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JP5730541B2 - 超電導線材用基材の製造方法、および超電導線材の製造方法 - Google Patents

超電導線材用基材の製造方法、および超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超電導ケーブルや超電導マグネット等に用いられる超電導線材の製造方法、並びに該超電導線材に用いられる超電導線材用基材の製造方法に関する。
従来から、基材上に超電導体を成膜して、超電導線材を製造する試みが数多く提案されている。
高温超電導線材における通電特性は、その超電導体の結晶方位、特に2軸配向性に大きく依存することが知られている。高い2軸配向性を有する超電導層を得るため、下地となる中間層の結晶性を向上させる必要がある。その方法の一つとして、中間層蒸着時に斜め方向からアシストイオンを照射しながら成膜する方法(IBAD法)がある。薄膜で高い2軸配向性が得られることから、成膜ターゲットとして岩塩型であるMgOが良く用いられ、開発の主流となっている。良好な2軸配向膜を得るには、IBAD法で形成したMgO層の下地(2軸配向層)の平滑性およびMgO層との低反応性が有効である。その両特性を実現するにあたり、アモルファス状に成膜可能な物質が用いられ、YやGZOが良く用いられる。
また、高い通電特性を得るには、基材からのカチオン(Ni、Fe、MoおよびMn等)の拡散が超電導層へ及ばない様に中間層内に拡散防止層(バリア層)を設ける必要がある。バリア層として、Al、GZO、YSZ、Crなどが挙げられる。従来、GZO層(ベッド層)を成膜したCrを含有する金属基板を熱処理し、基板表層にCr膜を得る方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
特開2010−123475号公報
しかしながら、上記熱処理の方法によって基板表層にCr膜を形成する場合、該熱処理プロセスにはかなりの時間を要し(例えば、200m級基板へのCr膜形成であれば、およそ一週間)、製造効率の点でネックとなっていた。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、基板上に中間層の1層としてCr膜を有する超電導線材用基材の製造効率を高めることを目的とする。
本発明の上記課題は下記の手段によって解決された。
<1> Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板上に中間層を形成する中間層形成工程を有し、
且つ前記中間層形成工程として、成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法にてCr膜を形成するCr膜形成工程と、その他の層を形成する工程と、を有する超電導線材用基材の製造方法。
<2> 前記Cr 膜形成工程が、前記Cr 膜を直接前記基板上に形成する工程である前記<1>〜<4>の何れか1項に記載の超電導線材用基材の製造方法。
<3> 前記Cr膜の厚さを10nm以上とする前記<1>または<2>に記載の超電導線材用基材の製造方法。
<4> 前記中間層形成工程が、前記Cr膜と、ベッド層と、2軸配向層と、キャップ層と、を順次形成する工程である前記<1>〜<3>の何れか1項に記載の超電導線材用基材の製造方法。
<5> Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板上に中間層を形成する中間層形成工程を有し、且つ前記中間層形成工程として、成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法にてCr膜を形成するCr膜形成工程と、その他の層を形成する工程と、を有する製造方法によって得られた超電導線材用基材を準備する基材準備工程と、
前記超電導線材用基材上に超電導層を形成する超電導層形成工程と、
を有する超電導線材の製造方法。
本発明によれば、基板上に中間層の1層としてCr膜を有する超電導線材用基材の製造効率を高めることができる。
本発明の実施形態に係る超電導線材の積層構造を示す図である。 IBAD法によるCr膜の製造方法を説明するための概略図である。 図1に示す超電導線材の積層構造における断面詳細図である。
本発明に係る超電導線材用基材の製造方法は、Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板を用い、該基板上に中間層を形成する中間層形成工程を有する。また、本発明に係る超電導線材の製造方法は、前記超電導線材用基材の製造方法によって得られた超電導線材用基材を準備する基材準備工程と、前記超電導線材用基材上に超電導層を形成する超電導層形成工程と、を有する。
前記中間層形成工程では、少なくとも以下の工程が行なわれる。
(A)Cr膜形成工程
成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法(IBAD法:Ion Beam Assisted Deposition)にてCr膜を形成する
(B)その他の層を形成する工程
尚、中間層としてCr膜以外に形成される前記その他の層としては、(B-1)ベッド層、(B-2)2軸配向層、および(B-3)キャップ層等が挙げられる。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る超電導線材用基材および超電導線材並びにそれらの製造方法について具体的に説明する。なお、図中、同一または対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
(超電導線材用基材および超電導線材の構成およびそれらの製造方法)
図1は、本発明の実施形態に係る超電導線材の積層構造を示す図である。
図1に示すように、超電導線材1は、テープ状の金属基板10上に中間層20、超電導層30、保護層40が順に形成された積層構造を有している。
・基板
金属基板10は、低磁性の無配向金属基材である。金属基板10の形状は、上述のテープ状だけでなく、板材、線材、条体等の種々の形状のものを用いることができる。金属基板10の材料としては、例えば、強度および耐熱性に優れた、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属またはこれらの合金を用いることができる。尚、本実施形態では、Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板を用いる。特に好ましいのは、耐食性および耐熱性の点で優れているステンレス、ハステロイ(登録商標)、その他のニッケル系合金である。また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。
尚、本実施形態においては、基板がNi、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する場合であっても、前述の通りIBAD法によってCr膜が形成されることにより、基板に含まれる上記Niなどのカチオン拡散が良好に防止でき、優れた超電導特性が得られる。
・中間層
中間層20は、超電導層30において高い面内配向性を実現するために金属基板10上に形成される層であり、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が金属基板10と超電導層30を構成する酸化物超電導体との中間的な値を示す。
また、本発明の実施形態においては、中間層20は、少なくともCr膜とその他の層から構成される。上記その他の層が1層である場合、Cr膜は、金属基板10とその他の層との間に形成してもよい。またその他の層が2層以上である場合、Cr膜は、金属基板10とその他の層との間に形成しても、その他の層と別のその他の層との間に形成してもよい。
(A)Cr
ここで、Cr膜の形成方法(IBAD法)について説明する。
図2は、成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法(IBAD法)を使用する際に用いるスパッタ装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、スパッタ装置100は、内部にターゲット(蒸着源)を備えるスパッタガン101、アシストイオン源102、基材搬送部104を備えて構成されている。このスパッタ装置100は真空容器(図示略)に収容され、真空中で蒸着粒子を成膜面DAに堆積できるようになっている。また、スパッタ装置100は図示しない加熱ヒータを有し、成膜面DAを所望の温度に加熱できるようになっている。
Cr膜を成膜する際には、テープ状の金属基板10または前記その他の層が形成されたテープ状の金属基板10が基材110となり、これが基材搬送部104によってスパッタ装置内に搬送されることとなる。
スパッタガン101は、内部にターゲット(蒸着源)を備え高周波プラズマ(RFプラズマ)によって不活性ガスイオン(例えばAr)を発生させ、該イオンの衝突によって前記ターゲットから蒸着粒子をはじき出させる装置である。また、アシストイオン源102は、イオン発生器で発生させたイオンを加速して放出するイオン銃を備え、所望のイオンを成膜面DAに照射できるようになっている。
スパッタガン101のターゲットからはじき出された蒸着粒子は、対向する基材110の成膜面DAに堆積して、多結晶薄膜を形成する。このとき、アシストイオン源102により、基材110の成膜面に対して斜め方向(例えば成膜面の法線方向に対して45°)からアシストイオンビームを照射する。そうすると、基材110の成膜面DAに形成される多結晶薄膜内の空孔形成が抑制され、緻密なCr膜が成膜される。基材搬送部104によって基材110を移動させながら成膜することで、長尺の基材110に一様にCr膜が形成される。
このときの成膜条件としては、膜厚等によっても適宜設定されるが、例えば
・IBADアシストイオンビーム電圧200V以上1500V以下
・IBADアシストイオンビーム電流30mA以上150mA以下
・IBADアシストイオンビーム加速電圧200V
・RFスパッタ出力800W以上1500W以下
・基板搬送速度:10m/h以上100m/h以下
・成膜温度:5℃以上250℃以下
の範囲が好ましい。
また、成膜面DAに対して照射されるイオンビームの斜め方向の角度としては、成膜面の法線方向に対して10°以上80°以下が好ましく、40°以上50°以下がより好ましく、45°程度が特に好ましい。
Cr膜は、図2に示すスパッタ装置100を用いて上記の通り成膜できる。本実施形態では、Cr膜の形成に際し、ターゲットにはCrやCrが用いられる(尚、ターゲットにCrを用いる場合には併せてスパッタ装置内の雰囲気ガスとしてOが用いられる)。また、アシストイオン源102のイオン銃から放出されるイオンとしてはアルゴンイオンや酸素イオンが用いられる。
なお、Cr膜の成膜には、高周波プラズマ(RFプラズマ)を用いたスパッタガン101ではなく、イオン発生器(イオン銃)で発生させたイオンをターゲット(蒸着源)に衝突させるイオンビームスパッタ法を利用することもできる。
なお、Cr膜の厚さは、平均膜厚で10nm以上であることが好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上50nm以下が特に好ましい。
10nm以上であることにより、アシストイオンビームを照射しながらCr膜を成膜する際に、アシストイオン源102のイオン銃から放出されたイオン(Ar等)がCr膜を突き抜けたり膜をかき回して、下地がむき出しとなる現象が抑制される。また、基板がNi、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する場合には、基板に含まれる上記Niなどのカチオン拡散が良好に防止でき、優れた超電導特性が得られる。一方、200nm以下であることにより、製造効率が向上し、低コスト化が図れ、更に厚膜化に伴って堆積した歪により超電導線材が反ってしまう現象が抑制される。また、次工程の成膜(Cr膜上に前記その他の層を形成する場合には該その他の層および超電導層、形成しない場合には超電導層の成膜)における温度ムラが抑制され、均質な特性が得られる。更には、中間層の剥離が好適に抑制される。
ここで、Cr膜の厚さは断面SEM観察や断面TEM観察により測定することができる。
(B)その他の層
次いで、中間層20としてCr膜以外に形成される前記その他の層について説明する。前記その他の層としては、(B-1)ベッド層、(B-2)2軸配向層、および(B-3)キャップ層等が挙げられる。尚、ここでは中間層20として、金属基板10の表面から順に(A)Cr膜、(B-1)ベッド層、(B-2)2軸配向層、(B-3)キャップ層を形成した態様について図を用いて説明するが、既に述べた通り本実施形態においては、Cr膜が形成される位置はこの態様には限られない。
図3は、図1に示す超電導線材1の積層構造のうち、金属基板10と中間層20とにおける断面詳細図である。
図3に示すように、超電導線材1の中間層20は、Cr膜22と、ベッド層24と、2軸配向層26と、キャップ層28と、を備えて構成されている。尚、Cr膜22は前述の方法により成膜される。
(B-1)ベッド層
ベッド層24は、Cr膜22表面に形成される。尚、前記Cr膜22を図3に示すように金属基板10の表面に形成するのではなくその他の層同士の間に形成してもよい。
ベッド層24の構成材料としては、GdZr7−δ(−1<δ<1、以下GZOと称す)、YAlO(イットリウムアルミネート)、YSZ(イットリア保護ジルコニア)、Y、Gd、Al、B、Sc、REZrOおよびRE等を用いることができ、中でもGZO、Y、YSZが好適なものとして挙げられる。ここで、REは、単一の希土類元素または複数の希土類元素を表す。なお、ベッド層24は、例えば2軸配向性を向上させるなどの機能を有していてもよい。なお、2軸配向性を向上させる機能を持たせるためには、GZOをベッド層24の構成材料として用いることが好ましい。
ベッド層24の膜厚は、特に限定されないが、例えば10nm以上200nm以下である。
ベッド層24の形成(成膜)方法としては、例えば、アルゴン雰囲気中でRFスパッタ法により成膜する方法が挙げられる。
RFスパッタ法では、プラズマ放電で発生した不活性ガスイオン(例えばAr)を蒸着源(GZO等)に衝突させ、はじき出された蒸着粒子を成膜面に堆積させて成膜する。このときの成膜条件は、ベッド層24の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、RFスパッタ出力:100W以上500W以下、基板搬送速度:10m/h以上100m/h以下、成膜温度:20℃以上500℃以下とされる。
なお、ベッド層24の成膜には、イオン発生器(イオン銃)で発生させたイオンを蒸着源に衝突させるイオンビームスパッタ法を利用することもできる。また、ベッド層24は、Y層とAl層との組み合わせ等の多層構造とすることもできる。
(B-2)2軸配向層
2軸配向層26は、ベッド層24上に形成され、超電導層30の結晶を一定の方向に配向させるための層である。
2軸配向層26の構成材料としては、MgO、CeO、YSZ、NbO等の多結晶材料が挙げられる。また、ベッド層24と同様の材料、例えばGZOを用いることもできる。
2軸配向層26の膜厚は、特に限定されないが、例えば1nm以上20nm以下である。
2軸配向層26の形成(成膜)方法としては、例えばアルゴン、酸素、またはアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気中で、Cr膜22と同じく前記IBAD法により成膜する方法が挙げられる。IBAD法では、アシストイオンビームを成膜面に対して斜め方向から照射しながら、RFスパッタ(またはイオンビームスパッタ)により蒸着源(MgO等)からはじき出された蒸着粒子を成膜面に堆積させて成膜する。
このときの成膜条件は、2軸配向層26の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、
・IBADアシストイオンビーム電圧:800V以上1500V以下
・IBADアシストイオンビーム電流:80mA以上350mA以下
・IBADアシストイオンビーム加速電圧:200V
・RFスパッタ出力:800W以上1500W以下
・基板搬送速度:80m/h以上500m/h以下
・成膜温度:5℃以上250℃以下
であることが好ましい。
また、上記アシストイオンビームが照射される斜め方向の角度としては、成膜面の法線方向に対して10°以上80°以下が好ましく、45°程度が特に好ましい。
なお、2軸配向層26の成膜には、蒸着源を例えばMgとして、アルゴンと酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタすることにより、はじき出されたMgと酸素を反応させてMgOを成膜させる反応性スパッタを利用することもできる。
(B-3)キャップ層
キャップ層28は、2軸配向層26上に形成され、2軸配向層26を保護するとともに超電導層30との格子整合性を高めるための層である。
キャップ層28の材料としては、例えばMgO、CeO、YSZ、LaMnO(LMO)、SrTiO(STO)が挙げられる。
キャップ層28の膜厚は、特に限定されないが、十分な配向性を得るには50nm以上が好ましく、300nm以上であればさらに好ましい。
このキャップ層28の形成(成膜)方法としては、PLD法やRFスパッタ法による成膜が挙げられる。RFスパッタ法による成膜条件は、キャップ層28の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば
・RFスパッタ出力400W以上1000W以下
・基板搬送速度2m/h以上50m/h以下
・成膜温度450℃以上800℃以下
であることが好ましい。
・超電導層
次いで、本発明に係る超電導線材およびその製造方法について説明する。超電導層30は前述の本発明に係る超電導線材用基材上に形成される。
超電導層30は、前記中間層20上に形成され、酸化物超電導体、特に銅酸化物超電導体で構成されている。この銅酸化物超電導体としては、REBaCu7−δ(RE−123と称す)等の組成式で表される結晶材料を用いることができる。
上記REBaCu7−δ中のREは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、YbやLuなどの単一の希土類元素または複数の希土類元素であり、これらの中でYがよく用いられる。また、δは、酸素不定比量であり、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。
超電導層30の膜厚は、特に限定されないが、例えば0.8μm以上10μm以下である。
超電導層30の形成(成膜)方法としては、例えばTFA−MOD法、PLD法、CVD法、MOCVD法、またはスパッタ法などが挙げられる。これら成膜方法の中でも、高真空を必要とせず、大面積化が容易で量産性に優れているという理由からMOCVD法を用いることが好ましい。MOCVD法を用いる場合の成膜条件は、超電導層30の構成材料や膜厚等によって適宜設定されるが、例えば、
・基板搬送速度:80m/h以上500m/h以下
・成膜温度:800℃〜900℃
とすることが好ましい。また、酸素不定比量δを小さくして超電導特性を高めるという観点から、酸素ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
以上のような超電導層30の上面には、例えばスパッタ法により銀からなる保護層40が成膜されている。また、保護層40を成膜して超電導線材1を製造した後、超電導線材1に熱処理を施してもよい。
尚、本実施形態においては、例えばCr膜を含む中間層の好ましい構造としては、以下の構造が考えられる。
・CeO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/Epi-MgO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/LMO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/LMO/Epi-MgO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・LMO/Epi-MgO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・STO/Epi-MgO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・Epi-MgO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・LMO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・STO/IBAD-MgO/GZO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/Epi-MgO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/LMO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・CeO/LMO/Epi-MgO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・LMO/Epi-MgO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・STO/Epi-MgO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・Epi-MgO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・LMO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
・STO/IBAD-MgO/YO/IBAD-CrO/Hastelloy
なお、上記におけるGZO、LMO、STOは、それぞれGd−Zr−O(Gd2Zr27-x、−1<x<1を意味する)、La−Mn−O(LaMnO3、−1<x<1を意味する)、Sr−Ti−O(SrTiO3、−1<x<1を意味する)の略称である。また、IBAD−MgOはIBAD法により成膜したMgO層であり、Epi−MgOはIBAD−MgO層上にPLD法などでエピタキシャル成長させた自己配向のMgO層である。
(変形例)
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
例えば、ベッド層24や保護層40は、省略することができる。金属基板10は、金属で構成される場合を説明したが、耐熱性の高い樹脂等で形成してもよい。
また、2軸配向層26とキャップ層28との間に、キャップ層28の格子整合性を向上させるため、LMOおよびSTOから選ばれる少なくとも1つを含有する格子整合層を設けるようにしてもよい。
また、上述したYBaCu7−δなどの酸素不定比量δは、0以上である場合(正の値を示す場合)を説明したが、負の値を示してもよい。
(効果)
従来、Cr膜を成膜する場合には、既に述べた通り熱処理によって基板表層にCr膜が形成され、該熱処理プロセスにはかなりの時間を要すため(例えば、200m級基板へのCr膜形成であれば、およそ一週間)、製造効率の点でネックとなっていた。
また、基板上にGZO等からなるベット層を設けた後Cr膜を形成するための上記熱処理プロセスを行なう場合、ベッド層が結晶化する傾向があり、その結果ベッド層上に形成される2軸配向層の配向度の低下を招いていた。
更に、超電導線材においては、高い通電特性を得る観点で、基材からのカチオン(Ni、Fe、MoおよびMn等)の拡散を効率的に抑制することが求められていた。
これに対し本実施形態では、上記のように、Cr膜をIBAD法にて成膜する。IBAD法では熱処理プロセスが不要であるためCr膜の製造時間を大幅に短縮することができ、製造効率を格段に向上させることができ、その結果低コスト化を図ることができる。
また、本発明の製造方法においてベッド層を形成する場合には、熱処理によるベッド層の結晶化が防止されるため、その上に形成される2軸配向層は高い2軸配向性が達成され、超電導線材の高特性化が実現できる。
更に、本発明の製造方法において用いられる基板がNi、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する場合、IBAD法を用いて形成されたCr膜は非常に緻密な膜となるためにバリア機能に優れ、上記Ni等のカチオンの拡散をより効果的に抑制することができる。また、上記の通りバリア機能に優れるため、他の方法で成膜したCr膜よりも薄膜化することができる。
また、Cr膜を基板表面に形成する場合には、膜の成長初期において基板とCrがアシストビームにより混ざり合わされ、両者間の結合が強化されるために、中間層と基板間での剥離がより効果的に防止される。
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例〕
(金属基体)
まず、金属基体として、幅10mm、厚さ100μm、長さ200mのテープ状に圧延加工されたNi基合金基体(ハステロイ、商標:Ni−16Cr−15.6Mo−6Fe−4W−2Co)を準備した。尚、超電導線材に供する配向基板としての特性を高めるため、上記金属基体の表面を研磨し、Ra値で10nm以下とした。
(Cr膜)
上記金属基体の直上に、図2に示すスパッタ装置を用いIBAD法により下記の条件でCr膜を形成した。尚、Cr膜の成膜に要した時間は3時間であった。
・ターゲット:Cr
・雰囲気ガス:Ar+O
・IBADアシストイオンビームから放出されるイオン:Ar
・IBADアシストイオンビーム電圧:300V
・IBADアシストイオンビーム電流:50mA
・IBADアシストイオンビーム加速電圧:200V
・成膜面DAに対して照射されるIBADアシストイオンビームの角度:45°
・RFスパッタ出力:1000W
・製造速度(基板搬送速度):80m/h
・成膜温度:80℃
・雰囲気圧力:4mTorr
・成膜レート:5A/s
・膜厚:20nm
(GZO層)
次いで、上記Cr膜上にGdZr(GZO)層(膜厚:110nm)をイオンビームスパッタ法により、室温にて成膜した。
この時点で、GZO層の表面をSEMにより100〜10000倍の倍率で観察し、剥離が発生しているか否かを確認した(剥離の評価1)。
(IBAD−MgO層,CeO層)
さらに、MgO層(膜厚:3〜5nm)をIBAD法により、200〜300℃にて成膜し、次いでCeO層(膜厚:400nm)をRFスパッタ法により、500〜600℃にて成膜した。
(超電導層)
最後にMOCVD法により、約800℃の条件下で、YGdBaCu7−d超電導層を800nmの厚さに成膜した。
超電導層の成膜後、積層構造の表面をSEMにより観察し、剥離が発生しているか否かを確認した(剥離の評価2)。
また、Cr膜の形成における基板搬送速度を調整することによって、Cr膜の膜厚が異なる(5,10,15,50,100nm)超電導線材を作製した。
これらすべての超電導線材における剥離の評価1および2を、下記評価基準によって評価した。結果を下記表1に示す。
×:評価1および2の少なくとも何れかで、剥離の発生あり
△:剥離まではいかないが、微小の亀裂(クラック)の発生あり
○:剥離の発生なし
〔比較例〕
(金属基体)
まず、前記実施例と同様の金属基体を準備した。尚、この金属基体はCr元素を含む耐熱性Ni基合金である。
(GZO層)
上記金属基体の直上に、GdZr(GZO)層を前記実施例と同様の方法により成膜し、試料を得た。
(Cr膜)
このようにして得た試料に、酸素100%、圧力1気圧の雰囲気中において、500℃の酸素アニール処理を施した。その後、試料を、集束イオンビームで加工し、TEM(透過電子顕微鏡)を用いて断面観測を行った、その結果、金属基体の表面付近に、組成または構造の違いを示すコントラストが得られ、該当箇所をEDXスペクトル解析により調べたところ、厚さ20nmの酸化クロムを主体とする酸化物層(Cr膜)が形成されていることを確認することができた。
尚、Cr膜の成膜に要した時間は140時間であった。
また、この時点で、GZO層の表面をSEMにより100〜10000倍の倍率で観察し、剥離が発生しているか否かを確認した(剥離の評価1)。
(IBAD−MgO層,CeO層,超電導層)
さらに、IBAD−MgO層、CeO層、およびGdBaCu7−d超電導層を前記実施例と同様の方法により成膜した。
超電導層の成膜後、積層構造の表面をSEMにより観察し、剥離が発生しているか否かを確認した(剥離の評価2)。
また、Cr膜の形成における熱処理時間を調整することによって、Cr膜の膜厚が異なる(5,10,15,50,100nm)超電導線材を作製した。
これらすべての超電導線材における剥離の評価1および2を、前記実施例と同様の評価基準によって評価した。結果を下記表1に示す。

上記実施例では、より緻密なCr膜が形成されているものと考えられ、薄いCr膜でもNi等のカチオンの拡散防止効果があるために、5nm,10nm,15nmのCr膜でも剥離が抑制されているものと推察される。
一方比較例では、薄いCr膜ではNi等のカチオンの拡散が防止できず、その結果剥離が生じているものと推察される。
10 金属基板
22 Cr
24 ベッド層
26 2軸配向層
28 キャップ層
30 超電導層
100 スパッタ装置
101 スパッタガン
102 アシストイオン源
104 基材搬送部
110 基材
DA 成膜面

Claims (5)

  1. Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板上に中間層を形成する中間層形成工程を有し、
    且つ前記中間層形成工程として、成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法にてCr膜を形成するCr膜形成工程と、その他の層を形成する工程と、を有する超電導線材用基材の製造方法。
  2. 前記Cr 膜形成工程が、前記Cr 膜を直接前記基板上に形成する工程である請求項1に記載の超電導線材用基材の製造方法。
  3. 前記Cr膜の厚さを10nm以上とする請求項1または請求項2に記載の超電導線材用基材の製造方法。
  4. 前記中間層形成工程が、前記Cr膜と、ベッド層と、2軸配向層と、キャップ層と、を順次形成する工程である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の超電導線材用基材の製造方法。
  5. Ni、Fe、MoおよびMnから選択される少なくとも1種の元素を含有する基板上に中間層を形成する中間層形成工程を有し、且つ前記中間層形成工程として、成膜面に対して斜め方向からイオンビームを照射しながら蒸着源からの蒸着粒子を前記成膜面に堆積させて膜を形成するスパッタリング法にてCr膜を形成するCr膜形成工程と、その他の層を形成する工程と、を有する製造方法によって得られた超電導線材用基材を準備する基材準備工程と、
    前記超電導線材用基材上に超電導層を形成する超電導層形成工程と、
    を有する超電導線材の製造方法。
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