JP5794034B2 - 障害予測システム及びプログラム - Google Patents
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Description
まず、本例に係る障害予測システムの説明に先立ち、その背景について説明しておく。
例えば、複写機では、機械メンテナンスのために、プロセス制御パラメータなどの機械内部の状態を示す多くのデータが稼働中に収集されている。これらの時系列データは、複雑なフィードバックループを持つシステムパラメータのデータであることが多く、或るパラメータのデータ異常を原因にして他のパラメータのデータにも異常が生じることがある。このため、時系列データの相互相関係数の推移から障害予測する際に、時系列データに異常があるパラメータが複数検出された場合には、どのパラメータが原因であったかを特定できなければ、障害予測に支障が生ずる。
そこで、本例の障害予測システムでは、以下のような構成により、原因パラメータを特定することで、障害予測の精度向上に役立てるようにしている。
本例の障害予測システムは、障害予測の対象となる複数の複写機と、各複写機から収集したデータに基づいて複写機に障害が発生することを予測するサーバ装置とを、通信網を介して有線又は無線により通信可能に接続したシステムであり、サーバ装置側に、データ収集部1、パラメータ分類部2、グループ別パラメータペア抽出部3、グループ別パラメータペア格納部4、相互相関係数算出部5、閾値比較部6、類似度算出部7、原因パラメータ特定部8、障害予測部9、を設けてある。本例では、1台のサーバ装置に上記の各機能部1〜9を設けた構成であるが、複数台のサーバ装置に分散して設けるようにしてもよい。
このように、複数のパラメータを予め分類しておくことで、後述する原因パラメータの特定に係る計算量を大幅に削減することができる。
ここで、相関係数とは、2つのデータ間の相関(類似性の度合)を示す統計学的指標であり、2つのデータが全く同じ(或いは、変化の仕方が同じ)場合には、相関係数は1となり、逆に全く正反対に変化する場合には、−1となる。また、2つのデータに全く関連性が無い場合には、ゼロとなる。
これは、各データの平均からのずれを表すベクトル(x−x ̄)=(x1−x ̄,・・・,xn−x ̄),(y−y ̄)=(y1−y ̄,・・・,yn−y ̄)のなす角の余弦である。また、この式は、共分散をそれぞれの標準偏差で割ったものに等しい。
このように、正常状態において相関が強いパラメータをペアにしておくことで、異常発生時に高い感度で相関係数に変化が現れる効果がある。
図2(a)は帯電電圧系のパラメータ群におけるパラメータペアの例であり、PA_a、PA_b、PA_c、・・・等のパラメータにより構成されている。図2(b)はトナー濃度系のパラメータ群におけるパラメータペアの例であり、PB_a、PB_b、PB_c、・・・等のパラメータにより構成されている。図2(c)は現像系のパラメータ群におけるパラメータペアの例であり、PC_a、PC_b、PC_c、・・・等のパラメータにより構成される。各パラメータ群は、最小で3種類以上のパラメータを含むように構成される。なお、本例では、各パラメータは、Y(Yellow),M(Magenta),C(Cyan),K(Key Plate)といった色要素別に設けられており、パラメータ名の末尾に付した数値(1)〜(4)で色要素を区別している。
本例の相互相関係数算出部5では、データ収集部1により新たなデータが収集されるに従い(例えば、1日毎)、パラメータ群別のパラメータペア毎に、算出期間をスライドさせながら相関係数の算出を順次行う。これによりパラメータペア毎に得られる相関係数を時系列順に並べたデータ列を、そのパラメータペアに係る相関データ列(相関度の推移を示すデータ列)とする。すなわち、本例の相互相関係数算出部5によれば、対象の複写機について、パラメータペア毎に相関データ列を得ることができる。
図8(a)には、パラメータA,Bの各々の時系列データ(各パラメータの値の時系列変化)を示すグラフを例示してあり、図8(b)には、パラメータA,Bのペアに係る相関データ列(相関係数の推移)を示すグラフを例示してある。
図8(a)によれば、パラメータAの時系列データとパラメータBの時系列データは同様な変化をしているように見える。しかしながら、図8(b)に示すように、これらの時系列データに基づいて作成される相関データ列では、元データの僅かな変化の相違が大きな変動として現れている。例えば、図8(a)の点線で囲った部分の相違は僅かだが、図8(b)ではその相違が大きな変動で表されている。このように、相関データ列を用いることで、元データの僅かな変化を敏感に捉えることができる。
本例では、相関データ列間の類似度として、予め定められた期間(例えば、5日間)における相関データ列間のユークリッド距離を用いる。すなわち、相関データ列をベクトルと見做すことで、相関データ列間(ベクトル間)の距離を、各々の相関データ列間の波形の変化の類似性を表す指標として用いることができる。この場合、相関データ列間の距離が小さいほど、両データ列の波形の変化が似ていることを意味し、距離がゼロであれば、両データ列は等しいことを意味する。
例えば、図3に例示するように、パラメータA,Bのペアに係る相関データ列ABと、パラメータE,Aのペアに係る相関データ列EAとの距離DAB,EAが、全ての相関データ列間の距離の中で最も短いとする。このとき、その距離DAB,EAに係る各パラメータペアでは、パラメータAが共通する。この場合、パラメータAが原因となって他のパラメータに影響を与えていると推定される。このように、最短距離となる2つの相関データ列に共通するパラメータが存在する場合には、そのパラメータがデータ異常(障害等によって発生した相関係数の低下)の原因パラメータと推定できる。
(手順1)一方の相関データ列ABと、その対象であるパラメータA,Bのいずれかが関わる他の相関データ列との距離を求める。すなわち、パラメータAに関して距離DAB,AC、DAB,AE、DAB,AFを求め、パラメータBに関して距離DAB,BC、DAB,BE、DAB,BFを求める。
(手順2)他方の相関データ列EFと、その対象であるパラメータE,Fのいずれかが関わる他の相関データ列との距離を求める。すなわち、パラメータEに関して距離DEF,EA、DEF,EB、DEF,ECを求め、パラメータFに関して距離DEF,FA、DEF,FB、DEF,FCを求める。
(手順3)上記の(手順1)及び(手順2)で求めた距離の中から最も短い距離の相関データ列に共通するパラメータを原因パラメータとして推定する。例えば、相関データ列ABと相関データ列BCとの距離DAB,BCが最短であれば、これら2つの相関データ列に共通するパラメータBを原因パラメータとして推定する。
なお、もともと初めに全ての組み合わせで距離計算を行うので、(手順1)及び(手順2)での距離を改めて求め直す必要は無い。
障害予測部9により推定された障害の情報は、対象の複写機の保守を担当する保守担当者などに通知される。これにより、実際に障害が発生する前に、計画的にメンテナンス等の保守作業を行うことができる。
本例の障害予測システムでは、前処理として、パラメータ分類部2が、サブシステム(帯電電圧系、トナー濃度系、現像系など)単位でパラメータを分類(グルーピング)し(ステップS1)、グループ別パラメータペア抽出部3が、パラメータ群(グループ)別に、正常状態の相関係数が強いパラメータペアを抽出してグループ別パラメータペア格納部4に格納しておく(ステップS2)。これらの前処理は、パラメータ群の構成の変更や、パラメータの追加、修正、削除などが無い限り実施し直す必要は無い。
まず、相互相関係数算出部5が、直近の期間におけるパラメータペアの時系列データ間の相関データ列を生成し(ステップS3)、閾値比較部6が、相互相関係数算出部5により算出された相関データ列に閾値を超える相関係数が含まれるか否かを判定し(ステップS4)、閾値を超える相関係数を含むパラメータペアが検出された場合に異常状態であると判断して、当該パラメータペアを含むパラメータ群(グループ)を特定する(ステップS5)。その後、類似度算出部7及び原因パラメータ特定部8が、特定されたパラメータ群(グループ)について、原因パラメータの特定処理を行い(ステップS6)、障害予測部9が、特定された原因パラメータのデータ異常に起因して発生することが予測される障害を特定(推定)する(ステップS7)。
まず、特定されたパラメータ群(グループ)に属するパラメータの数が2つか否か(すなわち、パラメータペアが1つか否か)を判定する(ステップS11)。
ステップS11において、パラメータの数が2つと判定された場合には、そのいずれか一方が原因パラメータであると特定する(ステップS12)。
一方、ステップS11において、パラメータの数が2つ以上と判定された場合には、パラメータ群における全てのパラメータペアの相関データ列に基づいて、各相関データ列間の距離(類似度)を算出し(ステップS13)、最短距離となる2つの相関データ列に共通するパラメータが存在するか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14において、最短距離となる2つの相関データ列に共通するパラメータが存在すると判定された場合には、その共通パラメータを原因パラメータとして特定する(ステップS16)。
一方、ステップS14において、最短距離となる2つの相関データ列に共通するパラメータが存在しないと判定された場合には、この2つの相関データ列とその対象である4つのパラメータが関わる他の相関データ列との距離を調べ、その中で最短距離となる2つの相関データ列を特定し(ステップS15)、その共通パラメータを原因パラメータとして特定する(ステップS16)。すなわち、条件付きで最短距離となる相関データ列における共通パラメータを原因パラメータとして特定する。
まず、相互相関係数算出部5が、図9(a)に示すように、パラメータA,Bのペアに係る相関データ列AB、パラメータB,Cのペアに係る相関データ列BC、パラメータC,Aのペアに係る相関データ列CAをそれぞれ算出する。
その結果、相関データ列ABについて図10(a)のデータ推移が得られ、相関データ列BCについて図10(b)のデータ推移が得られ、相関データ列CAについて図10(c)のデータ推移が得られたとする。
この場合、閾値比較部6により、相関データ列AB及び相関データ列BCに、閾値を超える相関係数が含まれることが検出され、そのパラメータ群について原因パラメータを特定する処理に移行する。
その結果、図9(c)に示すように、距離DAB,BC=0.085、距離DBC,CA=0.251、距離DCA,AB=0.191が得られたとする。
この場合、各距離の関係は、距離DAB,BC<DCA,AB<DBC,CAであるため、原因パラメータ特定部8により、最短の距離DAB,BCについて共通するパラメータであるパラメータBが原因パラメータとして特定される。
このような構成によれば、原因パラメータを効果的に特定することができるため、そのパラメータのデータ異常に起因する障害の発生予測を精度良く行うことが可能になる。
本例では、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)21、CPU21の作業領域となるRAM(Random Access Memory)22や基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)23等の主記憶装置、本発明の一実施形態に係るプログラムや各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)24等の補助記憶装置、各種情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F25、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F26、等のハードウェア資源をサーバ装置のコンピュータが有している。
そして、本発明の一実施形態に係るプログラムを補助記憶装置24等から読み出してRAM22に展開し、これをCPU21により実行させることで、上述した各機能部をサーバ装置のコンピュータ上に実現している。
また、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、それぞれの機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
Claims (6)
- 被監視装置の内部状態を示す複数のパラメータについて、値の変化に因果関係がある一対のパラメータから成る組を複数設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された組毎に得られる、各組を成すパラメータ間における値の時系列変化の相関度の推移が最も類似する2つの組について、共通するパラメータが存在する場合には当該共通するパラメータを特定し、共通するパラメータが存在しない場合には、当該2つの組について、一方の組における相関度の推移と当該組を成すパラメータについて設定された他の組における相関度の推移との類似度、及び、他方の組における相関度の推移と当該組を成すパラメータについて設定された他の組における相関度の推移との類似度を調べ、その中で相関度の推移が最も類似する2つの組に共通するパラメータを特定する特定手段と、
前記特定手段により特定されたパラメータに予め対応付けられた障害が被監視装置に発生する旨の通知を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする障害予測システム。 - 前記設定手段は、前記被監視装置の内部状態を示す複数のパラメータを少なくとも帯電電圧、トナー濃度、現像及びレーザパワーの各類に分類したパラメータ群毎に、そのパラメータ群に分類された各パラメータについて、正常状態の前記被監視装置において、前記値の変化に因果関係がある一対のパラメータからなる組を複数設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の障害予測システム。 - 前記特定手段は、前記各組を成すパラメータ間の相関係数を対象範囲の期間をスライドさせた複数の期間についてそれぞれ算出し、当該算出した各期間の相関係数を時系列順に並べて相関データ列とし、当該相関データ列間の距離が近いほど相関度の推移が類似すると判断する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害予測システム。 - コンピュータに、
被監視装置の内部状態を示す複数のパラメータについて、値の変化に因果関係がある一対のパラメータから成る組を複数設定した設定機能と、
前記設定機能により設定された組毎に得られる、各組を成すパラメータ間における値の時系列変化の相関度の推移が最も類似する2つの組について、共通するパラメータが存在する場合には当該共通するパラメータを特定し、共通するパラメータが存在しない場合には、当該2つの組について、一方の組における相関度の推移と当該組を成すパラメータについて設定された他の組における相関度の推移との類似度、及び、他方の組における相関度の推移と当該組を成すパラメータについて設定された他の組における相関度の推移との類似度を調べ、その中で相関度の推移が最も類似する2つの組に共通するパラメータを特定する特定機能と、
前記特定機能により特定されたパラメータに予め対応付けられた障害が被監視装置に発生する旨の通知を出力する出力機能と、
を実現するためのプログラム。 - 前記設定機能は、前記被監視装置の内部状態を示す複数のパラメータを少なくとも帯電電圧、トナー濃度、現像及びレーザパワーの各類に分類したパラメータ群毎に、そのパラメータ群に分類された各パラメータについて、正常状態の前記被監視装置において、前記値の変化に因果関係がある一対のパラメータからなる組を複数設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載のプログラム。 - 前記特定機能は、前記各組を成すパラメータ間の相関係数を対象範囲の期間をスライドさせた複数の期間についてそれぞれ算出し、当該算出した各期間の相関係数を時系列順に並べて相関データ列とし、当該相関データ列間の距離が近いほど相関度の推移が類似すると判断する、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のプログラム。
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