続距離の面で高性能となる。
車両としては、電池による電気エネルギーを動力源の全部または一部に使用する車両であればよく、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、電動フォークリフト、電気車椅子、電動アシスト自転車、電動二輪車が挙げられる。
以上、本発明の非水電解質二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
<集電体への被膜形成>
集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。
被膜材料として、SiO粉末と、アナターゼ型TiO粉末と、ポリ酢酸ビニル系樹脂からなるバインダーとを準備した。SiO粉末やTiO粉末は例えば、関東化学株式会社、和光純薬工業株式会社、株式会社高純度化学研究所などから入手することができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は和光純薬工業株式会社、関東化学株式会社などから入手できる。この被膜材料は、原料比として質量比率でTiO:SiO:バインダー=30:10:60となるように混合されており、TiOとSiOとを原料にして、TiとSiとを含む複合酸化物粒子が形成されている。この被膜材料を、エタノールに溶解した。
TiとSiとを含む複合酸化物粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定したところ50nmであった。
(集電体A)
噴霧器を用いて上記したエタノールに溶解した被膜材料をアルミニウム箔の表面に噴霧し、エタノールを揮発、除去することによりアルミニウム箔の表面に厚み1μmの被膜を形成した。これを集電体Aとする。
(集電体B)
アルミニウム箔を集電体Bとする。
(集電体C)
アルミニウム箔をスパッタリング装置に入れ、その表面にTiOをスパッタリングし、膜厚100nmのTiO膜を形成した。これを集電体Cとする。
(集電体D)
アルミニウム箔をスパッタリング装置に入れ、その表面に炭素をスパッタリングし、膜厚100nmの炭素膜を形成した。これを集電体Dとする。
<TiとSiとを含む複合酸化物粒子の確認>
集電体Aの被膜の複合酸化物粒子の部分を被膜表面側から、EDX装置(エネルギー分散型X線分光装置:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いて加速電圧15kVにて測定を行った。測定結果のEDXスペクトルを図2に示す。
図2に示すEDXスペクトルから、複合酸化物粒子の部分にTi及びSiが同時に検出されたことがわかった。このことからTiとSiとを含む複合酸化物粒子はTiOとSiOとの混合物ではなく複合体であることが証明された。なお図2に示すEDXスペクトルでは、AlとNaも同時に検出された。Alは集電体由来のものであり、Naは不純物であると考えられる。
<ラミネート型リチウムイオン二次電池作製>
(実施例1)
集電体Aを正極用集電体として用いた実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を次のようにして作製した。まず正極活物質としてLiNi0.5Co0.2Mn0.3と導電助剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、それぞれ88質量部、6質量部、6質量部を混合し、この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、スラリーを作製した。
上記集電体Aにスラリーをのせ、ドクターブレードを用いてスラリーが膜状になるように集電体Aに塗布した。得られたシートを80℃で20分間乾燥してNMPを揮発させて除去した後、ロ−ルプレス機により、集電体Aと集電体A上の塗布物を強固に密着接合させた。この時電極密度は2.3g/cmとなるようにした。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、厚さ50μm程度の正極1とした。
負極は以下のように作製した。黒鉛粉末97質量部と、導電助剤としてアセチレンブラック1質量部と、結着剤として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)1質量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部とを混合し、この混合物を適量のイオン交換水に分散させてスラリーを作製した。このスラリーを負極用集電体である厚み20μmの銅箔にドクターブレードを用いて膜状になるように塗布し、スラリーを塗布した集電体を乾燥後プレスし、接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、厚さ45μm程度の負極とした。
上記の正極1および負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極1および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネー(DEC)をEC:DEC=3:7(体積比)で混合した溶媒に1モルのLiPF6を溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で、実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例1)
実施例1における集電体Aの代わりに集電体Bを用いた以外は実施例1と同様にして比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例2)
実施例1における集電体Aの代わりに集電体Cを用いた以外は実施例1と同様にして比較例2のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例3)
実施例1における集電体Aの代わりに集電体Dを用いた以外は実施例1と同様にして比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
<初期容量測定>
実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池の初期容量を測定した。充電の際は、25℃において1Cレート、電圧4.5VでCC充電(定電流定電圧充電)をした。CV充電は、電圧4.5Vにて一時間保持した。放電の際は3.0Vまで、0.33CレートでCC放電(定電流放電)を行った。この時の放電容量を測定し、初期容量とした。結果を表1に示す。
ここで、比較例1は集電体本体を用いたものであり、比較例2は集電体本体にTiO膜が形成されたものであり、比較例3は集電体本体に炭素膜が形成されたものである。表1に見られるように、比較例2の初期容量が実施例1、比較例1、比較例3の初期容量に比べて大幅に低かった。比較例2は、TiO膜の導電性が十分でないため、初期容量が低下したものと思われる。それに対して実施例1は、炭素膜を集電体本体に形成した比較例3と比べても初期容量に遜色がなかった。また4.5Vという高電圧使用環境下でも、実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池の初期容量は低下しないことが確認できた。実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池で用いた集電体Aの被膜は導電性が高いものでもないので、実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池の初期容量が低下しなかった理由は不明である。
<サイクル特性評価>
初期容量測定において初期容量が低下したことがわかった比較例2を除いて、実施例1、比較例1及び比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池のサイクル特性を評価した。サイクル特性の評価としては、以下の条件で充放電を繰り返したサイクル試験を行い各サイクルの放電容量を測定した。充電の際は、25℃において1Cレート、電圧4.5VでCC充電(定電流充電)をした。放電の際は3.0V、1CレートでCC放電(定電流放電)を行った。この充放電を1サイクルとし、50サイクルまでサイクル試験を行った。初回サイクルの放電容量を基準とし、容量維持率を計算した。各サイクルにおける容量維持率は次に示す式にて求めた。
容量維持率(%)=(各サイクル時の放電容量/初回放電容量)×100
実施例1、比較例1及び比較例3のサイクル数と容量維持率(%)の関係を示すグラフを図3に示す。
図3に示すように実施例1の各サイクルにおける容量維持率が比較例1及び比較例3のものより高かった。また各サイクルにおける容量維持率は比較例1よりも比較例3のほうが低かった。50サイクル目の容量維持率を比較すると、比較例1の容量維持率が81%程度、比較例3の容量維持率が60%程度、であったのに対し、実施例1の容量維持率は90%であった。
サイクル試験結果から実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池は、4.5Vという高電圧使用環境下でもサイクル特性は高いものであることがわかった。電解液により集電体が腐食するのを抑制するという保護膜の作用が、比較例1及び比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池に比べて実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池のほうが優れていることがわかった。
初期容量測定結果及びサイクル特性評価結果から、実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池は、初期容量が低下せず、サイクル特性に優れていることがわかった。
1:集電体本体、2:被膜、21:TiとSiとを含む複合酸化物粒子、22:被膜用バインダー、3:正極活物質層、4:非水電解質二次電池正極用集電体。

Claims (3)

  1. 集電体本体と、
    該集電体本体の表面に形成された、TiとSiとOとからなる複合酸化物粒子と被膜用バインダーとからなる被膜と、を有し、
    前記被膜用バインダーは、ポリ酢酸ビニル系樹脂であり、
    前記被膜の厚みは、10nm以上1μm以下である非水電解質二次電池正極用集電体を有する非水電解質二次電池の製造方法であって、
    前記非水電解質二次電池正極用集電体を製造する集電体製造工程を有し、
    前記集電体製造工程は、
    TiO とSiO と前記ポリ酢酸ビニル系樹脂と有機溶媒とを、TiO :SiO :ポリ酢酸ビニル系樹脂=30:10:60の質量比で混合して被膜材料とする被膜材料作成工程を含む非水電解質二次電池の製造方法。
  2. 前記複合酸化物粒子は、平均粒径が10nm以上1μm以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法
  3. 前記非水電解質二次電池は、一般式: LiCoNiMn (Dはドープ成分であり、Al、Mg、Ti、Sn、Zn、W、Zr、Mo、Fe及びNaから選ばれる少なくとも1つであり、p+q+r+s=1、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s<1)で表される複合金属酸化物からなる正極活物質を有する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池の製造方法
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